JP5099978B2 - 高強度細線及びその製造方法 - Google Patents
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Cは溶製時に脱酸剤として作用するほか、Ti、ZrおよびHfのグループに属する元素、またはNb、TaおよびVのグループに属する元素が存在する場合は、それらと炭化物を形成して、固溶化熱処理時の結晶粒粗大化を防止するとともに、粒界の強化に寄与する。0.1(質量)%を超える添加は、過剰な炭化物を形成し、強度および靭性を低下させるだけでなく伸線時に断線の起点となる。好ましい含有量の上限界は0.08(質量)%である。
Siは脱酸剤として必要であるが、多量の添加は、強度および靭性の低下を招く。その限界は、2.0(質量)%である。1.0(質量)%以下が好ましい。
MnもSiと同様、脱酸剤として有用であるが、過大な添加はやはり強度および靭性の低下を招く。上限として、2.0(質量)%を設定した。これも、1.0(質量)%以下が好ましい。
Crはα相を形成する主要な元素であり、α相がγ’相と複合析出することで高強度と高硬度が得られるという点で、重要な元素である。もちろん、耐食性にも寄与する。これらの効果は、30(質量)%に満たない量では十分に得られず、一方で45(質量)%を超える添加は、加工性の低下を招く。より好適な範囲は、32〜42(質量)%である。
Alはγ’相を形成する重要な元素であり、さらに耐高温腐食性の向上にも役立つ。この効果は1.5(質量)%に達しない添加では得られず、また添加量が5.0(質量)%を超えると、加工性が悪くなる。好ましい範囲は、2.0〜4.5(質量)%である。
これらの元素は、γ’相を形成するAlと置換することによりγ’相の固溶強化に寄与し、合金の強度をさらに高める働きがあるから、Alと複合して添加するとよい。ただし、添加量が3.0(質量)%を超えると、加工性が悪くする。3種の元素のうちで、強度の向上に最も効果的なものはTiであり、その添加量の最適な範囲は2.0(質量)%以下である。ZrおよびHfには、結晶粒界に偏析して粒界を強化する効果もある。Zr及びHfの添加量は、0.1(質量)%以下のところに最適範囲がある。
Nb、TaおよびVも、Ti、ZrおよびHfと同様な機構で、すなわちγ’相を形成するAlと置換することによりγ’相の固溶強化に寄与し、合金の強度をさらに高める作用がある。しかし、3.0(質量)%を超える添加は、加工性を悪くする。これら3種の元素のうちで、添加効果が最も高いものはNbおよびTaであり、その添加量の最適な範囲は2.0(質量)%以下である。Vの最適な添加量は、0.5(質量)%以下である。
Coは、固溶強化により合金の強度を高める。γ’相の析出量を増大させる存在でもある。しかしCoは高価な材料であるから、多量の添加は得策といえず、現実的な上限は、3.0(質量)%である。MoおよびWもまた、固溶強化により合金の強度を高める。Moには、耐食性を向上させる働きもある。Mo+0.5Wが10(質量)%を超えると、加工性や耐高温腐食性を損なう。MoもWも高価な材料であるから、多量の添加は合金のコストを高めて不利である。
Cuは冷間加工性を改善する。さらに、耐硫酸腐食性を顕著に向上させる効果もある。多量の添加は熱間加工性にとって好ましくないから、5(質量)%以内の添加に止めるべきである。B、MgおよびCaは、いずれも熱間加工性を改善する。Bは、これに加えて結晶粒界に偏析して粒界を強化し、クリープ強度を高めるのにも役立つ。MgおよびCaは、溶解時に脱酸および脱硫を意図して添加することもある。いずれも過大な添加は、かえって熱間加工性を低下させる。そこで添加量の上限として、Bについては0.015(質量)%、MgおよびCaについては0.01(質量)%を設けた。REMは、高温で使用する部品の耐酸化性を高める。この効果は、主として、密着したスケールの剥離を抑制するという機構を通じて得られる。しかし、熱間加工性にとっては好ましくない存在であるから、0.1(質量)%以下の添加に止める。
ここで、前述の非磁性とは、本明細書では透磁率が1.05以下であるものを意味する。
表2の試験細線は、上記実施例の細線10と同じ工程を経て作製した0.9mmφの線材より採取されたものであって、第2伸線工程22によるものである。また、表3のSUS420J2は、表1に示した化学成分から構成された0.9mmφの線材から採取して焼入1050℃後、焼戻150℃で処理した試験片である。
鋼種/合金 硬さ 曲げ強度 縦弾性係数 引張強さ
単位 HV MPa MPa MPa
試験細線(0.3φ) 820 4800 252000 4800
SKH51(粉末ハイス) 820 4300 230000 3200
SUS420J2(0.3φ) 620 3200 180000 2200
次に、表3の試験細線は、上記実施例の細線10と同じ工程を経て作製したNo.1の試験片であって、時効処理工程28後の0.3mmφであり、粉末ハイスは、表1に示す成分の粉末に粉体成形、焼結、鍛造、焼鈍、伸線等を施すことによって得られた0.3 mmφの線材より採取された試験片である。
このように、本発明による試験細線は、SUS420J2よりすぐれ、SKH51に及ぶものであって、引張強さも約4800MPaである。
鋼種/合金 腐食減量(g/m2 ・h)
--------------------------------------
試験細線 0.3
SUS304 403
但し、表4の試験細線は表2のNo.1と同様であり、SUS304は表1に示した化学成分から構成された0.9mmφの線材から採取された冷間伸線のままの試験片を沸騰させた5%濃度のH2SO4を用いてJISG0591に定められた方法で腐食試験が行われた。
この結果から明らかなように本発明の試験細線は他の細線に比して腐食減量が極めて少なく0.3g/m2 ・hであった。さらにJISG0577によって孔食電位を計測したが、その結果もJISG0577に示しているように200〜500mVvsS.C.Eとすぐれていることが確認された。
鋼種 透磁率μ
----------------------------
試験細線 1.003(伸線加工のまま)
1.003(時効後)
SUS304 6 〜7
但し、表5の試験細線およびSUS304は表4と同様であり、冷間伸線後に測定された透磁率が示されている。
(a) 試験片
前記と同様のNi基合金の5.0mmφの線材を、加工率が零である5.0mmφから最大2.21mmφ(加工率80.5%)まで複数段階の伸線を行って加工率が0%、10.0%、20.0%、40.0%、45.0%、50.0%、60.0%、70.0%、80.5%である9種類の試験線材(時効前)を用意した。
(b) 引張試験方法
ISO6892に準拠した試験方法に従って引張強度、伸び、絞りを各試験片についてそれぞれ測定した。
(a) 時効
熱処理炉を用いて大気中で475℃で16hr保持し、その後に空冷した。
(b) テストピース
前記と同様のNi基合金の0.9mmφの線材を、加工率零である0.9mmφから最大0.3mmφ(加工率88.9%)まで複数段階の伸線を行って伸線の加工率が0%、15.0%、30.0%、40.0%、50.0%、60.0%、70.0%、75.0%、80.0%、85.0%、88.9%である11種類の試験線材(時効前)を用意するとともに、同様の11種類の試験線材に対して、前記の条件で時効を施した別の試験線材を用意した。
(c) 硬さ試験方法
ビッカース硬さ試験機を用いて、JISZ2244に準拠した試験法に従って荷重9.8N測定した。
(a) 試験片
前記と同様のNi基合金から採取されており、加工率が80.5%の2.21mmφの線材と加工率が88.9%の0.3mmφの線材とを、試験片として用意した。
(b) 時効条件
上記の試験片は時効前のものと時効後のものとの両方から採取した。時効は、熱処理炉を用いて、大気中で行い、保持温度400、450、500、550℃で、それぞれ1、4、8、16時間保持した。その結果の1例を図5に示している。
(c)靭性試験
次に、本発明による高強度細線の曲げ試験によって、靭性を評価することとした。
試験は、前記条件(500℃で4Hr保持)で時効処理した直径0.3mmの本発明による高強度細線と、比較細線として、表3によるSHK51(粉末ハイス)及びSUS420J2の同線径の細線を各々用い、試験は、長さ80mmの各細線をU字状に曲げて破線に至る直前の曲率半径で評価した。
その結果、比較細線のSKH51(粉末ハイス)では曲率半径15mmで、またSUS420J2材では9mmで各々で破断したのに対し、本発明の細線は10mmまで曲げることができた。このことから本発明の細線は、硬さが820HVと非常に高いにもかかわらず、大きな曲げに耐えることが確認された。
26:第3伸線工程(伸線工程)
28:時効工程
Claims (6)
- 質量%で、C:0.1%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:30〜45%、Al:1.5〜5%、Mo:10%以下(0%を除く)、およびCu:5%以下(0%を除く)を含有し、残部が不可避的不純物およびNiからなる合金組成を有し、伸線加工とその後の時効処理によって硬さが700HV以上であることを特徴とする高耐食性高強度細線。
- 前記高強度細線は、その金属組織内に第2相を析出させてなる請求項1の高耐食性高強度細線。
- 前記高強度細線は、1.0mm以下の直径を有するものである請求項1または2の高耐食性高強度細線。
- 前記高強度細線は、750〜850HVの高硬度特性を有するものである請求項1乃至3のいずれかの高耐食性高強度細線。
- 前記高強度細線は、更に、
(a) 3.0(質量)%以下のTi、Zr、および/またはHf、
(b) 3.0(質量)%以下のNb、Ta、および/またはV、
(c) 3.0(質量)%以下のCo、および/または3.0(質量)%以下のW(但し、Mo+0.5Wは10(質量)%以下)、
(d) 0.015(質量)%以下のB、0.01(質量)%以下のMg、および/または0.1(質量)%以下のREM
のうちの少くとも1つを添加物として含むものである請求項1乃至4のいずれかの高耐食性高強度細線。 - 質量%で、C:0.1%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:30〜45%、Al:1.5〜5%、Mo:10%以下(0%を除く)、およびCu:5%以下(0%を除く)を含有し、残部が不可避的不純物およびNiからなる合金組成を有する高耐食性高強度細線の製造方法であって、
前記Ni基合金組成を有する線材を30%以上の加工率で伸線する伸線工程と、
該伸線工程によって細径化された線材を所定の450〜650℃の温度で0.5〜16時間保持する時効処理工程と
を、含むことを特徴とする高耐食高強度細線の製造方法。
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