JPH116037A - 高強度ステンレス鋼極細線 - Google Patents

高強度ステンレス鋼極細線

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JPH116037A
JPH116037A JP13443698A JP13443698A JPH116037A JP H116037 A JPH116037 A JP H116037A JP 13443698 A JP13443698 A JP 13443698A JP 13443698 A JP13443698 A JP 13443698A JP H116037 A JPH116037 A JP H116037A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 例えば精密フィルターやプリント印刷用ハイ
メッシュ材などとして好適であり、製造安定性を高める
とともに高精度化を可能とする。 【解決手段】 オーステナイト系ステンレス鋼からなる
線径40μm以下の極細線であって、該極細線は、JI
S G0551による結晶粒の平均粒度番号(N)が1
0を越える微細組織となる伸線加工及び熱処理加工の付
加によって、800〜1600N/mm2 の0.2%耐力
値と、10〜40%の伸び率を付与せしめたことを特徴
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば精密フィル
ターやプリント印刷用ハイメッシュ材などとして好適す
る、オーステナイト系ステンレス鋼でなる高強度極細線
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の急激な技術進歩は一方では新たな
要求品質を備えた技術開発を必要とし、最近では精度的
にも、ミクロンより小さい単位のナノ領域までにまでも
及ぼうとする分野が見られ、こうした傾向はさらに加速
拡大することが予想されている。
【0003】金属極細線においても、これまでは例えば
フィルター用あるいはプリント印刷用などのハイメッシ
ュ用などとして使用されているものの、濾過精度特性や
印刷精度の観点から、より微小かつ精密なメッシュ製品
となるよう微細線材の開発が急がれているものの、反
面、微細化に伴ってメッシュ製織時や取扱い時などにお
ける断線のトラブルが増加することから、より高強度で
すぐれた品質を持つ材料の出現が待たれている。
【0004】このような観点から本出願人は、先に特開
昭59−93856号公報において、線径数10μm
(例えば30μm)程度の極細線として、炭素0.08
%以下、ケイ素1.00%以下、マンガン2.00%以
下、リン0.045%以下、イオウ0.030%以下、
ニッケル8.0〜11.0%、クロム17.0〜20.
0%とし、さらに0.015〜0.10%の窒素と、若
干のモリブデンを有し、かつNi当量を21〜23%と
することによって引張り強さと伸びをバランスさせた高
強度のステンレス鋼細線を提案している。
【0005】また、同様の提案としては特開平8−13
4598号公報も見られているが、この内容は非金属介
在物を3μm以下とすることを特徴とするものである。
【0006】このような先行技術は、ともに線径30μ
m程度の微小細線であること、介在物を抑制しかつ微量
の窒素を含有させていること、さらに特性として100
0N/mm2 程度の引張り強さと大きな伸び率を有するこ
と、などの点で共通している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
先行技術はいずれも線径30μm以下の極細線を対象と
しているものの、軟質仕上げを前提としていることから
引張り強さは例えば1000N/mm2 程度に止まるもの
であって、線径の細さもあって、例えば数10g程度と
いうような軽度の荷重でも容易に断線に至ることから、
その取り扱いには大きな注意を必要とするものであっ
た。
【0008】また断線にまでは至らなくても、引張り強
さより小さい荷重である降伏点を越える荷重が加わった
だけでも、その部分は金属学的にすでに永久変形する領
域であり、したがって例え荷重を除荷してももはや当初
の状態には復帰し得ず、例えば硬度がアップしたり線径
の細りが発生するなどして部分的に不均一なものとな
る。
【0009】この為、例えばメッシュ製品を製造する場
合のちょっとした引っ掛かりなどによって張力付加する
と、その部分の寸法や特性において不均一を招き、場合
によってはそれによって網の目開きや厚さなど特性のバ
ラツキを大きくし、メッシュ全体が不良品となり、その
損失は計り知れない。
【0010】また、メッシュ製品とした際においてもこ
うした必要以上の力が加わると部分的な波打ち(ダレ)
を起こしやすくなり、製品寿命を短くする原因となって
おり、特に用途がスクリーン印刷用である場合には、印
刷精度に直接作用する為に大きな問題である。
【0011】結局、こうした問題を改善するためには従
来の方向性、すなわち高強度特性をさらに高める必要が
あるものの、引張り強さだけを想定していたのでは問題
解決とはなり得ないとの判断から、さらに検討し、ここ
に降伏特性を高める必要があるとの結論に至り、本発明
を完成したものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明の請求項
1の発明は、オーステナイト系ステンレス鋼からなる線
径40μm以下の極細線であって、該極細線は、JIS
G0551による結晶粒の平均粒度番号(N)が10
を越える微細組織となる伸線加工及び熱処理加工の付加
によって、800〜1600N/mm2 の0.2%耐力値
と、10〜40%の伸び率を付与せしめたことを特徴と
する高強度ステンレス鋼極細線である。
【0013】また請求項2の極細線は、0.2%耐力値
の1.02〜1.40倍の引張り強さを有する特性とし
たものである。
【0014】さらに請求項3の発明は、極細線が温度9
60℃以下の最終軟質熱処理加工によって製造されるも
のであり、請求項4の極細線は、200♯以上、空隙率
40%以上のハイメッシュ用として用いられるよう線径
5〜25μmとしたものである。
【0015】このように請求項1の発明によれば、伸線
加工と熱処理加工によって極細線のオーステナイト組織
を所定粒度以上に微細化し、それによって0.2%耐力
値を800〜1600N/mm2 でかつ伸び値を10〜4
0%という高い特性とした40μm以下のステンレス鋼
極細線である。
【0016】すなわち、線径が例えば20μm程度のよ
うに微細な極細線では、軟質状態であるオーステナイト
組織の結晶粒が線径程度にまで大きくなると、極細線は
実質的に単結晶の連続体で構成されることとなり、当然
強度的に劣るものとなる。逆に多結晶状態であるなら
ば、結晶同士の結合界面も大きくなり、結果的に大きな
耐力を備えることができる。
【0017】本発明では、このような思想からJIS
G0551における平均粒度番号(N)10を越える微
細化組織とすることで、耐力値と伸び率を製織加工など
に好適するよう前記範囲に設定している。
【0018】通常、耐力値と伸び率は相反する傾向を示
すものの、耐力値が大きい程荷重に対する弾性回復する
範囲が広くなること、及び線径が40μm以下という極
細線ではちょっとした取扱い中での不慣れや不注意が断
線などの事故を招き易くすることとなる。
【0019】この為、線自体の強度アップが必要であ
り、弾性領域である前記耐力値を800N/mm2 未満と
したものでは、その目的が達成されず、断線にまでは至
らなくても特性変化による製織品での織りムラとなって
現れ、一方、1600N/mm2を越える程大きくするこ
とは線自体の剛性を大きくし伸び率を減じることとな
り、製織加工に影響を及ぼすとともに織目間隔を小さく
できないこともある。こうしたことから、前記800〜
1600N/mm2 としたが、より好ましくは、1000
〜1500N/mm2 程度である。
【0020】耐力がこのように高い値であることは、仮
にその程度の荷重を付加してもこれを除荷して元の特性
に復帰できる範囲が大きいことを意味しており、したが
ってメッシュ製品でも目開きのバラツキや波打ち発生な
どトラブル軽減に寄与する。
【0021】次に、伸び率について説明すれば、極細な
極細線に製織加工などの強加工に耐え、かつ微小な織目
のハイメッシュ製品を製造するには材料自体が適度な伸
び率を備えることが必要であって10%未満では製織加
工に耐え難く、反面40%を越える程大きくすることは
前記耐力値の関係から金属学的に困難である。より好ま
しくは10〜20%程度のものが比較的容易に得られ
る。
【0022】本発明では、このような相反する両特性を
線径40μm以下(好ましくは30μm未満)という極
細線に付与させる為の手段として、これを構成する結晶
粒を微細化することを特徴の一つとしており、その値
(N)を10を越えるものとした。
【0023】JIS G0551規格に基づく判定で
は、粒度番号を−3〜0〜10(粒度番号10の結晶粒
の平均断面積は0.000122mm2 に、また断面積1
mm2 あたりの結晶粒の数は8192個に相当)まで14
ランクを規定し、それ以上微細なものについては明記さ
れていないが、本発明ではそれよりも微細結晶である為
に平均の粒度番号が前記最大値である10を越える値と
して表現しており、より好ましくは断面積1mm2 あたり
の結晶数が10,000個以上、さらに好ましくは1
5,000個以上存在するようにする。
【0024】こうして多数の結晶を存在させることは、
極細線に引張りや変形などを与えても各結晶同士の強い
結合によって抵抗することができ、トラブルを防止する
とともに、微細線径でありながら適度な率と高い耐力値
を付与することができ、製織加工にも耐え得る材料とな
る。
【0025】このような微細化結晶粒の極細線は、例え
ば高い加工率による強度の伸線加工とその後の熱処理加
工条件を調整することによって製造することができ、例
えば加工率を99%以上(好ましくは99.5%以上)
を施し、一方、熱処理加工では比較的低温で行う方法が
ある。
【0026】またそれ以外の手法として、例えば第三元
素として0.10〜0.50%のN、0.05〜0.3
0%のNbなどのように、強度アップ、結晶粒の微細化
などのための特定元素を加えればさらに有効である。
【0027】また請求項2の発明によれば、極細線の引
張り強さは前記耐力値の1.02〜1.40倍としてい
るが、その程度にまで耐力値を高めていることは実質的
な永久変形する荷重範囲が大きいことを意味している。
したがって、突発的な不均一部の発生を防止でき、例え
ば、材料を機械にセットして各種調整を行う場合にあっ
ても比較的安定した条件での作業が可能となる。
【0028】このような高強度の極細線とする為の手段
として請求項3の発明では、結晶粒の微細化を促進する
よう、前記伸線加工に続いて最終熱処理条件として10
10℃以下(好ましくは960℃以下、例えば800〜
960℃)の比較的低温条件で処理することとしてい
る。ステンレス鋼は熱処理の程度によって結晶粒径が大
きく変化し、高温度で長時間加熱処理すると結晶粒もそ
れにつれて成長して粗大となり、例えば1100℃で1
0min.の熱処理による結晶粒度(N)は、3〜5と
かなり大きくなり機械特性も変化してくる。
【0029】本発明は、伸線加工で強加工を施し比較的
軽度の熱処理を施すことで、微細結晶品とし、かつ機械
的特性を所定範囲に規定することによって微細な極細線
でありながらも製織などの加工に耐えることができると
の基本思想に基づきなされたものであって、さらに前記
成分調整することも有効である。
【0030】請求項4による極細線は、機械的特性の向
上によって線径5〜25μmと微細でありながらも20
0♯以上、空間率40%以上のハイメッシュ用として用
いることができ、高精度メッシュ製品の生産歩留りを高
める。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、試
験結果とともに具体的に説明する。 (試験例1)非金属介在物を3μm以下とすることがで
きるようダブル真空溶解によって調整し、かつNを添加
したSUS304系のオーステナイト系ステンレス鋼細
線を素材として用い、これをダイヤモンドダイスによる
冷間伸線加工によって加工率99.5%を加えて線径1
9μmとした。そして、温度800〜960℃の範囲で
0.2〜5secの条件を組み合わせた連続光輝熱処理
により、試料A〜Eの5種類(発明品)と、比較試料と
して過度熱処理を施した試料F(比較品)の合計6種類
の極細線を製造した。
【0032】得られた極細線は、いずれも強加工によっ
て優れた表面光沢を持っており、その特性を表1に示
す。なお試料Gを参考比較品を硬質仕上げしたものの特
性も例示した。
【0033】
【表1】
【0034】なお、試料Aは温度800〜850℃、B
は温度870〜900℃で熱処理し、試料C、Dは92
0〜940℃、試料Eは960℃で処理したものであ
り、比較試料Fは1060℃で熱処理したものである。
【0035】この結果から、結晶粒度が10を越える非
常に微細な試料A〜Eの極細線は、引張り強さと耐力値
は共に高く、また伸び率についても10〜約20%程度
と満足できるものであったのに対し、試料Fは高い温度
での熱処理により、結晶粒度が大きく、引張強さ、耐力
ともに劣るものであった。
【0036】なお、図1、2に本発明の極細線の断面の
拡大顕微鏡写真を示し、図3には、極細線の引張試験に
おける破断線の一例を示す。
【0037】この図1は200倍に拡大し斜め切断した
極細線の断面写真であって、図2は直角に切断した極細
線の断面写真である。これらの写真から結晶粒は熱処理
加工によって微細なオーステナイト相を呈していること
が伺える。なお、同写真中の端部に示された比較的太い
線材は比較の為のものであって、この線材もオーステナ
イト組織を呈しているものの結晶粒度ははるかに大きく
なっていることが分かる。
【0038】この両線材の断面写真を比較しても、本発
明の極細線の粒度微細化が分かり、機械的特性において
も従来極細線を越える優れた特性を示している。
【0039】なお本発明の高強度ステンレス鋼微細線は
200♯以上、空間率40%以上のハイメッシュ用とし
て用いられる。ここで200♯とは1辺1インチ当たり
における格子線が200本であることを意味し、空間率
40%以上とは、織製品を面に対して直角に透過した時
の単位面積における合計空間面積の比が40%であるこ
とを示している。
【0040】(試験例2)つぎに、試験例1で得られた
極細線を用いて400メッシュの平織網長尺製品を製造
する為に織機に供し、製織歩留りと網剛性の良否、目開
き安定性、ならびに使用に伴う波打ち発現性などを評価
した。
【0041】製織歩留りは極細線の断線に伴う機械停止
の回数で評価し、また目開き安定性は製造した網の目開
きと網厚さを各々拡大鏡と厚さ計で測定し、各々最大:
最小のバラツキ大小で比較しており、さらに波打ち発現
性については、所定時間スクリーン印刷に供した時の波
打ちの大小を官能的に比較したものである。
【0042】
【表2】
【0043】この表2のように、発明品である試料A,
B,Eは共に良好な評価が得られたのに対し、耐力と結
晶粒とにおいて範囲外である試料Fは、製織時に断線も
発生して目開きも不安定となり、さらに印刷に使用した
時には幕面にたるみが発生して印刷不良となった。
【0044】このことは、耐力値が低いことによって断
線にまでは至らないものの、線引出し時の瞬間的な張力
付加により部分的に永久変形を起こしたことによるもの
と思われ、断面HV硬度において若干の増加が見られ
た。また試料Gについては硬質仕上げ品であったために
製織加工に困難をきたし、しかも織品では目開きが大き
く厚さも厚いものとなった。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のステンレ
ス鋼極細線は結晶粒を微細化するとともに耐力値を高め
適度の伸び率を有することにより、例えばハイメッシュ
製品に使用する時には、製造安定性を高めるとともに高
精度化を可能とするものであって、新規利用分野を拡大
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】極細線を斜め切断し、その断面を200倍に拡
大して示す金属組織の顕微鏡写真である。
【図2】極細線を直角に切断し、その断面を200倍に
拡大して示す金属組織の顕微鏡写真である。
【図3】極細線の荷重、歪み曲線の一例を示す線図であ
る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オーステナイト系ステンレス鋼からなる線
    径40μm以下の極細線であって、該極細線は、JIS
    G0551による結晶粒の平均粒度番号(N)が10
    を越える微細組織となる伸線加工及び熱処理加工の付加
    によって、800〜1600N/mm2 の0.2%耐力値
    と、10〜40%の伸び率を付与せしめたことを特徴と
    する高強度ステンレス鋼極細線。
  2. 【請求項2】前記極細線は、前記0.2%耐力値の1.
    02〜1.40倍の引張り強さを有する特性とした請求
    項1記載の高強度ステンレス鋼極細線。
  3. 【請求項3】前記極細線は、温度960℃以下での軟質
    熱処理加工によって製造される請求項2に記載の高強度
    ステンレス鋼極細線。
  4. 【請求項4】200♯以上、空間率40%以上のハイメ
    ッシュ用として用いられるよう線径5〜25μmとした
    請求項1〜3のいずれかに記載の高強度ステンレス鋼極
    細線。
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