JP2003301247A - 軟磁性Co基金属ガラス合金 - Google Patents

軟磁性Co基金属ガラス合金

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来のCo-Fe-B-Si系金属ガラスは、ガラス形
成能が低いため、厚さ1mm以上の金属ガラス棒の作製
が不可能で、実用性に限界がある。バルク金属ガラスが
得られる優れた軟磁性Co-Fe-B-Si系金属ガラスの開発は
金属ガラス製品の応用分野を大きく拡張する鍵となって
いる。 【構成】 下記の組成式で表され、過冷却液体の温度間
隔ΔTχが40 K以上で、換算ガラス化温度Tg/Tmが0.59で
あり、2.0 A/m以下の低い保磁力を有することを特徴と
するガラス形成能が高い軟磁性Co基金属ガラス合金。 [Co1-n-(a+b)FenBaSib]100-χMχ ただし、a, b, n は原子比であり、0.1 ≦ a ≦ 0.17,
0.06 ≦ b ≦ 0.15, 0.18 ≦ a + b ≦0.3, 0 ≦ n ≦
0.08, MはZr, Nb, Ta, Hf, Mo, Ti, V, Cr, Pd, Wのう
ちの一種または二種以上の元素であり、3原子% ≦ χ
≦10原子%である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低い保磁力を有す
るガラス形成能が高い軟磁性Co基金属ガラス合金に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、金属ガラスと言えば、1960年代に
おいて最初に製造されたFe-P-C系の金属ガラス、1970年
代において製造された(Fe, Co, Ni)-P-B系合金、(Fe, C
o, Ni)-Si-B系合金、(Fe, Co, Ni)-(Zr, Hf, Nb)系合
金、(Fe, Co, Ni)-(Zr, Hf, Nb)-B系合金が知られてい
る。
【0003】これらの合金は、いずれも、104 K/s以上
の冷却速度で急冷凝固する必要があり、得られた試料の
厚さは200μm以下の薄帯であった。また、高いガラス形
成能を示す合金系として、1988年〜2001年にかけて、Ln
-Al-TM、Mg-Ln-TM、Zr-Al-TM、Pd-Cu-Ni-P、(Fe, Co, N
i)-(Zr, Hf, Nb)-B、Fe-(Al, Ga)-P-B-C、Fe-(Nb, Cr,
Mo)-(Al, Ga)-P-B-C、Fe-(Cr, Mo)-Ga-P-B-C、Fe-Co-Ga
-P-B-C、Fe-Ga-P-B-C、Fe-Ga-P-B-C-Si (ただし、Lnは
希土類元素、TMは遷移金属である)系などの組成のもの
が発見された。これらの合金系では、直径または厚さ1
mm以上の金属ガラス棒が作製できる。
【0004】本発明者らは、先に過冷却液体の温度間隔
ΔTχが20〜45 K、保磁力(Hc)が2〜9 A/mを有するCo-(F
e, Ni)-(Ti, Zr, Nb, Ta, Hf, Mo, W)-(Cr, Mn, Ru, R
h, Pd, Os, Ir, Pt, Al, Ga, Si, Ge, C, P)-B の軟磁
性金属ガラス合金を発明し、特許出願した(特開平10-3
24939号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これまで、本発明者
は、Co基軟磁性金属ガラス合金系を幾つか見出した。し
かし、従来のものは単ロール法を用いた薄帯であり、保
磁力も大きく、軟磁性合金の応用の点から見ると、バル
ク金属ガラス合金系で低保磁力のものが望ましい。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
上述の課題を解決することを目的として種々の合金組成
について探査した結果、Co-B-Si系合金において、明瞭
なガラス遷移と広い過冷却液体域を示し、ガラス形成能
がより高い軟磁性Co基金属ガラス組成を見出し、本発明
を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、下記の組成式で表さ
れ、過冷却液体の温度間隔ΔTχが40 K以上で、換算ガ
ラス化温度Tg/Tmが0.59以上であり、2.0 A/m以下の低い
保磁力(Hc)を有することを特徴とするガラス形成能が高
い軟磁性Co基金属ガラス合金である。 [Co1-n-(a+b)FenBaSib]100-χMχ ただし、a, b, n は原子比であり、0.1 ≦ a ≦ 0.17,
0.06 ≦ b ≦ 0.15, 0.18 ≦ a + b ≦0.3, 0 ≦ n ≦
0.08, MはZr, Nb, Ta, Hf, Mo, Ti, V, Cr, Pd, Wのう
ちの一種または二種以上の元素であり、3 原子% ≦ χ
≦10原子%である。
【0008】上記の合金組成において、単ロール液体急
冷法により作製した厚さ0.2 mm以上の薄帯金属ガラスの
ΔTχ = Tχ-Tg (ただし、Tχは、結晶化開始温度、Tg
はガラス遷移温度)の式で表される過冷却液体の温度間
隔ΔTχは40 K以上で、換算ガラス化温度Tg/Tmは0.59以
上である。
【0009】上記の組成式で示す組成を持つ合金を用い
て、銅鋳型鋳造法により作製した金属ガラスは、熱分析
を行う際、顕著なガラス遷移および結晶化による発熱が
観察され、ガラス形成の臨界厚さまたは直径が1.5 mm
であり、銅鋳型鋳造法により金属ガラスが作製できる。
また、このガラス合金は2.0 A/m以下の低保磁力(Hc)な
ど優れた軟磁気特性を示し、トランスや磁気センサーと
して非常に有用である。
【0010】本発明の上記合金組成において、主成分で
あるCoは、磁性を担う元素であり、高い飽和磁化と優れ
た軟磁気特性を得るために重要であり、約56〜80原子%
含有する。
【0011】本発明の上記合金組成において、金属元素
Feは、約8原子%以下、好ましくは2〜6原子%の添加に
より、保磁力を1.5A/m以下に低減するのに有効である。
【0012】本発明の上記合金組成において、半金属元
素B, Siは、アモルファス相の形成を担う元素であり、
安定なアモルファス構造を得るために重要である。Co-F
e-B-Siの原子比はn + a + bが0.18〜0.38とし、残余をC
oとする。n + a + b がこの範囲を外れるとアモルファ
ス相の形成が困難である。BとSiはともに含有される必
要があり、一方が上記組成範囲から外れると、ガラス形
成能が劣り、バルクガラス合金の形成が困難である。
【0013】本発明の上記合金組成式において、M元素
の添加はガラス形成能の向上に有効である。本発明の合
金組成においては、Mは3原子%以上10原子%以下の範囲
で添加する。この範囲を外れて、Mが3原子%未満である
と過冷却液体の温度間隔ΔTχが消滅するために好まし
くなく、10原子%よりも大きくなると飽和磁化が減少す
るために好ましくない。
【0014】本発明の上記組成の合金には、さらに、P,
C, Ga, Geのうちから選択される一種または二種以上の
元素を3原子%以下含ませることができる。これらの元
素を含ませることにより、保磁力は1.5 A/mから0.75 A/
mまで減少し、つまり、軟磁気特性が向上するが、3原子
%を超えると、Coの含有量が下がり、飽和磁化が下が
る。そこで、これら元素の含有量は3原子%以下とす
る。
【0015】本発明の上記合金組成において、組成域か
らのずれにより、ガラス形成能が劣り、溶湯から凝固過
程にかけて結晶化が生成・成長し、ガラス相に結晶相が
混在した組織になる。また、この組成範囲から大きく離
れるとき、ガラス相が得られず、結晶相となる。
【0016】本発明に係わる合金系は、ガラス形成能が
高いため、銅製金型鋳造すると直径1.5 mmの金属ガラス
丸棒が作製できるが、同様な冷却速度で、回転水中紡糸
法により、直径0.4 mmまでの細線、アトマイズ法によ
り、直径0.5 mmまでの金属ガラス粉末を作製できる。
【0017】
【実施例】(実施例1〜10、比較例1〜7)以下実施例に
基づき本発明を具体的に図面を参照して説明する。図5
に、金型鋳造法により直径0.5 mm〜2 mmの合金試料
を作製するのに用いた装置を側面から見た概略構成を示
す。まず、アーク溶解により所定の成分組成を有する溶
融合金1を作り、これを先端に小孔(孔径0.5 mm)を
有する石英管3に挿入し、高周波発生コイル4により加熱
溶融した後、その石英管3を直径0.5〜2mmの垂直な孔5
を鋳込み空間として設けた銅製鋳型6の直上に設置し、
石英管3内の溶融金属1をアルゴンガスの加圧(1.0 Kg/
cm2)により石英管3の小孔2から噴出し、銅製鋳型6の孔
に注入してそのまま放置して凝固させて直径0.5 mm、
長さ50 mmの鋳造棒を得た。
【0018】表1に、実施例1〜10、比較例1〜7の合金
組成および示差走査熱量計を用いて測定したガラス遷移
温度(Tg)、結晶化開始温度(Tχ)を示す。また、試
料中に含まれるガラス相の体積分率(Vf-amo.)は、示
差走査熱量計を用いて、結晶化による発熱量を完全ガラ
ス化した単ロール型液体急冷法による薄帯との比較によ
り評価した。
【0019】さらに、飽和磁化(Is)、保磁力(Hc)を
それぞれ、試料振動型磁力計およびI-Hループトレーサ
ーを用いて測定した結果を示す。また、各実施例および
比較例の鋳造棒のガラス化の確認をX線回折法および試
料断面の光学顕微鏡観察で行った。
【0020】本発明の実施例1〜10は、ΔTχ = Tχ-Tg
(ただし、Tχは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温
度)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxは40 K以
上で、直径1〜1.5 mmの鋳造棒でガラス相の体積分率
(Vf-amo.)は100%である。
【0021】これに対して、比較例1〜2は、M元素の含
有量が3原子%以下、また、M元素を含有していないため
直径0.5 mmの鋳造棒で結晶質であった。また、比較例
3はM元素のNbを含有しているが、その含有量が11原子%
であり、本発明の合金組成の範囲を外れるため、直径0.
5 mm鋳造棒で結晶質であった。さらに、比較例4〜7は
M元素を1〜10原子%の範囲で含むが、SiまたはBを全く
含有していない、また、SiまたはBの含有量が組成式で
示すaまたはbの範囲を外れるため、直径0.5 mmの鋳造
棒で結晶質であった。
【0022】
【表1】
【0023】図1に、実施例2により得られた直径1.0
mmの鋳造棒の断面組織の光学顕微鏡写真を示す。図1に
示すように、光学顕微鏡写真では、鋳造欠陥と研磨傷の
ほかに、結晶粒子のコントラストが見られず、金属ガラ
スが形成されたことが明らかである。
【0024】 実施例11: (Co0.705Fe0.045B0.15Si0.10)96Nb4, 実施例12: (Co0.705Fe0.045B0.15Si0.10)94Nb6, 実施例13: (Co0.705Fe0.045B0.15Si0.10)92Nb8 上記組成を有する溶融合金をそれぞれ通常のメルトスピ
ン法で急冷凝固し、厚さ0.025 mm、幅2mmのリボン
材を作製した。図2に、実施例11,12,13および
比較例2のリボン材の熱分析曲線を示す。図2に示すよ
うに、Nbの含有量が4原子%〜8原子%のとき、40 K以上
と広いΔTχが得られていることがわかる。
【0025】図3に、実施例2により得られた鋳造棒、
実施例2と同じ組成で直径が0.5mmの鋳造棒、および実
施例11により得られたリボン材の熱分析曲線を示す。
図3に示すように、リボン材とバルク材との差がないの
が分かる。
【0026】図4に、実施例2により得られた鋳造棒お
よび実施例11により得られたリボンの磁気特性を試料
振動型磁気測定装置を用いて測定したI-Hヒステリシス
曲線を示す。実施例2および実施例11とも優れた軟磁
気特性を示していることがわかる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のCo基金属
ガラスは、ガラス形成能に優れ、臨界厚さまたは直径が
1.5 mm以上の値を有し、銅製鋳型鋳造により金属ガラ
スを得られる高いガラス形成能を持つ合金系であるか
ら、優れた軟磁気特性、高い飽和磁化を有する大型の金
属ガラス製品を実用的に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2により得られた鋳造棒の断面
組織を示す図面代用の光学顕微鏡の写真である。
【図2】図2は、実施例10, 11, 12および比較例
2により得られたリボンの熱分析曲線を示すグラフであ
る。
【図3】図3は、実施例2により得られた鋳造棒および
実施例11により得られたリボンの熱分析曲線を示すグ
ラフである。
【図4】図4は、実施例2により得られた鋳造棒および
実施例11により得られたリボンの磁気特性を試料振動
型磁気測定装置を用いて測定したI-Hヒステリシス曲線
を示すグラフである。
【図5】図5は、金型鋳造法により鋳造棒の合金試料を
作製するのに用いる装置を側面から見た概略図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の組成式で表され、過冷却液体の温
    度間隔ΔTχが40 K以上で、換算ガラス化温度Tg/Tmが0.
    59以上であり、2.0 A/m以下の低い保磁力を有すること
    を特徴とするガラス形成能が高い軟磁性Co基金属ガラス
    合金。 [Co1-n-(a+b)FenBaSib]100-χMχ ただし、a, b, n は原子比であり、0.1 ≦ a ≦ 0.17,
    0.06 ≦ b ≦ 0.15, 0.18 ≦ a + b ≦0.3, 0 ≦ n ≦
    0.08, MはZr, Nb, Ta, Hf, Mo, Ti, V, Cr, Pd, Wのう
    ちの一種または二種以上の元素であり、3原子% ≦ χ
    ≦10原子%である。
  2. 【請求項2】 P, C, Ga, Geのうちから選択される一種
    または二種以上の元素を3原子%以下含むことを特徴す
    る請求項1に記載の軟磁性Co基金属ガラス合金。
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