JPH1171647A - Fe基軟磁性金属ガラス合金 - Google Patents

Fe基軟磁性金属ガラス合金

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JPH1171647A
JPH1171647A JP9235277A JP23527797A JPH1171647A JP H1171647 A JPH1171647 A JP H1171647A JP 9235277 A JP9235277 A JP 9235277A JP 23527797 A JP23527797 A JP 23527797A JP H1171647 A JPH1171647 A JP H1171647A
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JP
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metallic glass
soft magnetic
glass alloy
magnetic metallic
alloy
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JP9235277A
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Inventor
Shoji Yoshida
昌二 吉田
Takao Mizushima
隆夫 水嶋
Teruhiro Makino
彰宏 牧野
Akihisa Inoue
明久 井上
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Alps Alpine Co Ltd
Original Assignee
Alps Electric Co Ltd
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Publication date
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F1/00Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties
    • H01F1/01Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials
    • H01F1/03Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity
    • H01F1/12Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials
    • H01F1/14Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials metals or alloys
    • H01F1/147Alloys characterised by their composition
    • H01F1/153Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals
    • H01F1/15308Amorphous metallic alloys, e.g. glassy metals based on Fe/Ni

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 室温で軟磁性を有し、従来の液体急冷法で得
られるアモルファス合金薄帯よりも厚く、バルク状のも
のが容易に得られるFe基金属ガラス合金の提供。 【解決手段】 ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開
始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表され
る過冷却液体の温度間隔ΔTxが35K以上であり、F
eを主成分として含み、半金属元素としてPとSiを必
ず含み、かつC、B、Geのうちの少なくとも1種以上
を含み、周期律表IIIB族及びIVB族の金属元素の
うちの少なくとも1種以上を含んでなり、原子%におけ
るSiとPの比率が0<Si/(Si+P)≦0.4を
満たすことを特徴とするFe基軟磁性金属ガラス合金。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Fe基金属ガラス
合金に関するもので、従来のアモルファス合金の薄帯に
比べてはるかに大きな厚みを有するものが得られ、優れ
た磁気特性を有するものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から多元素合金のある種のものは、
結晶化の前の広い温度領域で過冷却液体の状態を示し、
これらは、金属ガラス合金(glassy alloy)を構成する
ものとして知られている。そして、この種の金属ガラス
合金は、従来公知の液体急冷法で製造したアモルファス
合金の薄帯に比べてはるかに厚いバルク状の合金となる
ことも知られている。例えば従来、このような金属ガラ
ス合金として、Ln-Al-TM、Mg-Ln-TM、Zr
-Al-TM、Hf-Al-TM、Ti-Zr-Be-TM
(ただしLnは希土類元素、TMは遷移金属を示す。)
系等の組成のものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来知
られているこれらの金属ガラス合金は、いずれも、室温
において磁性を持つことはなく、この点において磁性材
料として見た場合に工業的には大きな制約があった。従
って、従来より室温で磁性を有し、厚いバルク状のもの
を得ることができる金属ガラス合金の研究開発が進めら
れていた。
【0004】ここで各種の組成の合金において、過冷却
液体状態を示すとしても、これらの過冷却液体の温度間
隔ΔTx、即ち、結晶化開始温度(Tx)と、ガラス遷移
温度(Tg)との差、即ち、(Tx−Tg)の値は一般に
小さく、現実的には、金属ガラス形成能に乏しく、実用
性のないものであることを考慮すると、上記の通りの広
い過冷却液体の温度領域を持ち、冷却によって金属ガラ
スを構成することのできる合金の存在は、従来公知のア
モルファス合金の薄帯としての厚さの制約を克服可能な
ことから、冶金学的には大いに注目されるものである。
しかし、工業材料として発展できるか否かは、室温で強
磁性を示す金属ガラス合金の発見が鍵となっている。
【0005】本発明は上記の背景に鑑み、室温で軟磁性
を有し、従来の液体急冷法で得られるアモルファス合金
薄帯よりも厚く、バルク状のものが容易に得られるFe
基金属ガラス合金を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のFe基金属ガラ
ス合金は、ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温
度、Tgはガラ ス遷移温度を示す。)の式で表される過
冷却液体の温度間隔ΔTxが35K以上であり、Feを
主成分として含み、半金属元素としてPとSiを必ず含
み、かつC、B、Geのうちの少なくとも1種以上を含
み、周期律表IIIB族及びIVB族の金属元素のうち
の少なくとも1種以上を含んでなり、原子%におけるS
iとPの比率が0<Si/(Si+P)≦0.4を満た
すことを特徴とするものである。上記周期律表IIIB
族及びIVB族の金属元素としては、Al、Ga、In
及びSnのうちの少なくとも1種以上であることが好ま
しい。本発明においては、上記Fe基軟磁性金属ガラス
合金が液体急冷法により得られた非晶質単相の薄帯であ
り、その薄帯の最大の厚さtmaxが150μm以上のも
のを得ることができる。上記ΔTxは50K以上である
ことがより好ましい。
【0007】本発明において、Fe基軟磁性金属ガラス
合金の組成は原子%で、Al:1〜10%、Ga:0.
5〜4%、P:15%以下、C:7%以下、B:2〜1
0%、Si:15%以下、Fe:残部であることを特徴
とする。上記Siの添加量は、原子%で1.5〜3.5
%であることが好ましい。本発明のおいて、原子%にお
けるSiとPの比率を0.11≦Si/(Si+P)≦
0.28とした場合には、液体急冷法により得られる非
晶質単相の薄帯の最大の厚さtmaxが200μm以上の
ものを得ることができる。本発明では、上記Fe基軟磁
性金属ガラス合金の組成に、原子%でGeが4%以下含
有されていてもよい。本発明では、上記Fe基軟磁性金
属ガラス合金の組成に、原子%でNb、Mo、Hf、T
a、W、Zr及びCrのうち少なくとも1種以上が0〜
7%含有されていてもよい。本発明では、上記Fe基軟
磁性金属ガラス合金の組成に、原子%で0〜10%のN
iと0〜30%のCoのうち少なくとも一方が含有され
ていてもよい。本発明では、上記Fe基軟磁性金属ガラ
ス合金に、300〜500℃の温度範囲の熱処理が施さ
れていてもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一
例について説明する。従来からFe系の合金として、F
e-P-C系、Fe-P-B系、Fe-Ni-Si-B系等の
組成のものがガラス遷移を起こすものとして知られてい
るが、これらの合金の過冷却液体の温度間隔ΔTxはい
ずれも25K以下と極めて小さく、実際的に金属ガラス
合金として構成することはできない。これに対して、本
発明に係るFe基軟磁性金属ガラス合金は、この過冷却
液体の温度間隔ΔTxが、35K以上、組成によっては
50K以上という顕著な温度間隔を有し、これまでの知
見から知られるFe基合金からは全く予期されないもの
である。しかも、軟磁性についても室温で優れた特性を
有する本発明に係るFe基軟磁性金属ガラス合金は、こ
れまでの知見に見られない全く新規なもので、これまで
アモルファス合金が薄帯としてしか実現できなかったの
に対し、バルク状のものが得られ、遥かに実用性に優れ
たものとなる。
【0009】本発明に係るFe基軟磁性金属ガラス合金
は、その組成については、Feを主成分とし、更に、他
の金属と半金属とを含有したものとして示すことができ
る。このうち半金属元素としては、P(リン)とSi
(ケイ素)が必ず用いられ、しかもC(炭素)、B(ほ
う素)、Ge(ゲルマニウム)のうちの少なくとも1種
以上が用いられる。このとき原子%におけるSiとPの
比率は、0<Si/(Si+P)≦0.4を満たしてお
り、好ましくは0.1<Si/(Si+P)≦0.35
であり、より好ましくは0.1<Si/(Si+P)≦
0.3である。他の金属とは、IIIB族及びIVB族
の金属元素のうちの少なくとも1種のものが好適に用い
られる。例えば、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウ
ム)、In(インジウム)及びSn(スズ)のうちの少
なくとも1種以上のものが用いられる。
【0010】より具体的に例示すると、本発明では、そ
の組成が原子%で、Al:1〜10%、Ga:0.5〜
4%、P:15%以下、C:7%以下、B:2〜10
%、Si:15%以下、Fe:残部であって、不可避不
純物が含有されていても良いFe基金属ガラス合金であ
る。このようにFe−Al−Ga−P−C−B系の金属
ガラスにSiを添加し、しかもSiのPに対する添加比
率が0<Si/(Si+P)≦0.4を満たすようにす
ることにより、過冷却液体の温度間隔ΔTxを向上させ
、アモルファス(非晶質)単相となる臨界板厚を増大
させることができる。その結果、室温で優れた軟磁気特
性を有するバルク状のFe基軟磁性金属ガラス合金の厚
さをさらに厚くすることが可能となる。Siの含有量は
多すぎると過冷却液体領域ΔTxが消滅するので、15
%以下が好ましい。上記Siの添加量は、原子%で1.
5〜3.5%であることが好ましい。上記Pの添加量
は、原子%で7〜9%が好ましく、より好ましくは5〜
8%である。上記Cの添加量は、原子%で2〜7%であ
ることがより好ましい。
【0011】なお、上記の組成において、さらに、Ge
が原子%で4%以下含有されていてもよい。また、上記
の組成において、更に、Nb、Mo、Hf、Ni、T
a、W、Zr及びCrのうちから選択される1種以上の
金属元素が原子%で0〜7%含有されていてもよい。ま
た、上記の組成において、更に、原子%で0〜10%の
Niと0〜30%のCoのうち少なくとも一方が含有さ
れていてもよい。これらのいずれの場合の組成において
も、本発明においては、過冷却液体の温度間隔ΔT
xは、35K以上、組成によっては50K以上が得られ
る。
【0012】本発明に係るFe基軟磁性金属ガラス合金
は、溶製してから鋳造法により、あるいは単ロールもし
くは双ロールによる液体急冷法によって、さらには液中
紡糸法や溶液抽出法によって、あるいは高圧ガス噴霧法
によって、バルク状、リボン(薄帯)状、線状体、粉末
等の種々の形状として製造される。これらの製造方法に
よって、従来公知のアモルファス合金の場合に比べて1
0倍以上の厚さと径の大きさのFe基軟磁性金属ガラス
合金を得ることができる。また、液体急冷法により製造
されたFe基軟磁性金属ガラス合金は、非晶質単相の薄
帯であり、その薄帯の最大の厚さtmaxが150μm以
上のものが得られる。特に、原子%におけるSiとPの
比率を0.11≦Si/(Si+P)≦0.28とした
場合には、液体急冷法により得られる非晶質単相の薄帯
の最大の厚さtmaxが200μm以上のものを得ること
ができる。
【0013】これらの方法により得られた上記の組成の
Fe基軟磁性金属ガラス合金は、室温において磁性を有
し、また、熱処理により、より良好な磁性を示す。この
ため、優れたSoft magnetic特性(軟磁気特性)を有す
る材料として各種の応用に有用なものとなる。熱処理に
より良好な磁性を示すのは、熱処理前のFe基軟磁性金
属ガラス合金において存在する内部応力が緩和されるた
めである。また、熱処理温度としては、300〜500
゜Cが好ましい。キュリー温度T c以下の熱処理では、
磁区固着による特性劣化が起こる可能性があるので、熱
処理温度は少なくとも300℃以上であることが必要で
ある。また、450℃程度における熱処理では、熱処理
しない場合よりも特性が劣化する傾向にあり、さらに、
上記の組成系のFe基軟磁性金属ガラス合金の結晶化温
度(約500℃)に近くなるし、結晶核の生成開始(構
造的短範囲秩序化)または結晶析出開始による磁壁のピ
ンニングに起因して磁気特性が劣化する。従って、熱処
理する場合の温度は300〜500℃、換言すると、3
00℃〜結晶化開始温度の範囲であることが好ましく、
300〜450℃がより好ましい。なお、製造方法につ
いて付言すると、合金の組成、そして製造のための手段
と製品の大きさ、形状等によって、好適な冷却速度が決
まるが、通常は1〜104K/s程度の範囲を目安とす
ることができる。そして、実際には、ガラス相(glassy
phase)に、結晶相としてのFe3B、Fe2B、Fe3
P等の相が析出するかどうかを確認することで決めるこ
とができる。
【0014】
【実施例】ここで以下に、本発明の実施例を示し、本発
明のFe基軟磁性金属ガラス合金について更に詳細に説
明する。 「実施例1」Fe、Al及びGaと、Fe-C合金、F
e-P合金、B、Siを原料としてそれぞれ所定量秤量
し、減圧Ar雰囲気下においてこれらの原料を高周波誘
導加熱コイルで溶解し、原子組成比がFe70Al5Ga2
12.65-x5.754.6Six(x=1,2,3,4)の
インゴットを作製した。また、比較のためにFe、Al
及びGaと、Fe-C合金、Fe-P合金、Bを原料とし
て上記の方法と同様にして、原子組成比がFe70Al5
Ga2(P55252023(x=0)のインゴットを作
製した。そして、インゴットをるつぼ内に入れて溶解
し、るつぼのノズルから回転しているロールに溶湯を吹
き出して急冷する単ロール法によって、減圧Ar雰囲気
下でリボンを得た。ここでのリボン製造条件を、ノズル
スリット径0.4ミリ、ノズル先端とロール表面との距
離(ギャップ)0.3〜0.45mm、ロール回転数2
000〜200rpm、ロール表面は#1000〜#1
500で研磨、雰囲気圧力660トール(Ar置換)、
射出圧力0.32〜0.42kgf/cm2に設定して
製造したところ、tmax130〜280μmの液体急冷
薄帯合金試料を得ることができた。表1に、得られた各
組成の液体急冷薄帯合金試料の特性について調べた結果
を示す。
【0015】
【表1】
【0016】上記表1に示す各組成の液体急冷薄帯合金
試料におけるTg、Txは、DSC(0.67K/s)か
ら求めたものである。厚さt=30μmのときの構造
は、XRD(X線回折法)で構造解析した結果を示して
おり、amo.はアモルファス単相の構造を有することを示
す。飽和磁化(σs)は振動試料型磁化測定装置(80
0kA/m)、保持力(Hc)は直流B−Hループトレ
ーサー(±1.6kA/m)、透磁率(μe)はインピ
ーダンスアナライザー(0.8A/m)、Tmは示差熱
分析(0.33K/s)、飽和磁歪(λs)は静電容量
法によりそれぞれ測定したものである。なお、ここでの
磁気特性は、熱処理後の薄帯合金試料のものであり、熱
処理条件は、昇温速度3K/秒、保持温度623K、保
持時間30分であった。
【0017】図1は、板厚約30μmのFe70Al5
212.65-x5.754.6Six(x=1,2,3,4)
なる組成の液体急冷薄帯合金試料と、Fe70Al5Ga2
(P 55252023(x=0)なる組成の液体急冷薄帯
合金試料のDSC(示差走査熱量測定)曲線を示す。図
1から、Siの添加量が3at%(x=3)までは発熱
ピークが1本であり、結晶化は一段階で起っており、添
加量が4at%(x=4)になると発熱ピークは2本に
分裂し、結晶化は2段階で起こることがわかる。また、
いずれの組成の液体急冷薄帯合金試料においても、結晶
化温度以下にガラス転移点に相当する吸熱ピークが観測
され、広い過冷却液体域が存在しΔTx=Tx−Tgで示
される値が大きく、この系の組成の合金が高いアモルフ
ァス形成能を有することがわかる。なお、X=4である
液体急冷薄帯合金試料を各発熱ピーク(803K、87
3K)で熱処理を行った後、X線回折パターンを調べた
ところ、1番目のピーク(803K)はbcc−Feの
析出に相当し、2番目のピーク(873K)はFe
3B、AlFe30.5等の析出に相当するものである考
えられる。
【0018】図2は、各組成の液体急冷薄帯合金試料の
DSC曲線から求めた結晶化開始温度(Tx)、ガラス
遷移温度(Tg)、過冷却温度領域(ΔTx)、アモルフ
ァス単相が得られる最大厚さ(tmax)のSi添加量依
存性について示したものである。図2に示す結果から、
xはSi=3at%まではSiの添加量の増加に伴い
高温側にシフトしているが、Si=4at%では逆に低
温側にシフトしていることがわかる。これは、図1に示
したDSC曲線のようにSi=4at%では結晶化が二
段階で起こるようになり、bcc−Feが析出し易くな
るためである。また、TgもSi添加量の増加に伴い高
温側にシフトし、x=3〜4にかけてほぼ一定となって
いるが、高温側へのシフトの割合はTxの場合と比べて
小さい。その結果、ΔTxはSi=3at%(X=3)
で極大値を示していることがわかるまた、アモルファス
単相の薄帯が得られるtmaxは、ΔTxが極大を示すSi
=3at%において極大値を示しており、そして、Si
=2〜3のときtmax=200μm以上が得られている
ことが認められる。従って、Fe−Al−Ga−P−C
−B系の合金にSiを添加することにより、ΔTxが5
0から60Kと大幅に広くなり、アモルファス(非晶
質)単相となる臨界板厚を増大させることができること
がわかる。
【0019】図3は、各組成の液体急冷薄帯合金試料の
飽和磁化(σs)とキュリー点(Tc)のSi添加量依存
性について示したものである。図3に示す結果からσs
はSi=1at%で極小を示し、その後、Si添加量の
増加に伴い増大しており、Tc(図1に示したDSC曲
線から求めた。)もx=1で極小を示し、その後、Si
添加量の増加に伴い高温側にシフトしていることからσ
sの変化はSi添加に伴うTcの変化に起因しているもの
と考えられる。
【0020】図4は、板厚50μmにおける各組成の液
体急冷薄帯合金試料の透磁率(μe、at1kHz)と飽
和磁歪(λs)のSi添加量依存性について示したもの
である。 図4に示す結果からλsはSi=1at%で
極小となるが、μeはSi=3at%で極大となってい
ることから、この系の組成の合金の透磁率に影響を及ぼ
す要因として磁歪以外の要因が存在するものと考えら
れ、図4に示したμeの変化は図2に示したΔTxおよび
maxの変化と対応しており、アモルファス形成能の大
きさが透磁率にも影響しているものと考えられる。
【0021】「実施例2」次に、Fe70Al5Ga2
12.65-x5.754.6Sixなる組成と、Fe72Al5Ga
211-x64Sixなる組成と、Fe73Al5Ga2
11-x54Sixなる組成において、それぞれSi添加
量を変化させて液体急冷薄帯合金試料を作製した。液体
急冷薄帯合金試料の作製は上記実施例1と同様にして行
った。そして、作製した各組成系の薄帯合金試料のΔT
xのSi添加量依存性についてを調べた。その結果を図
5に示す。図5に示す結果から明らかなようにFe70
5Ga212.65-x5.754.6Sixなる組成の薄帯合
金試料では、Si=3at%のときΔTxが最大となっ
ており、Fe72Al5Ga211-x64Sixなる組成
の薄帯合金試料では、Si=2at%のときΔTxが最
大となっており、従って、ΔTxが最大となるSi添加
量は、Siを添加するFe−Al−Ga−P−C−B系
の合金の基本組成によって異なることがわかる。
【0022】図6は、ΔTxの値をSi無添加の場合の
値で規格化し、Si添加量をPとの置換割合で規格化し
たときの、規格化ΔTxのSi/(Si+P)依存性を
示すものである。図6に示す結果から明らかなように各
組成の薄帯合金試料のデータは、一つの曲線上にのって
おり、このことから、最適なSi添加量はPと一定の割
合で置換した場合であり、Si/(Si+P)=0.2
4付近であることがわかる。この割合は、Si添加によ
り各構成原子の無秩序な充填密度が最も高められる組成
であると思われる。
【0023】「実施例3」Fe70Al5Ga212.7-x
5.754.6Sixなる組成と、Fe72Al5Ga2 11-x
64Sixなる組成と、Fe77Al2.14Ga0.8611-x
54Sixなる組成において、それぞれSi添加量を
変化させて液体急冷薄帯合金試料を作製し、液体急冷薄
帯合金試料の作製は上記実施例1と同様にして行った。
そして、作製した各組成系の薄帯合金試料のアモルファ
ス単相の薄帯を形成できる最大厚さ(tmax)のSi添
加量依存性についてを調べた。その結果を図7に示す。
図7に示した結果からFe70Al5Ga212.7-x5.75
4.6Sixなる組成の液体急冷薄帯合金試料において
は、Pに対してのSiの添加量が、0.8≦Si/(S
i+P)≦0.32のときtmaxが150μm以上のも
のが得られており、特に、0.11≦Si/(Si+
P)≦0.28のときtmaxが200μm以上のものが
得られており、また、Fe72Al5Ga211-x64
xなる組成の液体急冷薄帯合金試料においては、0.
09≦Si/(Si+P)≦0.25のとき、tmax
150μm以上のものが得られており、Fe77Al2.14
Ga0.8 611-x54Sixなる組成の液体急冷薄帯合
金試料は、0.18≦Si/(Si+P)≦0.26の
ときtmaxが150μm以上のものが得られていること
がわかる。
【0024】「実施例4」Fe、Al及びGaと、Fe
-C合金、Fe-P合金、B、Siを原料としてそれぞれ
所定量秤量し、減圧Ar雰囲気下においてこれらの原料
を高周波誘導加熱コイルで溶解し、原子組成比がFe77
Al2.14Ga0.8611-x54Six(x=2, 2.
6, 3)のインゴットを作製した。そして、インゴッ
トをるつぼ内に入れて溶解し、るつぼのノズルから回転
しているロールに溶湯を吹き出して急冷する単ロール法
によって、減圧Ar雰囲気下でリボンを得た。ここでの
リボン製造条件を、ノズルスリット径0.4〜0.7m
m、ノズル先端とロール表面との距離(ギャップ)0.
3〜0.45mm、ロール回転数2000〜350rp
m、ロール表面は#2000〜#600で研磨、雰囲気
圧力660トール(Ar置換)、射出圧力0.32〜
0.42kgf/cm2に設定して製造したところ、t
max130〜220μmの液体急冷薄帯合金試料を得る
ことができた。得られた各組成の液体急冷薄帯合金試料
の特性について、XRD(X線回折法)により構造解析
し、DSC(0.67K/s)と示差熱分析(DTA)
(0.33K/s)により熱分析を行った。また、磁気
特性については、厚さ25〜30μmの薄帯合金試料
を、赤外線イメージ炉を用いて熱処理した後に測定し
た。ここでの熱処理条件は、昇温速度3K/秒、保持温
度623K、保持時間30分とした。その結果を表2に
示す。
【0025】
【表2】
【0026】上記表2中の飽和磁化(σs)は振動試料
型磁化測定装置(±800kA/m)、保持力(Hc)
は直流B−Hループトレーサー(±1.6kA/m)、
透磁率(μe)はインピーダンスアナライザー(0.8
A/m)、飽和磁歪(λs)は三端子静電容量法、コア
ロスはB−Hアナライザーを用い、周波数50Hzで
1.0Tの磁界をかけることによりそれぞれ測定したも
のである。表2に示す結果からFe77Al2.14Ga0.86
8.454Si2.6なる組成の液体急冷薄帯合金試料
(Si/(Si+P)=0.24)は、高い飽和磁化を
維持したままtmaxが220μmと厚みが厚いものが得
られており、また、厚さ30μmにおいてμe(1kH
z)が12200と良好な軟磁気特性を示していること
がわかる。また、Fe77Al2.14Ga0.868.454
Si2.6なる組成の液体急冷薄帯合金試料は、臨界厚さ
のとき(tmax=220のとき)においてもμe(1kH
z)が4400の良好な軟磁気特性を示すことがわか
る。以上のことから、Fe77Al2.14Ga0.868.45
4Si2.6なる組成の液体急冷薄帯合金は、1.5Tの
飽和磁束密度と220μmの臨界厚さを同時に得ること
ができることがわかった。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、過
冷却液体の温度間隔ΔTxが35K以上であり、Feを
主成分として含み、半金属元素としてPとSiを必ず含
み、かつC、B、Geのうちの少なくとも1種以上を含
み、周期律表IIIB族及びIVB族の金属元素のうち
の少なくとも1種以上を含んでなり、原子%におけるS
iとPの比率が0<Si/(Si+P)≦0.4を満た
すものであるので、従来のアモルファス合金薄帯の厚み
の制約を克服し、バルク状体としての提供が可能であっ
て、しかも室温で軟磁気特性を有するFe基金属ガラス
合金を提供できる。 また、好ましい組成系としては、
上記周期律表IIIB族及びIVB族の金属元素として
Al、Ga、In及びSnのうちの少なくとも1種以上
を含んでなるものものが好ましい。
【0028】また、本発明によれば、非晶質単相の薄帯
が得られるtmaxが150μm以上の厚さのものが得ら
れ、特に原子%におけるSiとPの比率が0.11≦S
i/(Si+P)≦0.28としたものにあってはt
maxが200μm以上のものであって、しかも室温で軟
磁気特性を有するバルク状のFe基軟磁性金属ガラス合
金を提供することができる。また、上記軟磁気特性にお
いて、飽和磁化が高く、保磁力が低く、透磁率が高いも
のを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 板厚約30のリボン試料のDSC曲線を示す
図である。
【図2】 各組成の液体急冷薄帯合金試料のDSC曲線
から求めたTxとTgとΔTxの値と、tmaxのSi添加量
依存性を示す図である。
【図3】 飽和磁化(σs)とキュリー点(Tc)のSi
添加量依存性について示す図である。
【図4】 板厚50μmの各組成の液体急冷薄帯合金試
料における透磁率(μe)と飽和磁歪(λs)のSi添加
量依存性を示す図である。
【図5】 各組成系の液体急冷薄帯合金試料におけるΔ
TxのSi添加量依存性を示す図である。
【図6】 規格化ΔTxのSi/(Si+P)依存性を
示す図である。
【図7】 各組成系の液体急冷薄帯合金試料におけるt
maxのSi添加量依存性を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 水嶋 隆夫 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 牧野 彰宏 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 井上 明久 宮城県仙台市青葉区川内元支倉35番地 川 内住宅11−806

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ΔTx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開
    始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表され
    る過冷却液体の温度間隔ΔTxが35K以上であり、F
    eを主成分として含み、半金属元素としてPとSiを必
    ず含み、かつC、B、Geのうちの少なくとも1種以上
    を含み、周期律表IIIB族及びIVB族の金属元素の
    うちの少なくとも1種以上を含んでなり、原子%におけ
    るSiとPの比率が0<Si/(Si+P)≦0.4を
    満たすことを特徴とするFe基軟磁性金属ガラス合金。
  2. 【請求項2】 前記周期律表IIIB族及びIVB族の
    金属元素が、Al、Ga、In及びSnのうちの少なく
    とも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の
    Fe基軟磁性金属ガラス合金。
  3. 【請求項3】 液体急冷法により得られた非晶質単相の
    薄帯であり、該薄帯が得られる最大の厚さtmaxが15
    0μm以上のものであることを特徴とする請求項1また
    は2に記載のFe基軟磁性金属ガラス合金。
  4. 【請求項4】 前記ΔTxが50K以上であることを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のFe基軟磁性
    金属ガラス合金。
  5. 【請求項5】 前記Fe基軟磁性金属ガラス合金の組成
    が原子%で Al: 1 〜10% Ga: 0.5 〜 4% P: 15%以下 C: 7%以下 B: 2 〜10% Si: 15%以下 Fe: 残部 であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載
    のFe基軟磁性金属ガラス合金。
  6. 【請求項6】 前記Siの添加量が原子%で1.5〜
    3.5%であることを特徴とする請求項5に記載のFe
    基軟磁性金属ガラス合金。
  7. 【請求項7】 前記原子%におけるSiとPの比率が
    0.11≦Si/(Si+P)≦0.28であり、液体
    急冷法により得られた非晶質単相の薄帯の最大の厚さt
    maxが200μm以上であることを特徴とする請求項1
    に記載のFe基軟磁性金属ガラス合金。
  8. 【請求項8】 前記Fe基軟磁性金属ガラス合金の組成
    に、原子%でGeが4%以下含有されていることを特徴
    とする請求項5又は6に記載のFe基軟磁性金属ガラス
    合金。
  9. 【請求項9】 前記Fe基軟磁性金属ガラス合金の組成
    に、原子%でNb、Mo、Hf、Ta、W、Zr及びC
    rのうち少なくとも1種以上が0〜7%含有されている
    ことを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のFe
    基軟磁性金属ガラス合金。
  10. 【請求項10】 前記Fe基軟磁性金属ガラス合金の組
    成に、原子%で0〜10%のNiと0〜30%のCoの
    うち少なくとも一方が含有されていることを特徴とする
    請求項5〜9のいずれかに記載のFe基軟磁性金属ガラ
    ス合金。
  11. 【請求項11】 前記Fe基軟磁性金属ガラス合金に、
    300〜500℃の温度範囲の熱処理が施されてなるこ
    とを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のFe
    基軟磁性金属ガラス合金。
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