JP4355828B2 - 多孔質ガス拡散体とそれを用いた可逆セル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子電解質(以下「電解質」を略し、単に「固体高分子」という。)型の可逆セルを構成する部分である、多孔質のガス拡散体の改良に関する。本発明は、この改良されたガス拡散体をそなえた可逆セルをも包含する。
【0002】
【従来の技術】
近年、オンサイト型の直流電源として、固体高分子型の水素−空気(酸素)燃料電池(PEFC)を用い、水素および酸素の製造にも固体高分子型の水電解セル(PEWE)を用いた、再生式の燃料電池システム(RFC)を、集合住宅、業務用ビル、さらには自動車に適用することが検討されるようになった。PEFCとPEWEという二種類のモジュールは、基本的な構造が類似することから、これらを一体化した固体高分子型の燃料電池−水電解可逆セル(一体化再生燃料電池「URFC]ともいう。以下「可逆セル」と略称する。)として、ひとつのモジュールにすることが可能である。この可逆セルを利用して上記のようなエネルギー変換システムを構成する方法が、特開2002−142386、特開2002−135911、および小沢ほか「冷凍」76号1〜6頁(2001)に開示されている。
【0003】
可逆セルは、基本的には図1に示すように、1枚の電極−固体高分子接合体(以下「MEA」という。)と、2枚の多孔質ガス拡散体と、2枚の複極板またはエンドプレートとからなる構成部材を、
複極板/ガス拡散体/MEA/ガス拡散体/複極板
の順で積層してなり、1セルあたりに、酸素極室と水素極室とを各1室有するような、ゼロギャップ隔膜室式のセルを、1個または複数個、通常は多数個、有する構造をもつものである。
【0004】
このような可逆セルに使用するMEAは、実際に電気化学反応を進行させる反応の場であり、固体高分子膜の両面に、水素酸化および水素発生ならびに酸素発生および酸素還元に対して活性を有する触媒の層として、金属微粉末、固体高分子電解質およびフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレンが代表的であるから、以下「PTFE」という。)の混合物の層を、熱圧着により積層して得られる。この技術に関しては、五百蔵ほか「固体高分子型燃料電池・水電解可逆セルにおける電極触媒層の低減」第67回電気化学大会予稿集第251頁(2000)が参考になる。
【0005】
可逆セルの金属触媒には、Pt、IrもしくはRuなどの貴金属、またはそれらの水酸化物もしくは酸化物が使用できるが、これらのうちでは、特開2000−342965に開示のように、Pt、Irおよびこれらの水酸化物または酸化物が、好適に用いられる。
【0006】
可逆セルを構成する複極板またはエンドプレートに対しては、外部から供給される電力または反応剤を、隔膜によって区画される各電極室内へ円滑かつ均一に供給する機能と、各室内における反応の結果生成した物質や電力を、円滑に外部に取り出す機能とが要求される。
【0007】
複極板およびエンドプレートは、通常Tiのような材料で製作され、基板表面に、水およびガスの流通する溝と、少なくとも2個のマニホールドとを機械加工により設けたものであって、その表面をPtなどで被覆して、十分な導電性を確保したものが用いられる。
【0008】
可逆セル内に配置するガス拡散体は、図2に示すように、水素極の電極面と酸素極の電極面との双方に1個ずつ、複極板またはエンドプレートと電極面との間に挟まれて存在し、外部から各セル室内に供給された反応剤または電力を、電気化学反応の場となる電極面に均一に供給し、かつ電極面で発生した生成物や電力を、速やかに外部へ取り出す機能を果たすものである。ガス拡散体はまた、外部から供給された電力を反応の場に供給する給電体として、またはそこで発生した電力を外部に取り出すための集電体としてもはたらく。
【0009】
通常、ガス拡散体としては、代表的にはTiの多孔質体、とりわけTi繊維の不織布を基体として使用し、これに熱分解や電気メッキによってPtを被覆し、さらに不織布の表面をPTFEで被覆して製作したものが用いられている。
【0010】
ガス拡散体の基体の材質としてTiを好んで使用するのは、酸素極室において耐アノード溶解性が求められるためである。したがって、バルブ作用を有し、アノード環境での使用に耐えるTaなどのバルブメタルであれば、Tiに代えて使用することができる。これに対し、水素極室で使用する基材の材質にはあまり制限がなく、カーボンやステンレスなどの使用が可能である。ガス拡散体の基体は、五百蔵ほか「固体高分子型燃料電池・水電解可逆セルの電極構造の検討」第68回電気化学大会予稿集第378頁(2001)」によれば、空隙率の高いものが好ましく、空隙率を75%程度とするのが適切とのことである。
【0011】
ガス拡散体の表面をPTFEで被覆するのは、撥水性を与えて、燃料電池運転時の水素ガスおよび酸素ガスの供給が、反応生成水や加湿蒸気の凝集によって阻害されないこと、水電解から燃料電池への運転切り替え時に、ガス拡散体内に凝集水が残留しにくくなることを意図したものである。実際、水電解専用のセルでは、PTFEの被覆をしないのが普通である。
【0012】
ところが、撥水性のPTFEをガス拡散体の内部に存在させると、内部の親水性が低くなるから、細孔内の通水性が低下する。発明者らはこのことを、水電解操作時に、電極面、とりわけ酸素極への反応水の供給が妨げられ、反応物の供給が律速となって水電解セルの性能が低下する、という事実にもとづいて確認している。
【0013】
燃料電池の運転時には、酸素極において、
4H++4e-→2H2O
なる反応により、水が生じる。生成する水が電極面に残留し電極面が濡れてくると、電極触媒層でのガスの流通が悪くなり、反応の場となる気−液−固の三相界面も減少するので、燃料電池の性能が低下する。酸素極で生成した水は、速やかに外部へ排出しなければならないので、ガス拡散体は水とガスの両方の流通がよいことが望ましいが、ガス拡散体内部の撥水性が高いときは、生成水の排出がスムーズでなくなり、のちに示す図4にみるように、水の生成量が少ない低電流密度での運転は可能であっても、水の生成量が多くなる高電流密度においては、燃料電池の運転が実質上できない。
【0014】
このように、ガス拡散体内のガスの供給排出のみに着目してPTFEを被覆させたガス拡散体は、水電解運転時の電極面への水の供給や、燃料電池運転時の反応生成水の排出にとって不利なものであるため、可逆セルとしての性能が期待どおりに得られない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
発明の目的は、水電解槽と燃料電池の二つの機能を有する固体高分子型の可逆セルの構成部分である多孔質ガス拡散体において、水素ガスおよび酸素ガスの供給排出に加えて、水の供給排出をも円滑に行なうことができる、高性能のガス拡散体を提供することにある。このようなガス拡散体をそなえた可逆セルを提供することもまた、本発明の目的に含まれる。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の多孔質ガス拡散体は、[複極板/ガス拡散体/電極−電解質膜接合体/ガス拡散体/複極板]から構成され、水電解槽と燃料電池の二つの機能を有する固体高分子電解質型の可逆セルの構成部分である多孔質のガス拡散体において、多孔質のガス拡散体が、チタン繊維の不織布に白金のメッキを施した後、個々の繊維の表面をフッ素樹脂で被覆してあり、その被覆量が、繊維の全表面積に関して0.06〜1.20mg/cm2の範囲にあることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のガス拡散体は、Ti繊維の不織布を基材とし、これにPtの電気メッキまたはPt化合物の熱分解によってPt被覆を施した上で、その個々の繊維の表面に、PTFEを上記の特定量被覆して製造したものである。このようにして得られるガス拡散体は、ガス拡散体の表面および内部の細孔内において、親水性部位と疎水性部位とがバランスよく配置され、気体である水素ガスおよび酸素ガスと、液体である水との両方に対して良好な、供給排出性を有する。
【0019】
ガス拡散体を構成する繊維の集合体は、ガスおよび水の流通性、圧力損失の大小、PtおよびPTFEを塗布するために使用する液の浸透性などの観点から、繊維の直径が30〜100μmの不織布であって、気孔率70〜90%、厚さ0.3〜1.0mm程度のものが好ましい。繊維は、円形か、円形でなくても規則的な断面を有し、長さも既知であって、繊維の表面積をなるべく正確に算出できるものが、表面へのPTFEの被覆量を正確にコンとロールする上で好ましい。不織布は、セル内に配置するとき、またはあらかじめ圧縮成型する場合に加わる、20〜150kgf/cm2の応力の下においても、0.3〜0.7mmの厚さを維持できるような機械的強度と柔軟性を有するものが好ましい。
【0020】
酸素極室側に配置されるガス拡散体はバルブメタルであることを要し、そのため、導電性の確保を目的として、電気メッキ、無電解メッキまたは化合物の熱分解による、Ptの被覆を施すことが好ましい。水素極室内に配置するガス拡散体も、Tiを使用する場合は、水素脆化を防止するため、Pt被覆を施すとよい。Ptの被覆量は、0.4〜20mg/cm2あれば、十分な効果が得られる。
【0021】
Ptの被覆に当って、未反応のPt錯塩や有機物等が残留して、被覆の密着性が良好でない状態のままで、ガス拡散体を可逆セル内に配置すると、触媒性能の低下、電解質膜の導電性の低下および流路の閉塞を生じて、セルの性能が低下する。これを避けるには、Pt被覆をした後に、エタノールのような揮発性溶媒中で超音波洗浄して、未反応物や被覆の不良な箇所を除いておくことが望ましい。
【0022】
上記のように用意した多孔質体の繊維の表面にPTFEの被覆を設けるには、PTFEの分散液を塗布し、空気中で25〜100℃に保って乾燥させた後、327〜400℃に1時間以上加熱して、PTFEを溶着させる処理を施す。PTFEの分散液は、市場で入手できるものでよいが、水や有機溶剤などの媒体中にPTFEが分散している液であって、PTFE含有量が0.6〜15重量%であり、1〜15重量%のアニオン系、カチオン系または非イオン系の界面活性剤が含まれているものが好適である。このようなPTFE分散液であれば、粒子の沈降が生じ難く、塗布が容易である。分散液の適用中に、攪拌効果が得られるようにすることが好ましい。PTFE分散液を基体の繊維表面に塗布するには、浸漬、スプレーなど任意の方法が採用できるが、簡易で均一な塗布ができる点で、浸漬法が最適である。
【0023】
「繊維の全表面積に関して、PTFEの被覆量が0.06〜1.20mg/cm2となるように」とは、基体を構成する繊維の表面積を合計したものの単位面積あたりの被覆量(mg/cm2)が、この数値の範囲内にあることを意味する。すなわち、多孔質体に添加されたPTFEの固体重量(mg)を、基材の重量、基材の密度、および繊維の直径から算出される全繊維表面積(cm2)で除して得られる被覆量を、0.06〜1.20mg/cm2とすることである。
【0024】
このように、基材の全表面積を問題にするのは、流通する水、水素ガスおよび酸素ガスは、基材の表面および内部において、固−液、気−液または気−固−液の界面を形成しており、基材を構成する繊維の表面を被覆したPTFEがどのくらい存在するかが、水およびガスの流通性を実質的に決定するからである。PTFEの被覆量は、分散液の濃度と塗布量の選択によりコントロールする。浸漬の場合は、塗布量がほぼ決定されるから、濃度が決め手である。1回の被覆で必要な被覆量に達しなければ、2回以上繰り返して被覆すればよい。
【0025】
乾燥により分散媒を除去した後に行なう熱処理は、基体の繊維と、塗布−乾燥の後に繊維上に保持されたPTFEの粒子とを、溶着させることが主な目的である。従って、代表的なPTFEの融点である、約327℃を上回る温度に加熱すればよく、加熱時間は1時間またはそれ以上とする。このとき、PTFEの分散液中に残っていた界面活性剤などの有機物を、熱分解させ、揮発させて除去する効果も期待できるので、加熱は、不活性ガスの流通下または真空中で実施することが好ましい。同様の理由から、熱処理後にガス拡散体を溶剤中で超音波洗浄することも好ましい。
【0026】
【実施例】
形状および材質が均一なTi繊維の不織布からなる基体に、まずPt被覆処理を行ない、つぎに被覆するPTFEの量を0〜5.48mg/cm2の間で変化させて、ガス拡散体を製造した。類似の製造方法によるMEAと、同じ形状構造のエンドプレートおよび複極板を使用し、上記のガス拡散体を酸素極室内に配置した可逆セルを組立て、その燃料電池および水電解槽としての性能を測定した。セル温度は80℃、供給する水素ガスおよび酸素ガスの圧力は常圧である。燃料電池のときと、水電解のときとの両方で、端子間の電圧と、セルの内部抵抗(カレントインターラプター法による)を測定した。
【0027】
セルの内部抵抗とは、主に導体等の電気抵抗によって生じる抵抗であり、内部抵抗に起因するIR損失分に相当する電圧を補正して得られる電圧は、本来、セル自身が有する性能を示す数値として扱うことができる。このようにして得られるセル電圧のデータから、以下の式により、電力変換効率、エネルギー変換効率および可逆運転効率を算出した。これらの効率は、エネルギー媒体として使用される可逆セルにおいては、実質的に重要な指標である。
【0028】
電力変換効率(燃料電池の運転効率の指標):
εfc=ΔG/ΔH=nFEfc/ΔH0 353
エネルギー変換効率(水電解の運転効率の指標):
εwe=ΔH0 353/ΔG=ΔH0 353/nFEwe
可逆運転効率(可逆セルの運転効率の指標):
εtotal=εfc×εwe=Efc/Ewe
ここで、F:ファラデー定数(C)、ΔH0 353:284.038kJ/mol、n=2、水素および酸素発生電流効率は、ほぼ100%とする。
【0029】
これらの可逆セルを燃料電池モードで運転した場合に、ガス拡散体へのPTFEの被覆量が燃料電池性能に与える影響を示すデータとして、電流密度500mA/cm2および1000mA/cm2における、セル電圧および電力変換効率を表1に示す。
【0030】
表1の「運転不可」は、運転中にセル電圧が断続的に下降し、安定な電力変換が不可能であったことを意味する。電流密度500mA/cm2の場合、PTFE被覆量0.06〜2.80mg/cm2において燃料電池の運転が可能であるが、電流密度1000mA/cm2の場合、PTFEの被覆量が0.06〜1.17mg/cm2の範囲でしか、燃料電池の運転が行なえない。これは、ガス拡散体の細孔内の疎水性が高い場合には、生成水の排出がスムーズにできず、水の生成量が少ない低電流密度での運転は可能であっても、水の生成量が多くなる高電流密度においては酸素ガス供給が妨害され、酸素ガスの拡散が律速となって、燃料電池の性能が低下することによる。このようなガス拡散体は、可逆セルに使用するのに適したものとはいえない。
【0031】
これに対し、PTFE被覆量が0.06〜1.20mg/cm2であるように製造した本発明のガス拡散体であれば、ガス拡散体の表面および細孔内において、親水性部位と疎水性部位とがバランスよく配置されているため、気体である水素および酸素と、液体である水の両方について、良好な供給および排出が同時にできるので、1000mA/cm2の高電流密度においても、燃料電池による電力変換が可能となる。中でも、実施例に見るとおり、0.29mg/cm2付近のPTFE被覆量の場合に、最も高い電力変換効率を与えるガス拡散体が実現している。
【0032】
可逆セルを水電解モードで運転した場合に、ガス拡散体へのPTFEの被覆量が水電解性能に与える影響を示すデータとして、電流密度500mA/cm2、1000mA/cm2におけるセル電圧およびエネルギー変換効率を、表2に示した。
【0033】
表2のデータによれば、PTFEの被覆量が最大の5.48mg/cm2の場合は、運転が不可能ではないが、電圧が高すぎるために、電極触媒や電解質膜の破損が懸念され、実質的な使用に耐えない。被覆量が0〜2.80mg/cm2となるように製造したガス拡散体においては、電流密度1000mA/cm2の高電流密度においても、安定した運転が可能であり、エネルギー変換効率は、PTFE被覆量が減少するにつれて、向上する結果となっている。これは、PTFE被覆量が多いほど、ガス拡散体の表面および細孔内において、疎水性の部分が増加して親水性部分が減少し、電極面、とりわけ酸素極への水の供給が不十分となり、拡散過電圧の上昇が進むことを示している。
【0034】
セル電圧が上昇すると、前述したようにセルの破損につながることから、水電解の運転を続けて行なうには、PTFEの被覆量を2.80mg/cm2以下としたガス拡散体を製造し、表面および細孔内において親水性部位と疎水性部位がバランスするようにしなければならない。PTFE被覆量2.80mg/cm2以下の範囲において、被覆量を少なくするほど、水電解に対して高い効率を示すガス拡散体を得ることができる。
【0035】
電流密度500mA/cm2および1000mA/cm2において、上記の可逆セルを、燃料電池モード−水電解モードで可逆的に運転して得られる可逆運転効率に、ガス拡散体へのPTFEの被覆量が与える影響についてしらべ、表3に示した。
【0036】
表3の結果から、PTFE被覆量が0.06〜1.17mg/cm2となるように製造したガス拡散体は、親水性部位と疎水性部位とがバランスよく配置されており、1000mA/cm2という高電流密度においても、可逆セルとして安定な性能を維持し、水電解槽および燃料電池としての運転を行ない、高い可逆運転効率を得ることができることがわかる。
【0037】
とりわけ、PTFEの被覆量を0.06〜0.29mg/cm2とすれば、親水性部位と疎水性部位が最もバランスよく配置されるため、可逆運転効率が、500mA/cm2で50%以上、1000mA/cm2でも44〜45%という高い値で運転することが可能な可逆セルが得られる。
【0038】
表 1
【0039】
表 2
【0040】
表 3
【0041】
[実施例2]
0.06mg/cm2または0.14mg/cm2のPTFEを被覆したガス拡散体をセル内に配置した可逆セルを用いて、実施例1と同様な、燃料電池と水電解槽の性能測定を3〜4回繰り返して実施し、繰り返し運転に対する安定性と、ガス拡散体に対するPTFEの適切な被覆量について検討した。表4の結果を得た。
【0042】
表4において、数値の記載がない場合は、水電解の運転は可能であったものの、燃料電池の運転が、電圧の断続的低下によって不可能であり、結果として可逆運転効率の算出が不可能であったことを示す。
【0043】
PTFE被覆量が0.06mg/cm2であるガス拡散体を配置したセルは、初期の可逆運転効率は良好であったが、1回目の繰り返し運転を実施した後には、電流密度500mA/cm2において効率が51%から37%にまで低下し、かつ、このセルにおいては、2回目以降の、電流密度1000mA/cm2における燃料電池としての運転は不可能であった。
【0044】
一方、PTFE被覆量が0.14mg/cm2であるガス拡散体を配置したセルは、1〜4回の繰り返し運転において、電流密度1000mA/cm2においても、44%から46%と、安定した可逆運転効率が得られた。
【0045】
繰り返し運転によって可逆運転効率が低下することは、水電解−燃料電池の可逆運転を連続的に行なう必要がある可逆セルにおいて、致命的な欠点である。繰り返し運転によって燃料電池性能が低下したのは、ガス拡散体の疎水性部分の機能低下や、PTFE被覆量が元来少なく、水はけがよくないために、水が大量に存在する水電解操作後の凝集水の除去が進み難いためと理解される。繰り返し運転に対するセルの安定性を維持するためには、あらかじめガス拡散体の疎水性部分を多く設けておくことが効果的で、そのためには、ガス拡散体に対するPTFE被覆量を、すくなくとも0.14mg/cm2にしておく必要があることがわかった。
【0046】
表 4
【0047】
【発明の効果】
本発明のガス拡散体、すなわち多孔質ガス拡散体を構成する繊維の表面積に関して0.06〜1.20mg/cm2のPTFEを被覆したガス拡散体を、水電解槽と燃料電池の二つの機能を有する固体高分子型の水電解−燃料電池可逆セルに使用すれば、水電解および燃料電池としての運転安定性、電力変換効率、エネルギー変換効率の向上が実現し、可逆運転効率が良好な可逆セルが得られる。たとえば電流密度500mA/cm2において、水電解−燃料電池の可逆運転効率として45%を超える可逆セルを構成することが可能である。
【0048】
とりわけ、PTFE被覆量が好ましい範囲である0.06〜0.85mg/cm2に入るようにしたガス拡散体を用いることによって、可逆セルのいっそうの高性能化を実現することができる。この場合には、可逆運転効率が、500mA/cm2で49%、1000mA/cm2でも40%を超える可逆セルが実現する。
【0049】
さらに、PTFE被覆量が、繰り返し運転性にとって好ましい範囲である0.14〜1.20mg/cm2に入るようにしたガス拡散体を用いた可逆セルでは、水電解−燃料電池の繰り返し運転において、安定した性能が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 固体高分子電解質型の水電解−燃料電池可逆セルについて、一般的な構造を説明する断面図。
【図2】 固体高分子電解質型の水電解−燃料電池可逆セルにおける、電子、水、酸素および水素のやり取りを説明する図であって、水電解運転時の状況を示す。
【図3】 固体高分子電解質型の水電解−燃料電池可逆セルにおける、電子、水、酸素および水素のやり取りを説明する図であって、燃料電池運転時の状況を示す。
【図4】 種々の量のPTFE被覆を施したガス拡散体を備えるセルにおける、燃料電池としての性能を示す電流−電圧曲線。
【図5】 種々の量のPTFE被覆を施したガス拡散体を備えるセルにおける、水電解槽としての性能を示す電流−電圧曲線。
Claims (4)
- [複極板/ガス拡散体/電極−電解質膜接合体/ガス拡散体/複極板]から構成され、水電解槽と燃料電池の二つの機能を有する固体高分子電解質型の可逆セルの構成部分である多孔質のガス拡散体において、多孔質のガス拡散体が、チタン繊維の不織布に白金のメッキを施した後、個々の繊維の表面をフッ素樹脂で被覆してあり、その被覆量が、繊維の全表面積に関して0.06〜1.20mg/cm2の範囲にあることを特徴とする多孔質ガス拡散体。
- フッ素樹脂の被覆量が0.06〜0.85mg/cm2の範囲にあって、可逆運転効率が高い可逆セルを与える請求項1の多孔質ガス拡散体。
- フッ素樹脂の被覆量が0.14〜1.20mg/cm2の範囲にあって、多数回の繰り返し運転に耐える性能が高い可逆セルを与える請求項1の多孔質ガス拡散体。
- 少なくとも1組の、[複極板/ガス拡散体/電極−電解質膜接合体/ガス拡散体/複極板]からなる構成ユニットを有する可逆セルであって、請求項1〜3のいずれかに記載した多孔質ガス拡散体を有する可逆セル。
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