JP2003266967A - 感光層、感光層を有する印刷用版材及びその作製方法並びに印刷機 - Google Patents

感光層、感光層を有する印刷用版材及びその作製方法並びに印刷機

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JP2003266967A
JP2003266967A JP2002078533A JP2002078533A JP2003266967A JP 2003266967 A JP2003266967 A JP 2003266967A JP 2002078533 A JP2002078533 A JP 2002078533A JP 2002078533 A JP2002078533 A JP 2002078533A JP 2003266967 A JP2003266967 A JP 2003266967A
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Yasuharu Suda
康晴 須田
Hideaki Sakurai
秀明 櫻井
Toyoo Ofuji
豊士 大藤
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 感光層,感光層を有する再生可能な印刷用版
材及びその作製方法並びに印刷機に関し、光触媒活性が
高く、且つ、機械的な強度を高くし、高耐刷性の印刷用
版材を作製できるようにする。 【解決手段】 印刷用版材5にそなえる感光層3を、光
触媒微粒子31と、水ガラスを少なくとも含むバインダ
32とを有し、光触媒のバンドギャップエネルギーより
も高いエネルギーをもつ活性光が照射されると表面が親
水性を示すように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒を含む感光
層、前記感光層を有するとともに再生可能な印刷用版
材、前記印刷用版材の作製方法、及び、前記印刷用版材
を作製及び再生しうる印刷機に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、印刷技術一般として、印刷工程の
デジタル化が進行しつつある。これは、パソコンで作製
したり、スキャナ等で読み込んだりした画像や原稿のデ
ータをデジタル化し、このデジタルデータから直接印刷
用版材を作製するというものである。このことによっ
て、印刷工程全体の省力化が図れるとともに、高精細な
印刷を行なうことが容易になる。
【0003】従来、印刷に用いる版としては、陽極酸化
アルミを親水性の非画線部とし、その表面上に感光性樹
脂を硬化させて形成した疎水性の画線部を有する、いわ
ゆるPS版(Presensitized Plate)が一般的に用いら
れてきた。このPS版を用いて印刷用版を作製するには
複数の工程が必要であり、このため版の製作には時間が
かかり、コストも高くなるため、印刷工程の時間短縮お
よび印刷の低コスト化を推進しにくい状況である。特に
少部数の印刷においては印刷コストアップの要因となっ
ている。また、PS版では現像液による現像工程を必要
とし、手間がかかるだけでなく、現像廃液の処理が環境
汚染防止という観点から重要な課題となっている。
【0004】さらに、PS版では、一般に原画像が穿設
されたフィルムを版面に密着させて露光する方法が用い
られており、デジタルデータから直接版を作製し印刷工
程のデジタル化を進めるうえで印刷用版の作製が障害と
なっている。また、一つの絵柄の印刷が終わると、版を
交換して次の印刷を行なわなければならず、版は使い捨
てにされていた。
【0005】上記PS版の欠点に対して、印刷工程のデ
ジタル化に対応し、さらに現像工程を省略できる方法が
提案され商品化されているものもある。例えば、特開昭
63−102936号公報では、液体インクジェットプ
リンタのインクとして感光性樹脂を含むインクを用い、
これを印刷用版材に噴射し、その後で、光照射により、
画像部を硬化させることを特徴とする製版方法が開示さ
れている。また、特開平11−254633号公報に
は、固体インクを吐出するインクジェットヘッドにより
カラーオフセット印刷用版を作製する方法が開示されて
いる。
【0006】また、PET(ポリエチレンテレフタレー
ト)フィルム上にカーボンブラック等のレーザ吸収層、
さらにその上にシリコン樹脂層を塗布したものに、レー
ザ光線で画像を書き込むことによりレーザ吸収層を発熱
させ、この熱によりシリコン樹脂層を焼き飛ばして印刷
用版を作製する方法、あるいは、アルミ版の上に親油性
のレーザ吸収層を塗布し、さらにその上に塗布した親水
層を前記と同様にレーザ光線で焼き飛ばして印刷用版と
する方法、等が知られている。
【0007】この他にも、親水性ポリマーを版材として
使用し、画像露光により照射部を親油化させ版を作製す
る手段も提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ような方法では、デジタルデータから直接版を作製する
ことは可能であるが、1つの絵柄の印刷が終わると新し
い版に交換しなければ次の印刷が出来ず、従って、一度
使用された版が廃棄されることに変わりはない。これに
対し、版の再生を含んだ技術も提案されている。例え
ば、特開平10−250027号公報においては、酸化
チタン光触媒を用いた潜像版下、潜像版下の製造方法及
び潜像版下を有する印刷装置が、また、特開平11−1
47360号公報においても、光触媒を用いた版材によ
るオフセット印刷法が開示されており、これらには、い
ずれも画像書き込みには光触媒を活性化させる光、すな
わち実質的に紫外線を用い、加熱処理で光触媒を疎水化
して版を再生する方法が提案されている。また、特開平
11−105234号公報で開示された平版印刷版の作
製方法では、光触媒を活性光、すなわち紫外線で親水化
した後、ヒートモード描画にて画線部を書き込む方法が
提案されている。
【0009】しかし、東大・藤嶋教授、橋本教授らによ
り加熱処理で酸化チタン光触媒は親水化することが確認
されており〔三邊ら「酸化チタン表面の構造変化に伴う
光励起親水化現象の挙動に関する研究」、光機能材料研
究会第5回シンポジウム「光触媒反応の最近の展開」資
料、(1998)p.124−125〕、これによれ
ば、上記各公開公報で開示された方法、即ち、加熱処理
で光触媒を疎水化して版を再生しようとすることはでき
ず、この方法では、版の再生利用あるいは版の作製は不
可能ということになる。
【0010】一方、版の再生過程で、版に形成された画
像を消去する技術も提案されており、特開2000−6
360号公報には、印刷用版材において、印刷終了後、
版表面の光触媒を含む層に紫外域を主とする活性光を照
射して版全面を親水化することによって画像を消去する
技術が開示されている。このように版の再生利用には、
版材の感光層の親水化及び疎水化を確実に行なうことが
必要となるが、この一方で、感光層の強度が高くなくて
は再生利用が困難になる。
【0011】ところで、上記の光触媒を含む感光層に活
性光を照射して親水化させる際に、この親水性をより高
める、あるいは、この親水性状態を長時間維持する方法
として、感光層にシリコン系化合物を添加することが知
られている。例えば、光触媒微粒子をシリカSiO2
ル中に分散させ、これを基材に塗布し、常温乾燥あるい
は加熱乾燥することにより光触媒を含む感光層を形成す
ることが知られている。
【0012】しかし、感光層の強度の面で比較すると、
常温乾燥による形成では強度が出にくいため、加熱乾燥
により感光層を形成する方が好ましい。ところが、例え
ば、光触媒として酸化チタン光触媒を用いる場合、ある
温度を超えて加熱すると、酸化チタン光触媒の結晶が、
活性の高いアナターゼ型から活性の低いルチル型に転移
してしまう(即ち、光触媒活性が低下してしまう)等の
課題がある。
【0013】本発明は、上述の課題に鑑み創案されたも
ので、感光層を有する再生可能な印刷用版材に関して、
光触媒活性が高く、さらに、機械的な強度が高い高耐刷
性の感光層,その感光層を有する印刷用版材及びその作
製方法並びに印刷機を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の課題を
解決するために以下の手段をとった。すなわち、本発明
の感光層(請求項1)は、光触媒と水ガラスとを含み、
該光触媒のバンドギャップエネルギーよりも高いエネル
ギーをもつ活性光が照射されると表面が親水性を示す性
質を有することを特徴としている。
【0015】さらに、該活性光が照射されると有機物を
分解する性質を有することを特徴とする(請求項2)。
該水ガラスは、リチウムLiを含んでいることが好まし
い(請求項3)。なお、ナトリウムNaを含む水ガラス
が一般的であるが、本発明では、特に、リチウムLiを
含む水ガラスが好適である。
【0016】該水ガラスは、シリカSiO2とリチウム
Liとを含むとともに、該リチウムを酸化リチウムLi
2O成分として該水ガラス中に1〜10重量パーセント
含んでいることが好ましい(請求項4)。該光触媒は、
酸化チタン光触媒又は酸化チタン光触媒改質物であるこ
とが好ましい(請求項5)。
【0017】本発明の印刷用版材(請求項6)は、基材
と、該基材上に形成された請求項1〜5の何れか1項に
記載の感光層とをそなえ、繰り返して再利用されること
を特徴としている。該感光層と該基材との間に、水ガラ
スを含む中間層がそなえられることが好ましい(請求項
7)。
【0018】該水ガラスは、リチウムLiを含んでいる
ことが好ましい(請求項8)。該水ガラスは、シリカS
iO2とリチウムLiとを含むとともに、該リチウムを
酸化リチウムLi2O成分として該水ガラス中に1〜1
0重量パーセント含んでいることが好ましい(請求項
9)。本発明の印刷機(請求項10)は、請求項6〜9
の何れか1項に記載の印刷用版材が取り付けられる版胴
と、該感光層表面を疎水化させる疎水化装置と、該疎水
化装置により疎水化された該感光層表面に該活性光を照
射して親水性の非画線部を形成することで該感光層表面
に画像を書き込む画像書き込み装置と、該感光層表面上
のインキを除去する版クリーニング装置と、該インキを
除去された該感光層表面に該活性光を照射することによ
り該感光層表面の全面を親水化して該感光層表面の画像
履歴を消去する画像履歴消去装置とをそなえていること
を特徴としている。
【0019】該疎水化装置は、該活性光が照射されると
該光触媒の作用により分解される性質と、該感光層表面
と反応及び/又は強く相互作用して該感光層表面を疎水
化する性質とを有する有機系化合物を該感光層表面に供
給すること、及び、該感光層表面にエネルギー束を照射
すること、及び、該感光層表面に機械的エネルギーを投
入すること、の何れかによって該感光層表面を疎水化す
ることが好ましい(請求項11)。
【0020】本発明の印刷機(請求項12)は、請求項
6〜9の何れか1項に記載の印刷用版材が取り付けられ
る版胴と、該感光層表面に画線部材を供給する画線部材
供給装置と、該画線部材を加熱することにより該感光層
表面に疎水性の画線部を形成することで該感光層表面に
画像を書き込む画像書き込み装置と、該感光層表面上の
インキを除去する版クリーニング装置と、該インキを除
去された該感光層表面に該活性光を照射することにより
該感光層表面の全面を親水化して該感光層表面の画像履
歴を消去する画像履歴消去装置とをそなえていることを
特徴としている。
【0021】該画線部材供給装置は、該活性光が照射さ
れると該光触媒の作用により分解される性質と、該活性
光よりも波長の長い不活性光が照射されると溶融して感
光層表面と相互作用または固着し感光層表面を疎水化す
る性質とを有する有機系化合物を該感光層表面に供給す
ることが好ましい(請求項13)。
【0022】本発明の印刷用版材の作製方法(請求項1
4)は、請求項6記載の印刷用版材の作製方法であっ
て、該基材表面に該光触媒と該水ガラスとを少なくとも
含む感光層液を塗布する感光層液塗布工程と、上記の液
状の感光層を固化する感光層固化工程とをそなえている
ことを特徴としている。
【0023】本発明の印刷用版材の作製方法(請求項1
5)は、請求項7〜9の何れか1項に記載の印刷用版材
の作製方法であって、該基材表面に該水ガラスを含む中
間層液を塗布する中間層液塗布工程と、上記の液状の中
間層を固化する中間層固化工程と、該中間層固化工程の
後、該光触媒と該水ガラスとを含む感光層液を塗布する
感光層液塗布工程と、上記の液状の感光層を固化する感
光層固化工程とをそなえていることを特徴としている。
上記感光層固化工程では、自然乾燥,加熱による乾燥又
は加熱による焼成等により固化を行なうことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図を参照して説明する。 〔1〕第1実施形態 図1〜図3は、本発明の第1実施形態にかかる印刷用版
材を示すもので、図1はその構造を示す模式的な断面
図、図2はその版材表面が疎水性を示している場合の模
式的な断面図、図3はその版材表面が親水性を示してい
る場合の模式的な断面図である。
【0025】図1に示すように、この印刷用版材5は、
基材1と、中間層2と、感光層3とから基本的に構成さ
れている。なお、印刷用版材5を単に版材ともいい、ま
た、表面に印刷用の画線部を形成された版材については
版という。基材1は、アルミニウムやステンレス等の金
属、ポリマーフィルム等により構成されている。ただ
し、基材1は、アルミニウムやステンレス等の金属ある
いはポリマーフィルムに限定されるものではない。
【0026】中間層2は、基材1表面上に形成され、基
材1と後述する感光層3とを確実に付着させる、また、
密着性を向上させるように機能している。ただし、基材
1と感光層3との付着強度が十分に確保できる場合に
は、中間層2はなくても差し支えない。また、この中間
層2が水ガラスを含んでいることが本発明の特徴の1つ
である。
【0027】中間層2としては、例えば、シリコン樹
脂、シリコンゴム等のシリコン系化合物が一般的に知ら
れているが、これらに比較して、本実施形態における中
間層2では、リチウム(Li)を含有する水ガラスを用
いており、このようにリチウムを含有させることによ
り、中間層2自身の機械的な強度が飛躍的に高められて
いる。中間層2の膜強度は、中間層2上にそなえられる
感光層3の強度に影響を及ぼすため、この中間層2の膜
強度が高くなれば、中間層2上にそなえられる感光層3
の機械的な強度も高くなる。
【0028】中間層2の形成に用いる水ガラス中のリチ
ウム含有量としては、リチウムを酸化リチウムLi2
成分として水ガラス中に1〜10wt%(重量パーセン
ト)含んでいることが好ましい。この酸化リチウムの含
有量が、1wt%よりも少ないと、リチウム水ガラスの
上記の効果が発揮できなくなり、また、10wt%より
も多いと、液体としてのハンドリングが困難である。即
ち、リチウム含有量が1〜10wt%であれば、中間層
2の膜強度を高めるという効果を十分に発揮でき、液体
としてのハンドリングを容易にすることができる。な
お、上記のようなリチウムを含む水ガラスとしては、日
産化学製の商品名LSS−35(酸化リチウム成分は
2.5〜3.3wt%)、商品名LSS−45(酸化リ
チウム成分は2.0〜2.5wt%)等の市販品がある
が、これに限るものではない。
【0029】また、中間層2には、後述する感光層3の
形成のために加熱処理する際に、基材1から不純物が熱
拡散して感光層3に混入し、光触媒活性を低下させるこ
とを防ぐ効果もある。さらに、中間層2は、基材1がポ
リマーフィルム等で形成されている場合には必要に応じ
て基材1の保護のために形成されることもある。感光層
3は、光触媒と水ガラスとを含んで中間層2表面に形成
されている。
【0030】この感光層3では、光触媒のバンドギャッ
プエネルギーよりも高いエネルギーをもつ活性光を感光
層3表面に照射することにより、その照射面を親水性に
変換すること、及び、感光層3表面に存在する有機系化
合物を分解・除去することが可能となっている。この性
質は、光触媒の性質によるものであり、感光層3表面の
親水化と有機系化合物の分解・除去とは本来異なる現象
であるが、活性光照射下の感光層3表面では同時に起こ
る。そして、親水性に変換された面は湿し水が優先的に
付着し、疎水性インキが付着しにくい非画線部として機
能するようになっている。なお、図3は、活性光照射に
より親水性を示している感光層3が露出した状態を表し
ており、この親水性光触媒を有する感光層3の露出によ
り印刷用版材5の非画線部を形成することが可能となっ
ている。
【0031】感光層3には、活性光照射による親水化を
促進する為、あるいは、活性光照射により現出した親水
性を長時間維持する為、あるいは、感光層3の強度や基
材1との密着性を向上させることを目的として、シリカ
系化合物を添加している。このシリカ系化合物として
は、例えば、シリカSiO2,シリカゾル,オルガノシ
ラン,シリコン樹脂等が一般的である。本実施形態で
は、このようにシリカ系化合物に加えて、あるいはこの
ようなシリカ系化合物の替わりに、感光層3にリチウム
を含有した水ガラスを添加しているのが特徴の1つであ
る。
【0032】図1に示すように、リチウム含有水ガラス
及びシリカを含むバインダ32、あるいはリチウム含有
水ガラスからなるバインダ32を用いることにより、常
温でも通常のゾルゲル法による感光層3の膜よりも高い
膜強度を得ることができるとともに、加熱することによ
り更に膜強度を高めることができる。この場合の加熱温
度としては、例えば、酸化チタン光触媒の結晶型が、活
性の高いアナターゼ型から活性の低いルチル型に転移す
る温度(転移温度、例えば、500℃)TTよりも低い
加熱温度でも十分な強度を得ることができるため、高い
触媒活性を維持したまま感光層3の膜強度を高くするこ
とが可能である。
【0033】なお、この理由は、少なくとも水ガラスを
含む感光層液を用いて成膜された感光層3のシリカSi
2層は、ゾルゲル法で成膜されたシリカSiO2層より
も緻密であることが電子顕微鏡観察で分かっていること
から、緻密なSiO2層が、バインダ32として光触媒
微粒子31を固定するために膜強度が上がるものと推定
される。また、一般に、水ガラス単体の膜強度が高いの
も同様の理由によるものと考えられる。
【0034】なお、通常のナトリウム(Na)を含有す
る水ガラスでは、加熱成膜後に長時間水に浸すと膜成分
が溶出する場合があるが、本実施形態のリチウム含有水
ガラスでは、ナトリウム含有水ガラスよりもさらに緻密
であるので、膜強度を高くでき、成膜後に水に長時間浸
しても膜成分が溶出することもない。このように、リチ
ウムを含む水ガラスとナトリウムを含む水ガラスとの間
に生じる性質の差は、リチウムとナトリウムとのイオン
の電荷が同じプラス1価であるにも関わらず、リチウム
イオン(Li+)の方がナトリウムイオン(Na+)より
もイオン半径が小さいため、水ガラス中の負電荷をもつ
酸素イオン(O2-)とのクーロン引力が強く、結果とし
て膜強度が上がるためと考えられる。もちろん、膜の溶
出を防止できれば、ナトリウムを含有する水ガラスも適
用可能となる。
【0035】また、感光層3の形成に用いる水ガラス中
のリチウム含有量としては、中間層2のリチウム含有量
と同様に、リチウムを酸化リチウムLi2O成分として
水ガラス中に1〜10wt%(重量パーセント)含んで
いることが好ましい。この酸化リチウムの含有量が、1
wt%よりも少ないと、リチウム水ガラスの上記の効果
が発揮できなくなり、また、10wt%よりも多いと、
液体としてのハンドリングが困難である。即ち、リチウ
ム含有量が1〜10wt%であれば、感光層3の膜強度
を高めるという効果を十分に発揮でき、液体としてのハ
ンドリングを容易にすることができる。なお、上記のよ
うなリチウムを含む水ガラスとしては、日産化学製の商
品名LSS−35(酸化リチウム成分は2.5〜3.3
wt%)、商品名LSS−45(酸化リチウム成分は
2.0〜2.5wt%)等の市販品があるが、これに限
るものではない。
【0036】また、感光層3に含まれている光触媒は、
波長600nmの可視光以下の波長を有する光で触媒活
性を発現するようになっている。即ち、感光層3に含ま
れている光触媒は、波長400〜600nmの可視光ま
たは波長400nm以下の紫外線の少なくとも一方の光
を活性光として利用し、触媒活性を発現することが可能
である。
【0037】このような光触媒を含むことにより、波長
600nm以下の活性光が感光層3表面に照射されると
感光層3表面が高い親水性を示したり、また、感光層3
表面に有機系化合物が存在する場合には、この有機系化
合物を酸化分解したりするようになっている。この有機
系化合物に関しては詳細を後述する。なお、光触媒は、
バンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーをもつ
光を照射しなければ光触媒活性を示さない。例えば、酸
化チタン光触媒では、バンドギャップエネルギーが3e
Vもあるため、波長約400nm以下の紫外線にしか反
応しない。
【0038】本実施形態では、このバンドギャップ間に
新たな準位を形成することで、紫外線よりも波長の大き
い可視光も含んだ波長600nm以下の活性光に反応す
る光触媒を用いている。もちろん、波長600nm以下
の活性光の中には紫外線も含まれるが、活性光の中に紫
外線が含まれていてもいなくても良い。即ち、波長60
0nm〜400nm程度の可視光のみを含んでいる場合
でも同様に光触媒が反応するようになっている。
【0039】なお、酸化チタン光触媒としては、ルチル
型,アナターゼ型,ブルッカイト型があるが、本実施形
態においてはいずれも利用可能であり、これらの混合物
を用いても良いが、光触媒活性を考慮すると、アナター
ゼ型が好ましい。また、後述するように、活性光照射下
で画線部を分解する光触媒活性を高くするためには、酸
化チタン光触媒の粒子径はある程度小さい方が好まし
い。具体的には、酸化チタン光触媒の粒径は0.1μm
以下、さらに好ましくは、粒径0.05μm以下である
と良い。なお、光触媒としては酸化チタン光触媒が好適
であるが、もちろん、これに限定されるものではない。
【0040】本実施形態において紫外線を活性光として
使用可能でかつ市販されている酸化チタン光触媒を具体
的に列挙すれば、石原産業製のST−01,ST−2
1、その加工品であるST−K01,ST−K03、水
分散タイプのSTS−01,STS−02,STS−2
1、また、堺化学工業製のSSP−25,SSP−2
0,SSP−M,CSB,CSB−M、塗料タイプのL
ACTl−01,LACTI−03−A、テイカ製の光
触媒用酸化チタンコーティング液TKS−201,TK
S−202,TKC−301,TKC−302,TKC
−303,TKC−304,TKC−305,TKC−
351,TKC−352、光触媒用酸化チタンゾルTK
S−201,TKS−202,TKS−203,TKS
−251、アリテックス製のPTA,TO,TPX等を
挙げることができる。ただし、本発明は、もちろんこれ
らの酸化チタン光触媒以外であっても適用可能である。
【0041】なお、可視光領域の光にも反応する光触媒
の製造方法としては、公知の方法を用いれば良い。例え
ば、特開2001−207082号公報には、窒素原子
をドーピングした酸化チタン光触媒、また、特開200
1−205104号公報には、クロム原子および窒素原
子をドーピングした酸化チタン光触媒が開示されてい
る。さらに、特開平11−197512号公報には、ク
ロム等の金属イオンをイオン注入した酸化チタン光触媒
が開示されている。この他にも、低温プラズマを利用し
た酸化チタン光触媒や白金担持した酸化チタン光触媒が
公表されている。本実施形態にかかる印刷用版材5の作
製にあたっては、これら公知の方法で製造された、いわ
ゆる可視光応答型の光触媒を使用すれば良い。
【0042】また、波長400nm以下の紫外線を活性
光とする光触媒としては、通常の酸化チタン光触媒とし
て市販されているものから適宜選択して用いればよい。
なお、感光層3の膜厚は、0.005〜1μmの範囲内
にあることが好ましい。この理由は、膜厚があまりに小
さければ、前記性質を十分に活かすことが困難であり、
また、膜厚があまりに大きければ、感光層3がひび割れ
しやすくなり耐刷性低下の要因となるためである。な
お、このひび割れは、膜厚が10μmを越えるようなと
きに顕著に観察されるため、前記範囲を緩和するとして
も10μmをその上限として認識する必要がある。ま
た、実際上は、0.01〜0.5μm程度の膜厚とする
のが、より好ましい。
【0043】さらに、この感光層3の形成方法として
は、いわゆるゾルゲル法といわれる方法、すなわちゾル
を塗布した後、該塗布層を固化させる方法が好ましい。
塗布するゾル(以下、ゾル塗布液という)には、酸化チ
タン光触媒あるいは酸化チタン光触媒の改質物、およ
び、前記水ガラスの他に、前記シリカ系化合物、溶剤や
界面活性剤等を添加しても良い。また、ゾル塗布液は、
常温乾燥タイプでも加熱乾燥タイプでも良いが、後者の
方がより好ましい。この理由は、加熱により感光層3の
強度を高めた方が、版の耐刷性を向上させるのに有利と
なるからであるが、上述したように加熱処理温度が転移
温度TTを越えると、酸化チタン光触媒の結晶型がアナ
ターゼ型からルチル型へ転移し始めるため、加熱処理温
度は転移温度TT以下であることが好ましい。また、転
移温度TT以下でも水ガラスの効果により十分な膜強度
を発現させることが可能である。
【0044】次に、上述のように構成された版材表面へ
の画像書き込み方法について説明する。なお、本発明に
おいては、画像書き込み方法として2種類の方法が可能
である。第1の方法は、版全面を疎水化した後に、活性
光で画像を書き込み、光触媒の作用により活性光照射部
分を親水性の非画線部として画像形成する方法である。
さらに、この版全面を疎水化する方法として、有機系化
合物(後述する第2の方法における有機化合物と区別す
るため、タイプAの有機系化合物という)を供給する方
法、又は、感光層3表面に不活性光等のエネルギー束を
照射する方法、又は、感光層3表面に版面を擦る等の機
械的エネルギーを投入する方法を適宜選択できる。
【0045】第2の方法は、版全面に活性光を照射し
て、版全面を親水性にした後、版面に画線部材となる有
機系化合物(タイプB)を塗布し、加熱(例えば、不活
性光照射)により画像を書き込んで有機系化合物を溶融
させ、有機系化合物と版面とを相互作用又は固着させて
版面に疎水性画線部を形成する方法である。本実施形態
では、上記の第1の方法を用いて画像を書き込む方法に
ついて説明する。
【0046】なお、第2の方法を用いた画像の書き込み
については、第2実施形態において説明する。本実施形
態において版全面を疎水化させるために使用される有機
系化合物(タイプA)は、版材5表面に供給され、必要
に応じて乾燥や加熱乾燥されるだけで感光層3表面と反
応及び/又は強く相互作用して感光層3表面を疎水化す
るとともに、活性光を照射されると感光層3の光触媒の
作用により分解されて感光層3表面から除去されるよう
になっている。
【0047】このような有機系化合物(タイプA)とし
ては、具体的には、有機チタン化合物,有機シラン化合
物,イソシアナート系化合物及びエポキシド系化合物が
好ましい。これらの化合物は、親水性の感光層3表面に
存在する水酸基と反応して表面に固定化されるため、原
理的に感光層3表面に単分子層的な有機系化合物層(図
示省略)を形成する。このように単分子層で感光層3表
面を疎水化するため、活性光照射下での分解が容易なも
のとなっている。
【0048】なお、上記の有機チタン化合物としては、
1)テトラ−i−プロポキシチタン,テトラ−n−プロ
ポキシチタン,テトラ−n−ブトキシチタン,テトラ−
i−ブトキシチタン,テトラステアロキシチタン等のア
ルコキシチタン、2)トリ−n−ブトキシチタンステア
レート,イソプロポキシチタントリステアレート等のチ
タンアシレート、3)ジイソプロポキシチタンビスアセ
チルアセトネート,ジヒドロキシ・ビスラクタトチタ
ン,チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコール
等のチタンキレート、等がある。
【0049】また、有機シラン化合物としては、1)ト
リメチルメトキシシラン,トリメチルエトキシシラン,
ジメチルジエトキシシラン,メチルトリメトキシシラ
ン,テトラメトキシシラン,メチルトリエトキシシラ
ン,テトラエトキシシラン,メチルジメトキシシラン,
オクタデシルトリメトキシシラン,オクタデシルトリエ
トキシシラン等のアルコキシシラン、2)トリメチルク
ロロシラン,ジメチルジクロロシラン,メチルトリクロ
ロシラン,メチルジクロロシラン,ジメチルクロロシラ
ン等のクロロシラン、3)ビニルトリクロロシラン,ビ
ニルトリエトキシシラン,γ−クロロプロピルトリメト
キシシラン,γ−クロロプロピルメチルジクロロシラ
ン,γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン,γ−
クロロプロピルメチルジエトキシシラン,γ−アミノプ
ロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤、
4)パーフロロアルキルトリメトキシシラン等のフロロ
アルキルシラン、等がある。
【0050】また、イソシアナート化合物としては、イ
ソシアン酸ドデシル,イソシアン酸オクタデシル等があ
る。さらに、エポキシド系化合物としては、1,2−エ
ポキシデカン,1,2−エポキシヘキサデカン,1,2
−エポキシオクタデカン等がある。なお、有機チタン化
合物,有機シラン化合物,イソシアナート系化合物及び
エポキシド系化合物は、上記の物質に限定されるもので
はない。
【0051】上記の有機系化合物は、常温で液体の場合
は、ブレードコーティングやロールコーティング,ディ
ップコーティング等の方法で感光層3に塗布するか、ス
プレー等で微小液滴にして塗布すれば良い。また、分解
温度以下の温度で加熱して気化させたり、超音波を利用
した液体の霧化装置、いわゆるネブライザー等を用いて
蒸気化させたりして感光層3表面に吹き付ける等の方法
を用いても良い。なお、有機系化合物の濃度や粘度等を
調整することを目的に、他の液体に溶解して用いても良
いことはいうまでもない。
【0052】なお、上述したように、感光層3表面、即
ち、版面を疎水化する方法として、感光層3表面に不活
性光等のエネルギー束を照射する方法、又は、版面を擦
る等の機械的エネルギーを投入する方法を、感光層3に
使用している光触媒の特性に応じて用いることができ
る。次に、本実施形態にかかる版の作製方法及びその再
生方法について説明する。
【0053】図6に示すように、版の作製及び再生のフ
ローは、版面の疎水化工程(S200),画像書き込み
工程(S210),印刷工程(S220),インキ除去
工程(S230),画像履歴消去工程(S240)のス
テップからなる。まず、印刷用版の作製方法について説
明する。なお、以下において、「版の作製」とは、版材
5表面(即ち、感光層3表面)が疎水化された状態(初
期状態)から、版材5表面の少なくとも一部にデジタル
データに基づいて活性光を照射して親水性の非画線部を
形成し、活性光が照射されなかった版材5表面の疎水性
部分(画線部)と併せて、版材5表面上に疎水性の画線
部と親水性の非画線部とからなる潜像を形成することを
いうものとする。
【0054】まず、図4(a)に示すように、前工程
〔画像履歴消去工程(S240)〕で全面を親水化され
た感光層3表面に、有機系化合物(タイプA)を塗布す
る、又は、感光層3表面に不活性光等のエネルギー束を
照射する、又は、感光層3表面を擦る等の機械的エネル
ギーを投入することにより感光層3表面を疎水化する
〔版面の疎水化工程(S200)〕。なお、図4(a)
は、有機系化合物を塗布して感光層3表面、即ち、版材
5全面が疎水化された初期状態を示している。ここで、
疎水性の版材5表面とは、図2に示すように、水6の接
触角が50°以上、好ましくは80°以上の版材5表面
であり、印刷用の疎水性インキが容易に付着し、一方、
湿し水の付着は困難な状態になっている。
【0055】また、感光層3表面のこの状態を「版作製
時の初期状態」という。この「版作製時の初期状態」と
は、実際上の印刷工程(S220)におけるその開始時
とみなして良い。より具体的にいえば、任意の画像に関
して、それをデジタル化したデータが既に用意されてい
て、これを版材5上に書き込みしようとするときの状態
を指すものとみなせる。
【0056】そして、図4(b)に示すように、画像書
き込み工程(S210)として、疎水性状態となってい
る感光層3表面に画像を書き込む。この画像書き込み
は、画像に関するデジタルデータに準拠して、そのデー
タに対応するように、感光層3表面に非画線部が書き込
まれることにより画像書き込みが行われる。ここで、非
画線部とは、図3に示すように、水6の接触角が10°
以下の親水性の部分であり、湿し水が容易に付着し、一
方、印刷用インキの付着は困難な状態となっている。
【0057】この親水性の非画線部を画像データに基づ
いて現出させる方法として、波長600nm以下の光、
即ち、活性光によって触媒活性を発現する光触媒を含む
感光層3に活性光を照射する。この活性光照射によっ
て、感光層3表面がタイプAの有機系化合物で疎水化さ
れている場合は、光触媒の作用で有機系化合物を酸化分
解して感光層3表面から除去すると同時に、感光層3表
面が親水化することになる。また、感光層3表面がエネ
ルギー束照射あるいは機械的エネルギー投入によって疎
水化されている場合は、光触媒自身が活性光により疎水
性から親水性に変換することになる。
【0058】一方、活性光が照射されなかった感光層3
表面は疎水性を示す状態のままであることから、版材5
表面には親水性部分と疎水性部分とが形成される。つま
り、例えば、図5に示すように、活性光を照射した部分
3aを親水性を示す非画線部とし、活性光を照射しなか
った部分3bを疎水性を示す画線部とすることで版を作
製することができるようになっている。
【0059】なお、図4(b)では、可視光、例えば波
長405nmのバイオレットレーザを用いた書き込みヘ
ッドによって、非画線部3aを書き込み、疎水性の感光
層3表面に非画線部3aを形成している。また、親水性
の非画線部3aを画像データに基づいて現出させる方法
としては、波長405nmのバイオレットレーザを用い
た書き込みヘッド以外に、例えば、ベイシスプリント社
(ドイツ)が発表しているUVセッター710に用いら
れている波長360nm〜450nmの光を発生する光
源とマイクロミラーとを用いた書き込みヘッド等、活性
光を用いて画像を書き込むものであれば良い。
【0060】上記の画像書き込み工程(S210)が終
了した時点で、図4(c)に示すように、感光層3表面
には画線部と非画線部とが形成され、次の印刷工程(S
220)において印刷が可能な状態となる。この印刷工
程(S220)において、版材5表面に湿し水及び印刷
用の疎水性インキと湿し水とを混合したいわゆる乳化イ
ンキを塗布する。
【0061】したがって、例えば、図5に示すような画
像が書き込まれた場合には、網掛けされた部分(即ち、
疎水性の画線部)3bには疎水性インキが付着した状態
を示しており、残りの白地の部分(即ち、親水性の非画
線部)3aには湿し水が優先的に付着する一方、疎水性
インキははじかれて付着しなかった状態を示している。
このように画像(絵柄)が浮かび上がることにより、感
光層3表面は、印刷用版としての機能を有することにな
る。この後、通常の印刷工程(S220)を実行し、印
刷を終了する。
【0062】次に、印刷用版の再生方法について説明す
る。なお、以下において、「版の再生」とは、少なくと
も一部が疎水性を示し、残りの部分が親水性を示す版材
5表面を、全面均一に親水化した後、この親水性の版材
5表面に、有機系化合物を感光層3表面に供給して、こ
の有機系化合物と感光層3とを相互作用させることによ
り、又は、感光層3表面にエネルギー束を照射すること
により、又は、機械的エネルギーを投入することによっ
て感光層3の特性(即ち、光触媒特性)を親水性から疎
水性へ変換させ、再び「版作製時の初期状態」に復活さ
せることをいうものとする。
【0063】また、疎水化処理前の版材5表面全面を均
一に親水化する処理は、版の画像履歴を完全に消去する
ために行なわれるものである。まず、図4(d)に示す
ように、インキ除去工程(S230)として、印刷終了
後の感光層3表面に付着したインキ,湿し水,紙粉等を
除去する。このインキ除去方法としては、版材5表面へ
のインキ供給を止めて刷り減らす方法、インキ拭き取り
用の布状テープを巻き取る機構により版材5表面のイン
キを拭き取る方法、インキ拭き取り用の布状物を巻きつ
けたローラにより版材5表面のインキを拭き取る方法、
洗浄液をスプレーで版材5表面に吹き付けてインキを洗
浄する方法等を適宜用いれば良い。
【0064】その後、図4(e)に示すように、感光層
3全面に活性光を照射することにより、画線部3bをも
親水化して、感光層3全面を水6の接触角が10°以下
の親水性表面にすることができる。即ち、感光層3全面
を図3に示す状態にすることができ、画像履歴を全て消
去することができる〔画像履歴消去工程(S24
0)〕。
【0065】また、このとき、感光層3表面への活性光
照射と同時に、感光層3表面を加熱するようにしても良
い。つまり、活性光照射下で感光層3表面を加熱するこ
とにより、感光層3表面の有機系化合物の分解反応を加
速させ、版の画像履歴の消去を短時間で行なうことがで
きる。なお、ここでは、図4(e)に示すように、紫外
線(UV)ランプを用いて活性光を感光層3表面に照射
するとともに、赤外線(IR)ランプを用いて感光層3
表面を加熱する例を示している。
【0066】また、加熱方法としては、感光層3表面を
加熱する熱風送風又は光照射が好ましい。また、照射す
る光としては、加熱効率を考慮すると赤外線がより好ま
しい。さらに、他の加熱方法としては、例えば、印刷用
版材5を取り付ける版胴11内部にヒータを設けて版胴
11を内部から加熱する方法もあるが、この方法では版
胴11自体の温度が高くなるため、その後の印刷工程
(S220)においてインキの粘度等の印刷品質に影響
する物性が温度の影響を受けて変動する場合があるた
め、この点を考慮して適用する必要がある。
【0067】画像履歴消去工程(S240)において、
活性光照射下での加熱により全面を親水性に回復された
感光層3は、図4(a)に示す版面の疎水化工程(S2
00)に戻し、有機系化合物を供給し、この有機系化合
物と感光層3とを相互作用させること、又は、感光層3
表面に不活性光等のエネルギー束を照射すること、又
は、感光層3表面を擦る等の機械的エネルギーを投入す
ることによって感光層3の特性(光触媒特性)を親水性
から疎水性へ変換させ(即ち、疎水化処理を行なう)、
版作製時の初期状態にする。
【0068】以上説明したことを、まとめて示している
のが図7に示したグラフである。この図7は、横軸に時
間(又は操作)、縦軸に版材5表面の水6の接触角をと
ったグラフであって、本実施形態における印刷用版材5
に関して、その感光層3表面の水6の接触角が、時間あ
るいは操作に伴ってどのように変化するかを示したもの
である。即ち、疎水状態であるか親水状態であるかがわ
かる。なお、この図7において、一点鎖線は非画線部3
aの接触角を、実線は画線部3bの接触角を各々示して
いる。
【0069】まず、感光層3表面に活性光を照射して、
感光層3表面を、水6の接触角が10°以下の高い親水
性を示す状態にしておく。そして、版面の疎水化工程
(S200)(図7中に示すAの工程)として、感光層
3表面に有機系化合物を供給して、この有機系化合物と
感光層3とを相互作用させること、又は、感光層3表面
に不活性光等のエネルギー束を照射すること、又は、感
光層3表面を擦る等の機械的エネルギーを投入すること
によって感光層3の光触媒特性を親水性から疎水性へ変
換させる。即ち、水6の接触角が50°以上、好ましく
は80°以上になる。図7中(a)は疎水化処理を開始
した時点を示しており、図7中(b)は疎水化処理が終
わった時点、即ち、「版作製時の初期状態」を示してい
る。
【0070】その後、画像書き込み工程(S210)
(非画線部書き込み工程、図7中に示すBの工程)とし
て、疎水性の感光層3表面に活性光を照射して非画線部
3aの書き込みを開始する〔図7中の時点(b)〕。こ
れにより、活性光を照射された感光層3表面が疎水性か
ら親水性へ変換する。即ち、感光層3表面の水6の接触
角が10°以下となる。一方、活性光を照射してない感
光層3表面は疎水性の状態を維持するため、活性光未照
射部分は疎水性の画線部3bとなり、活性光照射部分は
親水性の非画線部3aとなるため、版として機能するこ
とができるようになる。
【0071】そして、非画線部3aの書き込みが完了し
た後、印刷工程(S220)(図7中に示すCの工程)
として、印刷を開始する〔図7中の時点(c)〕。印刷
が終了した後、インキ除去工程(S230)(図7中に
示すDの工程)として、感光層3表面のインキ,汚れ等
を除去する〔図7中の時点(d)〕。インキ除去完了後
に、画像履歴消去工程(S240)(図7中に示すEの
工程)として、感光層3表面に活性光を照射するととも
に、感光層3表面を加熱する〔図7中の時点(e)〕。
これにより、疎水性の画線部3bは感光層3の光触媒に
より速やかに分解除去され、さらに光触媒が疎水性から
親水性へ変換され、感光層3全面は親水化される。つま
り、この画像履歴消去工程(S240)によって、版の
履歴を完全に消去することができる。
【0072】この後、次の版面の疎水化工程(S20
0)(図7中に示すA′の工程)として、再度、有機系
化合物を感光層3表面に供給して、この有機系化合物と
感光層3とを相互作用させること、又は、感光層3表面
に不活性光等のエネルギー束を照射すること、又は、感
光層3表面を擦る等の機械的エネルギーを投入すること
により〔図7中の時点(a′)〕、印刷用版材5を「版
作製時の初期状態」に戻すことができ、この印刷用版材
5を再利用することができる。
【0073】なお、上記の印刷及び版再生を印刷機上で
行なうためには、図8に示すような印刷システム(印刷
機)10を用いるのが好ましい。この印刷機10は、版
胴11を中心として、その周囲に版クリーニング装置1
2、画像書き込み装置13、版面の疎水化装置14、加
熱装置15、画像履歴消去装置としての親水化処理用活
性光照射装置16、インキングローラ17、湿し水供給
装置18及びブランケット胴19を備えたものとなって
いる。なお、印刷用版材5は、版胴11に巻き付けられ
て設置されている。
【0074】以下、図8を参照して版の再生及び作製を
説明すると、まず、版クリーニング装置12を版胴11
に対して接した状態とし、版材5表面に付着したイン
キ,湿し水,紙粉等をきれいに拭き取る。図8では、版
クリーニング装置12としてインキ拭き取り用の布状テ
ープを巻き取る機構を有する装置を示しているが、これ
に限るものではない。
【0075】その後、版クリーニング装置12を版胴1
1から脱離させ、加熱装置15で版材5表面を加熱しな
がら親水化処理用活性光照射装置16により版材5全面
に活性光を照射して版材5全面を親水化する。なお、こ
こでは、活性光として、波長254nmの紫外線を用い
ているが、光触媒が波長400nm〜600nmの光で
も活性を示す場合は、波長400nm〜600nmの光
を用いても良い。
【0076】そして、版面の疎水化装置14により版材
5全面に有機系化合物を供給して、この有機系化合物と
感光層3とを相互作用させること、又は、感光層3表面
に不活性光等のエネルギー束を照射すること、又は、感
光層3表面を擦る等の機械的エネルギーを投入すること
により版材5全面を疎水化する。なお、図8では、版面
の疎水化装置14を、ローラにより有機系化合物(タイ
プA)を塗布する有機系化合物供給装置として示してい
るが、これに限るものではなく、もちろん、不活性光等
のエネルギー束を照射する装置であったり、又は、機械
的エネルギーを投入する装置であったりしても良いこと
はいうまでもない。
【0077】次に、予め用意された画像のデジタルデー
タに基づいて画像書き込み装置13により版材5表面に
活性光を照射して非画線部3aを書き込む(即ち、版材
5表面に画像を書き込む)。そして、画像を書き込んだ
後、インキングローラ17、湿し水供給装置18、ブラ
ンケット胴19を版胴に対して接する状態とし、紙20
がブランケット胴19に接するようする。そして、図7
に示す矢印の方向にそれぞれ回転することによって版材
5表面に湿し水及びインキが順次供給されて、紙20に
印刷が行われるようになっている。
【0078】このように、印刷機10においては、版胴
11に取り付けられた版材5表面のクリーニングを行な
う版クリーニング装置12、活性光照射により画線部の
消去(画像履歴消去)を行なう親水化処理用活性光照射
装置16、版材5表面を疎水化する疎水化装置14、お
よび版材5表面を加熱して親水化を促進する加熱装置1
5が、版を再生する再生装置として機能しており、さら
に、版材5への画像書き込みを行なう画像書き込み装置
13がそなえられることにより、印刷用版材5を印刷機
10の版胴11に取り付けた状態で一連の版再生及び版
作製の工程を行なうことができる。これによれば、印刷
機10を停止することなく、また、印刷用版材の交換作
業を挟むことなく連続的な印刷作業の実施を行なうこと
が可能になる。
【0079】この印刷機10では、印刷用版材5を版胴
11に巻き付けるように構成しているが、これに限定さ
れるものではなく、光触媒を含む感光層3を、版胴11
表面に直接設ける、即ち、版胴11と印刷用版材5とを
一体に構成したものを用いても良いことはいうまでもな
い。
【0080】〔2〕第2実施形態 図9及び図10は、本発明の第2実施形態にかかる印刷
用版材を示すもので、図9はその版材表面が疎水性を示
している場合の断面図、図10はその版材表面が親水性
を示している場合の断面図である。
【0081】図9に示すように、この印刷用版材35
は、基材1と、中間層2と、感光層3と、有機系化合物
が加熱溶融されて形成された層34とから基本的に構成
されている。なお、印刷用版材35を単に版材ともい
い、また、表面に印刷用の画線部を形成された版材につ
いては版という。また、基材1,中間層2,感光層3
は、第1実施形態において図1を用いて説明したものと
同様であるので、これらの説明は省略し、以下、第1実
施形態とは異なる点について詳述する。
【0082】本実施形態では、第2の方法、即ち、タイ
プBの有機系化合物を用いて画像書き込みを行なうよう
になっている。有機系化合物(タイプB)が加熱溶融さ
れて形成された層34は、上記のタイプBの有機系化合
物が、感光層3表面に塗布されて加熱処理されることに
より形成されている。
【0083】この有機系化合物(タイプB)は、熱可塑
性樹脂であり、この樹脂の微粒子が水や有機溶剤といっ
た液体中に分散された液を画線部材として版面に供給す
る。熱可塑性樹脂粒子を含む液を版面に塗布した後、必
要に応じて風乾等で液を乾燥させ、その後、疎水性画線
部を形成したい領域を加熱すると、この樹脂微粒子が加
熱溶融されてフィルム状になるとともに、感光層3表面
に反応及び/又は固着した際に、疎水性の画線部として
作用するようになっている。なお、加熱の方法として
は、活性光よりも波長の長い不活性光を照射して加熱す
る方法、又は、サーマルヘッドにより加熱を行なう方法
等を適宜用いればよいが、不活性光を照射することによ
り、加熱処理を行なうのが好ましい。
【0084】なお、以下、「熱可塑性樹脂の微粒子」と
は、「加熱処理により溶融してフィルム状になるととも
に、感光層3表面と反応して、あるいは感光層3表面に
固着して感光層3表面を疎水化する性質と、活性光が照
射されると光触媒の作用により分解される性質とを併せ
持つ熱可塑性樹脂微粒子」のことをいう。ここで、反応
及び/又は固着とは、版材35表面として印刷時にも十
分な強度を保ち得る程度に加熱溶融されて感光層3表面
と密着することを指している。また、感光層3との間で
何らかの化学反応を生じていると否とを問わず、物理的
結合によるか化学的結合によるかを問わない。
【0085】また、熱可塑性樹脂の微粒子径としては、
一次粒子径が5μm以下、好ましくは1μm以下が良
い。粒子径が大きすぎると、加熱溶融して形成されたフ
ィルム、即ち、画線部の膜厚が大きすぎて、再生工程に
おける画線部の分解に時間がかかりすぎるため実用的で
はなくなる。一方、粒子径が小さすぎると比表面積増大
の効果で常温成膜してしまい、インキの粘着力及び/又
は湿し水の洗浄効果による非画線部の熱可塑性樹脂微粒
子の除去が困難となる。
【0086】さらに、熱可塑性樹脂微粒子には、加熱さ
れることにより溶融してフィルム化するとともに、版材
5表面の親水性部分と反応もしくは強く固着し感光層3
表面に疎水性を付与する作用を有する一方、常温では前
記反応もしくは固着が実質的に起こらないものが好まし
い。このような熱可塑性樹脂として種々の樹脂が知られ
ているが、本実施形態の版材用疎水化剤としては上記の
大きさの微粒子を形成できる樹脂が好ましく、(メタ)
アクリル酸,(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル
系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル酸,スチ
レン・アクリル酸エステル等のスチレン・アクリル系樹
脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エチレン、エ
チレン・アクリル酸,エチレン・アクリル酸エステル,
エチレン酢酸ビニル,変性エチレン酢酸ビニル等のエチ
レン系樹脂、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,ポリビ
ニルアルコール,ポリビニルエーテル等のビニル系樹脂
が好適である。
【0087】なお、これらの樹脂を単独で用いても良い
し、必要に応じて混合して用いても良いことはいうまで
もない。また、これらの樹脂は、分解時に塩素化合物等
の有害成分を生成しないという利点がある。さらに、熱
可塑性樹脂微粒子を含む液には、いわゆるエマルジョン
やラテックスが含まれることはいうまでもない。次に、
本実施形態にかかる印刷用版の作製方法及びその再生方
法について説明する。
【0088】なお、本実施形態における版の作製及び再
生のフロー(図13)は、画線部材供給工程(S30
0),画像書き込み工程(S310),印刷工程(S3
20),インキ除去工程(S330),画像履歴消去工
程(S340)のステップからなる。まず、印刷用版の
作製方法について説明する。
【0089】なお、以下において「版の作製」とは、有
機系化合物(画線部材)を含む液を感光層3表面に塗布
した後、版材35表面の少なくとも一部をデジタルデー
タに基づいて加熱処理して疎水性の画線部を形成し、加
熱処理されなかった版材35表面の樹脂微粒子を除去し
て親水性の感光層3表面を露出させ、版材35表面上に
疎水性の画線部と親水性の非画線部とからなる潜像を形
成することをいうものとする。
【0090】まず、図11(a)に示すように、前工程
〔画像履歴消去工程(S340)〕で全面を親水化され
た感光層3表面に、画線部材(樹脂微粒子)を含む液を
塗布し、必要に応じて室温程度の温度で乾燥させる。ま
た、感光層3表面のこの状態を「版作製時の初期状態」
という。この「版作製時の初期状態」とは、実際上の印
刷工程におけるその開始時とみなして良い。より具体的
にいえば、任意の画像に関して、それをデジタル化した
データが既に用意されていて、これを版材35上に書き
込みしようとするときの状態を指すものとみなせる。
【0091】そして、図11(b)に示すように、画像
書き込み工程(S310)として、感光層3表面に画像
を書き込む。この画像書き込みは、画像に関するデジタ
ルデータに準拠して、そのデータに対応するように、感
光層3表面に画線部が書き込まれることにより画像書き
込みが行われる。ここで、画線部とは、図9に示すよう
に、水6の接触角が50°以上、好ましくは80°以上
の疎水性の部分であり、印刷用の疎水性インキが容易に
付着し、一方、湿し水の付着は困難な状態となってい
る。
【0092】このように、疎水性の画線部を画像データ
に基づいて現出させる方法としては、樹脂微粒子層を加
熱し、この樹脂微粒子を溶融させて感光層3表面にフィ
ルム化させるとともに、感光層3表面に反応及び/又は
固着させる方法が好適である。画線部を加熱した後、加
熱されなかった部分の樹脂微粒子を除去することによ
り、非画線部を現出させ、版を作製することができる。
【0093】こうした加熱方法としては、光触媒のバン
ドギャップエネルギーよりも低いエネルギーをもつ光を
照射することにより、加熱処理を行なうのが好ましい。
この「光触媒のバンドギャップエネルギーよりも低いエ
ネルギーをもつ光」として、具体的には、赤外線が挙げ
られる。こうした光を照射すれば、樹脂微粒子を分解す
ることなく溶融してフィルム化させるとともに、感光層
3上に反応及び/又は固着させることができる。
【0094】ここでは、図11(b)に示すように、赤
外線書き込みヘッドを用いた赤外照射によって、少なく
とも一部の樹脂微粒子を加熱溶解してフィルム化させる
とともに、感光層3表面に反応あるいは固着させて画線
部を形成するようにしている。画線部を形成した後、図
11(c)に示すように、印刷開始直後の段階で、画像
書き込みをしなかった部分の樹脂微粒子を、インキの粘
着力及び/又は湿し水の洗浄作用により版材表面から除
去して、非画線部を現出させる。これによって、図11
(c)に示すように、感光層3表面への画線部と非画線
部の形成が完了し、印刷可能な状態となる。
【0095】なお、樹脂微粒子を含む液の塗布面を加熱
し、疎水性の画線部を画像データに基づいて現出させる
方法としては、ここでは、光のエネルギーで加熱して画
線部を書き込むように構成した例を示しているが、他の
構成、例えばサーマルヘッドによる樹脂微粒子物塗布面
の直接加熱であってもよいことはいうまでもない。上記
の処理が終了したら、図11(c)に示す印刷工程(S
320)において、版材35表面に湿し水および印刷用
の疎水性インキと湿し水を混合したいわゆる乳化インキ
を塗布する。これによって、例えば、図12に示すよう
な印刷用版材が製作されたことになる。
【0096】図12において、網掛けされた部分は、樹
脂微粒子が加熱溶融されてフィルム化するとともに、光
触媒を含む感光層3表面と反応もしくは固着して形成さ
れた層34、即ち、疎水性の画線部に、疎水性インキが
付着した状態を示している。また、残りの白地の部分
(感光層3表面)、即ち、親水性の非画線部3aには、
湿し水が優先的に付着する一方、疎水性インキははじか
れて付着しなかった状態を示している。このように画像
(絵柄)が浮かび上がることにより、感光層3表面は、
印刷用版材35としての機能を有することになる。この
後、印刷を実行し、印刷を終了する。
【0097】次に、印刷用版材の再生方法について説明
する。なお、「版の再生」とは、少なくとも一部が疎水
性を示し残りが親水性を示す版材表面を、全面均一に親
水化した後、この親水性の版材表面に、樹脂微粒子を含
む液を塗布し、必要に応じて室温程度の温度で乾燥させ
ることによって、再び「版作製時の初期状態」に復活さ
せることをいう。
【0098】「版の再生」では、まず、図11(d)に
示すインキ除去工程(S330)として、印刷終了後の
感光層3表面に付着したインキ,湿し水,紙粉などを拭
き取る。その後、図11(e)に示す画像履歴消去工程
(S340)において、少なくとも一部が疎水性を示す
感光層3全面に、光触媒のバンドギャップエネルギーよ
りも高いエネルギーをもつ活性光を照射する。感光層3
全面に活性光を照射することで、樹脂微粒子が溶融して
形成された画線部34を分解して除去し、感光層3全面
を、水6の接触角が10°以下の親水性表面とするこ
と、即ち、図10に示す状態とすることができる。
【0099】ここでは、図11(e)に示すように、紫
外線照射ランプを用いて、紫外線照射で画線部を分解
し、感光層3の親水性表面を露出させる場合を示してい
る。また、このとき、感光層3表面への活性光照射と同
時に、感光層3表面を加熱するようにしている。これに
より、感光層3表面の有機系化合物の分解反応を加速さ
せ、版の画像履歴の消去を短時間で行なうことができ
る。
【0100】なお、ここでは、図11(e)に示すよう
に、紫外線(UV)ランプを用いて活性光を感光層3表
面に照射するとともに、赤外線(IR)ランプを用いて
感光層3表面を加熱する例を示している。また、加熱方
法としては、感光層3表面を加熱する熱風送風又は光照
射が好ましい。ここで、照射する光としては、加熱効率
を考慮すると赤外線がより好ましい。
【0101】画像履歴消去工程(S340)の後、全面
親水性に回復された感光層3表面に、樹脂微粒子を含む
液を再度常温で塗布し、必要に応じて室温程度の温度で
乾燥させることによって、版作製時の初期状態に戻すこ
とが可能である。以上説明したことを、まとめて示して
いるのが図14に示すグラフである。この図14は、横
軸に時間(又は操作)、縦軸に版材35表面の水6の接
触角をとったグラフであって、本実施形態における印刷
用版材35に関して、その感光層3表面の水6の接触角
が、時間あるいは操作に伴ってどのように変化するかを
示したものである。なお、図14において、一点鎖線は
非画線部の接触角を示し、破線(開始点a,a′を起点
とする太線の破線)は画線部/非画線部に共通の感光層
3表面の接触角を示し、実線は画線部34の接触角を示
している。
【0102】まず予め、感光層3表面に紫外線を照射し
て、感光層3表面における水6の接触角が10°以下の
高い親水性を示すようにしておく。そして、画線部材供
給工程(S300)(図14中に示すAの工程)とし
て、感光層3表面に、樹脂微粒子を含む液を塗布し〔図
14中の時点(a)〕、その後、必要があれば液を室温
程度の常温で乾燥させる。図11はこの乾燥工程を必要
としない場合を示す。樹脂微粒子を含む液を塗布し終わ
った状態が、つまり「版作製時の初期状態」である〔図
14中の時点(b)〕。
【0103】次に、画像書き込み工程(S310)(画
線部書き込み工程、図14中に示すBの工程)として、
感光層3表面の樹脂微粒子塗布面の画線部相当部分を加
熱処理して、画線部の書き込みを開始する〔図14中の
時点(b)〕。こうすることによって、樹脂微粒子は加
熱されて溶融しフィルム化するとともに、感光層3表面
と反応又は固着し、画線部は高い疎水性を示すようにな
る。一方、非画線部では樹脂微粒子と版面との反応又は
固着は実質的に起こらず、画像書き込み前と同じ状態を
維持する。
【0104】画線部書き込みが完了したら、非画線部の
画線部材除去工程(図14中に示すCの工程)として、
印刷直後の段階で、非画線部の樹脂微粒子を、インキの
粘着力及び/又は湿し水の洗浄効果により感光層3表面
から除去開始する〔図14中の時点(c)〕。すなわ
ち、非画線部として、親水性の感光層3表面を露出させ
る。これにより、感光層3表面は、樹脂微粒子が溶融し
て形成したフィルム状樹脂が反応又は固着して形成され
た疎水性の画線部と、樹脂微粒子が除去された親水性の
非画線部が現出し、版として機能することができるよう
になる。
【0105】非画線部の樹脂微粒子除去が完了した後、
印刷工程(S320)(図14中に示すDの工程)とし
て、印刷を開始することになる〔図14中の時点
(d)〕。印刷が終了すると、インキ除去工程(S33
0)(図14中に示すEの工程)として、感光層3表面
のインキ,汚れ等を拭き取ってクリーニングを開始する
〔図14中の時点(e)〕。
【0106】このクリーニング完了後、即ち、インキの
拭き取りが完了した後には、画像履歴消去工程(S34
0)(図14中に示すFの工程)として、感光層3表面
に活性光を照射するとともに、感光層3表面を加熱す
る。これにより、樹脂微粒子が溶融して形成された画線
部が速やかに分解・除去され、さらに光触媒が疎水性か
ら親水性へ変換され、感光層3全面は再び親水性に戻
る。この画像履歴消去工程(S340)によって、版の
履歴を完全に消去することができる。
【0107】この後、次の画線部材供給工程(S30
0)(図14中に示すA′の工程)として、再び樹脂微
粒子を含む液を塗布する〔図14中の時点(a′)〕こ
とにより、「版作製時の初期状態」に戻ることになり、
この印刷用版材は再利用に供されることになる。なお、
上記の印刷及び版再生を印刷機上で行なうためには、第
1実施形態で説明した、図8に示すような印刷機10を
用いるのが好ましい。ただし、第2実施形態では、第1
実施形態で用いたタイプAの有機系化合物とは異なる、
タイプBの有機系化合物を含む液を用いているので、図
8に符号14で示す版面の疎水化装置を、有機系化合物
(タイプB)を含む液を供給する画線部材供給装置に置
き換えて構成する必要があることはいうまでもない。
【0108】〔3〕実施例 次に、本発明の第2実施形態における印刷用版材の作製
方法及び版の再生方法について、版材作製及び版再生の
手順及びその効果を、本願発明者らが確認したより具体
的な実施例及び比較例をあげて説明する。なお、図15
に示すように、版材の作製のフローは、中間層液塗布工
程(S100)、中間層固化工程(S110)、感光層
液塗布工程(S120)、感光層固化工程(S130)
のステップからなる。
【0109】〈基板作製〉まず、面積が280×204
mm、厚さが0.1mmのステンレス(SUS304)
製の基材1を用意し、この基材にアルカリ脱脂処理を行
なった後、水洗した。次に、この基材に酸化クロム(C
rO)処理を行い、ステンレス基材表面を厚さ約1μm
の黒色皮膜で被覆した。この黒色化処理により、830
nmの赤外線の吸収率は処理前の30%から、処理後は
90%以上に向上した。この黒色化処理SUS基板を基
材1として用いた。
【0110】〈中間層形成〉次に、中間層液塗布工程
(S100)において、日産化学製のリチウム(Li)
含有水ガラスLSS−35(SiO2含有量20〜21
wt%)500gをイオン交換水500gで稀釈した液
を用いて前記基材1にリチウム(Li)含有水ガラスを
ディップコートした後、中間層固化工程(S110)に
おいて、500℃で30分加熱処理し、厚さ約0.07
μmの中間層2を形成した。
【0111】〈感光層形成〉そして、感光層液塗布工程
(S120)において、テイカ株式会社製の光触媒用ゾ
ルTKS−203と酸化チタンコーティング剤TKC−
301と日産化学製のリチウム(Li)含有水ガラスL
SS−35とをTiO2及びSiO2として重量比4:
4:2の割合で混合した液を上記中間層2処理した基板
にディップコートした後、感光層固化工程(S130)
において、350℃で加熱して、アナターゼ型酸化チタ
ン光触媒を含む感光層3を版材表面に形成した。感光層
3の厚みは約0.1μmであった。この感光層3の機械
的な強度を鉛筆硬度で評価すると5Hであった。
【0112】〈版材としての評価〉感光層3の塗布(コ
ーティング)が終了したものを再生可能な印刷用版材3
5として評価した。まず、感光層3、即ち、版材35表
面の全面に低圧水銀ランプを用いて波長254nm、照
度10mW/cm2の紫外線を10秒照射した後、紫外
線照射部分について直ちにCA−W型接触角計で水の接
触角を測定したところ、接触角は8°となり、非画線部
として十分な親水性を示した。
【0113】次に、ジョンソンポリマー製のスチレン・
アクリル系樹脂(商品名「J−678」)をエタノール
に溶解し、濃度1wt%の樹脂溶液を調製した。この樹
脂溶液中に、界面活性剤イオネットT−60−C(三洋
化成製)を樹脂に対して10wt%添加した後、樹脂溶
液70重量部に対してイオン交換水(冷水)30重量部
を添加し、樹脂微粒子を析出させた。この樹脂微粒子分
散液を画線部形成用の塗布液とした。走査電子顕微鏡で
樹脂粒子を観察すると、粒径0.07〜0.1μmの球
状粒子であった。
【0114】紫外線を照射して親水性となっている版全
面に、スプレーにより上記画線部形成用の塗布液を塗布
した後、25℃で5分間風乾し、次に、波長830n
m、出力100mW、ビーム径15μmの赤外線レーザ
を用いた画像書き込み装置により版面に画線率10%か
ら100%までの10%刻みの網点画像を書き込むこと
で、照射部分の樹脂微粒子を加熱溶融し、版面に固着さ
せ、フィルム状の層を形成した。この樹脂微粒子が固着
した部分についてCA−W型接触角計で水の接触角を測
定したところ、接触角は82°で、画線部が出来ている
ことを確認した。
【0115】この版材を(株)アルファー技研の卓上オ
フセット印刷機ニューエースプロに取り付け、東洋イン
キ製のインキHYECOOB紅MZと三菱重工業製の湿
し水リソフェロー1%溶液を用いて、アイベスト紙に印
刷速度3500枚/時にて印刷を開始し、紙面上には網
点画像が印刷できた。次に、印刷用版の再生に係わる実
施例を説明する。
【0116】印刷終了後、版面上に付着したインキ,湿
し水,紙粉等をきれいに拭き取った版全面に、ハロゲン
ランプを用いて赤外線を照射して版面を120℃に加熱
しながら低圧水銀ランプを用いて波長254nm、照度
10mW/cm2の紫外線を20秒照射した。その後、
網点を書き込んでいた部分について直ちにCA−W型接
触角計で水の接触角を測定したところ、接触角は6°と
なり、十分な親水性を確認した。すなわち、版材35は
疎水化剤塗布前の状態に戻り、版再生ができたことを確
認した。
【0117】〈比較例1〉上記実施例の版材の作製にお
いて、感光層3を塗布する際、テイカ株式会社製の光触
媒用ゾルTKS−203と酸化チタンコーティング剤T
KC−301をTiO2として重量比5:5の割合で混
合した液を前記中間層2を形成した基板1にディップコ
ートし、500℃で加熱して、アナターゼ型酸化チタン
光触媒を含む感光層3を版材35表面に形成した以外
は、実施例と同様にして印刷用版材を作製した。感光層
3の厚みは約0.1μmであった。この感光層3の機械
的な強度を鉛筆硬度で評価すると2Hで、実施例より感
光層3の機械的な強度が低下していることが判明した。
【0118】〈比較例2〉上記実施例の版材の作製にお
いて、感光層3を塗布する際、テイカ株式会社製の光触
媒用ゾルTKS−203と酸化チタンコーティング剤T
KC−301とをTiO2として重量比5:5の割合で
混合した液を前記中間層2を形成した基板1にディップ
コートし、800℃で加熱して、光触媒を含む感光層3
を版材表面に形成した以外は、実施例と同様にして版材
を作製した。このときの感光層3の厚みは約0.1μm
であった。また、感光層3の機械的な強度を鉛筆硬度で
評価すると4Hで、実施例に近い機械的な強度をもつこ
とが確認できた。感光層3の酸化チタン光触媒について
エックス線回折により結晶型を調べたところ90%以上
がルチル型に転移していた。
【0119】この比較例2の版材35を用いて、実施例
と同様に印刷を実施した後、版の再生処理を行った。印
刷終了後、版面上に付着したインキ,湿し水,紙粉等を
きれいに拭き取った版全面に、ハロゲンランプを用いて
赤外線を照射して版面を120℃に加熱しながら低圧水
銀ランプを用いて波長254nm、照度10mW/cm
2の紫外線を20秒照射した。その後、網点を書き込ん
でいた部分について直ちにCA−W型接触角計で水6の
接触角を測定したところ、接触角は18°となり、まだ
充分な親水性を示すには至らなかった。さらに前記低圧
水銀ランプを用いて紫外線を照射し、実施例と同様に接
触角6°になるまでには20秒の追加の照射時間を要し
た。即ち、比較例2の版材は、実施例の版材に比べて光
触媒活性が低下していることが判明した。
【0120】〈比較例3〉上記実施例の版材35の作製
において、中間層2を塗布する際に、堺化学製の光触媒
用プライマーLACPR−01を用いて前記基板1に中
間層2をディップコートした後、110℃で20分加熱
処理した以外は、実施例と同様にして印刷用版材を作製
した。このときの中間層2の厚みは約0.1μmであっ
た。感光層3の機械的な強度を鉛筆硬度で評価するとH
で、実施例より感光層3の機械的な強度が低下している
ことが判明した。
【0121】以上詳述したように、本発明の第1,2実
施形態にかかる感光層3においては、光触媒活性を低下
させることなく光触媒を含む感光層3の機械的な強度を
高くすることができる。したがって、この感光層3を印
刷用版材に用いた場合には、印刷用版材の機械的な強度
も高くすることができ、版の再生サイクルを低下させる
ことなく、版の耐久性を上げることができる。つまり、
印刷工程全体を極めて速やかに完了させることができ
る。
【0122】また、版材の再生・再利用を可能とし、使
用後に廃棄される版材の量を著しく減少させることがで
きる。これにより、版材作製にかかるコストを大幅に低
減することができる。また、画像に係わるデジタルデー
タに基づいて、版材表面への画像書き込みを直接実施す
ることが可能であることから、印刷工程のデジタル化対
応がなされており、その相応分の大幅な時間短縮又はコ
スト削減を実現できる。
【0123】以上、本発明の実施形態について説明した
が、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではな
く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施
することができる。例えば、第1,2実施形態におい
て、中間層2に水ガラスを含むように構成したが、中間
層2上にそなえられる感光層3の膜強度が高く、また、
これにより、印刷用版材の強度が高い場合には、特に、
中間層2に水ガラスを含まなくても良い。
【0124】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本
発明の感光層によれば、光触媒活性を低下させることな
く、光触媒を含む感光層の機械的な強度を高くすること
ができる。従って、例えば、印刷用版材に用いた場合、
版の再生サイクルを低下させることなく、版の耐久性を
高めることができる。また、印刷工程に占める版再生時
間が短縮できるため、印刷準備時間の短縮ができる。さ
らに、版材を再生し繰り返し使用することにより、使用
後に廃棄される版材の量を著しく減少させることができ
るとともに、版材に関わるコストが低減できるようにな
る。また、デジタルデータから直接版を作成することに
より、印刷工程のデジタル化対応や時間短縮ができるよ
うになる。
【0125】請求項2記載の本発明の感光層によれば、
活性光を照射すると有機物を分解するので、感光層表面
に塗布された有機系化合物を除去することができ、版の
再生が可能である。請求項3記載の本発明の感光層によ
れば、水ガラスはリチウムLiを含んでいるので、長時
間水に浸しても溶解することがなく、膜強度を高めるこ
とができる。従って、この感光層を印刷用版材に用いれ
ば、版の耐久性を高めることができる。
【0126】請求項4記載の本発明の感光層によれば、
水ガラスが、シリカSiO2とリチウムLiとを含むと
ともに、リチウムを酸化リチウムLi2O成分として水
ガラス中に1〜10重量パーセント含んでいるので、膜
強度を高めるという効果を十分に発揮でき、液体として
のハンドリングを容易にすることができる。請求項5記
載の本発明の感光層によれば、光触媒として、酸化チタ
ン光触媒あるいは酸化チタン光触媒改質物を用いること
ができる。
【0127】請求項6記載の本発明の印刷用版材によれ
ば、基材と、この基材上に形成された請求項1〜5の何
れか1項に記載の感光層とをそなえているので、光触媒
活性を低下させずに機械的な強度を高くすることができ
る。従って、版の再生サイクルを低下させることなく、
版の耐久性を高めることができる。また、印刷工程に占
める版再生時間が短縮できるため、印刷準備時間の短縮
ができる。さらに、版材を再生し繰り返し使用すること
により、使用後に廃棄される版材の量を著しく減少させ
ることができるとともに、版材に関わるコストが低減で
きるようになる。また、デジタルデータから直接版を作
成することにより、印刷工程のデジタル化対応や時間短
縮ができるようになる。
【0128】請求項7記載の本発明の印刷用版材によれ
ば、感光層と基材との間にそなえられる中間層が水ガラ
スを含んでいるので、中間層自身の機械的な強度を高く
することができ、中間層上にそなえられる感光層の機械
的な強度も高くすることができる。請求項8記載の本発
明の印刷用版材によれば、水ガラスはリチウムLiを含
んでいるので、長時間水に浸しても溶解することがな
く、中間層の膜強度を高めることができる。つまり、こ
のような中間層を含んでいるので、版の耐久性を高める
ことができる。
【0129】請求項9記載の本発明の印刷用版材によれ
ば、シリカSiO2とリチウムLiとを含むとともに、
リチウムを酸化リチウムLi2O成分として水ガラス中
に1〜10重量パーセント含んでいるので、膜強度を高
めるという効果を十分に発揮でき、液体としてのハンド
リングを容易にすることができる。
【0130】請求項10記載の本発明の印刷機によれ
ば、請求項6〜9の何れか1項に記載の印刷用版材を版
胴に取り付け、疎水化装置により、版材の感光層表面を
疎水化させた後、画像書き込み装置により、感光層表面
に画像を書き込み、版クリーニング装置により版材表面
に塗布されたインキを除去した後、画像履歴消去装置に
より、版材表面に活性光を照射して感光層表面の全面を
親水化し、感光層表面の画像履歴を消去するので、版材
を再生して繰り返し使用できる。また、使用後に廃棄さ
れる版材の量を著しく減少させることができ、版材に関
わるコストを低減できる。
【0131】請求項11記載の本発明の印刷機によれ
ば、疎水化装置が、活性光が照射されると光触媒の作用
により分解される性質と、感光層表面と反応及び/又は
強く相互作用して感光層表面を疎水化する性質とを有す
る有機系化合物を感光層表面に供給すること、及び、感
光層表面にエネルギー束を照射すること、及び、感光層
表面に機械的エネルギーを投入すること、の何れかによ
って感光層表面を疎水化するので、この後、版材の非画
線部分となるところに活性光を照射することにより親水
性を示す非画線部分を形成することができる。即ち、感
光層表面に親水性を示す非画線部と疎水性を示す画線部
とからなる画像を書き込むことができる。
【0132】請求項12記載の本発明の印刷機によれ
ば、請求項6〜9の何れか1項に記載の印刷用版材を版
胴に取り付け、画線部供給装置により、感光層表面に画
線部材を供給し、画像書き込み装置により感光層表面に
画像を書き込み、版クリーニング装置により版材表面に
塗布されたインキを除去した後、画像履歴消去装置によ
り、版材表面に活性光を照射して感光層表面の全面を親
水化し、感光層表面の画像履歴を消去するので、版材を
再生して繰り返し使用できる。また、使用後に廃棄され
る版材の量を著しく減少させることができ、版材に関わ
るコストを低減できる。
【0133】請求項13記載の本発明の印刷機によれ
ば、画線部材供給装置が、活性光が照射されると光触媒
の作用により分解される性質と、加熱されると溶融して
感光層表面と相互作用または固着し感光層表面を疎水化
する性質とを有する有機系化合物を感光層表面に供給す
るので、感光層表面にこの有機系化合物を供給した後、
版材の画線部分となるところを加熱することにより有機
系化合物を感光層表面に溶融固着させて疎水性を示す画
線部を形成し、また、加熱していない部分の有機系化合
物を除去することにより、感光層表面に親水性を示す非
画線部と疎水性を示す画線部とからなる画像を書き込む
ことができる。
【0134】請求項14記載の本発明の印刷用版材の作
製方法によれば、請求項6記載の印刷用版材の作製方法
であって、感光層液塗布工程において基材表面に光触媒
と水ガラスとを少なくとも含む感光層液を塗布し、その
後、感光層固化工程において上記の液状の感光層を固化
することにより、基材上に感光層を形成することができ
る。
【0135】請求項15記載の本発明の印刷用版材の作
製方法によれば、請求項7〜9の何れか1項に記載の印
刷用版材の作製方法であって、中間層液塗布工程におい
て基材表面に水ガラスを含む中間層液を塗布した後、中
間層固化工程のおいて上記の液状の中間層を固化し、そ
の後、感光層液塗布工程において光触媒と水ガラスとを
含む感光層液を塗布し、感光層固化工程において上記の
液状の感光層を固化することにより、基材上に中間層を
形成し、この中間層上に感光層を形成することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる印刷用版材の構
造を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる印刷用版材の表
面が疎水性を示している場合の模式的な断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる印刷用版材の表
面が親水性を示している場合の模式的な断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる印刷用版の画像
書き込みから再生までのサイクルを示す模式的な斜視図
である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる印刷用版材の一
例を示す模式的な斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる版の作製及び再
生を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態にかかる版材表面の水の
接触角と時間(又は操作)との関係を示すグラフであ
る。
【図8】本発明の第1実施形態にかかる版の印刷及び再
生を行なう印刷機を模式的に示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる印刷用版材の表
面が疎水性を示している場合の模式的な断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる印刷用版材の
表面が親水性を示している場合の模式的な断面図であ
る。
【図11】本発明の第2実施形態にかかる印刷用版の画
像書き込みから再生までのサイクルを示す模式的な斜視
図である。
【図12】本発明の第2実施形態にかかる印刷用版材の
一例を示す模式的な斜視図である。
【図13】本発明の第2実施形態にかかる版の作製及び
再生を説明するためのフローチャートである。
【図14】本発明の第2実施形態にかかる版材表面の水
の接触角と時間(又は操作)との関係を示すグラフであ
る。
【図15】本発明の第2実施形態にかかる印刷用版材の
作製を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 基材 2 Li含有水ガラスを含む中間層 3 感光層 3a 非画線部 3b 画線部 5,35 印刷用版材 6 水 10 印刷システム(印刷機) 11 版胴 12 版クリーニング装置 13 画像書き込み装置 14 版面の疎水化装置 15 加熱装置 16 親水化処理用活性光照射装置(画像履歴消去装
置) 17 インキングローラ 18 湿し水供給装置 19 ブランケット胴 20 紙 31 光触媒微粒子 32 Li含有水ガラスを含むバインダ 34 有機系化合物が加熱溶融されて形成された層(画
線部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大藤 豊士 広島県三原市寿町一丁目1番地 三原菱重 エンジニアリング株式会社内 Fターム(参考) 2C034 AA00 AA08 2H025 AB03 AC01 BH03 FA03 2H096 AA07 BA20 CA05 EA02 LA30 2H114 AA04 AA22 AA23 AA30 BA01 BA10 DA14 EA01 EA02 EA10 GA29

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光触媒と水ガラスとを含み、該光触媒の
    バンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーをもつ
    活性光が照射されると表面が親水性を示す性質を有する
    ことを特徴とする、感光層。
  2. 【請求項2】 該活性光が照射されると有機物を分解す
    る性質を有することを特徴とする、請求項1記載の感光
    層。
  3. 【請求項3】 該水ガラスは、リチウムLiを含んでい
    ることを特徴とする、請求項1又は2記載の感光層。
  4. 【請求項4】 該水ガラスは、シリカSiO2とリチウ
    ムLiとを含むとともに、該リチウムを酸化リチウムL
    2O成分として該水ガラス中に1〜10重量パーセン
    ト含んでいることを特徴とする、請求項1〜3の何れか
    1項に記載の感光層。
  5. 【請求項5】 該光触媒は、酸化チタン光触媒又は酸化
    チタン光触媒改質物であることを特徴とする、請求項1
    〜4の何れか1項に記載の感光層。
  6. 【請求項6】 基材と、該基材上に形成された請求項1
    〜5の何れか1項に記載の感光層とをそなえ、繰り返し
    て再利用されることを特徴とする、印刷用版材。
  7. 【請求項7】 該感光層と該基材との間に、水ガラスを
    含む中間層がそなえられることを特徴とする、請求項6
    記載の印刷用版材。
  8. 【請求項8】 該水ガラスは、リチウムLiを含んでい
    ることを特徴とする、請求項7記載の印刷用版材。
  9. 【請求項9】 該水ガラスは、シリカSiO2とリチウ
    ムLiとを含むとともに、該リチウムを酸化リチウムL
    2O成分として該水ガラス中に1〜10重量パーセン
    ト含んでいることを特徴とする、請求項7又は8記載の
    印刷用版材。
  10. 【請求項10】 請求項6〜9の何れか1項に記載の印
    刷用版材が取り付けられる版胴と、 該感光層表面を疎水化させる疎水化装置と、 該疎水化装置により疎水化された該感光層表面に該活性
    光を照射して親水性の非画線部を形成することで該感光
    層表面に画像を書き込む画像書き込み装置と、 該感光層表面上のインキを除去する版クリーニング装置
    と、 該インキを除去された該感光層表面に該活性光を照射す
    ることにより該感光層表面の全面を親水化して該感光層
    表面の画像履歴を消去する画像履歴消去装置とをそなえ
    ていることを特徴とする、印刷機。
  11. 【請求項11】 該疎水化装置は、 該活性光が照射されると該光触媒の作用により分解され
    る性質と、該感光層表面と反応及び/又は強く相互作用
    して該感光層表面を疎水化する性質とを有する有機系化
    合物を該感光層表面に供給すること、及び、該感光層表
    面にエネルギー束を照射すること、及び、該感光層表面
    に機械的エネルギーを投入すること、の何れかによって
    該感光層表面を疎水化することを特徴とする、請求項1
    0記載の印刷機。
  12. 【請求項12】 請求項6〜9の何れか1項に記載の印
    刷用版材が取り付けられる版胴と、 該感光層表面に画線部材を供給する画線部材供給装置
    と、 該画線部材を加熱することにより該感光層表面に疎水性
    の画線部を形成することで該感光層表面に画像を書き込
    む画像書き込み装置と、 該感光層表面上のインキを除去する版クリーニング装置
    と、 該インキを除去された該感光層表面に該活性光を照射す
    ることにより該感光層表面の全面を親水化して該感光層
    表面の画像履歴を消去する画像履歴消去装置とをそなえ
    ていることを特徴とする、印刷機。
  13. 【請求項13】 該画線部材供給装置は、 該活性光が照射されると該光触媒の作用により分解され
    る性質と、加熱されると溶融して該感光層表面と相互作
    用又は固着し該感光層表面を疎水化する性質とを有する
    有機系化合物を該感光層表面に供給することを特徴とす
    る、請求項12記載の印刷機。
  14. 【請求項14】 請求項6記載の印刷用版材の作製方法
    であって、 該基材表面に該光触媒と該水ガラスとを少なくとも含む
    感光層液を塗布する感光層液塗布工程と、 上記の液状の感光層を固化する感光層固化工程とをそな
    えていることを特徴とする、印刷用版材の作製方法。
  15. 【請求項15】 請求項7〜9の何れか1項に記載の印
    刷用版材の作製方法であって、 該基材表面に該水ガラスを含む中間層液を塗布する中間
    層液塗布工程と、 上記の液状の中間層を固化する中間層固化工程と、 該中間層固化工程の後、該光触媒と該水ガラスとを含む
    感光層液を塗布する感光層液塗布工程と、 上記の液状の感光層を固化する感光層固化工程とをそな
    えていることを特徴とする、印刷用版材の作製方法。
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