JP5006845B2 - 一酸化二窒素の発生抑制方法 - Google Patents

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本発明は一酸化二窒素の発生抑制方法に関するものである。
従来、窒素含有液の脱窒方法としては、アンモニア性窒素をアンモニア酸化細菌の働きにより亜硝酸性窒素に酸化し、さらに亜硝酸性窒素を亜硝酸酸化細菌により硝酸性窒素に酸化する硝化工程と、これらの亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を従属栄養細菌である脱窒細菌によりメタノール等の有機物を電子供与体として利用して窒素ガスにまで転換する脱窒工程との2段階の生物反応を経る生物学的硝化脱窒法が一般的であった。
しかし、このような従属栄養細菌を利用する硝化脱窒処理では、アンモニア性窒素が亜硝酸を経て硝酸性窒素になるまで硝化するため、多くの曝気動力が必要となる欠点があった。
前記欠点を克服する手段として、アンモニア性窒素の一部を残存させる亜硝酸型硝化工程と、嫌気条件下でアンモニア性窒素を電子供与体、亜硝酸性窒素を電子受容体として両者を反応させ、窒素ガスを生成させる脱窒工程とからなる脱窒方法が開示されている(特許文献1)。
ここで、有機性原水を用いて特許文献1に開示の脱窒方法を行う場合は、亜硝酸型硝化工程において、亜硝化型硝化工程で一酸化二窒素(N2O↑)が生じたり、窒素ガス(N2↑)が副生成物として生じる現象が観察されていた。
一酸化二窒素(N2O)は二酸化炭素の320倍の強力な温室効果ガスであり、地球温暖化やオゾン層破壊防止の観点からも、その発生抑制は急務であると言える。
特開2006−88092号公報
本発明の目的は、亜硝酸型硝化工程を採用した脱窒方法において、亜硝化槽における窒素ガスおよび一酸化二窒素の発生を防止する有機性原水の脱窒方法を提供することである。
本発明者はこの課題を解決するために研究を重ねた結果、高BODの有機性原水中に亜硝酸性窒素イオン(NO )が共存する場合には、亜硝酸性窒素(NO )が脱窒反応を受け、その副生成物として一酸化二窒素(NO↑)が生じてしまうことを究明した。上記の知見に基づいてなされた本発明は、アンモニア性窒素を含有する有機性原水をBOD分解槽に導入して有機物を分解するBOD分解工程と、該BOD分解槽からの流出水を、亜硝化槽に導入し、アンモニア酸化細菌の作用により亜硝酸性窒素に酸化する亜硝酸型硝化工程と、前記亜硝化槽からの流出水を、脱窒槽に導入し、脱窒菌の作用により窒素ガスを発生させる脱窒工程と、からなる窒素除去プロセスにおける一酸化二窒素の発生抑制方法であって、BOD分解槽内に生物担体を投入し、かつ、BOD分解槽内の溶存酸素量が2.8mg/L以下であるように曝気量を制御して、前記BOD分解槽及び前記亜硝化槽における一酸化二窒素の発生量(N O発生量/原水中のNH −N負荷量)を、500〜1500mg/Lのアンモニア性窒素を含有する有機性原水を処理対象として、合計0.2%以下に抑制したことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の一酸化二窒素の発生抑制方法において、前記亜硝酸型硝化工程がアンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化細菌の作用により亜硝酸性窒素に酸化する亜硝酸型硝化工程であり、前記脱窒工程が前記亜硝酸型硝化工程で生じた亜硝酸性窒素を電子受容体とし、残存したアンモニア性窒素を電子供与体として独立栄養微生物の作用により窒素ガスを発生させる嫌気性アンモニア酸化反応工程であることを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の一酸化二窒素の発生抑制方法において、独立栄養微生物がアナモックス菌であることを特徴とするものである。
請求項1に係る一酸化二窒素の発生抑制方法では、亜硝酸型硝化工程と脱窒工程とからなる有機性原水の脱窒方法において、生物担体が投入され、かつ溶存酸素量が2.8mg/L以下であるように曝気量を制御されたBOD分解槽に導入して有機物を分解するBOD分解工程を設けたことにより、亜硝酸型硝化工程に導入される被処理水のBODが低減される。その結果、亜硝酸型硝化工程で亜硝酸が発生する過程で、BOD共存が要因となって脱窒反応が生じ、その副生成物として一酸化二窒素が生じたりする問題が解消可能となる。
なお、生物担体を用いずに活性汚泥を用いてBOD分解を行う技術が知られているが、この場合にはBOD分解槽の後ろに活性汚泥を沈澱分離するための沈澱池と、分離した活性汚泥をBOD分解槽に戻す汚泥返送が必要となり、設備が複雑化する上、運転も困難となる問題が生じる。一方、生物担体を用いてBOD分解を行う本発明によれば、これらの問題を生じることなく一酸化二窒素の発生を抑制することができる。
また、BOD分解工程においてDOが2.8mg/L以下であるように曝気量を制御することにより、BOD分解槽におけるアンモニア酸化細菌の代謝を抑えること(亜硝化反応の進行を抑制すること)が可能となる。このため、BOD分解槽内で高BOD有機物と亜硝酸の共存状態が生じて脱窒反応が生じ、その副生成物として一酸化二窒素が生じたりする問題が解消可能となる。
請求項2記載の発明のように、亜硝酸型硝化工程がアンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化細菌の作用により亜硝酸性窒素に酸化する亜硝酸型硝化工程とし、前記脱窒工程を前記亜硝酸型硝化工程で生じた亜硝酸性窒素を電子受容体とし、残存したアンモニア性窒素を電子供与体として独立栄養微生物の作用により窒素ガスを発生させる嫌気性アンモニア酸化反応工程とする場合には、以下の反応によりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素が窒素ガス(N2)に分解されると考えられている。
Figure 0005006845
すなわち、上記嫌気性アンモニア酸化反応工程で効率よく脱窒を行うためには、嫌気性アンモニア酸化反応工程に導入する被処理水中のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の含有比率がNO2−/ NH4+=0.57/0.43=1.32である事が望ましいが、本発明によれば、前記のように嫌気性アンモニア酸化反応工程導入前に、窒素源が窒素ガスや一酸化二窒素ガスとして失われていた問題が解消し、亜硝化率の制御が容易となる。
図1は本発明を実施するのに好適な装置の一例を示す構成図である。図1に示す本発明を実施する装置はBOD分解槽1と、亜硝化槽2と、嫌気性アンモニア酸化反応槽3と、BOD分解槽用DO計4と、BOD分解槽用曝気装置5と、亜硝化槽用DO計6と、亜硝化槽用曝気装置7と、から構成される。
BOD分解槽1に導入する有機性原水とは、例えば、下水処理場で発生する汚泥返流水等であって、比較的高濃度のリン酸イオン(Pとして30〜150mg/L)とアンモニウムイオン(Nとして500〜1500mg/L)を含み、更にマグネシウムイオン(5〜15mg/L)が共存する有機性原水である。
本発明は、亜硝酸型硝化工程と脱窒工程とからなる有機性排水の脱窒方法において、亜硝化槽2の前段に、生物担体が投入され、かつDOが2.8mg/L以下であるように曝気量を制御されたBOD分解槽1を設け、アンモニア性窒素を含む有機性廃水をBOD分解槽1に導入して有機物を分解するBOD分解工程を設けたことを特徴とする有機性排水の脱窒方法であり、本実施形態では、特に、アンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化細菌の作用により亜硝酸性窒素に酸化する部分亜硝化工程と、亜硝酸性窒素を電子受容体とし残存したアンモニア性窒素を電子供与体として独立栄養微生物の作用により窒素ガスを発生させる嫌気性アンモニア酸化反応工程とからなる有機性排水の脱窒方法において、亜硝酸槽4の前段に前処理工程を設けた実施形態について説明する。
亜硝酸性窒素を電子受容体とし残存したアンモニア性窒素を電子供与体として独立栄養微生物の作用により窒素ガスを発生させる嫌気性アンモニア酸化反応工程とは、アナモックス菌と呼ばれる独立栄養性脱窒微生物を利用する嫌気性アンモニア酸化反応工程である。
嫌気性アンモニア酸化反応工程を行う嫌気性アンモニア酸化槽3には、図示しないアナモックス菌の汚泥が保持されている。
アナモックス菌による嫌気性アンモニア酸化反応を利用した嫌気性アンモニア酸化反応工程では、前記(化1)反応によってアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素が窒素ガス(N2)に分解されると考えられている。
すなわち、上記嫌気性アンモニア酸化反応工程で効率よく脱窒を行うためには、嫌気性アンモニア酸化反応工程に導入する亜硝化槽流出水12のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の含有比率がNO / NH =0.57/0.43=1.32である事が望ましく、前工程である部分亜硝化工程を経た亜硝化槽流出水12が当該含有比率とするように、亜硝化槽2での曝気量を制御する。
部分亜硝化工程を行う亜硝化槽2の槽内にはアンモニア酸化細菌を担持させた担体9が分散させてあり、曝気量の制御は、底部に設けた曝気装置7からの空気供給量を制御することにより行う。
亜硝化槽2の槽内で曝気を行うと、アンモニア酸化細菌による亜硝化反応が促進するが、前記のように高BODの有機性原水中に亜硝酸性窒素イオン(NO )が存在する場合には、亜硝酸性窒素(NO )が脱窒反応を受け、その副生成物として一酸化二窒素(N2O↑)が生じてしまう問題がある。
本発明では、亜硝化槽流入水11のBODを低減させる前処理を行うことにより、亜硝化工程で生じる前記問題の解決を図っている。また、前処理工程に導入される原水は高BODであるため、前処理工程において亜硝酸性窒素イオンが生じないようにする制御も合せて行い、前処理工程においても脱窒や一酸化二窒素発生の問題が生じないようにしている。
本発明の前処理工程とは、生物担体8が投入され、かつ溶存酸素量が2.8mg/L以下であるように曝気量を制御されたBOD分解槽1に有機性原水10を導入して有機物を分解するBOD分解工程である。
BOD分解工程を行うBOD分解槽1の槽内にはBOD分解菌を担持させた担体8が分散させてあり、曝気量の制御は、底部に設けたBOD分解槽用曝気装置5からの空気供給量を制御することにより行う。また、DOが2.8mg/L以下であるように曝気量の制御を行うために、BOD分解槽用DO計4を備えている。
DOを2.8mg/L以下に制御することにより、アンモニア酸化細菌の代謝を抑えつつ、BOD分解菌の代謝のみを選択的に行わせることが可能となる。これにより、BOD分解槽1の槽内では、BOD分解菌の代謝に伴うBOD分解反応のみが選択的に進行し、BOD分解槽1の槽内で、窒素ガスや一酸化二窒素ガスを発生させることなく、BODを低減させることが可能となる。
このようにして得られた低BODの亜硝化槽流入水11を亜硝化槽2に導入し、亜硝化槽2の槽内に分散されている担体に担持されたアンモニア酸化細菌を利用した下記の部分亜硝化反応に適した好気性状態を維持できるように、硝化槽用曝気装置7からの酸素供給量を調整する。
Figure 0005006845
ここで本発明によると、亜硝化槽1内に導入される亜硝化槽流入水11は、前記の前処理工程により低BODとなっているため、本工程で従来生じていた窒素ガスや一酸化二窒素ガス等を発生する問題が解消可能となる。
なお、亜硝酸性窒素:アンモニア性窒素=0.57モル:0.43モルとする含有比は、後段のアナモックス工程における嫌気性アンモニア酸化細菌による脱窒反応(化1)に好適な含有比であり、本発明によれば、亜硝化槽11で窒素源が窒素ガスや一酸化二窒素ガスとして失われていた問題が解消する結果、嫌気性アンモニア酸化反応工程に導入する亜硝化槽流出水12のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の含有比率をNO / NH =0.57/0.43=1.32とする制御が容易となる効果も得られる。
以下に実施例及比較例をあげて本発明をより具体的に説明する。
(実施例)
図1に示す本発明を実施するのに好適な装置を使用して、BOD分解工程と亜硝化工程と脱窒工程とからなる脱窒方法を実施し、BOD分解槽と亜硝化槽における水質状況及び脱窒量及び一酸化二窒素発生量を測定した結果を以下に示す。なお、本実施例において、BOD分解槽の滞留時間は6時間とし、BOD分解槽の担体には円柱状ポリウレタン担体を使用し、担体投入率は10%とし、DO制御値は1.5mg/Lとし、亜硝化槽の滞留時間は6時間としDO制御値は3.5mg/Lとした。その他の条件は脱窒工程がアナモックス工程の場合に従来一般に採用されている条件と同様とした。
Figure 0005006845
(比較例1)
図1に示す本発明を実施するのに好適な装置を使用して、BOD分解工程と亜硝化工程と脱窒工程とからなる脱窒方法を実施し、BOD分解槽と亜硝化槽における水質状況及び脱窒量及び一酸化二窒素発生量を測定した結果を以下に示す。なお、本実施例において、BOD分解槽の滞留時間は6時間とし、BOD分解槽の担体には円柱状ポリウレタン担体を使用し、担体投入率は10%とし、DO制御値は3.5mg/Lとし、亜硝化槽の滞留時間は6時間としDO制御値は3.5mg/Lとした。その他の条件は脱窒工程がアナモックス工程の場合に従来一般に採用されている条件と同様とした。
Figure 0005006845
(比較例2)
前記実施例と同様の原水について図2に示す装置を使用して、硝化工程前にBOD分解工程を有さない方法により、亜硝化工程と脱窒工程とからなる脱窒方法を実施し、亜硝化槽における水質状況及び脱窒量及び一酸化二窒素発生量を測定した結果を以下に示す。なお、本比較例において、亜硝化槽の滞留時間は12時間としDO制御値は3.5mg/Lとした。その他の条件は脱窒工程がアナモックス工程の場合に従来一般に採用されている条件と同様とした。
Figure 0005006845
表1〜表3に示す実施例と比較例1及び2の脱窒量および一酸化二窒素発生量をまとめると下記の表4のようになる。表4において、「(BOD分解槽+亜硝化槽)の脱窒量」とは、有機性原水がBOD分解槽に流入して亜硝化槽から流出される間に脱窒される量を両槽の処理容積量の合計値で割った値を示すものである。また、表4において、「(BOD分解槽+亜硝化槽)の(NO発生量/NH −N負荷量)」とは、両槽で発生するNO発生量の合計値を原水中のNH −N量で割った値を示すものである。
Figure 0005006845
表4に示すように、本発明に係る実施例によれば、BOD分解槽を設けない比較例2と比べて、亜硝化工程での脱窒量も、亜硝化工程での一酸化二窒素発生量も、顕著に抑制された。なお、DO制御値を3.5mg/Lとした比較例1では、本発明の前記効果は得られなかった。
本発明を実施するのに好適な装置の一例を示す構成図である。 比較例の実施に用いられた装置の一例を示す構成図である。
符号の説明
1 BOD分解槽
2 亜硝化槽
3 嫌気性アンモニア酸化反応槽
4 BOD分解槽用DO計
5 BOD分解槽用曝気装置
6 亜硝化槽用DO計
7 亜硝化槽用曝気装置
8 生物担体
9 生物担体
10 有機性原水
11 亜硝化槽流入水
12 亜硝化槽流出水

Claims (3)

  1. アンモニア性窒素を含有する有機性原水をBOD分解槽に導入して有機物を分解するBOD分解工程と、
    該BOD分解槽からの流出水を、亜硝化槽に導入し、アンモニア酸化細菌の作用により亜硝酸性窒素に酸化する亜硝酸型硝化工程と、
    前記亜硝化槽からの流出水を、脱窒槽に導入し、脱窒菌の作用により窒素ガスを発生させる脱窒工程と、からなる窒素除去プロセスにおける一酸化二窒素の発生抑制方法であって、
    BOD分解槽内に生物担体を投入し、かつ、BOD分解槽内の溶存酸素量が2.8mg/L以下であるように曝気量を制御して、
    前記BOD分解槽及び前記亜硝化槽における一酸化二窒素の発生量(N O発生量/原水中のNH −N負荷量)を、500〜1500mg/Lのアンモニア性窒素を含有する有機性原水を処理対象として、合計0.2%以下に抑制したことを特徴とする一酸化二窒素の発生抑制方法。
  2. 前記亜硝酸型硝化工程がアンモニア性窒素の一部をアンモニア酸化細菌の作用により亜硝酸性窒素に酸化する亜硝酸型硝化工程であり、
    前記脱窒工程が前記亜硝酸型硝化工程で生じた亜硝酸性窒素を電子受容体とし、残存したアンモニア性窒素を電子供与体として独立栄養微生物の作用により窒素ガスを発生させる嫌気性アンモニア酸化反応工程であることを特徴とする請求項1記載の一酸化二窒素の発生抑制方法。
  3. 独立栄養微生物がアナモックス菌であることを特徴とする請求項2記載の一酸化二窒素の発生抑制方法。
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