JP4216918B2 - Co基非晶質軟磁性合金 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非晶質でかつ軟磁性を有するCo基の合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多元素合金のある種のものは、組成物を溶融状態から急冷するとき、結晶化せず、一定の温度幅を有する過冷却液体状態を経過してガラス状固体に転移する性質を有していて、この種の非晶質合金は金属ガラス合金(glassy alloy)と呼ばれている。従来から知られている金属ガラス合金としては、1960年代において最初に製造されたFe−P−C系の非晶質合金、1970年代において製造された(Fe,Co,Ni)−P−B系、(Fe,Co,Ni)−Si−B系非晶質合金、1980年代において製造された(Fe,Co,Ni)−M(Zr,Hf,Nb)系非晶質合金、(Fe,Co,Ni)−M(Zr,Hf,Nb)−B系非晶質合金などがある。これらは磁性を有しているので、非晶質磁性材料としてトランスのコア材などの成形材料としての応用が期待された。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしこれらはいずれも、過冷却液体状態の温度幅が狭いために、単ロール法と呼ばれる成形法などにより105 K/sレベルの冷却速度で急冷して製造する必要があり、製造されたものは厚さが50μm以下の薄帯状であって、バルク形状の非晶質固体を得ることはできなかった。
【0004】
過冷却液体状態の温度幅が比較的広く、より緩慢な冷却によって非晶質固体が得られる金属ガラス合金としては、1988年〜1991年にかけて、Ln−Al−TM、Mg−Ln−TM、Zr−Al−TM(ここで、Lnは希土類元素、TMは遷移金属を示す)系等が知られ、これらの金属ガラス合金からは厚さ数mm程度の非晶質固体も得られてはいるが、これらはいずれも磁性を有しないので磁性材料としては使用できないものであった。
【0005】
磁性を有する非晶質合金としては、従来からFe−Si−B系のものが知られている。この系の非晶質合金は、飽和磁束密度は高いものの磁歪が1×10-5台と大きく、十分な軟磁気特性が得られず、また耐熱性が悪く、電気抵抗も小さく、トランスのコア材などとして用いる場合には過電流損失が大きいという問題があった。一方、Co基の非晶質合金は軟磁気特性には優れているものの、熱安定性に劣り、また電気抵抗も十分高くないため、やはりトランスのコア材などとして用いると過電流損失が大きく実用化に難点があった。しかもこれらのFe−Si−B系やCo基の非晶質合金は、前記のように溶湯からの急冷という条件下でなくては非晶質が形成できず、バルク形状の固体を作成するためには液体の急冷によって得られた薄帯を粉砕し、密圧下に焼結するという工程を経なければならず、工数がかかると共に成形物が脆いという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、従ってその目的は、磁歪が低く耐熱性に優れ、電気抵抗が高く過電流損失が少なく、しかも非晶質形成能が高く、鋳造法など徐冷の冷却条件でも容易に非晶質成形物を得ることができる非晶質合金を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために本発明は、下記の組成式Co100-x-y- wxyw (式中、TはFeおよびNiのうちの1種または2種であり、MはZr、Nb、Ta、Wのうちの1種または2種以上であり、かつ7≦x≦21(原子%)、 5≦y≦15(原子%)、15≦w≦22(原子%)である)で表されるCo基非晶質軟磁性合金の提供を目的とする。
【0008】
前記のCo基非晶質軟磁性合金は、xが8≦x≦30(原子%)であり、かつガラス転移点Tgを有するものであることが好ましい。
前記のCo基非晶質軟磁性合金は、xが14≦x≦21(原子%)であり、前記のガラス転移点Tgと結晶化開始温度Txとの差ΔTxが20K以上であることが好ましい。このガラス転移点Tgと結晶化開始温度Txとの差ΔTxは、
ΔTx=Tx−Tgの式で表される過冷却液体領域の温度幅ΔTxのことをさす。
【0009】
前記Co基非晶質軟磁性合金は、Mが(M’1-cM''c)で表され、M’はZr、Hfのうちの1種または2種、M''はNb、Ta、Wのうちの1種または2種以上であり、cは0.2≦c≦1であり、ガラス転移点Tgを有しているものであってもよい。
また、前記のCo基非晶質軟磁性合金は、組成式Co100-x-y- w Fe x yw (式中、MはZr、Nb、Ta、Wのうちの1種または2種以上であり、かつ0≦x≦3(原子%)、5≦y≦15(原子%)、15≦w≦22(原子%)である)で表され、磁歪の絶対値が1×10-6より小さいことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係るCo基非晶質軟磁性合金は、前記の式1で表される組成を有するものであり、基本的に下記の5群の元素を構成要素としている。
Co :本非晶質軟磁性合金の基となる元素
T群 :Fe、Niのうちの1種または2種
M群 :Ti、Zr、Nb、Ta、Hf、Mo、Wのうちの1種または2種以上
L群:Cr、Mn、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Al、Ga 、Si、Ge、C、Pのうちの1種または2種以上
B :ほう素
これらの元素群の構成比率は、T群元素が0原子%〜30原子%の範囲内であり、M群元素は5原子%〜15原子%の範囲内であり、L群元素は0原子%〜10原子%の範囲内であり、Bは15原子%〜22原子%の範囲内であり、残部がCoである。Coの比率は23原子%〜80原子%の範囲内である。
【0011】
本発明のCo基非晶質軟磁性合金において、前記の各元素群は一体となって非晶質でかつ軟磁性を有する合金を形成しているが、それぞれの元素群は下記の特性に寄与していると考えられる。
Co :合金の基となり磁性を担う。
T群 :これも磁性を担う元素であるが、特にFeが8原子%以上配合されるとガラス転移点Tgが生ずるようになり、過冷却液体状態が得易くなる。ただし30原子%を越えると磁歪が1×10-6より大となり好ましくない。
M群 :過冷却液体領域の温度幅ΔTxを拡大する効果があり、非晶質を形成し易くする。配合量が5原子%未満ではガラス転移点Tgが出現しなくなり好ましくない。また、15原子%を越えると磁気特性が低下し、特に、磁化が低下するため好ましくない。
L群:合金の耐食性を向上する効果がある。ただし、10原子%を越えて多量に配合すると磁気特性や非晶質形成性を劣化させるので好ましくない。
B :高い非晶質形成能を有すると共に、15原子%〜22原子%の配合によって比抵抗を増大させ、かつ熱安定性を高める効果がある。配合量は、15原子%未満では非晶質形成能が不十分でΔTxが減少または消滅する。また22原子%を越えると磁気特性を劣化させるので好ましくない。
【0012】
本発明のCo基非晶質軟磁性合金はガラス転移点Tgを有し、このガラス転移点Tgと結晶化開始温度Txとの差、すなわち
ΔTx=Tx−Tg
(式中、Txは結晶化開始温度、Tgはガラス転移点である)
の式で表される過冷却液体領域の温度幅ΔTxが、20K以上とされていることが好ましい。この条件を充たす組成物は、溶融状態から冷却するとき、結晶化開始温度Txの低温側に20K以上の広い過冷却液体領域を有し、結晶化することなく温度の低下に伴ってこの過冷却液体領域の温度幅ΔTxを経過した後に、ガラス転移点Tgに至って非結晶質のいわゆる金属ガラス合金を形成する。過冷却液体領域の温度幅ΔTxが20K以上と広いために、従来知られている非晶質合金のように急冷しなくても非晶質の固体が得られ、従って鋳型などの方法により厚みのあるブロック体を成形することができるようになる。
【0013】
前記式1で示されるCo基非晶質軟磁性合金において、特に、xが14≦x≦21(原子%)であるとき、過冷却液体領域の温度幅ΔTxが20K以上と広いものが好適に得られる。
上記M群元素のうちでもZrもしくはHfが好ましく、特にZrが有効であり、その一部をTi、Nb、Ta、W、Moのうち1種または2種以上の元素と置換することができ、その場合の前記Mは、(M’1-cM''c)で表される。このとき、M’は、ZrもしくはHf、またはZrとHfを両方含んでいる元素である。また、M''はTi、Nb、Ta、W、Moのうちの1種または2種以上の元素であり、この中でもNb、Ta、W、Moが好ましい。
置換する場合の組成比cは、0.2≦c≦1の範囲、より好ましくは0.2≦c≦0.8の範囲であると、過冷却液体領域の温度幅ΔTxを拡大することができる。このようにM’の一部をTi、Nb、Ta、W、Moのうち1種または2種以上の元素と置換されている場合は、Feの配合量xが8以下と少ない場合であってもTgを有しており、ΔTxを認めることができる。
【0014】
特に低磁歪性のCo基非晶質軟磁性合金が求められる場合には、前記の式1においてT群(Feおよび/またはNi)の配合量xを0原子%〜20原子%の範囲内とすることが好ましい。これによってΔTxを広くすることができる。磁歪の絶対値を10×10-6より小さくすることができる。また、T群の配合量xを0原子%〜8原子%の範囲内とすることが好ましい。これによって、磁歪の絶対値を5×10-6より小さくすることができる。さらに、T群の配合量xは、0原子%〜3原子%の範囲内にされることがより好ましく。これによって磁歪の絶対値が1×10-6より小さくすることができる。
【0015】
本発明のCo基非晶質軟磁性合金からなる非晶質固体を製造するに際しては、前記元素からなる組成物の溶融物を過冷却液体状態を保ったまま冷却し固化する必要がある。冷却には一般的に急冷法と徐冷法とがある。
急冷法の具体例としては、例えば単ロール法と呼ばれる方法が知られている。この方法は、先ず各成分の元素単体粉末を前記の組成割合となるように混合し、次いでこの混合粉末をArガス等の不活性ガス雰囲気中において、るつぼ等の溶解装置で溶解して合金の溶湯とする。次にこの溶湯を、回転している冷却用金属ロールに吹き付けて急冷することにより、薄帯状の金属ガラス合金固体を得ることができる。
【0016】
得られた薄帯は粉砕し、この非晶質粉末を型に入れ、密圧しながら粉末の表面が互いに融着する温度に加熱し、焼結することによってブロック形状の成形物を製造することができる。また合金の溶湯を単ロール法で冷却する際、過冷却液体領域の温度幅ΔTxが十分に大きければ、冷却速度を緩和することができるので、比較的厚みの厚い板状固体を得ることができ、例えばトランスのコア材等を成形することができる。更に、本発明のCo基非晶質軟磁性合金は、過冷却液体領域の温度幅ΔTxが十分に大きいことを利用して、鋳型など徐冷による鋳造も可能になる。更に液中紡糸法などにより細線を形成したり、スパッタ、蒸着などにより薄膜化することも可能である。
【0017】
以上詳しく説明したように本発明のCo基非晶質軟磁性合金は、磁気特性と成形性に優れたものであるので、トランスや磁気ヘッドの部材として有用であるばかりでなく、磁性材料に交流電流を印加したとき素材にインピーダンスによる電圧が発生し、その振幅が素材の長さ方向の外部磁界によって変化するいわゆるMI効果が発現するところから、MI素子としても適用が可能である。
【0018】
【実施例】
(製造例1)
所定割合のCoとT群元素(Fe)とM群元素(Zr)とBとをArガス雰囲気中で混合し、アーク溶解して下記組成の2種類の母合金を製造した。
実施例1:Co67Fe3Zr1020
実施例2:Co69Fe3Zr820
次に、これらの母合金をルツボで溶解し、Arガス雰囲気中40m/sで回転している銅ロールに、ルツボ下端の0.4mm径のノズルから射出圧力0.39×105Paで吹き出して急冷する単ロール法により、幅0.4〜1mm、厚さ13〜22μmの金属ガラス合金薄帯の試料を製造し、それぞれのキューリー点および比抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0004216918
【0020】
表1の結果から、各実施例の試料は、高いキューリー点を有しているため熱的安定性が高いことがわかる。また、高い比抵抗を有していることから、トランスのコア材などとして使用した場合に過電流損失を低減できるため、コアロス等を抑えることができる。
【0021】
次に、上記実施例と同様の製造条件で、Co70-xFexZr1020(x=0,7,14,21)なる組成の薄帯試料と、Co72-xFexZr820(x=0,9,16,20)なる組成の薄帯試料を作製した。
図1と図2に、作製した各組成の薄帯試料のDSC(示差走査熱量測定)曲線を示す。これらの図から、Co56Fe14Zr1020なる組成の薄帯試料ではΔTx=25K、Co49Fe21Zr1020なる組成の薄帯試料ではΔTx=34K、Co56Fe16Zr820なる組成の薄帯試料ではΔTx=39K、
Co52Fe20Zr820なる組成の薄帯試料ではΔTx=42Kであり、従ってこれらの組成の薄帯試料においてはΔTxが認められ、Fe量の増加とともに過冷却液体領域の温度幅ΔTxが大きくなっていることが認められる。
【0022】
図3は、作製したCo70-xFexZr1020なる組成の薄帯試料と、Co72-xFexZr820なる組成の薄帯試料のTxとTgとΔTxのFe配合量依存性について示したものである。図3から、この系の組成の合金においては、Fe配合量が14原子%〜21原子%のとき20K以上と広いΔTxが得られていることがわかる。
【0023】
次に前記各組成の薄帯試料について、保持温度10分、800Kで熱処理した場合の磁気特性を測定した。ここでの磁気特性は、振動試料型磁力計(VSM)およびB−Hループトレーサを用いて測定し、磁歪(λs)は静電容量法により測定した。
図4は、前記各組成の薄帯試料における磁気特性のFe配合量依存性について示したものである。これらの図から、この系の組成の合金においては、Feの配合量(原子%)の増加とともに飽和磁化(Is)および磁歪(λs)が増加していることがわかる。Fe配合量が20原子%以下であればλsの絶対値が10×10-6よりも小さいものが得られ、Fe配合量が8原子%以下であればλsの絶対値が5×10-6よりも小さくものが得られ、Fe配合量が3原子%以下であればλsの絶対値が1×10-6よりも小さいものが得られることがわかる。また、保持力(Hc)についてはFeの配合量が0〜16原子%までは、Feの配合量の増加とともにやや大きくなる傾向にあるが、16原子%を超えると小さくなっていることがわかる。
【0024】
次に前記各組成の薄帯試料を保持温度10分、750K〜800Kで熱処理した後の特性について調べた。
図5は、幅1mmと幅15mmのCo56Fe16Zr820なる組成の薄帯試料、幅1mmのCo69Fe3Zr820なる組成の薄帯試料が使用される時の周波数と、複素透磁率の実数部μ’との関係を示したものである。また、比較のために幅15mmのFe78Si913からなるMETGLAS2605S2(商品名;アライド社)の薄帯試料、幅15mmのCo−Fe−Ni−Mo−Si−B系のMETGLAS2605S2(商品名;アライド社)の薄帯試料が使用される時の周波数と複素透磁率の実数部μ’との関係を図5に合わせて示した。
図6は、幅15mmのCo56Fe16Zr820なる組成の薄帯試料が使用される時の周波数と、複素透磁率の実数部μ’ならびに複素透磁率の虚数部μ''との関係を示したものである。
【0025】
図5〜図6から、比較例のFe78Si913からなる薄帯試料、Co−Fe−Ni−Mo−Si−B系の薄帯試料では、使用周波数が大きくなるにしたがって複素透磁率の実数部μ’が急激に低下しており、使用周波数により特性に大きなバラツキが生じてしまうことがわかる。また、これら比較例の薄帯試料は、5kHz以上の周波数領域において、Co56Fe16Zr820なる組成の薄帯試料及びCo69Fe3Zr820なる組成の薄帯試料よりもμ’の値が小さくなっている。 これに対してCo56Fe16Zr820なる組成の薄帯試料とCo69Fe3Zr820なる組成の薄帯試料は、低周波領域でも複素透磁率の実数部μ’の値が大きく、約500kHzまでμ’の値がほぼ一定であり、500kHzを超える高周波領域になると緩やかに低下している。また、Co56Fe16Zr820なる組成の薄帯試料は、低周波領域でも複素透磁率の実数部μ’の値が20000と大きく、約500kHz付近でも複素透磁率の実数部μ’が複素透磁率の虚数部μ''より低下しておらず、また、約750kHzを超える高周波領域ではμ''がμ’より大きくなっており、よって、500kHz〜10000kHz帯の高周波領域でもQの値が十分大きく、コア材として用いても磁心損失が小さく、高周波用材料として優れたものであることが分かる。なお、上記Qは、コア材の損失特性を示すものであり、この値が大きいほど、高周波用材料として優れるものである。
【0026】
(製造例2)
所定割合のCoとT群元素(Fe)とM群元素(Zr,Nb,Ta,Wのうちの1種または2種以上)とBとをArガス雰囲気中で混合し、アーク溶解して各種組成の母合金を製造した。
次に、これらの母合金をルツボで溶解し、Arガス雰囲気中40m/sで回転している銅ロールに、ルツボ下端の0.4mm径のノズルから射出圧力0.39×105Paで吹き出して急冷する単ロール法により、幅0.4〜1mm、厚さ13〜22μmの金属ガラス合金薄帯試料を作製した。
【0027】
図7は、作製した厚さ20μmのCo63Fe71020なる組成の薄帯試料(M=Zr,Nb,Ta,W)のX線回折パターンを示すものである。図7に示すX線回折パターンにより、板厚20μmの薄帯試料にあってはいずれもハローなパターンとなっており、アモルファス単相組織を有していることが判明した。以上の結果から、本発明の組成系の合金を単ロール法により製造することで、アモルファス単相組織の薄帯が得られることが判明した。
【0028】
図8に、作製したCo63Fe7Zr10-yNby20なる組成の薄帯試料(y=0,2,4,6,8)のDSC曲線を示す。図8から、Co63Fe7Zr1020なる組成の薄帯試料ではΔTxが認められず、Co63Fe7Zr8Nb220なる組成の薄帯試料ではTg=830K、Tx=865K、ΔTx=35であり、
Co63Fe7Zr6Nb420なる組成の薄帯試料ではTg=842K、Tx=882K、ΔTx=40であり、Co63Fe7Zr4Nb620なる組成の薄帯試料ではTg=853K、Tx=898K、ΔTx=45であり、
Co63Fe7Zr2Nb820なる組成の薄帯試料ではTg=860K、Tx=899K、ΔTx=39であった。従って、この系の組成の合金においては、Feの配合量が7原子%と少ない場合であっても、ZrとNbが複合添加されていれば、すなわち、y=2〜8原子%(Zrに対しNbが組成比で0.2〜0.8置換)であれば、ΔTxが認められ、しかも35K以上と広いΔTxが有していることがわかる。
【0029】
図9に、作製したCo63Fe7Zr10-yTay20なる組成の薄帯試料(y=0,2,4,6,8,10)のDSC曲線を示す。
図9から、Co63Fe7Zr1020なる組成の薄帯試料ではΔTxが認められず、Co63Fe7Zr8Ta220なる組成の薄帯試料ではTg=830K、Tx=865K、ΔTx=37であり、Co63Fe7Zr6Ta420なる組成の薄帯試料ではTg=858K、Tx=895K、ΔTx=37であり、
Co63Fe7Zr4Ta620なる組成の薄帯試料ではTg=843K、Tx=883K、ΔTx=40であり、Co63Fe7Zr2Ta820なる組成の薄帯試料ではTg=833K、Tx=866K、ΔTx=33、Co63Fe7Ta1020なる組成の薄帯試料ではTg=838K、Tx=868K、ΔTx=30であった。従って、この系の組成の合金においては、Feの配合量が7原子%と少ない場合であっても、ZrとTaが複合添加されていれば、すなわち、Taが2〜10原子%(Zrに対しTaが組成比で0.2〜1.0置換)であれば、ΔTxが認められ、しかも33K以上と広いΔTxが有していることがわかる。
【0030】
図10に、作製したCo63Fe7Zr10-yy20なる組成の薄帯試料(y=0,2,4,6,8,10)のDSC曲線を示す。
図10から、Co63Fe7Zr1020なる組成の薄帯試料ではΔTxが認められず、Co63Fe7Zr8220なる組成の薄帯試料ではTg=860K、Tx=902K、ΔTx=40であり、Co63Fe7Zr6420なる組成の薄帯試料ではTg=838K、Tx=882K、ΔTx=44であり、
Co63Fe7Zr4620なる組成の薄帯試料ではTg=840K、Tx=879K、ΔTx=39であり、Co63Fe7Zr2820なる組成の薄帯試料ではTg=819K、Tx=850K、ΔTx=31、Co63Fe71020なる組成の薄帯試料ではTg=808K、Tx=832K、ΔTx=24であった。従って、この系の組成の合金においては、Feの配合量が7原子%と少ない場合であっても、ZrとWが複合添加されていれば、すなわち、Wが2〜10原子%(Zrに対しWが組成比で0.2〜1.0置換)であれば、ΔTxが認められ、しかも31K以上と広いΔTxが有していることがわかる。
【0031】
図11は、作製したCo63Fe7Zr10-yy20なる組成の薄帯試料(M=Nb,Ta,W)のTxとTgとΔTxのM(Nb,Ta,W)配合量依存性について示したものである。図11から、この系の組成の合金においては、Zrを上記M(Nb,Ta,W)で置換したときのM配合量が2原子%〜8原子%のとき30K以上と広いΔTxが得られており、特に、MがNbまたはTaのとき、該M配合量を2原子%〜6原子%とすると40K以上と広いΔTxが得られており、M配合量を4原子%とすると45K以上とより広いΔTxが得られていることがわかる。
【0032】
次に前記各組成の薄帯試料について、保持温度10分、800Kで熱処理した場合の磁気特性を測定した。ここでの磁気特性は、振動試料型磁力計(VSM)およびB−Hループトレーサを用いて測定し、磁歪(λs)は静電容量法により測定した。透磁率(μe)はインピーダンスアナライザーを用いて測定した。
図12は、作製したCo63Fe7Zr10-yy20なる組成の薄帯試料(M=
Nb,Ta,W)の磁気特性のM(Nb,Ta,W)配合量依存性について示したものである。図12から、この系の組成の合金においては、Feの配合量が7原子%の場合で、Zrを上記M(Nb,Ta,W)で置換したときのM配合量を増加させても飽和磁化(Is)は殆ど変化しておらず、また、保磁力は5A/m以下であることがわかる。また、Feの配合量が7原子%と少ない場合であっても、Zrが上記M(Nb,Ta,W)で置換(ZrとMの複合添加)されていれば、λsの絶対値が3×10-6よりも小さいものが得られており、透磁率μeが1×104よりも大きいものが得られており、特にZrをTaまたはWで置換した場合は、1.5×104よりも大きい透磁率が得られており、従って、軟磁気特性が優れていることが分かる。
【0033】
図13は、厚さ20μmのCo63Fe7Nb1020なる組成の薄帯試料、厚さ20μmのCo63Fe7Zr6Ta420なる組成の薄帯試料、
Co63Fe76Zr420なる組成の薄帯試料が使用される時の周波数と、透磁率μとの関係を示したものである。
図13から、Co63Fe7Nb1020なる組成の薄帯試料、厚さ20μmのCo63Fe7Zr6Ta420なる組成の薄帯試料、Co63Fe76Zr420なる組成の薄帯試料においては、低周波領域でも透磁率μの値が104以上と大きく、しかも約100kHzまで透磁率の値がほぼ一定であり、100kHzを超える高周波領域における透磁率の低下が緩やかであり、従って、高周波における透磁率の低下が抑制され、高周波特性が優れていることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のCo基非晶質軟磁性合金は、式Co100-x-y- wxyw において、TはFeおよびNiのうちの1種または2種であり、MはZr、Ta、Nb、Wのうちの1種または2種以上であり、7≦x≦21(原子%)、5≦y≦15(原子%)、15≦w≦22(原子%)とされたものであるので、優れた軟磁気特性と成形性とを有し、また高い熱的安定性を備え、比抵抗も高いことから、トランス用のコア材などのような磁性部材として有用な非晶質成形物を製造することができる。
た、14≦x≦21を満足することで、過冷却液体領域の温度幅ΔTxを20K以上と広くすることができ、この場合、従来知られている非晶質合金のように急冷しなくても非晶質の固体が得られ易くなり、厚みのあるブロック体を成形することができるようになる。
本発明において、組成式Co100-x-y- w Fe x yw (式中、MはZr、Nb、Ta、Wのうちの1種または2種以上であり、かつ0≦x≦3(原子%)、5≦y≦15(原子%)、15≦w≦22(原子%)である)で表される組成とすることで、磁歪の絶対値が1×10-6より小さいCo基非晶質軟磁性合金を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Co70-xFexZr1020(x=0,7,14,21)なる組成の薄帯試料のDSC曲線を示す図である。
【図2】 Co72-xFexZr820(x=0,9,16,20)なる組成の薄帯試料のDSC曲線を示す図である。
【図3】 Co70-xFexZr1020なる組成の薄帯試料と、Co72-xFexZr820なる組成の薄帯試料のTxとTgとΔTxのFe配合量依存性を示す図である。
【図4】 Co70-xFexZr1020なる組成の薄帯試料と、Co72-xFexZr820なる組成の薄帯試料における磁気特性のFe配合量依存性を示す図である。
【図5】 各組成の薄帯試料が使用される時の周波数と複素透磁率の実数部μ’との関係を示す図である。
【図6】 Co56Fe16Zr820なる組成の薄帯試料が使用される時の周波数と、複素透磁率の実数部μ’ならびに複素透磁率の虚数部μ''との関係を示す図である。
【図7】 Co63Fe71020なる組成の薄帯試料(M=Zr,Nb,
Ta,W)のX線回折パターンを示す図である。
【図8】 Co63Fe7Zr10-yNby20なる組成の薄帯試料(y=0,2,4,6,8)のDSC曲線を示す図である。
【図9】 Co63Fe7Zr10-yTay20なる組成の薄帯試料(y=0,2,4,6,8,10)のDSC曲線を示す図である。
【図10】 Co63Fe7Zr10-yy20なる組成の薄帯試料(y=0,2,4,6,8,10)のDSC曲線を示す図である。
【図11】 Co63Fe7Zr10-yy20なる組成の薄帯試料(M=Nb,Ta,W)のTxとTgとΔTxのM(Nb,Ta,W)配合量依存性について示す図である。
【図12】 Co63Fe7Zr10-yy20なる組成の薄帯試料(M=Nb,Ta,W)の磁気特性のM(Nb,Ta,W)配合量依存性を示す図である。
【図13】 Co63Fe7Nb1020なる組成の薄帯試料、
Co63Fe7Zr6Ta420なる組成の薄帯試料、Co63Fe76Zr420なる組成の薄帯試料が使用される時の周波数と、透磁率μとの関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 下記の組成式
    Co100-x-y- wxyw (式中、TはFeおよびNiのうちの1種または2種であり、MはZr、Nb、Ta、Wのうちの1種または2種以上であり、かつ7≦x≦21(原子%)、 5≦y≦15(原子%)、15≦w≦22(原子%)である)で表されることを特徴とするCo基非晶質軟磁性合金。
  2. xが8≦x≦21(原子%)であり、かつガラス転移点Tgを有することを特徴とする請求項1に記載のCo基非晶質軟磁性合金。
  3. 前記xは14≦x≦21(原子%)であり、前記のガラス転移点Tgと結晶化開始温度Txとの差ΔTxが20K以上であることを特徴とする請求項に記載のCo基非晶質軟磁性合金。
  4. 前記Mが(M’1-cM''c)で表され、M’はZr、Hfのうちの1種または2種、M''はNb、Ta、Wのうちの1種または2種以上であり、cは0.2≦c≦1であり、ガラス転移点Tgを有していることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のCo基非晶質軟磁性合金。
  5. 下記の組成式
    Co100-x-y- w Fe x y w (式中、MはZr、Nb、Ta、Wのうちの1種または2種以上であり、かつ0≦x≦3(原子%)、5≦y≦15(原子%)、15≦w≦22(原子%)である)で表され、磁歪の絶対値が1×10-6より小さいことを特徴とするCo基非晶質軟磁性合金。
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