JP2003252613A - カーボンナノチューブの製造方法および製造装置 - Google Patents

カーボンナノチューブの製造方法および製造装置

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JP2003252613A JP2002152460A JP2002152460A JP2003252613A JP 2003252613 A JP2003252613 A JP 2003252613A JP 2002152460 A JP2002152460 A JP 2002152460A JP 2002152460 A JP2002152460 A JP 2002152460A JP 2003252613 A JP2003252613 A JP 2003252613A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 効率良く大量にカーボンナノチューブを製造
する方法とカーボンナノチューブを効率良く大量に製造
できる装置を提供すること。 【解決手段】 操作が簡便な化学蒸着法(CVD法)を
用い、固体触媒と炭素含有化合物を500〜1200℃
で効率良く接触させるために、加熱炉内に設置した反応
管を回転させて固体触媒を撹拌し、固体触媒と炭素含有
化合物を均一に接触できる装置や、反応管を傾斜させて
回転することにより固体触媒と原料炭素含有化合物を連
続的に供給し、生成したカーボンナノチューブを連続し
て抜き出す装置を用いることで、さらに効率良くカーボ
ンナノチューブが製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体触媒と炭素含
有化合物を加熱炉内に設置した反応管内に供給し、反応
管を回転して固体触媒を撹拌することによってカーボン
ナノチューブを効率良く製造する方法、及びその製造装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】カーボンナノチューブは、グラファイト
の1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、一層に
巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いた
ものを多層カーボンナノチューブという。
【0003】カーボンナノチューブを製造する方法とし
ては、アーク放電法及び化学蒸着法(CVD)による方
法が知られている。アーク放電法は、真空中又は不活性
気体雰囲気中で炭素棒を電極とし、高電圧・高電流のア
ーク放電を行い、カーボンナノチューブを製造するもの
であり、カーボンナノチューブは陰極堆積物中にグラフ
ァイト、カーボンナノパーティクルなどと一緒に得られ
る。CVDによる方法は、鉄、ニッケルなどの金属微粒
子の存在下で原料ガスを数百度で反応させて、カーボン
ナノチューブを製造するものである。
【0004】しかしながら、生成するカーボンナノチュ
ーブの量は少なく、大量合成できる技術が望まれてい
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、効率良く大
量にカーボンナノチューブを製造する方法とカーボンナ
ノチューブを効率良く大量に製造できる装置を提供する
ことをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成する
に至った。操作が簡便な化学蒸着法(CVD法)を用
い、固体触媒と炭素含有化合物を500〜1200℃で
効率良く接触させるために、加熱炉内に設置した反応管
を回転させて固体触媒を撹拌し、固体触媒と炭素含有化
合物のガスを均一に接触できる装置により、非常に高収
率でカーボンナノチューブが大量に得られることを見出
し、また、反応管を傾斜させて回転することにより固体
触媒と原料炭素含有化合物を連続的に供給し、生成した
カーボンナノチューブを連続して抜き出す装置にするこ
とで、さらに効率良くカーボンナノチューブが製造でき
ることを見出した。また、反応管内を加圧することによ
り、固体触媒へ原料ガスが吸着しやすくなり、さらに効
率よくカーボンナノチューブが製造できることを見出
し、本発明に至った。
【0007】本発明は固体触媒を撹拌させながら炭素含
有化合物を加熱接触させることによってカーボンナノチ
ューブを製造する装置と、本装置によってカーボンナノ
チューブを製造する方法を提供するものである。
【0008】すなわち、本発明は、「固体触媒と炭素含
有化合物を加熱炉内に設置した反応管内に供給し、反応
管を回転して固体触媒を撹拌すること特徴とするカーボ
ンナノチューブの製造方法。」、「固体触媒と炭素含有
化合物を加熱炉内に設置した反応管内に連続的に供給
し、反応管を傾斜して回転して固体触媒を撹拌しながら
連続的にカーボンナノチューブが付着した触媒を抜き出
すことを特徴とするカーボンナノチューブの製造方
法。」「固体触媒と炭素含有化合物を加熱炉内に設置し
た反応管内に供給し、流体の供給により固体触媒を撹拌
すること特徴とするカーボンナノチューブの製造方
法。」および、「水平軸方向に回転する筒状の反応管
(1)を加熱炉(2)で所定の温度に維持する装置であ
って、反応管の前または後に炭素含有化合物を導入する
供給口(5)と排気口(6)を設けることで、反応管内
に収容した固体触媒と供給した炭素含有化合物が反応し
てカーボンナノチューブが生産できることを特徴とする
カーボンナノチューブの製造装置。」、「水平あるいは
水平に対してわずかに傾斜した軸の周りに回転する筒状
の反応管(1)を加熱炉(2)で所定の温度に維持する
装置であって、反応管の前または後に固体触媒を導入す
る供給口(13)と炭素含有化合物を導入する供給口
(5)と製品を抜き出す製品取り出し口(14)と排気
口(6)を設けることで、反応管内に固体触媒と炭素含
有化合物を連続的に供給してカーボンナノチューブが生
産できることを特徴とするカーボンナノチューブの製造
装置。」、「反応管(22)の下方に炭素含有化合物を
導入する供給口(5)を設置し、反応管内に収容した固
体触媒を攪拌する流体を導入し、触媒と供給した炭素含
有化合物が反応してカーボンナノチューブを生成できる
ことを特徴とするカーボンナノチューブの製造装置。」
である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳述する。本
発明は、固体触媒と炭素含有化合物を加熱炉内に設置し
た反応管内に供給し、反応管を回転、または流体の供給
により固体触媒を撹拌することによりカーボンナノチュ
ーブを製造する方法とその製造装置である。
【0010】本発明による固体触媒は、固体担体表面に
触媒金属を担持したものであればどのようなものでも良
い。固体担体としては有機物でも無機物でも良いが、耐
熱性の観点から無機物が好ましい。無機の固体担体とし
ては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタ
ン、ケイ酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、層状化合
物、ゼオライト、活性炭、グラファイトなどを挙げるこ
とができる。中でも触媒金属が均一に担持できる無機多
孔体が好ましい。無機多孔体の中でも細孔径や骨格組成
が均一であるという点でゼオライトが好ましい。
【0011】ゼオライトとは、分子サイズの細孔径を有
した結晶性無機酸化物である。分子サイズとは、世の中
に存在する分子のサイズの範囲であり、一般的には、
0.2から2nm程度の範囲を意味する。ゼオライトと
は、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結
晶性メタロシリケート、結晶性アルミノフォスフェー
ト、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で
構成された結晶性マイクロポーラス物質のことである。
【0012】結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケ
ート、結晶性メタロシリケート、結晶性アルミノフォス
フェート、結晶性メタロアルミノフォスフェートの種類
は特に制限がなく、例えば、アトラス オブ ゼオライ
ト ストラクチュア タイプス(マイヤー、オルソン、
バエロチャー、ゼオライツ、17(1/2)、199
6)(Atlas of Zeolite Structure types(W. M. Meie
r, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Zeolites, 17(1/2),
1996))に掲載されている構造をもつ結晶性無機多孔性
物質が挙げられる。
【0013】本発明において、触媒金属の種類は、遷移
金属元素が用いられ、中でも、V,Mo,Fe,Co,
Ni,Pd等は特に好ましく用いられる。1種類だけ担
持されていても、2種類以上担持されていてもかまわな
いが、2種類以上担持させる方がより好ましい。2種類
の場合は、Coと他の金属の組み合わせが特に好まし
い。CoとFe,Ni,V,Moの組み合わせが最も好
ましい。更に第3成分を添加することも好ましく行われ
る。金属の担時量は無機多孔体に対して0.1重量%〜
10.0重量%が好ましく、0.5重量%〜5.0重量
%がより好ましい。無機多孔体表面への金属担持方法
は、特に限定されないが、例えば、担持したい金属の塩
を溶解させた水や非水溶液中(例えばエタノール溶液)
に、無機多孔体を含浸し、充分に分散混合した後、乾燥
させ、空気中や不活性ガス中で高温(300〜600
℃)で加熱することによって、無機多孔体表面に金属を
担持することができる含浸法や、金属塩の水溶液または
アルコール量をなるべく少なくし、無機多孔体の細孔内
に、該水溶液を吸着させ、余分な水溶液またはアルコー
ルはろ過などで除去して乾燥させる平衡吸着法や、金属
カチオンと無機多孔体のカチオンを水溶液中で交換する
イオン交換法などが用いられる。
【0014】本方法では、無機多孔体を支持体とし、そ
の支持体表面に金属が担持されていることを特徴とする
触媒と炭素含有化合物を500℃〜1200℃で接触さ
せる。接触させる温度は、500℃〜1200℃であ
り、さらに好ましくは600℃〜1000℃であり、特
に600℃〜900℃がより好ましい。温度が低いとナ
ノファイバーの収率が悪く、温度が高いと使用する反応
器の材質に制限が出ると共に、ナノファイバー同士の接
合が始まってしまい、ナノファイバーの形状のコントロ
ールが困難になる。また、無機多孔体の耐熱性を超えて
しまうと無機多孔体の構造が保持できなくなり、ナノフ
ァイバーが生成できなくなる。
【0015】本発明における炭素含有化合物とは、炭素
原子を含有していれば特に限定はない。好ましくは炭化
水素化合物であり、脂肪族であっても芳香族であっても
よく、炭素/炭素結合は飽和結合であっても不飽和結合
を含んでいても良い。さらにはテルペンなどに代表され
る光学活性炭化水素化合物であっても良い。また、化合
物の沸点が高くても加熱炉内で加熱されて気体となれば
良い。
【0016】炭化水素化合物としては例えば、メタン、
エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレ
ン、イソプレン、n−ブタン、ブタジエン、1−ブテ
ン、2−ブテン、2−メチルプロパン、n−ペンタン、
2−メチルブタン、1−ペンテン、2−ペンテン、シク
ロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、1−
ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキサン、シクロヘキ
セン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,
2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチル
シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、2−
メチルへキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチ
ルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメ
チルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3
−トリメチルブタン、n−オクタン、イソオクタン、シ
クロオクタン、1,1−ジメチルシクロヘキサン、1,
2−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、
1−オクテン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタ
ン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、
2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサ
ン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,4−トリメチ
ルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、n−ノ
ナン、イソプロピルシクロヘキサン、1−ノネン、プロ
ピルシクロヘキサン、2,3−ジメチルヘプタン、n−
デカン、ブチルシクロヘキサン、シクロデカン、1−デ
セン、ピネン、ピナン、リモネン、メンタン、n−ウン
デカン、1−ウンデセン、n−ドデカン、シクロドデセ
ン、1−ドデセン、n−トリデカン、1−トリデセン、
n−テトラデカン、1−テトラデセン、n−ペンタデカ
ン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタ
デカン、n−ノナデカン、エイコサン、ドコサン、テト
ラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサ
ン、オクタコサン、ノナコサン、メタノール、エタノー
ル、ノルマルプロパノール、2−プロパノール、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベ
ンゼン、ビニルトルエン、メシチレン、プソイドクメ
ン、スチレン、クメン、ビニルスチレン又はこれらの混
合物などを挙げることができる。また、炭素含有化合物
に水素、硫化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水または
これらの混合物を添加することも好んで行われる。
【0017】固体触媒と炭素含有化合物の接触のさせ方
は、特に限定されないが、例えば、図1のように反応管
(1)内に、固体触媒を置き、加熱下で反応管を回転さ
せながら炭素含有化合物のガスを流す方法や、図3のよ
うに反応管を傾斜させて回転させながら、傾斜した反応
管の上部から固体触媒を連続的に供給し、反応管の下部
から炭素含有化合物のガスを供給する方法がある。ま
た、図6のように触媒に流体を供給し、流体の勢いで触
媒を攪拌する方法もある。
【0018】炭素含有化合物は液状で供給してもガス状
で供給しても良いが、好ましくはガス状で供給する。い
ずれにしても反応管内では加熱炉で加熱されるため、炭
化水素化合物はガス状で接触する。
【0019】反応管を回転させる方法の場合は、反応管
に用いる材質としては、使用する炭素含有化合物に対し
て接触安定性があり、使用する温度範囲で耐熱性を持っ
ていればどのような材質でも良いが、石英ガラス、カー
ボン、セラミックスが特に良い。
【0020】反応管の大きさとしては、径の大きさが増
加するに従って内部に導入できる固体触媒が増えるため
に処理量は増加するが、径が大きくなりすぎると反応管
の中心部分と壁面部分に温度差が生じてしまうために好
ましくなく、逆に径を細くすると固体触媒の滞留時間を
制御し易くなるが、処理量が減少してしまうために反応
管を長くして処理できる量を調節する必要がある。
【0021】反応管の内部に回転方向に対して垂直また
は若干角度をつけた邪魔板(7)を複数枚取り付けるこ
とにより、反応管が回転することで反応管中に導入した
固体触媒が邪魔板によって十分に撹拌され、炭化水素ガ
スとの接触が均一となり、カーボンナノチューブがより
効率的に生成できる。
【0022】邪魔板の形状や大きさ、取り付ける角度を
変えることで反応管内の固体触媒の撹拌効率を自在に調
節することができる。また、回転モーター(8)や角度
調節機(17)によって反応管の傾斜角と回転数を任意
に変化させることができるため、固体触媒と炭素含有化
合物の接触時間も自由に調節できる。傾斜角が小さくな
れば滞留時間が長くなり、固体触媒との接触が十分起こ
り、固体触媒の利用率が向上する。また、傾斜角が大き
くなればなるほど反応管内に導入された固体触媒の滞留
時間が短くなり、必要以上に固体触媒と炭素含有化合物
ガスの接触を防止することができる。しかし、傾斜角が
大きすぎると固体触媒が反応管中にとどまることができ
なくなるために傾斜角には最適値があり、反応管の傾斜
角は0°〜10°が好ましく、より好ましくは0°〜5
°である。反応管を回転することは固体触媒を撹拌する
のに必要であり、反応管の回転数は少ないと反応管を傾
斜した場合、固体触媒の滞留時間が長くなるために固体
触媒との接触時間が十分となり、固体触媒の利用率が向
上する。反応管の回転数が多いと固体触媒の撹拌効率が
向上し、固体触媒がより均一に炭素含有化合物ガスと接
触できるようになる。ただし、回転数が大きすぎるとそ
の遠心力によって固体触媒が撹拌しなくなるので、1〜
120回転/分の範囲の回転数が好ましく、より好まし
くは1〜60回転/分である。
【0023】流体の供給により触媒を攪拌する場合は、
流体としてはガスがよく、ガスとしては、炭素含有化合
物のみ、または窒素、アルゴン、ヘリウム等から選ばれ
る希釈ガスとの混合ガスが好ましい。流体供給口は反応
管の下方にあるほど効率が高いため好ましい。また、流
体供給口の材質は、使用する炭素含有化合物に対して接
触安定性があり、使用する温度範囲で耐熱性を持ってい
ればどのような材質でも良いが、石英ガラス、カーボ
ン、セラミックス、SUSが特に好んで用いられる。
【0024】炭素含有化合物は、窒素、アルゴン、水
素、ヘリウム等のガスと共に供給することが好ましい。
これらのガスは、炭素含有化合物の濃度をコントロール
したりキャリアーガスとして効果があり、固体触媒に供
給される時の炭素含有化合物ガス以外のガスの組成は、
供給される全ガス量の0〜99.9%であり、より好ま
しくは50〜99.5%であり、さらに好ましくは70
〜99%である。
【0025】また、本発明は、反応管内が加圧されてい
ることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法に
関するものである。ここで、反応管内が加圧されている
とは、反応管内の圧力が大気圧以上であることを言う。
加圧の程度は特に限定されないが、0.1MPaから1
0MPaが好んで用いられ、より好ましくは0.1MP
aから5MPaである。加圧の方法も特に限定されない
が、供給ガスをコンプレッサーで加圧する方法、原料や
キャリアーガスをボンベから供給する方法があり、いず
れの場合も反応管の下流側に減圧弁を設けることが好ま
しい。反応管内を加圧してカーボンナノチューブを製造
する場合、反応管は圧力容器であることが好ましい。こ
のように反応管内を加圧する利点は、原料ガスと触媒を
効率よく接触させることにあり、この点に関しては、反
応管内の圧力が高いほど効果が高い。一方、反応管内の
圧力が高いほど、反応管の耐圧性を高める必要があり、
装置への負荷が大きい。反応管内の圧力が高い場合は、
反応管を圧力容器とする必要がある。
【0026】本発明における製造装置としては、水平軸
方向に回転する筒状の反応管を加熱炉で所定の温度に維
持する装置であり、一般的にはロータリーキルンと呼ば
れるものであり、反応管は1本でも複数本を同心円上に
設置して回転させても良い。加熱炉としては、電気発熱
方式や、高周波誘導コイル方式、バーナーによる加熱方
式などが利用できるが、温度を容易にコントロールでき
たり熱損量を低減できることなどから電気発熱方式や高
周波誘導コイル方式が好ましく、特に有機溶剤ガスや水
素などの可燃性ガスの漏洩に対して安全な高周波誘導コ
イル方式が好ましい。図1に示した装置は、反応管
(1)の前または後に炭素含有化合物を導入する供給口
(5)と排気口(6)を設けることで、反応管内に収容
した固体触媒に炭素含有化合物を供給することが可能と
なり、反応管に接続したガイド(4)と炭素含有化合物
を導入する供給口(5)と排気口(6)の間にガスシー
ル(11)を設けることで、反応管内に導入される炭素
含有化合物のガスが回転部分からの漏洩を防止できる。
反応管内に邪魔板(7)を設けて回転させることで固体
触媒が効率良く撹拌されてカーボンナノチューブが効率
良く製造できる装置となり得る。
【0027】さらに、図2、3に示した装置のように、
水平あるいは角度調節機(17)によって水平に対して
わずかに傾斜させて設置した反応管(1)の前または後
にスクリューポンプで固体触媒を導入する供給口(1
3)と炭素含有化合物を導入する供給口(5)とカーボ
ンナノチューブが付着した固体触媒を抜き出す製品取り
出し口(10)と排気口(6)を設けることで、反応管
内に連続的に固体触媒と炭素含有化合物を供給すること
が可能なり、反応管に接続したガイド(4)と炭素含有化
合物を導入する供給口(5)と排気口(6)およびスク
リューポンプ(15)の間にガスシール(11)を設け
ることで、反応管内に導入される炭素含有化合物のガス
が回転部分からの漏洩を防止できる。反応管を回転させ
ることで固体触媒が撹拌されてカーボンナノチューブが
効率良く生産でき、しかもカーボンナノチューブが連続
的に大量生産できる装置となり得る。
【0028】さらに、図4,5に示した装置のように、
ガス下流側に圧力調整弁(18)を設置することで、反
応管内の圧力を制御できる。また、図5に示すように、
供給口(13)とスクリューポンプ(15)の間に、圧
力を緩衝するための中間室(19)とバルブ(20)を
設けることにより、大気圧中に置かれた触媒を加圧反応
系内に導入することができる。
【0029】さらに、図6に示した装置のように反応管
(22)の下方に炭素含有化合物を導入する供給口
(5)を設置し、反応管内に収容した固体触媒を攪拌す
る流体を導入し、反応管の上方に排出口(6)を設ける
こともできる。この場合、排出口に圧力調整弁(18)
を設けることで、加圧条件下で触媒を攪拌し、カーボン
ナノチューブを製造することができる。なお、反応管の
底には触媒の落下を防ぐためのフィルター(22)を設
けてもよい。
【0030】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に
説明する。もっとも、下記の実施例は例示のために示す
ものであって、いかなる意味においても限定的に解釈し
てはならない。
【0031】カーボンナノチューブの得られ易さを求め
る指標として、触媒当たりの重量増加率を用いて比較し
た。これは単位触媒量当たりに生成する炭素を主成分と
する中空状ナノファイバーの割合を求めたものであり、
次の式から求められる。
【0032】触媒当たりの重量増加率=(生成物量−固
体触媒量)/固体触媒量この値が大きければ大きいほど
効率良くカーボンナノチューブが得られることになる。
【0033】
【実施例】[固体触媒の調製(触媒の1)]無水塩化第
二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水和
物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40ml
に溶かし、10.0gのNaYゼオライト粉末(東ソー
社製HSZ-310NAA)を加え、超音波洗浄機で30分間処理
し、120℃恒温下で水を除去して、ゼオライトの表面
に金属を担持した固体触媒を得た。
【0034】[固体触媒の調製(触媒の2)]無水塩化
第二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水
和物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40m
lに溶かし、10.0gのUSY型ゼオライト粉末(東
ソー社製HSZ-390HUA)を加え、超音波洗浄機で30分間
処理し、120℃恒温下で水を除去して、ゼオライトの
表面に金属を担持した固体触媒を得た。
【0035】[固体触媒の調製(触媒の3)]無水塩化
第二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水
和物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40m
lに溶かし、10.0gのチタノシリケート型ゼオライ
ト粉末(NEケムキャット社製TS-1)を加え、超音波洗
浄機で30分間処理し、120℃恒温下で水を除去し
て、ゼオライトの表面に金属を担持した固体触媒を得
た。
【0036】[ナノファイバーの合成]実施例1(バッ
チ法)内径100mm、長さ1.5mの石英管の中央部
に金属塩を担持した固体触媒の1を3.0g取り、石英
管を電気炉に設置して、窒素を150ml/分で供給し
た。石英管を30回転/分で回転させながら電気炉の中
心温度を700℃に加熱し、アセチレン(竹中高圧工業
社製)を30ml/分で180分間供給した後、アセチ
レンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた
生成物は7.5gあり、触媒当たりの重量増加率は1.
5であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡J
SM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとん
ど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以
下の細いカーボンナノチューブが主成分であることがわ
かった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイ
バーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイ
ト層で構成されていた。
【0037】実施例2(バッチ法) 内径100mm、長さ1.5mの石英管の中央部に金属
塩を担持した固体触媒の2を3.0g取り、石英管を電
気炉に設置して、アルゴンを150ml/分で供給し
た。石英管を30回転/分で回転させながら電気炉の中
心温度を800℃に加熱した。ここへエタノール(片山
化学製)をマイクロフィーダーで180分間供給した。
このとき、エタノールはガスとして5ml/分となるよ
うに設定した。その後、エタノールの供給を止め、温度
を室温まで冷却した。得られた生成物は3.6gあり、
触媒当たりの重量増加率は0.2であった。日立製透過
型電子顕微鏡H7100型で生成物を観察したところ、
ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が2n
m以下の細いカーボンナノチューブが主成分であること
がわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で観察した結
果、主成分は単層カーボンナノチューブであった。
【0038】実施例3(バッチ法) 内径100mm、長さ1.5mの石英管の中央部に金属
塩を担持した固体触媒の3を3.0g取り、石英管を電
気炉に設置して、アルゴンを150ml/分で供給し
た。石英管を30回転/分で回転させながら電気炉の中
心温度を850℃に加熱し、アセチレン(竹中高圧工業
社製)を5ml/分で180分間供給した後、アセチレ
ンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生
成物は3.6gあり、触媒当たりの重量増加率は0.2
であった。日立製透過型電子顕微鏡H7100型で生成
物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆
積は無く、外径が15nm以下の細いカーボンナノチュ
ーブが主成分であることがわかった。高分解能透過型電
子顕微鏡で観察した結果、2層カーボンナノチューブの
生成が確認された。
【0039】実施例4(連続法) 内径100mm、長さ1.5mの石英管を傾斜させて電
気炉内に設置し、傾斜させた上方から固体触媒の1を
1.0g/時で供給し、下方から窒素を150ml/分
で供給した。石英管を10回転/分で回転させながら電
気炉の中心温度を700℃に加熱し、アセチレンを30
ml/分で供給した。固体触媒投入から製品取り出しに
かかる時間を1時間に調節することで、製品抜き出し口
から毎時2.5gの生成物が得られ、触媒当たりの重量
増加率は1.5であった。日本電子データム(株)走査
型電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察した
ところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外
径が30nm以下の細い中空状ナノファイバーが主成分
であることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中
空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの
壁はグラファイト層で構成されていた。
【0040】実施例5(加圧バッチ法) 内径100mm、長さ1.5mの石英管の中央部に金属
塩を担持した固体触媒の3を3.0g取り、石英管を電
気炉に設置した。ガス下流側には圧力調整器を設置し、
反応管内が0.2MPaになるよう調整した状態で、
0.2MPaのアルゴンを150ml/分で供給した。
石英管を30回転/分で回転させながら電気炉の中心温
度を850℃に加熱し、0.2MPaのアセチレン(竹
中高圧工業社製)を5ml/分で180分間供給した
後、アセチレンの供給を止め、温度を室温まで冷却し
た。得られた生成物は4.2gあり、触媒当たりの重量
増加率は0.4であった。日立製透過型電子顕微鏡H7
100型で生成物を観察したところ、ほとんど非晶質の
カーボン質の堆積は無く、外径が15nm以下の細いカ
ーボンナノチューブが主成分であることがわかった。高
分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察
したところ、2層カーボンナノチューブの生成が確認さ
れた。
【0041】実施例6(加圧連続法) 内径100mm、長さ1.5mの石英管を傾斜させて電
気炉内に設置し、ガス下流側には圧力調整器を設置し
た。傾斜させた上方から中間室を介して固体触媒の2を
1.0g/時で供給し、下方から0.2MPaのアルゴ
ンを150ml/分で供給した。石英管を10回転/分
で回転させながら電気炉の中心温度を850℃に加熱
し、アセチレンを5ml/分で供給した。固体触媒投入
から製品取り出しにかかる時間を1時間に調節すること
で、製品抜き出し口から毎時1.4gの生成物が得ら
れ、触媒当たりの重量増加率は0.4であった。日立製
透過型電子顕微鏡H7100型で生成物を観察したとこ
ろ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が
15nm以下の細い中空状ナノファイバーが主成分であ
ることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状
ナノファイバーを観察したところ、2層カーボンナノチ
ューブの生成を確認した。
【0042】実施例7(加圧ガス吹き上げ法) 内径100mm、長さ1.5mのSUS管を垂直に立
て、その内部に金属塩を担持した固体触媒の2を50g
取り、SUS管を電気炉に設置して、1.0MPaの窒
素を1500ml/分で供給した。電気炉の中心温度を
800℃に加熱し、1.0MPaのエタノールガスを5
0ml/分で180分間供給した後、エタノールの供給
を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は1
00gあり、触媒当たりの重量増加率は1.0であっ
た。日立製透過型電子顕微鏡H7100型で生成物を観
察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無
く、外径が2nm以下の細いカーボンナノチューブが主
成分であることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡
で中空状ナノファイバーを観察したところ、主成分は単
層カーボンナノチューブであった。
【0043】比較例1 内径100mm、長さ1.5mの石英管の中央部に金属
塩を担持した固体触媒の1を3.0g取り、石英管を電
気炉に設置して、窒素を150ml/分で供給した。石
英管を回転させずに電気炉の中心温度を700℃に加熱
し、アセチレン(竹中高圧工業社製)を30ml/分で
180分間供給した後、アセチレンの供給を止め、温度
を室温まで冷却した。得られた生成物は5.0gあり、
触媒当たりの重量増加率は0.7であった。日本電子デ
ータム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生
成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質が
堆積は無く、外径が30nm以下の細いカーボンナノチ
ューブが主成分であることがわかった。高分解能透過型
電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナ
ノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0044】
【発明の効果】本発明によると、加熱炉内に設置した反
応管を回転させて固体触媒を撹拌し、固体触媒と炭素含
有化合物を均一に接触できる装置により、非常に高収率
でカーボンナノチューブが得られ、また、反応管を傾斜
させて回転することにより固体触媒と原料炭素含有化合
物を連続的に供給し、生成したカーボンナノチューブを
連続して抜き出す装置にすることで、連続的にカーボン
ナノチューブが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】バッチ式の合成装置を示す概略図である。
【図2】連続合成装置を示す概略図である。
【図3】傾斜させた連続合成装置を示す概略図である。
【図4】加圧バッチ式の合成装置を示す概略図である。
【図5】傾斜させた加圧連続合成装置を示す概略図であ
る。
【図6】加圧ガス吹き上げ法の合成装置を示す概略図で
ある。
【符号の説明】
1 反応管 2 加熱炉 3 プーリー 4 アダプター 5 供給口 6 排気口 7 邪魔板 8 回転モーター 9 ローラー 10 拡散防止板 11 ガスシール 12 回収容器 13 ホッパー 14 回転モーター 15 スクリューポンプ 16 製品取り出し口 17 角度調節機 18 圧力調節器 19 中間室 20 バルブ 21 フィルター 22 加圧ガス吹き上げ法用反応管
フロントページの続き Fターム(参考) 4G146 AA11 AC03A AC03B BA11 BA12 BC02 BC33A BC33B BC34A BC34B DA03 DA15 DA25 DA31

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固体触媒と炭素含有化合物を加熱炉内に設
    置した反応管内に供給し、反応管を回転して固体触媒を
    撹拌すること特徴とするカーボンナノチューブの製造方
    法。
  2. 【請求項2】固体触媒と炭素含有化合物を加熱炉内に設
    置した反応管内に連続的に供給し、反応管を傾斜して回
    転して固体触媒を撹拌しながら連続的にカーボンナノチ
    ューブが付着した触媒を抜き出すことを特徴とするカー
    ボンナノチューブの製造方法。
  3. 【請求項3】固体触媒と炭素含有化合物を加熱炉内に設
    置した反応管内に供給し、流体の供給により固体触媒を
    撹拌すること特徴とするカーボンナノチューブの製造方
    法。
  4. 【請求項4】加熱炉内が500℃〜1200℃であるこ
    とを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の
    カーボンナノチューブの製造方法。
  5. 【請求項5】反応管内が加圧されていることを特徴とす
    る請求項1から4のいずれか1項記載のカーボンナノチ
    ューブの製造方法。
  6. 【請求項6】水平軸方向に回転する筒状の反応管(1)
    を加熱炉(2)で所定の温度に維持する装置であって、
    反応管の前または後に炭素含有化合物を導入する供給口
    (5)と排気口(6)を設けることで、反応管内に収容
    した固体触媒と供給した炭素含有化合物が反応してカー
    ボンナノチューブが生産できることを特徴とするカーボ
    ンナノチューブの製造装置。
  7. 【請求項7】水平あるいは水平に対してわずかに傾斜し
    た軸の周りに回転する筒状の反応管(1)を加熱炉
    (2)で所定の温度に維持する装置であって、反応管の
    前または後に固体触媒を導入する供給口(13)と炭素
    含有化合物を導入する供給口(5)と製品を抜き出す製
    品取り出し口(14)と排気口(6)を設けることで、
    反応管内に固体触媒と炭素含有化合物を連続的に供給し
    てカーボンナノチューブが生産できることを特徴とする
    カーボンナノチューブの製造装置。
  8. 【請求項8】反応管(1)の材質が石英ガラス、カーボ
    ン、セラミッククスであることを特徴とする請求項6ま
    たは7に記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  9. 【請求項9】反応管の内部に回転方向に対して垂直また
    は角度をつけた邪魔板(7)を取り付けていることを特
    徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のカーボンナノ
    チューブの製造装置。
  10. 【請求項10】反応管(22)の下方に炭素含有化合物
    を導入する供給口(5)を設置し、反応管内に収容した
    固体触媒を攪拌する流体を導入し、触媒と供給した炭素
    含有化合物が反応してカーボンナノチューブを生成でき
    ることを特徴とするカーボンナノチューブの製造装置。
  11. 【請求項11】反応管((1)または(21))が圧力
    容器であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか
    1項記載のカーボンナノチューブの製造装置。
  12. 【請求項12】反応管の下流側に圧力調整器(18)を
    有することを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項
    記載のカーボンナノチューブの製造装置。
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