JP2003303703A - Ptcサーミスタ - Google Patents

Ptcサーミスタ

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JP2003303703A JP2003029685A JP2003029685A JP2003303703A JP 2003303703 A JP2003303703 A JP 2003303703A JP 2003029685 A JP2003029685 A JP 2003029685A JP 2003029685 A JP2003029685 A JP 2003029685A JP 2003303703 A JP2003303703 A JP 2003303703A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】熱衝撃試験後に得られる抵抗値が0.03Ω以
下であり、100℃以下の動作温度で繰り返し動作させ
た場合であっても使用初期に得られる抵抗値を充分に維
持することのできる信頼性に優れたPTCサーミスタの
提供。 【解決手段】互いに対向した状態で配置された1対の電
極2及び電極3と、電極2及び電極3の間に配置されており
かつ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、を
少なくとも有するPTCサーミスタであって、サーミス
タ素体は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物
と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体で
あり、高分子マトリックスの分子量が1万〜40万であ
り、低分子有機化合物の分子量が100〜3000であり、高
分子マトリックスが85〜95℃の融解開始温度を有す
るオレフィン系高分子化合物であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、PTC(Positive
Temperature Coefficient)サーミスタに関する。より
詳しくは、本発明は、1対の電極の間に配置されたサー
ミスタ素体を有し、このサーミスタ素体が、高分子マト
リックス、低分子有機化合物および導電性粒子との成形
体からなるPTCサーミスタに関する。本発明のPTC
サーミスタは、温度センサ及び過電流保護素子(例えば
リチウムイオン電池の過電流保護素子)として好適に使
用可能である。
【0002】
【従来の技術】PTC(Positive Temperature Coeffic
ient)サーミスタは、互いに対向した状態で配置された
1対の電極と、当該1対の電極の間に配置されたサーミ
スタ素体を少なくとも備える構成を有している。そし
て、上記サーミスタ素体は、その抵抗値が、一定の温度
範囲において、温度の上昇とともに急激に増大する「正
の抵抗-温度特性」を有している。
【0003】PTCサーミスタは、上記の特性を利用し
て、例えば、自己制御型発熱体、温度センサ、限流素
子、過電流保護素子等として、電子機器の回路保護に使
用される。このPTCサーミスタには、上記の用途等に
使用する観点から、非動作時の室温抵抗値が低く、非動
作時の室温抵抗値と動作時の抵抗値との変化率が大きい
こと、繰り返し動作させた場合における抵抗値の変化量
(使用初期の抵抗値と繰り返し動作させた後の抵抗値と
の差)が小さいこと、遮断特性に優れること、及び、素
子の発熱温度が低いこと、並びに、小型化、軽量化及び
低コスト化が図れることが要求される。
【0004】PTCサーミスタは、セラミクス材料から
なるサーミスタ素体を搭載するタイプのものが一般的で
あるが、このタイプのPTCサーミスタは、遮断特性に
劣り、サーミスタ素体の発熱温度が高く、小型化、軽量
化、低コスト化が困難であった。特に、リチウムイオン
電池を代表とする電池の過電流保護素子として用いる場
合、PTCサーミスタの動作温度は100℃以下、好ま
しくは80〜95℃が望まれているが、上記のタイプの
PTCサーミスタはこの動作温度を満足することが困難
であった。
【0005】そこで、上述の動作温度の低温化等の要求
に応えるために、熱可塑性樹脂(高分子マトリクス)と
導電性微粒子とからなる成形体をサーミスタ素体として
備えるタイプのPTCサーミスタ(以下、必要に応じて
「P−PTCサーミスタ」という)の検討がなされてい
る。
【0006】このようなP−PTCサーミスタとして
は、例えば、高分子マトリクスとして低密度ポリエチレ
ン、導電性粒子(導電性フィラー)としてニッケル粉末
をそれぞれ用いて形成したサーミスタ素体を搭載したも
のが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
このP−PTCサーミスタは、比較的低い動作温度(1
00℃以下、好ましくは80℃〜95℃)を意図したも
のである。
【0007】
【特許文献1】特開平11−168005号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
許文献1に記載のP−PTCサーミスタをはじめとする
従来のP−PTCサーミスタは、100℃以下の動作温
度、好ましくは80〜95℃の動作温度で繰り返し動作
させた場合に要求される以下の電気的特性条件を満たし
ていないため、未だ充分な信頼性を得られていないこと
を本発明者らは見出した。
【0009】PTCサーミスタには、昇温と降温とを所
定の回数以上繰り返して動作させた後においても、動作
後の抵抗値{室温(25℃)で測定される値}が使用初
期の抵抗値{室温(25℃)で測定される値}とほぼ同
等の低い値を継続的に再現できるという電気的特性(繰
り返し動作に対する信頼性)を有していることが要求さ
れる。また、この抵抗値が大きくなるとPTCサーミス
タの消費電力が増加するので、特にPTCサーミスタが
搭載される電子機器が携帯電話などの小型の機器である
場合に問題となる。
【0010】上記の昇温と降温のサイクルの回数は、P
TCサーミスタを温度センサや電源(例えば、リチウム
イオン二次電池)に対する過電流保護素子等として搭載
する電子機器(例えば、携帯電話)に要求される性能や
寿命により変化するものである。しかし、PTCサーミ
スタの上記電気的特性(繰り返し動作に対する信頼性)
は、一般に、JIS C 0025規定、又はMIL−
STD−202F 107規定の「熱衝撃試験」により
測定される抵抗値{室温(25℃)で測定される値}を
基準(指標)として評価することができる。
【0011】上記「熱衝撃試験」は、PTCサーミスタ
に対して下記(i)工程〜(iv)工程からなる1つの
熱処理サイクルを200回繰り返し、その後に抵抗値
{室温(25℃)で測定される値}を測定することによ
り行われる試験である。すなわち、1つの熱処理サイク
ルは、(i)PTCサーミスタを、これに搭載されてい
るサーミスタ素体の温度が−40℃となる温度条件のも
とで30分保持する工程、(ii)上記保持時間の10
%の時間(3分)以内にサーミスタ素体の温度を85℃
まで昇温する工程、(iii)サーミスタ素体の温度が
85℃となる温度条件のもとで30分保持する工程、
(iv)上記保持時間の10%の時間(3分)以内にサ
ーミスタ素体の温度を−40℃まで降温する工程とから
なる。
【0012】本発明者らは、動作温度が100℃以下
(好ましくは80〜95℃)である使用環境のもとで使
用される「P−PTCサーミスタ」の場合、上述の熱衝
撃試験の後に測定される抵抗値{室温(25℃)で測定
される値}が0.03Ω以下であれば、100℃以下の
動作温度での繰り返し動作に対する信頼性を有している
と評価することができることを見出した。
【0013】そして、本発明者らは、上記特許文献1に
記載のP−PTCサーミスタをはじめとする従来のP−
PTCサーミスタは、熱衝撃試験後の抵抗値を0.03
Ω以下とすることができず、繰り返し動作させる場合の
信頼性が充分得られていないことを見出した。また、本
発明者らは、従来のP−PTCサーミスタは、熱衝撃試
験後の抵抗値を0.03Ω以下とすることができないの
で、動作に伴う消費電力が大きくなるため、電子機器に
搭載して繰り返し使用することが困難となることを見出
した。特に、従来のP−PTCサーミスタは、携帯電話
用のリチウムイオン二次電池等の電源の過電流保護素子
として使用することが困難となる。
【0014】本発明は、このような従来技術の問題点に
鑑み、熱衝撃試験後に得られる抵抗値が0.03Ω以下
であり、100℃以下の動作温度で繰り返し動作させた
場合であっても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持
することのできる信頼性に優れたPTCサーミスタを提
供すること目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、サーミスタ素体を
高分子マトリックスと、低分子有機化合物と、電子伝導
性を有する導電性粒子とからなる成形体から構成する場
合、(I)特定の範囲の融解開始温度を有する高分子マ
トリックスをサーミスタ素体に含有させること、(I
I)特定の範囲の密度を有する高分子マトリックスをサ
ーミスタ素体に含有させること、(III)特定の範囲
の線膨張係数を有する高分子マトリックスをサーミスタ
素体に含有させること、(IV)特定の範囲の針入度を
有する低分子有機化合物をサーミスタ素体に含有させる
こと、(V)特定の範囲の分岐比率総和を有する低分子
有機化合物をサーミスタ素体に含有させること、(V
I)融点の差が特定の範囲にある高分子マトリックスと
低分子有機化合物とを用いてサーミスタ素体を形成する
こと、(VII)特定の形状、特定の範囲の比表面積を
有するニッケルからなる粒子をサーミスタ素体に含有さ
せること、が上記目的を達成することに対して非常に有
効であることを見出した。
【0016】そして、本発明者らは、上記(I)〜(V
II)の条件のうちの少なくとも1つを満たすサーミス
タ素体を備えるPTCサーミスタを構成することによ
り、上記目的が達成可能であることを見出し、本発明に
到達した。
【0017】すなわち、本発明は、互いに対向した状態
で配置された1対の電極と、1対の電極の間に配置され
ておりかつ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体
と、を少なくとも有するPTCサーミスタであって、サ
ーミスタ素体は、高分子マトリックスと、低分子有機化
合物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形
体であり、高分子マトリックスの分子量が10000〜
400000であり、低分子有機化合物の分子量が10
0〜3000であり、高分子マトリックスが、85〜9
5℃の融解開始温度を有するオレフィン系高分子化合物
であること、を特徴とするPTCサーミスタを提供す
る。
【0018】上述のように、融解開始温度が85〜95
℃の範囲の高分子マトリックス(ここではオレフィン系
高分子化合物)をサーミスタ素体に含有させることによ
り、動作温度が80〜100℃のPTCサーミスタに搭
載可能なサーミスタ素体を容易かつ確実に構成すること
が可能となる。そして、上記の条件を満たすサーミスタ
素体を備えたこのタイプのPTCサーミスタ(以下、
「PTCサーミスタ(I)」という)は、熱衝撃試験後
に得られる抵抗値が0.03Ω以下となる。そのため、
PTCサーミスタ(I)は、100℃以下(好ましくは
80〜95℃)の動作温度で繰り返し動作させた場合で
あっても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持するこ
とができ、優れた信頼性を得ることができる。
【0019】ここで、本発明において、PTCサーミス
タの「動作温度」とは、通電中のPTCサーミスタのサ
ーミスタ素体と熱平衡にある電極表面の部分の表面温度
を示す。より詳しくは、PTCサーミスタの1対の電極
間に6Vの電圧を掛けて短絡電流を流した後の100秒
後の電極表面の部分の表面温度を示す。
【0020】ここで、本明細書において、高分子マトリ
ックスの「融解開始温度」とは、高分子マトリックスを
測定試料として示差走査熱量測定法(DSC)により分
析した際に得られるDSC曲線を用いて以下のように定
義される温度である。
【0021】すなわち、測定試料及び標準物質を室温
(25℃)から一定の昇温速度(2℃/min)で昇温
することにより得られるDSC曲線において、最初にあ
らわれる吸熱ピークの最も低温側にあらわれる変曲点に
おける接線とベースライン{測定開始点を通る示差走査
熱量が約0mWの直線であって温度軸(横軸)に平行な
直線}との交点における温度を示す(後述の図2、図3
を参照)。なお、本発明においては、上記の示差走査熱
量測定法に使用する標準物質(熱的に安定な物質)とし
て、α−Al23からなる粉末を使用するものとする。
【0022】また、本明細書において、「熱衝撃試験」
とは、先に述べたJIS C 0025規定に従って行
われる試験であり、PTCサーミスタに対して先に述べ
た(i)工程〜(iv)工程からなる1つの熱処理サイ
クルを200回繰り返し、その後に抵抗値{室温(25
℃)で測定される値}を測定することにより行われる試
験である。熱衝撃試験を行うための装置としては、エス
ペック社製の商品名:「TSE−11−A」の装置及び
商品名:「TSA−71H−W」の装置がある。
【0023】ここで、本発明のPTCサーミスタ(I)
において、高分子マトリックスの融解開始温度が85℃
未満となると熱衝撃試験後の抵抗値が0.03Ωを超え
ることになる。また、高分子マトリックスの融解開始温
度が95℃を超えると動作温度が100℃を超える。更
に、融解開始温度が95℃を超えると熱衝撃試験後の抵
抗値が0.03Ωを超えることになる。
【0024】また、本発明のPTCサーミスタ(I)
{及び後述のPTCサーミスタ(II)〜(VII)}
においては、高分子マトリックスの分子量(数平均分子
量)が10000未満であると、動作温度が低くなりす
ぎて、目的の動作温度(100℃以下、好ましくは80
〜95℃)を確保できなくなる。この場合、例えば、携
帯電話等の携帯用機器の電源であるリチウムイオン二次
電池の過電流保護素子としてPTCサーミスタを使用し
た場合、異常ではない低い温度領域でPTCサーミスタ
が動作することになる。
【0025】更に、本発明のPTCサーミスタ(I)
{及び後述のPTCサーミスタ(II)〜(VII)}
においては、高分子マトリックスの分子量(数平均分子
量)が400000を超えると、動作温度が高くなりす
ぎて、目的の動作温度(100℃以下、好ましくは80
〜95℃)を確保できなくなる。この場合、例えば、携
帯電話等の携帯用機器の電源であるリチウムイオン二次
電池の過電流保護素子としてPTCサーミスタを使用し
た場合、異常な高い温度領域でしかPTCサーミスタが
動作せず、リチウムイオン二次電池等の電子部品が故障
することになる。以上の観点から、本発明のPTCサー
ミスタ(I){及び後述のPTCサーミスタ(II)〜
(VII)}においては、高分子マトリックスの分子量
(数平均分子量)は、10000〜400000であ
り、より好ましくは100000〜200000であ
る。
【0026】また、本発明のPTCサーミスタ(I)
{及び後述のPTCサーミスタ(II)〜(VII)}
においては、低分子有機化合物の分子量(数平均分子
量)が100未満であると、サーミスタ素体が室温でも
軟化して形状変形しやすく、目的の動作温度(100℃
以下、好ましくは80〜95℃)における熱衝撃試験後
の抵抗値が0.03Ωを超えてしまう。
【0027】また、本発明のPTCサーミスタ(I)
{及び後述のPTCサーミスタ(II)〜(VII)}
においては、低分子有機化合物の分子量(数平均分子
量)が3000を超えると、動作温度が高くなりすぎ
て、目的の動作温度(100℃以下、好ましくは80〜
95℃)を確保できなくなる。以上の観点から、本発明
のPTCサーミスタ(I){及び後述のPTCサーミス
タ(II)〜(VII)}においては、低分子有機化合
物の分子量(数平均分子量)は、100〜3000であ
り、好ましくは500〜1000である。
【0028】更に、本明細書において、「オレフィン系
高分子化合物」とは、分子内に少なくとも1つのエチレ
ン性不飽和結合(エチレン2重結合)を有する高分子化
合物を示す。
【0029】また、本発明は、互いに対向した状態で配
置された1対の電極と、1対の電極の間に配置されてお
りかつ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、
を少なくとも有するPTCサーミスタであって、サーミ
スタ素体は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物
と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体で
あり、高分子マトリックスの分子量が10000〜40
0000であり、低分子有機化合物の分子量が100〜
3000であり、高分子マトリックスの密度が920〜
928kg・m-3であること、を特徴とするPTCサー
ミスタを提供する。
【0030】上述のように、密度が920〜928kg
・m-3の範囲の高分子マトリックスをサーミスタ素体に
含有させることにより、動作温度が80〜100℃のP
TCサーミスタに搭載可能なサーミスタ素体を容易かつ
確実に構成することが可能となる。そして、上記の条件
を満たすサーミスタ素体を備えたこのタイプのPTCサ
ーミスタ(以下、「PTCサーミスタ(II)」とい
う)は、熱衝撃試験後に得られる抵抗値が0.03Ω以
下となる。そのため、PTCサーミスタ(II)は、1
00℃以下(好ましくは80〜95℃)の動作温度で繰
り返し動作させた場合であっても使用初期に得られる抵
抗値を充分に維持することができ、優れた信頼性を得る
ことができる。
【0031】一般に、熱衝撃試験中の加熱と冷却との繰
り返しによる温度変化により、高分子マトリックス中の
非晶質部の割合及び構造が、初期状態から大きく変化す
ることが知られている。本発明者らは、高分子マトリッ
クス中の非晶質部の割合及び構造の変化が、熱衝撃試験
後の抵抗値に影響していると推察している。そして、本
発明者らは、密度が上述の範囲にある比較的密度の高い
高分子マトリクスは、比較的結晶性が高く初期状態にお
いて非晶質部の割合が少ないため、熱衝撃試験中の加熱
と冷却との繰り返しによる温度変化が起こっても、非晶
質部の割合及び構造の変化が充分に抑制される安定な構
造を有していると推察している。これにより、本発明者
らは、密度が上述の範囲にある高分子マトリクスを含む
サーミスタ素体を搭載したPTCサーミスタ(II)
は、熱衝撃試験後において0.03Ω以下の抵抗値が得
られるものと推察している。
【0032】ここで、本発明のPTCサーミスタ(I
I)において、高分子マトリックスの密度が920kg
・m-3未満となると熱衝撃試験後の抵抗値が0.03Ω
を超えることになる。また、高分子マトリックスの密度
が928kg・m-3を超えると融点が上昇し、動作温度
が100℃を超えてしまい、本発明の効果が得られな
い。
【0033】更に、本発明は、互いに対向した状態で配
置された1対の電極と、1対の電極の間に配置されてお
りかつ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、
を少なくとも有するPTCサーミスタであって、サーミ
スタ素体は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物
と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体で
あり、高分子マトリックスの分子量が10000〜40
0000であり、低分子有機化合物の分子量が100〜
3000であり、高分子マトリックスの線膨張係数が
1.00×10-4〜5.43×10-4であること、を特
徴とするPTCサーミスタを提供する。
【0034】ここで、本明細書において、高分子マトリ
ックスの「線膨張係数」とは、高分子マトリックスの
「融点開始温度」未満の温度(好ましくは25℃〜80
℃)で測定される値である。
【0035】上述のように、線膨張係数が1.00×1
-4〜5.43×10-4の範囲の高分子マトリックスを
サーミスタ素体に含有させることにより、動作温度が8
0〜100℃のPTCサーミスタに搭載可能なサーミス
タ素体を容易かつ確実に構成することが可能となる。そ
して、上記の条件を満たすサーミスタ素体を備えたこの
タイプのPTCサーミスタ(以下、「PTCサーミスタ
(III)」という)は、熱衝撃試験後に得られる抵抗
値が0.03Ω以下となる。そのため、PTCサーミス
タ(III)は、100℃以下(好ましくは80〜95
℃)の動作温度で繰り返し動作させた場合であっても使
用初期に得られる抵抗値を充分に維持することができ、
優れた信頼性を得ることができる。
【0036】上述の線膨張係数の範囲の高分子マトリッ
クスをサーミスタ素体に含有させることは、本発明者ら
が、熱衝撃試験を行うとサーミスタ素体中に含まれる導
電性粒子と高分子マトリックスの線膨張係数差によって
高分子マトリックス中に内部応力が発生し、この内部応
力によりサーミスタ素体中の微小な部分領域の変形が起
こって抵抗値が上昇するものと考え、高分子マトリック
スとしてのポリエチレンの線膨張係数が熱衝撃試験後の
抵抗値に与える影響について検討した結果得られたもの
である。上述の範囲の比較的小さい線膨張係数を有する
高分子マトリックスをサーミスタ素体に含有させること
により、熱衝撃試験後の抵抗値の上昇を充分に低減する
ことができる。
【0037】ここで、本発明のPTCサーミスタ(II
I)において、高分子マトリックスの線膨張係数が1.
00×10-4未満となると融点が上昇し、動作温度が1
00℃を超えてしまい、本発明の効果が得られない。ま
た、高分子マトリックスの線膨張係数が5.43×10
-4を超えると熱衝撃試験後の抵抗値が0.03Ωを超え
ることになる。
【0038】更に、本発明は、互いに対向した状態で配
置された1対の電極と、1対の電極の間に配置されてお
りかつ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、
を少なくとも有するPTCサーミスタであって、サーミ
スタ素体は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物
と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体で
あり、高分子マトリックスの分子量が10000〜40
0000であり、低分子有機化合物の分子量が100〜
3000であり、低分子有機化合物の25℃における針
入度が0.5〜6.5であること、を特徴とするPTC
サーミスタを提供する。
【0039】上述のように、25℃における針入度が
0.5〜6.5の範囲の低分子有機化合物をサーミスタ
素体に含有させることにより、動作温度が80〜100
℃のPTCサーミスタに搭載可能なサーミスタ素体を容
易かつ確実に構成することが可能となる。そして、上記
の条件を満たすサーミスタ素体を備えたこのタイプのP
TCサーミスタ(以下、「PTCサーミスタ(IV)」
という)は、熱衝撃試験後に得られる抵抗値が0.03
Ω以下となる。そのため、PTCサーミスタ(IV)
は、100℃以下(好ましくは80〜95℃)の動作温
度で繰り返し動作させた場合であっても使用初期に得ら
れる抵抗値を充分に維持することができ、優れた信頼性
を得ることができる。
【0040】ここで、本明細書において、低分子有機化
合物の25℃における「針入度」とは、JIS K−2
235−5.4規定の針入度測定により求められる値を
示す。針入度測定は、試料(ここでは低分子有機化合物
からなる試料)の硬さを測定する方法であり、規定温度
下、規定質量の針に100gの荷重をかけながら、その先端
を試料中に垂直に進入させ、針の試料中に進入した部分
の長さに基づいて試料の硬さを表すものである。より具
体的には、針入度は、針の先端部分が5秒間で試料に侵
入する長さZ[mm]を求め、この10倍の数値(10
Z)で表す。針入度の値は、1/10mmが針入度1で
あり、数字が大きいほど柔らかい材料となる。
【0041】従来のP−PTCサーミスタに含有される
低分子有機化合物としては、針入度が8〜35程度のも
の(ASTM D1321に基づく測定データ)を用い
ていた。これに対して、本発明者らは、低分子有機化合
物の分子量が同程度であっても、針入度が熱衝撃試験後
の抵抗値に大きく影響することを見出した。そして、上
述のように針入度が0.5〜6.5の範囲にある従来と
比較して極めて硬い低分子有機化合物をサーミスタ素体
に含有させることにより熱衝撃試験後の抵抗値を0.0
3Ω以下とすることが容易にできることを見出した。針
入度が0.5〜6.5の範囲の低分子有機化合物をサー
ミスタ素体に含有させる場合、その含有率は、サーミス
タ素体の体積を基準として3〜35体積%であることが
好ましい。
【0042】ここで、本発明のPTCサーミスタ(I
V)において、25℃における針入度が0.5未満の低
分子有機化合物は安定に得ること極めて困難となる。ま
た、低分子有機化合物の25℃における針入度が6.5
を超えると熱衝撃試験後の抵抗値が0.03Ωを超える
ことになる。上述の観点から、好ましい針入度の範囲は
0.5〜6.5であり、より好ましくは0.5〜2.
0、さらに好ましくは0.5〜1.5である。
【0043】更に、本発明は、互いに対向した状態で配
置された1対の電極と、1対の電極の間に配置されてお
りかつ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、
を少なくとも有するPTCサーミスタであって、サーミ
スタ素体は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物
と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体で
あり、高分子マトリックスの分子量が10000〜40
0000であり、低分子有機化合物の分子量が100〜
3000であり、低分子有機化合物は、分岐比率総和が
3以下のエチレンホモポリマーであること、を特徴とす
るPTCサーミスタを提供する。
【0044】上述のように、分岐比率総和が3以下のエ
チレンホモポリマーを低分子有機化合物としてサーミス
タ素体に含有させることにより、動作温度が80〜10
0℃のPTCサーミスタに搭載可能なサーミスタ素体を
容易かつ確実に構成することが可能となる。そして、上
記の条件を満たすサーミスタ素体を備えたこのタイプの
PTCサーミスタ(以下、「PTCサーミスタ(V)」
という)は、熱衝撃試験後に得られる抵抗値が0.03
Ω以下となる。そのため、PTCサーミスタ(V)は、
100℃以下(好ましくは80〜95℃)の動作温度で
繰り返し動作させた場合であっても使用初期に得られる
抵抗値を充分に維持することができ、優れた信頼性を得
ることができる。
【0045】本発明者等は、熱衝撃試験によりサーミス
タ素体中に含まれる低分子有機化合物が変質し、このこ
とが熱衝撃試験後の抵抗値の上昇に影響を与えているこ
とを見出した。そして、本発明者等は、リチウムイオン
二次電池を代表とする電池の過電流保護素子等の動作温
度が比較的低い(100℃以下、好ましくは80〜10
0℃)のP−PTCサーミスタのサーミスタ素体中に含
有させる低分子有機化合物について検討した結果、低分
子有機化合物として上述の分岐比率総和の条件を満たす
エチレンホモポリマーを使用することにより、上述の低
分子有機化合物の変質に起因する熱衝撃試験後の抵抗値
の上昇を充分に低減できることを見出した。
【0046】ここで、本明細書において、「分岐比率総
和が3以下のエチレンホモポリマー」とは、下記化学式
(1)で表現されるようなエチレンに基づく繰り返し単
位を主鎖の主成分とするポリマーであって、1分子当り
の主鎖から分岐する側鎖の数が0〜3のポリマーを示
す。この側鎖を有する構造としては、主鎖のメチレン基
の炭素に結合する水素がアルキル基で置換された側鎖を
有する構造(例えば、下記化学式(2)で表現されるメ
チル基が結合した構造)、主鎖の2つのメチレン基の間
に2つの炭素原子間に不飽和結合(π結合)を有する特
性基が挿入された構造(例えば、下記化学式(3)で表
現されるビニリデン基が結合した構造)、又は、主鎖の
2つのメチレン基の間にカルボニル基が挿入された構造
(例えば、下記化学式(4)で表現される構造)が挙げ
られる。例えば、エチレンに基づく繰り返し単位のみか
らなるポリマーの場合、分岐比率総和が0のエチレンホ
モポリマーとなる。
【0047】
【化1】
【0048】
【化2】
【0049】
【化3】
【0050】
【化4】
【0051】また、本明細書において、「分岐比率総
和」は以下のようにして決定される値である。即ち、低
分子有機化合物をNMR(核磁気共鳴)スペクトル法に
より分析(13C測定(標準) 1H完全デカップリング
測定、積算回数 50000回)することにより算出さ
れる値である。先ず、得られる低分子有機化合物のNM
Rスペクトルのうち、低分子有機化合物の分岐末端の炭
素原子に帰属される化学シフト(ppm)のピーク面積
を、低分子有機化合物の全炭素原子についての全ピーク
面積で除して100百分率(以下、「分岐比率」とい
う)で表示する。そして、各化学シフト(ppm)にお
ける分岐比率の総和を低分子有機化合物の「分岐比率総
和」とする。
【0052】ここで、本発明のPTCサーミスタ(V)
において、エチレンホモポリマーの分岐比率総和3を超
えると熱衝撃試験後の抵抗値が0.03Ωを超えること
になる。上述の観点から、エチレンホモポリマーの分岐
比率総和は2以下であることが好ましく、1以下である
ことがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0053】更に、本発明は、互いに対向した状態で配
置された1対の電極と、1対の電極の間に配置されてお
りかつ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、
を少なくとも有するPTCサーミスタであって、サーミ
スタ素体は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物
と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体で
あり、高分子マトリックスの分子量が10000〜40
0000であり、低分子有機化合物の分子量が100〜
3000であり、高分子マトリックスの融点T1[℃]
と、低分子有機化合物の融点T2[℃]とが下記式
(A)で表される条件を満たしていること、を特徴とす
るPTCサーミスタを提供する。7℃≦(T1−T2)
≦40.5℃…(A)
【0054】上述のように、T1−T2が7〜40.5
℃の範囲となる高分子マトリックスと低分子有機化合物
との組み合せを選択してサーミスタ素体を構成すること
により、動作温度が80〜100℃のPTCサーミスタ
に搭載可能なサーミスタ素体を容易かつ確実に構成する
ことが可能となる。そして、上記の条件を満たすサーミ
スタ素体を備えたこのタイプのPTCサーミスタ(以
下、「PTCサーミスタ(VI)」という)は、熱衝撃
試験後に得られる抵抗値が0.03Ω以下となる。その
ため、PTCサーミスタ(VI)は、100℃以下(好
ましくは80〜95℃)の動作温度で繰り返し動作させ
た場合であっても使用初期に得られる抵抗値を充分に維
持することができ、優れた信頼性を得ることができる。
【0055】また、T1−T2が7〜40.5℃の範囲
となる高分子マトリックスと低分子有機化合物との組み
合せを選択してサーミスタ素体を構成する場合、非常に
理想の特性に近い良好なPTCサーミスタの抵抗−温度
特性を得ることができる。すなわち、T1−T2の条件
を満たすサーミスタ素体を搭載したPTCサーミスタの
抵抗−温度特性曲線は、80〜100℃の温度領域内の
比較的狭い温度領域(動作温度領域)のみで、抵抗値が
低温側から急激かつスムーズに所望の抵抗値まで上昇
し、動作温度領域外の温度領域では抵抗値は大きな変化
をせずほぼ一定となる。特に、動作温度領域よりも低い
温度領域では抵抗値が0.03Ω以下の低い抵抗値が保
持される(後述の図4〜図9参照)。
【0056】ここで、本発明のPTCサーミスタ(V
I)において、T1−T2が7℃未満となると熱衝撃試
験後の抵抗値が0.03Ωを超えることになる。また、
この場合、良好なPTCサーミスタの抵抗−温度特性を
得ることができなくなる。例えば、動作温度領域よりも
低い温度領域での抵抗値の変動量が0.03Ωを超える
大きなものとなったり、動作温度領域において抵抗値が
低温側から急激かつスムーズに所望の抵抗値まで上昇し
なかったり、動作温度領域よりも高温の温度領域でも抵
抗値の大きな低下及び上昇が更に起こったりする。
【0057】一方、T1−T2が40.5℃を超える場
合にも、熱衝撃試験後の抵抗値が0.03Ωを超えるこ
とになる。また、この場合、良好なPTCサーミスタの
抵抗−温度特性を得ることができなくなる。例えば、動
作温度領域よりも低い温度領域での抵抗値の変動量が
0.03Ωを超える大きなものとなったり、動作温度領
域において抵抗値が低温側から急激かつスムーズに所望
の抵抗値まで上昇しなかったり、動作温度領域よりも高
温の温度領域でも抵抗値の大きな低下及び上昇が更に起
こったりする。上述の観点から、好ましいT1−T2の
範囲は13〜32である。
【0058】更に、本発明は、互いに対向した状態で配
置された1対の電極と、1対の電極の間に配置されてお
りかつ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、
を少なくとも有するPTCサーミスタであって、サーミ
スタ素体は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物
と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体で
あり、高分子マトリックスの分子量が10000〜40
0000であり、低分子有機化合物の分子量が100〜
3000であり、導電性粒子がニッケルからなるフィラ
メント状の粒子であり、かつ、該粒子の比表面積が1.
5〜2.5m2・g-1であること、を特徴とするPTC
サーミスタを提供する。
【0059】上述のように、比表面積が1.5〜2.5
2・g-1の範囲となるニッケルからなるフィラメント
状の粒子をサーミスタ素体に含有させることにより、動
作温度が80〜100℃のPTCサーミスタに搭載可能
なサーミスタ素体を容易かつ確実に構成することが可能
となる。そして、上記の条件を満たすサーミスタ素体を
備えたこのタイプのPTCサーミスタ(以下、「PTC
サーミスタ(VII)」という)は、熱衝撃試験後に得
られる抵抗値が0.03Ω以下となる。そのため、PT
Cサーミスタ(VII)は、100℃以下(好ましくは
80〜95℃)の動作温度で繰り返し動作させた場合で
あっても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持するこ
とができ、優れた信頼性を得ることができる。
【0060】ここで、本明細書において、「ニッケルか
らなるフィラメント状の粒子」とは、ニッケルからなる
一次粒子(平均粒子径100〜2000nm)が10〜
1000個程度、鎖状に連結した形状を有する粒子を示
す。また、本明細書において、ニッケルからなるフィラ
メント状の粒子の「比表面積」とは、BET一点法に基
づく窒素ガス吸着法により求められる比表面積を示す。
【0061】ここで、本発明のPTCサーミスタ(VI
I)において、ニッケルからなるフィラメント状の粒子
の比表面積が1.5m2・g-1未満となると熱衝撃試験
後の抵抗値が0.03Ωを超えることになる。また、ニ
ッケルからなるフィラメント状の粒子の比表面積が2.
5m2・g-1を超える場合には、熱衝撃試験後の抵抗値
が0.03Ωを超えることになる。上述の観点から、ニ
ッケルからなるフィラメント状の粒子の比表面積は1.
5〜2.0m2・g-1であることが好ましい。
【0062】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
のPTCサーミスタの好適な実施形態について詳細に説
明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分に
は同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0063】[第1実施形態]図1は、本発明のPTC
サーミスタの第1実施形態の基本構成を示す模式断面図
である。図1に示すPTCサーミスタ10は、先に述べ
たPTCサーミスタ(I)の好適な一実施形態の基本構
成を示すものである。
【0064】図1に示すPTCサーミスタ10は、主と
して、互いに対向した状態で配置された1対の電極2及
び電極3と、電極2と電極3との間に配置されておりか
つ正の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体1と、電
極2に電気的に接続されたリード4と、電極3に電気的
に接続されたリード5とから構成されている。
【0065】電極2及び電極3は、例えば、平板状の形
状を有しており、PTCサーミスタの電極として機能す
る電子伝導性を有するものであれば特に限定されない。
また、リード4及びリード5は、それぞれ電極2及び電
極3から外部に電荷を放出又は注入することが可能な電
子伝導性を有していれば特に限定されない。
【0066】図1に示すPTCサーミスタ10のサーミ
スタ素体1は、高分子マトリックスと、低分子有機化合
物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体
である。そして、このサーミスタ素体1は、熱衝撃試験
後に得られるPTCサーミスタ10の抵抗値が0.03
Ω以下であり、100℃以下の動作温度で繰り返し動作
させた場合であっても使用初期に得られる抵抗値を充分
に維持可能とするために以下の構成を有している。
【0067】サーミスタ素体1に含有される高分子マト
リックスは、先に述べたようにその分子量(数平均分子
量)が10000〜400000、好ましくは1000
00〜200000であるオレフィン系高分子化合物で
ある。そして、この高分子マトリックスはその融解開始
温度が85〜95℃である。
【0068】高分子マトリックス、低分子有機化合物及
び導電性粒子からなるサーミスタ素体1を搭載するPT
Cサーミスタ10において、熱衝撃試験後の抵抗値が上
昇する原因の一つに、熱衝撃試験後中の熱処理によりサ
ーミスタ素体中の高分子マトリックスが溶融してしまう
ことが挙げられる。上記の観点から、高分子マトリック
スの融点は、動作温度の観点から90〜138℃である
ことが好ましく、100〜125℃であることがより好
ましい。
【0069】また、上記の観点から、この第1実施形態
のPTCサーミスタ10の場合、高分子マトリックスの
密度は、915〜935kg・m-3であることが好まし
く、920〜928kg・m-3であることがより好まし
い。
【0070】また、サーミスタ素体1を搭載するPTC
サーミスタ10において、熱衝撃試験後の抵抗値が上昇
する原因の一つに、高分子マトリックス中に内部応力が
発生し、この内部応力によりサーミスタ素体1中の微小
な部分領域の変形が起こることが考えられる。これによ
り、サーミスタ素体中の微小な部分領域の変形が起こっ
て抵抗値が上昇すると考えられる。そのため、導電性粒
子に対して線膨張係数の差が低い結晶性ポリマーを高分
子マトリックスとして用いることが好ましい。この観点
から、この第1実施形態のPTCサーミスタ10の場
合、高分子マトリックスの線膨張係数は、1.00×1
-4〜5.43×10-4であることがより好ましい。
【0071】また、先に述べたように良好な抵抗−温度
特性を得る観点から、高分子マトリックスの融点T1
[℃]と、低分子有機化合物の融点T2[℃]との差T
1−T2は、7〜48℃であることが好ましく、7〜4
0.5℃であることがより好ましい。これにより抵抗−
温度特性曲線におけるヒステリシスの小さなPTCサー
ミスタ10を得ることが容易にできる。
【0072】このような高分子マトリックスとしては、
例えば、特開平11−168006号公報に記載された
高分子材料のうち、上述の分子量及び融解開始温度の条
件を少なくとも満たすオレフィン系高分子化合物(更
に、好ましくは上述の密度の条件、線膨張係数の条件及
び低分子有機化合物との融点差の条件のうちの少なくと
も1つの条件を更に満たす高分子化合物)を単独或いは
2種以上を任意に組み合せて使用してもよい。更に、高
分子マトリックスとしては、ポリエチレンであることが
好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましく、メタロ
セン系触媒を用いた重合反応により製造された直鎖状の
低密度ポリエチレンが更に好ましい。
【0073】このような直鎖状の低密度ポリエチレンを
サーミスタ素体1に含有させることにより、リチウムイ
オン二次電池の過電流保護素子等の用途に適した比較的
低温の動作温度のサーミスタを容易に得ることができ
る。
【0074】ここで、「直鎖状の低密度ポリエチレン」
とは、メタロセン系触媒を用いた重合反応により製造さ
れた中・低圧法ポリエチレンであり、その分子量分布が
比較的狭いものである。ここで、「メタロセン系触媒」
とは、ビス(シクロペンタジニエル)金属錯体系の触媒
であり、下記一般式(5)で表現される化合物を示す。
【0075】
【化5】
【0076】上記式(5)中、Mは4配位中心となる金
属又はその金属イオンを示し、X及びYは同一であって
も異なっていてもよく、ハロゲン又はハロゲン化物イオ
ンを示す。Mとしては、Ti、Zr、Hf、V、Nb又
はTaが好ましく、Zrがより好ましい。X及びYとし
ては、Clが好ましい。また、一般式(5)で表現され
る化合物は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上
を任意に組み合せて使用してもよい。
【0077】直鎖状の低密度ポリエチレンは、上記式
(5)のメタロセン系触媒を用いて、公知の低密度ポリ
エチレン製造技術により製造することができる。原料の
モノマーとしては、エチレンの他に、ブテン−1、ヘキ
セン−1、オクテン−1をコモノマーとして使用しても
よい。
【0078】また、下記一般式(6)及び一般式(7)
で表される化合物をメタロセン系触媒とともに使用して
もよい。
【0079】
【化6】
【0080】
【化7】
【0081】上記式(6)中R1、R2、R3、R4及びR
5は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭
素数1〜3のアルキル基を示し、nは2〜20の整数を
示す。R1、R2、R3、R4及びR5としてはメチル基が
好ましい。上記式(7)中R6、R7及びR8は、同一で
あっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜3の
アルキル基を示し、mは2〜20の整数を示す。R6
7及びR8としてはメチル基が好ましい。
【0082】サーミスタ素体1中における高分子マトリ
ックスの含有量は、サーミスタ素体1の体積を基準とし
て、35〜70体積%であることが好ましく、40〜6
5体積%であることがより好ましい。
【0083】低分子有機化合物は、熱衝撃試験における
熱処理によりPTCサーミスタ10の抵抗−温度特性曲
線にあらわれるヒステリシスを低減するために添加され
るものである。この低分子有機化合物は、先に述べたよ
うにその分子量(数平均分子量)が100〜3000、
好ましくは500〜1000である。
【0084】また、先に述べた本発明の効果をより確実
に得る観点から、低分子化合物の融点は90〜115が
好ましい。また、上記と同様の観点から、この低分子有
機化合物の25℃における針入度は、2〜7であること
が好ましく0.5〜6.5であることことがより好まし
い。
【0085】このような低分子有機化合物としては、例
えば、パラフィンワックス(ポリエチレンワックス、マ
イクロクリスタリンワックス)のうち、上述の分子量の
条件を満たす化合物(更に、好ましくは上述の針入度の
条件を更に満たす化合物)を単独或いは2種以上を任意
に組み合せて使用してもよい。更に、先に述べた本発明
の効果をより確実に得る観点から、低分子有機化合物
は、分岐比率総和が6以下のエチレンホモポリマーが好
ましく、分岐比率総和が3以下のエチレンホモポリマー
であることがより好ましい。
【0086】サーミスタ素体1中における低分子有機化
合物の含有量は、サーミスタ素体1の体積を基準とし
て、2〜30体積%であることが好ましく、2〜25体
積%であることがより好ましい。
【0087】導電性粒子は、電子伝導性を有していれば
特に限定されないが、先に述べた本発明の効果をより確
実に得る観点から、導電性セラミック粉(例えば、Ti
C、WCなど)、カーボンブラック、銀、タングステ
ン、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくと
も1種の導電性物質からなる粒子であることが好まし
く、比表面積が1.5〜2.5m2・g-1であるニッケ
ルからなるフィラメント状の粒子であることがより好ま
しい。
【0088】サーミスタ素体1中における導電性粒子の
含有量は、サーミスタ素体1の体積を基準として、20
〜60体積%であることが好ましく、25〜50体積%
であることがより好ましい。
【0089】このPTCサーミスタは、上述の条件を満
たすように高分子マトリックス、低分子有機化合物及び
導電性粒子を選択し、更にそれぞれの含有量を調節して
サーミスタ素体1を形成すること以外は、公知のPTC
サーミスタの製造技術により製造することができる。
【0090】[第2実施形態]次に、本発明のPTCサ
ーミスタの第2実施形態{先に述べたPTCサーミスタ
(II)の好適な一実施形態}について説明する。
【0091】第2実施形態のPTCサーミスタ(図示せ
ず)は、後述するサーミスタ素体(図示せず)を有して
いること以外は、上述の第1実施形態のPTCサーミス
タと同様の構成を有する。
【0092】このPTCサーミスタのサーミスタ素体
は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物と、電子
伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体である。そ
して、このサーミスタ素体は、熱衝撃試験後に得られる
PTCサーミスタの抵抗値が0.03Ω以下であり、1
00℃以下の動作温度で繰り返し動作させた場合であっ
ても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持可能とする
ために以下の構成を有している。
【0093】サーミスタ素体に含有される高分子マトリ
ックスは、先に述べたようにその分子量(数平均分子
量)が10000〜400000、好ましくは1000
00〜200000である。また、高分子マトリックス
の密度は920〜928kg・m-3である。
【0094】更に、上述の本発明の効果をより確実に得
る観点から、高分子マトリックスの融解開始温度は、8
0〜115℃であることが好ましく、85〜95℃であ
ることがより好ましい。また、上記と同様の観点から、
高分子マトリックスの融点は、動作温度の観点から90
〜138℃であることが好ましく、100〜125℃で
あることがより好ましい。
【0095】また、導電性粒子に対して線膨張係数の差
が低い結晶性ポリマーを高分子マトリックスとして用い
る観点から、このPTCサーミスタの場合、高分子マト
リックスの線膨張係数は、1.00×10-4〜5.43
×10-4であることが好ましい。
【0096】また、先に述べたように良好な抵抗−温度
特性を得る観点から、高分子マトリックスの融点T1
[℃]と、低分子有機化合物の融点T2[℃]との差T
1−T2は、7〜48℃であることが好ましく、7〜4
0.5℃であることがより好ましい。これにより抵抗−
温度特性曲線におけるヒステリシスの小さなPTCサー
ミスタを得ることが容易にできる。
【0097】このような高分子マトリックスとしては、
例えば、特開平11−168006号公報に記載された
高分子材料のうち、上述の分子量及び密度の条件を少な
くとも満たす化合物(更に、好ましくは上述の融解開始
温度の条件、線膨張係数の条件及び低分子有機化合物と
の融点差の条件のうちの少なくとも1つの条件を更に満
たす化合物)を単独或いは2種以上を任意に組み合せて
使用してもよい。更に、高分子マトリックスとしては、
ポリエチレンであることが好ましく、低密度ポリエチレ
ンがより好ましく、メタロセン系触媒を用いた重合反応
により製造された直鎖状の低密度ポリエチレンが更に好
ましい。
【0098】この「直鎖状の低密度ポリエチレン」も、
先に述べたメタロセン系触媒を用いた重合反応により製
造された中・低圧法ポリエチレンであり、その分子量分
布が比較的狭いものである。「メタロセン系触媒」も、
ビス(シクロペンタジニエル)金属錯体系の触媒であ
り、先に述べた一般式(5)で表現される化合物を示
す。
【0099】このPTCサーミスタの場合、サーミスタ
素体中における高分子マトリックスの含有量は、サーミ
スタ素体の体積を基準として、35〜70体積%である
ことが好ましく、45〜65体積%であることがより好
ましい。
【0100】低分子有機化合物は、熱衝撃試験における
熱処理によりPTCサーミスタの抵抗−温度特性曲線に
あらわれるヒステリシスを低減するために添加されるも
のである。この低分子有機化合物は、先に述べたように
その分子量(数平均分子量)が100〜3000、好ま
しくは500〜1000である。
【0101】また、先に述べた本発明の効果をより確実
に得る観点から、低分子化合物の融点は90〜115が
好ましい。また、上記と同様の観点から、この低分子有
機化合物の25℃における針入度は、2〜7であること
が好ましく0.5〜6.5であることことがより好まし
い。
【0102】このような低分子有機化合物としては、例
えば、パラフィンワックス(ポリエチレンワックス、マ
イクロクリスタリンワックス)のうち、上述の分子量の
条件を満たす化合物(更に、好ましくは上述の針入度の
条件を更に満たす化合物)を単独或いは2種以上を任意
に組み合せて使用してもよい。更に、先に述べた本発明
の効果をより確実に得る観点から、低分子有機化合物
は、分岐比率総和が6以下のエチレンホモポリマーが好
ましく、分岐比率総和が3以下のエチレンホモポリマー
であることがより好ましい。
【0103】サーミスタ素体中における低分子有機化合
物の含有量は、サーミスタ素体の体積を基準として、2
〜30体積%であることが好ましく、2〜25体積%で
あることがより好ましい。
【0104】導電性粒子は、電子伝導性を有していれば
特に限定されないが、先に述べた本発明の効果をより確
実に得る観点から、導電性セラミック粉(例えば、Ti
C、WCなど)、カーボンブラック、銀、タングステ
ン、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくと
も1種の導電性物質からなる粒子であることが好まし
く、比表面積が1.5〜2.5m2・g-1であるニッケ
ルからなるフィラメント状の粒子であることがより好ま
しい。
【0105】サーミスタ素体1中における導電性粒子の
含有量は、サーミスタ素体1の体積を基準として、20
〜60体積%であることが好ましく、25〜50体積%
であることがより好ましい。
【0106】このPTCサーミスタも、上述の条件を満
たすように高分子マトリックス、低分子有機化合物及び
導電性粒子を選択し、更にそれぞれの含有量を調節して
サーミスタ素体を形成すること以外は、公知のPTCサ
ーミスタの製造技術により製造することができる。
【0107】[第3実施形態]次に、本発明のPTCサ
ーミスタの第3実施形態{先に述べたPTCサーミスタ
(III)の好適な一実施形態}について説明する。
【0108】第3実施形態のPTCサーミスタ(図示せ
ず)も、後述するサーミスタ素体(図示せず)を有して
いること以外は、上述の第1実施形態のPTCサーミス
タ10と同様の構成を有する。
【0109】このPTCサーミスタのサーミスタ素体
は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物と、電子
伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体である。そ
して、このサーミスタ素体は、熱衝撃試験後に得られる
PTCサーミスタの抵抗値が0.03Ω以下であり、1
00℃以下の動作温度で繰り返し動作させた場合であっ
ても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持可能とする
ために以下の構成を有している。
【0110】サーミスタ素体に含有される高分子マトリ
ックスは、先に述べたようにその分子量(数平均分子
量)が10000〜400000、好ましくは1000
00〜200000である。また、高分子マトリックス
の線膨張係数は1.00×10 -4〜5.43×10-4
ある。
【0111】更に、上述の本発明の効果をより確実に得
る観点から、高分子マトリックスの密度は、915〜9
35℃であることが好ましく、920〜928kg・m
-3であることがより好ましい。同様の観点から、高分子
マトリックスの融解開始温度は、80〜115℃である
ことが好ましく、85〜95℃であることがより好まし
い。また、上記と同様の観点から、高分子マトリックス
の融点は、動作温度の観点から90〜138℃であるこ
とが好ましく、100〜125℃であることがより好ま
しい。
【0112】また、先に述べたように良好な抵抗−温度
特性を得る観点から、高分子マトリックスの融点T1
[℃]と、低分子有機化合物の融点T2[℃]との差T
1−T2は、7〜48℃であることが好ましく、7〜4
0.5℃であることがより好ましい。これにより抵抗−
温度特性曲線におけるヒステリシスの小さなPTCサー
ミスタを得ることが容易にできる。
【0113】このような高分子マトリックスとしては、
例えば、特開平11−168006号公報に記載された
高分子材料のうち、上述の分子量及び線膨張係数の条件
を少なくとも満たす化合物(更に、好ましくは上述の融
解開始温度の条件、密度の条件及び低分子有機化合物と
の融点差の条件のうちの少なくとも1つの条件を更に満
たす高分子化合物)を単独或いは2種以上を任意に組み
合せて使用してもよい。更に、高分子マトリックスとし
ては、ポリエチレンであることが好ましく、低密度ポリ
エチレンがより好ましく、メタロセン系触媒を用いた重
合反応により製造された直鎖状の低密度ポリエチレンが
更に好ましい。
【0114】この「直鎖状の低密度ポリエチレン」も、
先に述べたメタロセン系触媒を用いた重合反応により製
造された中・低圧法ポリエチレンであり、その分子量分
布が比較的狭いものである。「メタロセン系触媒」も、
ビス(シクロペンタジニエル)金属錯体系の触媒であ
り、先に述べた一般式(5)で表現される化合物を示
す。
【0115】このPTCサーミスタの場合、サーミスタ
素体中における高分子マトリックスの含有量は、サーミ
スタ素体の体積を基準として、35〜70体積%である
ことが好ましく、40〜65体積%であることがより好
ましい。
【0116】低分子有機化合物は、熱衝撃試験における
熱処理によりPTCサーミスタの抵抗−温度特性曲線に
あらわれるヒステリシスを低減するために添加されるも
のである。この低分子有機化合物は、先に述べたように
その分子量(数平均分子量)が100〜3000、好ま
しくは500〜1000である。
【0117】また、先に述べた本発明の効果をより確実
に得る観点から、低分子化合物の融点は90〜115が
好ましい。また、上記と同様の観点から、この低分子有
機化合物の25℃における針入度は、2〜7であること
が好ましく0.5〜6.5であることことがより好まし
い。
【0118】このような低分子有機化合物としては、例
えば、パラフィンワックス(ポリエチレンワックス、マ
イクロクリスタリンワックス)のうち、上述の分子量の
条件を満たす化合物(更に、好ましくは上述の針入度の
条件を更に満たす化合物)を単独或いは2種以上を任意
に組み合せて使用してもよい。更に、先に述べた本発明
の効果をより確実に得る観点から、低分子有機化合物
は、分岐比率総和が6以下のエチレンホモポリマーが好
ましく、分岐比率総和が3以下のエチレンホモポリマー
であることがより好ましい。
【0119】サーミスタ素体中における低分子有機化合
物の含有量は、サーミスタ素体の体積を基準として、2
〜30体積%であることが好ましく、2〜25体積%で
あることがより好ましい。
【0120】導電性粒子は、電子伝導性を有していれば
特に限定されないが、先に述べた本発明の効果をより確
実に得る観点から、導電性セラミック粉(例えば、Ti
C、WCなど)、カーボンブラック、銀、タングステ
ン、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくと
も1種の導電性物質からなる粒子であることが好まし
く、比表面積が1.5〜2.5m2・g-1であるニッケ
ルからなるフィラメント状の粒子であることがより好ま
しい。
【0121】サーミスタ素体1中における導電性粒子の
含有量は、サーミスタ素体1の体積を基準として、20
〜60体積%であることが好ましく、25〜50体積%
であることがより好ましい。
【0122】このPTCサーミスタも、上述の条件を満
たすように高分子マトリックス、低分子有機化合物及び
導電性粒子を選択し、更にそれぞれの含有量を調節して
サーミスタ素体を形成すること以外は、公知のPTCサ
ーミスタの製造技術により製造することができる。
【0123】[第4実施形態]次に、本発明のPTCサ
ーミスタの第4実施形態{先に述べたPTCサーミスタ
(IV)の好適な一実施形態}について説明する。
【0124】第4実施形態のPTCサーミスタ(図示せ
ず)は、後述するサーミスタ素体(図示せず)を有して
いること以外は、上述の第1実施形態のPTCサーミス
タ10と同様の構成を有する。
【0125】このPTCサーミスタのサーミスタ素体
は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物と、電子
伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体である。そ
して、このサーミスタ素体は、熱衝撃試験後に得られる
PTCサーミスタの抵抗値が0.03Ω以下であり、1
00℃以下の動作温度で繰り返し動作させた場合であっ
ても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持可能とする
ために以下の構成を有している。
【0126】サーミスタ素体に含有される高分子マトリ
ックスは、先に述べたようにその分子量(数平均分子
量)が10000〜400000、好ましくは1000
00〜200000である。
【0127】更に、上述の本発明の効果をより確実に得
る観点から、高分子マトリックスの融解開始温度は、8
0〜115℃であることが好ましく、85〜95℃であ
ることがより好ましい。また、上記と同様の観点から、
高分子マトリックスの融点は、動作温度の観点から90
〜138℃であることが好ましく、100〜125℃で
あることがより好ましい。更に、上記と同様の観点か
ら、高分子マトリックスの密度は915〜935kg・
-3であることが好ましく、920〜928kg・m-3
であることがより好ましい。
【0128】また、導電性粒子に対して線膨張係数の差
が低い結晶性ポリマーを高分子マトリックスとして用い
る観点から、このPTCサーミスタの場合、高分子マト
リックスの線膨張係数は、1.00×10-4〜5.43
×10-4であることが好ましい。
【0129】また、先に述べたように良好な抵抗−温度
特性を得る観点から、高分子マトリックスの融点T1
[℃]と、低分子有機化合物の融点T2[℃]との差T
1−T2は、7〜48℃であることが好ましく、7〜4
0.5℃であることがより好ましい。これにより抵抗−
温度特性曲線におけるヒステリシスの小さなPTCサー
ミスタを得ることが容易にできる。
【0130】このような高分子マトリックスとしては、
例えば、特開平11−168006号公報に記載された
高分子材料のうち、上述の分子量を少なくとも満たす化
合物(更に、好ましくは上述の融解開始温度の条件、線
膨張係数の条件、密度の条件及び低分子有機化合物との
融点差の条件のうちの少なくとも1つの条件を更に満た
す化合物)を単独或いは2種以上を任意に組み合せて使
用してもよい。更に、高分子マトリックスとしては、ポ
リエチレンであることが好ましく、低密度ポリエチレン
がより好ましく、メタロセン系触媒を用いた重合反応に
より製造された直鎖状の低密度ポリエチレンが更に好ま
しい。
【0131】この「直鎖状の低密度ポリエチレン」も、
先に述べたメタロセン系触媒を用いた重合反応により製
造された中・低圧法ポリエチレンであり、その分子量分
布が比較的狭いものである。「メタロセン系触媒」も、
ビス(シクロペンタジニエル)金属錯体系の触媒であ
り、先に述べた一般式(5)で表現される化合物を示
す。
【0132】このPTCサーミスタの場合、サーミスタ
素体中における高分子マトリックスの含有量は、サーミ
スタ素体の体積を基準として、35〜70体積%である
ことが好ましく、40〜65体積%であることがより好
ましい。
【0133】低分子有機化合物は、熱衝撃試験における
熱処理によりPTCサーミスタの抵抗−温度特性曲線に
あらわれるヒステリシスを低減するために添加されるも
のである。この低分子有機化合物は、先に述べたように
その分子量(数平均分子量)が100〜3000、好ま
しくは500〜1000である。
【0134】また、このPTCサーミスタの場合、先に
述べた本発明の効果を得る観点から、この低分子有機化
合物の25℃における針入度は、0.5〜6.5であ
る。更に、先に述べた本発明の効果をより確実に得る観
点から、低分子化合物の融点は90〜115が好まし
い。
【0135】このような低分子有機化合物としては、例
えば、パラフィンワックス(ポリエチレンワックス、マ
イクロクリスタリンワックス)のうち、上述の分子量及
び針入度の条件を満たす化合物を単独或いは2種以上を
任意に組み合せて使用してもよい。更に、先に述べた本
発明の効果をより確実に得る観点から、低分子有機化合
物は、分岐比率総和が6以下のエチレンホモポリマーが
好ましく、分岐比率総和が3以下のエチレンホモポリマ
ーであることがより好ましい。
【0136】サーミスタ素体中における低分子有機化合
物の含有量は、サーミスタ素体の体積を基準として、2
〜30体積%であることが好ましく、2〜25体積%で
あることがより好ましい。
【0137】導電性粒子は、電子伝導性を有していれば
特に限定されないが、先に述べた本発明の効果をより確
実に得る観点から、導電性セラミック粉(例えば、Ti
C、WCなど)、カーボンブラック、銀、タングステ
ン、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくと
も1種の導電性物質からなる粒子であることが好まし
く、比表面積が1.5〜2.5m2・g-1であるニッケ
ルからなるフィラメント状の粒子であることがより好ま
しい。
【0138】サーミスタ素体1中における導電性粒子の
含有量は、サーミスタ素体1の体積を基準として、20
〜60体積%であることが好ましく、25〜50体積%
であることがより好ましい。
【0139】このPTCサーミスタも、上述の条件を満
たすように高分子マトリックス、低分子有機化合物及び
導電性粒子を選択し、更にそれぞれの含有量を調節して
サーミスタ素体を形成すること以外は、公知のPTCサ
ーミスタの製造技術により製造することができる。
【0140】[第5実施形態]次に、本発明のPTCサ
ーミスタの第5実施形態{先に述べたPTCサーミスタ
(V)の好適な一実施形態}について説明する。
【0141】第5実施形態のPTCサーミスタ(図示せ
ず)は、後述するサーミスタ素体(図示せず)を有して
いること以外は、上述の第1実施形態のPTCサーミス
タ10と同様の構成を有する。
【0142】このPTCサーミスタのサーミスタ素体
は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物と、電子
伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体である。そ
して、このサーミスタ素体は、熱衝撃試験後に得られる
PTCサーミスタの抵抗値が0.03Ω以下であり、1
00℃以下の動作温度で繰り返し動作させた場合であっ
ても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持可能とする
ために以下の構成を有している。
【0143】サーミスタ素体に含有される高分子マトリ
ックスは、先に述べたようにその分子量(数平均分子
量)が10000〜400000、好ましくは1000
00〜200000である。
【0144】更に、上述の本発明の効果をより確実に得
る観点から、高分子マトリックスの融解開始温度は、8
0〜115℃であることが好ましく、85〜95℃であ
ることがより好ましい。また、上記と同様の観点から、
高分子マトリックスの融点は、動作温度の観点から90
〜138℃であることが好ましく、100〜125℃で
あることがより好ましい。更に、上記と同様の観点か
ら、高分子マトリックスの密度は915〜935kg・
-3であることが好ましく、920〜928kg・m-3
であることがより好ましい。
【0145】また、導電性粒子に対して線膨張係数の差
が低い結晶性ポリマーを高分子マトリックスとして用い
る観点から、このPTCサーミスタの場合、高分子マト
リックスの線膨張係数は、1.00×10-4〜5.43
×10-4であることが好ましい。
【0146】また、先に述べたように良好な抵抗−温度
特性を得る観点から、高分子マトリックスの融点T1
[℃]と、低分子有機化合物の融点T2[℃]との差T
1−T2は、7〜48℃であることが好ましく、7〜4
0.5℃であることがより好ましい。これにより抵抗−
温度特性曲線におけるヒステリシスの小さなPTCサー
ミスタを得ることが容易にできる。
【0147】このような高分子マトリックスとしては、
例えば、特開平11−168006号公報に記載された
高分子材料のうち、上述の分子量を少なくとも満たす化
合物(更に、好ましくは上述の融解開始温度の条件、線
膨張係数の条件、密度の条件及び低分子有機化合物との
融点差の条件のうちの少なくとも1つの条件を更に満た
す化合物)を単独或いは2種以上を任意に組み合せて使
用してもよい。更に、高分子マトリックスとしては、ポ
リエチレンであることが好ましく、低密度ポリエチレン
がより好ましく、メタロセン系触媒を用いた重合反応に
より製造された直鎖状の低密度ポリエチレンが更に好ま
しい。
【0148】この「直鎖状の低密度ポリエチレン」も、
先に述べたメタロセン系触媒を用いた重合反応により製
造された中・低圧法ポリエチレンであり、その分子量分
布が比較的狭いものである。「メタロセン系触媒」も、
ビス(シクロペンタジニエル)金属錯体系の触媒であ
り、先に述べた一般式(5)で表現される化合物を示
す。
【0149】このPTCサーミスタの場合、サーミスタ
素体中における高分子マトリックスの含有量は、サーミ
スタ素体の体積を基準として、35〜70体積%である
ことが好ましく、40〜65体積%であることがより好
ましい。
【0150】低分子有機化合物は、熱衝撃試験における
熱処理によりPTCサーミスタの抵抗−温度特性曲線に
あらわれるヒステリシスを低減するために添加されるも
のである。この低分子有機化合物は、先に述べたように
その分子量(数平均分子量)が100〜3000、好ま
しくは500〜1000である。
【0151】このPTCサーミスタの場合、先に述べた
本発明の効果を得る観点から、低分子有機化合物は、分
岐比率総和が3以下のエチレンホモポリマーである。先
に述べた本発明の効果をより確実に得る観点から、この
エチレンホモポリマーの分岐比率総和は、2以下である
ことが好ましく、1以下であることがより好ましく、0
であることが更に好ましい。
【0152】また、先に述べた本発明の効果をより確実
に得る観点から、この低分子有機化合物の25℃におけ
る針入度は、2〜7であることが好ましく、0.5〜
6.5であることがより好ましい。更に、先に述べた本
発明の効果をより確実に得る観点から、低分子化合物の
融点は90〜115が好ましい。
【0153】サーミスタ素体中における低分子有機化合
物の含有量は、サーミスタ素体の体積を基準として、2
〜30体積%であることが好ましく、2〜25体積%で
あることがより好ましい。
【0154】導電性粒子は、電子伝導性を有していれば
特に限定されないが、先に述べた本発明の効果をより確
実に得る観点から、導電性セラミック粉(例えば、Ti
C、WCなど)、カーボンブラック、銀、タングステ
ン、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくと
も1種の導電性物質からなる粒子であることが好まし
く、比表面積が1.5〜2.5m2・g-1であるニッケ
ルからなるフィラメント状の粒子であることがより好ま
しい。
【0155】サーミスタ素体中における導電性粒子の含
有量は、サーミスタ素体の体積を基準として、20〜6
0体積%であることが好ましく、25〜50体積%であ
ることがより好ましい。
【0156】このPTCサーミスタも、上述の条件を満
たすように高分子マトリックス、低分子有機化合物及び
導電性粒子を選択し、更にそれぞれの含有量を調節して
サーミスタ素体を形成すること以外は、公知のPTCサ
ーミスタの製造技術により製造することができる。
【0157】[第6実施形態]次に、本発明のPTCサ
ーミスタの第2実施形態{先に述べたPTCサーミスタ
(VI)の好適な一実施形態}について説明する。
【0158】第2実施形態のPTCサーミスタ(図示せ
ず)は、後述するサーミスタ素体(図示せず)を有して
いること以外は、上述の第1実施形態のPTCサーミス
タ10と同様の構成を有する。
【0159】このPTCサーミスタのサーミスタ素体
は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物と、電子
伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体である。そ
して、このサーミスタ素体は、熱衝撃試験後に得られる
PTCサーミスタの抵抗値が0.03Ω以下であり、1
00℃以下の動作温度で繰り返し動作させた場合であっ
ても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持可能とする
ために以下の構成を有している。
【0160】サーミスタ素体に含有される高分子マトリ
ックスは、先に述べたようにその分子量(数平均分子
量)が10000〜400000、好ましくは1000
00〜200000である。
【0161】更に、上述の本発明の効果をより確実に得
る観点から、高分子マトリックスの融解開始温度は、8
0〜115℃であることが好ましく、85〜95℃であ
ることがより好ましい。また、上記と同様の観点から、
高分子マトリックスの融点は、動作温度の観点から90
〜138℃であることが好ましく、100〜125℃で
あることがより好ましい。更に、上記と同様の観点か
ら、高分子マトリックスの密度は915〜935kg・
-3であることが好ましく、920〜928kg・m-3
であることが好ましい。
【0162】また、導電性粒子に対して線膨張係数の差
が低い結晶性ポリマーを高分子マトリックスとして用い
る観点から、このPTCサーミスタの場合、高分子マト
リックスの線膨張係数は、1.00×10-4〜5.43
×10-4であることが好ましい。
【0163】また、先に述べたように、このPTCサー
ミスタの場合、本発明の効果を得る観点及び良好な抵抗
−温度特性を得る観点から、高分子マトリックスの融点
T1[℃]と、低分子有機化合物の融点T2[℃]との
差T1−T2は、7〜40.5℃である。これにより抵
抗−温度特性曲線におけるヒステリシスの小さなPTC
サーミスタを得ることが容易にできる。
【0164】このような高分子マトリックスとしては、
例えば、特開平11−168006号公報に記載された
高分子材料のうち、上述の分子量及び低分子有機化合物
との融点差の条件を少なくとも満たす化合物(更に、好
ましくは上述の融解開始温度の条件、線膨張係数の条件
及び密度の条件の条件のうちの少なくとも1つの条件を
更に満たす化合物)を単独或いは2種以上を任意に組み
合せて使用してもよい。更に、高分子マトリックスとし
ては、ポリエチレンであることが好ましく、低密度ポリ
エチレンがより好ましく、メタロセン系触媒を用いた重
合反応により製造された直鎖状の低密度ポリエチレンが
更に好ましい。
【0165】この「直鎖状の低密度ポリエチレン」も、
先に述べたメタロセン系触媒を用いた重合反応により製
造された中・低圧法ポリエチレンであり、その分子量分
布が比較的狭いものである。「メタロセン系触媒」も、
ビス(シクロペンタジニエル)金属錯体系の触媒であ
り、先に述べた一般式(5)で表現される化合物を示
す。
【0166】このPTCサーミスタの場合、サーミスタ
素体中における高分子マトリックスの含有量は、サーミ
スタ素体の体積を基準として、35〜70体積%である
ことが好ましく、40〜65体積%であることがより好
ましい。
【0167】低分子有機化合物は、熱衝撃試験における
熱処理によりPTCサーミスタの抵抗−温度特性曲線に
あらわれるヒステリシスを低減するために添加されるも
のである。この低分子有機化合物は、先に述べたように
その分子量(数平均分子量)が100〜3000、好ま
しくは500〜1000である。
【0168】また、先に述べた本発明の効果をより確実
に得る観点から、低分子化合物の融点は90〜115が
好ましい。また、上記と同様の観点から、この低分子有
機化合物の25℃における針入度は、2〜7であること
が好ましく0.5〜6.5であることことがより好まし
い。
【0169】このような低分子有機化合物としては、例
えば、パラフィンワックス(ポリエチレンワックス、マ
イクロクリスタリンワックス)のうち、上述の分子量の
条件を満たす化合物(更に、好ましくは上述の針入度の
条件を更に満たす化合物)を単独或いは2種以上を任意
に組み合せて使用してもよい。更に、先に述べた本発明
の効果をより確実に得る観点から、低分子有機化合物
は、分岐比率総和が6以下のエチレンホモポリマーが好
ましく、分岐比率総和が3以下のエチレンホモポリマー
であることがより好ましい。
【0170】サーミスタ素体中における低分子有機化合
物の含有量は、サーミスタ素体の体積を基準として、2
〜30体積%であることが好ましく、2〜25体積%で
あることがより好ましい。
【0171】導電性粒子は、電子伝導性を有していれば
特に限定されないが、先に述べた本発明の効果をより確
実に得る観点から、導電性セラミック粉(例えば、Ti
C、WCなど)、カーボンブラック、銀、タングステ
ン、及び、ニッケルからなる群より選択される少なくと
も1種の導電性物質からなる粒子であることが好まし
く、比表面積が1.5〜2.5m2・g-1であるニッケ
ルからなるフィラメント状の粒子であることがより好ま
しい。
【0172】サーミスタ素体中における導電性粒子の含
有量は、サーミスタ素体の体積を基準として、20〜6
0体積%であることが好ましく、25〜50体積%であ
ることがより好ましい。
【0173】このPTCサーミスタも、上述の条件を満
たすように高分子マトリックス、低分子有機化合物及び
導電性粒子を選択し、更にそれぞれの含有量を調節して
サーミスタ素体を形成すること以外は、公知のPTCサ
ーミスタの製造技術により製造することができる。
【0174】[第7実施形態]次に、本発明のPTCサ
ーミスタの第7実施形態{先に述べたPTCサーミスタ
(VII)の好適な一実施形態}について説明する。
【0175】第7実施形態のPTCサーミスタ(図示せ
ず)は、後述するサーミスタ素体(図示せず)を有して
いること以外は、上述の第1実施形態のPTCサーミス
タ10と同様の構成を有する。
【0176】このPTCサーミスタのサーミスタ素体
は、高分子マトリックスと、低分子有機化合物と、電子
伝導性を有する導電性粒子とからなる成形体である。そ
して、このサーミスタ素体は、熱衝撃試験後に得られる
PTCサーミスタの抵抗値が0.03Ω以下であり、1
00℃以下の動作温度で繰り返し動作させた場合であっ
ても使用初期に得られる抵抗値を充分に維持可能とする
ために以下の構成を有している。
【0177】サーミスタ素体に含有される高分子マトリ
ックスは、先に述べたようにその分子量(数平均分子
量)が10000〜400000、好ましくは1000
00〜200000である。
【0178】更に、上述の本発明の効果をより確実に得
る観点から、高分子マトリックスの融解開始温度は、8
0〜115℃であることが好ましく、85〜95℃であ
ることがより好ましい。また、上記と同様の観点から、
高分子マトリックスの融点は、動作温度の観点から90
〜138℃であることが好ましく、100〜125℃で
あることがより好ましい。更に、上記と同様の観点か
ら、高分子マトリックスの密度は915〜935kg・
-3であることが好ましく、920〜928kg・m-3
であることがより好ましい。
【0179】また、導電性粒子に対して線膨張係数の差
が低い結晶性ポリマーを高分子マトリックスとして用い
る観点から、このPTCサーミスタの場合、高分子マト
リックスの線膨張係数は、1.00×10-4〜5.43
×10-4であることが好ましい。
【0180】また、先に述べたように良好な抵抗−温度
特性を得る観点から、高分子マトリックスの融点T1
[℃]と、低分子有機化合物の融点T2[℃]との差T
1−T2は、7〜48℃であることが好ましく、7〜4
0.5℃であることがより好ましい。これにより抵抗−
温度特性曲線におけるヒステリシスの小さなPTCサー
ミスタを得ることが容易にできる。
【0181】このような高分子マトリックスとしては、
例えば、特開平11−168006号公報に記載された
高分子材料のうち、上述の分子量を少なくとも満たす化
合物(更に、好ましくは上述の融解開始温度の条件、線
膨張係数の条件、密度の条件及び低分子有機化合物との
融点差の条件のうちの少なくとも1つの条件を更に満た
す化合物)を単独或いは2種以上を任意に組み合せて使
用してもよい。更に、高分子マトリックスとしては、ポ
リエチレンであることが好ましく、低密度ポリエチレン
がより好ましく、メタロセン系触媒を用いた重合反応に
より製造された直鎖状の低密度ポリエチレンが更に好ま
しい。
【0182】この「直鎖状の低密度ポリエチレン」も、
先に述べたメタロセン系触媒を用いた重合反応により製
造された中・低圧法ポリエチレンであり、その分子量分
布が比較的狭いものである。「メタロセン系触媒」も、
ビス(シクロペンタジニエル)金属錯体系の触媒であ
り、先に述べた一般式(5)で表現される化合物を示
す。
【0183】このPTCサーミスタの場合、サーミスタ
素体中における高分子マトリックスの含有量は、サーミ
スタ素体の体積を基準として、35〜70体積%である
ことが好ましく、40〜65体積%であることがより好
ましい。
【0184】低分子有機化合物は、熱衝撃試験における
熱処理によりPTCサーミスタの抵抗−温度特性曲線に
あらわれるヒステリシスを低減するために添加されるも
のである。この低分子有機化合物は、先に述べたように
その分子量(数平均分子量)が100〜3000、好ま
しくは500〜1000である。
【0185】また、先に述べた本発明の効果をより確実
に得る観点から、低分子化合物の融点は90〜115が
好ましい。また、上記と同様の観点から、この低分子有
機化合物の25℃における針入度は、2〜7であること
が好ましく0.5〜6.5であることことがより好まし
い。
【0186】このような低分子有機化合物としては、例
えば、パラフィンワックス(ポリエチレンワックス、マ
イクロクリスタリンワックス)のうち、上述の分子量の
条件を満たす化合物(更に、好ましくは上述の針入度の
条件を更に満たす化合物)を単独或いは2種以上を任意
に組み合せて使用してもよい。更に、先に述べた本発明
の効果をより確実に得る観点から、低分子有機化合物
は、分岐比率総和が6以下のエチレンホモポリマーが好
ましく、分岐比率総和が3以下のエチレンホモポリマー
であることがより好ましい。
【0187】サーミスタ素体中における低分子有機化合
物の含有量は、サーミスタ素体の体積を基準として、2
〜30体積%であることが好ましく、2〜25体積%で
あることがより好ましい。
【0188】導電性粒子は、このPTCサーミスタの場
合には、先に述べたように本発明の効果を得る観点か
ら、比表面積が1.5〜2.5m2・g-1であるニッケ
ルからなるフィラメント状の粒子である。
【0189】サーミスタ素体中におけるニッケルからな
るフィラメント状の粒子の含有量は、サーミスタ素体の
体積を基準として、20〜60体積%であることが好ま
しく、25〜50体積%であることがより好ましい。
【0190】このPTCサーミスタも、上述の条件を満
たすように高分子マトリックス、低分子有機化合物及び
導電性粒子を選択し、更にそれぞれの含有量を調節して
サーミスタ素体を形成すること以外は、公知のPTCサ
ーミスタの製造技術により製造することができる。
【0191】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明のP
TCサーミスタについて更に詳しく説明するが、本発明
はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0192】[実施例1]高分子マトリクスとしてメタ
ロセン系触媒を使用して製造した直鎖状の低密度ポリエ
チレン(融解開始温度85℃、融点122℃、比重0.
93、数平均分子量:36,000)を45体積%、低
分子有機化合物としてのポリエチレンワックス(融点9
0℃、数平均分子量:600)を25体積%、導電性粒
子としてニッケルからなるフィラメント状の粒子(平均
粒径:0.7μm)30体積%を、ミルに投入し、15
0℃の温度で30分間加熱混練した。
【0193】混練終了後、この混練物の両面を厚さ25
μmのニッケル箔(電極)で挟み、熱プレス機により1
50℃で混練物とニッケル箔を圧着し、全体で厚さ0.
3mm、直径100mmの成形品を得た。そして成形品
の両面に200kGyの条件で電子線照射することによ
り、成形品内部の高分子材料の架橋反応を進行させ、熱
的、機械的に安定化させた後、縦横の寸法が9mm×3
mmの角型に打ち抜いた。このようにして、低分子有機
化合物と高分子マトリックスと導電性粒子とを含む混練
成形シート(サーミスタ素体)が、ニッケル箔により形
成された2枚の電極の間に密着した状態で配置された
(挟持された)構造を有するPTCサーミスタを得た。
【0194】[実施例2]高分子マトリクスとして表1
に示す特性(例えば、融点開始温度:95℃)を有する
メタロセン系触媒を使用して製造した直鎖状の低密度ポ
リエチレンを用いたこと以外は実施例1と同様の手順及
び条件でPTCサーミスタを作製した。
【0195】[実施例3]高分子マトリックスとしてメ
タロセン系触媒を使用して製造した直鎖状の低密度ポリ
エチレン(融点:122℃、密度:925kg/m3
を40.0体積%、低分子有機化合物としてのポリエチ
レンワックス(融点:90℃)を25体積%、導電性粒
子としてニッケルからなるフィラメント状の粒子(平均
粒径:0.7μm)35体積%を、ミルに投入し、15
0℃の温度で30分間加熱混練したこと以外は、実施例
1と同様の手順及び条件でPTCサーミスタを作製し
た。 [実施例4]高分子マトリックスとしてのメタロセン系
触媒を使用して製造した直鎖状の低密度ポリエチレン
(融点116℃、密度915kg/m3)を45.0体
積%、低分子有機化合物として、一分子当たりの分岐比
率総和が0〜3のエチレンホモポリマー(融点:99
℃)を25体積%、導電性粒子としてニッケルからなる
フィラメント状の粒子(平均粒径0.7μm)30体積
%を、ミルに投入し、150℃の温度で30分間加熱混
練したこと以外は、実施例1と同様の手順及び条件でP
TCサーミスタを作製した。
【0196】[実施例5]高分子マトリックスとしての
メタロセン系触媒を使用して製造した直鎖状の低密度ポ
リエチレンを45.0体積%、低分子有機化合物とし
て、エチレンホモポリマー(融点:99℃、25℃にお
ける針入度:2.0)を25体積%、導電性粒子として
ニッケルからなるフィラメント状の粒子(平均粒径:
2.5μm)35体積%を、ミルに投入し、150℃の
温度で30分間加熱混練したこと以外は、実施例1と同
様の手順及び条件でPTCサーミスタを作製した。
【0197】[実施例6]高分子マトリックスとして、
メタロセン系触媒を使用して製造した直鎖状の低密度ポ
リエチレン(融解開始温度:85℃,密度:925kg
/m3)を45.0体積%、低分子有機化合物として、
一分子当たりの分岐比率総和が0〜3、針入度が2のエ
チレンホモポリマーを25体積%、導電性粒子としてニ
ッケルからなるフィラメント状の粒子(平均粒径2.5
μm)35体積%を、ミルに投入し、150℃の温度で
30分間加熱混練したこと以外は、実施例1と同様の手
順及び条件でPTCサーミスタを作製した。
【0198】[実施例7]〜[実施例12]高分子マト
リクスとして表1に示す特性を有するメタロセン系触媒
を使用して製造した直鎖状の低密度ポリエチレンを用
い、低分子有機化合物として表1に示す特性を有するエ
チレンホモポリマーを用い、導電性粒子として、表1に
示す特性を有するニッケルからなるフィラメント状の粒
子を用いたこと以外は実施例1と同様の手順及び条件で
各PTCサーミスタを作製した。なお、[実施例7]〜
[実施例12]の各々のPTCサーミスタについて、高
分子マトリクスの含有量(体積%)、低分子有機化合物
の含有量(体積%)、導電性粒子の含有量(体積%)は
実施例1のPTCサーミスタと同じ値とした。
【0199】[実施例13]〜[実施例20]高分子マ
トリクスとして表2に示す特性を有するポリエチレンを
用い、低分子有機化合物として表2に示す特性を有する
エチレンホモポリマーを用い、導電性粒子として、表1
に示す特性を有するニッケルからなるフィラメント状の
粒子を用いたこと以外は実施例1と同様の手順及び条件
で各PTCサーミスタを作製した。なお、[実施例1
3]〜[実施例20]の各々のPTCサーミスタについ
て、高分子マトリクスの含有量(体積%)、低分子有機
化合物の含有量(体積%)、導電性粒子の含有量(体積
%)は実施例1のPTCサーミスタと同じ値とした。
【0200】[実施例21]高分子マトリクスとして表
2に示す特性を有する低密度ポリエチレンを用い、低分
子有機化合物として表2に示す特性を有するエチレンホ
モポリマーを用い、導電性粒子として、表1に示す特性
を有するニッケルからなるフィラメント状の粒子を用い
たこと以外は実施例1と同様の手順及び条件でPTCサ
ーミスタを作製した。なお、[実施例21]のPTCサ
ーミスタについて、高分子マトリクスの含有量(体積
%)、低分子有機化合物の含有量(体積%)、導電性粒
子の含有量(体積%)は実施例1のPTCサーミスタと
同じ値とした。 [実施例22]高分子マトリクスとして表2に示す特性
を有するメタロセン系触媒を使用して製造した直鎖状の
低密度ポリエチレンを用い、低分子有機化合物として表
2に示す特性を有するエチレンホモポリマーを用い、導
電性粒子として、表1に示す特性を有するニッケルから
なるフィラメント状の粒子を用いたこと以外は実施例1
と同様の手順及び条件でPTCサーミスタを作製した。
なお、[実施例21]のPTCサーミスタについて、高
分子マトリクスの含有量(体積%)、低分子有機化合物
の含有量(体積%)、導電性粒子の含有量(体積%)は
実施例1のPTCサーミスタと同じ値とした。
【0201】[比較例1]高分子マトリクスとして表2
に示す特性を有するポリエチレンを用い、低分子有機化
合物として表2に示す特性を有するエチレンホモポリマ
ーを用い、導電性粒子として、表1に示す特性を有する
ニッケルからなるフィラメント状の粒子を用いたこと以
外は実施例1と同様の手順及び条件で各PTCサーミス
タを作製した。[比較例1]のPTCサーミスタについ
て、高分子マトリクスの含有量(体積%)、低分子有機
化合物の含有量(体積%)、導電性粒子の含有量(体積
%)は実施例1のPTCサーミスタと同じ値とした。
【0202】[熱衝撃試験]このようにして作製した実
施例1〜実施例22、及び、比較例1のPTCサーミス
タについて、JIS C 0025規定に基づく熱衝撃
試験を行い、試験後の抵抗値を測定した。より詳しく
は、各PTCサーミスタに対して先に述べた(i)工程
〜(iv)工程からなる1つの熱処理サイクルを200
回繰り返し、その後に抵抗値{室温(25℃)で測定さ
れる値}を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
なお、表1及び表2には、各PTCサーミスタについて
熱衝撃試験を行う前の室温(25℃)における初期抵抗
値は全て0.03Ω以下であることを確認した。また、
熱衝撃試験を行うための装置として、エスペック社製の
商品名:「TSE−11−A」及び商品名:「TSA−
71H−W」を使用した。
【0203】更に、表1及び表2に示す各サーミスタに
含まれる高分子マトリックスの融解開始温度は、先に述
べたように、高分子マトリックスを測定試料として示差
走査熱量測定法(DSC)により分析した際に得られる
DSC曲線を用いて決定した。これについて図2及び図
3を用いて説明する。図2は実施例1のPTCサーミス
タに含まれる高分子マトリックスのDSC曲線を示すグ
ラフである。また、図3は実施例2のPTCサーミスタ
に含まれる高分子マトリックスのDSC曲線を示すグラ
フである。
【0204】すなわち、図2に示す実施例1のPTCサ
ーミスタ及び図3に示す実施例2のPTCサーミスタの
場合、得られるそれぞれのDSC曲線の最初にあらわれ
る吸熱ピークの最も低温側にあらわれる変曲点における
接線L1とベースライン{示差走査熱量=0mWを示す
直線であって温度軸(横軸)に平行な直線}L2との交
点における温度を融解開始温度とした。
【0205】示差走査熱量測定は、示差走査熱量測定装
置(島津製作所製、商品名:「DSC−50」)を使用
した。測定条件は、昇温速度:2℃/min、測定試料
量:19.8mg、試料を収容するセル:アルミニウム
製セル、雰囲気ガス:空気(流量:20mL/mi
n)、標準物質(熱的に安定な物質):α−Al23
らなる粉末とした。
【0206】更に、表1及び表2に示す各サーミスタに
含まれる高分子マトリックスの線膨張係数の測定は以下
の手順により行った。即ち、測定試料となる高分子マト
リックスを、厚さ0.8mm、幅10mm、長さ30m
mの短冊状とした。線膨張係数の測定装置(セイコー電
子社製、商品名:「TMASS6100」)を使用し、
短冊状サンプルの長手方向の両端を治具にチャッキング
し、長手方向への引っ張りモードについて測定を行っ
た。測定温度は−40〜85℃の範囲で変化させ、サン
プルに与える振動周波数は1Hzとし、長さの変化の測
定を行った。得られた膨張曲線から、最も安定した直線
が得られる温度範囲(25〜69℃)で線膨張係数を計
算した。
【0207】また、実施例7〜実施例12の各PTCサ
ーミスタについては、それぞれの抵抗−温度特性を示す
グラフを、図4〜図9にそれぞれ示す。
【0208】更に、各PTCサーミスタの動作温度は、
6Vの電圧を掛けて短絡電流を流した後の100秒後の
表面温度を動作温度として測定した。その結果、実施例
1のPTCサーミスタは90℃、実施例2のPTCサー
ミスタは95℃、実施例3のPTCサーミスタは90
℃、実施例4のPTCサーミスタは90℃、実施例5の
PTCサーミスタは88℃、実施例6のPTCサーミス
タは90℃、実施例7のPTCサーミスタは82℃、実
施例8のPTCサーミスタは88℃、実施例9のPTC
サーミスタは89℃、実施例10のPTCサーミスタは
90℃、実施例11のPTCサーミスタは95℃、実施
例12のPTCサーミスタは100℃、実施例13のP
TCサーミスタは100℃、実施例14のPTCサーミ
スタは99℃、実施例15のPTCサーミスタは97
℃、実施例16のPTCサーミスタは95℃、実施例1
7のPTCサーミスタは97℃、実施例18のPTCサ
ーミスタは95℃、実施例19のPTCサーミスタは9
7℃、実施例20のPTCサーミスタは90℃、実施例
21のPTCサーミスタは90℃、実施例22のPTC
サーミスタは95℃、比較例1のPTCサーミスタは8
0℃であった。
【0209】
【表1】
【0210】
【表2】
【0211】表1及び表2に示した結果から明らかなよ
うに、実施例1〜実施例22の各PTCサーミスタは、
熱衝撃試験後に得られる抵抗値が0.03Ω以下であ
り、100℃以下の動作温度で繰り返し動作させた場合
であっても、使用初期に得られる充分に低い抵抗値を充
分に維持することができ、優れた信頼性を有しているこ
とが確認された。
【0212】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
熱衝撃試験後に得られる抵抗値が0.03Ω以下であ
り、100℃以下の動作温度で繰り返し動作させた場合
であっても、使用初期に得られる充分に低い抵抗値を充
分に維持することのできる信頼性に優れたPTCサーミ
スタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のPTCサーミスタの第1実施形態の基
本構成を示す模式断面図である。
【図2】実施例1のPTCサーミスタに含まれる高分子
マトリックスのDSC曲線を示すグラフである。
【図3】実施例2のPTCサーミスタに含まれる高分子
マトリックスのDSC曲線を示すグラフである。
【図4】実施例7のPTCサーミスタの場合の抵抗−温
度特性を示すグラフである。
【図5】実施例8のPTCサーミスタの場合の抵抗−温
度特性を示すグラフである。
【図6】実施例9のPTCサーミスタの場合の抵抗−温
度特性を示すグラフである。
【図7】実施例10のPTCサーミスタの場合の抵抗−
温度特性を示すグラフである。
【図8】実施例11のPTCサーミスタの場合の抵抗−
温度特性を示すグラフである。
【図9】実施例12のPTCサーミスタの場合の抵抗−
温度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1…サーミスタ素体、2…電極、3…電極、4…リード
線、5…リード線、10…PTCサーミスタ。

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに対向した状態で配置された1対の
    電極と、前記1対の電極の間に配置されておりかつ正の
    抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、を少なくと
    も有するPTCサーミスタであって、 前記サーミスタ素体は、高分子マトリックスと、低分子
    有機化合物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからな
    る成形体であり、 前記高分子マトリックスの分子量が10000〜400
    000であり、 前記低分子有機化合物の分子量が100〜3000であ
    り、 前記高分子マトリックスが、85〜95℃の融解開始温
    度を有するオレフィン系高分子化合物であること、を特
    徴とするPTCサーミスタ。
  2. 【請求項2】 前記高分子マトリックスの密度が920
    〜928kg・m-3であること、を特徴とする請求項1
    に記載のPTCサーミスタ。
  3. 【請求項3】 前記高分子マトリックスの線膨張係数が
    1.00×10-4〜5.43×10-4であること、を特
    徴とする請求項1又は2に記載のPTCサーミスタ。
  4. 【請求項4】 前記高分子マトリックスがポリエチレン
    であること、を特徴とする請求項1〜3のうちの何れか
    1項に記載のPTCサーミスタ。
  5. 【請求項5】 前記ポリエチレンがメタロセン系触媒を
    用いた重合反応により得られる直鎖状の低密度ポリエチ
    レンであることを特徴とする請求項4に記載のPTCサ
    ーミスタ。
  6. 【請求項6】 前記低分子有機化合物の25℃における
    針入度が0.5〜6.5であること、を特徴とする請求
    項1〜5のうちの何れか1項に記載のPTCサーミス
    タ。
  7. 【請求項7】 前記低分子有機化合物は、分岐比率総和
    が3以下のエチレンホモポリマーであること、を特徴と
    する請求項1〜6のうちの何れか1項に記載のPTCサ
    ーミスタ。
  8. 【請求項8】 前記高分子マトリックスの融点T1
    [℃]と、前記低分子有機化合物の融点T2[℃]とが
    下記式(A)で表される条件を満たしていること、を特
    徴とする請求項1〜7のうちの何れか1項に記載のPT
    Cサーミスタ。 7℃≦(T1−T2)≦40.5℃…(A)
  9. 【請求項9】 前記導電性粒子がニッケルからなるフィ
    ラメント状の粒子であり、かつ、該粒子の比表面積が
    1.5〜2.5m2・g-1であること、を特徴とする請
    求項1〜8のうちの何れか1項に記載のPTCサーミス
    タ。
  10. 【請求項10】 互いに対向した状態で配置された1対
    の電極と、前記1対の電極の間に配置されておりかつ正
    の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、を少なく
    とも有するPTCサーミスタであって、 前記サーミスタ素体は、高分子マトリックスと、低分子
    有機化合物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからな
    る成形体であり、 前記高分子マトリックスの分子量が10000〜400
    000であり、 前記低分子有機化合物の分子量が100〜3000であ
    り、 前記高分子マトリックスの密度が920〜928kg・
    -3であること、を特徴とするPTCサーミスタ。
  11. 【請求項11】 前記高分子マトリックスの線膨張係数
    が1.00×10-4〜5.43×10-4であること、を
    特徴とする請求項10に記載のPTCサーミスタ。
  12. 【請求項12】 前記低分子有機化合物の25℃におけ
    る針入度が0.5〜6.5であること、を特徴とする請
    求項10又は11に記載のPTCサーミスタ。
  13. 【請求項13】 前記低分子有機化合物は、分岐比率総
    和が3以下のエチレンホモポリマーであること、を特徴
    とする請求項10〜12のうちの何れか1項に記載のP
    TCサーミスタ。
  14. 【請求項14】 前記高分子マトリックスの融点T1
    [℃]と、前記低分子有機化合物の融点T2[℃]とが
    下記式(A)で表される条件を満たしていること、を特
    徴とする請求項10〜13のうちの何れか1項に記載の
    PTCサーミスタ。 7℃≦(T1−T2)≦40.5℃…(A)
  15. 【請求項15】 前記導電性粒子がニッケルからなるフ
    ィラメント状の粒子であり、かつ、該粒子の比表面積が
    1.5〜2.5m2・g-1であること、を特徴とする請
    求項10〜14のうちの何れか1項に記載のPTCサー
    ミスタ。
  16. 【請求項16】 互いに対向した状態で配置された1対
    の電極と、前記1対の電極の間に配置されておりかつ正
    の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、を少なく
    とも有するPTCサーミスタであって、 前記サーミスタ素体は、高分子マトリックスと、低分子
    有機化合物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからな
    る成形体であり、 前記高分子マトリックスの分子量が10000〜400
    000であり、 前記低分子有機化合物の分子量が100〜3000であ
    り、 前記高分子マトリックスの線膨張係数が1.00×10
    -4〜5.43×10-4であること、を特徴とするPTC
    サーミスタ。
  17. 【請求項17】 前記低分子有機化合物の25℃におけ
    る針入度が0.5〜6.5であること、を特徴とする請
    求項16に記載のPTCサーミスタ。
  18. 【請求項18】 前記低分子有機化合物は、分岐比率総
    和が3以下のエチレンホモポリマーであること、を特徴
    とする請求項16又は17に記載のPTCサーミスタ。
  19. 【請求項19】 前記高分子マトリックスの融点T1
    [℃]と、前記低分子有機化合物の融点T2[℃]とが
    下記式(A)で表される条件を満たしていること、を特
    徴とする請求項16〜18のうちの何れか1項に記載の
    PTCサーミスタ。 7℃≦(T1−T2)≦40.5℃…(A)
  20. 【請求項20】 前記導電性粒子がニッケルからなるフ
    ィラメント状の粒子であり、かつ、該粒子の比表面積が
    1.5〜2.5m2・g-1であること、を特徴とする請
    求項16〜19のうちの何れか1項に記載のPTCサー
    ミスタ。
  21. 【請求項21】 互いに対向した状態で配置された1対
    の電極と、前記1対の電極の間に配置されておりかつ正
    の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、を少なく
    とも有するPTCサーミスタであって、 前記サーミスタ素体は、高分子マトリックスと、低分子
    有機化合物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからな
    る成形体であり、 前記高分子マトリックスの分子量が10000〜400
    000であり、 前記低分子有機化合物の分子量が100〜3000であ
    り、 前記低分子有機化合物の25℃における針入度が0.5
    〜6.5であること、を特徴とするPTCサーミスタ。
  22. 【請求項22】 前記低分子有機化合物は、分岐比率総
    和が3以下のエチレンホモポリマーであること、を特徴
    とする請求項21に記載のPTCサーミスタ。
  23. 【請求項23】 前記高分子マトリックスの融点T1
    [℃]と、前記低分子有機化合物の融点T2[℃]とが
    下記式(A)で表される条件を満たしていること、を特
    徴とする請求項21又は22に記載のPTCサーミス
    タ。 7℃≦(T1−T2)≦40.5℃…(A)
  24. 【請求項24】 前記導電性粒子がニッケルからなるフ
    ィラメント状の粒子であり、かつ、該粒子の比表面積が
    1.5〜2.5m2・g-1であること、を特徴とする請
    求項21〜23のうちの何れか1項に記載のPTCサー
    ミスタ。
  25. 【請求項25】 互いに対向した状態で配置された1対
    の電極と、前記1対の電極の間に配置されておりかつ正
    の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、を少なく
    とも有するPTCサーミスタであって、 前記サーミスタ素体は、高分子マトリックスと、低分子
    有機化合物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからな
    る成形体であり、 前記高分子マトリックスの分子量が10000〜400
    000であり、 前記低分子有機化合物の分子量が100〜3000であ
    り、 前記低分子有機化合物は、分岐比率総和が3以下のエチ
    レンホモポリマーであること、を特徴とするPTCサー
    ミスタ。
  26. 【請求項26】 前記高分子マトリックスの融点T1
    [℃]と、前記低分子有機化合物の融点T2[℃]とが
    下記式(A)で表される条件を満たしていること、を特
    徴とする請求項25に記載のPTCサーミスタ。 7℃≦(T1−T2)≦40.5℃…(A)
  27. 【請求項27】 前記導電性粒子がニッケルからなるフ
    ィラメント状の粒子であり、かつ、該粒子の比表面積が
    1.5〜2.5m2・g-1であること、を特徴とする請
    求項25又は26に記載のPTCサーミスタ。
  28. 【請求項28】 互いに対向した状態で配置された1対
    の電極と、前記1対の電極の間に配置されておりかつ正
    の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、を少なく
    とも有するPTCサーミスタであって、 前記サーミスタ素体は、高分子マトリックスと、低分子
    有機化合物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからな
    る成形体であり、 前記高分子マトリックスの分子量が10000〜400
    000であり、 前記低分子有機化合物の分子量が100〜3000であ
    り、 前記高分子マトリックスの融点T1[℃]と、前記低分
    子有機化合物の融点T2[℃]とが下記式(A)で表さ
    れる条件を満たしていること、を特徴とするPTCサー
    ミスタ。 7℃≦(T1−T2)≦40.5℃…(A)
  29. 【請求項29】 前記導電性粒子がニッケルからなるフ
    ィラメント状の粒子であり、かつ、該粒子の比表面積が
    1.5〜2.5m2・g-1であること、を特徴とする請
    求項28に記載のPTCサーミスタ。
  30. 【請求項30】 互いに対向した状態で配置された1対
    の電極と、前記1対の電極の間に配置されておりかつ正
    の抵抗-温度特性を有するサーミスタ素体と、を少なく
    とも有するPTCサーミスタであって、 前記サーミスタ素体は、高分子マトリックスと、低分子
    有機化合物と、電子伝導性を有する導電性粒子とからな
    る成形体であり、 前記高分子マトリックスの分子量が10000〜400
    000であり、 前記低分子有機化合物の分子量が100〜3000であ
    り、 前記導電性粒子がニッケルからなるフィラメント状の粒
    子であり、かつ、該粒子の比表面積が1.5〜2.5m
    2・g-1であること、を特徴とするPTCサーミスタ。
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