JP2003309006A - 磁気異方性ボンド磁石 - Google Patents

磁気異方性ボンド磁石

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JP2003309006A
JP2003309006A JP2003087790A JP2003087790A JP2003309006A JP 2003309006 A JP2003309006 A JP 2003309006A JP 2003087790 A JP2003087790 A JP 2003087790A JP 2003087790 A JP2003087790 A JP 2003087790A JP 2003309006 A JP2003309006 A JP 2003309006A
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anisotropic
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JP2003087790A
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Yoshinobu Motokura
義信 本蔵
Chisato Mishima
千里 三嶋
Hiroshige Mitarai
浩成 御手洗
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Aichi Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高温水素熱処理された高い異方性をもつ希土類
磁石粉末を提供する。 【解決手段】高温水素熱処理され、12〜15at%の
イットリウム(Y)を含む希土類元素(以下、Rとい
う。)と、5.5〜8at%のホウ素(以下、Bとい
う。)と、5.5〜8at%のホウ素(以下、Bとい
う。)と、0.01〜1.0%のガリウム(以下、Ga
という。)と、0.01〜0.6at%のニオブ(以
下、Nbという。)と、不可避の不純物元素を含み、残
りが鉄(Fe)とからなるRFe(Ga+Nb)B系合
金からなる磁気異方性磁石粉末と熱硬化性樹脂とを圧縮
成形した磁気異方性ボンド磁石において最大エネルギー
積((BH)max)が167.9〜200.5kJ/
3(21.1〜25.0MGOe)であることを特徴
とする磁気異方性ボンド磁石である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、希土類元素−鉄−
ホウ素系合金よりなり高い異方性をもつ磁気異方性ボン
ド磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、イットリウム(Y)を含む希土類
元素(以下、Rと称す)と、鉄(Fe)と、ホウ素
(B)とを主成分とするRFeB系合金よりなる希土類
磁石は残留磁束密度、保磁力などの磁気特性に優れるた
め工業的に広く利用されている。この希土類磁石は、例
えば、特開昭60−257107号公報、特開昭62−
23903号公報、特公平7−68561号公報等に報
告されている。
【0003】特開昭62−23903号公報には、RF
eB系合金に水素の吸蔵および脱着による組織の順変態
および逆変態を行う高温水素熱処理の脱水素処理を改善
することにより保磁力(iHc)が5kOe(398k
A/m)と高い永久磁石を製造する方法が開示されてい
る。ここで高温水素熱処理は組織の変態を伴う熱処理を
意味し、組織の変態を伴わない水素の吸蔵、脱水素のみ
が生ずる低温水素熱処理と区別する。
【0004】そして、特公平7−68561号公報に
は、この高温水素熱処理を改良し、RFeB系合金を1
0Torr(1.3kPa)以上の水素ガスもしくは1
0Torr(13kPa)以上の分圧の水素ガスと不活
性ガスからなる混合ガスの雰囲気の下で500℃〜10
00℃の温度で熱処理して原料中に水素を吸収させて順
変態を起こさせ、再び脱水素を行うといった一連の高温
水素熱処理を行うことにより、iHcが10kOe(7
95kA/m)と高い磁気特性を持つ希土類永久ボンド
磁石を得る方法が開示されている。
【0005】さらに、特公平7−68561号公報は、
Nd12.0Pr1.4 Fe80.85.8 の原子数組成の希土類
合金を1atmH2 ガス中で830℃まで昇温し、その
後830℃で5時間保持しこの間にH2 ガス圧力を10
〜760Torr(1.3kPa〜0.1MPa)の範
囲の所定圧力に保持し、その後830℃の温度で1.0
×10-5Torr(1.31×10-3Pa)の真空度に
減圧して40分保持し、その後急冷することにより、異
方性ボンド磁石を得ている。その実施例中で最も顕著な
異方性をもつボンド磁石として、圧縮成形時に磁場を作
用させてBrを6.1kG(0.61T)から7.2k
G(0.72T)へと約18.2%向上したものを挙げ
ている。
【0006】また、特公平4−20242号公報には、
一度メルトスピンニングにより希土類磁石とした後、こ
の希土類磁石を熱間圧延処理して結晶方向を揃えた組織
とし、高い異方性をもつ希土類磁石とする方法が開示さ
れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高温水素熱
処理し、高い異方性をもつ希土類磁石粉末と熱硬化性樹
脂とを圧縮成形により最大エネルギー積の大きい磁気異
方性ボンド磁石を提供することを課題とする。希土類磁
石を熱間圧延処理して結晶方向を揃えた組織とし、高い
異方性をもつ希土類磁石粉末とする方法は、操作が複雑
なために製造コストが高くなる。また、得られる希土類
磁石粉末の結晶粒は偏平となる特色をもつ。
【0008】他方、希土類磁石の水素吸蔵合金としての
特色でもある水素の吸蔵による組織の順変態、脱水素に
よる組織の逆変態を行う高温水素熱処理により結晶粒を
微細化し、結晶粒を小さくすることにより残留磁束密
度、保磁力などの磁気特性を高める高温水素熱処理によ
る希土類磁石粉末を得る方法がある。この高温水素熱処
理による希土類磁石粉末は、操作が比較的単純で製造コ
ストが安いという利点があるが、磁気特性に優れた希土
類磁石粉末が得られないという問題がある。特に異方性
を付与することが極めて困難である。
【0009】希土類磁石の高温水素熱処理の過程で、前
記した特公平7−68561号公報に開示されているよ
うに、Nd12.0Pr1.4 Fe80.85.8 組成の希土類合
金を高温水素熱処理した場合、圧縮成形時に磁場を作用
させることによりBrが6.1kG(0.61T)から
7.2kG(0.72T)へと約18.2%向上する異
方性が報告されている。この特公平7−68561号公
報の発明者の一人は、J.Alloys and Co
mpounds 231(1995)51で、NdFe
Bの三元系希土類合金を水素処理しても等方性磁石粉末
が得られるだけであるが、このFeをCoで置換し、Z
r、Ga、Nb、Hf等の元素を添加したNdFeCo
Bに水素処理を行うと異方性が発現すると説明してい
る。
【0010】本発明者は希土類磁石の水素処理を詳細に
検討し、実験を重ねた結果、従来高温水素熱処理により
等方性磁石粉末しか得られないと考えられていたNdF
eBの三元系磁石粉末が、高温水素熱処理により極めて
高い異方性をもつ磁石粉末となることを発見した。他の
磁気特性で説明すると、従来高温水素熱処理によるNd
FeBの三元系磁石粉末のBrが0.8T(8.0k
G)程度と考えられていたものが、NdFeBの三元系
磁石粉末の組成を変えることなくそのBrを1.2〜
1.5T(12〜15kG)と高めることができること
を発見し、確認したものである。更には、NdFeBの
三元系にGa,Nbを添加することによりそのBrを
1.32〜1.39T(13.2〜1.39kG)と高
めることができることを発見し、確認したものである。
【0011】本発明者等は、発見された高温水素熱処理
によるNdFeBの三元系合金の高い異方性は、NdF
eBの希土類合金を水素吸蔵させて水素と反応させ、こ
の希土類合金の組織を順変態するときに、Nd2 Fe14
1 の結晶方位が順変態により生ずると考えられる多数
の微細なFe2 Bに転写されて保存され、これが脱水素
による合金組織の逆変態で転写保存されたFe2 Bの結
晶方位が再生される微細なNd2 Fe141 の結晶に転
写され、極めて高い異方性をもつ磁石粉末となるものと
考えている。なお、本発明ではその組成中にコバルト
(Co)を必要としない。
【0012】本発明はかかる見解の元で完成されたもの
である。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の異方性磁石粉末
は、高温水素熱処理され、異方性(Br/Bs、ただし
Bsは1.6T(16kG)とした)が0.82〜0.
86であるイットリウム(Y)を含む希土類元素(以
下、Rと称す)とホウ素(B)と、0.01〜1.0a
t%のガリウム(以下、Gaという。)と、0.01〜
0.6at%のニオブ(以下、Nbという。)と、不可
避の不純物とを含み残りが鉄(Fe)とから構成された
RFeB系合金からなることを特徴とする。また、本発
明は、高温水素熱処理され、12〜15at%のイット
リウム(Y)を含む希土類元素(以下、Rという。)
と、5.5〜8at%のホウ素(以下、Bという。)
と、0.01〜1.0%のガリウム(以下、Gaとい
う。)と、0.01〜0.6at%のニオブ(以下、N
bという。)と、不可避の不純物元素を含み、残りが鉄
(Fe)とからなるRFe(Ga+Nb)B系合金から
なる磁気異方性磁石粉末と熱硬化性樹脂とを圧縮成形し
た磁気異方性ボンド磁石において最大エネルギー積
((BH)max)が167.9〜200.5kJ/m
3(21.1〜25.0MGOe)であることを特徴と
する磁気異方性ボンド磁石である。更に、前記磁気異方
性磁石粉末が、異方性(Br/Bs、ただしBsは1.
6T(16kG)とした。)が0.82〜0.86であ
ることを特徴とする前記磁気異方性ボンド磁石でもあ
る。前記磁気異方性磁石粉末が、固有保磁力(iHc)
が796〜1193kA/m(10.0〜15kO
e)、(BH)maxが300〜350kJ/m3(3
7.8〜44.0MGOe)であることを特徴とする前
記磁気異方性ボンド磁石である。
【0014】本発明の異方性磁石粉末を構成するRFe
B系合金は、R2 Fe141 の正方晶結晶構造を持つ再
結晶粒からなるために高い異方性をもつものと考えられ
る。また、本発明の異方性磁石粉末は高温水素熱処理さ
れて得られるもので、その結晶粒が球形に近い、すなわ
ち、結晶粒のアスペクト比が小さいという特色がある。
具体的には、結晶粒の大きさは、粒径が0.1〜1.0
μm程度で、ほぼ全ての結晶粒のアスペクト比は2.0
以下である。
【0015】ここで結晶粒とは合金粉末を意味するもの
ではなく、1個の合金粉末を構成する多数の結晶粒の個
々の結晶粒を意味する。また、アスペクト比とは、結晶
粒の最小粒径に対する最長粒径の比(最長粒径/最小粒
径)で定義される値である。さらに、熱間圧延による希
土類磁石はその結晶粒が偏平であり、結晶粒の形状が高
温水素熱処理した希土類磁石粉末のものと全く異なる。
【0016】なお、磁石粉末のBrには、通常のBHト
レーサが使用できないため、本発明ではBrの測定方法
として次の方法を採用した。まず磁石粉末を74から1
05μmの粒径のものに分級して用いた。そして反磁場
が0.2になるように成形し、磁場中で配向後4578
kA/m(45KOe)で着磁し、VSMで測定してB
rを求めた。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の異方性磁石粉末を構成す
るRFeB系合金は、12〜15at%のRと、5.5
〜8at%のBと、不可避な不純物とを含み、残りがF
eからなる。Rが15at%を越えるとBrが低くな
り、逆に12at%に達しないと初晶のα−Feが残
る。また、Bが8at%を越えるとBrが低くなり、逆
に5.5at%に達しないとNd2 Fe17相等が析出す
る。Rとしては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、
Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Luから選ばれ
る1種または2種以上が利用できる。中でもコスト及び
磁気特性の理由からNdを用いることが好ましい。
【0018】RFeBにGaを0.01〜1.0at%
配合することによって得られる磁石粉末の保磁力を向上
させる。このGaは結晶粒界のスムージング化を容易に
しiHcを上げるものと考えられる。また、Nbを0.
01〜0.6at%配合することによりより異方性を高
める事ができる。このNbはFe2 Bの転写を確実にし
てBrを向上させるものと考えられる。
【0019】本発明の異方性磁石粉末は、主成分がRF
eB系合金においてはその異方性(Br/Bs、ここで
Bsは1.6T(16kG))が0.70以上である。
その他の磁気特性として、Brは1.2〜1.5T(1
2〜15kG)、iHcは636〜1272kA/m
(8.0〜16kOe)、(BH)maxは238〜3
58kJ/m3(30〜45MGOe)の特性を持つ。
一方、本発明の異方性磁石粉末は、より好ましくはRF
eB系合金に、0.01〜1.0%のGaと、0.01
〜0.6at%のNbを複合添加したRFe(Ga+N
b)B系合金においてその異方性(Br/Bs、ここで
Bsは1.6T(16kG))が0.82〜0.86で
ある。その他の磁気特性として、Brは1.32〜1.
39T(13.2〜13.9kG)、iHcは796〜
1193kA/m(10.0〜15.0kOe)、(B
H)maxは300〜350kJ/m3(37.8〜4
4.0MGOe)の特性を持つ。本発明の異方性磁石粉
末は、RFeB系合金に水素を吸蔵させて水素と合金と
の反応を0.25〜0.50の相対反応速度範囲内で進
行させ、組織の順変態を起こさせ、その後脱水素反応を
進めて組織の逆変態を起こさせることにより製造でき
る。この製造に用いる原料の調製の方法は特に限定され
ないが、高純度の希土類、鉄、ホウ素を、用い、これら
を所定量混合して溶解炉等で溶解し、これを鋳造して合
金のインゴットを作製し、これを原料とすることができ
る。さらに、このインゴットを粉砕して粉末状とし、こ
れを原料とすることもできる。
【0020】このとき、原料の調製の方法によっては原
料中の組成分布の偏りが生じることもある。このような
組成分布の偏りが生じると、好ましくない。そこで、こ
れらの原料を均質化処理しておくことが望ましい。この
均質化処理により組成分布の偏りが生じるのを減少させ
ることができる。本発明のRFeB系合金に水素を吸蔵
させ、合金と水素の反応速度Vは V=V0 ・(PH2 /P)・exp(−Ea/RT) (ここで、VO :頻度因子、PH2 :水素ガス圧力(P
a)、PO :解離圧(Pa)、Ea:活性化エネルギー
(kJ/mol)、R:ガス定数(J/molK)、
T:温度(K)である。)で表される。この反応速度と
組織の変態速度とは比例していると考えられるので、組
織の変態速度をこの反応速度で評価することとした。
【0021】即ち、組織の順変態反応の反応速度は、反
応温度が830℃、水素ガス圧力が0.1MPaの時の
反応速度Vb をVb =1とする基準反応速度とし、この
基準反応速度に基づく相対反応速度Vr で定義した。V
r は次の式で示すことができる。 Vr =(1/0.5
76)・PH2 ・exp(−Ea/RT)また、組織の
逆変態は830℃、水素ガス圧力が0.001MPa
(0.01atm)を基準反応速度とした。逆変態反応
の相対反応速度も同様に求めることができる。
【0022】なお、活性化エネルギーEaは図1に示す
ように組成に依存し195〜200kJ/molとな
る。なお、この活性化エネルギーEaはNdとH2 とが
反応してNdH2 となる生成熱を参考にして求めたもの
である。具体的に順変態反応の相対反応速度を反応温度
と水素ガス圧力で規定すると、相対反応速度の温度依存
性を示す図2、相対反応速度の圧力依存性を示す図3で
示される。
【0023】順変態反応の相対反応速度を0.25〜
0.50の反応速度範囲内とするためには、反応温度は
780〜840℃の範囲が、水素圧力は0.01〜0.
06MPa(0.1〜0.6atm)の範囲が良い。な
お、ここで言う反応温度はRFeB系合金が水素を吸蔵
して順変態を起こす温度であり、反応炉の管理温度では
ないことに注意する必要がある。
【0024】RFeB系合金が水素を吸蔵して順変態を
起こす反応は発熱反応であり、順変態の開始により反応
温度が加速度的に高くなる。従って、実際の反応温度は
反応炉の管理温度と大きく異なる。また、水素吸蔵によ
り水素ガス圧が大きく変動することも考えられる。例え
ば、不活性ガスと水素ガスとの混合ガスを採用した場
合、水素が吸蔵され、順変態を起こすRFeB系合金の
周囲の水素ガス濃度が大きく低下することもあり得る。
異方性の高い磁石粉末とするためには、厳密な反応温度
管理および水素ガス圧力の管理を必要とする。
【0025】順変態の相対反応速度が0.25〜0.5
0の反応速度範囲外となる場合には、異方性が小さくな
る。なお、RFeB系合金よりなる磁石粉末は本来異方
性をもつものであり、完全な等方性とすることもまた極
めて困難である。ここでは異方性の定義として、異方性
Br/Bs(Bs=1.6T(Bs=16kG))とし
たとき、この値が0.5以下のものを完全等方性、0.
5を越え0.70未満のものを等方性、0.70以上の
ものを異方性と定義する。
【0026】順変態の相対反応速度が0.25〜0.5
0の反応速度範囲内でBr/Bs(Bs=1.6T(B
s=16kG))が0.70以上の異方性磁石粉末が得
られる。 順変態の反応により、前に説明したように、
NdFeBの希土類合金を水素吸蔵させて順変態すると
きに、Nd2 Fe141 の結晶方位が順変態により生ず
ると考えられる多数の微細なFe2 Bにより正確に転写
されるためであろうと考えている。順変態の相対反応速
度が0.25〜0.50の反応速度範囲外では、Fe2
Bへの転写が充分でなく、異方性が低くなる。発明者は
現状ではFe2Bへの転写が充分でない場合には、後の
工程で異方性を高めることは不可能であると考えてい
る。
【0027】反応に伴って加速度的に早くなる順変態の
相対反応速度を0.25〜0.50の相対反応速度範囲
内に管理することは通常の炉では不可能である。そのた
め新しい熱処理炉として、本発明者等は特願平8−20
6231号明細書に記載した反応時の発熱を相殺する吸
熱手段をもった炉を開発して使用した。この吸熱手段
は、水素吸蔵合金を管内に配置し、この管を炉内に入
れ、反応による発熱と逆に管内の水素ガス圧力を減圧
し、脱水素反応を進めて吸熱させ、反応による発熱を吸
収して相殺するものである。これにより炉の管理温度と
反応温度とをほぼ等しくできる。
【0028】この順変態の反応は理想的には30分程度
で終わるが、工業的には反応時間は処理量に依存する。
順変態の終了後、順変態を起こした温度で少なくとも1
時間加熱処理を継続することにより得られる磁石粉末の
保磁力が向上する。これは順変態により生じた内部歪み
が緩和除去されることと関連していると考えている。内
部歪みが残存していると逆変態後に組織が不均一化して
保磁力が低下するものと考えている。
【0029】この後、吸蔵した水素を脱水素して逆変態
を起こさせる。この逆変態はFe2Bの結晶方位を生成
するNd2 Fe141 の結晶方位に転写するものであ
る。この逆変態時にFe2 Bの方位を転写するために
は、0.1〜0.4の相対反応速度範囲内で起こさせる
のが好ましい。具体的にはこの逆変態は、前記順変態の
水素ガス圧力の1/10〜1/100の水素ガス圧力に
維持して行うことにより達成される。なお、逆変態は順
変態とは反対の吸熱反応であり、逆変態の開始により反
応温度が加速度的に低下する。従って、実際の反応温度
を780〜840℃の範囲に保つためには、順変態と同
様の能力を持った炉が必要である。
【0030】この逆変態は理論的には10分以内で終わ
る。工業的には処理量に依存する。この逆変態終了後に
は逆変態の温度で少なくとも25分以上保持し、生成し
たNd2 Fe141 結晶を持つ希土類磁石粉末に含まれ
る水素を除去するのが好ましい。これにより保磁力が向
上する。解離した水素が合金内に残存していると保磁力
を著しく損なうためである。この後冷却し、本発明の異
方性磁石が得られる。冷却は少なくとも5℃/min.
の冷却速度で行うことが望ましい。
【0031】インゴット状の原料を用いたとき、得られ
るインゴット状の希土類永久磁石は乳鉢等で容易に粉砕
することができる。また、粉末状の原料を用いた場合、
凝集等により固化することもあるが、乳鉢等で容易に粉
砕することができる。希土類永久ボンド磁石は、得られ
た希土類永久磁石粉末と、この磁石粉末のバインダーと
なる樹脂と、を用いて製造される。このとき樹脂として
はエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができ、
所定の着磁用の磁場のもとで、この樹脂と磁石粉末とを
混合して得られた混合物を加圧成形等により成形した
後、熱処理して樹脂を熱硬化し、異方性の希土類永久ボ
ンド磁石を形成することができる。
【0032】
【発明の作用】本発明の異方性磁石粉末は、主成分がR
FeB系合金においてはBr/Bs(ここでBsは1.
6T(16kG))が0.70以上と極めて大きい異方
性をもつ。また、残留磁束密度および保磁力はそれぞれ
1.2T(12kG)、636kA/m(8kOe)以
上で磁気特性に優れる。そして、これらの磁石粉末を用
いた異方性ボンド磁石は135kJ/m3(17MGO
e)以上の高い(BH)maxをもつ。一方、本発明の
異方性磁石粉末は、好ましくはRFeB系合金に、0.
01〜1.0%のGaと、0.01〜0.6at%のN
bを複合添加したRFe(Ga+Nb)B系合金におい
ては0.82〜0.86と極めて大きい異方性をもつ。
また、残留磁束密度および保磁力はそれぞれBrが1.
32〜1.39T(13.2〜13.9kG)、796
〜1193kA/m(10.0〜15.0kOe)、で
磁気特性に優れる。(BH)maxは300〜350k
J/m3(37.8〜44.0MGOe)の特性を持
つ。そして、これらの磁石粉末を用いた異方性ボンド磁
石は167.9〜200.5kJ/m3(21.1〜2
5.0MGOe)の高い(BH)maxをもつ。
【0033】また、本発明の異方性磁石粉末の製造方法
は高温水素熱処理の順変態反応の相対反応速度を所定速
度としたものである。これにより簡単に異方性の大きい
希土類磁石粉末を容易に得ることができる。
【0034】
【実施例】以下、実施例により具体的に説明する。 (実施例1)Nd:12.5at%、B:6.2at
%、残部Feよりなる合金をボタンアーク溶解で溶製
し、1140℃で均質化終了を行い、その後表1に示す
条件で水素処理を行った。
【0035】具体的には、試料として約15gと極めて
少なくし石英管中に入れ、この石英管内の水素ガス圧を
管理できるように導管でガス圧制御装置に結んだ。加熱
炉としては赤外線加熱炉を使用した。温度測定には熱電
対を使用し、試料の温度と雰囲気の温度を測定し、これ
らの温度に基づいて炉を制御した。石英管の中に表1に
示す水素ガス圧を導入し、その状態で加熱し約60分間
で反応温度までした。そして反応の開始を試料の温度が
雰囲気の温度を越えると直ちに加熱を中止し、放熱によ
る冷却で雰囲気温度を下げ、反応による発熱を吸収し、
目的の反応温度+5℃以内に試料温度が保たれるように
した。試料量が15gと少なく、かつ、赤外線炉を使用
しているため石英管内の雰囲気温度は比較的容易に制御
できた。
【0036】この後820℃、水素ガス圧0.02MP
a(0.2atm)で3時間加熱処理を行った。その後
逆変態相対速度0.26となるように石英管内の水素ガ
ス圧を放出して脱水素を図り、逆変態反応を進めた。こ
の脱水素による逆変態反応では、水素ガス圧を微妙に制
御し、温度が吸熱反応により下がり始めると、水素ガス
圧の減圧を止め、温度が所定温度に戻ると再び減圧を再
開するといった制御方法により行い、目的とする温度−
5℃の範囲で制御し、水素ガス吸蔵時の水素ガス圧の1
/100以下の0.0001MPa(0.001at
m)とした。
【0037】この脱水素による逆変態反応の開始から3
0分間後まで、所定温度の熱処理を続けた。このあと冷
却し、水素処理を終えた。これにより希土類磁石粉末を
製造した。得られた希土類磁石粉末の残留磁束密度を測
定し、異方化率を求めた。残留磁束密度、異方化率とと
もに順変態相対反応速度、処理温度および水素吸蔵時の
水素ガス圧を合わせて表1に示す。なお、アスペクト比
は、各結晶粒の最大直径および最小直径を電子顕微鏡で
測定し、25サンプルの平均値として求めた。 表1 反応速度が0.25〜0.5の範囲では、いずれもNd
2 Fe14Bの方位がFe2 Bに転写され高い異方性が得
られるが、この範囲外の相対反応速度が早い場合、転写
がうまくいかず等方性の粉末しかえられない。一方、反
応速度が遅い場合は反応が不均一になり高いBsが得ら
れるもののNdFeBが残留してしまい高い保磁力(i
Hc)が得られない。 実施例2.主として実施例1のNo.1の水素吸蔵条件
で水素吸蔵させて合金組織の順変態を行ったものを表2
に示す保持温度、保持水素ガス圧力および保持時間で順
変態後の加熱処理を行った(なお、No.54について
は実施例1のNo.52の水素吸蔵条件で水素吸蔵させ
て合金組織の順変態を行った。)。その後逆変態相対速
度0.26となるように保持温度で水素ガス圧力を下
げ、実施例1と同様に脱水素による逆変態反応を起こさ
せ、その後実施例1と同様に逆変態反応後の熱処理を8
20℃、真空下で30分間保持し、その後冷却した。こ
れにより表2に示す希土類磁石粉末を製造した。
【0038】得られた希土類磁石粉末の残留磁束密度、
固有保磁力および(BH)maxを測定し、異方化率を
求めた。保磁力、異方化率とともに順変態相対反応速
度、保持時間、保持温度、保持圧力、残留磁束密度、異
方化率、固有保磁力および磁石粉末の(BH)maxを
合わせて表2に示す。表2 実施例1と同様にして順反応を終えたのち続けて保持温
度で及び圧力で熱処理し順変態に伴う歪みを緩和した
後、続けて脱水素(水素圧力0.0001MPa(0.
001atm))した結果は、実施例1同様高い異方性
が維持された。そして、60分以上保持することで、実
施例1と比較して保磁力が高くなる。一方短時間の保持
では異方性は失われないが、保磁力は低い。また、反応
速度が早いと、異方性は失われ、続けて保持、脱水素を
行っても異方性は回復しない。 実施例3.主として実施例2のNo.7の水素吸蔵条件
で水素吸蔵させて合金組織の順変態を行いその後180
分保持したものを、表3に示す試料温度、逆変態相対速
度、逆変態水素ガス圧力0.0001MPa(0.00
1atm)で逆変態を行い、その後、820℃、真空下
で30分加熱処理を行い、その後急冷した(なお、N
o.56については実施例1のNo.52の水素吸蔵条
件で水素吸蔵させて合金組織の順変態を行った。)。こ
れにより表3に示す希土類磁石粉末を製造した。
【0039】得られた希土類磁石粉末の残留磁束密度、
固有保磁力および(BH)maxを測定し、異方化率を
求めた。保磁力、異方化率とともに順変態相対反応速
度、保持時間、逆変態相対速度、試料温度、残留磁束密
度、異方化率、固有保磁力および磁石粉末の(BH)m
axを合わせて表3に示す。表3 逆変態反応速度が0.1〜0.4の範囲では、転写され
た方位が、乱れることなくNd2 Fe14Bに転写され異
方性が得られるが、No.55に見られるように、逆変
態反応速度がそれより早い場合には異方性が低くなり高
い特性が得られない。
【0040】一方、No.56に見られるように、変態
の反応速度が早い場合には、その後の処理が良くても異
方性は得られない。 実施例4.主に実施例3のNo.11と同様に順変態、
熱処理および逆変態を行ったものを表4に示す保持温度
および保持時間で加熱処理を行った。(なお、No.5
6については実施例3のNo.54の順変態、熱処理お
よび逆変態を行った。)これにより表4に示す希土類磁
石粉末を製造した。
【0041】また、得られた粉末磁石粉末を用い、熱硬
化性樹脂としてフェノール樹脂を粉末磁石100gに対
して3g使用し、型内で圧縮成形してボンド磁石を得
た。また、成形時に2.0T(20kOe)の磁場を作
用させたものと、無磁場のものとの2種類のものを得
た。得られた希土類磁石粉末の残留磁束密度、固有保磁
力および(BH)maxを測定し、異方化率を求めた。
また、この磁石に含まれる残留水素を求めた。残留水素
の値は全体を100重量%としたときの重量%で示し
た。さらにボンド磁石の最大エネルギー積(BH)ma
xを測定した。この結果、135kJ/m3以上の最大
エネルギー積を有する磁気異方性ボンド磁石を得ること
ができた。
【0042】保磁力、異方化率とともに順変態相対反応
速度、保持時間、逆変態相対速度、逆変態後の保持温度
および保持時間の処理条件を表4に、測定された磁気特
性を表5に示す。 表4 表5 脱水素時間が25分以上保持することで、十分に水素が
抜け異方性が失われることなく、高い保磁力が得られる
ことがわかる。一方保持時間が早い場合は少し水素が残
り、高い保磁力は得られない。
【0043】また、異方化の反応速度が早い場合には、
高い保磁力は得られるものの、異方性は完全に消去さ
れ、等方性の粉末しか得られない。 実施例5.Nd:12.5at%、B:6.2at%、
残部Feよりなる合金に表6に示す微量のGa,Nbを
添加し、実施例1で説明したのと同様にボタンアーク溶
解で溶製し、1140℃で均質化終了を行い、その後表
6に示す条件で高温水素熱処理を行った。その後実施例
4と同様に磁気特性を測定した。測定結果を表7に示
す。 表6 表7 Ga添加は逆磁区の発生を抑えるための粒界のクリーニ
ング効果をもち高い保磁力が得られる。また、Nb添加
は、転写の効果を上げる働きをもつ。その結果Ga,N
bの量元素の微量添加で従来得られていない、350k
J/m3(44.0MGOe)の高い特性が得られる。
そして、最大エネルギー積が167.9〜200.5k
J/m3(21.1〜25.0MGOe)の磁気異方性
ボンド磁石を得ることができた。
【発明の効果】本発明の異方性磁石粉末は、RFe(G
a+Nb)B系合金を磁気異方性磁石粉末に使用して熱
硬化性樹脂とを圧縮成形することにより、167.9〜
200.5kJ/m3(21.1〜25.0MGOe)
の優れた(BH)maxをもつ非常に優れた異方性ボン
ド磁石とすることができる。このRFe(Ga+Nb)
B系合金の磁気異方性磁石粉末は、異方性(Br/Bs
=1.6T(16KG))が0.82〜0.86である
ことが好ましい。このRFe(Ga+Nb)B系合金の
磁気異方性磁石粉末が、固有保磁力(iHc)が796
〜1193kA/m(10.0〜15kOe)、(B
H)maxが300〜350kJ/m3(37.8〜4
4.0MGOe)であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 希土類合金の順変態反応の合金組成と反応速
度との関係を示す線図である。
【図2】 希土類合金の順変態反応の反応温度と反応速
度との関係を示す線図である。
【図3】 希土類合金の順変態反応の水素ガス圧力と反
応速度との関係を示す線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5E040 AA04 AA19 BB05 CA01 HB05 NN12 NN14

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高温水素熱処理され、12〜15at%
    のイットリウム(Y)を含む希土類元素(以下、Rとい
    う。)と、5.5〜8at%のホウ素(以下、Bとい
    う。)と、5.5〜8at%のホウ素(以下、Bとい
    う。)と、0.01〜1.0%のガリウム(以下、Ga
    という。)と、0.01〜0.6at%のニオブ(以
    下、Nbという。)と、不可避の不純物元素を含み、残
    りが鉄(Fe)で構成されるRFe(Ga+Nb)B系
    合金からなる磁気異方性磁石粉末と熱硬化性樹脂とを圧
    縮成形した磁気異方性ボンド磁石において最大エネルギ
    ー積((BH)max)が167.9〜200.5kJ
    /m3(21.1〜25.0MGOe)であることを特
    徴とする磁気異方性ボンド磁石。
  2. 【請求項2】 前記磁気異方性磁石粉末が、異方性(B
    r/Bs、ただしBsは1.6T(16kG)とし
    た。)が0.82〜0.86であることを特徴とする請
    求項1に記載の磁気異方性ボンド磁石。
  3. 【請求項3】 前記磁気異方性磁石粉末が、固有保磁
    力(iHc)が796〜1193kA/m(10.0〜
    15kOe)、(BH)maxが300〜350kJ/
    3(37.8〜44.0MGOe)であることを特徴
    とする請求項2に記載の磁気異方性ボンド磁石。
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