JP2003253399A - 高強度ステンレス鋼極細線 - Google Patents
高強度ステンレス鋼極細線Info
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Abstract
うるハイメッシュ用の高強度ステンレス鋼極細線、さら
に詳しくは、強度特性を調整しハイメッシュ製品に織成
加工する際の作業安定性に優れ、織目ずれなどを抑制し
うる高強度ステンレス鋼極細線を提供する。 【解決手段】 線径1〜50μm、耐力1800MPa
以上で、かつその引張試験での破断までの破断伸び
(%)をAとし、この破断ポイントを通る荷重水平線a
と、弾性域内での描線bの延長線cとが交差する交点d
までの降伏伸び(%)をBとするとき、{(A−B)/
A}×100で求められる伸び比率Xが10〜60%の
範囲にあることを特徴とする。
Description
刷、高精度濾過などに用いうるハイメッシュ用の高強度
ステンレス鋼極細線、さらに詳しくは、強度特性を調整
しハイメッシュ製品に織成加工する際の作業安定性に優
れ、織目ずれなどを抑制しうる高強度ステンレス鋼極細
線に関する。
によって成分範囲、加工方法、成形条件などを決定して
おり、これら要素の組み合わせにより用途などに応じた
製品が製造されている。例えばJISG4309では、
一般用軟質線を対象とする“ステンレス鋼線”が規定さ
れ、またJISG4314では、ばねを対象とする“ば
ね用ステンレス鋼線”が、適用鋼種及び仕上げ区分とと
もに規定されている。
精密フィルター、プリント印刷用などのハイメッシュ用
の極細線があり、またこの用途のステンレス鋼極細線の
改善のために、例えば、極細線への伸線性を高める為に
原材料ロットの溶解をダブルメルト法によって非金属介
在物の発生を抑える技術、特開昭59−93856号公
報が提案するニッケル当量を所定範囲に調整することに
より高強度、高伸び特性を兼備した極細線とすることの
技術、特開平4−4392号公報が提案する、最終熱処
理条件の調整によって材料結晶粒を微細化し高強度にす
ることの技術とともに、本出願人も、特願2000−2
559017号においてN:0.15〜0.3%を含み
かつ他の各元素の成分バランスを調整することにより高
強度とする技術を提案している。
うな種々な改善があるとはいえ、線径が50μm以下と
いうハイメッシュ用のステンレス鋼極細線は、製織加工
中での線の張力ムラ、僅かな引掛かり等によって断線
し、あるいは線癖部分がメッシュ製品の平面性にムラを
発生させることなどを防ぐためにさらに高強度であるこ
とが望まれており、もし所望の強度を達成しえないとき
には、得られたメッシュ製品においても織目が不揃いな
ものとなりやすく、製品特性として十分なものとは言い
難い。
刷などの印刷用膜材として使用する場合、装着当初は緩
み無く張設したとしても、印刷回数とともに徐々に張り
がなくなり、やがては印刷精度に劣るものとなる。これ
は、強度は通常、材料の全伸びに対する弾性範囲と相関
があり、製織時の張力、メッシュ使用中での過度の張力
などによるわずかな変形によっても徐々に塑性変形を起
こすことによるものと考えられる。そして一端このよう
な張りを無くする現象が発生したメッシュは、交換せざ
るを得ず、機械停止など大きな損失の一因となってお
り、極細線としての寿命アップが強く求められている。
特にこのような傾向は30μm以下の超極細線において
顕著である。
に、高強度であることが望まれるが、その引張特性が例
えば、図2に示すように、応力(荷重)と伸びとの関係
がほぼ直線状態になるときには、極細線を塑性変形させ
難く、したがってハイメッシュのように織目間隔を狭く
しようとしても線自体の剛性により、スプリングバック
によって直線性を維持する傾向が大きいものとなる結
果、波付け変形させにくく、線同士の配置間隔も広いも
のとなり、微小メッシュの織成体をうることは困難とな
る。
ありながら、織成が容易であって、メッシュを微小化し
うる高強度ステンレス鋼極細線の提供を目的としてい
る。
は、線径1〜50μm、耐力1800MPa以上、かつ
引張試験での破断までの破断伸び(%)をAとし、この
破断ポイントを通る荷重水平線aと、弾性域での描線b
の延長線cとが交差する交点dまでの降伏伸び(%)を
Bとするとき、{(A−B)/A}×100で求められ
る伸び比率Xが10〜60%の範囲にあることを特徴と
する高強度ステンレス鋼極細線である。
15%、Si≦1.0%、Mn≦2.5%、Ni:7.
0〜11.0%、Cr:17.0〜20.0%に、N:
0.1〜0.5%を添加したN含有ステンレス鋼である
ことを特徴とし、請求項3に係る発明は、前記伸び比率
Xが、15〜40%の範囲であることを特徴とするとと
もに、請求項4に係る発明は、冷間伸線加工の後、温度
400〜700℃の低温熱処理が施されることを特徴と
する。
とともに説明する。なお、本明細書では、各元素の成分
量を質量(Mass)%により記載している。
径1〜50μm、耐力1800MPa以上とし、従来の
固溶化熱処理した軟質極細線に比して耐力が大きく高強
度として、メッシュ加工など強加工に耐え得る特性を具
える。なお、耐力は該極細線の引張試験において、例え
ば精密歪み計によって計測した荷重−歪線図において
0.2%歪を生じる荷重を断面積で除した応力として求
められる。
テンレス鋼極細線において、例えばメッシュ加工などに
おいて生じたわずかな張力ムラなどによって生じがちな
破断の危険性を減じる。またメッシュ製品を長期に亘っ
て安定化するには、単に引張強さだけを大きくするだけ
では不十分であるため、前記のように0.2%耐力を、
耐力1800MPa以上として、従来のステンレス鋼極
細線に比して大としている。しかし過度に大としたもの
は伸び性を減じ、メッシュ間隔を狭くできないことか
ら、その上限は3000MPa以下とする。より好まし
くは2000〜2800MPaとする。
象によって引張強さは耐力とともに上昇し、例えばSU
S304ステンレス鋼を加工率80%で冷間加工した場
合の機械的特性は、図2に示すように、引張強さが30
00MPa以上、伸びは1.5〜2.5程度の高強度特
性のものとなるが応力と歪との関係はほぼ直線となり、
その結果、耐力比(耐力/引張り強さ)は95%以上と
大きいものとなる。かかる耐力比が大きい極細線は、型
付けが困難となりメッシュ加工を困難とする。
ては、メッシュ加工に適した特性とする為に、応力−歪
線図において、伸び比率Xを10〜60%としている。
伸び比率とは、図1に示すごとく、該極細線の引張試験
における破断までの破断伸びA(%)と、この破断ポイ
ントを通る水平線aが、引張り弾性域での描線bを延長
した延長線cと交わる交点dにおける降伏伸びB(%)
とにおいて、(A−B)/A×100で求める比をい
い、この伸び比率Xを前記のように10〜60%の範囲
とする。
て、便宜上、前記荷重−歪線図における延長線cが交差
する交点dを用いることとしている。かかる値を採用す
ることにより、ほぼ比例的に増加する弾性領域での描線
b以降の変化が、仮に大きな円弧で描かれその境界を特
定し難いような特性のものであっても、前記伸び比率X
をより正確に求めることができる。
により、メッシュ加工の作業性を高める。この伸び比率
Xが10%未満では単に冷間伸線加工したものと同様に
スプリングバックが大きい極細線となり、波付け加工し
にくい。また60%を超える程大きくしたものでは、高
強度が得られない。好ましくは、15〜40%、さらに
好ましくは、20〜35%程度とする。これにより、さ
らに使用による弛みの発生を抑制しつつ織製加工を能率
化し、メッシュ製品を長期に亘って安定化する。
は、従来の極細線と同様に例えばSUS304、SUS
316、SUS316Lなど種々のオーステナイト系ス
テンレス鋼が適用できるが、好ましくは質量%でC≦
0.15%、Si≦1.0%、Mn≦2.5%、Ni:
7.0〜11.0%、Cr:17.0〜20.0%に、
N:0.1〜0.5%を添加したN含有ステンレス鋼と
するのがよい。このようにN添加したものでは、結晶粒
が微細化し、より高い耐力の極細線とすることができ、
また耐熱特性や耐食性を高めるなどの利点も有する。
は、強力なオーステナイト生成元素であり、線材の強度
向上を図る上で0.05%以上が好ましいが、反面過度
に含有させた場合には炭化物を形成して粒界腐食や孔食
などの組織的欠陥を招きやすい。こうした点から、C≦
0.15%、好ましくは0.07〜0.10とする。
れ、強力なフェライト生成元素でもある。一般にケイ素
を含有することによって引張り強さや弾性限を高めるこ
とができるが、多量の添加は線材の靭性を減少させるこ
ととなることから、その上限を1.0%としており、よ
り好ましくは0.4〜0.8%とする。
元素であって、脱硫や脱酸剤として作用するが、反面耐
食性特に耐酸化性を劣化させることがあり、その上限を
2.0%としており、より好ましくは1.3〜1.5%
%とする。
テンレス鋼の基本元素であって、オーステナイトを安定
化させるとともに耐食性を向上するが、多量の添加は強
度低下を招くことから、7.0〜11.0%、より好ま
しくは8.5〜10.0%%とする。
鋼の基本元素であって、耐酸化性や耐食性を高める上で
必要である。しかし多量の添加は機械的特性を低下させ
ることとなることから、17.0〜20.0%とする。
ト系の生成元素であって、固溶させることによって耐力
を高め、微細なチッ化物を形成して靭性を改善するとと
もに、結晶粒の微細化に有効である。こうした働きを得
る為、0.1〜0.5%、好ましくは0.15〜0.3
%とするのがよい。
のニオブ(Nb)を添加し、特に細物線材での強度増大
を図る事も有効である。これを添加する場合の分量とし
ては0.1〜0.3%とするのがよい。
(好ましくは95%以上、さらには99%以上)でのダ
イヤモンドダイスによる好ましくは連続伸線で行い、そ
の後、温度400〜700℃の低温熱処理を施す。この
ように、本発明の高強度ステンレス鋼極細線は冷間伸線
加工後に、温度400〜700℃での低温熱処理によっ
て製造することができ、温度が400℃未満の低温処理
では、大きな特性の向上は期待できず、一方700℃を
越える処理では、材料組織内にシグマ相など不安定組織
を招きやすく、耐食性を低下させるなどの危険性があ
り、より好ましくは、550〜680°とする。なお材
料の種類毎に最適条件を事前確認しておくことが好まし
い。
任意特性に調整できるものであり、その為の手段とし
て、例えばこのような熱処理温度や処理時間を調整する
ことが有効である。すなわち、例えば前記伸び比率Xが
大きい特性のものとする場合は、温度及び/又は時間を
より大きくして材料が熱影響を受けやすいものとし、逆
に、伸び比率Xを小さくする場合にあっては、例えば低
温処理や短時間で熱影響を受けにくくするなどの調整が
行われる。
は、伸線加工で得られていた高強度特性をそれほど減ず
ることなく、加工歪を除去でき、例えば伸線加工時に発
生していた線癖不良を改善し、キンクなどのない真直状
の極細線にできるものでもあることから、線状改善の為
の別工程を設ける必要はないものでもある。
線は、ステンレス鋼本来の特徴である機械的特性と耐食
性を向上させ、またN添加したステンレス鋼では、さら
にこれら機能とともに耐熱性をも改善できることから、
例えば精密濾過用フィルタやプリント印刷様のハイメッ
シュ金網用材料として有効であり、さらに、ブラシ材料
や繊維材料など種々の高強度用極細線としても有効に使
用することができる。
細線について、その一例を以下に説明する。
ス鋼線を極細用の湿式連続伸線機によって細径化し、直
径19μmの極細素線を得た。使用したステンレス鋼
は、いずれも真空溶解によって内部介在物の発生を抑え
たものであり、また伸線加工については、ダイヤモンド
ダイスにより、合計加工率98%の強加工で行ったもの
である。この為、得られた線の表面は極めて緻密で光輝
に優れたものであった。
トランド焼鈍炉(炉長1m)内を通し、熱処理温度60
0〜800℃の温度範囲を選択し、かつ速度100m/
minで低温熱処理し得た極細線の特性を表2に一覧し、
またその代表例として資料A、630℃熱処理したもの
の荷重−歪線図を図1に示す。
によって処理した極細線はいずれも耐力1800MPa
以上の高強度特性を可能にでき、またその作業性も高強
度特性であることから断線などのトラブルが軽減でき
た。また、特にNを含有する資料B、Cでは、20〜3
0%程度の強度アップが図られている。
前記試料BよりさらにNを高めた0.23%N含有ステ
ンレス鋼(304N)を線径19μmの細さに伸線加工
したものを用いた。図2は、この線の伸線加工状態での
荷重−歪曲線を示し、また、図3には従来の極細線と同
様に、温度950℃で固溶化熱処理したものの結果を示
している。
ら、伸線加工状態である図2では引張強さ3500MP
aの高強度特性となり、またそれに伴って破断伸びも若
干増加しているものの、前記式による伸び比率Xはわず
か4%と非常に小さいものである。したがって、この極
細線では、塑性領域が小さく型付け性に劣るものである
ことが予測された。
線では、破断伸びが14%、伸び比率98%と大きく増
加しているが、その引張強さは1400MPa程度に留
まり強度的に劣るものである。
す3種類の極細線により#290のハイメッシュシート
を各々製造し、さらに各メッシュ毎にスクリーン印刷を
行い、その性能評価を行った。評価項目と結果は表3に
示しており、製織加工での作業性と、印刷における寿命
特性などについて行った。
ラツキの小さいメッシュを提供でき、また、印刷などに
よっても特性低下が少なく寿命の永いものであることが
分かる。しかし、比較例品1,2については、いずれも
目のバラツキや平面性に劣り、印刷による影響を受けや
すいものであった。
線により、さらに精密な#400を織製加工した。実施
例品は特に問題なかったが比較品1の硬質系極細線では
全体厚さが増加し、織目ムラの大きいものとなった。
極細線は、耐力1800MPa以上の高強度を有しなが
らも、破断伸びに対する降伏伸びの比率を前記所定範囲
にすることによって、従来の軟質系極細線よりも高強度
で使用によっても緩みなどの発生がなく、また熱処理し
ない硬質系極細線に比して織目のバラツキを抑え、型付
けしやすいものであり、ハイメッシュ製織加工での作業
性やメッシュ寿命を向上できる。
細線の引張試験における応力−伸び曲線を例示する線図
である。
び曲線を例示する線図である。
び曲線を例示する線図である。
Claims (4)
- 【請求項1】線径1〜50μm、耐力1800MPa以
上、かつ引張試験での破断までの破断伸び(%)をAと
し、この破断ポイントを通る荷重水平線aと、弾性域で
の描線bの延長線cとが交差する交点dまでの降伏伸び
(%)をBとするとき、{(A−B)/A}×100で
求められる伸び比率Xが10〜60%の範囲にあること
を特徴とする高強度ステンレス鋼極細線。 - 【請求項2】質量%でC≦0.15%、Si≦1.0
%、Mn≦2.5%、Ni:7.0〜11.0%、C
r:17.0〜20.0%に、N:0.1〜0.5%を
添加したN含有ステンレス鋼であることを特徴とする請
求項1記載の高強度ステンレス鋼極細線。 - 【請求項3】前記伸び比率Xは、15〜40%の範囲で
あることを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度ス
テンレス鋼極細線。 - 【請求項4】冷間伸線加工の後、温度400〜700℃
の低温熱処理が施こされることを特徴とする請求項1〜
3のいずれかに記載の高強度ステンレス鋼極細線。
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