JP2003313439A - 高分子ゲル固定用樹脂組成物、高分子ゲル組成物、これを用いた光学素子および調光フィルム、並びに、高分子ゲル組成物作製方法 - Google Patents

高分子ゲル固定用樹脂組成物、高分子ゲル組成物、これを用いた光学素子および調光フィルム、並びに、高分子ゲル組成物作製方法

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JP2003313439A JP2002126208A JP2002126208A JP2003313439A JP 2003313439 A JP2003313439 A JP 2003313439A JP 2002126208 A JP2002126208 A JP 2002126208A JP 2002126208 A JP2002126208 A JP 2002126208A JP 2003313439 A JP2003313439 A JP 2003313439A
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resin composition
polymer
fixing
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Hiroaki Tsutsui
浩明 筒井
Kazushirou Akashi
量磁郎 明石
Masato Mikami
正人 三上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】刺激応答性高分子ゲル、特に水素結合力の変化
を利用して体積変化する刺激応答性高分子ゲルの体積変
化特性の顕著な低下を防止することが可能な、高分子ゲ
ル固定用樹脂組成物、高分子ゲル組成物、これを用いた
光学素子および調光フィルム、並びに、高分子ゲル組成
物作製方法を提供すること。 【解決手段】1)吸脱液体を吸収・放出して体積変化す
る刺激応答性高分子ゲルを固定するための高分子ゲル固
定用樹脂組成物であって、前記高分子ゲル固定用樹脂組
成物が、少なくとも架橋部位を有する高分子を含み、且
つ、前記高分子ゲル固定用樹脂組成物の溶液が、酸性で
あることを特徴とする高分子ゲル固定用樹脂組成物。
2)少なくとも、吸脱液体を吸収・放出して体積変化す
る高分子ゲルと、少なくとも架橋部位を有する高分子を
含む高分子ゲル固定用樹脂組成物と、を含む高分子ゲル
組成物であって、前記吸脱液体が酸性であることを特徴
とする高分子ゲル組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外部刺激に応答し
て液体を吸収・放出して体積変化を生ずる高分子ゲルを
利用した高分子ゲル組成物に関するものであり、より詳
細には、高分子ゲル固定用樹脂組成物、高分子ゲル組成
物、これを用いた光学素子および調光フィルム、並び
に、高分子ゲル組成物作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、熱や電場等、外部からの刺激の変
化に対応して光の透過量を可逆的に制御するような光学
素子(調光素子)の研究開発が活発に行われている。こ
のような光学素子は、たとえば省エネ調光ガラスやプラ
イバシー調光ガラス、また、屋外広告や案内板などの大
面積の表示装置に利用される。
【0003】このような光学素子としては、例えば、特
開昭52−73957や特開昭61−7948、特開平
05−181167に開示されているように、非イオン
性の界面活性剤やLCST(下限臨界共融温度)を有す
る高分子化合物の溶液をガラスなどの基板中に封入した
調光ガラスが知られている。この調光ガラスは、内部に
封入された界面活性剤や高分子が、温度の上昇に伴い、
水溶液中から析出することにより、調光ガラス全面が白
濁することによって光を遮光するものである。しかしな
がら、このような光学素子を用いた調光装置では任意の
色に着色することが困難であったり、光透過率の変化幅
が小さいなどの問題があった。
【0004】一方、本発明者らは、吸脱液体を吸収・放
出して体積変化する刺激応答性高分子ゲル(以下、「刺
激応答性高分子ゲル」あるいは「高分子ゲル」と略す場
合がある)を樹脂組成物中に分散させた高分子ゲル組成
物を利用した光学素子(特開平11−228850号公
報)を提案した。この光学素子は、熱や光、電流や電場
等の刺激を高分子ゲルに付与することによって大きく光
透過率を変化させることができるものであり、この光学
素子を上述したような調光ガラスや表示装置等として使
用できることができる。
【0005】刺激応答性高分子ゲルを樹脂組成物中に分
散した高分子ゲル組成物、あるいは、刺激応答性高分子
ゲルを利用した光学素子は、使用する刺激応答性高分子
ゲルを選択することにより、熱、光、電場等の多様な刺
激に対して応答(すなわち、体積変化による光透過率の
変化)することが可能である。また、前記光学素子を用
いて、大面積化が容易で、低コストであり、且つ、光透
過率の変化幅が大きい調光ガラスや表示装置を作製でき
る。
【0006】一方、樹脂組成物中に刺激応答性高分子ゲ
ルを分散させた場合、刺激応答性高分子ゲルが本来有す
る体積変化特性(体積変化量)は、ある程度低下する傾
向にあるが、光学素子として利用する場合、体積変化量
が多少低下しても実用上、特に問題とはならない。しか
しながら、このような樹脂組成物中に刺激応答性高分子
ゲルを分散させた高分子ゲル組成物を利用した光学素子
においては、使用する刺激応答性高分子ゲルの種類によ
り、十分な光学濃度変化(光透過率の変化幅)が得られ
なくなる程に、樹脂組成物中に分散させた刺激応答性高
分子ゲルの体積変化特性が顕著に低下する場合があっ
た。特に、水素結合力の変化を利用して吸脱液体を吸収
・放出して体積変化する刺激応答性高分子ゲルを利用す
ることは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、刺
激応答性高分子ゲル、特に水素結合力の変化を利用して
体積変化する刺激応答性高分子ゲルの体積変化特性の顕
著な低下を防止することが可能な、高分子ゲル固定用樹
脂組成物、高分子ゲル組成物、これを用いた光学素子お
よび調光フィルム、並びに、高分子ゲル組成物作製方法
を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題は以下の本発明
により達成される。すなわち、本発明は、 <1> 吸脱液体を吸収・放出して体積変化する刺激応
答性高分子ゲルを固定するための高分子ゲル固定用樹脂
組成物であって、前記高分子ゲル固定用樹脂組成物が、
少なくとも架橋部位を有する高分子を含み、且つ、前記
高分子ゲル固定用樹脂組成物の溶液が、酸性であること
を特徴とする高分子ゲル固定用樹脂組成物である。
【0009】<2> 酸性化合物を含むことを特徴とす
る<1>に記載の高分子ゲル固定用樹脂組成物である。
【0010】<3> 前記酸性化合物が、酸性高分子を
含むことを特徴とする<2>に記載の高分子ゲル固定用
樹脂組成物である。
【0011】<4> 前記溶液のpHが、1.5〜5.
5の範囲内であることを特徴とする<1>〜<3>のい
ずれか1つに記載の高分子ゲル固定用樹脂組成物であ
る。
【0012】<5> 前記架橋部位を有する高分子が、
酸性高分子を含むことを特徴とする<1>〜<4>のい
ずれか1つに記載の高分子ゲル固定用樹脂組成物であ
る。
【0013】<6> 前記酸性高分子が、その分子内に
少なくとも1つ以上のカルボキシル基を含むことを特徴
とする<3>または<5>に記載の高分子ゲル固定用樹
脂組成物である。
【0014】<7> 前記酸性高分子が、(メタ)アク
リル酸構造を繰り返し単位構造として含む重合体である
ことを特徴とする<3>、<5>または<6>のいずれ
か1つに記載の高分子ゲル固定用樹脂組成物である。
【0015】<8> 少なくとも、吸脱液体を吸収・放
出して体積変化する刺激応答性高分子ゲルと、請求項1
〜7のいずれか1つに記載の高分子ゲル固定用樹脂組成
物と、を含むことを特徴とする高分子ゲル組成物であ
る。
【0016】<9> 少なくとも、吸脱液体を吸収・放
出して体積変化する高分子ゲルと、少なくとも架橋部位
を有する高分子を含む高分子ゲル固定用樹脂組成物と、
を含む高分子ゲル組成物であって、前記吸脱液体が、酸
性であることを特徴とする高分子ゲル組成物である。
【0017】<10> 前記刺激応答性高分子ゲルが、
水素結合力の変化を利用することにより吸脱液体を吸収
・放出して体積変化することを特徴とする<8>または
<9>に記載の高分子ゲル組成物である。
【0018】<11> 前記刺激応答性高分子ゲルが、
調光用材料を含むことを特徴とする<8>〜<10>の
いずれか1つに記載の高分子ゲル組成物である。
【0019】<12> <8>〜<11>のいずれか1
つに記載の高分子ゲル組成物を含むことを特徴とする光
学素子である。
【0020】<13> <12>に記載の光学素子を含
むことを特徴とする調光フィルムである。
【0021】<14> 少なくとも前記高分子ゲル固定
用樹脂組成物中に前記刺激応答性高分子ゲルを分散させ
たマトリックス形成用溶液を、硬化手段を用いて硬化さ
せることを特徴とする高分子ゲル組成物作製方法であ
る。
【0022】<15> 前記硬化手段が、前記マトリッ
クス形成用溶液に光を照射する方法であることを特徴と
する<14>に記載の高分子ゲル組成物作製方法であ
る。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に、第1の本発明に係わる高
分子ゲル組成物、および、第2の本発明による高分子ゲ
ル組成物の基本的構成を説明し、この構成を前提とし
て、第1の本発明、第2の本発明、高分子ゲル組成物作
製方法、および、光学素子・調光素子、をこの順に説明
する。
【0024】(高分子ゲル組成物の基本的構成)以下
に、第1の本発明に係わる高分子ゲル組成物および第2
の本発明による高分子ゲル組成物高分子ゲル組成物の基
本的構成について説明するが、本発明は、この基本的構
成のみに限定されるものではない。図1は、第1の本発
明に係わる高分子ゲル組成物および第2の本発明による
高分子ゲル組成物の構成例を示す模式断面図であり、具
体的にはフィルム状に形成された高分子ゲル組成物の模
式断面図を示したものである。
【0025】図1において、符号1は、高分子ゲルを表
し、符号2(符号2aおよび符号2b)は、硬化後の高
分子ゲル固定用樹脂組成物(以下、「硬化樹脂組成物」
と略す場合がある)を表す。また、符号3は、高分子ゲ
ル組成物を表し、高分子ゲル1、および、硬化樹脂組成
物2からなる。図1中、高分子ゲル1は、硬化樹脂組成
物2中に分散した状態で固定されている。また、少なく
とも、高分子ゲル1、および、高分子ゲル1に隣接する
領域の硬化樹脂組成物2aは、不図示の溶液を含んでお
り、前記溶液は、高分子ゲル1内部の領域と、硬化樹脂
組成物2aの領域と、の間で、その溶液組成が均一に保
たれるように移動可能である。また、高分子ゲル1に隣
接する領域以外の硬化樹脂組成物2bが、不図示の溶液
を含んでいてもよい。なお、以下の本発明の説明におい
て、少なくとも、高分子ゲル1および硬化樹脂組成物2
aの領域内に含まれる溶液を吸脱液体と称す場合があ
る。
【0026】但し、高分子ゲル1および硬化樹脂組成物
2aの領域に存在する溶液と、硬化樹脂組成物2bの領
域に存在する溶液と、が前者および後者の領域間で相互
に移動可能であり、実質的に同一の組成からなるもので
あってよく、前者および後者の領域間で実質的に相互に
移動不可能であり、実質的に同一あるいは異なる組成か
らなるものであってもよい。
【0027】次に、図1に示す高分子ゲル組成物3中の
高分子ゲル1が、膨潤状態から収縮状態、あるいは、収
縮状態から膨潤状態、へと変化する場合について説明す
る。図2は、図1に示す高分子ゲル組成物中の高分子ゲ
ルが膨潤および収縮した状態を示した模式断面図であ
り、図2(a)は、高分子ゲルが膨潤した状態を表し、
図2(b)は、高分子ゲルが収縮した状態を表す。
【0028】高分子ゲル1の膨潤状態から収縮状態、あ
るいは、収縮状態から膨潤状態への体積変化は、高分子
ゲル1への不図示の外部刺激の付与によって起こる。但
し、この外部刺激は、熱、光、電場、磁場等の高分子ゲ
ル1を体積変化させるための何らかのエネルギーであ
り、該エネルギーの種類は、高分子ゲル1の種類に応じ
て選択される。
【0029】高分子ゲル1の膨潤状態から収縮状態への
体積変化は、外部刺激が付与された際に高分子ゲル1内
部に含まれる吸脱液体が、高分子ゲル1外部に放出する
ことにより起こる。また、高分子ゲル1の収縮状態から
膨潤状態への体積変化は、外部刺激が付与された際に、
高分子ゲル1と隣接する領域の吸脱液体を吸収すること
によりことにより起こる。
【0030】なお、本発明において、高分子ゲル組成物
3は、高分子ゲル1を高分子ゲル固定用樹脂組成物中に
分散させた後に、前記高分子ゲル固定用樹脂組成物を硬
化させ、硬化樹脂組成物2とすることにより作製される
ものであるが、硬化樹脂組成物2は、高分子ゲル1を固
定することができるように非流動性であることが必要で
ある。但し、本発明において「高分子ゲルを固定する」
とは、高分子ゲル1が、高分子ゲル組成物3中におい
て、ほぼ一定の位置に固定された状態を意味する。
【0031】また、「非流動性」とは、流動性が失われ
た状態であり、上記したように高分子ゲル1をほぼ一定
の位置に安定して固定できる程度に流動性が失われた状
態であれば特に限定されず、例えば硬化樹脂組成物2
が、ゲル状や、多少のせん断力を加えても流動しない高
粘度の液体(半固体)状態であってもよい。
【0032】以下に本発明を、上記に説明した高分子ゲ
ル組成物の基本的構成を前提として説明する。なお、以
下の説明において図1および図2の説明に用いた用語に
付された符号は省略する場合がある。
【0033】(第1の本発明)第1の本発明は、吸脱液
体を吸収・放出して体積変化する刺激応答性高分子ゲル
を固定するための高分子ゲル固定用樹脂組成物であっ
て、前記高分子ゲル固定用樹脂組成物が、少なくとも架
橋部位を有する高分子を含み、且つ、前記高分子ゲル固
定用樹脂組成物の溶液が、酸性であることを特徴とす
る。
【0034】従って、第1の本発明によれば、刺激応答
性高分子ゲル、特に水素結合力の変化を利用して体積変
化する刺激応答性高分子ゲルの体積変化特性の顕著な低
下を防止することが可能な、高分子ゲル固定用樹脂組成
物を提供することができる。
【0035】第1の本発明の高分子ゲル固定用樹脂組成
物は、少なくとも架橋部位を有する高分子を含むため、
前記架橋部位を利用して前記高分子ゲル固定用樹脂組成
物を硬化させることができ、高分子ゲル組成物中におい
て高分子ゲルを固定することができる。
【0036】−架橋部位を有する高分子− 前記架橋部位を有する高分子としては、後述する天然高
分子および/または合成高分子に、架橋結合の形成が可
能な構造を有する高分子からなる誘導体(架橋部位)を
導入したものを用いることができる。
【0037】なお、前記天然高分子としては、公知の天
然高分子であれば特に限定されないが、例えば、アガロ
ース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリ
ウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソ
リケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒド
ロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラ
ギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメ
チルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹
フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウン
ゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン
硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、
ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマ
ンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デ
ンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセル
ロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、
ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデ
ンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカス
トビーンガム等が挙げられる。
【0038】また、前記合成高分子としては、公知の合
成高分子であれば特に限定されないが、例えば、ポリ
(メタ)アクリル酸およびそのエステル、アクリルアミ
ド、N−アルキル置換アクリルアミド、ポリビニルアル
コールおよびその誘導体、ポリスチレンスルホン酸、ポ
リビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリプロピ
レンオキシド、ポリエチレングリコール等のホモポリマ
ーが挙げられる。但し、これらのホモポリマーの重合に
用いられるモノマーを、2種以上含む共重合体を用いる
こともできる。
【0039】このような高分子としては、架橋結合の形
成が可能な構造を有するものであれば特に限定されない
が、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ
(メタ)アクリル酸誘導体が好ましく、特に好ましくは
ポリ(メタ)アクリル酸誘導体である。なお、本発明に
おいて、例えば、「(メタ)アクリル」なる記述は、
「アクリル」および/または「メタアクリル」を意味す
る。これら架橋部位を有する高分子の重量平均分子量
は、1×103〜1×107の範囲内が好ましく、1×1
4〜2×106の範囲内がより好ましい。
【0040】架橋部位としてはラジカル重合性のビニル
基、(メタ)アクリロイル基、シンナミル基、スチバゾ
リル基などの二重結合部分を有するものをエステル化、
アミド化、エーテル化等の反応によって導入したものが
好ましく用いられるがこれらに限定されるものではな
い。これらの架橋部位を有する高分子を含む高分子ゲル
固定用樹脂組成物の硬化は、高分子ゲル固定用樹脂組成
物中に光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤等を予め添
加し、これに光照射または加熱することによって発生す
るラジカル反応を利用して実施される。あるいは、架橋
部位が、シンナミル基やスチバゾリル基等のようにラジ
カル開始剤が共存しなくとも光二量化する架橋部位であ
る場合には、単に光照射することにより実施される。
【0041】上記に説明した架橋部位を有する高分子
は、高分子ゲル固定用樹脂組成物の作製に際しては、水
などの溶媒に溶解した溶液として使用される。用いる溶
媒としては水がもっとも好ましいが、必要に応じて水と
相溶可能な親水性溶媒を用いることもできる。なお、こ
の架橋部位を有する高分子を溶解した溶液には、ポリビ
ニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘
導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドや
これら高分子を含む共重合体を添加することも好まし
い。
【0042】前記親水性溶媒としては、たとえば、メタ
ノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレン
グリコール、グリセリンなどの低級アルコール、アセト
ンやメチルエチルケトンなどのケトン類、THF、1,
4−ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコー
ルジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルなど
のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセト
アミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、尿素
等が挙げられる。これらのうち、特にメチルアルコー
ル、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルア
ルコール、エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどアルコ
ール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド
などが好ましい。
【0043】−樹脂組成物溶液− 一方、第1の本発明において、高分子ゲル固定用樹脂組
成物の溶液は、酸性であることが必要である。このた
め、高分子ゲル固定用樹脂組成物を硬化後の硬化樹脂組
成物に含まれる溶液、すなわち、図1中の符号2aで示
される領域の硬化樹脂組成物に含まれる溶液が酸性に保
たれるため、吸脱液体を酸性とすることができ、高分子
ゲルの体積変化特性の顕著な低下を防止することができ
る。
【0044】なお、本発明において「高分子ゲル固定用
樹脂組成物の溶液」とは、高分子ゲル組成物の作製に際
し、高分子ゲル固定用樹脂組成物が刺激応答性高分子ゲ
ルと混合される以前において、前記高分子ゲル固定用樹
脂組成物中に含まれる溶液、および/または、少なくと
も前記高分子ゲル固定用樹脂組成物を含む溶液(以下、
後者を「樹脂組成物溶液」と略す)を意味する。樹脂組
成物溶液を酸性とするためには、高分子ゲル固定用樹脂
組成物および/または樹脂組成物溶液が、酸性化合物を
含むことが好ましい。
【0045】−酸性化合物− 本発明に用いられる酸性化合物としては、例えば、無機
酸、有機酸、酸性高分子などを挙げることができる。前
記無機酸としては、公知の無機酸であれば特に限定され
ないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等を挙げる
ことができる。また、前記有機酸としては、公知の有機
酸であれば特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピ
オン酸、酪酸、吉草酸、安息香酸、フェニル酢酸、アク
リル酸、マレイン酸、フマル酸、ジメチル硫酸、ジエチ
ル硫酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸等が挙げら
れる。これら酸性化合物は、2種類以上を用いてもよ
い。なお、これら酸性化合物の中でも、塩酸、リン酸や
酢酸が好ましく用いられる。
【0046】また、前記酸性高分子としては、その分子
鎖中にカルボキシル基、スルホン基などの酸性を示す官
能基を含む高分子であれば特に限定されず、例えば、ポ
リビニルスルホン酸、ポリリン酸、ポリ(メタ)アクリ
ル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリマレイン酸、ポリ
フマル酸、またこれら酸性高分子の繰り返し単位構造を
少なくとも含む共重合体等が挙げられる。
【0047】これら酸性高分子の中でも、その分子内に
少なくとも1つ以上のカルボキシル基を含むものが好ま
しく、このような酸性高分子としては、例えば、カルボ
キシル基を含むポリ(メタ)アクリル酸、ポリ−L−グ
ルタミン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリ(メ
タ)アクリル酸を含む重合体や共重合体等が好ましく用
いられる。特に、(メタ)アクリル酸構造を繰り返し単
位構造として含む酸性高分子が好ましい。これら酸性高
分子の分子量は、重量平均分子量で、500〜3000
000の範囲内が好ましく、1000〜100000の
範囲内がより好ましい。
【0048】樹脂組成物溶液に含まれる酸性化合物の含
有量は、高分子ゲルの膨潤状態と収縮状態との体積変化
の繰り返し特性維持するために必要な量以上に調整さ
れ、さらに、所望する高分子ゲルの体積変化量、相転移
点が得られるように調整されることが好ましい。前記含
有量は、樹脂組成物溶液のpHが、好ましくは1.5〜
5.5の範囲内、より好ましくは2.0〜4.5の範囲
内となるように調整される。pHが、5.5よりも大き
い場合、あるいは、1.5よりも小さい場合には、十分
な体積変化量が得られない場合がある。また、樹脂組成
物溶液中に含まれる酸性化合物の濃度は、好ましくは
0.001〜50重量%の範囲内、より好ましくは0.
01〜30重量%の範囲内となるように調整されること
が好ましい。
【0049】なお、前記相転移点とは、熱や光等の何ら
かの外部刺激の付与により刺激応答性高分子ゲルが、膨
潤状態から収縮状態へ、あるいは、収縮状態から膨潤状
態へと体積変化する際の外部刺激の閾値を意味する。例
えば、刺激応答性高分子ゲルが、温度変化に応答して体
積変化する場合には、前記相転移点とは相転移温度を意
味する。
【0050】−架橋部位を有する酸性高分子− 前記樹脂組成物溶液を酸性とするために、架橋部位を有
する高分子として酸性高分子(以下、「架橋部位を有す
る酸性高分子」と略す)を用いることも好ましい。架橋
部位を有する酸性高分子の例としては、既述したような
架橋部位を有する高分子中にカルボキシル基やスルホン
基などの酸性官能基をもつもの、例えば、ポリビニルス
ルホン酸、ポリリン酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ
−L−グルタミン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、
またこれらを少なくとも含む共重合体等が挙げられる。
これらの中でもさらに、例示した酸性高分子が好まし
い。さらに好ましくは、繰り返し単位中にカルボキシル
基を含むポリ(メタ)アクリル酸、ポリ−L−グルタミ
ン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリ(メタ)ア
クリル酸を含む共重合体等が好ましく用いられる。中で
もポリ(メタ)アクリル酸は特に好ましい。
【0051】架橋部位としてはラジカル重合性のビニル
基、(メタ)アクリロイル基、シンナミル基などの二重
結合部分を有するものをエステル化、アミド化、エーテ
ル化、アセタール化等の反応によって導入する方法や、
酸性高分子を合成する際に共重合等によってこれらの架
橋部位を導入する方法が好ましく用いられるがこれらに
限定されるものではない。これらの架橋部位を有する酸
性高分子を含む高分子ゲル固定用樹脂組成物の硬化は、
高分子ゲル固定用樹脂組成物中に光ラジカル開始剤、熱
ラジカル開始剤等を予め添加し、これに光照射または加
熱することによって発生するラジカル反応を利用して実
施される。
【0052】第1の本発明に用いられる樹脂組成物溶液
は、架橋部分を有する高分子を固形分で0.5〜40重
量%の範囲内で含むことが好ましく、1.5〜20重量
%の範囲内で含むことがより好ましい。固形分の濃度
が、0.5重量%よりも低くなると高分子ゲル固定用樹
脂組成物を十分に硬化することができなくなり、高分子
ゲルを固定することが困難になる場合がある。一方、固
形分の濃度が、40重量%よりも高くなると、後述する
刺激応答性高分子ゲルの体積変化量が十分に得られなく
なる場合がある。
【0053】第1の本発明に用いられる樹脂組成物溶液
には、上記の成分のほかに、樹脂組成物溶液の酸性度を
調整する目的で塩基性化合物を添加しても良い。また、
必要に応じて相溶性のある各種添加剤、たとえば、着色
剤、可塑剤、界面活性剤、安定剤、基板との密着性を高
めるためのカップリング剤等を適宜、添加、配合するこ
とができる。
【0054】上記に説明したような第1の本発明による
高分子ゲル固定用樹脂組成物と、刺激応答性高分子ゲル
と、を用いて高分子ゲル組成物を作製すれば、刺激応答
性高分子ゲルの体積変化特性の顕著な低下を防止するこ
とが可能な、高分子ゲル組成物を得ることができる。な
お、第1の本発明を利用して作製される高分子ゲル組成
物およびその作製方法については後述する。
【0055】(第2の本発明)第2の本発明は、少なく
とも、吸脱液体を吸収・放出して体積変化する高分子ゲ
ルと、少なくとも架橋部位を有する高分子を含む高分子
ゲル固定用樹脂組成物と、を含む高分子ゲル組成物であ
って、前記吸脱液体が、酸性であることを特徴とする高
分子ゲル組成物。
【0056】従って、第2の本発明によれば、刺激応答
性高分子ゲル、特に水素結合力の変化を利用して体積変
化する刺激応答性高分子ゲルの体積変化特性の顕著な低
下を防止することが可能な高分子ゲル組成物を提供する
ことができる。
【0057】第2の本発明の高分子ゲル組成物は、該高
分子ゲル組成物に含まれる吸脱液体が酸性であることが
必要である。前記吸脱液体を酸性とするには、硬化処理
前の高分子ゲル組成物が酸性であればよく、下記〜
に示す少なくともいずれか1つあるいは2つ以上を組み
合わせて利用することにより硬化処理前の高分子ゲル組
成物を酸性とすることができる。
【0058】前記高分子ゲル固定用樹脂組成物とし
て、第1の本発明の高分子ゲル固定用樹脂組成物を用い
る。 高分子ゲルを含む分散液が、酸性であるものを用い
る。 硬化処理前の高分子ゲル組成物に、既述した酸性化合
物を添加する。 なお、前記項の場合には、高分子ゲルを含む分散液を
調整する際に、既述した酸性化合物を添加することによ
り容易に得ることができる。
【0059】なお、上記〜のいずれか1つあるいは
2つ以上を組合せて利用し、硬化処理前の前記硬化処理
前の高分子ゲル組成物を酸性とする場合には、高分子ゲ
ル固定用樹脂組成物および高分子ゲル等を混合した後の
硬化処理前の高分子ゲル組成物のpHが、1.5〜5.
5の範囲にあることが好ましく、2.0〜4.5の範囲
にあることがさらに好ましい。pHが、5.5よりも大
きい場合、あるいは、1.5よりも小さい場合には、十
分な体積変化量が得られない場合がある。
【0060】(高分子ゲル組成物およびその作製方法)
第1の本発明による高分子ゲル固定用樹脂組成物を用い
た高分子ゲル組成物、および、第2の本発明による高分
子ゲル組成物は、少なくとも高分子ゲル固定用樹脂組成
物中に刺激応答性高分子ゲルを分散させたマトリックス
形成用溶液(硬化処理前の高分子ゲル組成物)を、硬化
手段を用いて硬化させることにより作製することができ
る。このような作製方法を経ることにより、前記マトリ
ックス形成用溶液の高分子ゲル固定用樹脂組成物部分が
硬化し、流動性を失うことにより刺激応答性高分子ゲル
が高分子ゲル組成物中に固定される。なお、前記マトリ
ックス形成用溶液の形状は特に限定されないが、光学素
子として利用するにはフィルム状であることが好まし
い。
【0061】これらの高分子ゲル組成物は、少なくとも
上記したように作製されるものであれば、その作製方法
は特に限定されないが、具体的には以下に示すように作
製することができる。まず、第1の本発明および/また
は公知の高分子ゲル固定用樹脂組成物中に、刺激応答性
高分子ゲルを分散させた分散液(硬化処理前の高分子ゲ
ル組成物)を調整する。次に、この分散液を基材上に塗
布することにより形成された塗布層全体を、熱や光など
の硬化手段を用いて硬化することにより刺激応答性高分
子ゲルが硬化樹脂組成物中に固定された高分子ゲル組成
物を得ることができる。なお、前記硬化方法としては、
光を照射する方法が、前記塗布層中に含まれる液体を蒸
発させることなく短時間で硬化可能なため特に好まし
い。また、微粒子状の刺激応答性高分子ゲルを用いる場
合には、分散液に界面活性剤等の分散剤を添加し、前記
刺激応答性高分子ゲルを前記分散液中に良く分散させて
おくことが好ましい。
【0062】分散液の塗布方法としては、公知の塗布方
法を用いることができ、例えば、ロールコーティング
法、グラビアコーティング法、キャストコーティング
法、スプレーコーティング法、リバースコーティング
法、ディップコーティング法、ブレードコーティング法
などを用いることができるが、これらに限定されるもの
ではない。
【0063】(刺激応答性高分子ゲル)本発明に使用さ
れる刺激応答性高分子ゲルは、外部刺激の付与により吸
脱液体を吸収・放出して体積変化するものであれば公知
の刺激応答性高分子ゲルを用いることができ、水素結合
力の変化を利用して吸脱液体を吸収・放出して体積変化
する刺激応答性高分子ゲルであることが好ましい。なお
「水素結合力の変化」とは、具体的には、刺激応答性高
分子ゲル内の水素結合の形成/解離を意味するものであ
る。また、前記外部刺激は、熱、光、電場等の物理的お
よび/または化学的な刺激を意味し、刺激応答性高分子
ゲルに応じて選択されるものであるが、外部刺激の種類
としては、熱(温度変化)であることが好ましい。
【0064】上記したような水素結合力の変化を利用し
て吸脱液体を吸収・放出して体積変化する刺激応答性高
分子ゲルとしては、水素結合力の変化を利用するもので
あれば特に限定されないが、少なくとも水素結合性基を
有する高分子のIPNゲル(相互侵入網目構造体)や、
少なくとも水素結合性基を有する高分子のブロック共重
合体ゲルなどが好ましい。
【0065】水素結合性基を有する高分子としては、繰
り返し単位中に、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシ
ル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アミド基、エステル
基、エチレンオキシド等を含むものである。例示すれ
ば、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基などを含
むポリビニルスルホン酸、ポリリン酸、ポリ(メタ)ア
クリル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリマレイン酸、
ポリフマル酸等の酸性高分子、アミノ基を有するポリビ
ニルアミンやポリエチレンイミン、ポリ−L−リシン、
ポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウムクロライ
ド)、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロ
ライド)、その他ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)
アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、
ポリエチレンオキシドや、これらを含む共重合体などが
挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】少なくとも水素結合性基を有する高分子の
IPNゲルの具体例としては、ポリ(メタ)アクリルア
ミドあるいはその誘導体の架橋体とポリ(メタ)アクリ
ル酸の架橋体とからなるIPN体およびその部分中和物
(アクリル酸単位を部分的に塩としたもの)、(メタ)
アクリルアミドあるいはその誘導体を含む共重合体の架
橋体と(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体お
よびその部分中和物、ポリ(メタ)アクリルアミドある
いはその誘導体の架橋体とポリマレイン酸などの架橋体
とからなるIPN体およびその部分中和物(アクリル酸
単位を部分的に塩としたもの)、ポリ(メタ)アクリル
アミドあるいはその誘導体を含む共重合体の架橋体とポ
リマレイン酸の架橋体とからなるIPN体およびその部
分中和物(アクリル酸単位を部分的に塩としたもの)、
ポリ(メタ)アクリルアミドあるいはその誘導体の架橋
体とポリフマル酸なの架橋体とからなるIPN体および
その部分中和物(アクリル酸単位を部分的に塩としたも
の)、ポリ(メタ)アクリルアミドあるいはその誘導体
を含む共重合体の架橋体とポリフマル酸なの架橋体とか
らなるIPN体およびその部分中和物(アクリル酸単位
を部分的に塩としたもの)、などが挙げられるが、これ
らに限定されるものではない。
【0067】少なくとも水素結合性基を有する高分子の
ブロック共重合体ゲルの具体例としては、少なくともポ
リ(メタ)アクリルアミドあるいはその誘導体とポリ
(メタ)アクリル酸を含む共重合体からなる架橋体、ポ
リ(メタ)アクリルアミドあるいはその誘導体とポリマ
レイン酸を含む共重合体からなる架橋体、ポリ(メタ)
アクリルアミドあるいはその誘導体とポリフマル酸を含
む共重合体からなる架橋体等が挙げられるが、これらに
限定されるものではない。
【0068】さらに、温度変化に応じて複数の相転移温
度を示す刺激応答性高分子ゲルも好ましく使用できる。
このようなゲルとしては例えば、ポリ[N−イソプロピ
ルアクリルアミド]などのポリ[N−アルキル置換(メ
タ)アクリルアミド]の架橋体とポリ(メタ)アクリル
酸の架橋体とのIPN体などが挙げられる。これらのゲ
ルは、温度上昇にともない膨潤−収縮−膨潤という2つ
の相転移温度を示すことが知られている。
【0069】刺激応答性高分子ゲルの体積変化量は大き
いものが調光特性上好ましく、膨潤時および収縮時の体
積比(膨潤時体積/収縮時体積)が5以上、好ましくは
10以上、より好ましくは15以上のものである。
【0070】また、体積変化を示す温度(相転移温度)
は吸脱液体に水溶性の有機化合物や酸性化合物や塩基性
化合物を添加することで制御が可能である。これ以外に
も、高分子ゲルの構造、組成により種々の設計も可能で
ある。なお、好ましい相転移温度の範囲は−30℃〜3
00℃の範囲から選択され、特に好ましくは−10℃か
ら100℃の範囲である。
【0071】刺激応答性高分子ゲルは、それ自身でも体
積変化にともない光散乱性が変化するという調光性能を
示すが、より大きな調光特性や色変化を発現するため
は、刺激応答性高分子ゲルが調光材料を含むことが好ま
しい。
【0072】−調光用材料− 前記調光用材料としては、染料、顔料や光散乱材などが
挙げられる。また調光用材料は刺激応答性高分子ゲルの
内部および/または表面に物理的あるいは化学的に固定
化されることが好ましい。染料の好適な具体例として
は、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シ
アン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ
染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロ
シアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染
料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキ
ノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベ
リノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いもの
が望ましい。例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、
8、11、12、24、26、27、28、33、3
9、44、50、58、85、86、87、88、8
9、98、157、C.I.アシッドイエロー1、3、
7、11、17、19、23、25、29、38、4
4、79、127、144、245、C.I.ベイシッ
クイエロー1、2、11、34、C.I.フードイエロ
ー4、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.ソ
ルベントイエロー6、9、17、31、35、100、
102、103、105、C.I.ダイレクトレッド
1、2、4、9、11、13、17、20、23、2
4、28、31、33、37、39、44、46、6
2、63、75、79、80、81、83、84、8
9、95、99、113、197、201、218、2
20、224、225、226、227、228、22
9、230、231、C.I.アシッドレッド1、6、
8、9、13、14、18、26、27、35、37、
42、52、82、85、87、89、92、97、1
06、111、114、115、118、134、15
8、186、249、254、289、C.I.ベイシ
ックレッド1、2、9、12、14、17、18、3
7、C.I.フードレッド14、C.I.リアクティブ
レッド23、180、C.I.ソルベントレッド5、1
6、17、18、19、22、23、143、145、
146、149、150、151、157、158、
C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、2
5、41、71、76、78、86、87、90、9
8、163、165、199、202、C.I.アシッ
ドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、
41、43、45、78、80、82、92、93、1
27、249、C.I.ベイシックブルー1、3、5、
7、9、22、24、25、26、28、29、C.
I.フードブルー2、C.I.ソルベントブルー22、
63、78、83〜86、191、194、195、1
04、C.I.ダイレクトブラック2、7、19、2
2、24、32、38、51、56、63、71、7
4、75、77、108、154、168、171、
C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、2
9、31、44、48、50、52、94、C.I.ベ
イシックブラック2、8、C.I.フードブラック1、
2、C.I.リアクティブブラック31、C.I.フー
ドバイオレット2、C.I.ソルベントバイオレット3
1、33、37、C.I.ソルベントグリーン24、2
5、C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられ
る。これらの染料は、単独で使用してもよく、さもなけ
れば所望とする色を得るために混合して使用してもよ
い。
【0073】また、染料を高分子ゲルに固定するため
に、不飽和二重結合基などの重合可能な基を有した構造
の染料や高分子ゲルと反応可能ないわゆる反応性染料な
どが好ましく使用される。また、高分子ゲル中に含有さ
せる染料の好ましい濃度は、3重量%から50重量%の
範囲であり、特に好ましくは5重量%から30重量%の
範囲である。このように染料濃度は少なくとも高分子ゲ
ルの乾燥あるいは収縮状態において飽和吸収濃度以上で
あることが望ましい。ここで、飽和吸収濃度以上とは、
特定の光路長のもとにおける染料濃度と光学濃度(ある
いは光吸収量)の関係が一次直線の関係から大きく乖離
するような高い染料濃度の領域を示す。
【0074】一方、顔料および光散乱材の好適な具体例
としては、黒色顔料であるブロンズ粉、チタンブラッ
ク、各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファー
ネスブラック等)、白色顔料である酸化チタン、シリカ
などの金属酸化物、炭酸カルシウムや金属紛などの光散
乱材やカラー顔料である例えば、フタロシアニン系のシ
アン顔料、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系
のマゼンタ顔料、あるいはこの他にもアントラキノン
系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナク
リドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン
系、キナクリドン系、アリルアミド系などの各種顔料や
光散乱材を挙げることができる。
【0075】例えば、イエロー系顔料としては、縮合ア
ゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化
合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合
物に代表される化合物が用いられる。より詳細には、
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、
17、62、74、83、93、94、95、109、
110、111、128、129、147、168等が
好適に用いられる。
【0076】またマゼンタ系顔料としては、縮合アゾ化
合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、
キナクリドン化合物、レーキ顔料、ナフトール化合物、
ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリ
レン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグ
メントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、4
8;3、48;4、57;1、81;1、144、14
6、166、169、177、184、185、20
2、206、220、221、254が特に好ましい。
【0077】シアン系顔料としては、銅フタロシアニン
化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染
料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔
料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、
15:1、15:2、15;3、15:4、60、6
2、66等が特に好適に利用できる。
【0078】また、使用する顔料や光散乱材の粒径は、
1次粒子の平均粒径で0.001μm〜1μmのものが
好ましく、特に0.01μm〜0.5μmのものが好ま
しい。粒径が0.01μm以下では、高分子ゲル中に含
まれる顔料や光散乱材の流出が起こりやすくなる場合が
あり、0.5μm以上では発色特性が悪くなる場合があ
る。
【0079】上記したような高分子ゲル中に含まれる顔
料や光散乱材の流出は、確実に防止されることが好まし
い。そのためには、高分子ゲルの架橋密度を最適化して
顔料や光散乱材を高分子ゲルの網目構造中に物理的に閉
じ込めること、高分子ゲルとの電気的、イオン的、その
他物理的な相互作用が高い顔料や光散乱材を用いるこ
と、表面を化学修飾した顔料や光散乱材を用いることな
どが好ましい。
【0080】例えば、表面を化学修飾した顔料や光散乱
材としては、表面にビニル基などの不飽和基や不対電子
(ラジカル)などの高分子ゲルと化学結合する基を導入
したものや、高分子材料をグラフト結合したものなどが
挙げられる。
【0081】高分子ゲル中に含有される顔料や光散乱材
の量は、染料と同様に少なくとも液体を含まない状態の
高分子ゲル中において飽和吸収濃度以上(あるいは飽和
光散乱濃度以上)の濃度が好ましい。
【0082】飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃
度以上)にするためには、顔料や光散乱材の光吸収係数
や光散乱係数にも依存するが、一般的には3重量%〜9
5重量%の範囲が好ましく、より好ましくは5重量%〜
80重量%の範囲である。顔料(あるいは光散乱材)の
濃度が3重量%以下であると、飽和吸収濃度以上(ある
いは飽和光散乱濃度以上)とはならず高分子ゲルの体積
変化にともなう調光特性が得られない。一方、濃度が9
5重量%以上の場合は高分子ゲルの応答速度や体積変化
量が低下してしまう恐れがある。
【0083】高分子ゲル組成物中に含まれる高分子ゲル
固定用樹脂組成物と刺激応答性高分子ゲルとの組成比は
その重量比[(高分子ゲル固定用樹脂組成物+液体)/
(刺激応答性高分子ゲル+液体)]で、1/30〜30
/1の範囲内であることが好ましい。この範囲を超える
と所望の光学特性や、高分子ゲル組成物の物理的強度が
得られないことがある。さらに、前記重量比は、1/1
0〜10/1の範囲内がより好ましい。なお、前記重量
比を表す式中の「液体」とは、高分子ゲル組成物中に含
まれる全ての液体を意味する。
【0084】(高分子ゲル組成物の具体的構成・動作)
上記したような高分子ゲル組成物の具体的な構成の一例
について、既述した図1を利用して以下に説明する。図
1に示したようなフィルム状に形成された高分子ゲル組
成物3の厚みは特に限定されないが、1μm〜3mmの
範囲内が好ましく、20μm〜1000μmの範囲内が
より好ましい。厚みが、1μmよりも薄くなると機械的
な強度が弱くなる場合や、厚み方向の光路長が短いため
に所望の光学濃度が得られないなどの問題が生じる場合
があり、3mmよりも厚くなると高分子ゲル組成物3中
に含まれる刺激応答性高分子ゲル1の応答性が悪くなる
場合や、刺激応答性高分子ゲル1が厚み方向に必要以上
に積層してしまい、十分な透過率が得られないなどの問
題が生じる場合がある。
【0085】また、フィルム状に形成された第1の本発
明を利用して作製された高分子ゲル組成物や第2本発明
の高分子ゲル組成物の表面には、その目的に応じてさら
に保護層、紫外線吸収層、蒸発防止層などを設けること
ができる。
【0086】次に、高分子ゲル組成物の動作について、
図2を用いて説明する。既述したように高分子ゲル組成
物3は、硬化樹脂組成物2中の刺激応答性高分子ゲル1
が、外部刺激によって、不図示の吸脱液体を吸収・放出
し、図2(a)に例示するように膨潤し、あるいは、図
2(b)に例示するように収縮して、体積変化を引き起
こすことができる。そしてこの際の体積変化に応じて、
光の透過性等が、散乱や回折によって変化する。
【0087】また、刺激応答性高分子ゲル1に、飽和吸
収濃度または飽和散乱濃度以上の調光用材料を含有させ
た場合は、刺激応答性高分子ゲル1の体積変化に応じて
光の吸収効率が変化し、光学濃度を変化させることがで
きる。具体的には高分子ゲル1の膨潤時には光学濃度が
高くなり、収縮時には光学濃度が低くなる。
【0088】(光学素子・調光フイルム)上記に示した
ような光学的特性を有する第1の本発明に係わる高分子
ゲル組成物および第2の本発明の高分子ゲル組成物は、
調光素子、表示素子などの光学素子として利用すること
ができる。高分子ゲル組成物は、図1に示したようなフ
イルム状以外にも、繊維状など様々な構造体として利用
することができる。特にフイルム状の高分子ゲル組成物
を利用する場合には、種々のフイルム基材上あるいは複
数枚のフイルム基材間に高分子ゲル組成物を特定の厚み
で形成することで、安定かつ耐久性に優れる光学素子を
得ることができる。以下に、本発明の光学素子の具体例
について図を用いて説明する
【0089】図3は、本発明の光学素子の一例を示す模
式断面図であり、具体的にはフィルム状の高分子ゲル組
成物を2枚の基材間に挟持した光学素子の模式断面図を
示したものである。図4は、本発明の光学素子の他の例
を示す模式断面図であり、図3に示す光学素子の端面を
封止材により封止した構成を有する光学素子の模式断面
図を示したものである。図3および4中、1〜3は、図
1および図2中と同様であり、4および4’は、基材を
表し、10および20は、光学素子(調光フィルム)を
表す。また、図4中、5は封止材を表す。基材4、4’
としては、例えばガラスなどの透明基板を用いることが
できるが、可とう性のあるフイルム基板を用いた場合に
は、可とう性のある調光フィルム10および20を得る
ことができる。なお、基材4、4’上には保護層、吸脱
液体の蒸発防止層など他の構成層が形成させていても構
わない。なお、図4に示す封止材5は、必要に応じて設
けることが好ましいが、図3に示す光学素子10のよう
に、封止材5を有さないものであってもよい。
【0090】前記基材としては、ポリエステル、ポリイ
ミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプ
ロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート
(PET)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビ
ニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォ
ン、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、エポキシ系
樹脂、ポリアセタール系樹脂などの高分子のフイルムや
板状基板、ガラス基板、金属基板、セラミック基板など
の無機基板を使用することができる。
【0091】特に調光フイルムとして用いる場合のフイ
ルム基材としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリメ
タクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポ
リエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビ
ニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォ
ン、セルロース誘導体、フッ素樹脂、シリコーン系樹
脂、エポキシ系樹脂、ポリアセタール系樹脂、金属フイ
ルムなどが使用できる。図3および図4に示す光学素子
10および20において、基材3の厚みは、10μm〜
10mmの範囲内から選択され、高分子ゲル組成物3の
厚みは5μm〜10mmの範囲から選択されることが好
ましい。
【0092】なお、基材4あるいは基材4’の少なくと
もいずれか一方は光学的に透明であることが必要であ
る。また、光学素子10および20が、透過型光学素子
である場合には、基材4および基材4’は透明であるこ
が好ましい。基材4、4’の厚みや大きさは、特に限定
されないが、光学素子10や光学素子20を用いて作製
される表示素子のサイズに合わせて様々なものが利用で
き、厚みに関しては、10μmから20mmの範囲内が
好ましい。
【0093】本発明の光学素子は、例えば気温の変化、
太陽光量の変化などの自然エネルギーによって調光や表
示を行うことができるが、刺激付与手段を設けること
で、能動的に調光することもできる。この場合、刺激付
与手段は高分子ゲルに実質的に既述したような外部刺激
を付与するものであり、通電発熱抵抗体のほかに光付
与、電磁波付与、磁場付与などの各種熱付与手段が挙げ
られる。なかでも特に通電発熱抵抗体が好ましく適用さ
れ、具体的にはNi−Cr合金などに代表される金属
層、硼化タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、やI
TOなどの金属酸化物層、カーボン層などに代表される
の発熱抵抗体層が好ましく用いられ、これらの層に配線
し電流を付与することにより発熱させることができる。
またその他にも、光付与の場合は、レーザー、LED、
ELなどの発光素子層を用いること、磁界や電磁波の付
与は電磁コイル、電極等を設けることで実現できる。
【0094】また、前記した熱刺激付与手段はパターン
化、セグメント化させて任意の部位を調光させることも
好ましく実施される。また、これらのパターンに対応し
て特定の特性を有する高分子ゲルを分散させた高分子ゲ
ル組成物を配置することも好ましく実施される。
【0095】また、本発明の光学素子は、図3や図4に
示した構成のみに限定されるものではなく、図3や図4
に示す高分子ゲル組成物3や基材4、4’以外の様々な
構成を有してもよい。例えば、光学素子の保護を目的と
した保護層、防汚染層、紫外線吸収層、帯電防止層、内
部液体の蒸発防止層などを必要に応じて設けることがで
きる。。
【0096】以上、本発明の好ましい実施の形態を説明
したが、本発明はその要旨の範囲内で、様々な変形や変
更が可能である。
【0097】
【実施例】以下に本発明を実施例を挙げてより具体的に
説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるも
のではない。
【0098】(樹脂組成物Aの調製)ポリアクリル酸
(和光純薬製・重量平均分子量250,000)の20
重量%水溶液、20gに対し、メタクリル酸グリシジル
0.5gを加え、室温で24時間攪拌し反応させ溶液A
を得た。この溶液Aに対して、光開始剤(チバスペシャ
リティケミカル製、イルガキュア2959)を0.8g
と純水60gとを加えることにより、高分子ゲル固定用
樹脂組成物Aを調製した。このときの高分子ゲル固定用
樹脂組成物AのpHは約2.8であった。この高分子ゲ
ル固定用樹脂組成物Aを、ガラス基板間に100μmの
厚さに保持したものを作製し、高圧水銀灯により紫外線
を照射(照度:160W/cm,照射時間:150se
c、照射距離40cm)したところ、高分子ゲル固定用
樹脂組成物A全体が硬化することによりゲル化し、流動
性の無い硬化物が得られた。
【0099】(高分子ゲル固定用樹脂組成物Bの調製)
ポリビニルアルコールを主鎖に持つ紫外線硬化性樹脂を
含む水溶液(東洋合成工業製、SPP−S−13、固形
分約10重量%、pH=7)7gにメタノール3gを加
え、さらに、この紫外線硬化樹脂水溶液のpHが4.3
前後になるように少量の酢酸を加えることにより高分子
ゲル固定用樹脂組成物Bを調製した。この高分子ゲル固
定用樹脂組成物Bをガラス基板間に100μmの厚さに
保持したものを作製し、高圧水銀灯により紫外線を照射
(照度:160W/cm,照射時間:150sec、照
射距離:40cm)したところ、高分子ゲル固定用樹脂
組成物B全体が硬化することによりゲル化し、流動性の
無い硬化物が得られた。
【0100】(高分子ゲル固定用樹脂組成物Cの調製)
ポリビニルアルコールを主鎖に持つ紫外線硬化性樹脂を
含む水溶液(東洋合成工業製,SPP−S−13,固形
分約10重量%,pH=7)を、純水で固形分が約5%
となるように希釈したものを高分子ゲル固定用樹脂組成
物Cとしてそのまま利用した。この高分子ゲル固定用樹
脂組成物Cをガラス基板間に100μmの厚さに保持し
たものを作製し、高圧水銀灯により紫外線を照射(照
度:160W/cm,照射時間:150sec、照射距
離:40cm)したところ、高分子ゲル固定用樹脂組成
物C全体が硬化することによりゲル化し、流動性の無い
硬化物が得られた。
【0101】(刺激応答性高分子ゲル粒子の作製)色材
を含有した刺激応答性(高温膨潤型)高分子ゲルの粒子
を、以下に示すプロセスにより製造した。
【0102】アクリルアミド1.0g、架橋剤としてメ
チレンビスアクリルアミド1.0mg、蒸留水0.57
5g、色材として青色顔料(大日本インキ社製:マイク
ロカプセル化青色顔料、MC blue 182−E)
を水に13.5質量%の濃度で分散させたの溶液3.4
25g、を攪拌混合することにより水溶液Cを調製し
た。
【0103】次に、ソルビトール系界面活性剤(第一工
業製薬(株)製:ソルゲン50)2.375gをトルエ
ン300mlに溶解した溶液を窒素置換された反応容器
に加え、これに、先に調製した水溶液Cを添加し、回転
式攪拌装置を用いて1200rpmで30分間攪拌して
懸濁させ、懸濁液Dを得た。得られた懸濁液Dをフラス
コ中に入れ、窒素置換により酸素を除いた後、重合開始
剤である過硫酸アンモニウム0.004gを水0.5m
lに溶解したものを添加し、70℃に加熱して3時間、
重合を行った。重合終了後、大量のアセトンで洗浄する
ことで精製を行い、さらに乾燥させて、色材を含有した
アクリルアミドゲルの粒子を得た。
【0104】次に、アクリル酸1.5g、架橋剤として
メチレンビスアクリルアミド0.0015g、および蒸
留水5.5gを混合し、窒素置換後、これに過硫酸アン
モニウム0.006gを水0.5gに溶解したものを添
加し、混合液を得た。この混合液に上記得られたアクリ
ルアミドゲルの粒子0.5gを加えて70℃に加熱し、
3時間重合を行いIPN高分子ゲル粒子を調製した。
【0105】得られたIPN高分子ゲル粒子(アクリル
酸−アクリルアミド相互侵入網目構造体ゲル粒子)を大
量の蒸留水中に投入し、加熱冷却を行いゲル粒子を膨潤
収縮させ、これをろ過する操作を繰り返すことで精製を
行った。得られたIPN高分子ゲル粒子の乾燥時の体積
平均粒子径は、約15μmであった。このIPN高分子
ゲル粒子を、大量の純水に加えて膨潤させた。このIP
N高分子ゲル粒子の体積変化特性は、収縮時、すなわち
10℃における吸水量が約3g/gであり、膨潤時、す
なわち50℃における吸水量が約80g/gであった。
また、収縮状態−膨潤状態の相転移を示す相転移温度は
30〜40℃の温度範囲であり、この相転移は可逆的で
あった。さらに、収縮時に対する膨潤時のIPN高分子
ゲル粒子の粒子径は約3倍、体積は約27倍に増加する
ことがわかった。
【0106】<高分子ゲル組成物および光学素子の作製
> (実施例1)上記IPN高分子ゲル粒子(以下、「IP
Nゲル粒子」と略す場合がある)を一定濃度含む水分散
液(IPNゲル粒子の固形分濃度2.5重量%)10m
lと、高分子ゲル固定用樹脂組成物A10gと、スペー
サーとしてビーズ(積水化学(株)製、ミクロパール
SP−L110)0.1gと、を混合しウエーブロータ
ーで3時間分散してIPNゲル粒子を溶液中に均一に分
散した分散液Aを作製した。次に、分散液Aをブレード
コーターを用いてPET基板表面に厚さが150μmと
なるように塗布することにより塗布膜(硬化前の高分子
ゲル組成物)を形成し、さらにこの塗布膜表面をPET
フイルムでラミネートした。
【0107】この状態で、PETフィルム上、約20c
mのところに設置した高圧水銀灯により紫外線照射(光
照度:160W/cm、照射距離20cm、120秒間
照射)することにより塗布膜を硬化し、実施例1の高分
子ゲル組成物を得た。また、このようにして得られた、
PET基板/高分子ゲル組成物/PETフィルムからな
る積層体の端面を熱可塑性の感光性のアクリル系接着剤
(日本化薬製KAYARAD R381I)で封止する
ことにより実施例1の光学素子を作製した。
【0108】(実施例2)上記IPNゲル粒子を一定濃
度含む水分散液(IPNゲル粒子の固形分濃度2.5重
量%)10mlと、高分子ゲル固定用樹脂組成物B10
gと、スペーサーとしてビーズ(積水化学(株)製、ミ
クロパール SP−L110)0.1gと、を混合しウ
エーブローターで3時間分散してIPNゲル粒子を溶液
中に均一に分散した分散液Bを作製した。次に、分散液
Bを用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の高
分子ゲル組成物および光学素子を得た。
【0109】(実施例3)上記IPNゲル粒子を一定濃
度含む水分散液(IPNゲル粒子の固形分濃度2.5重
量%)10mlと、高分子ゲル固定用樹脂組成物C10
gと、スペーサーとしてビーズ(積水化学(株)製、ミ
クロパール SP−L110)0.1gと、を混合し、
これに、濃度1Mの塩酸を適量加えることによりpHが
約3.0となるように調整した混合物をウエーブロータ
ーで3時間分散して高分子ゲル粒子を溶液中に均一に分
散した分散液Cを作製した。次に、分散液Cを用いた以
外は実施例1と同様にして、実施例3の高分子ゲル組成
物および光学素子を得た。
【0110】(比較例1)上記IPNゲル粒子を一定濃
度含む水分散液(IPNゲル粒子の固形分濃度2.5重
量%)10mlと、高分子ゲル固定用樹脂組成物C10
gと、スペーサーとしてビーズ(積水化学(株)製、ミ
クロパール SP−L110)0.1gと、を混合しウ
エーブローターで3時間分散して高分子ゲル粒子を溶液
中に均一に分散した分散液Dを作製した。次に、分散液
Dを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の高
分子ゲル組成物および光学素子を得た。
【0111】(体積変化量および可視光透過率変化幅の
評価)作製した高分子ゲル組成物の温度変化による膨潤
時および収縮時における体積変化量と可視光透過率変化
幅とを測定した。体積変化量は、光学顕微鏡観察によ
り、膨潤時および収縮時のIPNゲル粒子の最大長を測
定し、この最大長から体積変化量を求めた。結果を表1
に示す。可視光透過率変化幅は、分光光度計(日立社
製、U−4000)を用いて、発色時および消色時にお
ける可視光線の透過光量差(収縮時の可視光線透過率−
膨潤時の可視光線透過率)を、400〜800nmの範
囲内の透過光量差の値を平均することにより求めた。な
お、可視光線透過率の測定に際しては、実施例および比
較例で作製した光学素子の作製に用いたPET基板をリ
ファレンスとして用いた。実施例1〜3および比較例1
の光学素子の体積変化量および可視光透過率変化幅を評
価した結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】実施例1および2に示したように、液性が
酸性である高分子ゲル固定用樹脂組成物を用いた場合
や、実施例3に示したように、高分子ゲル組成物に含ま
れる液体が酸性となるように酸性化合物を含有している
場合では、刺激応答性高分子ゲルは高分子ゲル固定用樹
脂組成物中への分散、硬化の後でもその体積変化特性を
維持しており、高分子ゲル組成物全体の透過率変化幅も
50%以上と大きかった。
【0114】一方、液性が酸性となっていない高分子ゲ
ル固定用樹脂組成物を用いた場合には(比較例1)硬化
後の高分子ゲル組成物中で、刺激応答性ゲルは膨潤した
ままの状態となり、温度変化による体積変化特性をほと
んど示さず、透過率変化幅は非常に小さかった。これら
の結果は高分子ゲル固定用樹脂組成物の液性を酸性にし
たり、高分子ゲル組成物に含まれる液体が酸性となるよ
うに酸性化合物を含有することによって、高分子ゲル固
定用樹脂組成物中でも刺激応答性高分子ゲルの体積変化
特性を損なうことがなく、優れた調光性能を維持できる
ことを示している。
【0115】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
刺激応答性高分子ゲル、特に水素結合力の変化を利用し
て体積変化する刺激応答性高分子ゲルの体積変化特性の
顕著な低下を防止することが可能な、高分子ゲル固定用
樹脂組成物、高分子ゲル組成物、これを用いた優れた調
光特性を有する光学素子および調光フィルム、並びに、
高分子ゲル組成物作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の本発明に係わる高分子ゲル組成物およ
び第2の本発明による高分子ゲル組成物の構成例を示す
模式断面図である。
【図2】 図1に示す高分子ゲル組成物中の高分子ゲル
が膨潤および収縮した状態を示した模式断面図であり
(a)は、高分子ゲルが膨潤した状態を表し、(b)
は、高分子ゲルが収縮した状態を表す。
【図3】 本発明の光学素子の一例を示す模式断面図で
ある。
【図4】 本発明の光学素子の他の例を示す模式断面図
である。
【符号の説明】
1 刺激応答性高分子ゲル 2、2a、2b 硬化樹脂組成物(硬化後の高分子ゲル
固定用樹脂組成物) 3 高分子ゲル組成物 4、4’ 基材 5 封止材 10 光学素子(調光フィルム) 20 光学素子(調光フィルム)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三上 正人 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼロ ックス株式会社内 Fターム(参考) 4J002 BE02W BG07W BG13X CD19W EF036 FD090 GP00

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吸脱液体を吸収・放出して体積変化する
    刺激応答性高分子ゲルを固定するための高分子ゲル固定
    用樹脂組成物であって、 前記高分子ゲル固定用樹脂組成物が、少なくとも架橋部
    位を有する高分子を含み、且つ、前記高分子ゲル固定用
    樹脂組成物の溶液が、酸性であることを特徴とする高分
    子ゲル固定用樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 酸性化合物を含むことを特徴とする請求
    項1に記載の高分子ゲル固定用樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 前記酸性化合物が、酸性高分子を含むこ
    とを特徴とする請求項2に記載の高分子ゲル固定用樹脂
    組成物。
  4. 【請求項4】 前記溶液のpHが、1.5〜5.5の範
    囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1
    つに記載の高分子ゲル固定用樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 前記架橋部位を有する高分子が、酸性高
    分子を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1
    つに記載の高分子ゲル固定用樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 前記酸性高分子が、その分子内に少なく
    とも1つ以上のカルボキシル基を含むことを特徴とする
    請求項3または請求項5に記載の高分子ゲル固定用樹脂
    組成物。
  7. 【請求項7】 前記酸性高分子が、(メタ)アクリル酸
    構造を繰り返し単位構造として含む重合体であることを
    特徴とする請求項3、5または6のいずれか1つに記載
    の高分子ゲル固定用樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 少なくとも、吸脱液体を吸収・放出して
    体積変化する刺激応答性高分子ゲルと、請求項1〜7の
    いずれか1つに記載の高分子ゲル固定用樹脂組成物と、
    を含むことを特徴とする高分子ゲル組成物。
  9. 【請求項9】 少なくとも、吸脱液体を吸収・放出して
    体積変化する高分子ゲルと、少なくとも架橋部位を有す
    る高分子を含む高分子ゲル固定用樹脂組成物と、を含む
    高分子ゲル組成物であって、 前記吸脱液体が、酸性であることを特徴とする高分子ゲ
    ル組成物。
  10. 【請求項10】 前記刺激応答性高分子ゲルが、水素結
    合力の変化を利用することにより吸脱液体を吸収・放出
    して体積変化することを特徴とする請求項8または9に
    記載の高分子ゲル組成物。
  11. 【請求項11】 前記刺激応答性高分子ゲルが、調光用
    材料を含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか
    1つに記載の高分子ゲル組成物。
  12. 【請求項12】 請求項8〜11のいずれか1つに記載
    の高分子ゲル組成物を含むことを特徴とする光学素子。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の光学素子を含むこ
    とを特徴とする調光フィルム。
  14. 【請求項14】 少なくとも前記高分子ゲル固定用樹脂
    組成物中に前記刺激応答性高分子ゲルを分散させたマト
    リックス形成用溶液を、硬化手段を用いて硬化させるこ
    とを特徴とする高分子ゲル組成物作製方法。
  15. 【請求項15】 前記硬化手段が、前記マトリックス形
    成用溶液に光を照射する方法であることを特徴とする請
    求項14に記載の高分子ゲル組成物作製方法。
JP2002126208A 2002-04-26 2002-04-26 高分子ゲル固定用樹脂組成物、高分子ゲル組成物、これを用いた光学素子および調光フィルム、並びに、高分子ゲル組成物作製方法 Pending JP2003313439A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP7520647B2 (ja) 2019-12-05 2024-07-23 株式会社日本触媒 刺激応答吸水性樹脂組成物及びその製造方法

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