JP2006045051A - カーボンナノチューブの製造方法および製造装置 - Google Patents

カーボンナノチューブの製造方法および製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒CVD法によりカーボンナノチューブを合成する装置において、移動床などの固体触媒に層厚みを形成させて反応させる場合、固体触媒層にムラなく炭素含有ガスを接触させ、かつ、固体触媒が連続的に搬出できることが不可欠になる。本発明はこれらの課題を解決する方法を見いだす。
【解決手段】固体触媒層にアルミナボールなどを希釈材として混ぜることにより、固体触媒層と炭素含有ガスの気固接触が良好に保たれ、かつ、希釈材層を攪拌することで、炭素含有ガス流れ方向に固体触媒を搬出させることができ、有益な直径を有するカーボンナノチューブの合成反応を連続的に行うことができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブの製造方法および製造装置に関する。更に詳しくは触媒を利用した化学蒸着法により効率良くカーボンナノチューブを製造する方法に関するものである。
カーボンナノチューブを製造する方法として、アーク放電法及び化学蒸着法(CVD)による方法が知られている。CVDによる方法はカーボンナノチューブの有効な大量生産法として知られ、通常500℃から1000℃の高温下で鉄、ニッケルなどの金属微粒子と原料である炭素含有ガスを接触させて合成する。
CVDによる方法では、金属粒子径を制御することで有益な径のカーボンナノチューブを選択的に合成できることが知られており、その制御方法として担体の構造を利用して均一に金属触媒を担持させる方法(触媒CVD法)がある。触媒CVD法の担体としてはシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、ゼオライトなどが用いられ、中でも金属触媒が均一に担持できる無機多孔体が好ましく、更に好ましくは、細孔径や骨格組成が均一である点でゼオライトが使用される。
ゼオライトは結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタノシリケート、結晶性アルミノフォスフェートなど、結晶性無機多孔性物質である。
これらの担体を用いた固体触媒はカーボンナノチューブ合成の際、粉末のまま使用される。
この粉末状の固体触媒を用い、有益な径を有するカーボンナノチューブを大量に合成するには、固体触媒の滞留時間を制御することが重要であり、必要以上に反応を進めると直径の大きなカーボンナノチューブ、更には、カーボンファイバーが成長するため、品質が低下し、ゼオライトによる金属粒径の制御の意味合いがなくなる。このため、有益な径のカーボンナノチューブを大量に合成できる装置は、固体触媒と炭素含有ガスの気固接触が充分維持された上で、滞留時間が制御できる必要がある。
従来の技術として特許文献1には搬送装置に保持した固体触媒を加熱炉に連続的に供給し、炉内で炭素含有化合物と接触させ連続的にカーボンナノチューブを合成する装置が記載されている。
特許文献2には流動床を用いたカーボンナノチューブの合成が記載されている。
特許文献3には流動材を用いた流動床でのカーボンナノチューブを合成する装置が記載されている。
特開2003−238125号公報 特許第3369996号公報 特開2004−75457号公報
特許文献1では炭素含有有機物との固体触媒の気固接触が悪いために反応装置に固体触媒層をなるべく薄く保持させる必要があり、最も好ましい厚みは3mm以下である。このような方法では生産性に対し装置の反応面積が大規模になる問題がある。また、装置が大型化する上に高温反応のため熱ロスが増大する。
特許文献2および3の流動床では、安定した流動化が維持されない場合が多く、流動床内に固体触媒の触媒塊が形成されたり、もしくは、偏流が生じ局所的な流動化しか得られない。
このような反応場では、固体触媒の滞留時間に大きなバラツキが生じ、直径の大きい不必要なカーボンナノチューブ、カーボンファイバーの生成を許容することになるため、触媒CVD法には最適な装置とは言えない。
また、一般に流動床は、未反応触媒のリーク、原料である炭素含有ガスの吹き抜け、固体触媒の粒径の制限などの問題があり、装置面では飛び出し触媒の回収のためのサイクロン、集塵機など付帯設備も備え、全体として煩雑な装置になる。
以上のように、粉末状の固体触媒を用いたいずれの反応装置も反応の安定性、装置が煩雑になる課題を含んでおり、これまで簡単で効率的な工業化装置は考案されていない。
本発明の課題は容易にカーボンナノチューブを大量生産できる装置を提供することである。
本発明者らは課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、固体触媒をアルミナボールなどの希釈材で希釈することで、固体触媒と原料の炭素含有ガスの気固接触が良好に保たれ、かつ、固体触媒を含んだ希釈材層を攪拌することで、希釈材層内での固体触媒の搬出が可能になり、連続的に高品質のカーボンナノチューブが合成できることを見いだし本発明に至った。
希釈材は高温で溶融することのない安定な物質であり、カーボンナノチューブの合成に影響を与えない、つまり炭素含有ガスと反応しない物質であれば特に制限することはない。
すなわち、本発明は、炭素含有ガスと固体触媒をカーボンナノチューブ形成反応条件下で接触させカーボンナノチューブを製造する際に、希釈材により希釈した固体触媒を500〜1000℃の温度範囲で攪拌することを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法、および、希釈材により希釈した固体触媒層を保持する保持材と撹拌翼をそなえ、原料となる炭素含有ガスの供給口、固体触媒の供給口、固体触媒およびカーボンナノチューブ排出口をそなえたカーボンナノチューブ製造装置である。
本発明によれば、固体触媒層にアルミナボールなどを希釈材として混ぜることにより、固体触媒層と炭素含有ガスの気固接触が良好に保たれ、かつ、希釈材層を攪拌することで、炭素含有ガス流れ方向に固体触媒を搬出させることができ(さらに、保持材を介して固体触媒を搬出させることにより、希釈材層とカーボンナノチューブを生成させた後の固体触媒を容易に分離することができ)、また、固体触媒の滞留時間を制御し得るのみならず、滞留時間に大きなバラツキを生じることなく、結果として有益な直径を有するカーボンナノチューブの合成反応を連続的に行うことができる。
以下本発明について詳述する。カーボンナノチューブはグラファイトの一枚面を巻いて筒状にした形状を有し、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブと定義され、本発明により得られるカーボンナノチューブは、外直径が100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下である。
本発明による固体触媒は、固体担体の表面に触媒を担持したものであればどのようなものでも良い。固体担体としてはシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、ゼオライト、活性炭、グラファイトなどが挙げられ、中でも金属が均一に担持できる点でゼオライトが好ましい。更に、使用されるゼオライトは結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタノシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタアルミノフォスフェートなど特に制限されない。また、本発明で用いられる固体担体の粒子径は希釈材層を移動すれば良く、他の装置、例えば、流動床のように安定した流動化を維持するために粒子径が制限されることがない。
金属触媒はコバルト、鉄などが好ましく、これらは上述の通り、固体担体の表面に担持させて使用することが出来る。本発明において金属触媒の種類は遷移金属元素が用いられ、なかでもV,Mo、Fe、Co、Ni、Pd等は特に好ましく用いられる。また金属触媒は1種類だけで担持されても、2種類以上担持されていてもよいが、2種類以上担持させる方がより好ましい。2種類の場合はCoと他の金属の組み合わせが特に好ましい。金属の担持量は使用される固体担体に対し0.1重量%〜10重量%が好ましく、0.5重量%〜5.0重量%がより好ましい。
固体担体への金属担持方法は特に限定されないが、例えば、担持したい金属の塩を溶解させた水や非水溶液中(例えばエタノール溶液)に固体担体を含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させ空気中や不活性ガス中で高温で加熱することにより担持する含浸法や、その他の方法として平衡吸着法、イオン交換法などが用いられる。
希釈材はカーボンナノチューブ形成反応条件下で、炭素含有ガスと反応せず、カーボンナノチューブ形成反応条件下で溶融または分解しない固体が好ましく、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、ゼオライト、活性炭、グラファイト、ジルコニア、石英硝子、セラミックなどが挙げられる。
これら希釈材は0.05mmから5cmの直径もしくは代表径を有しているものが好ましく、希釈材の形状は攪拌混合できる形状であればどのようなものでも良く、球形、楕円形、などが使用できるが、合成後、固体触媒と分離する必要があること、原料である炭素含有ガス並びに固体触媒が希釈層を後述する通り、ピストンフローに近い状態で流れる必要性があることから、形状として球形が好ましい。
次に、本発明について図面を参酌して説明する。図1に本発明の装置形態の一例であり、並流式の反応で固体触媒および原料ガスがダウンフローで供給される装置例である。
装置は内部に希釈材1が充填され、希釈材は保持材2により保持されている。保持材2は固体触媒および炭素含有ガスが透過し、希釈材が透過しない多孔質の構造を有している。
希釈材1は攪拌手段8により混合でき、反応装置は炭素含有ガスを供給する炭素含有ガス供給ライン3と固体触媒を連続もしくは間欠的に供給する固体触媒供給ライン4と、合成後の固体触媒を排出する固体触媒排出口5、排ガスを排気する排気ライン6、反応部を所定の温度に加熱、保持できるヒーター7を具備する。
反応は並流式でも交流式でも使用でき、連続式もしくはバッチ式のいずれも使用できる。また、触媒および炭素含有ガスの流れはアップフローでも、ダウンフローでもいずれを用いても良い。
次に、反応方法について説明する。予めヒーター7により反応温度まで希釈層を加熱保持され、攪拌手段により希釈材層が混合している反応器に、炭素含有ガス供給ライン3と、固体触媒供給ライン4を通して、規定量の炭素含有ガスと固体触媒を供給する。固体触媒および炭素含有ガスは希釈材層上部に到達するまでに反応温度にまで昇温する。希釈材層上部に到達した固体触媒は、希釈材の空隙に充填され、炭素含有ガスの流れを推進力に、炭素含有ガスと共に希釈材層の空隙部を降下する。この固体触媒が希釈材の空隙間の移動の際、触媒の再分散が行われるため、気固接触が良好に保たれ、ムラのない反応が進行する。
固体触媒の降下速度は、希釈材の粒子径、形状、希釈材の攪拌、ガス空塔速度で調整される。希釈材層内の固体触媒の滞留時間は希釈材層の攪拌、希釈材層の層高さで調整される。この滞留時間は、用いる固体触媒や炭素含有ガスの種類、量および反応温度から決定されるカーボンナノチューブの合成反応の速度を考慮して、所望の反応に達するまでの所要時間を目安として設定される。固体触媒の降下速度の調整法は上記のとおり種々の要因を複合的に調整する必要があるため、一概にはいえないが、下記のように調整することができる。すなわち希釈材の粒子径が大きいほど降下速度は大きくなる傾向にあり、形状は、固体触媒がピストンフローを形成させるため、流動性が良い形状、すなわち球状またはそれに近い形状であることが好ましい。希釈材の攪拌速度は大きい方が降下速度は大きくなる傾向にある。また、ガス空塔速度も大きい方が降下速度は大きくなる傾向にある。さらに希釈材層の層高さを高くすれば滞留時間を長くすることができる。
希釈材の混合は流動床のような積極的な混合でなく、希釈材層をピストンフローに近い状態で固体触媒を移動させる混合であれば良く、希釈材層の攪拌方法として、バーブレータなどの振動手段により振動させて固体触媒を移動させても良いが、攪拌翼により混合するほうが好ましい。攪拌操作を与えることで、希釈材同士の衝突、摩擦により希釈材表面への固体触媒のスケーリングおよびスケーリングによる希釈材層の閉塞が抑制される。
なお、本発明において、ピストンフローに近い状態とは固体触媒および炭素含有ガスが流れ方向に一定の速度分布を持つ状態であり、この状態に近いほど、反応器に固体触媒を連続投入開始してから任意時間後、反応器底部より連続的に合成済みの固体触媒の流出が始まり、また、固体触媒の供給を停止してから先の任意時間に相当する時間後、合成済み触媒の流出が急激に低下することから確認される。
また、固体触媒が希釈層を降下する速度以上で固体触媒を供給した場合、希釈層上部に固体触媒が堆積し、反応器上部の圧力上昇することから把握でき、この場合、希釈層内の固体触媒の搬出力を上げるため、攪拌翼の回転数を上げて対応をとることもできる。 攪拌は希釈材層に対し上下方向の流れを形成するものでなく、希釈材層の垂直方向に対し水平方向の混合を行う形式の物が好ましい。攪拌翼形式としては、パドル翼、アンカー翼、ヘリカル翼、スクリュー翼、タービン翼、多段翼、平板翼が挙げられるが、図2−aで示すような攪拌軸9に垂直に取り付けられた複数の棒状の撹拌翼10を備えた多段翼(横型多段翼と称することがある)、図2−bで示すような平板翼11等の翼形状、あるいは攪拌軸に平行に複数の棒状の撹拌翼を備えた、いわゆる柵形状の多段翼(縦型多段翼と称することがある)を好ましく用いることができる。このなかでも多段翼を用いることが、特に縦型多段翼を用いることが、希釈材層を攪拌する際の流れ方向を水平方向またはそれに近くなるよう制御し得る点、後で記載する保持剤の目詰まり抑制のための発明を加えることができる点で特に好ましい。上記縦型多段翼として代表的な態様を図2−c,d,eに示す。すなわち図2−c〜eの縦型多段翼12、13、14は、攪拌軸9に平行(もしくはほぼ平行(±20°程度以内))に複数本の棒状の撹拌翼15が、攪拌軸9と垂直方向に取り付けられた一本または複数本の支持部材16を介して攪拌軸9に取り付けられている。
上記多段翼においてこの棒状の撹拌翼の断面形状は本発明で推奨する攪拌状態を維持できる限りにおいて特に制限はないが、円柱状、回転する周方向に対して流線形状をなしていることが好ましい。また棒状の撹拌翼は図2−c〜eのように直線状であってもよいし、波線状もしくは、折れ線状であってもよいが、希釈層全体を本発明で推奨する攪拌状態を維持するよう攪拌するためには、直線状とするのが好ましい。上記縦型多段翼における柵形状の形態は、攪拌翼の回転した場合、希釈材層の流れ方向が水平方向またはそれに近い状態を維持できる限り特に制限はない。さらに攪拌軸に対して垂直方向に棒状の撹拌翼を組み合わせた、いわゆる格子状であってもよく、このようなものも縦型撹拌翼の範疇に含まれるものとする。上記多段翼においては、隣り合う各棒状の撹拌翼間(攪拌軸の隣に位置する撹拌翼の場合は攪拌軸と撹拌翼間)の間隔(柵の目)が小さすぎると、希釈材がブロッキングして柵の目に引っかかって押し出されることによって上下方向の流れを形成しやすくなる。このような上下方向の流れの発生は希釈材層上面部に極端な凹凸ができるので容易に判断することができる。
好ましい柵の目の形態、すなわち各撹拌翼の間隔は、希釈材の粒子径の2倍から6倍の間が好ましく、更に好ましくは3倍から4倍である。
希釈材層底部まで降下した固体触媒は、カーボンナノチューブの合成反応が終了した状態であり、保持材の開口部を通し連続的、もしくは間欠的に固体触媒が希釈層から脱落し回収される。保持材は希釈材が透過せず、固体触媒と反応排ガスが透過する構造、例えば、金網、多孔版の形状を有す。また、保持材は500℃から1000℃において、炭素含有ガスと反応せず、反応温度下で溶融または分解しない材質であれば良く、活性炭、グラファイト、ジルコニア、石英硝子、セラミックなどが挙げられる
このような装置を用いてカーボンナノチューブの合成運転を行うと、固体触媒の性状により異なるが、長期運転を行うと、保持材が目詰まりしやすくなる傾向にある。
一旦保持材が目詰まりすると、希釈材層内の固体触媒並びに原料ガスが偏流してしまう。
偏流し始めると、滞留時間のバラツキが生じ有益な径を持つ品質の良いカーボンナノチューブが合成されにくくなり、更に、目詰まりが進行すると保持剤が閉塞して装置運転もできなくなる。これを防止するため、保持材を掃除する機構を設けることが好ましい。かかる保持材を掃除する機構(保持材掃除機構と称する場合もある)は、攪拌軸あるいは攪拌翼に取り付ける等の方法で設置することができる。そのような保持材を掃除するための治具としてスケーリングの掻き取り板、もしくはブラシなど保持材の網目や多孔面の反応終了後の固体触媒を掻き落とすあるいは振動によりふるい落とす等の機能を有する治具が挙げられ、これらは通常、攪拌軸または攪拌翼に取り付けて使用される。
具体的な形態として、図3−a,bに示すように攪拌翼の保持材に面した側に掻き取り板またはブラシ18、19を取り付ける方法、図4に示すように攪拌軸9に支持具20を介して掻き取り板またはブラシ18を取り付ける方法があげられる。攪拌翼はカーボンナノチューブ合成運転中は常に起動しているので、連続的に保持材および反応器内面のスケールが掻き取られ安定した運転が実現できる。
また、固体触媒が非常にさらさらとした性状を有する場合、固体触媒を希釈材層に一定時間保持するために攪拌速度を上げられない場合がある。この場合は、保持材を掃除する機構が攪拌翼のみに取り付けられていると、固体触媒が保持材付近に滞留しやすくなるため、保持材掃除機構を攪拌翼に設けるのみでなく、さらに攪拌翼とは別に攪拌軸から支持具を介して、または直接に掻き取り板またはブラシを取り付けるような態様で保持材掃除機構を設けることも好ましい。そのような具体例としては例えば図4に示すような形態が挙げられる。すなわち図4における縦型多段翼13の撹拌翼15の支持部材に掻き取り板またはブラシ18が設けられている他、攪拌軸9に取り付けられた支持具20を介して掻き取り板またはブラシ18が設けられている。
さらに本発明においては、攪拌翼の内壁面側端部にもブラシや掻き取り板等の反応容器内壁面を掃除する機構を設けることができる。これにより、内壁付近に存在する固体触媒も内壁部に付着することなく、反応系外に抜き出すことができる。
これらブラシや掻き取り板はその先端が保持材に接するか、あるいはそれよりやや長めとして保持材に接する機会もしくは力を増すことにより、保持材部に存在する固体触媒を確実に掻き取ることができるように設置するのが好ましい。
ブラシおよび掻き取り板は、カーボンナノチューブ形成反応条件下で、炭素含有ガスと反応せず、カーボンナノチューブ形成反応条件下で溶融または分解せず、弾力が維持できる材質が好ましく、タングステン、SUSなどが挙げられる。
原料となる炭素含有ガスの供給速度は希釈材層が流動化しない速度以下、つまり希釈材の最小流動化速度以下で行う。更に詳しくは、希釈材の最小流度化速度よりも、よりガス流速の遅い固体触媒の移動速度、つまり滞留時間によって決められる。
次に、原料ガスに用いられる炭素含有ガスとしては、カーボンナノチューブ形成反応条件下で気体である炭化水素類、アルコールなどが使用でき、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、イソプロピレン、n−ブタン、ブタジエン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロパン、n−ペンタン、2−メチルブタン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トルメチルブタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロオクタン、1,1−ジメチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、2−メチルペプタン、3−メチルペプタン、4−メチルペプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、イソプロピルシクロヘキサン、1−ノネン、プロピルシクロヘキサン、2,3−ジメチルヘプタン、n−デカン、ブチルシクロヘキサン、シクロデカン、1−デセン、ピネン、ピナン、リモネン、メタン、n−ウンデカン、1−ウンデセン、n−ドデカン、シクロドデセン、1−ドデセン、n−トリデカン、1−トリデセン、n−テトラデカン、1−テトラデセン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、エイコサン、ドコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ペプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ビニルトルエン、メシチレン、プソイドクメン、スチレン、クメン、ビニルスチレン又はこれらの混合物が挙げることができる。
原料となる炭素含有ガスは、窒素、アルゴン、水素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合物を用いることができる。このように炭素含有ガスと不活性ガスを併用することは、炭素化合物の濃度をコントロールしたり、キャリアガスとしての効果があることから好ましい。
これらのガスが固体触媒に供給される際のガス組成として、炭素含有化合物濃度が0.1体積%から99.9体積%であることが好ましく、より好ましくは0.5体積%から50体積%、更に好ましくは1体積%から30体積%である。
本法では固体触媒と原料となる炭素含有ガスを、カーボンナノチューブ形成条件下で接触させる。カーボンナノチューブ形成条件としては、500℃から1000℃が好ましく、さらに好ましくは550℃から950℃であり、より好ましくは600℃から850℃である。
[参考例1:固体触媒の調整]
無水塩化第二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水和物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40mlに溶かし、10.0gのチタノシリケート型ゼオライト粉末(NEケムキャット社製TS−1)を加え、超音波洗浄機で30分処理し、120℃恒温下で水を除去して、ゼオライト表面に塩化コバルト六水和物を担持し、以下の方法で金属を担持したた固体触媒を得た。
すなわち表面に塩化コバルト六水和物を担持したゼオライトを不活性ガス雰囲気下で焼成できる触媒焼成器で焼成し、担体(ゼオライト)上にカーボンナノチューブの触媒となる金属微粒子を形成させた。
触媒焼成器は焼成器下部に不活性ガス導入管、焼成器上部に排ガス放出管を備え、焼成器全体を電気ヒーターで加熱でき、かつ、温度制御が行える石英ガラス製の縦型反応器を用いた。焼成器内径は3cm、長さ80cmである。焼成器中央部には、固体触媒が保持できるように石英フィルターが設置されている。
この上に塩化コバルト六水和物を担持した固体触媒約10gとセットし、アルゴンガス毎分300CCで連続的に供給を開始し、焼成器をカーボンナノチューブ合成温度800℃に昇温した。
昇温後、800℃を保持したまま30分焼成し、アルゴン雰囲気下で室温まで降温し、担体上にカーボンナノチューブの触媒となる金属微粒子を形成した固体触媒を得た。
実施例1
反応器として、反応器上部に原料の炭素含有ガス導入管、固体触媒投入口が接続され、反応器全体を電気ヒーターで加熱でき、かつ、温度制御が行える石英ガラス製の縦型反応器を用いた。反応器内径は3cm、長さ80cmである。
また、反応器の中央部分には固体触媒が保持されるようにSUS製32メッシュのSUS製金網を取り付け、その上に直径1mmのアルミナボール(比良セラミック製)を7cm高さに充填した。また、アルミナボールの希釈層には直径6mm、長さ10mmの円柱を図1に示すように攪拌軸の垂直方向に等間隔に取り付けた多段翼を挿入し、30r.p.mの回転速度で希釈材層を攪拌を開始した。
反応器内に1000cc/分で窒素を流通させ、その状態で15℃/分の速度で800℃まで昇温した。昇温後、約10分温度を保持させ、アセチレン1体積%、窒素99体積%からなる炭素含有ガスに切り替え、温度800℃を保持しながら、炭素含有ガスを1000CC/分で供給開始した。同時に0.08g毎分の速度で参考例1で作成し、アルゴンガス雰囲気下で管理した固体触媒を連続的に供給開始した。
反応開始後、数分(2分)で反応器底部より反応済みの固体触媒が連続的に流出し始めた。
初期流動を考慮し、反応開始から10分後から30分までの反応済みの固体触媒を採取した。次いで、この固体触媒を用いて熱重量測定装置(TGA)により熱分析測定をした結果、炭素重量は9重量%であった。日本電子データム(株)操作電子顕微鏡JSM−630INFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボンの堆積はなく、外径が30nm以下のカーボンナノチューブが主成分であることがわかった。
[参考例2:固体触媒の調整]トリフルオロ酢酸鉄(日本化学産業株式会社製)1.5g、トリフルオロ酢酸コバルト(日本化学産業株式会社製)15gを500mlナス型フラスコに取り、エタノール(試薬1級)300CCを加えて溶解させた。次に、チタノシリケート型ゼオライト粉末(NEケムキャット社製TS−1)100gを加えエタノール溶媒に分散させた後、超音波洗浄機で30分処理した。
その後、40℃恒温下、微減圧下減圧でエタノールを脱溶媒し、ゼオライト表面にトリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸コバルトを担持した。
この操作を3バッチ繰り返し、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸コバルトを担持したゼオライト約300gを得た。
このゼオライトを不活性ガス雰囲気下で焼成できる触媒焼成器で焼成し、担体上にカーボンナノチューブの触媒となる金属微粒子を形成させた。
触媒焼成器は焼成器下部に不活性ガス導入管、焼成器上部に排ガス放出管を備え、焼成器全体を電気ヒーターで加熱でき、かつ、温度制御が行える石英ガラス製の縦型反応器を用いた。焼成器内径は6.5cm、長さ80cmである。焼成器中央部には、固体触媒が保持できるように石英フィルターが設置されている。
この上にトリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸コバルトを担持した固体触媒約50gとセットし、アルゴンガス毎分500CCで連続的に供給を開始し、焼成器をカーボンナノチューブ合成温度800℃に昇温した。
昇温後、800℃を保持したまま30分焼成し、アルゴン雰囲気下で室温まで降温し、担体上にカーボンナノチューブの触媒となる金属微粒子を形成した固体触媒を得た。
この操作を繰り返し、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸コバルトを担持したゼオライトを全量処理した。
実施例2
反応器として、図5で示されるようなカーボンチューブ製造装置を用いた。すなわち反応器22上部に原料の炭素含有ガス供給ライン3、固体触媒供給ライン4が接続され、かつ反応器22下部に固体触媒排出口5と排気ライン6が設けられた反応器22全体を電気ヒーター(ヒーター7)で加熱でき、かつ、温度制御が行える石英ガラス製の縦型反応器を用いた。反応器内径は6.5cm、長さ80cmである。
また、反応器の中央部分には固体触媒が保持されるように保持板21の上に保持材2としてSUS製32メッシュのSUS製金網を取り付け、その上に直径1mmのジルコニアボールを4cm高さに充填した。また、図5に示すようにジルコニアボールの希釈層には直径6mm、長さ6mmの円柱状の撹拌翼を6本攪拌軸9と平行に等間隔に取り付け、棒状の撹拌翼13の保持材側の端部にブラシ23を設けた縦型多段翼14を有する撹拌手段8を挿入し、6r.p.mの回転速度で希釈材1層を攪拌を開始した。
反応器内に2500cc/分でアルゴンを流通させ、その状態で15℃/分の速度で800℃まで昇温した。昇温後、約10分温度を保持させ、アセチレン1体積%、アルゴン99体積%からなる炭素含有ガスに切り替え、温度800℃を保持しながら、炭素含有ガスを2500CC/分で供給開始した。同時に0.3g毎分の速度で参考例2で作成した固体触媒を連続的に供給開始した。
反応開始後、約2分で反応器底部(固体触媒排出口5)より反応済みの固体触媒が連続的に流出し始めた。
初期流動を考慮し、反応開始から10分後から30分までの反応済みの固体触媒を採取した。次いで、この固体触媒を熱天秤にかけ、触媒上に生成したカーボンナノチューブ量を計測した。TGA測定結果、炭素重量は6重量%であった。日本電子データム(株)操作電子顕微鏡JSM−630INFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボンの堆積はなく、外径が30nm以下のカーボンナノチューブが主成分であることがわかった。
本発明によれば、固体触媒層にアルミナボールなどを希釈材として混ぜることにより、固体触媒と炭素含有ガスの気固接触が良好に保たれ、かつ、希釈材層を攪拌することで、炭素含有ガス流れ方向に固体触媒を搬出させることができ、有益な直径を有するカーボンナノチューブの合成反応を連続的に行うことができる。この結果、構造が簡単で小さな装置でカーボンナノチューブの連続大量合成が可能になった。
図1は本発明のカーボンナノチューブ製造装置の概略を示す図である。 図2a〜eは本発明で用い得る撹拌翼の実施態様の概略を示す側面図である。 図3は本発明で好ましく用い得る撹拌翼の実施態様の概略を示す側面図である。 図4本発明で好ましく用い得る撹拌翼の一実施態様の概略を示す図であり、図4aは側面図、図4bは上面図、図4cは斜視図である。 図5は実施例2で用いたカーボンナノチューブ製造装置の概略を示す図である。
符号の説明
1 希釈材
2 保持材
3 炭素含有ガス供給ライン
4 固体触媒供給ライン
5 固体触媒排出口
6 排気ライン
7 ヒーター
8 攪拌手段
9 攪拌軸
10 撹拌翼
11 平板翼
12 縦型多段翼
13 縦型多段翼
14 縦型多段翼
15 攪拌翼
16 支持部材
17 掻き取り板(反応器内壁用)
18 掻き取り板またはブラシ(保持材用)
19 ブラシ
20 支持具

Claims (9)

  1. 炭素含有ガスと固体触媒をカーボンナノチューブ形成反応条件下で接触させカーボンナノチューブを製造する際に、希釈材により希釈した固体触媒を500〜1000℃の温度範囲で攪拌することを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
  2. 固体触媒が移動床を形成している請求項1記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  3. 固体触媒が連続または間欠的に供給され、搬出されることを特徴とする請求項1または2記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  4. 希釈材により希釈した固体触媒の攪拌を、希釈材により希釈した固体触媒層内に設置した撹拌翼により行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  5. 希釈材がカーボンナノチューブ形成反応条件下で炭素含有ガスと反応せず、カーボンナノチューブ形成反応条件下で溶融または分解しない固体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  6. 希釈材により希釈した固体触媒層を保持する保持材と撹拌翼をそなえ、原料となる炭素含有ガスの供給口、固体触媒の供給口、触媒およびカーボンナノチューブ排出口をそなえたカーボンナノチューブ製造装置。
  7. 撹拌翼が多段翼である請求項4記載のカーボンナノチューブの製造方法。
  8. 撹拌翼が、その撹拌翼の保持材側端面に保持材を掃除する機構および/またはその撹拌翼の反応容器内壁面側端部に反応器内壁面を掃除する機構を備えたものである請求項6または7記載のカーボンナノチューブ製造装置。
  9. 保持材が固体触媒は通すが、希釈材は通さない網目もしくは多孔構造を有するものである請求項6から8のいずれか記載のカーボンナノチューブ製造装置。
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