JP3670232B2 - 精密打抜き性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、打抜き性、特に精密打抜き性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
プレスによる剪断加工、特に打抜き加工は、極めて効率よく切断加工できることから、普通鋼はもとより、非鉄金属からステンレス鋼に至る広範な材料の加工・成形に使用されている。しかし、打抜き加工で形成される剪断破面は、凹凸が大きく寸法精度の低い破断面になる。また、鋼板の広面側にダレが生成し易く、打抜き破面近傍に板厚減少が生じることも欠点である。
寸法精度が要求される用途に打抜き加工を適用する場合、打抜き破面をバレル研磨することにより欠陥を除去している。また、製品の平坦性を出す後処理として、打抜き加工時のダレによって減少した板厚に製品全体の板厚を合せるように鋼板の広面を研摩紙で研摩する方法も採用されている。しかし、打抜き加工で良好な打抜き破面が得られていれば、バレル研摩による欠陥除去や広面研摩による平坦性向上は本来余分な工程であり生産性を低下させる原因となる。
【0003】
そこで、打抜き中のメタルフローを拘束し、良好な打抜き破面を形成できる精密打抜きが採用されるようになってきた。精密打抜きでは、打抜き時のクリアランスを非常に小さくして破断面の生成を抑え、且つポンチと反対面から素材を逆押えし、打抜き部の周囲を突起付きのシワ押え工具で押えた状態で静水圧を加えて打ち抜く。これにより、素材の流込みが抑制され、ダレの生成が低減される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、耐食性や耐熱性が要求される用途では、従来からステンレス鋼が使用されており、なかでもSUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼板が多用されている。この種のオーステナイト系ステンレス鋼板を素材として精密打抜きすると、硬質であるために金型寿命が短く、剪断面性状を劣化させるダレの生成量も多くなる。逆押え圧やシワ押え圧を大きく設定することによりダレ生成を抑制できるが、素材強度に応じた高い圧力が必要となるため、ポンチ,ダイス等の金型に対する負荷が上昇し、金型の磨耗が顕著になる。その結果、精密打抜き加工で剪断面の寸法精度を向上できても、普通鋼に比較すると極端に金型寿命が短くなり、加工コストが高くなる。
【0005】
金型の磨耗抑制には、逆押え圧やシワ押え圧を抑えた条件下の打抜き加工が通常採用されているが、この条件下ではダレ生成量が多くなる。そこで、寸法精度が要求される用途では、精密打抜き加工後に研摩処理を施し、或いは平坦度が必要な部位を別工程で冷間鍛造せざるを得ない。研摩処理では磁力によって素材を固定する方式が一般的であるが、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼板は非磁性材料又は磁性が出ても極僅かな材料であるため研摩効率が悪く、単に工程数が増すだけでなく、工程費単価も高くなる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、軟質化及び加工硬化を調整することにより打抜き金型を長寿命化し、引張破断伸びの規制によってダレの生成を抑制し、精密打抜き加工に適したオーステナイト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の精密打抜き性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板は、その目的を達成するため、(C+1/2N):0.060質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:5質量%以下,S:0.006質量%以下,Cr:15〜20質量%,Ni:5〜12質量%,Cu:5質量%以下,残部:Fe及び不可避的不純物の組成をもち、式(1)で定義される加工誘起マルテンサイト生成量の指標Md30が−120〜−10,式(2)で定義される積層欠陥難易度指数SFEが30以上で、析出物に含まれるCuを1.0質量%以下に規制することによりマトリックスの固溶Cuが1.0〜4.0質量%の範囲に維持された冷延焼鈍板であって、最終仕上げ焼鈍後に、JIS G0551で規定される結晶粒度番号が8〜11になるように粒度調整されていることを特徴とする
Md30(℃)=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo
・・・・・(1)
SFE(mJ/m2)=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ・・・・・(2)
【0008】
このオーステナイト系ステンレス鋼板は、常法に従って熱延,焼鈍酸洗,冷延,仕上げ焼鈍の工程を経て製造されるが、仕上げ焼鈍後の状態で、JIS G0551に規定される結晶粒度番号が8〜11の範囲になるように焼鈍される。
【0009】
【作用】
SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼板は、延性に富む材料であるため、打抜き破面にダレが生成し易い欠点がある。ダレは、打抜き加工時に材料が金型に引き込まれることによって生じる板厚減少が原因である。材料の引込みとダレの生成との関係から、材料の破断伸びがダレの生成に影響しているものと考えられる。
破断伸びは、素材に予歪みが加わるほど低下する。たとえば,鋼板を焼鈍後に冷間圧延すると、冷間圧延率の増加に対応して破断伸びが低下する。予歪みによって破断伸びが低下する現象は、引張試験における塑性変形挙動により理解できる。
【0010】
応力−歪曲線において、ある量の引張り歪を付与した後で除荷すると、引張りの予歪みが材料に加えられる。引き続き材料を引張ると、焼鈍まま材に比較し、すでに加えられている予歪みに相当する分の伸び量が差し引かれて破断に至る。このことは、予歪みを与えることにより破断伸びが減少することを意味する。
破断伸びは、結晶粒径を小さくすることによっても低下する。具体的には、結晶粒径が小さいと転位の蓄積サイトである結晶粒界の面積が増加し、結晶粒相互の高速が多く転位が蓄積しやすくなることから、破断までの塑性変形量である破断伸びが減少する。
【0011】
しかし、破断伸びの低下は、何れの方法による場合でも素材の硬質化,高強度化を招き、打抜き金型に対する負荷を増加させる。その結果,打抜き製品の寸法精度を向上できても、金型寿命が非常に短くなり、製造コストが高くなる。金型の短命化や製造コストの上昇は、軟質で加工硬化の小さな素材を使用することによって解決できる。そこで、本発明においては,前掲の式(1)で定義されるオーステナイト安定指数Md30が−10以下(好ましくは,−20以下)となるように成分設計することにより,加工誘起マルテンサイト相の生成を防止することにより加工硬化を抑制している。また、オーステナイト安定指数Md30を−120以上(好ましくは、−90以上)とすることにより、剪断破面に占める剪断面の割合が低下することを防止している。
【0012】
しかし、精密剪断加工にあっては、オーステナイト相の安定化だけでは金型寿命の向上が依然として望めない。すなわち、未変態のオーステナイト相であっても加工硬化し、金型寿命に悪影響を及ぼす。未変態オーステナイト相の加工硬化挙動は、f.c.c.構造をとるオーステナイト相における転位の増殖形態に影響され、積層欠陥の難易度によって加工硬化量が定まる。
【0013】
積層欠陥の生成傾向は、前掲の式(2)で定義される積層欠陥難易度指数SFEで表すことができる。なかでも、マトリックスにCuを固溶させておくと、積層欠陥難易度指数SFEが大きく上昇する。この点、CuはNi代替による原料費のコストダウンに留まらず、精密剪断加工時の金型負荷を低減する有効な成分である。積層欠陥難易度指数SFEが小さいと僅かなエネルギーによって積層欠陥が生成し、転位の伝播が積層欠陥にトラップされる。その結果、転位が蓄積し、加工硬化が大きくなる。
【0014】
オーステナイト安定指数Md30及び積層欠陥難易度指数SFEは、軟質ステンレス鋼の成分設計によって調整されるが、マトリックスに含まれる固溶Cuを1.0〜4.0質量%の範囲に維持することが重要である。具体的には、17Cr−12Ni−0.8Mnベースのステンレス鋼の耐力及び引張強さにみられるように、1.0〜4.0質量%のCu含有鋼で0.2%耐力,引張強さ共に大幅に低下する(ISIJ International 34(1991), p.766)。
Cuは、Niよりも大きな軟質化効果を呈する。Cu含有による軟質化効果について本発明者等が調査・研究した結果、マトリックスに固溶しているCuが軟質化に大きな影響を及ぼし、ε−Cu等として析出しているCuでは却って加工性が低下することが判った。マトリックス及び析出物のCu濃度は、透過型電子顕微鏡サンプルをEDX分析することにより測定できる。
【0015】
必要量の固溶Cuは、ステンレス鋼板製造時の圧延条件や熱処理条件を制御することによって確保される。具体的には、熱延板,冷延板共に1000℃以上の材料温度で均熱0秒以上の加熱処理を施すことにより、必要量の固溶Cuが確保される。
オーステナイト安定指数Md30を−120〜−10の範囲に維持して加工誘起マルテンサイト相の生成を抑え、積層欠陥難易度指数SFEを30以上とすることにより積層欠陥の生成が減少する。更に、固溶Cuを1.0〜4.0質量%の範囲に維持するとき、加工誘起マルテンサイト生成に起因する硬質化及び転位の蓄積に起因する未変態オーステナイト相の硬質化がなく、良好な精密剪断性が保証され、特に金型摩耗を抑えた精密打抜き加工が可能になる。
【0016】
なかでも、オーステナイト安定指数Md30を−20以下に調整すると、加工誘起マルテンサイト変態挙動が外気温の低下や加工速度の上昇による影響を受け難くなり、加工性が安定化する。しかも、−90以上のオーステナイト安定指数Md30のため、高価なNi等のオーステナイト形成元素を多量に必要とせず、鋼材コストの上昇も抑えられる。
引張破断伸び60%以下は、成分設計,結晶粒度の調整に加え調質圧延率を制御することにより達成される。素材の成分構成によって適正な調質圧延率は異なるが、本発明が対象とするオーステナイト系ステンレス鋼の成分系では、引張破断伸びを60%以下に低減するために調質圧延率を5〜20%の範囲に調整することが好ましい。
【0017】
打抜き金型に加わる負荷は、オーステナイト系ステンレス鋼板の軟質化、換言すれば結晶粒の粗大化によって軽減できる。すなわち、結晶粒が粗大になるほど金型の磨耗が低減することを重視し、高精度の剪断破面が要求される製品では、結晶粒の粗大化によって打抜き金型の負荷を軽減するために結晶粒径を粗大にすることが常識であった。しかし、結晶粒径の粗大化によって破断伸びが増加し、打抜き製品にダレが生じやすくなる。この点、粗大な結晶粒は、精密打抜き用素材として決して適正な物性とはいえない。
他方、オーステナイト安定指数Md30,積層欠陥難易度指数SFEが特定された本発明オーステナイト系ステンレス鋼を精密打抜き加工用素材に使用すると、結晶粒を細粒化しても金型負荷の増加なしにダレを低減できる。具体的には、ダレ生成量を規制する用途に対し、通常のJIS G0551で規定される結晶粒度である6〜8番に比べ、結晶粒径を8〜11と細粒化することにより、金型への負荷を増加させることなく、且つダレ生成量が低減される。
【0018】
本発明は、たとえば以下に掲げる成分のオーステナイト系ステンレス鋼板に適用されるが、当該成分は本発明を拘束するものではなく、他に種々の合金成分を含むことができることは勿論である。
C,N:
何れもオーステナイト相の安定度調整に有効な合金成分であるが、多量に含まれると固溶強化によってオーステナイト相が硬質化するだけでなく、加工誘起マルテンサイトの生成に起因した硬質化も生じ、打抜き荷重の増加、ひいては金型寿命の低下を招く。そこで、C,N含有量は、C+N/2≦0.060質量%となるように低減することが好ましい。
【0019】
Si:
溶製時に脱酸剤として添加される合金成分であるが、1.0質量%を超える過剰量のSiが含まれると固溶強化によるオーステナイト相の硬質化が進み、打抜き性が劣化する。
Mn:
含有量の増加に応じてオーステナイト相が安定化し、打抜き性の向上に有効な合金成分である。しかし、打抜き性の向上に及ぼすMnの影響は5.0質量%で飽和し、それ以上添加しても介在物の増加に起因して耐食性や打抜き性が却って損なわれる。
【0020】
Cr:
耐食性を確保する上で15質量%以上のCr含有が必要であるが、過剰量のCr含有は材質の硬質化,金型寿命の低下を招くため、Cr含有量の上限を20質量%に規制することが好ましい。
Ni:
オーステナイト系ステンレス鋼板には不可欠な合金成分であり、オーステナイト相を維持する上で少なくとも5質量%が必要である。Niはオーステナイト系ステンレス鋼板の打抜き性を向上させる上でも有効であり、打抜き性向上効果はNi含有量の増加に応じて大きくなる。しかし、高価な元素であるNiの多量添加は鋼材コストを上昇させることになるので、Ni含有量の上限を12質量%に設定することが好ましい。
【0021】
Cu:
含有量増加に応じてオーステナイト相が安定化し、打抜き性が向上する。しかし、過剰量のCuは熱間加工性に悪影響を及ぼすので、Cu含有量の上限を5質量%に設定することが好ましい。
S:
S含有量の増加に応じて剪断面率の割合が低下し、ステンレス鋼に最も要求される耐食性にも悪影響を及ぼすため、0.006質量%以下に規制することが好ましい。特に打抜き破面性状が問題とされる打抜き加工で高い剪断面率を得るためには、0.003質量%以下にS含有量を規制することが好ましい。
【0022】
加工誘起マルテンサイト生成量の指標Md30:−120〜−10
加工誘起マルテンサイト(α')の生成量は、オーステナイト系ステンレス鋼板の組成から次式に従って算出できる。
指標Md30(℃)=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo
指標Md30が−10を超えると、加工誘起マルテンサイト(α')が多量に生成し、過度に強度が上昇するため金型が磨耗し易くなる。逆に、指標Md30が−120を下回ると、加工誘起マルテンサイト(α')がほとんど生成しなくなり、打抜き破面に歪みが集中し、打抜き破面の寸法精度が低下し易い。金型磨耗を抑え、高い打抜き破面精度の製品を得る上では、指標Md30を−90〜−20の範囲に調整することが好ましい。
【0023】
積層欠陥難易度指数SFE:30以上
積層欠陥の生成傾向は、次式に従ってオーステナイト系ステンレス鋼の組成から算出できる。
SFE(mJ/m2)=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si―1.2Mn+32
積層欠陥難易度指数SFEが小さいと、僅かなエネルギーの導入によってもオーステナイト相に積層欠陥が生成し、転位の伝播が積層欠陥にトラップされる。その結果、転位が蓄積し、未変態オーステナイト相の加工硬化が大きくなる。この点、積層欠陥難易度指数SFEを30以上に調整したオーステナイト系ステンレス鋼では、未変態オーステナイト相の硬質化,ひいては金型の摩耗が抑えられ、優れた精密剪断性が得られる。
【0024】
【実施例1】
表1の組成をもつ軟質で加工硬化の小さなステンレス鋼を溶製し、抽出温度1230℃で板厚10mmの熱延鋼帯に熱間圧延した。熱延鋼帯を1150℃×均熱1分で焼鈍した後、酸洗し、更に板厚5.0〜7.2mmに冷間圧延した。冷延板に1050℃×均熱1分の焼鈍を施した後、酸洗した。
【0025】
Figure 0003670232
【0026】
各冷延焼鈍板を調質圧延で板厚5.0mmに揃えた後、試験片を切り出し、引張試験及び打抜き試験に供した。なお、冷延後の板厚が5.0mmの冷延焼鈍材は、調質圧延することなく試験片を切り出した。
引張試験では、引張方向が圧延方向と平行となるように採取したJIS 13B号試験片を引張速度40mm/分で引張試験し、破断伸び及び引張強さを測定した。
【0027】
打抜き試験では、ポンチ外径50mm,ダイス内径50.2mm,クリアランス0.1mm及び0.25mm,クリアランス比(クリアランス/試験片の板厚)2%及び5%,打抜き速度600mm/分の条件下で試験片を打抜き加工した。打ち抜かれた円盤状試験片の圧延方向L−L,圧延方向に直交する方向T−T及び圧延方向に45度傾斜した方向D1−D1',D2−D2'のそれぞれについて2点(合計8点)の測定点で、ダレ量Zをレーザ式非接触変位計で測定した(図1)。各測定点での測定値を平均し、平均値を板厚で除すことによりダレ率を算出した。
【0028】
表2の調査結果にみられるように、引張破断伸びが60%以下に低減されたオーステナイト系ステンレス鋼板C〜Fは、調質圧延していない鋼板Aに比較してダレ率が半分以下に低減しており、打ち抜き後に研摩等の後処理を必要とすることなく寸法精度の高い製品に製造できた。
【0029】
Figure 0003670232
【0030】
【実施例2】
実施例1と同じステンレス鋼を抽出温度1230℃で板厚10mmに熱間圧延し、1150℃×均熱1分で焼鈍した後、酸洗を経て、板厚5.0mmに冷間圧延した。得られた冷延板に950〜1180℃の範囲で焼鈍温度を変えた均熱1分の焼鈍を施すことにより、結晶粒度が異なる冷延焼鈍板を作製した。
各冷延焼鈍板を実施例1と同じ試験に供し、引張破断伸び及びダレ率を測定した。表3の調査結果にみられるように、引張破断伸びが60%以下を示した結晶粒度8.0番以上のオーステナイト系ステンレス鋼板H〜Lは、結晶粒度が8.0番未満の鋼板A及びGに比較してダレ率が半分以下に抑えられていた。
【0031】
Figure 0003670232
【0032】
【実施例3】
実施例2で使用したオーステナイト系ステンレス鋼板を連続打抜きに供した。金型が磨耗することにより実質のクリアランスが広がり、ダレ量が多くなることから、各鋼板ごとに打抜き初回に対してダレ量が2倍に達したときの打ち抜き回数を金型寿命と判定した。
表4の試験結果にみられるように、鋼板Lは、基準となる鋼板Aを打抜き加工したときの金型寿命に比較して半分以下になっていた。これは、鋼板Lの引張強さが600N/mm2を超えており打抜き金型に大きな負荷が加わったため、金型寿命が低下したものと考えられる。これに対し、鋼板H〜Kは、何れもダレ量が少なく、且つ金型寿命も抑制されていた。
【0033】
Figure 0003670232
【0034】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼板は、オーステナイト安定指数Md30を−120〜−10,積層欠陥難易度指数SFEを30以上とする成分設計を採用し、調質圧延や結晶粒の微細化により引張破断伸びを低減しているため、ダレ量が少なく高精度の打ち抜き破面をもつ製品に打ち抜き加工できる。しかも、引張強さを小さくしているので、打抜き金型に加わる負荷が低減され、金型寿命も長くなる。このようにして得られた打抜き製品は、研摩,冷間鍛造等の後処理を必要とすることなく、種々の分野における部品や部材として使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試験片を打抜き試験した後のダレ測定箇所を示す平面図(a)及び打抜き加工で生じたダレを示す断面図(b)

Claims (1)

  1. (C+1/2N):0.060質量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:5質量%以下,S:0.006質量%以下,Cr:15〜20質量%,Ni:5〜12質量%,Cu:5質量%以下,残部:Fe及び不可避的不純物の組成をもち、式(1)で定義される加工誘起マルテンサイト生成量の指標Md30が−120〜−10,式(2)で定義される積層欠陥難易度指数SFEが30以上で、析出物に含まれるCuを1.0質量%以下に規制することによりマトリックスの固溶Cuが1.0〜4.0質量%の範囲に維持された冷延焼鈍板であって、最終仕上げ焼鈍後に、JIS G0551で規定される結晶粒度番号が8〜11になるように粒度調整されていることを特徴とする精密打抜き性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼板。
    Md30(℃)=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−29(Ni+Cu)−13.7Cr−18.5Mo
    ・・・・・(1)
    SFE(mJ/m2)=2.2Ni+6Cu−1.1Cr−13Si−1.2Mn+32 ・・・・・(2)
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