JP2003253458A - 亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

亜鉛系めっき鋼板及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】プレス成形性、化成処理性及び接着性がともに
優れた亜鉛系めっき鋼板を得る。 【解決手段】亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面に、皮膜
構成成分として、N成分、所定の金属元素の群から選択
された少なくとも1種と、水溶性及び/又は水分散性の
樹脂と、P成分とを含み、前記N成分と金属元素の合計
量(a)とP成分量(b)のモル比(a)/(b)が
0.20超え6以下であり、前記樹脂成分量(c)とP
成分量(d)の質量比(c)/(d)が0.002〜
1.8であり、且つ皮膜付着量がP付着量として5〜3
00mg/m2である複合皮膜を形成した亜鉛系めっき
鋼板である。その製造方法は、実質的にNH4 +と所定の
金属イオンの群から選択された少なくとも1種からなる
カチオン成分と、前記樹脂成分と、P成分とを所定の比
率で含んだ水溶液を、亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面
に塗布し、引き続き水洗することなく乾燥して皮膜を形
成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、亜鉛系めっき鋼板
及びその製造方法に関するものであり、特にプレス成形
性、化成処理性及び接着性に優れた亜鉛系めっき鋼板及
びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】亜鉛系めっき鋼板は種々の優れた特徴を
有するために、各種の防錆鋼板として広く使用されてい
る。この亜鉛系めっき鋼板を自動車用防錆鋼板として使
用するためには、耐食性や塗装適合性等のほかに、車体
製造工程において要求される性能として、プレス成形
性、スポット溶接性、接着性及び化成処理性に優れてい
ることが重要である。
【0003】しかし、亜鉛系めっき鋼板は、一般に、冷
延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点がある。
これは亜鉛系めっき鋼板とプレス金型との摺動抵抗が、
冷延鋼板の場合に較べて高いことが原因であり、この摺
動抵抗が大きいとプレス時にビード部近傍の亜鉛系めっ
き鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が
起こりやすくなる。
【0004】亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を向上さ
せる方法としては、高粘度の潤滑油を塗布する方法が広
く用いられている。しかしこの方法では、潤滑油が高粘
度であるために、次の塗装工程で脱脂不良による塗装欠
陥が発生したり、油切れによりプレス性能が不安定にな
る等の問題がある。したがって、亜鉛系めっき鋼板のプ
レス成形性の改善要求度は高い。
【0005】また、一般に自動車や家電用途では溶接部
の補強、耐食性の強化などの目的で接着剤による鋼板同
士の接合が行われる。しかし、亜鉛系めっき鋼板の表面
はZn、Al等の酸化物で覆われているため、接着剤の
接着強度が低下するなどの問題がある。
【0006】従来、これらの問題を解決するために以下
のような技術が提案されている。 (1)特開平4−176878号には、Mn,Mo,C
o,Ni,Ca,Cr,V,W,Ti、Al、Znの1
種又は2種以上の金属酸化物及び/又は水酸化物を主体
とした層と、P,Bの酸素酸及び/又はSi,Al,T
iの1種又は2種以上の酸化物コロイドを主体とする皮
膜を有する亜鉛系めっき鋼板が示されている。 (2)特開平8−296058号には、亜鉛系めっき鋼
板の表面を活性化させた後、Mn,Mo,Co,Ni、
Ca、V,W,P,Bの1種又は2種以上の無機系酸化
物皮膜を生成させた亜鉛系めっき鋼板の製造方法が示さ
れている。 (3)特開平9−170084号には、亜鉛系めっき鋼
板のめっき層表面にリンと亜鉛との非晶質反応生成物を
有するめっき鋼板及びその製造方法が示されている。 (4)特開平4−88196号には、亜鉛系めっき鋼板
表面にアモルファス状のP酸化物を被覆したプレス成形
性、化成処理性に優れた亜鉛系めっき鋼板が示されてい
る。 (5)特開平8−296017号には、亜鉛系めっき鋼
板表面にMn−Zn−OH−PO4酸化物を有する、潤
滑性、化成処理性、接着剤適合性、溶接性に優れた亜鉛
系めっき鋼板が示されている。 (6)特開平9−170059号には、亜鉛系めっき鋼
板表面にアクリル樹脂の皮膜を0.5μm〜5μm形成
した接着性に優れたアルカリ可溶型有機被覆亜鉛系めっ
き鋼板が示されている。 (7)特開平10−345520号には、樹脂固形分中
の20〜90重量%に変性エポキシ樹脂を含む接着性、
耐カジリ性に優れたアルカリ可溶型有機皮膜被覆鋼板が
示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの技術
には以下のような問題がある。
【0008】上記(1)の技術は、亜鉛系めっき層を硫
酸等のエッチング補助剤や硝酸イオン、過マンガン酸カ
リウムのような酸化剤を含む水溶液により処理するもの
であるが、このような水溶液が亜鉛系めっき層と接触す
ると、めっき成分の亜鉛が水溶液中に溶解するため、形
成される皮膜に亜鉛が取り込まれやすい。この結果、形
成される皮膜はめっき層との界面での密着性が確保さ
れ、めっき層の変形に追随してめっき層を被覆する機能
を維持することができる。しかしながら、この技術には
以下に述べるような問題がある。すなわち、上記のよう
な皮膜が亜鉛系めっき層を被覆しているため、通常、自
動車の塗装前処理として行われている化成処理(すなわ
ちリン酸塩処理であり、以下の記述では、本発明で行う
処理と区別するため単に「化成処理」という)において
化成処理液と亜鉛との反応が十分に生じず、このため結
晶が粗大化し或いは結晶が形成されない等の問題が生じ
る。一般に化成処理液には皮膜のエッチング性を高める
ためにフッ素イオンなどが添加されているが、このよう
な添加成分が含まれていない場合や、不純物の存在によ
りエッチング性の劣化等が生じているような場合には、
化成処理過程で上記皮膜が十分に溶解しない或いは脱離
しないため、上記現象が特に顕著になる。
【0009】また、上記(2)〜(7)の技術も同様の
問題を有している。すなわち、上記(2)の技術はめっ
き層の反応性を高め、めっき層とその表面に形成させる
無機系酸化物皮膜との結合力を高める点、上記(3)の
技術はめっき層表面にリン酸と亜鉛との非晶質の反応生
成物を形成させる点、上記(4)及び(5)の技術は脱
脂工程でも溶解しないアモルファス状のP酸化物を被覆
する点、にそれぞれ特徴を有している。このため、いず
れもエッチング性が劣る化成処理条件では化成処理過程
で皮膜が脱離し難く、化成処理の不良が生じやすい。
【0010】さらに、上記(1)〜(5)の技術はいず
れも亜鉛をエッチングさせ、皮膜に亜鉛を取り込むこと
を前提としている。通常、リン酸イオンと亜鉛イオンが
共存すると不溶性のリン酸塩結晶が生じ易い。したがっ
て、亜鉛系めっき鋼板にリン酸を含み、且つ亜鉛を溶解
させるようなエッチング性のある水溶液を接触させた場
合、結晶成分である亜鉛がめっき層から常に供給される
ため、リン酸塩結晶の核が一旦形成されると結晶が成長
しやすい。このような結晶が存在する皮膜では、プレス
成形の際にこれら結晶成分が剥離して金型との間に堆積
し、摺動性を阻害する結果、型カジリ等を生じ、ひいて
は材料破断に至る可能性もある。
【0011】また、上記(5)の技術は接着剤とリン系
酸化物界面及びリン系酸化物層内の強度を高め、エポキ
シ系接着剤との適合性を向上させているが、接着剤の種
類によっては必ずしも接着性が良好ではない。特にゴム
系の副資材(接着剤)との接着性が悪く、リン系酸化物
と接着剤の界面での剥離が生じやすくなる。
【0012】上記(6)及び(7)の技術はアルカリ可
溶型樹脂を用いて接着性および化成処理性を向上させて
いるが、プレス成形時に高温となるため、樹脂成分が金
型や鋼板に固着しやすい。この固着した樹脂成分は、鋼
板表面に残留しやすく、プレス後の脱脂によっても容易
に脱離しない。このため化成処理性に悪影響をおよぼ
す。
【0013】したがって本発明の目的は、上述したよう
な従来技術の課題を解決し、プレス成形性、化成処理性
及び接着性がともに優れた亜鉛系めっき鋼板を提供する
ことにある。
【0014】また、本発明の他の目的は、このような優
れた特性を有する亜鉛系めっき鋼板を安定して製造する
ことができる製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、亜鉛系め
っき鋼板のめっき層表面に、適正な成分と適正な組成範
囲を有する複合皮膜を形成することによりプレス成形
性、化成処理性及び接着性がともに優れた亜鉛系めっき
鋼板が得られること、また、このようなプレス成形性、
化成処理性及び接着性がともに優れた亜鉛系めっき鋼板
は、亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面に適正な成分と組
成範囲を有するリン酸系水溶液を塗布して皮膜を形成す
ることにより安定して得られることを見い出した。
【0016】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴は以下の通りである。
【0017】[1]亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面
に、皮膜構成成分として、Mg,Al,Ca,Ti,F
e,Co,Cu,Mo,Ni,Mnの中から選ばれる1
種または2種以上の金属元素および/またはN成分と、
水溶性樹脂および/または水分散性樹脂と、P成分とを
含み、前記金属元素とN成分の合計量(a)とP成分量
(b)のモル比(a)/(b)(但し、N成分量はアン
モニウム換算量、P成分量はP25換算量)が0.2超
え6以下であり、前記樹脂成分量(c)とP成分量
(d)の質量比(c)/(d)(但し、P成分量はP2
5換算量)が0.002〜1.8であり、且つ皮膜付
着量がP付着量として5〜300mg/m2である複合
皮膜を形成したことを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
【0018】[2]複合皮膜が、金属元素として少なく
ともFeを含有することを特徴とする上記[1]に記載
の亜鉛系めっき鋼板。
【0019】[3]複合皮膜中に含まれる水溶性樹脂お
よび/または水分散性樹脂が少なくともCOOH基を有
することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の亜
鉛系めっき鋼板。
【0020】[4]複合皮膜中に含まれる水溶性樹脂お
よび/または水分散性樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン
樹脂、エポキシ樹脂の中から選ばれる1種又は2種以上
を樹脂骨格に有することを特徴とする上記[1]乃至
[3]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板。
【0021】[5]複合皮膜中に含まれる水溶性樹脂お
よび/または水分散性樹脂がアクリル樹脂を樹脂骨格に
有することを特徴とする上記[4]に記載の亜鉛系めっ
き鋼板。
【0022】[6]実質的にMg,Al,Ca,Ti,
Fe,Co,Cu,Mo,Ni,Mnの中から選ばれる
1種または2種以上の金属イオンおよび/またはNH4 +
からなるカチオン成分と、水溶性樹脂および/または水
分散性樹脂と、P成分とを含有し、前記カチオン成分の
合計(α)とP成分(β)のモル濃度比(α)/(β)
(但し、P成分はP25換算モル濃度)が0.2超え6
以下であり、前記樹脂成分(γ)とP成分(δ)の質量
比(γ)/(δ)(但し、P成分はP25換算モル濃
度)が0.002〜1.8である水溶液を、亜鉛系めっ
き鋼板のめっき層表面に塗布し、引き続き水洗すること
なく乾燥して皮膜を形成することを特徴とする亜鉛系め
っき鋼板の製造方法。
【0023】[7]めっき層表面に塗布される水溶液
が、カチオン成分として少なくともFeを含有すること
を特徴とする上記[6]に記載の亜鉛系めっき鋼板の製
造方法。
【0024】[8]めっき層表面に塗布される水溶液に
含まれるFe成分が、Fe(ε)とP成分(β)のモル
濃度比(ε)/(β)(但し、P成分はP25換算モル
濃度)が0.2超え0.95未満であることを特徴とす
る上記[7]に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
【0025】[9]めっき層表面に塗布される水溶液に
含まれる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂が、少
なくともCOOH基を有することを特徴とする上記
[6]乃至[8]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板
の製造方法。
【0026】[10]めっき層表面に塗布される水溶液
に含まれる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂が、
アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の中から選
ばれる1種又は2種以上を樹脂骨格に有することを特徴
とする上記[6]乃至[9]のいずれかに記載の亜鉛系
めっき鋼板の製造方法。
【0027】[11]めっき層表面に塗布される水溶液
が、少なくとも水分散性樹脂を含有し、該水分散性樹脂
がアクリルを樹脂骨格に有することを特徴とする上記
[6]乃至[10]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼
板の製造方法。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明が対象とする亜鉛系めっき
鋼板(皮膜処理の母材となる亜鉛系めっき鋼板)とは、
鋼板の表面に溶融めっき法、電気めっき法又は気相めっ
き法等により亜鉛系めっき層を形成させためっき鋼板で
ある。亜鉛系めっき層の組成は、純亜鉛からなるめっき
層のほかに、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、Al、M
o、Ti、Si、W、Sn、Pb、Nb、Ta等の金属
若しくはその酸化物、有機物の中から選ばれる1種又は
2種以上を含有する単層又は複層の亜鉛めっき層などで
ある。また、これらの亜鉛系めっき層は水溶性及び/又
は水分散性の樹脂を含有し、さらにSiO2 およびAl
23等の酸化物微粒子を含有していてもよい。また、亜
鉛系めっき鋼板としては、めっき組成が異なる複数のめ
っき層を有する複層めっき鋼板、めっき層の組成を層厚
方向で傾斜状に変化させた機能傾斜めっき鋼板などを使
用することもできる。
【0029】亜鉛系めっき鋼板の具体例としては、溶融
亜鉛めっき鋼板、蒸着亜鉛めっき鋼板、鉄−亜鉛合金化
溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム系合金溶融め
っき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金溶融めっき鋼
板、Zn−55%Al合金溶融めっき鋼板)、めっき層
のうち鋼板に近い層のみが合金化されている合金化溶融
亜鉛めっき鋼板(一般にハーフアロイと呼ばれる)、片
面が鉄−亜鉛合金化溶融亜鉛めっき層からなり、他の片
面が溶融亜鉛めっき層からなるめっき鋼板、或いは上記
各めっき鋼板のめっき層の上層に、さらに電気めっき、
蒸着めっき等により亜鉛又は亜鉛主体の合金めっき層を
施しためっき鋼板、亜鉛をマトリックスとし、SiO2
等の微粒子を分散させためっき層を有する分散めっき鋼
板などが挙げられる。
【0030】本発明の亜鉛系めっき鋼板は、上記のよう
な素材めっき鋼板のめっき層表面に、金属元素及び/又
はN成分(例えば、窒素化合物の形態で)と、樹脂成分
と、P成分(例えば、リン系酸化物の形態で)とを適正
な組成範囲で含有する複合皮膜を形成させることによ
り、優れたプレス成形性、化成処理性及び接着性を付与
したものである。
【0031】以下、本発明の詳細をその限定理由ととも
に説明する。
【0032】一般に従来の亜鉛系めっき鋼板は、プレス
成形性が冷延鋼板に較べて劣っている。その原因は、高
面圧下において低融点且つ軟質の亜鉛と金型とが凝着現
象を起こすために、摺動抵抗が増大することにある。こ
れを防ぐためには、亜鉛系めっき鋼板のめっき層の表面
に亜鉛又は亜鉛合金めっき層よりも硬質で且つ高融点の
皮膜を形成することが有効である。
【0033】本発明はこれを実現するために、めっき層
表面に、皮膜構成成分として金属元素及び/又はN成分
と、樹脂成分と、P成分とを含有し、且つこの金属元素
及び/又はN成分とP成分との組成比を特定の範囲に規
制し、さらに樹脂成分とP成分との質量比を特定の範囲
に規制した硬質且つ高融点の複合皮膜を形成させる。こ
の複合皮膜は金属元素及び/又はN成分とP成分を特定
の組成比で含むために、また樹脂成分とP成分を特定の
質量比で含むために、非常に均一に亜鉛系めっき鋼板表
面を被覆し、薄膜でも亜鉛と金型の直接接触を抑制する
ことができる。このような均一な皮膜形成が可能な理由
は、この複合皮膜を構成する金属元素成分やN成分、さ
らには樹脂成分の働きによるものである。
【0034】この複合皮膜の形成方法に特に制限はない
が、通常は皮膜成分を含む水溶液をめっき層表面に塗布
・乾燥することにより形成される。ここで、皮膜成分が
リン系化合物のみでは、そのエッチング作用によってめ
っき層の亜鉛を溶解し、皮膜成分として取り込んでしま
う。この場合、亜鉛とリン酸が反応して結晶質の均一性
が低下し、薄膜の状態でめっき層表面を完全に被覆する
ことが困難となる。これに対して本発明のように皮膜中
に金属成分やN成分が存在する場合には、皮膜形成過程
でのリン酸と亜鉛との反応が抑制される結果、金属元素
成分やN成分とリン酸成分(P成分)とがネットワーク
皮膜を形成する。そして、このような作用は、Mg,A
l,Ca,Ti,Fe,Co,Cu,Mo,Ni,Mn
の中から選ばれる1種または2種以上の金属元素及び/
またはN成分の合計量(a)(以降、単に金属元素とN
成分の合計量と呼ぶ場合がある)とP成分量(b)のモ
ル比(a)/(b)(但し、N成分量はアンモニウム換
算量、P成分はP25換算量)を特定の範囲とした場合
に得られ、これにより均一な皮膜形成が可能となる。さ
らに、本発明のように皮膜中に樹脂成分とP成分が存在
する場合には、これらを含む前記水溶液が濡れ性の高い
水溶液となり、これを塗布・乾燥して得られた皮膜は非
常に均一に亜鉛系めっき鋼板表面に被覆される。この結
果、金型とめっき層との凝着が抑制され、摺動性が改善
される。そして、このような作用は、水溶性および/ま
たは水分散性の樹脂成分量(c)とP成分量(d)の質
量比(c)/(d)を特定の範囲とした場合に得られ、
これにより均一な皮膜形成が可能となる。
【0035】次に、上記複合皮膜と化成処理性との関係
について説明する。
【0036】通常、化成処理工程の前処理として、プレ
ス加工で用いたプレス油を除去するための脱脂工程があ
る。本発明においてめっき層表面に形成される複合皮膜
は微量の水溶性あるいは水分散性の樹脂成分を含有して
いるために脱脂液により溶解しやすく、脱脂工程ではそ
の皮膜の大部分が除去される。この結果、化成処理工程
では皮膜がほとんど溶解除去された状態で処理がなされ
るため、めっき面に健全なリン酸塩結晶が形成される。
また、脱脂液の劣化や部位によって脱脂液の回り込みが
十分でないこと等により、脱脂工程での複合皮膜の脱膜
(皮膜の溶解除去)が十分に行われず、皮膜の一部が残
存するような場合でも、本発明の亜鉛系めっき鋼板では
良好な化成処理性を得ることができる。これは、本皮膜
は脱脂液中だけでなく化成処理液中でも十分な溶解性が
得られるためである。
【0037】ただし、水溶性あるいは水分散性の樹脂成
分を過剰に含有すると、化成処理の課程で樹脂成分が残
留し、これがリン酸塩結晶の形成を阻害するために化成
処理性が低下する。このため、複合皮膜に含有する適正
な樹脂量は、樹脂成分量(c)とリン系酸化物中のP成
分量(d)の質量比(c)/(d)が、必要有効量とし
て0.002以上必要であり、化成処理性の観点から
1.8以下とすることが好適である。
【0038】なお、上記複合皮膜には、不可避的にめっ
き層から取り込まれる亜鉛が存在する。この亜鉛の存在
量は極力少ない方が望ましいが、本発明の複合皮膜は金
属元素あるいはN成分とP成分とが特定の比率で存在す
ることにより、脱脂液あるいは化成処理液において溶解
性に優れた皮膜となるため、皮膜中に多少の亜鉛が含ま
れていても優れた化成処理性、すなわち脱膜性を示す。
【0039】以下、本発明における複合皮膜の成分とそ
の限定理由について詳細に説明する。
【0040】複合皮膜には、P成分(例えば、リン系酸
化物の形態で含まれるP成分)とともに、皮膜に溶解性
を与えるための構成成分としてMg,Al,Ca,T
i,Fe,Co,Cu,Mo,Ni,Mnの中から選ば
れる1種又は2種以上の金属元素及び/又はN成分が含
有される。これら金属元素成分の存在形態には特に制限
はなく、金属、酸化物、リン酸成分との化合物などのい
ずれの形態で存在していてもよい。また、N成分とP成
分の皮膜中での存在形態に特に制限はなく、窒素系酸化
物(例えば、リン酸アンモニウム、窒素酸化物)、リン
系酸化物、窒素・リン系化合物(ZnNH4PO4)など
のいずれの形態で存在していてもよい。
【0041】複合皮膜中での前記金属元素とN成分の合
計量(a)とP成分量(b)のモル比(a)/(b)
(但し、N成分量はアンモニウム換算量、P成分量はP
25換算)は0.2超え6以下とする。このモル比
(a)/(b)が0.2以下では、P成分の比率が過剰
であるため皮膜が不均一となりやすく、プレス成形性が
劣る。さらに、複合皮膜が化成処理時に脱離し難くなる
ため、化成処理性も低下する。一方、モル比(a)/
(b)が6を超えると金属元素成分とN成分の合計量が
過剰となるため、同様に皮膜の均一性が低下し、薄膜の
部分と厚膜の部分が共存しやすくなる。このため自動車
製造過程での塗装前処理である化成処理時に処理液との
反応が膜厚の厚い部分で阻害され、この結果、健全なリ
ン酸塩結晶が生じにくくなり、化成処理不良が生じる。
また、皮膜の均一性が低下するためプレス成形性の改善
効果も小さい。さらに、皮膜の安定性が低いために、湿
潤環境において保管された場合や結露環境におかれた場
合などに、皮膜の一部が溶解し電解質として作用し、亜
鉛系めっき鋼板の腐食をもたらす。
【0042】なお、さらに好ましい金属元素とN成分の
合計量(a)とP成分量(b)のモル比(a)/(b)
(但し、N成分量はアンモニウム換算量、P成分量はP
25換算)は、0.2超え、1未満である。モル比
(a)/(b)が1以上となると、金属元素成分とリン
酸成分とが反応して結晶質になり易いため均一な皮膜形
成に不利となり、プレス成形性が若干劣る。
【0043】次に接着剤適合性について述べる。
【0044】一般に自動車や家電用途では溶接部の補
強、耐食性の強化などの目的で接着剤による鋼板同士の
接合が行われる。この際、潤滑特性を高めるために付与
された皮膜の存在が接着接合性を著しく低下させること
がある。従来のリン酸含有潤滑性皮膜では特にこの傾向
が高く、その改善が望まれていた。
【0045】上記の接着剤としては工業的には様々なも
のが使用されており、自動車や家電分野では主にエポキ
シ系、塩ビ系、ゴム系の接着剤が使用されている。エポ
キシ系の接着剤の場合、接着剤自身の濡れ性が良好で鋼
板表面の間隙に良く回り込み、かつエポキシ樹脂自体の
強度が大きいために表面状態の影響は小さい。しかし、
塩ビ系接着剤やゴム系接着剤の場合、摺動性改善の目的
で付与された皮膜との相性が必ずしも良くないため、接
着性が良好でない場合がある。そこで、この様な接着材
に有効な成分を検討した結果、以下のことが明らかとな
った。
【0046】塩ビ系接着剤の場合は、表面電位が低い金
属を用いることによって、接着面に存在するこれら金属
成分と接着剤との結合力が向上し、接着強度が上昇する
ことを知見した。表面電位が低い金属としてはPt、A
u、Ag、Fe、Ti等が挙げられるが、その中で特に
Feが有効であることが判明した。
【0047】したがって、以上のような効果を期待する
場合には、複合皮膜中に金属元素として少なくともFe
を含有させ、より好ましくは金属元素としてFeを単独
で含有させることが望ましい。皮膜中におけるFeの存
在形態には特に制限はなく、金属、酸化物、リン酸成分
との化合物などのいずれの状態で存在していてもよい。
【0048】一方、ゴム系接着剤の接着剤適合性を高め
る場合は、樹脂がCOOH基を有することが特に有効で
ある。COOH基を有する樹脂系の場合、特に複合皮膜
成分と水溶液中で共存しても、液がゲル化せず、溶液が
安定に存在する。さらに、樹脂に含まれるCOOH基
は、溶液の安定性のみならず接着剤―鋼板表面の結合力
向上にも寄与するものと考えられる。また、COOH基
を有しない樹脂についても、接着剤と相溶する水溶性及
び/又は水分散性の樹脂は、接着剤適合性を高めるのに
有効である。このような樹脂の中でも特にアクリル樹
脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂を樹脂骨格にもつ樹脂
が有効である。その理由は明らかでないが、樹脂中の成
分が接着剤中の成分に近い樹脂から構成されるため、接
着剤成分との相溶性が優れており、皮膜表層において皮
膜と接着剤の双方に対して高い結合性を有する樹脂成分
が、接着剤成分と相溶するか、あるいは化学的に結合す
ることによって接着強度が向上するものと考えられる。
樹脂の存在状態については特に特定されるものではな
く、かならずしも膜として存在していなくても良い。分
布状態としては、表面濃化、島状分布、皮膜中に均一分
散などのいずれの状態であっても良いが、化成処理性に
対して影響を及ぼさないという点から、表面近傍にのみ
島状に分散しているものが特に好ましい。
【0049】水溶性又は水分散性樹脂としては、エポキ
シ系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル−エチレン共重合
体、アクリル−スチレン共重合体、アルキド樹脂、ポリ
エステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリブタジエン系樹
脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。さらに、これ
ら樹脂に加えて、水溶性エポキシ樹脂、水溶性フェノー
ル樹脂、水溶性ブタジエンラバー(SBR,NBR,M
BR)が挙げられる。
【0050】本発明の亜鉛系めっき鋼板において、めっ
き層表面に形成される複合皮膜の付着量は、P付着量と
して5〜300mg/m2、好ましくは10〜150m
g/m2、特に好ましくは30〜120mg/m2とす
る。皮膜付着量が少ないとプレス成形性の向上効果が十
分得られず、一方、皮膜付着量が多過ぎると化成処理性
が低下する。
【0051】また、本発明の複合皮膜は、皮膜の脱膜性
及び均一被覆性が確保されていれば、結晶質、アモルフ
ァス状のいずれの皮膜状態であってもよい。ただし、好
ましくは、アモルファス状の皮膜を主体として、ごく一
部が結晶質である形態がより好ましい。また、皮膜中に
結晶成分に付随する結晶水としてのH2O成分、アモル
ファス状皮膜に混在するH2O成分などが混在していて
もよい。次に、上述した複合皮膜を有する亜鉛系めっき
鋼板の製造方法について説明する。
【0052】本発明の亜鉛系めっき鋼板が有する複合皮
膜は、例えば、上記金属元素のカチオン成分とリン酸成
分を含有する水溶液をめっき層表面に塗布した後、乾燥
させることにより形成することができる。この場合、皮
膜成分の比率に合わせて水溶液のカチオン成分とリン酸
成分の比率を適宜変えることが可能である。
【0053】したがって本発明の亜鉛系めっき鋼板の製
造方法では、実質的にMg,Al,Ca,Ti,Fe,
Co,Cu,Mo,Ni,Mnの中から選ばれる1種ま
たは2種以上の金属イオン及び/又はNH4 +からなるカ
チオン成分とアニオン成分であるP成分とを含み、前記
カチオン成分の合計(α)とP成分(β)を特定の比率
(モル濃度比(α)/(β)で0.2超え6以下)で存
在させた水溶液を亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面に塗
布し、水洗することなく乾燥させて皮膜を形成する。こ
の結果、亜鉛系めっき皮膜の表面には特定の金属元素及
び/又はN成分とP成分を含有する硬質且つ高融点の薄
い皮膜が緻密且つ均一に形成される。
【0054】通常、亜鉛系めっき鋼板の表面にリン酸塩
皮膜等のようなリンを含有する皮膜を形成するには、め
っき鋼板をリン酸イオンを含有する水溶液に浸漬させる
などの処理が行われる。一般にアルカリ金属以外のカチ
オンを含有するリン酸塩は、中性又はアルカリ性領域で
不溶性であるため水溶液は酸性となる。また、これらの
カチオン成分とリン酸の混合水溶液は沈殿しやすく、通
常は、カチオン成分に対し過剰にリン酸イオンが存在す
る場合に水溶液として安定に存在できる。このようなリ
ン酸過剰の水溶液ではめっき層の亜鉛はエッチングされ
やすく、溶出した亜鉛はリン酸イオンと反応し、結晶を
形成するか或いは界面に亜鉛を含む反応層を形成しやす
い。先に述べたように皮膜に結晶質の成分が多く存在す
ると、プレス成形の際にこれら結晶成分が剥離し、これ
が金型との間に堆積して摺動性を阻害する結果、型カジ
リなどを生じやすい。また、亜鉛と皮膜が反応層を形成
するため化成処理過程での皮膜の脱離が生じ難く、化成
処理性が十分でない。
【0055】これに対して本発明で用いる皮膜形成用の
水溶液では、カチオン成分とP成分の比率を規定し、カ
チオン成分に対するリン酸イオン濃度を低く抑えること
により処理液の反応性を抑え、めっき層中の亜鉛のエッ
チングを極力抑制している点に特徴がある。この結果、
本発明の処理を行うことにより、化成処理性を低下させ
ることなく、優れたプレス成形性を示す亜鉛系めっき鋼
板を得ることができる。
【0056】以下、さらに本発明の詳細について説明す
る。
【0057】通常、化成処理工程の前処理として、プレ
ス油を除去するための脱脂工程がある。本発明で行われ
る処理により形成される皮膜の場合、亜鉛との反応層の
形成が抑制され、亜鉛系めっき層との界面がアルカリ性
の脱脂液により溶解しやすいため、脱脂工程で皮膜の大
部分が除去される。この結果、化成処理工程において皮
膜がほぼ完全に溶解することができ、健全なリン酸塩結
晶が形成される。また、このような作用効果により、脱
脂液の劣化や部位によって脱脂液が十分に回り込まない
などの原因で脱脂工程での脱膜性が十分でない場合で
も、本発明により得られる亜鉛系めっき鋼板は良好な化
成処理性が得られる。
【0058】本発明により得られる亜鉛系めっき鋼板が
良好な化成処理性を示すのは、主に以下のような理由に
よるものと考えられる。 (1)後述するようにめっき層表面に緻密且つ均一な皮
膜が形成されるため、極く薄い皮膜であっても十分なプ
レス成形性が実現でき、このため皮膜が化成処理液との
反応を阻害するような厚みとならない。 (2)亜鉛との反応層の形成が抑制されるため、化成処
理液での皮膜の脱離が生じ易い。
【0059】本発明では皮膜形成用の水溶液中のカチオ
ン成分(α)(実質的にMg,Al,Ca,Ti,F
e,Co,Cu,Mo,Ni,Mnの中から選ばれる1
種または2種以上の金属イオン及び/又はNH4 +からな
るカチオン成分)とP成分(β)のモル濃度比を特定の
範囲とすることにより、均一且つ緻密な薄い皮膜を形成
することができる。水溶液中のカチオン成分(α)とP
成分(β)の比率が皮膜形態に影響を及ぼす理由は必ず
しも明らかでないが、処理液のエッチング性と処理液の
溶解性がそれぞれの成分の比率により変化するため、こ
れらが皮膜形態に変化をもたらすものと推定される。す
なわち、P成分(β)が過剰の場合には処理液のエッチ
ング性が高くなり、亜鉛と反応した結晶質成分が形成さ
れやすく、薄膜というよりは塊状の結晶質成分の集合体
のような皮膜形態となる。一方、カチオン成分(α)が
過剰の場合には、処理液の溶解性が高くなるため、乾燥
過程で皮膜がゲル化しにくく、均一な皮膜となりにく
い。
【0060】このため、実質的にMg,Al,Ca,T
i,Fe,Co,Cu,Mo,Ni,Mnの中から選ば
れる1種または2種以上の金属イオン及び/又はNH4 +
からなるカチオン成分(α)とP成分(β)の比率は、
モル濃度比(α)/(β)(但し、P成分はP25換算
モル濃度)で0.2超え6以下とする。モル濃度比
(α)/(β)が0.2以下ではリン酸イオンが過剰と
なり、亜鉛とリン酸との結晶成分が形成され易く、優れ
た摺動特性が得られにくい。さらに、皮膜が化成処理時
に脱離し難くなるため、化成処理性が低下する。また、
モル濃度比(α)/(β)が6を超えると皮膜が不均一
に形成されるため、薄膜の部分と厚膜の部分が共存しや
すくなる。このため自動車製造過程での塗装前処理であ
る化成処理時に処理液との反応が膜厚の厚い部分で阻害
され、この結果、健全なリン酸塩結晶が生じにくくな
り、化成処理不良が生じる。また、皮膜の均一性が低下
するためプレス成形性の改善効果も小さい。さらに、皮
膜の溶解性が高くなるため、湿潤環境において保管され
た場合や結露環境におかれた場合などに、皮膜の一部が
溶解して電解質として作用し、亜鉛系めっき鋼板の腐食
をもたらす。また、さらに好ましいモル濃度比(α)/
(β)は0.2超え1未満である。
【0061】また、皮膜形成用の水溶液中に金属イオン
としてFeを添加した場合には、化成処理におけるリン
酸塩結晶の成長が殆ど阻害されないため、特に優れた化
成処理性が得られる。その理由は必ずしも明らかではな
いが、水溶液中にFeを添加した場合には化成処理時に
皮膜が残留している状態でも化成処理結晶が生成する。
脱脂工程におけるリン系酸化物皮膜の脱膜性はアルカリ
脱脂液の状態や脱脂条件により大きく異なり、極端に劣
化した脱脂液やスプレー処理のような強い脱脂が行われ
ない条件下では、脱膜が十分に行われない可能性も高
い。このような場合において、Feを添加した水溶液で
処理を行うことが化成処理性に対して有効に作用する。
【0062】また、一般に自動車や家電用途では溶接部
の補強、耐食性の強化などの目的で接着剤による鋼板同
士の接合が行われる。この際、潤滑特性を高めるために
付与された皮膜の存在が接着接合性を著しく低下させる
ことがある。従来のリン酸含有潤滑性皮膜では特にこの
傾向が強く、その改善が望まれていた。このような課題
に対して、上記水溶液中に金属イオンとしてFeを添加
することにより接着剤適合性が著しく改善されることが
判った。
【0063】したがって、以上のような効果を期待する
場合には、水溶液中に金属イオンとして少なくともFe
を添加することが望ましい。
【0064】なお、複合皮膜が金属元素成分としてFe
を含有する場合の、P成分(β)に対するFeイオン
(ε)のより好ましいモル濃度比(ε)/(β)は、
0.2超え、0.95未満である。この比率が0.2以
下の場合には、P成分が過剰となり、亜鉛とリン酸成分
との結晶が形成され、リン系酸化物皮膜が不均一とな
る。このため、パンチ面のような、面圧が低く、摺動距
離が長くなるような条件での摺動性が特に低下し、プレ
ス成形性が良好でない。さらにリン系酸化物皮膜のアル
カリ脱脂液と化成処理液における溶解性が十分に得られ
なくなる。このため、脱脂により皮膜が全く除去され
ず、直接化成処理されるような条件では特に化成処理結
晶の成長が阻害され、化成処理性に劣る。なお、リン酸
成分に対するFeイオンの比率が0.95以上となる場
合、リン系酸化物皮膜の均一性が低下する上に、処理液
の安定性が低下するなどの弊害が生じる。
【0065】皮膜形成用の水溶液中のリン酸イオンは、
水溶液のpHや添加するリン酸の重合度、酸化状態等に
よりその存在形態を変化させるため、リン酸イオンの存
在形態については特に規定しない。したがって、オルト
リン酸、或いはピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポ
リリン酸、ヘキサメタリン酸等の縮合リン酸、亜リン
酸、次亜リン酸等の任意の形態で含まれるリン酸イオン
であってよい。
【0066】水溶液に添加されるリン酸イオンは、リン
酸アンモニウム塩や、リン酸、ピロリン酸、トリポリリ
ン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、亜リン
酸、次亜リン酸或いはこれらのアンモニウム塩等の形で
添加することができる。
【0067】本発明で用いる皮膜形成用の水溶液中に
は、さらに水溶性及び/又は水分散性の樹脂を含有する
点に特徴がある。これにより皮膜形成用水溶液に添加さ
れた樹脂成分が有効に作用し、接着剤適合性が著しく改
善される。
【0068】複合皮膜中に樹脂成分を含有させるには、
塗布溶液中に水溶性あるいは水分散性の樹脂をあらかじ
め共存させるとよい。形成される皮膜中の樹脂量は、水
溶液中の樹脂濃度を適宜変えることにより調整すること
ができる。
【0069】水溶液に添加する樹脂成分量(γ)とP成
分量(δ)の質量比(γ)/(δ)が0.002〜1.
8の範囲が望ましい。0.002未満では効果が十分で
なく、1.8を超えると樹脂成分が過多となり、脱脂ま
たは化成処理工程において皮膜が強固に残存するため
に、化成処理皮膜が生成しなくなる。特に好ましい範囲
は、質量比(γ)/(δ)が0.002〜1.0であ
る。
【0070】なお、本発明で用いる皮膜形成用の水溶液
中に含まれる水溶性及び/又は水分散性の樹脂は、CO
OH基を有するか、あるいはアクリル樹脂、ウレタン樹
脂、エポキシ樹脂の中から選ばれる1種または2種以上
樹脂骨格に有することが望ましく、これらが有効に作用
することにより、水溶液の亜鉛系めっき皮膜に対する濡
れ性が改善され、めっき層への均一な皮膜形成が容易に
なる。また、水分散性樹脂にソープフリーのエマルジョ
ンを用いた場合、特に溶液の安定性が優れる。ここで、
エマルジョンとは液体中に他の物質が微粒となって分散
しているものをさす。アクリル樹脂を水溶化する時は、
樹脂の中にOH基やCOOH基などの極性基を導入した
水溶性アクリル樹脂を用いる場合と、乳化重合において
界面活性剤などの乳化剤を添加して分散したアクリル樹
脂に親水性を持たせるエマルジョン・アクリル樹脂を用
いる場合がある。ソープフリーのエマルジョンとは、構
造中に不飽和基と親水基を有する水に可溶なモノマーを
用いて重合する時に、重合終了時点で乳化剤が生成粒子
内部に組み込まれるもの、または、界面活性剤の代わり
に水溶性樹脂を用いたものなどをさす。そして、ソープ
フリーのエマルジョンを用いる場合、界面活性剤などを
用いないため変質の影響が少なく、リン酸溶液との安定
性に優れるものと考えられる。
【0071】本発明で使用する皮膜形成用の水溶液は、
通常、上述した添加成分を脱イオン水に溶解して作成す
る。
【0072】水溶液を塗布する亜鉛系めっき鋼板は、塗
布処理の前に活性化処理等の処理を施してもよい。活性
化処理としては、めっき鋼板をアルカリ性水溶液や酸性
水溶液中に浸漬したり、これら水溶液をスプレー処理す
ることなどにより行われる。
【0073】本発明において亜鉛系めっき鋼板に皮膜形
成用の水溶液を塗布する方法としては、塗布法、浸漬
法、スプレー法などの任意の方法を採用できる。塗布法
としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方
式等)、スクイズコーター、ダイコーター、バーコータ
ーなどのいずれの手段を用いても良い。また、スクイズ
コーター等による塗布処理、浸漬処理又はスプレー処理
の後にエアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調
整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能であ
る。
【0074】水溶液の塗布後、水洗することなく加熱乾
燥を行う。加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高
周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用いることができる。加
熱処理は到達板温で50〜200℃、好ましくは50〜
140℃の範囲で行うことが望ましい。加熱温度が50
℃未満では皮膜中の水分が多量に残存し、シミ状の欠陥
を発生し易い。また、加熱温度が140℃を超えると非
経済的である。
【0075】皮膜形成用の水溶液の温度は特に規定され
ないが、20〜70℃が好適である。水溶液の温度が2
0℃未満では液の安定性が低下する。一方、水溶液の温
度が70℃を超えると、水溶液を高温に保持するための
設備や熱エネルギーを要し、製造コストの上昇を招き不
経済である。
【0076】
【実施例】本実施例では以下に示す各種亜鉛系めっき鋼
板を用いた。 (1)GA:合金化溶融亜鉛めっき鋼板(10mass%F
e、残部Zn)であり、めっき付着量は両面ともに45
g/m2である。 (2)GI:溶融亜鉛めっき鋼板であり、めっき付着量
は両面ともに90g/m2である。 (3)EG:電気亜鉛めっき鋼板であり、めっき付着量
は両面ともに50g/m2である。
【0077】以上の亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面に
対し、以下に示すような処理を施した。なお、処理する
亜鉛系めっき鋼板は、トルエンを用いた溶剤脱脂によ
り、プレス油を除去したものを使用した。
【0078】処理液は、表1及び表2に示した組成とな
るように、各種カチオン成分を含む酸化物又は水酸化
物とオルトリン酸を所定の比率で脱イオン水に混合して
調整したリン酸塩水溶液、各種カチオン成分を含む金
属塩とオルトリン酸を所定の比率で脱イオン水に混合し
て調整したリン酸塩水溶液、を用いた。さらに、皮膜中
に樹脂成分を共存させるために、処理液中に水溶性又は
水分散性の樹脂を添加した。水溶性または水分散性の樹
脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹
脂を適宜添加した。
【0079】ここで、各処理液の安定性を下記により評
価した。
【0080】内部が観察できる容量100ccの密閉式
の透明容器中に処理液(塗布液)を充填し、40℃の恒
温槽に静置した。一日一回溶液を観察し、沈殿が発生す
るのに要する日数を下記により評価した。 ◎:塗布液を建浴してから30日経過しても沈殿が発生
しない。 ○:塗布液を建浴してから7日後に沈殿が発生する。 △:塗布液を建浴してから3日後に沈殿が発生する。 ×:塗布液を建浴してから1日後に沈殿が発生する。 表1及び表2に各処理液の安定性を示すが、界面活性剤
を添加したアクリル樹脂添加の場合には安定性がやや劣
っていたが、その他は優れた溶液安定性を示した。
【0081】次に、表1及び表2に示した処理液(室
温)を、室温にて上記亜鉛系めっき鋼板の表面にロール
コーター又はバーコーターにより塗布し、加熱乾燥して
皮膜を形成させた。形成される皮膜の付着量は、組成物
の濃度及び塗布条件(ロールの圧下力、回転速度、バー
コーターの番手等)により適宜調整した。
【0082】また、皮膜の付着量の測定は以下のように
して行った。まず、皮膜付着量が異なる亜鉛系めっき鋼
板について、めっき層を皮膜ごと希塩酸により溶解剥離
し、この溶解液中のP濃度をICP分析により定量し
た。上記剥離溶解を行うめっき鋼板箇所(2箇所)の中
央部におけるPの蛍光X線強度を予め測定しておき、こ
のPの蛍光X線強度とICPで得られた上記P濃度との
関係式を求めた。そして、各供試材のPの蛍光X線強度
を測定し、この測定値から上記関係式に基づき各供試材
の皮膜の付着量を求めた。
【0083】また、複合皮膜に存在する金属元素量とP
成分量(P25換算量)は以下のようにして求めた。ま
ず、複合皮膜をめっき皮膜とともに塩酸水溶液に溶解し
た後、この溶解した皮膜構成元素を定量した。一方、複
合皮膜形成前の亜鉛系めっき鋼板のめっき層を希塩酸で
溶解して同じく皮膜構成元素を定量し、これを先に述べ
た複合皮膜をめっき層ごと溶解して得られた金属元素成
分量から差し引き、これを皮膜構成元素量とした。ま
た、複合皮膜に存在するN成分量(アンモニウム換算
量)は以下のようにして求めた。まず、複合皮膜をめっ
き皮膜とともに塩酸水溶液に溶解した後、溶解液中のア
ンモニウムを蒸留により遊離してアルカリ性水溶液に吸
収し、この液中のアンモニウム濃度をインドフェノール
青吸光光度法により定量し、皮膜中のNH4量を特定し
た。得られた値は、Nのモル濃度に換算した。この際、
測定対象面積は0.06m2とした。また、複合皮膜中
の有機樹脂成分量は、皮膜成分の酸による溶解液を比色
法で定量することにより求めた。
【0084】以上のようにして得られた亜鉛系めっき鋼
板の性能評価は以下のようにして行った。 (1)プレス成形性 プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を
図1に示す摩擦係数測定装置により測定した。図1の摩
擦係数測定装置(正面図)は、試料台2が水平移動可能
なスライドテーブル3の上面に固定されており、この試
料台2に供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が固
定される。前記スライドテーブル3の下面には、これに
接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル
支持台5が設けられ、これを押上げた際のビード6によ
る摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するため
の第1ロードセル7が、前記スライドテーブル支持台5
に取付けられている。また、上記押付力を作用させた状
態で前記スライドテーブル3を水平方向へ移動させるた
めの摺動抵抗力Fを測定する第2ロードセル8が、前記
スライドテーブル3の一方の端部に取付けられている。
【0085】なお、潤滑油としては、パーカー興産
(株)製の“ノックスラスト550HN”を試料1の表
面に塗布して試験を行った。供試材とビード6との間の
摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。なお、押付
荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライド
テーブル3の水平移動速度):100cm/minとし
た。
【0086】図2は、使用したビード6の形状・寸法を
示す斜視図である。このビード6は、その下面が試料1
の表面に押しつけられた状態で摺動する。ビード6の形
状は、幅10mm、試料摺動方向での長さ69mmであ
り、試料摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面
で構成され、試料が押付けられるビード下面は幅10m
m、試料摺動方向での長さ60mmの平面形状を有して
いる。 (2)化成処理性 プレス成形後の試料の状態を想定して、各供試材に潤滑
油(パーカー興産(株)製の“ノックスラスト550H
N”)を塗布し、その後、「下記の条件による脱脂→
水洗→乾燥→下記の条件による表面調整→下記の条
件による化成処理→水洗→乾燥」という工程で化成処理
を施した。 脱脂:日本パーカライジング(株)製の“FC−L4
460”、スプレー時間:120秒(スプレー圧:1k
gf/cm2)、脱脂液温度:43℃ 表面調整:日本パーカライジング(株)製の“PL−
Z”、薬液濃度:1.5g/l、浸漬時間:20秒、処
理液温度:室温 化成処理:日本パーカライジング(株)製の化成処理
液“PB−L3080”、浸漬時間:120秒、処理液
温度:43℃ それぞれ上記の化成処理を行った後、化成処理後のリン
酸塩結晶形態をSEMにて観察し、下記により評価し
た。 ◎:平均のリン酸塩結晶サイズが8μm未満であり、ス
ケが無く緻密に形成されている。 ○:平均のリン酸塩結晶サイズが8μm以上12μm未
満であり、スケが無く緻密に形成されている。 ○−:平均のリン酸塩結晶サイズが12μm以上である
が、スケが認められない。 △:平均のリン酸塩結晶サイズが12μm未満で、且つ
スケも無く緻密に形成されている部分と、リン酸塩結晶
が全く形成されていない部分とが混在している。 ×:平均のリン酸塩結晶が粗大化し(結晶サイズが12
μm以上)、スケが多く認められる。或いはリン酸塩結
晶が全く成長していない。 (3)接着接合性 [評価1]25mm×200mmのサンプルの防錆油を
溶剤脱脂により除去した後、洗浄油(スギムラ化学
(株)製の“プレトンR352L”)を塗布した。この
サンプルを2枚一組とし、塩ビ系のヘミング用接着剤を
25mm×140mmの範囲に塗布し(サンプルの端か
ら50mmは接着剤を塗布せず)、0.15mm厚のス
ペーサーを介して貼り合わせ、図3(a)に示す試験片
を作成した。これを160℃×10分で乾燥させた後、
24〜72時間の間、常温にて放置した。 [評価2]25mm×100mmのサンプルの防錆油を
溶剤脱脂により除去した後、洗浄油(スギムラ化学
(株)製の“プレトンR352L”)を塗布した。この
サンプルを2枚一組とし、エポキシ系のヘミング用接着
剤そしてゴム系のスポットシーラー用接着剤を25mm
×25mmの範囲に塗布し、1mm厚のスペーサーを介
して貼り合わせ、図4に示す試験片を作成した。これを
180℃×20分で乾燥させた後、24〜72時間の間、
常温にて放置した。
【0087】上記[評価1]及び[評価2]で作成した
試験片を、試験片が引張り後T型接着試験片(図3
(b))もしくは剪断接着試験片(図4)となるように
引張り試験機において引っ張り、引っ張り時の平均強度
(T型接着試験片)または最大強度(剪断接着試験片)
を測定した。T型接着試験とは、接着材で接着された2
つの材料を、接着面に垂直な方向に徐々に剥離するのに
必要な力を測定するものである。剪断接着試験とは接着
剤で接着された2つの材料を、接着面と同一平面に引張
り、接着剤の剪断強度を測定するものである。なお、界
面の剥離形態については、以下のように評価した。 ◎:剥離面のすべてが凝集剥離である。 ○:剥離面の70%以上が凝集破壊で、残部が界面剥離
である。 ○−:剥離面の50%以上が凝集破壊で、残部が界面剥
離である。 △:剥離面の30%以上が凝集破壊で、残部が界面剥離
である。 ×:剥離面のすべてが界面剥離である。
【0088】表3〜6に各供試材の処理条件と上記性能
評価の結果を示すが、比較例に較べて本発明例は接着性
に優れ、且つプレス成形性と化成処理性が同等以上であ
り、これらの性能が両立している。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【発明の効果】以上述べたように本発明の亜鉛系めっき
鋼板は優れたプレス成形性、化成処理性及び接着性が得
られる。
【0096】また、本発明の亜鉛系めっき鋼板の製造方
法によれば、プレス成形性、化成処理性及び接着性がと
もに優れた亜鉛系めっき鋼板を安定して製造することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した摩擦係数測定装置を示す正面
図である。
【図2】図1の装置を構成するビードの形状・寸法を示
す斜視図である。
【図3】T型引張試験片の形状・寸法を示す斜視図であ
る。
【図4】剪断引張試験片の形状・寸法を示す平面図及び
正面図である。
【符号の説明】
1 摩擦係数測定用試料 2 試料台 3 スライドテーブル 4 ローラ 5 スライドテーブル支持台 6 ビード 7 第1ロードセル 8 第2ロードセル 9 レール 10 供試体 11 スペーサー 12 接着剤 13 接着試験用試験体 P 引張荷重 F 摺動抵抗力
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉本 芳春 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 稲垣 淳一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K026 AA02 AA07 AA11 AA22 BA03 BB06 BB08 BB09 CA16 CA24 CA25 CA26 CA39 DA02 DA03 DA06 DA11 EA08 4K044 AA02 AB02 BA01 BA02 BA04 BA06 BA10 BA12 BA19 BA21 BB03 BB04 BB11 BC02 BC03 BC05 CA11 CA13 CA16 CA18

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面に、皮
    膜構成成分として、Mg,Al,Ca,Ti,Fe,C
    o,Cu,Mo,Ni,Mnの中から選ばれる1種また
    は2種以上の金属元素および/またはN成分と、水溶性
    樹脂および/または水分散性樹脂と、P成分とを含み、
    前記金属元素とN成分の合計量(a)とP成分量(b)
    のモル比(a)/(b)(但し、N成分量はアンモニウ
    ム換算量、P成分量はP25換算量)が0.2超え6以
    下であり、前記樹脂成分量(c)とP成分量(d)の質
    量比(c)/(d)(但し、P成分量はP25換算量)
    が0.002〜1.8であり、且つ皮膜付着量がP付着
    量として5〜300mg/m2である複合皮膜を形成し
    たことを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 複合皮膜が、金属元素として少なくとも
    Feを含有することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛
    系めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 複合皮膜中に含まれる水溶性樹脂および
    /または水分散性樹脂が少なくともCOOH基を有する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の亜鉛系めっき
    鋼板。
  4. 【請求項4】 複合皮膜中に含まれる水溶性樹脂および
    /または水分散性樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン樹
    脂、エポキシ樹脂の中から選ばれる1種又は2種以上を
    樹脂骨格に有することを特徴とする請求項1乃至3のい
    ずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板。
  5. 【請求項5】 複合皮膜中に含まれる水溶性樹脂および
    /または水分散性樹脂がアクリル樹脂を樹脂骨格に有す
    ることを特徴とする請求項4に記載の亜鉛系めっき鋼
    板。
  6. 【請求項6】 実質的にMg,Al,Ca,Ti,F
    e,Co,Cu,Mo,Ni,Mnの中から選ばれる1
    種または2種以上の金属イオンおよび/またはNH4 +
    らなるカチオン成分と、水溶性樹脂および/または水分
    散性樹脂と、P成分とを含有し、前記カチオン成分の合
    計(α)とP成分(β)のモル濃度比(α)/(β)
    (但し、P成分はP25換算モル濃度)が0.2超え6
    以下であり、前記樹脂成分(γ)とP成分(δ)の質量
    比(γ)/(δ)(但し、P成分はP25換算モル濃
    度)が0.002〜1.8である水溶液を、亜鉛系めっ
    き鋼板のめっき層表面に塗布し、引き続き水洗すること
    なく乾燥して皮膜を形成することを特徴とする亜鉛系め
    っき鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 めっき層表面に塗布される水溶液が、カ
    チオン成分として少なくともFeを含有することを特徴
    とする請求項6に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】 めっき層表面に塗布される水溶液に含ま
    れるFe成分が、Fe(ε)とP成分(β)のモル濃度
    比(ε)/(β)(但し、P成分はP25換算モル濃
    度)が0.2超え0.95未満であることを特徴とする
    請求項7に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  9. 【請求項9】 めっき層表面に塗布される水溶液に含ま
    れる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂が、少なく
    ともCOOH基を有することを特徴とする請求項6乃至
    8のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  10. 【請求項10】 めっき層表面に塗布される水溶液に含
    まれる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂が、アク
    リル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の中から選ばれ
    る1種又は2種以上を樹脂骨格に有することを特徴とす
    る請求項6乃至9のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板
    の製造方法。
  11. 【請求項11】 めっき層表面に塗布される水溶液が、
    少なくとも水分散性樹脂を含有し、該水分散性樹脂がア
    クリルを樹脂骨格に有することを特徴とする請求項6乃
    至10のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方
    法。
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