JP2003317724A - ガス拡散電極、その製法及びそれを用いた燃料電池 - Google Patents

ガス拡散電極、その製法及びそれを用いた燃料電池

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JP2003317724A JP2002120546A JP2002120546A JP2003317724A JP 2003317724 A JP2003317724 A JP 2003317724A JP 2002120546 A JP2002120546 A JP 2002120546A JP 2002120546 A JP2002120546 A JP 2002120546A JP 2003317724 A JP2003317724 A JP 2003317724A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な手段で、短時間で製造し得るフッ素樹
脂含有多孔質体を素材とする高性能、長寿命で製造コス
トが低いガス拡散電極及びそれを用いた燃料電池を提供
する。 【解決手段】 フッ素樹脂微粒子を主体とするガス拡散
電極材料の分散液を、透析又は限外濾過により処理した
後、電気泳動によって、前記ガス拡散電極材料を導電性
基材の表面に析出させて形成したフッ素樹脂含有多孔質
体を、電極のガス供給層又は/及び反応層の素材とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、食塩電解の酸素
陰極及び燃料電池等に用いられるガス拡散電極に関し、
より詳しくは、簡単な操作で短時間に製造できるガス拡
散電極と、このガス拡散電極の製法、並びに前記ガス拡
散電極を構成素材として用いた燃料電池、特に固体高分
子電解質型の燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガス拡散電極は、食塩電解の酸素陰極
や、酸水素燃料電池等に使用される電極であって、この
ガス拡散電極を用いる燃料電池の構成は、酸素を供給す
る酸素極(カソード)と、電解質(液体又は固体)、及
び燃料が供給される燃料極(アノード)の3つの要素か
ら成り立っているが、食塩電解では、酸素を供給する酸
素極(カソード)のみを酸素陰極として用いている。
【0003】特に、固体高分子電解質型の燃料電池で
は、イオン交換膜(固体高分子電解質膜)の両面に、ガ
ス拡散電極が配置された構造を有している。
【0004】このガス拡散電極は、通常の状態では、固
定表面である電極上において、液体である電解質と気体
の反応ガスが供給されて三相界面が形成され、その界面
において電気化学的反応が進行しつつ、発電又は復極を
行うものであり、反応層とガス供給層から構成される。
【0005】これらのガス拡散電極は、通常、触媒、カ
ーボンブラック、四フッ化エチレン樹脂(PTFE分散
液)及び集電体から構成され、通常、その厚みは0.6
mm程度で、この内の0.5mm程度がガス供袷層、
0.1mm程度が反応層という構造を有している。
【0006】ガス拡散電極を形成するガス供給層は、例
えば、疎水性カーボンブラックと、ポリテトラフルオロ
エチレン(以下、「PTFE」という。)の微粒子を構
成成分とし、また、反応層は、触媒微粒子、親水性カー
ボンブラック、疎水性カーボンブラック及びPTFEの
微粒子を構成成分とするものである。したがって、その
製造においては、まず、原料として触媒微粒子、親水性
カーボンブラック、疎水性カーボンブラック及びPTF
E分散液などが使用され、また、必要に応じて、固体高
分子電解質(フッ素系イオン交換樹脂:デュポン社製液
体ナフィオンなど)溶液を併用し、界面活性剤を含むカ
ーボンブラックの質量の凡そ20〜100倍の水を用い
てこれらが均一に混合され、分散された液とされてい
る。
【0007】これらのガス拡散電極材料を水性液中に微
細に分散するためには、超音波照射等が採用され、それ
らにより各粒子はコロイド状になり安定化している。ガ
ス拡散電極は、これらガス拡散電極材料が分散された液
(以下、単に「分散液」という。)を用い、分散液から
分散媒体を除いて、ガス拡散電極のガス供給層や反応層
の素材となるフッ素樹脂含有層、すなわちフッ素樹脂含
有多孔質体を形成することにより調製される。
【0008】分散媒体が濾過などによって除去されたフ
ッ素樹脂含有多孔質体は、乾燥し、ソルベントナフサを
加えてシート化することにより、反応層用シートやガス
供給層用シートとし、これを重ね合わせてシート化して
所定の厚さのガス拡散電極用シートとし、このシートか
ら分散に用いられた界面活性剤を除去し、乾燥し、集電
体と共にホットプレスすることによりガス拡散電極を得
ている。
【0009】また、イオン交換膜(固体高分子電解質
膜)の両面に、ガス拡散電極が配置された構造を有する
固体高分子電解質型の燃料電池は、触媒を担持させたカ
ーボンブラックの分散液に、固体高分子電解質(フッ素
系イオン交換樹脂:デュポン社製液体ナフィオンなど)
溶液を添加混合したのち、凝集剤を添加し、フッ素樹脂
で絡め取られた触媒担持カーボンブラックと、フッ素樹
脂が混合された液を得たのち、これを反応層形成用分散
液とし、フッ素樹脂膜などに塗布乾燥して反応層膜を形
成し、得た反応層膜と固体高分子電解質膜(フッ素系イ
オン交換樹脂:デュポン社製ナフィオンなど)を加熱圧
着することで反応層―固体高分子電解質接合体を得て調
製されている。
【0010】上記のガス拡散電極、あるいはガス拡散電
極が配置された固体高分子電解質型の燃料電池の調製方
法に関しては、これまでにも多くの提案がなされている
が、いずれも、凝集、塗布、乾燥など複雑な工程を必要
とし、製造コストの未だ高いもので、製造コストを低下
させることと、性能の向上が強く求められているもの
で、また大きなシートを作製することが困難であるとい
う問題点も有している。
【0011】また、反応層などにおいて、局部的にPT
FE濃度が異なって、均一になり難く、電極の濡れ易さ
の原因となり、電極寿命を短縮させるという問題をも有
し、さらに、ガス拡散電極のガス供給層や反応層を形成
するための、分散液からの分散媒体の除去は、例えば、
その手段として、濾過を採用しようとすると、微細に分
散され安定化した微粒子の濾過が困難で、濾過終了まで
に要する時間が2日間以上と長時間に及び、容易なもの
ではない。
【0012】その解消のため、この分散液にアルコール
を加えて強制的に凝集させる手段を取ると、濾過時間は
3時間程度に短縮されるが、この方法ではPTFE微粒
子の偏析が生じやすく、生成した反応層に、局部的にP
TFE濃度が異なり、構成成分が均一ではないという問
題が生じやすい。
【0013】前記の課題を解決するため、発明者は、分
散液の均一な分散状態を残した状態で、短時間で含水率
の小さな均一な反応層、ガス供給層を有するガス拡散電
極を得るために、従来の技術の工程の解析を行い、この
解析の結果に基づいて、より簡単な手段で、ガス拡散電
極、さらには固体高分子電解質型燃料電池の基本要素で
あるガス拡散電極の反応層、ガス供給層を製造する手段
について鋭意研究を行い、先に一つの提案をおこなった
(WO01/94668)。
【0014】この提案の発明は、含水率の高い分散液か
ら、短時間で含水率の小さい、しかもフッ素樹脂の偏析
による濃度差が生じない、均一な濃度分布を有するフッ
素樹脂含有多孔質体、特にケーキ状のフッ素樹脂含有多
孔質体を調製し、該フッ素樹脂含有多孔質体を用いて、
ガス拡散電極の反応層やガス供給層を調製し、高性能で
長寿命を有するガス拡散電極を、容易な製造方法で、か
つコストを安く製造することを可能とするものである。
【0015】この提案の発明は、量産性に優れ、簡単な
装置によって安価に製造でき、しかも高性能で長寿命の
固体高分子電解質型の燃料電池を、しかも原材料となる
固体高分子電解質膜も、ナフィオン(デュポン社製)な
どの固体高分子電解質の溶液(以下、「溶液」とい
う。)からなる電気泳動液に、陰極と陽極とを浸し、電
流を流すことで固体高分子電解質を陽極側に電気泳動さ
せ、陽極上に電着により析出させ又は陽極近傍に設置し
た基体、具体的には多孔体上又は固体高分子電解質膜上
に析出させて調製することを可能とするものである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】上記提案の発明におい
ては、電気泳動を調製の手段としているため、分散液の
調製に際して、分散液の電気伝導度を、低目に、かつ一
定にすることにより、得られるフッ素樹脂微粒子含有多
孔質体の膜厚、すなわち、電着量を一定にするという操
作が採用されている。
【0017】特に、分散液の電気伝導度が150μSc
m程度になると、1dm当たりの電流値が1Aを超え
てしまうので、大面積の電着を行うときに大きな電源が
必要になるばかりでなく、ジュール熱による著しい液温
上昇をきたし、陽極で酸化反応が激しく起こり、陽極の
銀網が溶解して銀イオンが多量に分散液に混入し、分散
液を凝集させるおそれがあるので、そのような場合にお
いて、分散液の電気伝導度を調整することは、ガス拡散
電極の反応層やガス供給層の調製における一つの重要な
手段である。
【0018】フッ素樹脂微粒子を主体とするガス拡散電
極材料の分散液の電気伝導度は、各材料、すなわち、フ
ッ素樹脂微粒子の分散液中に含まれるイオン量、カーボ
ンブラックに含まれる不純物に起因するイオン量、界面
活性剤に含まれるイオン量などに依存するものである
が、それら分散液中のイオン量が一定していないため、
分散液の電気伝導度が大きく変動することが多い。例え
ば、市販品のPTFEディスパージョンについていえ
ば、デュポン製のPTFEディスパージョン30Jの電
気伝導度は、 0.98mScm、 ダイキン工業(株)製のPTFEディスパージョンD−
1の電気伝導度は、 0.39mScm などで、分散剤として用いられる界面活性剤トライトン
(ユニオンカーバイド社製界面活性剤)なども、4%水
溶液とした際に、その電気伝導度は、ロットによって4
8μScm〜28μScmと大きく異なっており、それ
らに起因して分散液の電気伝導度が大きく変動する。
【0019】このうち、界面活性剤水溶液の電気伝導度
は、陰、陽のイオン交換樹脂で処理することにより低下
させることができ、例えば、前記トライトン4%水溶液
も、その処理により電気伝導度は2μScmと低下する
ので、この界面活性剤水溶液を用いて、疎水性カーボン
ブラックとPTFEディスパージョンD−1から分散液
を調製した場合、その電気伝導度は50μScmと低く
なり、この程度の電気伝導度で有れば好適に使用でき、
さらに、これを脱イオン水で1/2に希釈すれば、27
μScmと電着し易い電気伝導度となる。
【0020】しかしながら、これらの脱イオン水、脱イ
オン界面活性剤水溶液を用いても、50μScm以下の
電気伝導度の分散液を得ることができない電気伝導度の
高いPTFEディスパージョンは、それ自体をイオン交
換樹脂で処理しなければならず、PTFEディスパージ
ョンを脱イオン水で希釈(5倍程度)してから処理する
などして、電気伝導度を30μScm以下に調整した分
散液を得ているが、分散液中のフッ素樹脂微粒子は、イ
オン交換樹脂に付着し、あるいはイオン交換樹脂により
凝析し、分散液が破壊されることがあり、必ずしも適し
た方法とは言えないものである。
【0021】発明者は、分散液中のフッ素樹脂微粒子
を、析出させたり、凝析によって分散液を破壊すること
のない、分散液の電気伝導度の調整方法を求め、先の提
案の発明を、より完成度の高いものにするための検討を
行った。
【0022】その結果、発明者は、フッ素樹脂微粒子を
主体とし、さらには、疎水性カーボンブラック、親水性
カーボンブラック及び触媒微粒子から選ばれた1種もし
くは2種以上の微粒子をも含有する分散液の電気伝導度
の調整が、透析もしくは限外濾過により行えること、ま
た、使用済みの分散液の再生や、分散液の精製・濃縮も
可能であることを見出し、この発明を完成したのであ
る。
【0023】
【課題を解決するための手段】すなわち、この発明の請
求項1に記載の発明は、フッ素樹脂微粒子を主体とする
ガス拡散電極材料の分散液を、透析又は限外濾過により
処理した後、電気泳動によって、前記ガス拡散電極材料
を導電性基材又は導電性基材近傍に配置した基体の表面
に析出させて形成したフッ素樹脂含有多孔質体を、電極
のガス供給層又は/及び反応層の素材とすることを特徴
とするガス拡散電極である。
【0024】また、この発明の請求項2に記載の発明
は、請求項1に記載のガス拡散電極において、ガス拡散
電極材料の分散液が、フッ素樹脂微粒子を主体とし、疎
水性カーボンブラック、親水性カーボンブラック及び触
媒微粒子から選ばれた1種もしくは2種以上の微粒子を
も含有する分散液であることを特徴とするものである。
【0025】また、この発明の請求項3に記載の発明
は、請求項1又は2に記載のガス拡散電極において、前
記透析が、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース又は
ポリスルホンからなる透析膜を用いるものであることを
特徴とするものである。
【0026】また、この発明の請求項4に記載の発明
は、請求項3に記載のガス拡散電極において、前記透析
膜が、中空糸膜であることを特徴とするものである。
【0027】また、この発明の請求項5に記載の発明
は、フッ素樹脂微粒子を主体とするガス拡散電極材料の
分散液を、透析又は限外濾過により処理した後、電気泳
動によって、前記ガス拡散電極材料を導電性基材又は導
電性基材近傍に配置した基体の表面に析出させて形成し
たフッ素樹脂含有多孔質体を、電極のガス供給層又は/
及び反応層の素材とすることを特徴とするガス拡散電極
の製法である。
【0028】また、この発明の請求項6に記載の発明
は、請求項1乃至4のいずれかに記載のガス拡散電極を
構成素材とすることを特徴とする燃料電池である。
【0029】また、この発明の請求項7に記載の発明
は、請求項6に記載の燃料電池において、前記燃料電池
が、固体高分子電解質型あることを特徴とするものであ
る。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、この発明のガス拡散電極、
特にその反応層及びガス供給層、それらの製法並びに燃
料電池を添付の図面に基づいて詳細に説明するが、この
発明はこれらの実施の形態にのみに限定されるものでは
ない。
【0031】この発明において、ガス拡散電極を構成す
る反応層及びガス供給層の全て、もしくはいずれかは、
透析又は限外濾過により処理した、フッ素樹脂微粒子を
主体とするガス拡散電極材料の分散液から、電気泳動に
より形成されたものであることを特徴とするもので、ま
た、前記ガス拡散電極を固体高分子電解質膜の両面に配
置された構造を有する固体高分子電解質型燃料電池にお
ける固体高分子電解質膜も、同様に、電気泳動により形
成させることが可能である。
【0032】図1は、この発明のガス拡散電極の製造方
法を示す概略説明図であって、この製造方法は、直流安
定化電源、平行に置いた多孔質対極、銀網及びフッ素樹
脂微粒子を主体とするガス拡散電極材料の分散液を、基
本的な構成要素とするものである。
【0033】<電気泳動浴の構成>円筒状のガラス容器
1の底部に銀網を敷いてアノード2としたのち、ガラス
容器1に分散液4を満たし、この分散液4の液面の少し
下方に、ニッケル網を銀網と平行に設置してカソード3
とする。電気泳動に際しては、理論上、アノード2とカ
ソード3は、水平又は垂直に配置されたいずれの状態で
も行うことができるが、分散液中に分散している疎水性
カーボンブラックや、親水性カーボンブラックなどが重
力により沈降し易いので、アノード2とカソード3は水
平に配置し、かつ電気泳動によりフッ素樹脂微粒子など
が移動する方向と重力による沈降方向が同じになるよう
に、ガス拡散電極材料を付着させる導電性基材、すなわ
ち、通常、アノード2を下方に配置することが好まし
い。
【0034】以下、この説明においては、アノード2に
ガス拡散電極材料を析出付着させる方法について説明す
るが、アノード2とカソード3を前記のように配置する
ことによって、ガス拡散電極材料の移動時間を短くする
ことでき、能率的であるだけではなく、導電性基材であ
るアノード2に、ガス拡散電極材料を均一に付着させる
ことができ、しかもその組成が等しくなるようにするこ
とができる。
【0035】電気泳動においては、アノード2は必ずし
も固定させている必要はなく、図2に示すように連続的
に移動させるようにすれば、ガス拡散電極材料が均一に
付着した多孔質体を連続的に製造することができるが、
特に、多孔質体の基体となるアノードに金網を使用し、
それを連続的に移動させることにより、多孔質体を連続
的に製造することが好ましい。アノード2の材料は、貴
金属、銀、銅、亜鉛、鉄、アルミニウム、ニッケル、ス
テンレスなどの金属及びそれらの合金、カーボンなどで
あればよく、カソード3も同様で、極間は5〜100m
mが好適であるが、あまり近いと短絡の心配があり、広
いと高電圧電源が必要である。
【0036】アノード2の材料として、亜鉛、銅、鉄、
アルミニウム、ニッケルなどの金属を用いると、電着物
がこれらの金属を0.01〜2%程度含むことになり、
それらの微量金属はガス電極における触媒として機能す
る可能性があるが、それらの存在が問題となる場合は、
アノード2として、炭素、白金、金、パラジウムなどを
用いるのがよい。
【0037】炭素板をアノード2の材料とする場合、電
着面が酸化反応により消耗するため、ヒドロキノン、ピ
ロガロール等の酸化抑止剤を添加しても良いし、表面を
亜鉛などの金属によりメッキして使用するのが好まし
い。この酸化抑止剤は金属のイオンへの溶出を抑止でき
る。アノード2とする金属の形状は、網状がよいが、板
状であってもよく、網状の場合には、網目の大きさが
0.5〜2mm位のものが好適で、同様にカソード3の
形状も網状でも、板状でもよく、網状のものは、発生し
た水素の気泡が除去されやすいので好ましい。また、ガ
ス拡散電極を用いることもできる。
【0038】アノード2の表面に、電極の補強のため
に、繊維状物質を密着させて電着し、繊維状物質を多孔
質体に含ませることもできる。なお、アノード2の表面
にフィルター(濾紙)を密着させて設置することによっ
て、フィルター上部にガス拡散電極材料を析出させるこ
とができるとともに、アノード2と析出によって得られ
た多孔質体を容易に分離することができる。
【0039】また、アノード2とカソード3の間に隔膜
を設け、アノード室とカソード室を分離設置すると、カ
ソード3で水素の発生と共に生じたOHイオンによ
り、分散液がアルカリ性に移行し、電気伝導度が大きく
なって電流が過大になり、電着は進行せず、電流が流れ
て液温の上昇をもたらし、電着に悪影響を与えるという
問題の発生を防止できる。
【0040】すなわち、隔膜により、電着槽をアノード
室とカソード室に分離すると、カソード3で発生したO
イオンのアノード室への移動を防ぎ、分散液の電気
伝導度の上昇が防止でき、分散液のpH変化を少なく、
カソードの汚れを小さくすることができ、隔膜として
は、多孔質膜及びイオン交換膜などが使用でき、イオン
交換膜としては、陽イオン交換膜、陽イオン交換膜とカ
ルボン酸膜の複合膜などが使用できる。
【0041】<分散液の調製>フッ素樹脂微粒子を主体
とするガス拡散電極材料の分散液の調製は、例えば、ガ
ス供給層を形成させる分散液の場合は、疎水性カーボン
ブラックを界面活性剤を含む水に撹拌分散させ、さらに
ジェットミルで分散操作を行い、1ミクロン以下の粒径
にし、これにPTFEディスパージョンなどのフッ素樹
脂微粒子分散液を添加、撹拌混合して調製される。
【0042】また、固体高分子電解質型燃料電池用のガ
ス拡散電極を調製する際などは、固体高分子電解質(フ
ッ素系イオン交換樹脂:デュポン社製ナフィオン溶液な
ど)のアルコール溶液を分散液に混合することもよく、
それにより反応層と固体高分子電解質膜との密着性を向
上させることができる。
【0043】フッ素樹脂微粒子としては、四フッ化エチ
レン樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重
合体、三フッ化塩化エチレン樹脂及びパーフロロアルコ
キシ樹脂などの微粒子が用いられる。
【0044】反応層を形成させるための分散液の場合
は、疎水性カーボンブラックの他に、親水性カーボンブ
ラック、触媒微粒子などを併用して同様に調製するもの
であるが、触媒と親水性カーボンブラックは別個の微粒
子としてでなく、親水性カーボンブラック上に触媒が付
着一体化したものでもよい。
【0045】フッ素樹脂微粒子は前記と同じものが用い
られ、触媒としては、金、銀又は白金族金属、並びにこ
れらの合金からなど選ばれた金属又はそれらの酸化物の
微粒子が用いられる。
【0046】<分散液の電気伝導度の調整>分散液は、
その電気伝導度を、低目に、また一定にするために、透
析又は限外濾過処理が施される。透析は、通常、中空糸
の外側に透析液を流し、内側を流れている分散液との間
に働く、「拡散」のメカニズムによって不要な物質を除
去すること、を意味しているが、この発明においては、
中空糸の外側に透析液を流さず、内側に流れている分散
液側に圧力をかけ、「濾過」の原理で不要な溶液を除去
する操作を含むものである。
【0047】透析又は限外濾過は、逆浸透膜、ナノ濾過
膜、限外濾過膜及び精密濾過膜などの透析膜を用いて行
われ、この発明において好ましい透析膜は、限外濾過膜
及び精密濾過膜である。
【0048】透析膜の材質としては、酢酸セルロース、
セルロース系、ポリアクリロニトリル系、ポリメチルメ
タクリレート系、エチレンビニルアルコール系、ポリス
ルホン系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエス
テル系ポリマーアロイなどが挙げられるが、この発明に
おいては、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース又は
ポリスルホンからなるものが逆洗効果が顕著に現れるた
めに好ましく、より好ましくは、酢酸セルロースであ
る。
【0049】それらの透析膜を用いたホローファイバー
型や積層型(キール型)ダイアライザーは広く市販され
ているもので、たとえば、日機装株式会社製NK−BC
−130F(トリアセテート ホローファイバー ダイ
アライザー)、ニプロ株式会社製MTA−1.9HP
(トリアセテート ホローファイバー ダイアライザ
ー)などが、この発明において用いることができる。ま
た、微粒子除去フィルターとして市販されている、日機
装株式会社製EF−01も利用できる。
【0050】この発明におけるダイアライザーを用いた
透析装置の例を図3に示す。ダイアライザー11に分散
液の出入リ口12,13、透析液の出入り口14、15
を付けて、それぞれチューブポンプ16,17,18を
取付け、液流量を制御できるようにし、透析液19のダ
イアライザー11への流入速度及び分散液20のダイア
ライザー11への流入速度と流出速度を制御すること
で、分散液20の濃縮及び希釈を可能とした。また、必
要に応じてダイアライザー11への流入前又は流入後
に、分散液に透析液を注入することでフッ素樹脂微粒子
などの分散物質の濃度が調整される。
【0051】透析液側のポンプには、プランジャーポン
プ、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプなどが使用さ
れ、分散液側のポンプには、PTFEディスパージョン
などが固まり易いので、チューブポンプなどのポンプの
使用を避け、ダイアライザー入口側にはポンプを付け
ず、出口側に出口流量を制御するためのプランジャーポ
ンプを設けることが最適であった。また、分散液溜を加
圧状態にして、ダイアライザー出口のバルブで液量を調
整することも最適である。
【0052】透析液としては、イオン交換水のみでも良
く、界面活性剤やその他の添加剤を含んだイオン交換水
も用いられる。
【0053】透析液は一回使用でもいいが、透析装置と
してイオン交換部、活性炭吸着部、0.1μm以下の孔
径を有するフィルター部を持つものとし、再生利用する
ことが望ましく、システムとしてはダイアライザーと透
析液流量管理部、透析液再生装置、分散液流量管理部か
ら構成されているものが好ましい。
【0054】これらの操作により、PTFEディスパー
ジョンなどの分散液の電気伝導度が60μScm以下に
容易に調整することできる。
【0055】分散液の電気伝導度と電流値の関係は、ほ
ぼ比例関係となるが、電着量についてはあまり変化せ
ず、電気伝導度を低下させれば、小容量の電源で大きな
フッ素樹脂含有多孔質体を電着速度の低下なしに製造で
き、また、同一電気伝導度の分散液においては、2〜1
00V/cmの範囲で電圧と電着量の関係は比例するの
で、分散液中の電気伝導度を制御し、一定に保つことを
すれば、反応層及びガス供給層の電着量は電気化学的に
制御でき、再現性ある電着膜が得られる。
【0056】分散液は長期保存のためにpHを9付近に
することが望ましので、アンモニアなどでpHの調整が
行われる。分散液のpHを上げることは、電気伝導度の
上昇をもたらすものの、pHが4〜9の間では電流値の
上昇はあるが、電着量への影響は軽微で、電着量はその
間ではあまり変化せず問題となることはない。
【0057】アノード2の表面に電着により形成させた
多孔質体は、その中に含まれる水分が多いと、アノード
2上から流出することがあるので、電着により形成させ
た多孔質体中の水分を低下させる含水率低下剤が添加剤
として分散液に加えられる。
【0058】含水率低下剤は、分散液中では解離度は小
さく、電極面で解離しイオンを生成することにより、水
の移行を助勢する能力を発揮するものと思われるもの
で、具体的には、尿素、グリセリン、ホウ酸、サッカリ
ン、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、チオ尿素、
ポリエチレングリコール#300、ホルムアミド、ブチ
ルジエタノールアミン、アニリン、ニトリロトリエタノ
ール、ジメチルアミノエタノール、グリシン、グリシル
グリシン、酢酸銅、酢酸亜鉛、ニコチン酸、テトラメチ
ルエチレンジアミン、チオジグリコール、塩化ラウリル
トリメチルアンミニウム、トリエタノールアミン、ブチ
ルトリエタノールアミン、グアニジン炭酸塩、塩化ラウ
リルピリジニウム、ヒドロキノン、ピロガロール、カテ
コール、Brヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ア
セトアミド、アリルアミン、パリビタールNa、ピリジ
ン、ピリジノール、トリエタノールアミンなどの化合物
を挙げることができる。特に、陽極の金属溶出防止剤と
しては、ヒドロキノン、ピロガロール、カテコール等が
優れている。
【0059】これらの添加剤は、分散液の電気伝導率が
0.2mSを超えない範囲で、具体的には、0.1〜2
mmol/lの範囲内で加えることにより、電着により
形成させた多孔質体中の水分を1〜11%程度減少させ
ることができるもので、含水率が高くなり、電着により
形成させた多孔質体がアノード2上から流出することを
防止できる。
【0060】上記の添加剤のなかでも、含水率の低下が
大きく、好ましいものは、アミノフェノール、トリエタ
ノールアミン、塩化ラウリルピリジニウム、ヒドロキノ
ン、ピロガロール、ブチルトリエタノールアミンなど
で、これらは単独でも効果が大きく、複数併用すること
によりさらに顕著な効果を示すものである。
【0061】また、以下の添加剤は、含水率の低い場合
には、効果が認められないが、特に温度30℃以上で電
着して得られる、含水率が60%以上という高含水率の
ものには適用できるものである。
【0062】前記の添加剤としては、例えば、蟻酸ナト
リウム、トリエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール#
600、メタノール、エタノール、ピロリジン、ヘキシ
レングリコール、バルビタール、ポリビニルピロリド
ン、ズルチン、グルコース、SDS、NMP、ビニルピ
ロリドン、ドデカンチオール、グルタミン酸、エチレン
イミン、βアラニン、アルギニン、ニコチンアミド、ピ
リジノール、Dキシロース、ドーバミン塩酸塩などがあ
る。
【0063】<フッ素樹脂含有多孔質体の調製>アノー
ド2とカソード4の間に5〜300Vの直流電圧を加
え、10〜200mA程度の電流を流し、20〜60分
程度の通電を行い、アノード2上に、電気泳動でフッ素
樹脂含有多孔質体(図示省略)を、好ましくはケーキ状
として析出させる。析出率は90〜99%以上である。
電源としては、直流定電圧、直流定電流、直流パルス電
流などが用いられ、多孔質体中のフッ素樹脂濃度を均一
にする、又は濃度に傾斜を持たせるなど目的に応じて使
い分けることができる。
【0064】電気泳動は常温で行うことが可能で好まし
いことであるが、例えば、電気泳動を高電圧、低微粒子
濃度、高電気伝導度の分散液で行うと、ジュール熱によ
って分散液の温度が上昇することがあり、液温が温度3
0℃を超えた分散液で電気泳動を行うと、得られるフッ
素樹脂含有多孔質体中に存在する溶媒(水)が50%以
上となって、フッ素樹脂含有多孔質体における微粒子同
士の結合力が弱くなり、流動性が大きくなり、分散液か
ら引き上げる際に、流出することがあるので、電気泳動
は分散液が温度30℃を超えない範囲で、好ましくは温
度20℃を超えないように液温を制御しながら行うのが
よい。
【0065】得られたフッ素樹脂含有多孔質体、特にケ
ーキ状のフッ素樹脂含有多孔質体は乾燥した後、ソルベ
ントナフサを加えロール掛けしてシート化することによ
り、ガス拡散電極の反応層用又はガス供給層用シートと
することができる。
【0066】かくして得たガス供給層を用いてガス拡散
電極を調製する際には、ガス拡散電極に長期安定性を付
与するために、ガス供給層の表面に、フッ素樹脂の撥水
層を全面に径1mm程度の点状であるいは部分的に帯状
に設けるのが好ましい。
【0067】得られたフッ素樹脂含有多孔質体の含水率
が50%程度ある場合、フッ素樹脂含有多孔質体に乾燥
の際、収縮によりひび割れの発生のおそれがあり、一旦
生成したひび割れは、ホットプレス工程で外観上無くす
ることができても、ひび割れたところは、強度が他より
少し落ちるため、このような場合には、乾燥する時の収
縮力以上に電極の厚さ方向に加圧することでひび割れを
防ぐことが望ましい。
【0068】また、常温では乾燥に1日以上かかるの
で、乾燥に際し、温度を上げて水蒸気圧を高めることで
素早く乾燥させることが好ましいが、乾燥温度としては
温度200℃以下が好ましい。
【0069】その際、乾燥温度があまり高いと界面活性
剤を含む系では分解が生じるおそれがあり、溶媒がアル
コール等では、蒸気圧が高すぎて爆発的に蒸発するので
電極が破壊されるおそれもあるので、それらの防止のた
めに、フッ素樹脂微粒子含有多孔質体の表面を多孔膜で
挟み、さらにそれを加圧下で気体が十分移動できる多孔
体で挟んだ後、加圧、加熱下で溶媒を除去する方法が採
用される。
【0070】<固体高分子電解質型の燃料電池の調製>
この発明のガス拡散電極を具備する固体高分子電解質型
の、燃料電池の製法の一例について以下に概略説明す
る。 1)ステンレス箔などを陽極とし、箔上に順次、ガス供
給層(疎水性カーボンブラック微粒子の分散されたフッ
素樹脂微粒子を含む分散液による電気泳動)、反応層
(疎水性カーボンブラック、親水性カーボンブラック、
触媒、金属微粒子又は金属酸化物微粒子などの分散され
たフッ素樹脂の分散液又は溶液による電気泳動)及び、
固体高分子電解質膜(溶液による電気泳動)を電気泳動
で電着形成し、得られたガス供給層、反応層及び固体高
分子電解質膜の積層されたステンレス箔2枚を、生乾き
の時点で、積層体を中側にして加熱圧接し接合した後、
外側のステンレス箔を剥離して用いる。
【0071】2)前記1)と同様にして、ステンレス箔
上に、反応層と固体高分子電解質膜を電気泳動で電着形
成して得られた反応層と、固体高分子電解質膜の積層体
と撥水化したカーボンペーパーなどをガス供給層層とし
て用いる。
【0072】3)前記1)と同様にして、ステンレス箔
上に、反応層とガス供給層を順次電気泳動で電着形成し
て得られた反応層とガス供給層の積層されたステンレス
箔の2枚を、生乾きの時点で、固体高分子電解質膜を挟
んで加熱圧接し、接合したのち、外側のステンレス箔を
剥離する。その際、反応層の電気泳動による調製におい
て、電気泳動液に固体高分子電解質の溶液を併用するの
が好ましく、それにより反応層と固体高分子電解質膜と
の密着性を向上することができる。
【0073】4)電気泳動槽内で、陽極と陰極との間に
固体高分子電解質膜を設け、電気泳動により移動する微
粒子などを固体高分子電解質膜に付着させて、膜上に反
応層、ガス供給層を形成させる。
【0074】5)前記1)と同様にして、ステンレス箔
上に反応層、固体高分子電解質膜、反応層を順次電気泳
動で電着形成して得られた反応層/固体高分子電解質膜
/反応層の積層体と撥水化したカーボンペーパーなどを
ガス供給層として用いる。
【0075】6)前記1)と同様にして、ステンレス箔
上に、ガス供給層、反応層、固体高分子電解質膜、反応
層、ガス供給層を順次電気泳動で電着形成してガス供給
層/反応層/固体高分子電解質膜/反応層/ガス供給層
の積層体とし使用する。
【0076】なお、上記製法は一例であって、調製方法
は前記方法に限定されるものではなく、前記したよう
に、電気泳動により形成された反応層及び/又はガス供
給層を乾燥し、ソルベントナフサなどを加えロール掛け
してシート化し、反応層及び/又はガス供給層シートと
してから利用することもでき、形成された反応層、ガス
供給層を、生乾きの時点で加熱圧接する際、プレス板な
どに多孔体を用いることや、ガス供給層の表面に、フッ
素樹脂の撥水層を全面に径1mm程度の点状で、あるい
は部分的に帯状に設けることも同様に可能であり好まし
い方法である。
【0077】この発明において、ガス拡散電極のガス供
給層及び/又は反応層となるフッ素樹脂含有多孔質体を
調製するための基本的な要件で、上記したように、フッ
素樹脂の微粒子を含有する分散液、例えば、PTFEデ
ィスパージョンなどは、水を分散媒体とするもので、水
中に分散されたフッ素樹脂微粒子、さらには、フッ素樹
脂微粒子を含有した分散液に分散する疎水性カーボンブ
ラックや親水性カーボンブラックも、通常、負イオンを
帯びているため、電気泳動によって、これら微粒子をア
ノードに、さらにはアノード近傍に配置した固体高分子
電解質膜などの基体に付着させることが可能となる。
【0078】一方、フッ素樹脂微粒子を含有する分散液
を、カチオン性界面活性剤を用いて調製した場合は、フ
ッ素樹脂微粒子、疎水性カーボンブラック、親水性カー
ボンブラックに陽イオンを付加させることも可能で、そ
の場合においては、それら微粒子をカソードに、さらに
はアノード近傍に配置した固体高分子電解質膜などの基
体に付着させることも可能である。
【0079】したがって、フッ素樹脂微粒子を含有する
分散液、又は、該フッ素樹脂微粒子以外に疎水性カーボ
ンブラック、親水性カーボンブラック、触媒、金属微粒
子又は金属酸化物微粒子などの添加物を分散させた分散
液中に、導電性基材を浸して一方の電極とし、前記分散
液中に浸した他方の電極との間に電流を流し、電気泳動
によって、前記導電性基材(アノード又はカソード)な
どの表面にフッ素樹脂含有多孔質体、あるいは、前記各
種添加物を含有したフッ素樹脂含有多孔質体を形成させ
ることが可能で、それらをガス拡散電極のガス供給層及
び/又は反応層の基材とすることを可能とする。
【0080】この発明によれば、従来のガス拡散電極の
製法における前記分散物をアルコールで凝集させ、濾
過、乾燥される工程が不要となり、装置は電極板間に電
圧を印加する定電圧電源だけで済み、装置構成が非常に
簡単なものとなり、両電極間には電流がほとんど流れな
いので、電力をほとんど消費せず経済的に、ガス拡散電
極のガス供給層及び/又は反応層の基材とすることがで
きるフッ素樹脂含有多孔質体を形成させることができ
る。
【0081】また、電極構成を平行平板電極系にすれ
ば、両電極間には平等電界が形成されるので、形成され
たガス供給層、反応層に厚さむらがなく、また、電気の
力、いわゆるクーロン力で、ガス拡散電極材料の微粒子
が電極表面へ付着するので、付着力も大きく、効率よく
ガス供給層及び/又は反応層となり得るフッ素樹脂含有
多孔質体を形成することができる。
【0082】分散液の電気伝導度を、フッ素樹脂微粒子
を分散液から析出させたり、分散液を破壊することな
く、調整することができるので、電気伝導度が高いため
に、大面積の電着を行うときに大きな電源を必要とす
る、ジュール熱による著しい液温上昇をきたし、陽極で
酸化反応が激しく起こり、陽極の銀網が溶解して銀イオ
ンが多量に分散液に混入し、分散液を凝集させるなどの
問題が発生させることがなく、さらに、電気伝導度を一
定にすることにより電着量が一定し、得られるフッ素樹
脂微粒子含有多孔質体の膜厚を一定にすることができ
る。
【0083】さらに、上記ガス供給層及び/又は反応層
を固体高分子電解質膜の両面に有する固体高分子電解質
型燃料電池における固体高分子電解質膜も、電気泳動に
より形成することが可能で、固体高分子電解質(フッ素
系イオン交換樹脂:デュポン社製ナフィオン溶液など)
を高温下にアルコールに溶解させてなる電気泳動液に、
電場をかけると陽極側に電気泳動して電着し、固体高分
子電解質を形成することができる。
【0084】エタノール中ではゼータ電位は示さず、電
気泳動を起こさないカーボンブラックなども、固体高分
子電解質やフッ素樹脂微粒子とともに分散されていると
共斥し、電気泳動により、該微粒子をアノードに付着さ
せることが可能である。
【0085】したがって、溶液及び/又は分散液中に、
疎水性カーボンブラック、親水性カーボンブラック、触
媒、金属微粒子又は金属酸化物微粒子などを分散させた
電気泳動液中に、導電性物質体を浸して一方の電極と
し、前記電気泳動液中に浸した他方の電極との間に電流
を流し、電気泳動によって前記導電性物質体表面に、固
体高分子電解質膜、さらにその表面にフッ素樹脂含有多
孔質体を形成させることが可能であり、それらをガス拡
散電極のガス供給層、又は反応層の基材とする固体高分
子電解質型燃料電池の製造を可能とするのである。
【0086】
【実施例】以下、この発明の実施例を詳細に説明する。
なお、全実施例を通じて%及び部は、質量%及び質量部
を意味する。実施例1 図1に示すように、ガラス容器1内の分散液4の底に、
ガス拡散電極の基体となる銀網をアノード2として設
け、そこから上方に1cmの距離を隔てて、Ni網のカ
ソード3を前記アノード2と平行に設ける。ガス供給層
を形成させるための分散液4は、4%トライトンを20
0部にPTFEディスパージョン(D−1;ダイキン工
業(株)製)20部を加え、撹拌混合して得られた電気
伝導度96μS/cmの分散液を、図3に示される装置
(ダイアライザー:ニプロ株式会社製MTA−1.9H
P)のダイアライザーに10ml/minで供給し、透
析液としてイオン交換水を50ml/min導入し、排
出量も50ml/minとして透析し、電気伝導度37
μS/cm、pH7.08としたものである。この状態
で、アノード2とカソード3との極間15mmに直流安
定化電源(図示せず)より、90Vの直流電圧を60秒
間印加して平等電界を形成すると、表面にマイナスに帯
電した疎水性カーボンブラックと、PTFEディスパー
ジョンの微粒子6は、クーロン力により対向電極である
Ni網のカソード3側から銀網のアノード2側へ電気泳
動により移動し、最終的にその表面へ付着し、ガス供給
層となるフッ素樹脂含有多孔質体を形成した。このとき
の平均電流密度は0.87mA/cmであった。な
お、図中7は、マイナスに帯電した微粒子6と対をなす
正イオンである。ガス供給層の厚さは0.85mmであ
った。この実施例によれば、装置の構成が簡単であるの
で設備費を小さくでき、両電極間にはほとんど電流が流
れないので、消費電力も小さくて済み、両電極間には平
等電界が形成されるので、短時間で厚さむらのないガス
供給層を形成することができるなどの効果がある。
【0087】実施例2 実施例1において、分散液4として以下の分散液を用い
た以外は、同様に行い、ガス供給層となるフッ素樹脂含
有多孔質体を形成した。その厚さは0.87mmであっ
た。トライトン4%含有水1Lに疎水性カーボンブラッ
ク(No.6、平均粒径500Å、試作品、電気化学工
業(株)製)100gを添加分散する。このカーボンブ
ラック分散液をジェットミル(ジーナス、ノズル径0.
2mm)で1000kg/cmの圧力で5回通過さ
せ、平均粒子径は0.40ミクロンの分散液を得、これ
に、PTFEディスパージョン(D−1;ダイキン工業
(株)製)をPTFE分として67gを加え、撹拌混合
して電気伝導度162μS/cmの分散液を得た。この
分散液をダイアライザーの出口から10ml/min排
出し、透析液としてのイオン交換水をダイアライザーに
50ml/min導入し、排出量も60ml/minと
して透析を行った結果、ダイアライザー出口の分散液は
濃縮され、水分がほぼ1/2になり、電気伝導度56μ
S/cm、pHは7.27の電着に適した分散液となっ
た。
【0088】実施例3 実施例1において、分散液4として、以下の分散液を用
いた以外は、同様に行い、ガス反応層となるフッ素樹脂
含有多孔質体を形成した。電着時間は30秒である。そ
の厚さは0.3mmであった。イオン交換樹脂で処理し
た電気伝導度0.7μS/cm以下のトライトン4%含
有水1Lに疎水性カーボンブラック(No.6、平均粒
径500Å、試作品、電気化学工業(株)製)100g
を添加分散する。このカーボンブラック分散液をジェッ
トミル(ジーナス、ノズル径0.2mm)で1000k
g/cmの圧力で5回通過させ、平均粒子径0.40
ミクロンの分散液とし、これに、PTFEディスパージ
ョン(D−1、ダイキン工業(株)製)をPTFE分と
して67g、銀コロイド(田中貴金属(株)製試作品、
平均粒径0.1ミクロン)10gを加え撹拌混合し、電
気伝導度124μS/cmの分散液を得た。この分散液
をダイアライザーの出口から10ml/min排出し、
透析液としてのイオン交換水をダイアライザーに50m
l/min導入し、排出量も50ml/minとして透
析を行った結果、分散液は、濃度は変わらず、電気伝導
度42μS/cm、pHは7.09となり電着に適した
分散液となった。
【0089】実施例4 日機装株式会社製EF−01を、ダイアライザーとして
使用した。0.9μS/cm以下に脱イオンしたトライ
トン2%含有水1Lに、疎水性カーボンブラック(N
o.6、平均粒径500Å、試作品、電気化学工業
(株)製)100gを添加分散する。このカーボンブラ
ック分散液を、ジェットミル(ジーナス、ノズル径0.
2mm)で1000kg/cmの圧力で5回通過さ
せ、平均粒子径は0.40ミクロンの分散液を得、これ
に、PTFEディスパージョン(D−1;ダイキン工業
(株)製)をPTFE分として67gを加え、撹拌混合
して電気伝導度72.0μS/cmの分散液を得た。こ
の分散液をダイアライザーの入り口から13.7ml/
min導入し、出口から8.9ml/min排出し、透
析液としてのイオン交換水をダイアライザーから28.
9ml/min排出して透析を行った結果、ダイアライ
ザー出口の分散液は1.54倍に濃縮され、電気伝導度
48μS/cm、pHは7.28の分散液が得られた。
このまま電着に使用しても良いが、析出速度が速すぎる
ので2倍程度希釈すると、電気伝導度も低下するのでよ
り電着に適した分散液となる。
【0090】実施例5 日機装株式会社製EF−01をダイアライザーとして使
用した。0.9μS/cm以下に脱イオンしたトライト
ン8%含有水1Lに、疎水性カーボンブラック(No.
6、平均粒径500Å、試作品、電気化学工業(株)
製)100gを添加分散する。このカーボンブラック分
散液をジェットミル(ジーナス、ノズル径0.2mm)
で1000kg/cmの圧力で5回通過させ、平均粒
子径は0.60ミクロンの分散液を得、これに、PTF
Eディスパージョン(D−1;ダイキン工業(株)製)
をPTFE分として67gを加え、撹拌混合して電気伝
導度67.4μS/cmの分散液を得た。この分散液を
ダイアライザーの入り口から10ml/min導入し、
出口から10ml/min排出し、透析液としてのイオ
ン交換水をダイアライザーから28.6ml/min排
出して透析を行った結果、ダイアライザー出口の分散液
濃度は変化無く、電気伝導度35.9μS/cm、pH
は7.24の分散液が得られた。
【0091】参考実施例1 実施例3までは、ダイアライザーから排出された透析液
は捨てていたが、排出された液をイオン交換部、活性炭
吸着部、0.1mμ以下の孔径を有するフィルター部を
持つ透析液再生装置を通し、再生再利用したところ、長
期にわたり透析操作を行うことができた。この試験で
は、ダイアライザーには、それぞれの液の出入り口に導
電率、pH、温度センサーを設置した。
【0092】参考実施例2 電気泳動電着で使用した電気伝導度67μS/cm、p
H=9.03、カーボンブラック含有量1/3弱、PT
FE1/3強と変化した分散液に所定のカーボンブラッ
クとPTFE比となるように分散処理したカーボンブラ
ックを加えたところ電気伝導度78μS/cmの分散液
となった。参考実施例1の装置で、分散液をダイアライ
ザーの出口から10ml/min排出し、透析液として
のイオン交換水をダイアライザーに30ml/min導
入し、排出量を60ml/minとして透析をおこなっ
た結果、ダイアライザー出口の分散液は濃縮され水分が
ほぼ1/3になり、電気伝導度36μS/cm、pHは
7.19となり電着に適した導電率の分散液に再生され
た。
【0093】
【発明の効果】この発明のガス拡散電極は、例えば、導
電性基材の表面に形成されたフッ素樹脂微粒子を主とす
るガス拡散電極材料が均一に分散しているフッ素樹脂含
有多孔質体に、ソルベントナフサを加えることによって
得られたシートを、ガス供給層又は反応層とするもの
で、性能及び寿命が向上したガス拡散電極を容易に、か
つ短時間に調製することを可能にするのである。
【0094】特に、この発明においては、ガス拡散電極
を製造するための装置構成を簡単にできるので、設備費
を小さくでき、電極間にはほとんど電流が流れないので
運転費が少なくて済み、電極間には平等電界が形成され
るので、厚さむらのないガス供給層及び/又は反応層を
形成することができる。
【0095】また、電気泳動で導電性基材の表面にガス
拡散電極材料を早く付着させることができるので、短時
間にガス供給層及び/又は反応層を形成することがで
き、連続的に集電体の金属網表面に微粒子を付着させて
ガス供給層及び/又は反応層を形成することができるの
で、量産性に優れているなどの効果を奏することができ
る。
【0096】分散液の電気伝導度を、フッ素樹脂微粒子
を分散液から析出させたり、分散液を破壊することな
く、調整することができるので、電気伝導度が高いため
に、大面積の電着を行うときに大きな電源を必要とす
る、ジュール熱による著しい液温上昇をきたし、陽極で
酸化反応が激しく起こり、陽極の銀網が溶解して銀イオ
ンが多量に分散液に混入し、分散液を凝集させるなどの
問題が発生させることがなく、さらに、電気伝導度を一
定にすることにより電着量が一定し、得られるフッ素樹
脂微粒子含有多孔質体の膜厚を一定にすることができる
のである。
【0097】また、この発明の製造方法によれば、得ら
れたガス供給層用シート又は反応層用シートは、ひび割
れのない乾燥したもので、その後の工程でシートが剥離
することがなく、ホットプレス後に強度の不均一が無
い、寿命の長いガス拡散電極が得られる。
【0098】さらに、前記拡散電極を具備する固体高分
子電解質型燃料電池は、電気泳動を用いるので薄い電極
が容易に製造でき、高分子電解質分子が触媒担持カーボ
ンブラックの周りに分散した反応層が容易に製造できる
ので、反応層と固体高分子電解質層は、プロトンパスの
連続性が取れるので性能が良い電池が得られる。
【0099】また、電気泳動によるため、両電極間には
ほとんど電流が流れないので、消費電力も少なく、両電
極間には平等電界が形成されるので、短時間で、厚さむ
らのない固体高分子電解質膜、反応層又はガス供給層を
形成することができ、電気の力、いわゆるクーロン力
で、ガス拡散電極材料の微粒子が電極表面へ付着するの
で、付着力も大きく、効率よくガス供給層及び/又は反
応層を形成することができるなどの効果がある。
【0100】また、分散液の調整に、透析又は限外濾過
を採用したことにより、分散液の精製・濃縮及び再生を
容易に行うことができ、生産効率を著しく向上すること
が可能となる。
【0101】したがって、この発明は、燃料電池や食塩
電解の電極として、さらには燃料電池として、幅広く、
各種産業分野で利用され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のフッ素樹脂微粒子含有多孔質体及び
ガス拡散電極の製造方法の一例を示す概略説明図であ
る。
【図2】この発明のフッ素樹脂微粒子含有多孔質体及び
ガス拡散電極の他の製造方法を示す概略説明図である。
【図3】この発明で用いられるダイアライザーを用いた
透析装置の例を示す図である。
【符号の説明】 1 ガラス容器 2 アノード 3 カソード 4 分散液 6 微粒子 7 正イオン 8〜9 ローラ 11 ダイアライザー 12 分散液入口 13 分散液出口 14 透析液入口 15 透析液出口 16〜18 ポンプ 19 透析液 20 分散液(処理前) 21 分散液(処理後) 22 透析液浄化装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K011 AA11 AA23 BA06 CA04 DA11 5H018 AA06 AS01 BB01 BB03 BB06 BB07 BB12 DD05 DD06 DD08 EE02 EE03 EE08 EE10 EE16 EE17 EE18 5H026 AA06 BB00 CX05 EE05 EE18 EE19 HH03

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フッ素樹脂微粒子を主体とするガス拡散電
    極材料の分散液を、透析又は限外濾過により処理した
    後、電気泳動によって、前記ガス拡散電極材料を導電性
    基材又は導電性基材近傍に配置した基体の表面に析出さ
    せて形成したフッ素樹脂含有多孔質体を、電極のガス供
    給層又は/及び反応層の素材とすることを特徴とするガ
    ス拡散電極。
  2. 【請求項2】前記ガス拡散電極材料の分散液は、 フッ素樹脂微粒子を主体とし、疎水性カーボンブラッ
    ク、親水性カーボンブラック及び触媒微粒子から選ばれ
    た1種もしくは2種以上の微粒子をも含有する分散液で
    あることを特徴とする請求項1に記載のガス拡散電極。
  3. 【請求項3】前記透析は、 ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース又はポリスルホ
    ンからなる透析膜を用いるものであることを特徴とする
    請求項1又は2に記載のガス拡散電極。
  4. 【請求項4】前記透析膜は、 中空糸膜であることを特徴とする請求項3に記載のガス
    拡散電極。
  5. 【請求項5】フッ素樹脂微粒子を主体とするガス拡散電
    極材料の分散液を、透析又は限外濾過により処理した
    後、電気泳動によって、前記ガス拡散電極材料を導電性
    基材又は導電性基材近傍に配置した基体の表面に析出さ
    せて形成したフッ素樹脂含有多孔質体を、電極のガス供
    給層又は/及び反応層の素材とすることを特徴とするガ
    ス拡散電極の製法。
  6. 【請求項6】請求項1乃至4のいずれかに記載のガス拡
    散電極を構成素材とすることを特徴とする燃料電池。
  7. 【請求項7】前記燃料電池は、固体高分子電解質型であ
    ることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池。
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