JP2003280185A - 感光層,感光層を有する印刷用版材,印刷機,平版印刷版の作製方法 - Google Patents

感光層,感光層を有する印刷用版材,印刷機,平版印刷版の作製方法

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JP2003280185A
JP2003280185A JP2002078534A JP2002078534A JP2003280185A JP 2003280185 A JP2003280185 A JP 2003280185A JP 2002078534 A JP2002078534 A JP 2002078534A JP 2002078534 A JP2002078534 A JP 2002078534A JP 2003280185 A JP2003280185 A JP 2003280185A
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Yasuharu Suda
康晴 須田
Masanao Yonemura
将直 米村
Hideaki Sakurai
秀明 櫻井
Toyoo Ofuji
豊士 大藤
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 感光層、前記感光層を有し再生可能な印刷用
版材、前記印刷用版材を用いた平版印刷版の作製及び再
生を可能とする印刷機、前記平版印刷版の作製方法に関
し、版再生時間をさらに短縮できるようにするととも
に、平版印刷版の現像性を向上できるようにする。 【解決手段】 印刷用版材5にそなえる感光層3を、シ
リカ微粒子32とバインダ機能を有する光触媒31とを
有し、該光触媒31のバンドギャップエネルギーよりも
高いエネルギーをもつ活性光が照射されると表面が親水
性を示すように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒を含む感光
層、前記感光層を有し再生可能な印刷用版材、前記印刷
用版材を用いた平版印刷版の作製及び平版印刷版を再生
しうる印刷機、前記平版印刷版の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、印刷技術一般として、印刷工程の
デジタル化が進行しつつある。これは、パソコンで作製
したり、スキャナ等で読み込んだりした画像や原稿のデ
ータをデジタル化し、このデジタルデータから直接印刷
用版材を作製するというものである。このことによっ
て、印刷工程全体の省力化が図れるとともに、高精細な
印刷を行なうことが容易になる。
【0003】従来、印刷に用いる版としては、陽極酸化
アルミを親水性の非画線部とし、その表面上に感光性樹
脂を硬化させて形成した疎水性の画線部を有する、いわ
ゆるPS版(Presensitized Plate)が一般的に用いら
れてきた。このPS版を用いて印刷用版を作製するには
複数の工程が必要であり、このため版の製作には時間が
かかり、コストも高くなるため、印刷工程の時間短縮及
び印刷の低コスト化を推進しにくい状況である。特に少
部数の印刷においては印刷コストアップの要因となって
いる。また、PS版では現像液による現像工程を必要と
し、手間がかかるだけでなく、現像廃液の処理が環境汚
染防止という観点から重要な課題となっている。
【0004】さらに、PS版では、一般に原画像が穿設
されたフィルムを版面に密着させて露光する方法が用い
られており、デジタルデータから直接版を作製し印刷工
程のデジタル化を進めるうえで印刷用版の作製が障害と
なっている。また、一つの絵柄の印刷が終わると、版を
交換して次の印刷を行なわなければならず、版は使い捨
てにされていた。
【0005】上記PS版の欠点に対して、印刷工程のデ
ジタル化に対応し、さらに現像工程を省略できる方法が
提案され商品化されているものもある。例えば、特開昭
63−102936号公報では、液体インクジェットプ
リンタのインクとして感光性樹脂を含むインクを用い、
これを印刷用版材に噴射し、その後で、光照射により、
画像部を硬化させることを特徴とする製版方法が開示さ
れている。また、特開平11−254633号公報に
は、固体インクを吐出するインクジェットヘッドにより
カラーオフセット印刷用版を作製する方法が開示されて
いる。
【0006】また、PET(ポリエチレンテレフタレー
ト)フィルム上にカーボンブラック等のレーザ吸収層、
さらにその上にシリコン樹脂層を塗布したものに、レー
ザ光線で画像を書き込むことによりレーザ吸収層を発熱
させ、この熱によりシリコン樹脂層を焼き飛ばして印刷
用版を作製する方法、あるいは、アルミ版の上に親油性
のレーザ吸収層を塗布し、さらにその上に塗布した親水
層を前記と同様にレーザ光線で焼き飛ばして印刷用版と
する方法、等が知られている。
【0007】この他にも、親水性ポリマーを版材として
使用し、画像露光により照射部を親油化させ版を作製す
る手段も提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ような方法では、デジタルデータから直接版を作製する
ことは可能であるが、1つの絵柄の印刷が終わると新し
い版に交換しなければ次の印刷が出来ず、従って、一度
使用された版が廃棄されることに変わりはない。これに
対し、版の再生を含んだ技術も提案されている。例え
ば、特開平10−250027号公報においては、酸化
チタン光触媒を用いた潜像版下、潜像版下の製造方法及
び潜像版下を有する印刷装置が、また、特開平11−1
47360号公報においても、光触媒を用いた版材によ
るオフセット印刷法が開示されており、これらには、い
ずれも画像書き込みには光触媒を活性化させる光、すな
わち実質的に紫外線を用い、加熱処理で光触媒を疎水化
して版を再生する方法が提案されている。また、特開平
11−105234号公報で開示された平版印刷版の作
製方法では、光触媒を活性光、すなわち紫外線で親水化
した後、ヒートモード描画にて画線部を書き込む方法が
提案されている。
【0009】しかし、東大・藤嶋教授、橋本教授らによ
り加熱処理で酸化チタン光触媒は親水化することが確認
されており〔三邊ら「酸化チタン表面の構造変化に伴う
光励起親水化現象の挙動に関する研究」、光機能材料研
究会第5回シンポジウム「光触媒反応の最近の展開」資
料、(1998)p.124−125〕、これによれ
ば、上記各公開公報で開示された方法、即ち、加熱処理
で光触媒を疎水化して版を再生しようとすることはでき
ず、この方法では、版の再生利用あるいは版の作製は不
可能ということになる。
【0010】一方、版の再生過程で、版に形成された画
像を消去する技術も提案されており、特開2000−6
360号公報には、印刷用版材において、印刷終了後、
版表面の光触媒を含む層に紫外域を主とする活性光を照
射して版全面を親水化することによって画像を消去する
技術が開示されている。
【0011】先に、本発明者らは、酸化チタン光触媒を
含む感光層を有する印刷用版材に、この光触媒のバンド
ギャップエネルギーよりも高いエネルギーをもつ活性光
が照射されると分解する性質と、加熱すると溶融して疎
水性を示す性質とを有する画線部材(熱可塑性樹脂微粒
子)を分散させた液を塗布し、デジタルデータに基づい
て版材表面の画線部分を加熱して疎水性の画線部を形成
するとともに非画線部分の画線部材を除去して版を作製
する技術を提案した(特願2001−168499号公
報)。これにより、デジタルデータから直接版を作製す
ることができ、また、現像工程・現像液を必要としない
で実用上十分な画質を有し、さらに、版材を再生し繰り
返し使用することが可能である。
【0012】本発明は、上述の課題に鑑み創案されたも
ので、さらなる版再生時間の短縮及び非画線部の熱可塑
性樹脂微粒子の現像性向上を可能とする感光層、この感
光層を有する印刷用版材、この印刷用版材を用いた平版
印刷版の作製及び再生が可能な印刷機、前記平版印刷版
の作製方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の課題を
解決するために以下の手段をとった。すなわち、本発明
の感光層(請求項1)は、シリカ微粒子とバインダ機能
を有する光触媒とを含み、該光触媒のバンドギャップエ
ネルギーよりも高いエネルギーをもつ活性光が照射され
ると表面が親水性を示す性質を有することを特徴として
いる。
【0014】従って、この感光層を印刷用版材に用いた
場合、感光層表面に、活性光を照射することにより、そ
の照射面を親水性に変換することが可能である。これ
は、光触媒が親水化する作用によるものである。このよ
うにして親水性に変換された部分は湿し水が優先的に付
着し、疎水性インキが付着しない非画線部として機能す
る。
【0015】該活性光が照射されると有機物を分解する
性質を有することが好ましい(請求項2)。該光触媒
は、連続層として含まれていることが好ましい(請求項
3)。該シリカ微粒子が、チェーン状の構造を有するこ
とが好ましい(請求項4)。該光触媒が、酸化チタン光
触媒であることが好ましい(請求項5)。
【0016】該酸化チタン光触媒は、過酸化チタンゾル
過酸化チタンゾルあるいは有機チタン化合物を用いて調
製した触媒であることが好ましい(請求項6)。本発明
の印刷用版材(請求項7)は、基材と、該基材上に形成
された請求項1〜6の何れか1項に記載の感光層とをそ
なえ、繰り返して再利用されることを特徴としている。
【0017】従って、版材表面(即ち、感光層表面)
に、活性光を照射することにより、その照射面を親水性
に変換することが可能であり、親水性に変換された部分
は湿し水が優先的に付着し、疎水性インキが付着しない
非画線部として機能する。
【0018】本発明の印刷機(請求項8)は、請求項7
記載の印刷用版材が取り付けられる版胴と、該活性光が
照射されると該光触媒の作用により分解される性質と、
加熱により溶融するとともに感光層表面と相互作用及び
/又は固着して感光層を疎水性化する性質とを有する画
線部材を該版材表面に供給する画線部材供給装置と、該
版材表面に供給された該画線部材を加熱処理して該版材
表面に疎水性を示す画線部を書き込む画線部書き込み装
置と、該版材表面上の該加熱処理されなかった画線部材
を除去する現像装置と、該版材表面に塗布されたインキ
を除去する版クリーニング装置と、該インキを除去され
た該版材表面に該活性光を照射することにより該感光層
表面の全面を親水化して該版材表面の履歴を消去する履
歴消去装置とをそなえていることを特徴としている。な
お、該加熱処理されなかった画線部材を除去する現像装
置として専用の装置を用いてもよく、後述するようにイ
ンキングローラおよび湿し水供給装置で兼用しても良
い。さらにまた、該加熱処理されなかった画線部材を除
去する専用の現像装置を用いる場合は、例えば表面が粘
着性を有するローラなどを用いて粘着力で非画線部の画
線部材を除去すれば良く、インキを使用する必要はない
ことは言うまでもない。
【0019】本発明の平版印刷版の作製方法(請求項
9)は、請求項7記載の印刷用版材を用いた平版印刷版
の作製方法であって、該活性光が照射されると該光触媒
の作用により分解される性質と、加熱により溶融すると
ともに感光層表面と相互作用及び/又は固着して感光層
を疎水性化する性質とを有する画線部材を該版材表面に
供給する画線部材供給工程と、該画線部材供給工程の
後、該版材表面の画線部分を加熱処理して疎水性を示す
画線部を書き込む画線部書き込み工程と、該画線部書き
込み工程において加熱処理されなかった非画線部分の画
線部材を除去する非画線部除去工程とをそなえているこ
とを特徴としている。
【0020】活性光を照射して親水化した印刷用版材の
表面に、加熱することにより版材表面に相互作用及び/
又は固着する性質と、活性光を照射することにより光触
媒の作用により分解される性質とを併せ持つ熱可塑性樹
脂微粒子(画線部材)を含む液(印刷用版材用塗布液)
を、版材表面に塗布し、必要に応じて室温程度の温度で
乾燥させる。
【0021】そして、塗布後、あるいは、室温乾燥後
は、熱可塑性樹脂微粒子は、親水性版材表面に弱い付着
力で付着しているだけであるが、版面温度が50℃以
上、好ましくは100℃以上に加熱されると溶融してフ
ィルム状になるとともに版材表面と相互作用及び/又は
固着して、強固な疎水性を示す画線部を形成するように
なる。一方、この疎水性画線部以外の部分に存在する熱
可塑性樹脂微粒子は容易に除去される。
【0022】該非画線部除去工程では、印刷のため該版
材表面へ塗布するインキの粘着力により上記の非画線部
分の画線部材を除去することが好ましい(請求項1
0)。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図を参照して説明する。図1〜図4は、本発明の一
実施形態にかかる印刷用版材を示すもので、図1はその
構造を示す模式的な断面図、図2はその感光層の模式的
な拡大断面図であり、(a)は球状のシリカ微粒子を含
有させた場合の図、(b)はチェーン状のシリカ微粒子
を含有させた場合の図、図3はその版材表面が疎水性を
示している場合の模式的な断面図、図4はその版材表面
が親水性を示している場合の模式的な断面図である。
【0024】図1に示すように、この印刷用版材5は、
基材1と、中間層2と、感光層3とから基本的に構成さ
れている。なお、印刷用版材5を単に版材ともいい、ま
た、表面に印刷用の画線部を形成された版材については
版という。基材1は、アルミニウムやステンレス等の金
属、ポリマーフィルム等により構成されている。ただ
し、基材1は、アルミニウムやステンレス等の金属ある
いはポリマーフィルムに限定されるものではない。
【0025】中間層2は、基材1表面上に形成され、基
材1と後述する感光層3とを確実に付着させる、また、
密着性を向上させるように機能している。ただし、基材
1と感光層3との付着強度が十分に確保できる場合に
は、中間層2はなくても差し支えない。また、中間層2
は、後述する感光層3を加熱処理により中間層2上に形
成する際に、基材1から不純物が熱拡散して感光層3に
混入し、感光層3の光触媒活性が低下するのを防ぐ効果
もある。さらに、中間層2は、基材1がポリマーフィル
ム等で形成されている場合には必要に応じて基材1の保
護のために形成されることもある。
【0026】中間層2としては、例えば、シリカ(Si
2),シリコン樹脂,シリコンゴム等のシリコン系化
合物がその材料として利用される。また、そのうち特
に、シリコン樹脂としては、シリコンアルキド,シリコ
ンウレタン,シリコンエポキシ,シリコンアクリル,シ
リコンポリエステル等が使用される。感光層3は、シリ
カ微粒子とバインダ機能を有する光触媒とを含んで中間
層2表面に形成されている(このように、光触媒を含む
感光層を光触媒層ともいう)。なお、本実施形態では、
光触媒として酸化チタン光触媒が用いられている。ま
た、光触媒としては酸化チタン光触媒が好適であるが、
これに限定されるものではない。
【0027】感光層3は、光触媒のバンドギャップエネ
ルギーよりも高いエネルギーをもつ活性光を感光層3表
面に照射することにより、その照射面を親水性に変換す
ること、及び、感光層3表面に存在する有機系化合物で
構成された画線部材を分解・除去することが可能となっ
ている。この性質は、酸化チタン光触媒の性質によるも
のであり、感光層3表面の親水化と有機系化合物で構成
された画線部材の分解・除去とは本来異なる現象である
が、活性光照射下の感光層3表面では同時に起こる。そ
して、親水性に変換された面は湿し水が優先的に付着
し、疎水性インキが付着しない非画線部として機能する
ようになっている。なお、図4は、活性光照射により親
水性を示している感光層3が露出した状態を表してお
り、この親水性光触媒を有する感光層3の露出により印
刷用版材5の非画線部を形成することが可能となってい
る。
【0028】また、酸化チタン光触媒としては、ルチル
型,アナターゼ型,ブルッカイト型があるが、本実施形
態においてはいずれも利用可能であり、それらの混合物
を用いてもよいが、光触媒活性を考慮すると、アナター
ゼ型が好ましい。また、上記のように感光層3を光触媒
の連続層として構成することにより、版材5作製に使用
する光触媒材料としては、粉末状のものよりも、酸化チ
タン光触媒のコロイド状懸濁物又は水酸化チタンのコロ
イド状懸濁物等が好適であり、特に、過酸化チタンゾル
が好ましい。
【0029】また、本来の酸化チタン光触媒は、バンド
ギャップエネルギーが3eVもあるため、波長約400
nm以下の紫外線にしか反応しない。本実施形態では、
このバンドギャップ間に新たな準位を形成することで、
紫外線よりも波長の大きい可視光も含んだ波長600n
m以下の活性光に反応する光触媒を用いても良い。この
場合、波長600nm以下の活性光の中には紫外線も含
まれるが、活性光の中に紫外線が含まれていてもいなく
ても良い。即ち、本実施形態では、波長600nm〜4
00nm程度の可視光のみを含んでいる場合でも同様に
光触媒が反応するようになっている。
【0030】なお、可視光領域の光にも反応する光触媒
の製造方法としては、公知の方法を用いれば良い。例え
ば、特開2001−207082号公報には、窒素原子
をドーピングした可視光応答型光触媒、また、特開20
01−205104号公報には、クロム原子及び窒素原
子をドーピングした可視光応答型光触媒が開示されてい
る。さらに、特開平11−197512号公報には、ク
ロム等の金属イオンをイオン注入した可視光応答型光触
媒が開示されている。この他にも、低温プラズマを利用
した酸化チタン光触媒や白金担持した可視光応答型の光
触媒が公表されている。本実施形態にかかる印刷用版材
5の作製にあたっては、これら公知の方法で製造され
た、いわゆる可視光応答型の光触媒を使用すれば良い。
【0031】本実施形態において使用可能で且つ市販さ
れている酸化チタン光触媒を具体的に列挙すれば、過酸
化チタンゾルとしてはテイカ製のコーティング液TKC
−301,TKC−305、アリテックス製のPTA−
85,PTA−170,TPX85,TPX220、有
機チタン化合物としては光触媒研究所のPAS−01
5,PSA−02等を挙げることができる。ただし、本
発明は、これらの酸化チタン光触媒以外であってももち
ろん適用可能であることはいうまでもない。
【0032】また、感光層3には、活性光照射による親
水化を促進する為、あるいは、活性光照射により現出し
た親水性を長時間維持する為、あるいは、感光層3の強
度や基材1との密着性を向上させることを目的として、
シリカ系化合物が添加されている。このシリカ系化合物
としては、例えば、シリカSiO2,シリカゾル,オル
ガノシラン,シリコン樹脂等が一般的である。
【0033】このようなシリカ系化合物を感光層3に導
入する方法としては、一般に、光触媒微粒子を固定する
バインダとしてシリカ系化合物を用い成膜する方法が知
られているが、本実施形態では、シリカ系化合物を微粒
子状のシリカ(以下、シリカ微粒子という)32とし、
バインダ機能を有する光触媒によりこのシリカ微粒子を
固定するようになっている。
【0034】このように、光触媒を微粒子ではなく連続
層とすることにより、感光層3の強度を高めるとともに
高い光触媒活性を維持することが可能である。すなわ
ち、例えば、シリカ系化合物のバインダにより微粒子状
の光触媒を固定して成膜した感光層では、表面の機械的
摩擦等により感光層表面に露出している光触媒微粒子が
脱落すると、シリカ系化合物のバインダの露出割合が増
加し、結果として感光層の光触媒活性は低下する。
【0035】このような光触媒活性の低下を防ぐため
に、感光層を光触媒の連続層としたことが本発明の特徴
の1つである。また、バインダ機能を有する光触媒によ
りシリカ微粒子32を固定する際、通常のシリカ微粒子
32では、上記と同様に、感光層3表面に機械的摩擦等
が加えられた場合、感光層3表面に露出しているシリカ
微粒子32が脱落し、シリカ微粒子32の添加効果が低
減する。
【0036】しかし、図1に示すように、チェーン状の
シリカ微粒子32を用いることにより、シリカ微粒子3
2の一部は表面に露出するが、大部分は光触媒31中に
存在するため、光触媒31とのアンカー効果により、シ
リカ微粒子32が脱落するのを防止でき、後述する版面
に印刷用版材として適度な凹凸を形成することができる
ようになっている。
【0037】すなわち、平版印刷版の作製において、版
材5表面に親水性の非画線部を形成する際、感光層3表
面に塗布された熱可塑性樹脂微粒子を除去する必要があ
るが、このとき、版材5表面、即ち、感光層3表面には
高い親水性とともに、保水性が必要であることが判明し
た。そして、上記のいずれかの特性が不十分でも、熱可
塑性樹脂微粒子の除去が充分に出来なくなり、本来非画
線部とならなければならない部分が画線部となってしま
うため、印刷画質が低下する。
【0038】ここで、高い親水性とは、図4に示すよう
に、版面の水の接触角が10°以下を示すような特性で
ある。一方、保水性とは、定量的定義は困難であるが、
版材5表面に水(あるいは水の層)を保持する特性であ
って、この特性を発現するためには、親水性だけでは不
十分で、感光層3表面に適度の凹凸が必要である。
【0039】なお、上記の高い親水性を発現する要素と
して、版面の凹凸は必ずしも必要ではない。本実施形態
では、チェーン状のシリカ微粒子32を添加することに
より、版材5表面に適度な凹凸を形成し、保水性を発現
できるようになっている。例えば、図2(a)に示す球
状のシリカ微粒子33を含有した感光層3では、個々の
シリカ微粒子33が感光層3表面に凹凸を形成するだけ
であるのに対して、図2(b)に示すチェーン状のシリ
カ微粒子32を含有した感光層3では、このチェーン自
体が凹凸形成するため、球状のシリカ微粒子33を含有
した感光層3表面の凹凸よりも深く、且つ、大きくする
ことが可能である。
【0040】このように、チェーン状のシリカ微粒子3
2を用いることで、大きな凹凸を形成することができ、
版材5表面の保水性を高めることが可能になり、非画線
部分の熱可塑性樹脂微粒子の除去を安定して行なうこと
ができるため、高精細な印刷に対応した平版印刷版の作
製ができるようになっている。つまり、版材5表面に水
が保持されていると、版面に塗布された熱可塑性樹脂微
粒子と版面とが直接接することがないため熱可塑性樹脂
粒子と版面の間に付着力が発生しない。さらに、版材5
の表面に供給されたインキは、この水により版材5表面
からはじかれて非画線部に付着できないため、このイン
キが版面から剥離する際に、非画線部分の熱可塑性樹脂
微粒子もインキの粘着力によりインキに付着して版材5
表面から容易に除去されるようになるのである。
【0041】本実施形態において使用可能でかつ市販さ
れているチェーン状シリカを具体的に列挙すれば、日産
化学製のスノーテックスPS−S,PS−SO,PS−
M,PS−MO等のスノーテックスPSシリーズがある
が、これらに限るものではない。また、感光層3の膜厚
は、0.005〜1μmの範囲内にあることが好まし
い。この理由は、膜厚があまりに小さければ、前記性質
を十分に活かすことが困難であり、また、膜厚があまり
に大きければ、感光層3がひび割れしやすくなり耐刷性
低下の要因となるためである。なお、このひび割れは、
膜厚が10μmを越えるようなときに顕著に観察される
ため、前記範囲を緩和するとしても10μmをその上限
として認識する必要がある。また、実際上は、0.01
〜0.5μm程度の膜厚とするのが、より好ましい。
【0042】さらに、この感光層3の形成方法として
は、ゾル塗布法が好ましい。ゾル塗布液には、酸化チタ
ン光触媒31及びチェーン状シリカ微粒子32の他に、
溶剤,架橋剤,界面活性剤等を添加しても良い。また、
ゾル塗布液は、常温乾燥タイプでも加熱乾燥タイプでも
良いが、後者の方がより好ましい。この理由は、加熱に
より感光層3の強度を高めた方が、版の耐刷性を向上さ
せるのに有利となるからである。
【0043】次に、上述のように構成された版材5表面
に画像を書き込む際に、版材5表面に塗布される画線部
材について説明する。画線部材は、例えば、熱可塑性樹
脂微粒子であり、該樹脂微粒子を水系または溶剤系の液
に分散させて版面に塗布できるようにすることができ
る。また、加熱(例えば、活性光よりも波長の長い赤外
線等の不活性光照射)されると、この熱可塑性樹脂微粒
子が溶融して感光層3表面に疎水性を示す熱可塑性樹脂
溶融層34(図3参照)を形成し、該溶融層3がインキ
受理性を有する画線部として機能するようになってい
る。
【0044】なお、「水系」の基準としては、塗布する
段階での液中の有機溶剤含有量が30wt%以下であ
り、また「溶剤系」の基準としては、塗布する段階での
液中の有機溶剤含有量が30wt%を越えるものであ
る。ここで用いる有機溶剤としては、熱可塑性樹脂微粒
子が使用環境温度で実質的に溶解せず、粒子状で分散可
能なものであれば良い。
【0045】また、水系,溶剤系ともに、熱可塑性樹脂
微粒子の分散性を向上させるための界面活性剤、また、
塗布を容易にするために液の粘度を調整する添加剤等を
含んでいても良いことはいうまでもない。さらに、熱可
塑性樹脂微粒子を含む液には、いわゆるエマルジョンや
ラテックスが含まれることは言うまでもない。また、
「熱可塑性樹脂の微粒子」とは、「加熱処理により溶融
してフィルム状になるとともに、感光層3表面と反応し
て、あるいは感光層3表面に反応及び/又は固着して感
光層3表面を疎水化する性質と、活性光が照射されると
光触媒の作用により分解される性質とを併せ持つ微粒
子」のことをいうものとする。
【0046】ここで、反応及び/又は固着とは、版材5
表面として印刷時にも十分な強度を保ち得る程度に加熱
溶融されて感光層3表面と密着することを指している。
また、感光層3との間で何らかの化学反応を生じている
と否とを問わず、物理的結合によるか化学的結合による
かを問わない。また、熱可塑性樹脂微粒子径としては、
一次粒子径が5μm以下、好ましくは1μm以下が良
い。粒子径が大きすぎると、加熱溶融して形成されたフ
ィルム、即ち、画線部の膜厚が大きすぎて、版再生工程
における画線部の分解に時間がかかりすぎるため実用的
ではなくなる。一方、粒子径が小さすぎると、比表面積
増大の効果で常温成膜してしまい、インキの粘着力及び
/又は湿し水の洗浄効果による非画線部の熱可塑性樹脂
微粒子の除去が困難となる。
【0047】なお、熱可塑性樹脂微粒子は、加熱される
ことにより溶融してフィルム化するとともに、版材5表
面の親水性部分と反応及び又は固着し感光層3表面に疎
水性を付与する作用を有する一方、常温では前記反応及
び/又は固着が実質的に起こらないものが好ましい。
【0048】このような熱可塑性樹脂として種々の樹脂
が知られているが、本実施形態の画線部材としては上記
の大きさの微粒子を形成できる樹脂が好ましく、(メ
タ)アクリル酸,(メタ)アクリル酸エステル等のアク
リル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル酸,
スチレン・アクリル酸エステル等のスチレン・アクリル
系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エチレ
ン、エチレン・アクリル酸,エチレン・アクリル酸エス
テル,エチレン酢酸ビニル,変性エチレン酢酸ビニル等
のエチレン系樹脂、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,
ポリビニルアルコール,ポリビニルエーテル等のビニル
系樹脂等が好適である。
【0049】なお、これらの樹脂を単独で用いても良い
し、必要に応じて混合して用いても良いことはいうまで
もない。これらの樹脂を用いることにより、感光層3の
光触媒作用による分解時間を短くでき、また、分解時に
塩素化合物等の有害成分を生成しないという利点があ
る。
【0050】次に、本実施形態にかかる平版印刷版の作
製方法及びその再生方法について説明する。なお、本実
施形態における版の作製及び再生のフローは、図9に示
すように、画線部材供給工程(S200),画線部書き
込み工程(S210),非画線部除去工程(S22
0),印刷工程(S230),インキ除去工程(S24
0),履歴消去工程(S250)のステップからなる。
【0051】まず、平版印刷版の作製方法について説明
する。なお、以下において「平版印刷版の作製」とは、
熱可塑性樹脂微粒子を含む液を版材5表面に塗布した
後、版材5表面の少なくとも一部をデジタルデータに基
づいて加熱処理して疎水性の画線部を形成し、加熱処理
されなかった版材5表面の熱可塑性樹脂微粒子を除去し
て親水性の感光層3表面を露出させ、版材5表面上に疎
水性の画線部と親水性の非画線部とからなる潜像を形成
することをいうものとする。
【0052】まず、図5(a)に示すように、前工程
〔履歴消去工程(S250)〕で全面を親水化された感
光層3表面に、画線部材(熱可塑性樹脂微粒子)を含む
液を塗布し、必要に応じて室温程度の温度で乾燥させ
る。また、感光層3表面のこの状態を「平版印刷版作製
時の初期状態」という。この「平版印刷版作製時の初期
状態」とは、実際上の印刷工程におけるその開始時とみ
なして良い。より具体的にいえば、任意の画像に関し
て、それをデジタル化したデータが既に用意されてい
て、これを版材5上に書き込みしようとするときの状態
を指すものとみなせる。
【0053】そして、図5(b)に示すように、画線部
書き込み工程(S210)として、感光層3表面に画線
部を書き込む。この画線部書き込みは、画像に関するデ
ジタルデータに準拠して、そのデータに対応するよう
に、感光層3表面に画線部が書き込まれることにより行
なわれる。ここで、画線部とは、図3に示すように、水
6の接触角が50°以上、好ましくは80°以上の疎水
性の部分であり、印刷用の疎水性インキが容易に付着
し、一方、湿し水の付着は困難な状態となっている。
【0054】このように、疎水性の画線部を画像データ
に基づいて現出させる方法としては、画線部材を加熱し
て溶融し、感光層3表面に反応及び/又は固着させて感
光層3表面に熱可塑性樹脂溶融層34を形成する方法が
好適である。版材5表面の画線部分を加熱した後、加熱
されなかった部分の熱可塑性樹脂微粒子を除去すること
により、非画線部を現出させ、平版印刷版を作製するこ
とができる。
【0055】こうした加熱方法としては、光触媒のバン
ドギャップエネルギーよりも低いエネルギーをもつ光を
照射することにより、加熱処理を行なうのが好ましい。
この「光触媒のバンドギャップエネルギーよりも低いエ
ネルギーをもつ光」として、具体的には、赤外線が挙げ
られる。こうした光を照射すれば、熱可塑性樹脂微粒子
を分解することなく溶融してフィルム化させるととも
に、感光層3上に反応及び/又は固着させることができ
る。
【0056】ここでは、図5(b)に示すように、赤外
線書き込みヘッドを用いた赤外照射によって、少なくと
も一部の熱可塑性樹脂微粒子を加熱溶解してフィルム化
させるとともに、感光層3表面に反応あるいは固着させ
て画線部を形成するようにしている。画線部(熱可塑性
樹脂溶融層)34を形成した後、非画線部除去工程(S
220)において、図5(c)に示すように、印刷開始
直後の段階で、画線部書き込みをしなかった部分の熱可
塑性樹脂微粒子を、インキの粘着力及び/又は湿し水の
洗浄作用により版材5表面から除去して、非画線部を現
出させる。これにより、感光層3表面に画線部と非画線
部とを形成することができ、印刷可能な状態とすること
ができる。
【0057】なお、画線部材を加熱して疎水性の画線部
を画像データに基づいて現出させる方法として、ここで
は、光のエネルギーにより加熱して画線部を書き込むよ
うに構成した例を示しているが、他の構成、例えば、サ
ーマルヘッドにより直接加熱するようにしても良い。上
記の処理が終了したら、印刷工程(S230)におい
て、版材5表面に湿し水及び印刷用の疎水性インキと湿
し水とを混合したいわゆる乳化インキを塗布する。これ
によって、例えば、図6に示すような印刷用版材5が作
製されたことになる。
【0058】図6において、網掛けされた部分は、熱可
塑性樹脂微粒子が加熱溶融されてフィルム化するととも
に光触媒を含む感光層3表面と反応もしくは固着して形
成された熱可塑性樹脂溶融層34、即ち、疎水性の画線
部に、疎水性インキが付着した状態を示している。ま
た、残りの白地の部分(感光層3表面)、即ち、親水性
の非画線部には、湿し水が優先的に付着する一方、疎水
性インキははじかれて付着しなかった状態を示してい
る。このように画像(絵柄)が浮かび上がることによ
り、感光層3表面は、印刷用版としての機能を有するこ
とになる。この後、印刷を実行し、印刷を終了する。
【0059】次に、平版印刷版の再生方法について説明
する。なお、「平版印刷版の再生」とは、少なくとも一
部が疎水性を示し残りが親水性を示す版材5表面を、全
面均一に親水化した後、この親水性の版材5表面に、熱
可塑性樹脂微粒子を含む液を塗布し、必要に応じて室温
程度の温度で乾燥させることによって、再び「平版印刷
版作製時の初期状態」に復活させることをいう。
【0060】「平版印刷版の再生」では、まず、図5
(d)に示すインキ除去工程(S240)として、印刷
終了後の感光層3表面に付着したインキ,湿し水,紙粉
等を拭き取る。その後、図5(e)に示す履歴消去工程
(S250)において、少なくとも一部が疎水性を示す
感光層3全面に、光触媒のバンドギャップエネルギーよ
りも高いエネルギーをもつ活性光を照射するとともに、
必要に応じて感光層3全面を加熱する。感光層3全面に
活性光を照射することにより画線部34を分解して除去
し、感光層3全面を、水6の接触角が10°以下の親水
性表面とすること、即ち、図4に示す状態とすることが
できる。
【0061】なお、光触媒のバンドギャップエネルギー
よりも高いエネルギーをもつ波長の光としては、例え
ば、紫外線を照射すればよく、これによって、感光層3
表面に存在する画線部34を分解・除去し、且つ、高い
親水性を有する表面にするには、酸化チタン光触媒を用
いることにより達成することができる。ここでは、図5
(e)に示すように、紫外線照射ランプを用いて、紫外
線照射で画線部34を分解し、感光層3の親水性表面を
露出させる場合を示している。
【0062】また、このとき、感光層3表面への活性光
照射と同時に、感光層3表面を加熱するようにしても良
い。これにより、感光層3表面の画線部材の分解反応を
加速させ、版の画像履歴の消去を短時間で行なうことが
できる。なお、ここでは、図5(e)に示すように、紫
外線(UV)ランプを用いて活性光を感光層3表面に照
射するとともに、不活性光照射で感光層3表面を加熱す
る例を示している。ここで、加熱のために照射する光と
しては、加熱効率の点から赤外線がより好ましく、ここ
では赤外線(IR)ランプを用いている。
【0063】また、この他の加熱方法としては、感光層
3表面を加熱する熱風送風等の手段を用いても良い。履
歴消去工程(S250)の後、全面親水性に回復された
感光層3表面に、画線部材を再度常温で塗布し、必要に
応じて室温程度の温度で乾燥させることによって、平版
印刷版作製時の初期状態に戻すことが可能である。
【0064】以上説明したことを、まとめて示している
のが図7に示すグラフである。この図7は、横軸に時間
(又は操作)、縦軸に版材5表面の水6の接触角をとっ
たグラフであって、本実施形態における印刷用版材5に
関して、その感光層3表面の水6の接触角が、時間ある
いは操作に伴ってどのように変化するかを示したもので
ある。なお、図7において、一点鎖線は非画線部の接触
角を示し、破線(開始点a,a′を起点とする太線の破
線)は画線部/非画線部に共通の感光層3表面の接触角
を示し、実線は画線部34の接触角を示している。
【0065】まず予め、感光層3表面に紫外線を照射し
て、感光層3表面における水6の接触角が10°以下の
高い親水性を示すようにしておく。最初に、画線部材供
給工程(S200)(図7中に示すAの工程)として、
感光層3表面に、画線部材(熱可塑性樹脂微粒子)を含
む液を塗布し〔図7中の時点(a)〕、その後、必要が
あれば液を室温程度の常温で乾燥させる。図7はこの乾
燥工程を必要としない場合を示す。画線部材を塗布し終
わった状態が、つまり「平版印刷版作製時の初期状態」で
ある〔図7中の時点(b)〕。
【0066】次に、画線部書き込み工程(S210)
(図7中に示すBの工程)として、感光層3表面の画線
部材塗布面の画線部相当部分を加熱処理して、画線部の
書き込みを開始する〔図7中の時点(b)〕。こうする
ことによって、画線部材は加熱されて溶融しフィルム化
するとともに、感光層3表面と反応又は固着し、画線部
は高い疎水性を示すようになる。一方、非画線部では熱
可塑性樹脂微粒子と版材5表面との反応又は固着は実質
的に起こらず、画像書き込み前と同じ状態を維持する。
【0067】画線部書き込みが完了したら、非画線部除
去工程(S220)(図7中に示すCの工程)として、
印刷開始直後の段階で、非画線部の画線部材を、インキ
の粘着力及び/又は湿し水の洗浄効果により感光層3表
面から除去する〔図7中の時点(c)〕。すなわち、非
画線部として、親水性の感光層3表面を露出させる。こ
れにより、感光層3表面は、熱可塑性樹脂微粒子が溶融
して形成した熱可塑性樹脂溶融層34(疎水性の画線
部)と、親水性の非画線部とが現出し、版として機能す
るようになっている。
【0068】非画線部分に存在する画線部材の除去が完
了した後、印刷工程(S230)(図7中に示すDの工
程)として、印刷を開始する〔図7中の時点(d)〕。
印刷が終了すると、インキ除去工程(S240)(図7
中に示すEの工程)として、感光層3表面のインキ,汚
れ等を拭き取ってクリーニングを開始する〔図7中の時
点(e)〕。
【0069】このクリーニング完了後、即ち、インキの
拭き取りが完了した後には、画像履歴消去工程(S25
0)(図7中に示すFの工程)として、感光層3表面に
活性光を照射するとともに、感光層3表面を加熱する。
これにより、版材5表面の画線部が速やかに分解・除去
され、さらに光触媒が疎水性から親水性へ変換され、感
光層3全面は再び親水性に戻る。即ち、版の履歴を完全
に消去することができる。
【0070】この後、画線部材供給工程(S200)
(図7中に示すA′の工程)として、再び画線部材を塗
布する〔図7中の時点(a′)〕ことにより、「平版印
刷版作製時の初期状態」に戻ることになり、この印刷用
版材5は再利用に供されることになる。なお、上記の印
刷及び版再生を印刷機上で行なうためには、図8に示す
ような印刷システム(印刷機)10を用いるのが好まし
い。
【0071】印刷機10は、版胴11を中心として、そ
の周囲に版クリーニング装置12、画線部書き込み装置
13、画線部材供給装置14、加熱装置15、履歴消去
装置としての親水化処理用活性光照射装置16、ブラン
ケット胴19、現像装置としてのインキングローラ17
及び湿し水供給装置18を備えたものとなっている。な
お、印刷用版材5は、版胴11に巻き付けられて設置さ
れている。
【0072】まず、版クリーニング装置12を版胴11
に対して接した状態とし、版材5表面に付着したイン
キ,湿し水,紙粉等をきれいに拭き取る。図8では、版
クリーニング装置12としてインキ拭き取り用の布状テ
ープを巻き取る機構を有する装置を示しているが、これ
に限るものではない。その後、版クリーニング装置12
を版胴11から脱離させ、加熱装置15で版材5表面を
加熱しながら親水化処理用活性光照射装置16により版
材5全面に活性光を照射して版材5全面を親水化する。
なお、ここでは、活性光として、波長400nm以下の
紫外線を用いているが、光触媒が波長400nm〜60
0nmの光でも活性を示す場合は、波長400nm〜6
00nmの光を用いても良い。
【0073】そして、画線部材供給装置14により版材
5全面に画線部材を供給する。なお、図8では、画線部
材供給装置14をローラによる塗布装置として示してい
るが、これに限るものではない。次に、予め用意された
画像のデジタルデータに基づいて画線部書き込み装置1
3により版材5表面に赤外線を照射して画線部を書き込
む。
【0074】画線部を書き込んだ後、インキングローラ
17、湿し水供給装置18、ブランケット胴19を版胴
に対して接する状態とし、紙20がブランケット胴19
に接するようする。そして、図8に示す矢印の方向にそ
れぞれ回転することによって版材5表面にインキ及び湿
し水を順次供給し、インキ及び湿し水により非画線部分
に存在する画線部材を除去する。そして、版材5表面の
画線部にはインキが付着するので、紙20に印刷を行な
うことができる。なお、図8では非画線部の画線部材は
インキングローラ17および湿し水供給装置18で除去
する方式を採用しているが、現像装置として、例えば粘
着性表面を有するローラなどの専用の装置を装備しても
よい。
【0075】このように、印刷用版材5を印刷機10の
版胴11に取り付けた状態で一連の版再生及び版作製の
工程を行なうことができ、印刷機10を停止することな
く、また、印刷用版材の交換作業を挟むことなく連続的
な印刷作業の実施を行なうことができる。この印刷機1
0では、印刷用版材5を版胴11に巻き付けるように構
成しているが、これに限定されるものではなく、光触媒
を含む感光層3を、版胴11表面に直接設ける、即ち、
版胴11と印刷用版材5とを一体に構成したものを用い
ても良いことはいうまでもない。
【0076】次に、本実施形態における印刷用版材の作
製方法及び版の再生方法について、版材作製及び版再生
の手順及びその効果を、本願発明者らが確認したより具
体的な実施例及び比較例をあげて説明する。なお、図1
0に示すように、版材の作製のフローは、中間層形成工
程(S100)、中間層定着工程(S110)、感光層
形成工程(S120)、感光層定着工程(S130)の
ステップからなる。〈実施例〉まず、面積が280×2
04mm、厚さが0.1mmのステンレス(SUS30
4)製の基材1を用意し、この基材を陽極酸化処理して
黒染め処理を行なった。この処理により、830nmの
赤外線の吸収率は処理前の30%から、黒染め処理後は
90%以上に向上した。この黒染め処理SUS基板をア
ルカリ脱脂処理し、版材基板として用いた。
【0077】次に、中間層形成工程(S100)におい
て、固形分5wt%のシリカゾルを版材基板にディップ
コートした後、中間層定着工程(S110)において、
500℃で30分加熱処理し、厚さ約0.07μmの中
間層2を形成した。そして、感光層形成工程(S12
0)において、テイカ株式会社製の酸化チタンコーティ
ング剤TKC−301と日産化学製のシリカゾル・スノ
ーテックPS−SOを、それぞれTiO2及びSiO2
して重量比7:3の割合で混合した液を上記中間層2処
理した基板にディップコートした後、感光層定着工程
(S130)において、350℃で加熱して、酸化チタ
ン光触媒を有する感光層3を版材5表面に形成した。こ
のときの感光層3の厚みは約0.1μmであった。
【0078】その後、版材5全面に低圧水銀ランプを用
いて波長254nm、照度10mW/cm2の紫外線を
10秒照射した後、紫外線照射部分について直ちにCA
−W型接触角計で水6の接触角を測定したところ、接触
角は6°となり、非画線部として十分な親水性を示し
た。次に、ジョンソンポリマー製のスチレン・アクリル
系樹脂(商品名「J−678」)をエタノールに溶解
し、濃度1wt%の樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液
中に、日本化薬製のカヤソーブIR−820(B)を樹
脂に対して1wt%、界面活性剤イオネットT−60−
C(三洋化成製)を樹脂に対して10wt%添加した
後、樹脂溶液50重量部に対してイオン交換水(冷水)
50重量部を添加し、樹脂微粒子を析出させた。その
後、エバポレータを用いて液温40℃にてエタノールを
脱気し、赤外吸収剤を含有した熱可塑性樹脂微粒子の水
分散液を調製し画線部材とした。走査電子顕微鏡で塗布
液A及びBの樹脂粒子を観察すると、粒径0.07〜
0.1μmの球状粒子であった。
【0079】紫外線を照射して親水性となっている版材
5全面に、ロールコートにより画線部材を塗布した後、
25℃で5分間風乾し、次に、波長830nm、出力1
00mW/ch、ビーム径15μmの赤外線レーザを用
いた画像書き込み装置により版材5表面に画線率10%
から100%までの10%刻みの網点画像を、書き込み
速度2m/sで書き込んだ。書き込み部分を電子顕微鏡
で観察したところ、照射部分の樹脂微粒子はフィルム状
になり、版材5表面に固着していた。この樹脂微粒子が
フィルム状に固着した部分についてCA−W型接触角計
で水6の接触角を測定したところ、接触角は82°で、
画線部が出来ていることを確認した。
【0080】この版材を(株)アルファー技研の卓上オ
フセット印刷機ニューエースプロに取り付け、東洋イン
キ製のインキHYECOOB紅MZと三菱重工業製の湿
し水リソフェロー1%溶液を用いて、アイベスト紙に印
刷速度3500枚/時にて印刷を開始した。印刷開始1
枚目から紙面上には網点画像が印刷できた。すなわち、
画線部の熱可塑性樹脂微粒子は赤外線で溶融し版材5表
面に固着して画線部を形成し、一方、非画線部の熱可塑
性樹脂微粒子はインキ粘着力及び/又は湿し水の洗浄効
果により版材5表面から除去され親水性の感光層3が露
出したことにより平版印刷版が作製できたことを確認し
た。
【0081】次に、平版印刷版の再生に係わる実施例を
説明する。印刷終了後、版面上に付着したインキ、湿し
水、紙粉などをきれいに拭き取った版全面に、低圧水銀
ランプを用いて波長254nm、照度10mW/cm2
の紫外線を20秒照射した。その後、網点を書き込んで
いた部分について直ちにCA−W型接触角計で水6の接
触角を測定したところ、接触角は6°となり、版作製前
と同様の十分な親水性を示す、即ち、版材5は画線部材
を塗布する前の状態戻った。その後、再び画線部材を塗
布することにより、「平版印刷版作製時の初期状態」に
戻り、版再生ができた。
【0082】〈比較例〉実施例で用いたテイカ株式会社
製のTKC−301と日産化学製のスノーテックPS−
SOを混合した液の代わりに、テイカ株式会社製の酸化
チタンコーティング剤TKC−301だけを上記中間層
2処理した基板にディップコートし、350℃で加熱し
て、酸化チタン光触媒を有する感光層3を形成した。こ
のときの感光層3の厚みは約0.1μmであった。
【0083】次に、版材5全面に低圧水銀ランプを用い
て波長254nm、照度20mW/cm2の紫外線を1
0秒照射した後、紫外線照射部分について直ちにCA−
W型接触角計で水6の接触角を測定したところ、接触角
は9°となり、親水性を示したが、実施例よりも水6の
接触角は高かった。
【0084】次に、紫外線を照射して親水性となってい
る版材5表面に、実施例と同様に、画線部材を塗布した
後、25℃で5分間風乾し、次に、波長830nm、出
力100mW/ch、ビーム径15μmの赤外線レーザ
を用いた画線部書き込み装置により版面に画線率10%
から100%までの10%刻みの網点画像を、書き込み
速度2m/sで書き込んだ。書き込み部分を電子顕微鏡
で観察したところ、照射部分の樹脂微粒子はフィルム状
になり、版材5表面に固着していた。この樹脂微粒子が
フィルム状に固着した部分についてCA−W型接触角計
で水6の接触角を測定したところ、接触角は83°で、
画線部が出来ていることを確認した。
【0085】この版材を(株)アルファー技研の卓上オ
フセット印刷機ニューエースプロに取り付け実施例と同
様にして印刷を開始したが、版全面にインキが付着し、
印刷物も全面画線部となった。即ち、赤外線レーザで画
線部書き込みをしてない非画線部の熱可塑性樹脂微粒子
がインキ粘着力及び/又は湿し水の洗浄効果により版材
5表面から除去されず、平版印刷版が作製できなかっ
た。
【0086】以上詳述したように、本発明の一実施形態
にかかる感光層3は、光触媒の微粒子ではなく、光触媒
の連続層として形成されているので、感光層3の強度を
高めることができるとともに高い触媒活性を維持するこ
とができる。また、光触媒として酸化チタン光触媒を用
い、この酸化チタン光触媒の触媒活性により容易に分解
する性質と、加熱により版材5表面に反応又は固着され
る性質とを有する熱可塑性樹脂微粒子を画線部材として
版材5表面に塗布し、デジタルデータに基づいて版材5
表面の画線部分を赤外線等の光で加熱処理することによ
り、高速で画線部を形成することができる。
【0087】また、シリカ微粒子(シリコン系化合物)
32を添加しているので、より高い親水性を発現させる
ことができるとともに、より長時間にわたって親水性を
維持することができる。また、シリカ微粒子32は、チ
ェーン状に形成されているので、光触媒とのアンカー効
果により感光層3表面から脱落することがなく、シリカ
微粒子32の添加効果が低減するのを防止できる。
【0088】さらに、チェーン状のシリカ微粒子32
が、その形状から、感光層3表面に大きな凹凸を形成す
ることにより、版材5表面の保水性を高めることがで
き、版材5表面に塗布されている非画線部分の熱可塑性
樹脂微粒子を容易に、且つ、安定して除去することがで
きる。このように、アルカリ現像なしで高精細な印刷品
質を実現できるという利点もさることながら、高い触媒
活性により、平版印刷版を再生する際、再生サイクルを
迅速化できる利点をも備えている。
【0089】また、アルカリ現像液を必要としないの
で、アルカリ現像液の廃液処理をする必要がなく、アル
カリ現像液にかかるコストを削減することができる。さ
らに、アルカリ現像工程も必要としないので、版再生時
間を短縮することができる。また、平版印刷版の再生・
再利用が可能であるので、従来、印刷使用後に廃棄して
いた版材の量を著しく減少させることができる。これに
より、平版印刷版の作製にかかるコストを大幅に低減す
ることができる。
【0090】また、画像にかかわるデジタルデータから
版材へ直接画像書き込みができ、印刷工程のデジタル化
対応が可能である。そして、このような平版印刷版の作
製及び再生を、版材5を印刷機10にそなえた状態で行
なうことができる。これにより、版材5の交換作業を低
減できるので、作業効率をあげることができる。
【0091】以上、本発明の実施形態について説明した
が、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではな
く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施
することができる。
【0092】例えば、非画線部除去工程(S220)に
おいて、版材5表面に存在する加熱処理されなかった画
線部材をインキ及び/又は湿し水洗浄効果により除去
し、印刷工程(S230)において、版材5表面の画線
部にのみ付着するインキを塗布して紙20に対して印刷
を行なうようにしたが、これら2つの工程を同時に行な
うようにしても良い。つまり、現像装置、即ち、インキ
ングローラ17及び湿し水供給装置18により、インキ
及び湿し水を版材5表面に供給して、非画線部分の画線
部材を除去すると同時に、画線部にインキを供給し、印
刷を行なうようにする。このように、上記2つの工程を
同時に行なうことにより、実質的に現像工程に要する時
間を無くし、平版印刷版の作製及び再生のさらなる迅速
化を図ることが可能である。
【0093】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本
発明の感光層によれば、光触媒がバインダ機能を有する
ので、感光層の強度を高めることができるとともに、高
い触媒活性を維持することができる。従って、例えば、
この感光層を印刷用版材にそなえた場合、高い触媒活性
により版再生時間を短縮でき、印刷準備時間の短縮が可
能である。さらに、感光層の強度が高いことにより、版
材を再生し繰り返し使用しても版材の消耗を少なくする
ことができるので、版の再生使用回数を増加させること
が出来、版材作製に関わるコストを低減することができ
る。
【0094】そして、廃棄される版材の量を著しく減少
させることができるため、環境への負荷が小さいという
利点もある。また、デジタルデータから直接版を作成で
きることにより、印刷工程のデジタル化対応や版作製に
かかる時間を短縮することができる。さらに、印刷機に
取り付けた状態で、版作製及び版再生ができるので、版
交換作業を低減でき、作業効率を向上させることができ
る。
【0095】請求項2記載の本発明の感光層によれば、
活性光を照射すると有機物を分解するので、感光層表面
に塗布された画線部材を除去することができ、版の再生
が可能である。請求項3記載の本発明の感光層によれ
ば、光触媒は、連続層として含まれているので、強度を
高めることができるとともに高い触媒活性を維持するこ
とができる。
【0096】請求項4記載の本発明の感光層によれば、
シリカ微粒子がチェーン状の構造を有するので、光触媒
とのアンカー効果により感光層表面から脱落することが
なく、シリカ微粒子の添加効果、即ち、高い親水性を発
現させること及び長時間にわたって親水性を維持するこ
とができる。請求項5記載の本発明の感光層によれば、
光触媒として、酸化チタン光触媒を用いることが可能で
ある。
【0097】請求項6記載の本発明の感光層によれば、
酸化チタン光触媒は、過酸化チタンゾルあるいは有機チ
タン化合物を用いて調製した触媒であるので、感光層を
連続層として形成することができる。請求項7記載の本
発明の印刷用版材によれば、請求項1〜6の何れか1項
に記載の感光層を基材上にそなえて構成されているの
で、印刷用版材の強度を高めることができるとともに、
高い触媒活性を維持することができる。
【0098】また、アルカリ現像液を用いることなく平
版印刷版を作製することが可能であるので、アルカリ現
像液の廃液処理を必要せず、且つ、アルカリ現像工程も
ないので、版再生時間を高い触媒活性により短縮でき、
印刷準備時間の短縮が可能である。さらに、版材を再生
し繰り返し使用することができるので、版材作製に関わ
るコストを低減することができる。
【0099】そして、廃棄される版材の量を著しく減少
させることができるため、環境への負荷が小さいという
利点もある。また、デジタルデータから直接版を作成で
きることにより、印刷工程のデジタル化対応や平版印刷
版作製にかかる時間を短縮することができる。さらに、
印刷機に取り付けた状態で、平版印刷版の作製及び再生
ができるので、平版印刷版の交換作業を低減でき、作業
効率を向上させることができる。
【0100】請求項8記載の本発明の印刷機によれば、
版胴に請求項7記載の印刷用版材を取り付け、画線部材
供給装置により、活性光を照射すると光触媒の作用によ
り分解される性質と、加熱すると溶融するとともに感光
層表面と相互作用及び/又は固着して感光層を疎水性化
する性質とを有する画線部材を版材表面に供給し、画線
部書き込み装置により、版材表面に供給された画線部材
を加熱処理して版材表面に疎水性を示す画線部を書き込
み、現像装置により、加熱処理されなかった画線部材を
除去し、版クリーニング装置により、版材表面に塗布さ
れたインキを除去し、履歴消去装置により、インキを除
去された版材表面に活性光を照射し、感光層表面の全面
を親水化して版材表面の履歴を消去するので、印刷用版
材を再生して繰り返し使用できる。また、使用後に廃棄
される印刷用版材の量を著しく減少させることができ、
印刷用版材に関わるコストを削減できる。また、アルカ
リ現像液を必要としないので、アルカリ現像液の廃液処
理をする必要がなく、アルカリ現像液にかかるコストを
削減することができる。
【0101】請求項9記載の本発明の平版印刷版の作製
方法によれば、請求項7記載の印刷用版材を用いた平版
印刷版の作製方法であって、画線部材供給工程におい
て、活性光を照射すると光触媒の作用により分解される
性質と、加熱すると溶融するとともに疎水性を示す性質
とを有する画線部材を版材表面に供給し、画線部材を供
給した後、画線部書き込み工程において、版材表面の画
線部分を加熱処理して疎水性を示す画線部を書き込み、
非画線部除去工程において、前工程で加熱処理されなか
った非画線部分の画線部材を除去する方法により、平版
印刷版を作製することができる。
【0102】請求項10記載の本発明の平版印刷版の作
製方法によれば、非画線部除去工程では、印刷のため版
材表面へ塗布するインキの粘着力により非画線部分の画
線部材を除去するので、非画線部分において、親水性を
示し、湿し水が優先的に付着する感光層を露出させるこ
とができる。これにより、版材表面に、インキが付着し
ない非画線部とインキが付着する画線部とを形成するこ
とができる。また、印刷機に本来装備してあるインキン
グローラを用いて印刷開始直後に非画線部の画線部材を
除去できるので、専用の現像装置を装備する必要がなく
装置が簡略化できるとともに、実質的に現像工程を必要
とせず、準備時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる印刷用版材の構造
を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる印刷用版材の感光
層を示すもので、(a)は球状シリカ微粒子を含んでい
る場合の模式的な拡大断面図、(b)はチェーン状シリ
カ微粒子を含んでいる場合の模式的な拡大断面図であ
る。
【図3】本発明の一実施形態にかかる印刷用版材の表面
が疎水性を示している場合の模式的な断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる印刷用版材の表面
が親水性を示している場合の模式的な断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる印刷用版の画像書
き込みから再生までのサイクルを示す模式的な斜視図で
ある。
【図6】本発明の一実施形態にかかる印刷用版材の一例
を示す模式的な斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる版材表面の水の接
触角と時間(又は操作)との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態にかかる版の印刷及び再生
を行なう印刷機を模式的に示す図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる版の作製及び再生
を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態にかかる印刷用版材の作
製を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 基材 2 中間層 3 感光層 5 印刷用版材 6 水 10 印刷システム(印刷機) 11 版胴 12 版クリーニング装置 13 画線部書き込み装置 14 画線部材供給装置 15 加熱装置 16 親水化処理用活性光照射装置(履歴消去装置) 17 インキングローラ 18 湿し水供給装置 19 ブランケット胴 20 紙 31 バインダ機能を有する光触媒 32 シリカ微粒子(チェーン状) 33 シリカ微粒子(球状) 34 熱可塑性樹脂溶融層(画線部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03F 7/00 503 G03F 7/00 503 (72)発明者 櫻井 秀明 広島県三原市糸崎町5007番地 三菱重工業 株式会社紙・印刷機械事業部内 (72)発明者 大藤 豊士 広島県三原市寿町一丁目1番地 三原菱重 エンジニアリング株式会社内 Fターム(参考) 2C034 AA08 AA10 2H025 AA00 AB03 AC08 AD03 BH03 CC08 2H084 AA30 AE05 BB02 BB04 BB13 CC05 2H096 AA06 BA09 BA20 EA04 FA05 LA30 2H114 AA04 AA23 AA27 BA01 DA08 DA15 EA00 FA06 GA26 GA29 GA34 GA38

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリカ微粒子とバインダ機能を有する光
    触媒とを含み、該光触媒のバンドギャップエネルギーよ
    りも高いエネルギーをもつ活性光が照射されると表面が
    親水性を示す性質を有することを特徴とする、感光層。
  2. 【請求項2】 該活性光が照射されると有機物を分解す
    る性質を有することを特徴とする、請求項1記載の感光
    層。
  3. 【請求項3】 該光触媒は、連続層として含まれている
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の感光層。
  4. 【請求項4】 該シリカ微粒子が、チェーン状の構造を
    有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に
    記載の感光層。
  5. 【請求項5】 該光触媒は、酸化チタン光触媒であるこ
    とを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の感
    光層。
  6. 【請求項6】 該酸化チタン光触媒は、過酸化チタンゾ
    ルあるいは有機チタン化合物を用いて調製した触媒であ
    ることを特徴とする、請求項5記載の感光層。
  7. 【請求項7】 基材と、該基材上に形成された請求項1
    〜6の何れか1項に記載の感光層とをそなえ、繰り返し
    て再利用されることを特徴とする、印刷用版材。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の印刷用版材が取り付けら
    れる版胴と、 該活性光が照射されると該光触媒の作用により分解され
    る性質と、加熱により溶融するとともに感光層表面と相
    互作用及び/又は固着して感光層を疎水性化する性質と
    を有する画線部材を該版材表面に供給する画線部材供給
    装置と、 該版材表面に供給された該画線部材を加熱処理して該版
    材表面に疎水性を示す画線部を書き込む画線部書き込み
    装置と、 該版材表面上の該加熱処理されなかった画線部材を除去
    する現像装置と、 該版材表面に塗布されたインキを除去する版クリーニン
    グ装置と、 該インキを除去された該版材表面に該活性光を照射する
    ことにより該感光層表面の全面を親水化して該版材表面
    の履歴を消去する履歴消去装置とをそなえていることを
    特徴とする、印刷機。
  9. 【請求項9】 請求項7記載の印刷用版材を用いた平版
    印刷版の作製方法であって、 該活性光が照射されると該光触媒の作用により分解され
    る性質と、加熱により溶融するとともに感光層表面と相
    互作用及び/又は固着して感光層を疎水性化する性質と
    を有する画線部材を該版材表面に供給する画線部材供給
    工程と、 該画線部材供給工程の後、該版材表面の画線部分を加熱
    処理して疎水性を示す画線部を書き込む画線部書き込み
    工程と、 該画線部書き込み工程において加熱処理されなかった非
    画線部分の画線部材を除去する非画線部除去工程とをそ
    なえていることを特徴とする、平版印刷版の作製方法。
  10. 【請求項10】 該非画線部除去工程では、印刷のため
    該版材表面へ塗布するインキの粘着力により上記の非画
    線部分の画線部材を除去することを特徴とする、請求項
    9記載の平版印刷版の作製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008006690A (ja) * 2006-06-29 2008-01-17 Toppan Printing Co Ltd 印刷用凸版、印刷物の製造方法、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法および素子
JP2012096537A (ja) * 2010-10-29 2012-05-24 Palo Alto Research Center Inc 可変データ平版印刷システム

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