JP2003290790A - 脱窒装置の立ち上げ方法 - Google Patents

脱窒装置の立ち上げ方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】脱窒装置の立ち上げ時におけるメタンガスの発
生を抑制する。 【解決手段】メタン発酵菌のグラニュールを脱窒槽1内
に充填し、窒素酸化物を含む水を脱窒槽1に対して通水
することにより、脱窒槽1内のメタン発酵菌のグラニュ
ールの表面に脱窒細菌を付着増殖させて脱窒装置を立ち
上げる場合に、窒素酸化物を含む水を通水することによ
り脱窒槽1内のメタン発酵菌のグラニュールの表面に脱
窒細菌を付着増殖させる前に、脱窒槽1内のメタン発酵
菌の活性を低下させる。詳細には、脱窒槽1内のメタン
発酵菌のグラニュールを酸化剤と接触させることによ
り、脱窒槽1内のメタン発酵菌の活性を低下させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、脱窒装置の立ち上
げ方法に関し、特には、硝酸態あるいは亜硝酸態窒素を
除去する脱窒装置の立ち上げ方法に関する。詳細には、
脱窒装置の立ち上げ時におけるメタンガスの発生を抑制
することができる脱窒装置の立ち上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、脱窒槽内に脱窒細菌を高濃度で保
持することができ、これにより処理効率の向上、装置の
小型化が可能な生物学的脱窒装置として、グラニュール
を利用した上向流汚泥床(USB:Upflow Sl
udge Blanket)方式の生物学的脱窒装置が
知られている。この種の生物学的脱窒装置の例として
は、例えば特開平7−290088号公報に記載された
ものがある。
【0003】USB方式の生物学的脱窒装置は、脱窒細
菌の付着担体を用いることなく選択的に造粒させて、脱
窒槽内に脱窒細菌を高濃度の粒状に凝集させたグラニュ
ール(粒状化汚泥)の流動床を形成し、原水(硝酸性窒
素及び/又は亜硝酸性窒素あるいは有機性物質を含む排
水)を脱窒槽下部から導入して有機物の存在下でこのグ
ラニュールと接触させ、原水中の硝酸性窒素、亜硝酸性
窒素を分解し、脱窒処理水を脱窒槽上部の固気液分離部
から取り出すものである。
【0004】このようなUSB方式の生物学的脱窒装置
は、脱窒細菌を高い密度で保持でき、高容積負荷での運
転が可能となるため、高濃度の硝酸性窒素及び/又は亜
硝酸性窒素を含む排水を効率的に処理することができる
と共に、装置設置面積の縮小を図ることができる。
【0005】また従来、メタン発酵菌のグラニュールを
脱窒槽内に充填し、窒素酸化物を含む水をその脱窒槽に
対して通水することにより、脱窒槽内のメタン発酵菌の
グラニュールの表面に脱窒細菌を付着増殖させる脱窒装
置の立ち上げ方法が知られている。この種の脱窒装置の
立ち上げ方法の例としては、例えば特開平7−2900
88号公報に記載されたものがある。特開平7−290
088号公報に記載された脱窒装置の立ち上げ方法で
は、嫌気グラニュールを用いることにより、脱膣装置の
立ち上げに要する時間が短縮せしめられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、脱窒装置の
立ち上げ時に嫌気グラニュール中のメタン発酵菌が活性
状態にある場合には、脱窒槽内に有機物と硝酸性窒素と
が導入されたときにメタンガスが発生する。メタンガス
が発生してしまうと、引火爆発のおそれが生じてしま
う。一方、メタンガスの発生は脱窒装置の立ち上げ時に
特有のものであり、脱窒装置の通常運転時には、メタン
ガスは殆ど発生しない。従って、脱窒装置の立ち上げ時
に発生するメタンガスが引火爆発するのを阻止する安全
設計を行うと、脱窒装置の通常運転時においては、その
安全設計が過剰なものとなってしまう。
【0007】更に、メタンガスが発生してしまうと、硝
酸性窒素の脱窒に必要とする以上の有機物が消費されて
しまう。その結果、脱窒に必要な有機物が不足し、脱窒
反応速度が低下してしまう。脱窒反応速度が低下する
と、脱窒装置の立ち上げに要する時間が増大してしま
う。一方、脱窒反応速度が低下しないようにするには、
脱窒に必要とする以上の有機物が消費されてしまう。
【0008】つまり、メタンガスが引火爆発するのを阻
止する安全設計が過剰になってしまうのを回避し、か
つ、生物学的脱窒装置の立ち上げを安定して効率良く行
うためには、脱窒装置の立ち上げ時におけるメタンガス
の発生を抑制する必要がある。
【0009】前記問題点に鑑み、本発明は脱窒装置の立
ち上げ時におけるメタンガスの発生を抑制することがで
きる脱窒装置の立ち上げ方法を提供することを目的とす
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明に
よれば、メタン発酵菌のグラニュールを脱窒槽内に充填
し、窒素酸化物を含む水を前記脱窒槽に対して通水する
ことにより、前記脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュー
ルの表面に脱窒細菌を付着増殖させる脱窒装置の立ち上
げ方法において、窒素酸化物を含む水を通水することに
より前記脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュールの表面
に脱窒細菌を付着増殖させる前に、前記脱窒槽内のメタ
ン発酵菌の活性を低下させることを特徴とする脱窒装置
の立ち上げ方法が提供される。
【0011】請求項2に記載の発明によれば、前記脱窒
槽内のメタン発酵菌のグラニュールを酸化剤と接触させ
ることにより、前記脱窒槽内のメタン発酵菌の活性を低
下させることを特徴とする請求項1に記載の脱窒装置の
立ち上げ方法が提供される。
【0012】請求項3に記載の発明によれば、有機物の
存在下において前記脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュ
ールを酸化剤と接触させることを特徴とする請求項2に
記載の脱窒装置の立ち上げ方法が提供される。
【0013】請求項4に記載の発明によれば、前記酸化
剤として過酸化水素を用いることを特徴とする請求項2
又は3に記載の脱窒装置の立ち上げ方法が提供される。
【0014】有機物と酸化物とが接触すると過酸化物ラ
ジカル(パーオキシドラジカル)が発生する。メタン発
酵菌はパーオキシドラジカルを分解することができない
ため、パーオキシドラジカルが発生すると、メタン発酵
菌はダメージを受け、メタン発酵菌の活性が低下するこ
とになる。一方、脱窒細菌はパーオキシドラジカルを分
解する酵素を保持しているため、パーオキシドラジカル
が発生しても、脱窒細菌は、接触したパーオキシドラジ
カルを容易に分解し、ダメージを受けない。
【0015】上述した原理を利用し、請求項1及び2に
記載の脱窒装置の立ち上げ方法では、脱窒装置の立ち上
げ時、詳細には、メタン発酵菌のグラニュールが充填さ
れた脱窒槽に対して窒素酸化物を含む水を通水すること
により、脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュールの表面
に脱窒細菌を付着増殖させる前に、脱窒槽内のメタン発
酵菌の活性が低下せしめられる。詳細には、脱窒槽内の
メタン発酵菌のグラニュールを酸化剤と接触させること
により、脱窒槽内のメタン発酵菌の活性が低下せしめら
れる。その結果、脱窒装置の立ち上げ時におけるメタン
ガスの発生を抑制することができる。
【0016】詳細には、嫌気グラニュール溶液中に溶解
性有機物成分が存在しない場合には、脱窒槽内のメタン
発酵菌のグラニュールが酸化剤と接触せしめられると、
嫌気グラニュールの有機物成分の一部がパーオキシドラ
ジカル化し、それにより、メタン発酵菌がダメージを受
け、メタン発酵菌の活性が低下せしめられる。
【0017】一方、嫌気グラニュール溶液中に溶解性有
機物成分が存在する場合には、脱窒槽内のメタン発酵菌
のグラニュールが酸化剤と接触せしめられると、嫌気グ
ラニュール溶液中の溶解性有機物成分が酸化剤と接触
し、パーオキシドラジカルが発生する。それにより、メ
タン発酵菌がダメージを受け、メタン発酵菌の活性が低
下せしめられる。
【0018】パーオキシドラジカルの発生効率は、嫌気
グラニュール溶液中に溶解性有機物成分が存在しない場
合よりも、嫌気グラニュール溶液中に溶解性有機物成分
が存在する場合の方が高くなる。
【0019】上述した点に鑑み、請求項3に記載の脱窒
装置の立ち上げ方法では、有機物の存在下において脱窒
槽内のメタン発酵菌のグラニュールが酸化剤と接触せし
められる。そのため、嫌気グラニュール溶液中に溶解性
有機物成分が存在しない場合よりも、パーオキシドラジ
カルの発生効率を高くし、メタン発酵菌の活性を効果的
に低下させることができる。
【0020】また、脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュ
ールを酸化剤と接触させるとき、酸化剤として過酸化水
素を用いる場合には、酸化剤として過酸化水素以外のも
のを用いる場合よりもパーオキシドラジカルの発生効率
が高くなる点に鑑み、請求項4に記載の脱窒装置の立ち
上げ方法では、酸化剤として過酸化水素が用いられる。
そのため、酸化剤として過酸化水素以外のものが用いら
れる場合よりも、パーオキシドラジカルの発生効率を高
くし、メタン発酵菌の活性を効果的に低下させることが
できる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の脱窒装置の立ち上
げ方法の第一の実施形態について説明する。第一の実施
形態では、まず、脱窒槽内にメタン発酵菌の嫌気グラニ
ュールが充填される。次いで、脱窒槽内のメタン発酵菌
の嫌気グラニュールが酸化剤と接触せしめられる。第一
の実施形態では、酸化剤として過酸化水素が用いられる
が、第一の実施形態の変形例では、過酸化水素の代わり
に、酸素、次亜塩素酸イオン、塩素酸イオン等を酸化剤
として用いることができる。脱窒槽内のメタン発酵菌の
嫌気グラニュールが酸化剤と接触せしめられると、酸化
剤と接触した嫌気グラニュールの有機物成分の一部がパ
ーオキシドラジカル化する。それにより、メタン発酵菌
がダメージを受け、メタン発酵菌の活性が低下する。一
方、脱窒細菌はダメージを受けない。次いで、例えば硝
酸塩、亜硝酸塩のような窒素酸化物を含む水が脱窒槽に
対して通水せしめられ、脱窒槽内のメタン発酵菌のグラ
ニュールの表面に脱窒細菌が付着増殖せしめられる。
【0022】脱窒槽内のメタン発酵菌の嫌気グラニュー
ルと接触せしめられる酸化剤としては、過酸化水素、酸
素、次亜塩素酸イオン、塩素酸イオンなどを用いること
ができるが、過酸化水素が特に好ましく、酸化剤濃度は
0.1ppm〜1000ppmが好ましい。また、脱窒
槽内のメタン発酵菌の嫌気グラニュールと酸化剤との接
触時間は、1分間〜1日程度が好ましい。
【0023】以下、本発明の脱窒装置の立ち上げ方法の
第二の実施形態について説明する。第二の実施形態で
は、まず、脱窒槽内にメタン発酵菌の嫌気グラニュール
が充填される。次いで、脱窒槽内のメタン発酵菌の嫌気
グラニュールが、溶解性有機物成分および酸化剤と接触
せしめられる。第二の実施形態では、酸化剤として過酸
化水素が用いられるが、第二の実施形態の変形例では、
過酸化水素の代わりに、酸素、次亜塩素酸イオン、塩素
酸イオン等を酸化剤として用いることができる。脱窒槽
内のメタン発酵菌の嫌気グラニュールが溶解性有機物成
分および酸化剤と接触せしめられると、溶解性有機物成
分と酸化剤とが接触することにより、パーオキシドラジ
カルが発生する。それにより、メタン発酵菌がダメージ
を受け、メタン発酵菌の活性が低下する。一方、脱窒細
菌はダメージを受けない。次いで、例えば硝酸塩、亜硝
酸塩のような窒素酸化物を含む水が脱窒槽に対して通水
せしめられ、脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュールの
表面に脱窒細菌が付着増殖せしめられる。
【0024】脱窒槽内のメタン発酵菌の嫌気グラニュー
ルと接触せしめられる酸化剤としては、過酸化水素、酸
素、次亜塩素酸イオン、塩素酸イオンなどを用いること
ができるが、過酸化水素が特に好ましく、酸化剤濃度は
0.1ppm〜1000ppmが好ましい。また、溶解
性有機物成分の溶解COD濃度は0.1ppm〜100
0ppmが好ましく、脱窒槽内のメタン発酵菌の嫌気グ
ラニュールと溶解性有機物成分および酸化剤との接触時
間は、1分間〜1日程度が好ましい。
【0025】脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュールと
接触せしめられる酸化剤の濃度が一定のとき、パーオキ
シドラジカルの発生効率は以下のような順になる。 1.溶解性有機物+過酸化水素溶液 2.溶解性有機物+過酸化水素以外の酸化剤 3.嫌気グラニュール+過酸化水素溶液 4.嫌気グラニュール+過酸化水素以外の酸化剤
【0026】(実施例)図1は本発明の脱窒装置の立ち
上げ方法に用いられる脱窒装置の概略構成図である。図
1において、1は脱窒槽、2は調整槽である。図1に示
す装置を用いて、水道水にNaNOを500mg・N
/L、メタノールを1.5g/L、HPOを10m
g・P/Lとなるように添加して調整した合成排水(3
0℃、pH6.5)を原水として装置の立ち上げ運転を
行った。透明塩化ビニル製円筒反応塔よりなる脱窒槽1
は直径50cm、直塔部の長さは5mであり、上部に角
形固気液分離装置(GSS)を有する。槽容積は約1.
0mである。
【0027】脱窒槽1には有機排水のUASB装置(図
示せず)から得られた嫌気性グラニュールを表1の通り
前処理して、槽体積比50%となるように充填し、窒素
負荷1kgN/m・dとなるよう原水を供給した。こ
の間、脱窒槽1からの処理水の循環量を調節してLV=
2m/hrとした。通液開始1日後にGSS上部のガス
サンプリング部からガスをサンプリングし、メタン濃度
を測定した。通水開始後1日後までのガス発生量を湿式
ガスメータにより測定した。
【0028】
【表1】
【0029】試験結果を表2に示す。処理を行わない場
合にはメタンガスの発生があったが、前処理を行った系
ではメタンガスの発生が認められなかった。
【0030】
【表2】
【0031】上記試験とは別に以下の条件におけるパー
オキシドラジカルの発生をESRにより測定した。溶解
性有機物としてはメタノール10(mg/L)を添加し
た。過酸化水素は1(mg/L)添加した。嫌気グラニ
ュールは100(mg・VSS/L)添加した。このと
きのパーオキシドラジカル発生量の相対値を表3に示
す。なお、空気は、流量200L/hrで10分間曝気
した。
【0032】
【表3】
【0033】パーオキシドラジカルの発生量は以下のよ
うな順であった。 1.溶解性有機物+過酸化水素溶液 2.溶解性有機物+過酸化水素溶液+嫌気グラニュール 3.溶解性有機物+空気+嫌気グラニュール 4.嫌気グラニュール+過酸化水素溶液 5.嫌気グラニュール+空気
【0034】以上の結果から、過酸化水素と溶解性有機
物の反応によりパーオキシドラジカルが発生し、嫌気グ
ラニュールによりこのとき発生したパーオキシドラジカ
ルが消費されることが確認された。
【0035】
【発明の効果】請求項1及び2に記載の発明によれば、
脱窒装置の立ち上げ時におけるメタンガスの発生を抑制
することができる。
【0036】請求項3に記載の発明によれば、嫌気グラ
ニュール溶液中に溶解性有機物成分が存在しない場合よ
りも、パーオキシドラジカルの発生効率を高くし、メタ
ン発酵菌の活性を効果的に低下させることができる。
【0037】請求項4に記載の発明によれば、酸化剤と
して過酸化水素以外のものが用いられる場合よりも、パ
ーオキシドラジカルの発生効率を高くし、メタン発酵菌
の活性を効果的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の脱窒装置の立ち上げ方法に用いられる
脱窒装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 脱窒槽 2 調整槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4D003 AA01 AA14 DA01 EA01 EA30 FA10 4D040 AA04 BB02 BB52

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタン発酵菌のグラニュールを脱窒槽内
    に充填し、窒素酸化物を含む水を前記脱窒槽に対して通
    水することにより、前記脱窒槽内のメタン発酵菌のグラ
    ニュールの表面に脱窒細菌を付着増殖させる脱窒装置の
    立ち上げ方法において、窒素酸化物を含む水を通水する
    ことにより前記脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュール
    の表面に脱窒細菌を付着増殖させる前に、前記脱窒槽内
    のメタン発酵菌の活性を低下させることを特徴とする脱
    窒装置の立ち上げ方法。
  2. 【請求項2】 前記脱窒槽内のメタン発酵菌のグラニュ
    ールを酸化剤と接触させることにより、前記脱窒槽内の
    メタン発酵菌の活性を低下させることを特徴とする請求
    項1に記載の脱窒装置の立ち上げ方法。
  3. 【請求項3】 有機物の存在下において前記脱窒槽内の
    メタン発酵菌のグラニュールを酸化剤と接触させること
    を特徴とする請求項2に記載の脱窒装置の立ち上げ方
    法。
  4. 【請求項4】 前記酸化剤として過酸化水素を用いるこ
    とを特徴とする請求項2又は3に記載の脱窒装置の立ち
    上げ方法。
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