カーボンナノ構造物がナノテクノロジーの中核物質として注目を集めている。本発明で云うカーボンナノ構造物とは炭素原子から構成されるナノサイズの物質であり、例えば、コイル状のカーボンナノコイル、チューブ状のカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブが捩れを有したカーボンナノツイスト、カーボンナノチューブにビーズが形成されたビーズ付カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブが多数林立したカーボンナノブラシ、球殻状のフラーレンなどがある。以下では、これら多数のカーボンナノ構造物のうち、カーボンナノコイルとカーボンナノチューブを例示して本発明の内容を説明する。
カーボンナノコイルは1994年にアメリンクス等(Amelinckx,X.B.Zhang,D.Bernaerts,X.F.Zhang,V.Ivanov and J.B.Nagy,SCIENCE,265(1994)635)によって初めて合成された。また、1999年にリー等(W.Li,S.Xie,W.Liu,R.Zhao,Y.Zhang,W.Zhou and G.Wang,J.Material Sci.,34(1999)2745)が、グラファイトシートの外周に鉄粒子を被覆した触媒を用いてカーボンナノコイルの生成に成功した。しかし、これらは何れも収率が低く、量産には向かなかった。
そこで、本発明者等の一部によって為された特開2001−192204に示される「カーボンナノコイルの製造方法」が開発された。この技術は、インジウム・スズ・鉄系触媒を用いて炭化水素などを原料ガスとして触媒化学気相成長法(CCVD法、Catalyst Chemical Vapor Deposition)によりカーボンナノコイルを大量合成した最初の例である。
また、このインジウム・スズ・鉄系触媒を改良した従来技術には、本発明者等の一部によって為された特開2001−310130に示される「カーボンナノコイル生成用のインジウム・スズ・鉄系触媒の製造方法」がある。この技術は、インジウム・スズ・鉄系触媒を金属有機化合物から合成する方法を示しており、インジウム・スズ・鉄系触媒の量産方法を開示している。
他方、カーボンナノチューブは1991年に飯島澄夫が炭素アーク放電の陰極堆積物中に発見したカーボンナノ構造物である。それ以後、カーボンナノチューブの大量合成法が研究され、近年に至って、特開2002−180251及び特開2002−180252に示される「カーボンナノチューブの製造方法」が公開されるに至った。
前者は、アルカリ金属の含有量が0.05%以下の高純度アルミナに触媒金属を含有させた活性基体に400〜500℃の温度で有機炭素原料をCVD法により熱分解してカーボンナノチューブを大量合成する技術である。また、後者は、触媒金属を0.001〜0.005モル/m2の割合で蒸着させて形成した活性基体上に、1100〜1250℃の温度で有機炭素原料を熱分解してカーボンナノチューブを大量合成する技術である。
以上のように、従来の製法開発は、カーボンナノ構造物の大量合成用の触媒を開発すると同時に、合成温度などの製造条件の改良が中心であった。ところが、最近では、大量合成には成功したが、無用な副生成物が発生するという問題が惹起してきた。
図19は従来のカーボンナノ構造物製造装置40をカーボンナノコイルの生成に用いた場合の概略構成図である。カーボンナノ構造物製造装置40は、特開2001−192204に示されるように、反応管4の外周に反応領域加熱用ヒータ6を配置し、この反応領域加熱用ヒータ6により均一温度に設定された反応温度領域を反応領域10とし、この反応領域10に触媒体12を配置して構成されている。触媒体12にはインジウム・スズ・鉄からなるカーボンナノコイル生成用触媒が使用された。
キャリアガスとしてHe、原料ガスとしてC2H2を用い、HeとC2H2を適正な流量比で混合した混合ガスを矢印c方向に流通させる。反応領域10は700℃に、反応時間は1時間に設定された。その結果、触媒体12の表面には、C2H2が分解して、カーボンナノコイルからなるカーボンナノ構造物14が成長した。
ところが、反応管4の内面にタール状副生成物16が分散状に密着していることが確認された。このタール状副生成物を分析したところ、芳香族炭化水素と判定された。アルキル基は非常に少なく、パラフィン系炭化水素の含有はないと判定された。タール状副生成物16のFTIR法により得られた赤外スペクトルを分析したところ、ナフタレン、アントラセン等の縮合芳香環物質、縮合芳香環物質のCH3置換物質、或いは高縮合芳香環物質の結合物質、それら多成分の混合物だと推定される。
タール状副生成物16の付着している場所は、反応領域10の前後に位置する反応管4の内面であり、反応領域10の内面にはほとんど存在しないことが分かった。タール状副生成物16は黒色で反応管を汚し、しかも洗浄作業が面倒であると同時に、洗浄不能の場所に付着すると清浄化できなくなるという問題がある。
また、カーボンナノコイルは通常程度の密度で生成したが、C2H2濃度を低下させるとその成長密度も低下することが確認された。この原因は、反応管4の断面全体に混合ガスを流すため、矢印e方向に流れたC2H2ガスは触媒体12と接触してカーボンナノコイル14へと反応転換されるが、矢印d方向のように触媒体12から遠方を流れるC2H2ガスは反応せずにそのまま通過し、大量の未反応原料ガスを下流側に流出させてしまうからである。
タール状副生成物16が形成されるだけでもカーボンナノコイルの収率低下をもたらすが、C2H2ガスが触媒体12と接触しない場合には反応自体も起こらず、これら二つの事情が収率低下の原因と考えられる。
図20は従来のカーボンナノ構造物製造装置40をカーボンナノチューブの生成に用いた場合の概略構成図である。カーボンナノ構造物製造装置40の構成は図19と同様であり、異なる点は次の2点である。
第1の相違点は、触媒体12として、ナトリウム含量が0.01%以下である高純度γ―アルミナペレット(99.95%以上)にNiを焼結させた触媒が使用されたことである。第2の相違点は、触媒体の近傍を500℃に保持して適正な流量比で混合されたCH4とArの混合ガスを矢印c方向に流通させたことである。
その結果、ペレットからなる触媒体12の表面にカーボンナノチューブからなるカーボンナノ構造物14が通常の密度で生成されることが分かった。しかし、上記従来技術と同様に、タール状副生成物16が反応領域10の前後において反応管4の内面に黒く密着することが確認された。また、カーボンナノチューブの成長密度が通常の密度以上には向上しないことも確認された。これらの原因は、矢印d方向に流れるCH4が反応に貢献しないこと、しかも原料ガスであるCH4の多くがタール状副生成物16の生成に使われることにあると考えられる。
以上のように、従来の製造方法や製造装置では、反応管の内面に無視できない量のタール状副生成物が形成され、しかもカーボンナノ構造物の生成収率も十分には向上しないことが分かった。最近では、カーボンナノ構造物を高純度且つ高密度に生成するためには、これらの課題を解決することが緊急に必要であると認識されるようになっている。
従って、本発明に係るカーボンナノ構造物の製造方法及び装置は、反応方法及び反応装置を改良することにより、カーボンナノ構造物の生成過程でタール状副生成物の発生を減少させ、しかも原料ガスを効率的に反応させてカーボンナノ構造物の生成収率を格段に向上することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するために為されたものであり、本発明の第1の形態は、原料ガスから触媒化学気相成長法によりカーボンナノ構造物を製造する方法において、カーボンナノ構造物の生成温度域まで加熱された空間内で、触媒体と接触するように、タール状副生成物が生成されない温度域にある原料ガスを吹き付けて、カーボンナノ構造物を生成する原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。タール状副生成物は低温から次第にカーボンナノ構造物生成温度にまで上昇する過程で、原料ガスが分解・結合することによって発生することが本発明者等の研究で分かった。つまり原料ガスが分解・結合する中間温度領域を反応過程から除去することが本発明の主題となる。このために、この発明では、原料ガスをタール状副生成物が生成されない温度領域(前記中間温度領域より低い温度、常温又は更に低温)に保持しておき、この原料ガスを前記中間温度を跳び越して、一気にカーボンナノ構造物生成温度領域に導入することにより、タール状副生成物の発生を大幅に低減することが可能となる。しかも、原料ガスを反応領域に向かって直接吹き付けるから、反応領域内の触媒体と原料ガスとの反応確率が増大し、カーボンナノ構造物の生成収率を大幅に向上できるようになる。更に、前記触媒体を反応領域内に固定して、この触媒体に原料ガスを吹き付けても良く、又は触媒体を触媒体タンク等から必要に応じて前記反応領域に供給することもできる。
本発明の第2の形態は、原料ガスから触媒化学気相成長法によりカーボンナノ構造物を製造する方法において、カーボンナノ構造物の生成温度域まで加熱された空間内で、触媒体と接触するように、タール状副生成物が生成されない温度域まで予熱された原料ガスを直接吹き付けて、カーボンナノ構造物を生成する原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。この発明では、原料ガスをタール状副生成物が生成されない温度域まで予熱しておき、この予熱原料ガスを中間温度を跳び越して一気にカーボンナノ構造物生成温度にまで引き上げることにより、タール状副生成物の発生を大幅に低減することができる。第1の発明との相違は原料ガスを予熱する点にある。この予熱により原料ガスの反応性を増大でき、触媒領域における原料ガスの反応確率を加速的に増大することになる。また、原料ガスを反応領域に向かって直接吹き付けるから、反応領域内の触媒体と原料ガスとの反応確率が増大し、カーボンナノ構造物の生成密度と生成効率を大幅に向上できるようになる。更に、前記触媒体を反応領域内に固定して、この触媒体に原料ガスを吹き付けても良く、又は触媒体を触媒体タンク等から必要に応じて前記反応領域に供給することもできる。
本発明の第3の形態は、前記触媒体が触媒構造体から構成される原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。前記触媒体が触媒構造体から構成されることにより、反応領域内にのみ触媒体を設置することができるから、触媒体と原料ガスを高効率に反応させることができる。更に、カーボンナノ構造物は触媒構造体の表面に形成されるから、この触媒構造体よりカーボンナノ構造物を高効率に捕集することができる。
本発明の第4の形態は、前記触媒構造体が板状構造、層状構造、格子状構造、多孔質構造又は繊維状構造の少なくとも1つ以上の構造を有する原料吹き付け式カーボンナノ構造製造方法である。この発明により、製造されるカーボンナノ構造物の前記触媒構造体の種類に応じて、触媒構造体の構造を選択することができる。表面積が大きい層状構造、格子状構造、多孔質構造又は繊維状構造を有する触媒構造体を用いることにより、高効率にカーボンナノ構造物を生成することができる。更に、板状構造の触媒構造体を用いることにより、容易にカーボンナノ構造体を回収することができる。
本発明の第5の形態は、前記触媒体が触媒粉体から構成される原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。前記触媒体が触媒粉体から形成されることにより、必要に応じて触媒体を容易に供給することができる。更に、前記触媒粉体構成粒子表面に形成されたカーボンナノ構造物は、触媒粉体を流出させることにより、容易に回収することができる。
本発明の第6の形態は、前記触媒粉体をカーボンナノ構造物の生成温度域まで加熱された空間内の反応領域に供給して、この触媒粉体を前記生成温度域まで加熱する原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。この発明では、前記触媒粉体を必要に応じて反応領域に供給することができ、原料ガスと触媒粉体を高効率に反応させることができる。
本発明の第7の形態は、前記触媒粉体を触媒粉体供給管から前記生成温度域まで加熱された空間内に供給する原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。前記触媒粉体が触媒粉体供給管から供給されることにより、必要な量を適宜に反応領域へ供給することができる。更に、前記触媒粉体供給管を加熱することにより、前記生成温度域まで加熱された触媒粉体を供給することができ、前記原料ガスと直ぐに反応することができる。
本発明の第8の形態は、前記触媒粉体が混合された原料ガスを前記生成温度域まで加熱された空間内に吹き付ける原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。前記原料ガスと触媒粉体の混合比を適宜に調節することにより、高効率に前記カーボンナノ構造物を製造することができる。更に、混合ガスを加熱することにより、原料ガスと触媒粉体を同一温度に予熱することができ、反応領域に導入されると混合ガスは瞬時に生成温度領域まで加熱され、カーボンナノ構造物を高効率に製造することができる。
本発明の第9の形態は、前記生成温度域まで加熱された空間内にある触媒粉体を攪拌しておき、この触媒粉体に前記原料ガスを吹き付ける原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。前記触媒粉体を攪拌することにより、原料ガスを触媒粉体と効率的に接触させることができ、高効率にカーボンナノ構造物を製造することができる。攪拌方法としては、超音波振動などを用いた振動方法、回転板を回転させる若しくは触媒粉体が供給される容器自体を回転させる回転方法、揺動板を前記反応領域内に付設して揺動させる揺動方法、又はその他の公知の方法を用いることができる。
本発明の第10の形態は、原料ガスの予熱温度を300℃以下に設定するカーボンナノ構造物の製造方法である。例えば、原料ガスとして使用される炭化水素からタール状副生成物が生成される温度は300℃〜600℃であり、炭化水素からカーボンナノ構造物が生成される温度は触媒の種類によって多少幅があるが、550℃以上であり、効率的には600℃〜1200℃であると考えられる。従って、原料ガスの予熱温度を300℃以下に制御して、この予熱原料ガスを一気に600℃以上の反応領域に送り込めば、原料ガスはタール状副生成物の生成温度領域を通過しないから原理的にタール状副生成物は生成されないことになる。
本発明の第11の形態は、原料ガスから触媒化学気相成長法によりカーボンナノ構造物を製造する装置において、反応領域をカーボンナノ構造物の生成温度域にまで加熱する加熱装置を設け、反応領域内に原料ガスを導入する原料ガス供給管を設けてその原料ガス吹出し口を反応領域内に配置し、タール状副生成物が生成されない温度域にある原料ガスを前記原料ガス吹出し口から触媒体に吹き付ける原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置である。原料ガスの温度はタール状副生成物が生成されない温度域にあるから、原料ガス供給管の内部でタール状副生成物は生じず、しかも原料ガス吹出し口からこの原料ガスを触媒体に直接吹き付ける構造であるから、原料ガスは触媒と高確率に接触して効率的にカーボンナノ構造物に転換され、タール状副生成物の発生を急減できる。原料ガスの多くは触媒反応に消費されるから、反応管内でタール状物質が生成されることも強力に抑制される。
本発明の第12の形態は、原料ガスから触媒化学気相成長法によりカーボンナノ構造物を製造する装置において、反応領域をカーボンナノ構造物の生成温度域にまで加熱する加熱装置を設け、反応領域内に原料ガスを導入する原料ガス供給管を設けてその原料ガス吹出し口を反応領域内に配置し、原料ガスからタール状生成物が生成されない温度域にまで前記原料ガス供給管を予熱する予熱装置から構成され、予熱された原料ガスを前記原料ガス吹出し口から触媒体に吹き付ける原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置である。予熱温度域では原料ガス供給管の内部でタール状生成物は生じず、しかも原料ガス吹出し口から予熱原料ガスを触媒体に直接吹き付ける構造であるから、予熱原料ガスは触媒と高確率に接触し、カーボンナノ構造物が高効率に製造される。従って、上述の装置と同様、原料ガスの多くは触媒反応に消費されるから、反応管内でタール状物質が生成されることも防止できる。
本発明の第13の形態は、原料ガスから触媒化学気相成長法によりカーボンナノ構造物を製造する装置において、反応領域をカーボンナノ構造物の生成温度域にまで加熱する加熱装置を設け、反応領域内に原料ガスと触媒体の混合ガスを導入する混合ガス供給管を設けてその混合ガス吹出し口を反応領域内に配置し、混合ガスからタール状生成物が生成されない温度域にまで前記混合ガス供給管を予熱する予熱装置を設け、予熱された混合ガスを反応領域に吹き付ける原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置である。予熱温度域では混合ガス供給管の内部でタール状生成物は生じない。混合ガス吹出し口から反応領域に吹き付けられた混合ガスは瞬時に生成温度まで加熱され、前記混合ガス中の原料ガスと触媒体が吹き付けられることによって効率良く接触するから、カーボンナノ構造物を高効率に生成することができる。従って、原料ガスの多くは触媒反応に消費されるから、反応管内でタール状物質が生成されることも防止できる。
本発明の第14の形態は、前記反応領域に触媒体を供給する触媒体供給管を配置し、この触媒体供給管を予熱する予熱装置を設け、予熱された触媒体に前記原料ガスを吹き付ける原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置である。前記触媒体を供給する触媒供給管を流通して触媒体を反応領域へ供給することにより、必要な量の触媒粉体を供給することができる。更に、前記予熱装置より前記触媒体を予熱することによって、反応領域に供給された触媒体は瞬時に生成温度まで到達し、前記原料粉体と反応することができる。
本発明の第15の形態は、前記反応領域内の触媒体を攪拌する攪拌装置が付設され、攪拌された触媒体に原料ガスを吹き付ける原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置である。前記触媒粉体を攪拌することにより、原料ガスを触媒粉体と効率的に接触させることができ、高効率にカーボンナノ構造物を製造することができる。前記攪拌装置は、超音波振動などを用いた振動手段、回転板を回転させる若しくは触媒粉体が供給される容器自体を回転させる回転手段、揺動板を前記反応領域内に付設して揺動運動させる揺動手段、又はその他の公知の手段から構成することができる。更に、反応領域がある反応領域内に所定量の触媒体を堆積させてから、前記触媒体を攪拌しても良く、又は前記触媒体を供給し続けながら攪拌することもできる。
本発明の第16の形態は、触媒体がカーボンナノコイル製造触媒である原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。カーボンナノコイル製造触媒を用いれば、炭化水素から選択的にカーボンナノコイルを生成できるから、本発明方法によりタール状副生成物を低減すると同時にカーボンナノコイルを高密度で高効率に製造することができる。前記カーボンナノコイル製造触媒としては、遷移金属元素を含有する金属炭化物触媒、金属酸化物触媒又は金属系触媒を用いることができる。遷移金属元素は、周期表に示される遷移元素を意味しており、具体的には、第4周期のSc〜Cu、第5周期のY〜Ag、第6周期のLa〜Auなどである。上記遷移金属元素から選択された元素をAとすると、前記金属炭化物としては、AInC、ASnC、AInSnCなどをカーボンナノ構造物製造触媒として用いることができる。更に、前記金属酸化物としては、AInO、ASnO、AInSnO、AAlSnO又はACrSnOなどをカーボンナノ構造物製造触媒として用いることができ、前記金属系触媒としては、AAlSn、ACrSn又はAInSnなどを用いることができる。更に、好適な金属触媒として、遷移金属元素にFe元素を含有する金属触媒をカーボンナノ構造物製造用触媒として用いることができる。より具体的には、FexInyCz、FexSnyCz若しくはFexInyCzSnwなどのFe系金属炭化物触媒をカーボンナノ構造物製造用触媒として用いることができ、金属炭化物触媒のより好適な組成比はFe3InC0.5、Fe3SnC若しくはFe3In1−vC0.5Snw(0≦v<1,W≧0)である。更に、前記カーボンナノ構造物製造用触媒として、FexInySnz、FexAlySnz又はFexCrySnzなどのFe系金属触媒を用いることができ、より好適な組成比はFe3InySnz(y≦9、z≦3)、FexAlySnz(y≦1,z≦3)若しくはFeCrySnz(y≦1,z≦3)である。これらの金属触媒から目的に応じた触媒体を選択することにより、高効率にカーボンナノ構造物を生成することができる。
本発明の第17の形態は、原料ガスがアセチレン、アリレン、エチレン、ベンゼン又はトルエン、アルコール又はメタンの少なくとも一つを含む原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。これらの原料ガスは、炭化水素の中でも特にカーボンナノ構造物を生成する場合に好適な原料ガスであり、タール状副生成物を発生させないで、カーボンナノ構造物を量産することができる。
本発明の第18の形態は、カーボンナノ構造物が、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ、カーボンナノツイスト、ビーズ付きカーボンナノチューブ、カーボンナノブラシ又はフラーレンである原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。触媒体の種類を変更したり、反応領域の生成温度を可変調整することにより、特定のカーボンナノ構造物を選択的に量産することができる。
本発明者等は、カーボンナノ構造物を製造する際に副生されるタール状物質の生成メカニズムを鋭意研究した結果、原料ガス分子が特定の温度領域で自己分解を起こし、この分解生成物が会合しながら芳香環を形成し、この芳香環が縮合して巨大分子を形成しタール化することを発見するに至った。
タール状副生成物についてFTIR法により赤外吸収スペクトルを測定したところ、多数の吸収ピークが出現し、夫々の吸収波数について分子振動の帰属決定を行った。結果は次の通りであった。
<吸収の帰属決定>
<吸収波数(cm−1)> <振動の帰属>
3047 芳香核のCH伸縮振動
2920 脂肪族のCH伸縮振動
1597 芳香核のC=C伸縮振動
1504 芳香核のC=C伸縮振動
1450 芳香核のC=C伸縮振動
1389 CH3の変角振動
957 芳香核のCH面外変角振動
以上の結果から、タール状物質は芳香族炭化水素であると結論できる。波数が2920(cm−1)のピークについてはアルキル基と考えられるが、その吸収強度は他の吸収強度と比較してかなり小さいので、アルキル基は非常に少なく、パラフィン系炭化水素の含有はほとんど無いと判断される。
赤外スペクトルより、タール状物質は、ベンゼン環が2個のナフタレン、ベンゼン環3個のアントラセン、更にベンゼン環が多数縮合した縮合芳香環物質や、それら縮合芳香環のCH3置換物質であると判断される。標準チャートの検索と検討を行ったが、同定できるチャートは発見されなかった。従って、ある種のタールピッチであると判断できる。
また、タール状物質について質量分析も行った。使用した質量分析器は分子量が1000以下の物質を測定できる機種である。この質量分析器によっては1000以下の分子量のマススペクトルは観察できなかった。このことは、タール状物質は分子量が1000以上の巨大分子から構成されることを意味している。
赤外スペクトルとマススペクトルの両者を総合すると、これらの巨大分子が主としてC6H6が多数縮合した縮合芳香環物質であると判断される。原料ガスであるC2H2からこの様な縮合芳香環物質が形成される過程は、(1)の会合反応と(2)の重合反応からなる2段階反応であると推定される。
(1) 3C2H2 → C6H6
(2) nC6H6 → (C6H6)n
次に、これらの重合反応が生じる温度範囲について検討を行った。図19及び図20の反応領域から触媒を除去し、反応領域温度を種々に変更して、反応管内面におけるタール状物質の付着量を検討した。その結果、これらの重合反応は300℃〜600℃の範囲で生じることが分かった。
この重合温度領域の発見は、極めて重要な結論を導出する。即ち、300℃以下の温度領域と600℃以上の温度領域では重合反応が生じないから、C2H2を用いた場合にはタール状物質は生成されないという結論を与える。
本発明者等の研究によれば、インジウム・スズ・鉄系触媒を用いて、C2H2を原料ガスとしてカーボンナノコイルが生成する温度領域は550℃以上であり、望ましくは600℃〜1200℃であることが分かっている。つまり、550℃以上では、次のようなC2H2の自己分解反応が生起する。
C2H2 → 2C + H2
従って、C2H2からタール状物質を生成させないで、カーボンナノコイルを生成するためには、300℃〜600℃の中間温度領域を経過しないで、C2H2を300℃以下から一気に600℃領域に飛躍させることが必要になる。換言すれば、C2H2ガスを低温〜(常温)〜300℃の範囲の温度に設定しておき、その原料ガスを一気に600℃以上に設定された触媒領域に吹き込むことで、タール状物質の生成を排除することが可能になる。
C2H2ガスを低温〜(常温)〜300℃の範囲の温度に設定するには、反応器の外側にある低温又は常温の原料ガスをそのまま触媒領域に導入する場合と、この原料ガスを300℃以下の温度まで予熱し、この予熱原料ガスを触媒領域に導入する場合の二通りがある。この予熱方式には、反応管の外側で予熱する方式と、反応管の中で予熱する方式がある。これらのいずれの方式も本発明方法に含まれる。
触媒の種類を変更すれば、カーボンナノコイル以外のカーボンナノ構造物を生成することができ、触媒の種類によってタール状物質の生成温度領域も多少変動する。また、触媒の種類によって、カーボンナノ構造物の生成温度領域も多少変化することが分かっている。
例えば、特開2002−180251によれば、CH4を原料ガスとして、アルカリ金属含有量を0.05%以下に抑えたNi金属含有高純度アルミナペレット触媒では、カーボンナノチューブは400℃以上で選択的に生成される。また、本発明者等の実験では、この触媒によりタール状物質が生成される温度領域は250℃〜400℃の範囲であった。
従って、このNi金属含有高純度アルミナペレット触媒を用いれば、CH4等の原料ガスを250℃以下に設定しておき、この原料ガスを一気に400℃以上の触媒体に吹き込めば、タール状物質を生成することなく、目的とするカーボンナノチューブを生成することができる。
更に、具体的には、低温に冷却された原料ガスを直接触媒体に吹き込む方式、常温の原料ガスを直接触媒体に吹き込む方式、低温又は常温の原料ガスを250℃以下に予熱し、この予熱ガスを触媒体に吹き込む方式がある。予熱方式では、常温の原料ガスを反応管の外側で250℃以下に予熱してもよいし、反応管の中で250℃以下に予熱してもよいなど、様々な変形パターンが設計できる。いずれにしても、原料ガスをタール状物質が生成されない温度領域に保持することが重要で、この原料ガスを触媒体に直接吹き込むことが発明の要点である。
原料ガスや触媒を変更すれば、タール状物質の生成温度領域は多少変化するが、比較的に低温度領域である。また、カーボンナノ構造物を選択生成する温度領域はタール状物質生成温度領域とあまり重ならない比較的に高温度領域である。従って、原料ガスをタール状物質が生成されない温度域に保持しておき、この原料ガスを一気にカーボンナノ構造物生成温度域にある触媒体に吹き込むことによって、タール状副生成物を急減してカーボンナノ構造物を選択的に生成することが可能になる。
上述の方法によれば、タール状物質を副生しないから、その分だけカーボンナノ構造物の生成密度や生成収率が増加する反射的効果が得られる。しかし、カーボンナノ構造物の生成収率を更に高めるために、本発明では次のような工夫を行っている。
従来のカーボンナノ構造物の製造装置では、原料ガスが流通する反応管の断面積は、その方向にある触媒の断面積より遥かに大きく構成されている。触媒表面と接触して流通する原料ガスは触媒反応を起こすが、触媒から遠方を通過する原料ガスではほとんど未反応のまま単に通過するに過ぎない。
この様な大断面積の反応管では、内部を流れるキャリアガスと原料ガスの混合ガスは、触媒体との接触確率を増加させるため、低速で流通されていた。低速では混合ガスが層流状態にあり、キャリアガスであるHeと原料ガスであるC2H2とが均一に混合せず、原料ガスの濃度が反応管内で部分的に偏り、また混合ガスのガス温度に部分的な偏りがあると思われる。
そこで、本発明では、前述した原料ガスを触媒表面に集中的に吹き付け、また吹き込むことによって、原料ガスと触媒表面との接触確率を飛躍的に向上させ、カーボンナノ構造物の生成確率を増大化する方法を採用する。
原料ガス(常温原料ガス又は予熱原料ガス)を触媒表面に集中的に吹き付ける方法を実現するために、本発明装置では、反応管の中に原料ガスを導入する原料ガス供給管を反応管と別に配置し、前記供給管の原料ガス吹出し口を触媒体表面の近傍に配設する。つまり、大径の反応管の中に細径の孔には原料ガス、又は原料ガスとキャリアガスの混合ガスを導入する。
このように装置構成すれば、原料ガスは集中的に触媒体表面に強制的に接触し、カーボンナノ構造物の生成確率が飛躍的に増大する。同時に、原料ガス供給管を流通する原料ガスの濃度を従来よりも低く設定しても、生成確率が増大する分だけ、カーボンナノ構造物の生成収率は従来と変わらないか、又は従来より増加させることができる。
また、原料ガス供給管の断面積は比較的小さいから、原料ガス、又は原料ガスとキャリアガスの混合ガスを原料ガス吹出し口から吹き付けたときに、その断面積内での温度ムラや濃度ムラは考えられない。その意味で、原料ガスは均一温度且つ均一濃度で触媒体に接触することができ、触媒体の表面でカーボンナノ構造物が比較的均一に成長することができる。
本発明で使用される原料ガスとしては、チオフェンなどのイオウ含有有機ガス、リン含有有機ガスや炭化水素ガスなどが利用できるが、その中でも不要な元素が加わらない意味で炭化水素が好適である。炭化水素としては、メタン、エタンなどのアルカン化合物、エチレン、ブタジエンなどのアルケン化合物、アセチレンなどのアルキン化合物、ベンゼン、トルエン、スチレンなどのアリール炭化水素化合物、インデン、ナフタリン、フェナントレンなどの縮合環を有する芳香族炭化水素、シクロプロパン、シクロヘキサンなどのシクロパラフィン化合物、シクロペンテンなどのシクロオレフィン化合物、ステロイドなどの縮合環を有する脂環式炭化水素化合物などが利用できる。また、以上の炭化水素化合物を2種以上混合した混合炭化水素ガスを使用することも可能である。特に、望ましくは炭化水素の中でも低分子、例えば、アセチレン、アリレン、エチレン、ベンゼン、トルエンなどが好適である。
本発明で使用されるキャリアガスは原料ガスを搬送できるガスであり、例えばHe、Ne、Ar、N2、H2などが利用できる。原料ガス供給管に流通されるガスは、原料ガスだけでもよいし、原料ガスと上記キャリアガスの混合気体でもよい。また原料ガス供給管を除く反応管に流通されるガスはキャリアガスが好ましいが、キャリアガスに一部原料ガスが混入されても構わない。
原料ガス供給管に流される気体が原料ガスとキャリアガスの混合気体である場合には、混合気体の濃度比はカーボンナノ構造物の生成量との兼ね合いで自在に決められる。原料ガス供給管を有さない従来の装置よりは、原料ガスの濃度を低下させても、原料ガス吹き付け方式により反応確率が増大しているので、カーボンナノ構造物の生成収率を従来以上に確保することができる。
反応管内で600℃〜1200℃に加熱されている触媒体に原料ガスを直接吹き付けるため、原料ガス供給管の原料ガス吹出し口は触媒体の近傍に配置され、原料ガスが触媒体の表面に直接吹き付けられるように配置構成される。原料ガス供給管は1本以上であればよく、原料ガス吹出し口の開孔形状は丸孔、矩形孔など種々に形成され、原料ガスの触媒体 表面との接触面積が大きくなるように形成されることが望ましい。
原料ガス供給管から吹き付けられる原料ガスは、タール状物質が生成されない温度領域に設定される。この温度領域は低温〜(常温)〜タール状物質生成最低温度の範囲である。従って、低温や常温の原料ガスを吹き付けるためには、原料ガスを加熱する必要は無い。しかし、原料ガスの反応性を高めるためには、原料ガスをタール状物質生成最低温度以下に予熱することが望まれる。
原料ガスの予熱方式には二つの方法がある。第1の方法は、反応管の外部で原料ガスを予熱しておき、この予熱ガスを反応管内の原料ガス供給管に導入する場合である。第2の方法は、低温や常温の原料ガスを原料ガス供給管に導入し、原料ガス供給管を加熱して内部の原料ガスを加熱する場合である。
前者の場合、即ち外部で加熱された原料ガスを原料ガス供給管に導入する場合には、原料ガス供給管の周囲に供給管加熱用ヒータを設ける必要は無い。つまり、この場合は、原料ガス供給管に導入される原料ガスの温度範囲が低温〜(常温)〜タール状物質生成最低温度にある場合に包含される。
後者の場合、即ち、原料ガス供給管を加熱する場合では、原料ガス供給管の周囲に供給管加熱用ヒータが設けられる。この供給管加熱用ヒータにより原料ガスはタール状物質が生成されない温度領域内において予熱される。この予熱温度は原料ガスの種類に多少は依存し、C2H2では300℃以下に設定されればよい。触媒との反応性を高めるために、望ましくはその最高温度である約300℃に設定されればよい。
本発明では、原料ガスの殆どは触媒体表面でカーボンナノ構造物に転換され、未反応のまま下流に流れ去る原料ガスは極めて少なくなる。そのため、反応管の下流域でタール状生成物が形成されることも急減できる効果がある。即ち、本発明ではタール状物質は殆ど生成されないから、反応領域の上流側にも下流側にもタール状副生成物が付着する現象は殆ど無くなる。
[実施例1:カーボンナノコイルの生成]
図1は本発明に係る原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置をカーボンナノコイルの製造に用いた場合の概略構成図である。原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置2は、反応管4の外周に反応領域加熱用ヒータ6を配置し、この反応領域加熱用ヒータ6により均一な反応温度領域を反応領域10としている。この反応領域10に触媒体12が配置されている。
また、反応管4の中には細径の原料ガス供給管8が配置され、その供給管先端8aは反応領域10の中に達しており、しかも供給管先端8aは触媒体12の近傍に配置されている。原料ガス供給管8の周囲には供給管加熱用ヒータ9が配置され、原料ガス供給管8の全体をタール状物質が生成しない温度領域に加熱保持している。実施例1〜6では、ノズル状の原料ガス供給管8が用いられている。
前述した反応管4は断面直径(外径)が33mm(内径28mm)の石英管であり、原料ガス供給管8は外径3.2mm、内径1.6mmのSUS製の配管が使用されている。触媒体12は石英ガラスを基板として、その上にインジウム・スズ・鉄系触媒を形成したものである。インジウム・スズ・鉄系触媒の製造方法は次に述べる。
まず、トルエンにオクチル酸インジウム8.1g(大研化学工業株式会社製)とオクチル酸スズ0.7g(大研化学工業株式会社製)を混合し、超音波振動により均一に溶解させる。この有機溶液を10mm角の石英ガラス基板の上に刷毛で塗布し、温風で乾燥して有機膜を形成する。
この石英ガラス基板を500℃の加熱炉に20分間投入して有機成分を熱分解し、インジウム・スズ膜を形成した。このインジウム・スズ膜の厚みは300nmであった。このガラス基板のインジウム・スズ膜上に真空蒸着法により20nmの厚みを有する鉄膜を形成して、インジウム・スズ・鉄系触媒を形成した。
キャリアガスは大陽東洋酸素株式会社製造の高純度He(純度99.999vol%)、 C2H2は株式会社サーンガスニチゴー製造の一般溶解アセチレン(純度98vol%以上)を使用した。キャリアHeの圧力は1atm、流速は0.8cm/s、反応領域温度は700℃、反応時間は30分である。この条件は、以下の3種類の実施例について共通である。
図2は、図1に示すカーボンナノ構造物製造装置に付属装置を組み合わせた場合の全体構成図である。キャリアガス容器21からバルブ23を介してHeが供給され、マスフローコントローラー25により流量制御されてバルブ29を介してキャリアガス供給管31にHeが供給される。
また、マスフローコントローラー26により流量制御されたHeはバルブ28を介して原料ガス供給管8にも供給される。他方、原料ガス容器22からはバルブ24を介してC2H2が供給される。このC2H2はマスフローコントローラー27により流量制御され、バルブ30を介して原料ガス供給管8に供給される。従って、原料ガス供給管8にはHeとC2H2の混合気体が供給される。
更に、触媒体12にカーボンナノコイルであるカーボンナノ構造体を成長させた後、通過ガスは氷温に冷却された冷却材32aを内蔵したタールトラップ32まで流れる。このタールトラップ32で冷却されたタール状副生成物がトラップされ、残留ガスは排気管33から矢印f方向に流通して行く。
上述したように、反応管4には矢印a方向にHeを流し、原料ガス供給管8にはHeとC2H2の混合ガスを流す。夫々の濃度条件は条件1、条件2及び条件3の3種類で行われた。
条件1では、原料ガス供給管8には、He=100(SCCM)とC2H2=30(SCCM)の混合ガスが流され、反応管4にはHe=130(SCCM)が流された。C2H2の全体に対する濃度比は30/260×100=11.5(vol%)である。原料ガス供給管8を有さない従来の製造装置におけるC2H2濃度比が23(vol%)であり、この23(vol%)を基準濃度として、条件1は基準濃度の1/2に設定されている。
条件2では、原料ガス供給管8には、He=50(SCCM)とC2H2=15(SCCM)の混合ガスが流され、反応管4にはHe=195(SCCM)が流された。C2H2の全体に対する濃度比は15/260×100=5.8(vol%)であり、基準濃度の1/4に設定されている。
条件3では、原料ガス供給管8には、He=25(SCCM)とC2H2=8(SCCM)の混合ガスが流され、反応管4にはHe=227(SCCM)が流された。C2H2の全体に対する濃度比は8/260×100=3.1(vol%)であり、基準濃度の1/8に設定されている。
触媒体12上のカーボンナノコイルの生成状況は電子顕微鏡像から判断され、良好な生成率の場合は○、良好に生成されていない場合には×であらわされる。タール状副生成物の生成量は、反応管4、排気管33及びタールトラップ32などに付着したものを全てアセトンに溶解捕集し、アセトンを蒸発させた残留分の重量を測定することで計測された。
タール状副生成物は、赤外分光光度計(島津製作所FT−IR−8200PC)により成分分析が行われ、アセチレン由来の環数の高い縮合芳香環、或いは高縮合芳香環同士の結合物質であることが判明した。また、質量分析計により物質の同定試験を行ったが、分子量が大きく、少なくとも分子量1000以上の物質であることが判明した。
表1には、条件1〜条件3までの結果がまとめられている。条件1の電子顕微鏡像は図3と図4に示され、条件2の電子顕微鏡像は図5と図6に示され、条件3の電子顕微鏡像は図7と図8に示されている。
図3は条件1(基準濃度の1/2)により得られた10000倍のカーボンナノコイルの電子顕微鏡像である。図4は条件1(基準濃度の1/2)により得られた5000倍のカーボンナノコイルの電子顕微鏡像である。両方共に、カーボンナノコイルがよく成長していることを示している。
図5は条件2(基準濃度の1/4)により得られた10000倍のカーボンナノコイルの電子顕微鏡像である。図6は条件2(基準濃度の1/4)により得られた5000倍のカーボンナノコイルの電子顕微鏡像である。条件1と同様、両方共に、カーボンナノコイルがよく成長していることが分かる。
図7は条件3(基準濃度の1/8)により得られた10000倍のカーボンナノコイルの電子顕微鏡像である。図8は条件3(基準濃度の1/8)により得られた30000倍のカーボンナノコイルの電子顕微鏡像である。やはり、条件1と同様、両方共に、カーボンナノコイルがよく成長していることが分かる。
以上から分かるように、本発明の方法及び装置を用いれば、基準濃度の1/2、1/4及び1/8にまでC2H2濃度を低下させても、カーボンナノコイルが高密度に成長することが実証された。
また、タール状物質の生成量は、基準濃度の1/2→1/4→1/8になるに従い、0.089g→0.025g→0.051gと変化し、しかも極めて少ないことが分かった。また、反応管4の外観を観察しても、タール状物質による汚れは極めて少なく、従来の装置よりも格段に防汚性能が優れていることが実証された。
[比較例:従来装置によるカーボンナノコイルの製造]
本発明装置を使用した従来例1と比較するため、原料ガス供給管8を取り外した従来装置、即ち図19に示す装置で同様のカーボンナノコイル製造試験を行った。装置の構造やHe、C2H2は全く同じものが使用された。異なる点は、C2H2濃度を変えたことである。
条件4は基準濃度と同一、条件5は基準濃度の2/3、条件6は基準濃度の1/3である。これらの結果は表2に纏められている。条件4の結果は図9及び図10、条件5の結果は図11、条件6の結果は図12に電子顕微鏡像として示されている。
図9は条件4(基準濃度と同一)により得られた10000倍のカーボンナノコイルの電子顕微鏡像である。図10は条件4(基準濃度と同一)により得られた5000倍のカーボンナノコイルの電子顕微鏡像である。カーボンナノコイルはよく成長しており、従来技術の結果が再現されている。
図11は条件5(基準濃度の2/3)により得られた10000倍のカーボンナノ物質の電子顕微鏡像である。図12は条件6(基準濃度の1/3)により得られた10000倍のカーボンナノ構造物の電子顕微鏡像である。これらの像はカーボンナノコイルが成長していないことを示している。
これらの結果から、従来方法及び従来装置では基準濃度程度でなければカーボンナノコイルは成長できず、基準濃度よりも低下した場合にはカーボンナノコイルは成長できないことが分かった。
また、タール状物質の生成重量を見ると、条件4が0.317gと極めて高く、条件5及び条件6になると0.083g及び0.048gに低下する。しかし、このタール状物質の生成量は表1に示される条件1〜条件3のタール状物質の生成量より遥かに多いのである。反応管4の内面が黒くなることからもその状況が分かる。
従って、本発明の方法及び装置を用いれば、C2H2濃度が基準濃度より低下してもカーボンナノコイルは確実に生成でき、しかもタール状物質の生成量は遥かに小さく改善できることが実証されたのである。
[実施例2:カーボンナノチューブ]
図13は、本発明に係る原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置をカーボンナノチューブの製造に用いた場合の概略構成図である。この装置は実施例1と全く同様の原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置2であり、異なるのは触媒体12と反応領域温度と原料ガス供給管温度と原料ガス・キャリアガスである。
第1の相違点は、触媒体12として、ナトリウム含量が0.01%以下である高純度γ―アルミナペレット(99.95%以上)にNiを焼結させた触媒が使用されたことである。第2の相違点は、反応領域温度を500℃に保持したことである。第3の相違点は、原料ガス供給管温度を250℃に保持したことである。また、第4の相違点は、原料ガスとしてCH4、キャリアガスとしてArを使用したことである。
前述したように、上記Ni金属含有高純度アルミナペレット触媒では、カーボンナノチューブは400℃以上で生成され、タール状物質は250℃〜400℃の温度範囲で生成される。従って、反応領域温度は500℃に、原料ガス供給管温度は250℃に設定された。
図13に示されるように、触媒体12の表面にカーボンナノチューブが高密度に成長し、しかも反応管4の内面にはタール状副生成物が殆ど観察されなかった。原料ガス供給管8と供給管加熱用ヒータ9を用いる本発明方法及び本発明装置による良好な作用効果が明らかに観察された。
本発明は、カーボンナノコイルやカーボンナノチューブの製造に限定されるものではなく、ビーズ付きカーボンナノチューブ、カーボンナノブラシ、フラーレンなどの広範囲のカーボンナノ構造物の製造に利用できるものである。
図14は、本発明に係る原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置の触媒体として触媒粉体を用いた場合の概略構成図である。図14では、図1の触媒体12が触媒構造体から構成されるが、実施例3では、触媒粉体13を矢印a方向に流通させている。前記触媒粉体13が反応領域10に流入すると、反応領域加熱用ヒータ6により前記生成温度まで加熱され、この触媒粉体13に原料ガス吹出し口8bから原料ガスが吹き付けられ、触媒粉体構成粒子13aの表面にカーボンナノ構造物14が成長する。
原料ガス供給管8は、原料ガス吹出し口8bが反応領域10に達するように配置され、原料ガス供給管8の周囲には原料ガス供給管用ヒータ9が配置されて、原料ガス供給管8の全体をタール状物質が生成しない温度領域に加熱保持している。
図15は、本発明に係る原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置に触媒粉体供給管を設けた場合の概略構成図である。図15では、原料ガス供給管8以外に触媒粉体供給管7及びキャリアガス供給管31が配設され、各供給管には、原料ガス供給管用ヒータ9、触媒粉体供給管用ヒータ及びキャリアガス供給管用ヒータが設けられている。前記原料ガス供給用ヒータは、他の実施例と同様に原料ガス供給管8の全体をタール状物質が生成しない温度領域に加熱保持している。また、前記触媒粉体供給管用ヒータ5は、触媒粉体供給管7を生成温度まで加熱するから、この触媒粉体13が反応領域10に生成温度で供給され、原料ガスを前記触媒粉体に吹き付けることにより、カーボンナノ構造体が直ちに成長し始める。
更に、図15では、キャリアガス供給管31も配設され、キャリアガスを所定温度に加熱することができる。キャリアガスが加熱されることにより、反応領域10を均一な温度に保持され、安定してカーボンナノ構造物の生成を行うことができる。
図16は、本発明に係る原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置に混合ガス供給管を設けた場合の概略構成図である。図16では、前記原料ガスと触媒粉体13を混合して、反応領域10に供給する。前記原料ガスと触媒粉体13の混合比を適宜に調節される。更に、混合ガスは混合ガス供給管用ヒータ9により、原料ガスと触媒粉体13は同一温度に予熱され、反応領域10に導入されると混合ガスは直ちに生成温度領域まで加熱され、カーボンナノ構造物14が生成される。
図17は、本発明に係る原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造装置2に攪拌装置17が付設された場合の概略構成図である。図17では、前記反応領域10内の触媒粉体13を攪拌する攪拌装置17が付設され、攪拌された触媒粉体13に原料ガスを吹き付けるように構成される。前記攪拌装置17は、超音波振動などを用いた振動手段、回転板を回転させる若しくは触媒粉体が供給される容器自体を回転させる回転手段、揺動板を前記反応領域内に付設して揺動運動させる揺動手段、又はその他の公知の手段から構成される。更に、実施例6の攪拌装置が付設されたカーボンナノ構造体反応領域10内に所定量の触媒粉体13を堆積させてから、前記触媒粉体13を攪拌する断続運転、又は前記触媒粉体13を供給し続けながら攪拌する連続運転のいずれの場合にも用いることができる。
図18は、本発明に係る各ガス供給管8とそのガス吹出し口の概略構成図である。(18A)は、ノズル状のガス供給管8の概略構成図である。各ガス供給管(原料ガス供給管、触媒粉体供給管又はキャリアガス供給管)の供給管先端8aには、ガス吹出し口8bが形成され、このガス吹出し口8bから反応領域10へガスを供給する。(18A)では、先端8aがテーパ状に構成され、供給ガスをより効率的に反応領域10に吹き付けることができる。
(18B)は、外周にガス吹出し口8bを設けたガス供給管8の概略構成図である。(18B)では、複数の吹出し口8bが供給管先端8aの外周に設けられ、前記反応領域10内に原料ガス及び/又は触媒粉体13が拡散される。従って、前記原料ガスと触媒粉体13の接触確率が増加するから、高効率にカーボンナノ構造物14を生成することができる。実施例1〜6に用いられるガス供給管は、図18に示す形状に限定されず、目的に応じて種々の形状を有する公知のガス供給管及びそのガス吹出し口を用いることができる。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
本発明の第1の形態によれば、タール状副生成物は低温から次第にカーボンナノ構造物生成温度にまで上昇する過程で、原料ガスが分解・結合することによって発生することが本発明者等の研究で分かった。つまり原料ガスが分解・結合する中間温度領域を反応過程から除去することが本発明の主題となる。このために、この発明では、原料ガスをタール状副生成物が生成されない温度領域(前記中間温度領域より低い温度、常温又は更に低温)に保持しておき、この原料ガスを前記中間温度を跳び越して、一気にカーボンナノ構造物生成温度領域に導入することにより、タール状副生成物の発生を大幅に低減することが可能となる。しかも、原料ガスを反応領域に向かって直接吹き付けるから、反応領域内の触媒体と原料ガスとの反応確率が増大し、カーボンナノ構造物の生成収率を大幅に向上できるようになる。更に、前記触媒体を反応領域内に固定して、この触媒体に原料ガスを吹き付けても良く、又は触媒体を触媒体タンク等から必要に応じて前記反応領域に供給することもできる。
本発明の第2の形態によれば、この発明では、原料ガスをタール状副生成物が生成されない温度域まで予熱しておき、この予熱原料ガスを中間温度を跳び越して一気にカーボンナノ構造物生成温度にまで引き上げることにより、タール状副生成物の発生を大幅に低減することができる。第1の発明との相違は原料ガスを予熱する点にある。この予熱により原料ガスの反応性を増大でき、触媒領域における原料ガスの反応確率を加速的に増大することになる。また、原料ガスを反応領域に向かって直接吹き付けるから、反応領域内の触媒体と原料ガスとの反応確率が増大し、カーボンナノ構造物の生成密度と生成効率を大幅に向上できるようになる。更に、前記触媒体を反応領域内に固定して、この触媒体に原料ガスを吹き付けても良く、又は触媒体を触媒体タンク等から必要に応じて前記反応領域に供給することもできる。
本発明の第3の形態によれば、前記触媒体が触媒構造体から構成されることにより、反応領域内にのみ触媒体を設置することができるから、触媒体と原料ガスを高効率に反応させることができる。更に、カーボンナノ構造物は触媒構造体の表面に形成されるから、この触媒構造体よりカーボンナノ構造物を高効率に捕集することができる。
本発明の第4の形態によれば、製造されるカーボンナノ構造物の前記触媒構造体の種類に応じて、触媒構造体の構造を選択することができる。表面積が大きい層状構造、格子状構造、多孔質構造又は繊維状構造を有する触媒構造体を用いることにより、高効率にカーボンナノ構造物を生成することができる。更に、板状構造の触媒構造体を用いることにより、容易にカーボンナノ構造体を回収することができる。
本発明の第5の形態によれば、前記触媒体が触媒粉体から形成されることにより、必要に応じて触媒体を容易に供給することができる。更に、前記触媒粉体構成粒子表面に形成されたカーボンナノ構造物は、触媒粉体を流出させることにより、容易に回収することができる。
本発明の第6の形態によれば、前記触媒粉体を必要に応じて反応領域に供給することができ、原料ガスと触媒粉体を高効率に反応させることができる。
本発明の第7の形態は、前記触媒粉体を触媒粉体供給管から前記生成温度域まで加熱された空間内に供給する原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。前記触媒粉体が触媒粉体供給管から供給されることにより、必要な量を適宜に反応領域へ供給することができる。更に、前記触媒粉体供給管を加熱することにより、前記生成温度域まで加熱された触媒粉体を供給することができ、前記原料ガスと直ぐに反応することができる。
本発明の第8の形態によれば、前記原料ガスと触媒粉体の混合比を適宜に調節することにより、高効率に前記カーボンナノ構造物を製造することができる。更に、混合ガスを加熱することにより、原料ガスと触媒粉体を同一温度に予熱することができ、反応領域に導入されると混合ガスは瞬時に生成温度領域まで加熱され、カーボンナノ構造物を高効率に製造することができる。
本発明の第9の形態によれば、前記触媒粉体を攪拌することにより、原料ガスを触媒粉体と効率的に接触させることができ、高効率にカーボンナノ構造物を製造することができる。攪拌方法としては、超音波振動などを用いた振動方法、回転板を回転させる若しくは触媒粉体が供給される容器自体を回転させる回転方法、揺動板を前記反応領域内に付設して揺動させる揺動方法、又はその他の公知の方法を用いることができる。
本発明の第10の形態によれば、例えば、原料ガスとして使用される炭化水素からタール状副生成物が生成される温度は300℃〜600℃であり、炭化水素からカーボンナノ構造物が生成される温度は触媒の種類によって多少幅があるが、550℃以上であり、効率的には600℃〜1200℃であると考えられる。従って、原料ガスの予熱温度を300℃以下に制御して、この予熱原料ガスを一気に600℃以上の反応領域に送り込めば、原料ガスはタール状副生成物の生成温度領域を通過しないから原理的にタール状副生成物は生成されないことになる。
本発明の第11の形態によれば、原料ガスの温度はタール状副生成物が生成されない温度域にあるから、原料ガス供給管の内部でタール状副生成物は生じず、しかも原料ガス吹出し口からこの原料ガスを触媒体に直接吹き付ける構造であるから、原料ガスは触媒と高確率に接触して効率的にカーボンナノ構造物に転換され、タール状副生成物の発生を急減できる。原料ガスの多くは触媒反応に消費されるから、反応管内でタール状物質が生成されることも強力に抑制される。
本発明の第12の形態によれば、予熱温度域では原料ガス供給管の内部でタール状生成物は生じず、しかも原料ガス吹出し口から予熱原料ガスを触媒体に直接吹き付ける構造であるから、予熱原料ガスは触媒と高確率に接触し、カーボンナノ構造物が高効率に製造される。従って、上述の装置と同様、原料ガスの多くは触媒反応に消費されるから、反応管内でタール状物質が生成されることも防止できる。
本発明の第13の形態によれば、予熱温度域では混合ガス供給管の内部でタール状生成物は生じない。混合ガス吹出し口から反応領域に流入した予熱混合ガスは、瞬時に生成温度まで加熱され、混合ガスを構成する原料ガスと触媒体に時にされたから予熱混合ガスを触媒体に直接吹き付ける構造であるから、予熱原料ガスは触媒と高確率に接触し、カーボンナノ構造物が高効率に製造される。従って、上述の装置と同様、原料ガスの多くは触媒反応に消費されるから、反応管内でタール状物質が生成されることも防止できる。
本発明の第14の形態によれば、前記触媒体を供給する触媒供給管を流通して触媒体を反応領域へ供給することにより、必要な量の触媒粉体を供給することができる。更に、前記予熱装置より前記触媒体を予熱することによって、反応領域に供給された触媒体は瞬時に生成温度まで到達し、前記原料粉体と反応することができる。
本発明の第15の形態によれば、前記触媒粉体を攪拌することにより、原料ガスを触媒粉体と効率的に接触させることができ、高効率にカーボンナノ構造物を製造することができる。前記攪拌装置は、超音波振動などを用いた振動手段、回転板を回転させる若しくは触媒粉体が供給される容器自体を回転させる回転手段、揺動板を前記反応領域内に付設して揺動運動させる揺動手段、又はその他の公知の手段から構成することができる。更に、反応領域内に所定量の触媒体を堆積させてから、前記触媒体を攪拌しても良く、又は前記触媒体を供給し続けながら攪拌することもできる。
本発明の第16の形態によれば、カーボンナノコイル製造触媒を用いれば、炭化水素から選択的にカーボンナノコイルを生成できるから、本発明方法によりタール状副生成物を低減すると同時にカーボンナノコイルを高密度で高効率に製造することができる。前記カーボンナノコイル製造触媒としては、遷移金属元素を含有する金属炭化物触媒、金属酸化物触媒又は金属系触媒を用いることができる。遷移金属元素は、周期表に示される遷移元素を意味しており、具体的には、第4周期のSc〜Cu、第5周期のY〜Ag、第6周期のLa〜Auなどである。上記遷移金属元素から選択された元素をAとすると、前記金属炭化物としては、AInC、ASnC、AInSnCなどをカーボンナノ構造物製造触媒として用いることができる。更に、前記金属酸化物としては、AInO、ASnO、AInSnO、AAlSnO又はACrSnOなどをカーボンナノ構造物製造触媒として用いることができ、前記金属系触媒としては、AAlSn、ACrSn又はAInSnなどを用いることができる。更に、好適な金属触媒として、遷移金属元素にFe元素を含有する金属触媒をカーボンナノ構造物製造用触媒として用いることができる。より具体的には、FexInyCz、FexSnyCz若しくはFexInyCzSnwなどのFe系金属炭化物触媒をカーボンナノ構造物製造用触媒として用いることができ、金属炭化物触媒のより好適な組成比はFe3InC0.5、Fe3SnC若しくはFe3In1−vC0.5Snw(0≦v<1,W≧0)である。更に、前記カーボンナノ構造物製造用触媒として、FexInySnz、FexAlySnz又はFexCrySnzなどのFe系金属触媒を用いることができ、より好適な組成比はFe3InySnz(y≦9、z≦3)、FexAlySnz(y≦1,z≦3)若しくはFeCrySnz(y≦1,z≦3)である。これらの金属触媒から目的に応じた触媒体を選択することにより、高効率にカーボンナノ構造物を生成することができる。
本発明の第17の形態によれば、原料ガスがアセチレン、アリレン、エチレン、ベンゼン又はトルエン、アルコール又はメタンの少なくとも一つを含む原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。これらの原料ガスは、炭化水素の中でも特にカーボンナノ構造物を生成する場合に好適な原料ガスであり、タール状副生成物を発生させないで、カーボンナノ構造物を量産することができる。
本発明の第18の形態によれば、カーボンナノ構造物が、カーボンナノコイル、カーボンナノチューブ、カーボンナノツイスト、ビーズ付きカーボンナノチューブ、カーボンナノブラシ又はフラーレンである原料吹き付け式高効率カーボンナノ構造物製造方法である。触媒体の種類を変更したり、反応領域の生成温度を可変調整することにより、特定のカーボンナノ構造物を選択的に量産することができる。