JP2003238451A - 有機物の分解方法および分解装置 - Google Patents

有機物の分解方法および分解装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 上下水の処理水や半導体装置の排水に含まれ
るダイオキシンや環境ホルモンに代表される難分解性有
機物を高効率に除去することを目的とする。 【解決手段】 カーボンナノチューブとオゾンとの共存
下で難分解性有機物を反応させることにより、カーボン
ナノチューブによる難分解性有機物の吸着・濃縮と、カ
ーボンナノチューブとオゾンの反応によるオゾンラジカ
ルの生成が同時に行え、生じたオゾンラジカルにより難
分解性有機物が効率的に分解される有機物の処理方法が
実現される。また、反応槽とオゾン発生手段と窒素ガス
供給手段を備え、反応槽においてカーボンナノチューブ
とオゾンとの共存下で難分解性有機物を反応させること
により、難分解性有機物を効率的に分解することができ
る有機物の処理装置が実現される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機物の分解方法
および分解装置に関し、ことに、上下水を処理した処理
水や半導体製造における排水等に含まれるダイオキシン
や環境ホルモンに代表される難分解性有機物の分解方法
および分解装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、用水等の利用が多様化してきてお
り、かかる用水中に含まれる比較的低濃度(希釈濃度)
の有機物が問題となるケースが増加してきている。かか
る問題に対して、従来は、有機物が拡散した処理水中に
オゾンと過酸化水素水を供給し、オゾンと過酸化水素水
の相互作用により、オゾンよりも強い酸化力を有する水
酸化ラジカル(以下、OHラジカルという)の生成を行
うことにより有機物を分解していた。また、OHラジカ
ルの生成効率を向上させるために紫外(UV)光の照射
が併用されていた。図6は、特開昭62−176595
号公報に開示された従来の有機物分解処理装置であり、
有機物を含む処理水に過酸化水素とオゾンを添加すると
共にUV照射し、OHラジカルを発生させて、有機物を
分解させる方法が開示されている。
【0003】かかる従来の有機物の分解方法において
は、まず初め、有機物を含む原水が原水導入管100か
ら反応槽102内に導かれる。この時、その途中にて、
原水導入管100に接続された過酸化水素水注入管10
1を介して原水に過酸化水素水が注入される。また、反
応槽102の底部付近には、先端に散気管104を接続
したオゾン導入管105が配設されており。オゾンがオ
ゾン導入管105を経由して散気管104に導入される
ことにより、反応槽102にオゾンが散気される。ま
た、原水に対して紫外線ランプ103からUV光が照射
されることにより、原水中の有機物が分解され、処理水
として排出管106から系外に排出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の有機物の分解方
法においては、原水に含まれる有機物が希釈濃度の場
合、処理対象となる有機物の量に対し、原水の量が膨大
であり、原水中に存在する有機物量がごく微量であって
も大量のオゾンの供給が必要となるためオゾンの利用効
率が低く、コストUPが避けられないという問題があっ
た。また、有機物の分解効率の向上を図るため、オゾン
より酸化力の強いOHラジカルが併用して用いられてい
るが、OHラジカルの寿命はマイクロ秒〜ナノ秒と極め
て短時間であるために、処理水中で生成したOHラジカ
ルの殆どは、処理水中で希薄にしか存在しない有機物と
会合する前に消滅してしまい、折角生成したOHラジカ
ルが有効に活用されないという問題があった。
【0005】かかる課題に対し、本願発明者らは、多く
の特徴的性質を有することから近年、注目が高くなって
きているカーボンナノチューブの適用を検討した。ここ
で、カーボンナノチューブ(以下、CNTとも言う)と
は、炭素6員環が連なったグラファイトの1層(グラフ
ェントシート)を丸めた円筒状の物質で、直径が1nm
程度から数10nm程度、長さは1μm程度のものをい
う。また、CNTには、1層のみからなる単層CNTと
何層もが同心筒状になった多層CNTがあり、形状、電
子物性、吸着特性及び機械的性質などにおいて他の物質
にはない優れた特性が発見されてきている。本願発明者
らはCNTが有する特性のうち、特に、その吸着特性お
よび電子物性に着目し、種々の実験を重ねることによ
り、CNTにオゾンを作用させると有機物の高効率な分
解が実現されることを見出し、本願発明に到達したもの
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明にかかる有機物
の分解方法は、有機物を含有した媒体中にカーボンナノ
チューブを分散させた後、このカーボンナノチューブに
オゾンを供給し、カーボンナノチューブとオゾンの反応
により生成するラジカルまたはオゾンを用いて有機物の
分解除去を行うものである。
【0007】この発明にかかる有機物の分解方法は、カ
ーボンナノチューブを保持したカーボンナノチューブ保
持手段を備えた反応槽に有機物を含有した媒体を導入し
た後、カーボンナノチューブにオゾンを供給することに
より、カーボンナノチューブとオゾンの反応により生成
するラジカルまたはオゾンを用いて有機物の分解除去を
行うものである。
【0008】かかる有機物の分解方法は、媒体が水また
は水素を含み、カーボンナノチューブとオゾンの反応に
より酸素ラジカルに加えて水酸化ラジカルを生成し、有
機物の分解除去を、酸素ラジカル及び水酸化ラジカルを
用いて行う構成とすることもできる。
【0009】本発明にかかる有機物の分解装置は、有機
物を分解処理する反応槽と、反応槽に各々接続されたカ
ーボンナノチューブを供給するカーボンナノチューブ供
給手段及びオゾンを供給するオゾン供給手段とを備え、
カーボンナノチューブ供給手段およびオゾン供給手段か
ら反応槽にカーボンナノチューブとオゾンを供給し、有
機物を分解除去するように構成されたものである。
【0010】本発明にかかる有機物の分解装置は、有機
物を分解処理する反応槽と、反応槽に配置された、カー
ボンナノチューブを保持したカーボンナノチューブ保持
手段と、反応槽に接続された、オゾンを供給するオゾン
供給手段とを備え、オゾン供給手段からカーボンナノチ
ューブにオゾンを供給し、有機物を分解除去するように
構成されたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明をより詳細に説明す
るために、添付の図面に基づいてこれを説明する。 実施の形態1 図1は本発明にかかる有機物分解装置の一実施例を示す
図で、図中、11は反応槽、12はオゾン発生器、13
はカーボンナノチューブ生成器、14はカーボンナノチ
ューブ回収器、15は排オゾン分解器、31〜35は配
管である。
【0012】本発明にかかる有機物分解装置は、反応槽
11に、有機物を導入するための配管31とオゾン発生
器12とカーボンナノチューブ生成器13が接続されて
いる。有機物の分解に際しては、配管31から反応槽1
1に気体もしくは液体の有機物が導入された後、オゾン
発生器12およびカーボンナノチューブ生成器13から
カーボンナノチューブとオゾンが反応槽11に導入され
る。カーボンナノチューブとオゾンが反応槽11に導入
されると、有機物と接触したカーボンナノチューブは有
機物を吸着するため、カーボンナノチューブ表面におけ
る有機物の濃度が上昇する。また、カーボンナノチュー
ブと接触したオゾンは酸素ラジカル(以下、Oラジカル
ともいう)や水酸化ラジカル(以下、OHラジカルとも
いう)などのラジカルを生成するため、オゾンと反応し
てこれらのラジカルを生成するカーボンナノチューブ
が、その表面に有機物を吸着している場合には、これら
のラジカルによりカーボンナノチューブの表面に吸着さ
れた有機物が効率的に分解される。
【0013】有機物の分解が終了すると、これら気体も
しくは液体は配管34aを通って、カーボンナノチュー
ブ回収器14に導入され、これら気体中もしくは液体中
に含まれたカーボンナノチューブが回収される。カーボ
ンナノチューブが回収された後は、配管34bを通って
排オゾン分解器15にて未反応のオゾンが分解され、気
体もしくは液体が配管35から外部へ排出され、有機物
の分解処理が終了する。
【0014】このように、有機物を含む処理液中にカー
ボンナノチューブを分散させる場合、カーボンナノチュ
ーブとオゾン、または、カーボンナノチューブとオゾン
と水もしくは水素との反応により生成されるOラジカル
もしくはOHラジカルにより有機物が分解される。特
に、OHラジカルは寿命が短いため、効率的に有機物を
分解することは通常は困難であるが、本発明において
は、分解対象物である有機物を表面に吸着したカーボン
ナノチューブと、分解対象物である有機物の極く近傍に
てOHラジカルが生成されることになるため、効率的な
有機物の分解処理が実現される。
【0015】以上、本発明にかかる有機物の分解方法に
おいては、カーボンナノチューブが希釈濃度の有機物を
吸着し、カーボンナノチューブ表面にて有機物の濃度を
高める効果を有するため、投入されるオゾンの利用効率
が向上する。そのため、オゾンの消費量が抑制され、低
コストな有機物の分解方法が実現される。
【0016】実施の形態2 図2は本発明にかかる有機物分解装置の一実施例を示す
図で、図中、16は有機物分解処理後のオゾンを反応槽
11から排出するための窒素ガス供給器、17は超純水
中に所定量の油分およびカーボンナノチューブを分散さ
せた処理水、18はオゾン発生器12から供給されるオ
ゾンを効率的に処理水中に分散させるためのオゾン散気
ヘッド、41a〜46bまでは配管で、その他の符号は
図1に示したものと同じか若しくは相当するものを表し
ている。
【0017】本実施の形態における有機物分解装置は、
処理水が配管41a、41bを通って反応槽11に導入
された後、カーボンナノチューブ生成器13からカーボ
ンナノチューブが配管43、41bを通って反応槽11
に導入され、、水中に分散した油分を予めカーボンナノ
チューブに吸着させる。続いて、オゾン発生器12から
配管42、46bを通ってオゾン散気ヘッド18に導入
し、オゾン散気ヘッド18より処理水中にオゾンを供給
することで、希釈濃度の油分の処理時の濃度を高め、オ
ゾンによる油分の分解が効率的に進行するものである。
油分の分解処理が終了すると、処理液は配管44a、4
4bを通って外部に排出される。また、油分の分解に利
用されたオゾンは、窒素ガス供給器16から配管46
a、46bを通って反応槽11に供給される窒素ガスと
共に、配管45aを通って排オゾン分解器15に導入さ
れ、分解処理された後、配管45bを通って、窒素ガス
と共に外部へ放出される。
【0018】また、かかる有機物分解装置においては、
カーボンナノチューブ回収器14とカーボンナノチュー
ブ生成器13は配管44cにより連結されており、カー
ボンナノチューブ回収器14にて処理液から分離回収さ
れたカーボンナノチューブは配管44cによりカーボン
ナノチューブ生成器13へ導入され、再利用される構成
となっている。
【0019】次に、かかる分解装置を用いてカーボンナ
ノチューブの有機物吸着特性について検討を行った。超
純水中200cc中に0.2gのカーボンナノチューブ
粉末を分散させ、その分散させた液に水溶性油0.5g
を溶解させた。所定の時間経過後、液を濾過してカーボ
ンナノチューブ粉末を取り除いたところ、カーボンナノ
チューブ作用前には白く縣濁していたろ液の色がうすく
なり、溶液中の水溶性油がカーボンナノチューブに吸着
したことが確認された。
【0020】続いて、カーボンナノチューブへの油分の
吸着量を正確に見積もるために、JIS K 0102
に準拠したTOC(全有機炭素)測定を行った。その結
果、カーボンナノチューブに吸着された油分量は添加し
た水溶性油の約20%であることがわかった。ここでは
詳細な結果を述べないが、カーボンナノチューブは、他
の有機物、例えばベンゼン、ダイオキシン、高分子化合
物、たんぱく質などにも吸着特性を有することが確認さ
れている。以上の検討よりカーボンナノチューブは、溶
液中の有機物を吸着する吸着特性を有すること、即ち濃
縮機能を有することが確認された。
【0021】図3は本発明にかかる有機物の分解方法の
反応を模式的に表す図で、図中、1はカーボンナノチュ
ーブ、2は分解対象の汚染有機物、3はオゾン分子、4
はオゾンとカーボンナノチューブとの相互作用によって
発生したOHラジカル又はOラジカル等のラジカル、5
はカーボンナノチューブ上で濃縮された汚染有機物、6
はオゾンあるいはラジカルによって分解された分解生成
物を示している。
【0022】本発明にかかる有機物の分解方法において
は、溶液中に分散する汚染有機物2が、カーボンナノチ
ューブ1の表面に疎水−疎水相互作用によって吸着し、
カーボンナノチューブ1上で濃縮される。一方、処理液
中にガス状、或いは溶存状態で存在するオゾン分子3は
カーボンナノチューブ1との相互作用によってOHラジ
カルやOラジカル等のラジカル4を発生する。この発生
したラジカル4は、近傍の濃縮された有機物5と速やか
に反応する。その結果、濃縮された有機物5は、酸化・
分解され、親水性分子となって水中へと溶解するか、も
しくは二酸化炭素などの気体となって系外に排出され
る。これらの過程を繰り返すことによって処理液中の有
機物5の分解が促進され、水の浄化がなされることにな
る。
【0023】また、カーボンナノチューブはオゾンによ
り分解されることがないため、反応槽内に一旦添加して
おけば、有機物の分解処理を繰返し行うことができると
いう利点も有する。
【0024】実施の形態3 次に実施の形態2と同じ条件でカーボンナノチューブお
よび水溶性油を分散させた溶液に、200g/Nm
2l/minのオゾンを曝気法で供給した。オゾンを供
給して5分経過後、溶液をろ過してカーボンナノチュー
ブを除去し、ろ液のTOC測定を行った。測定結果(試
験No3)を対照実験(試験No1、2、4、5)の結
果と併せ、表1に示す。
【表1】
【0025】表1に示されたように、カーボンナノチュ
ーブを含まない油脂溶液に直接オゾンガスを曝気した場
合(試験No5:TOC値=97ppm)、そのTOC
値は油脂のみの場合(試験No1:TOC値=103p
pm)と同様、油分の分解は殆んど進まなかった。また
有機物濃度の約10%の過酸化水素を添加しながらオゾ
ンを供給する過酸化水素添加法では(試験No4:TO
C値=78ppm)、オゾンのみの供給に比べ分解効率
は向上したが、それでもせいぜい24%程度であった。
【0026】これに比して、カーボンナノチューブを分
散させた後、オゾンを曝気した場合(試験No3:TO
C値=32ppm)、約70%の油分の減少が確認され
た。油脂+カーボンナノチューブ+酸素バブリング(試
験No2:TOC値=80ppm)によって得られた約
20%の油分減少量(103−80=23ppm)を、
カーボンナノチューブへの油分吸着量として差し引いて
も、約50%の有機成分は酸化、分解されていると見積
もられる。この分解効率はオゾンのみを供給した場合の
約6%、もしくはオゾン+過酸化水素添加の場合の約2
4%に比べても明らかに大きく、カーボンナノチューブ
を共存させることで難分解性の有機物の分解効率が向上
することが確認された。
【0027】ここでは詳細な結果を述べないが、他の有
機物、例えばベンゼン、トルエン、クレゾール、n-ヘ
キサン、マレイン酸、ダイオキシン、有機塩素化合物、
高分子化合物、たんぱく質などにもカーボンナノチュー
ブは吸着特性と分解効率向上の効果を有することも確認
されている。またカーボンナノチューブが共存した本実
施の形態に、過酸化水素水素添加法やUV照射法を併用
した場合には、さらに分解効率が向上することも合わせ
て確認されている。以上のように、本実施の形態によっ
て、カーボンナノチューブと有機物の共存下でのオゾン
分解の効果が確認された。
【0028】実施の形態4 次に固体有機薄膜の処理についても検討を行った。本実
施の形態においては、有機薄膜として半導体製造に用い
られるフォトレジストの1つであるクレゾール系ノボラ
ックレジストの処理を実施した。前記レジスト薄膜をカ
ーボンナノチューブを分散させた超純水中に浸漬させ
た。この溶液中に200g/Nm、2l/minのオ
ゾンを曝気法で供給し、オゾンを供給してから3分経過
後にレジスト膜を取り出し、その膜厚の変化を計測し
た。その結果、カーボンナノチューブを添加した場合の
レジスト膜の剥離速度は0.20μm/minであり、
カーボンナノチューブを添加しなかった場合のレジスト
膜の剥離速度は0.12μm/minであった。このよ
うに、カーボンナノチューブを添加することでレジスト
膜の剥離速度が向上すること、即ち、カーボンナノチュ
ーブの存在下においてオゾンを供給することにより、固
体有機薄膜の分解が促進されることが確認された。
【0029】実施の形態5 図4は本発明にかかる有機物の分解装置の一実施例を示
す図であり、図中、19はカーボンナノチューブを分散
保持させた多孔質セラミックス、20は多孔質セラミッ
クス保持のためのメッシュ状保持体、21は処理水入
口、22は処理水出口、23、24はバルブ、その他の
符号は図1または2に示したものと同じか若しくは相当
するものを表している。
【0030】かかる有機物の分解装置においてはカーボ
ンナノチューブを保持した多孔質セラミックス19を備
えた反応槽11に、配管21を通って処理水が導入さ
れ、処理水中に含まれた有機物がカーボンナノチューブ
に吸着される。その後、オゾン発生器12から反応槽1
1にオゾンが導入され、カーボンナノチューブ及び水と
反応しOラジカルおよびOHラジカルを発生することに
より有機物を分解する。分解処理が終了した処理水は配
管22から外部へ放出され、また、分解処理後のオゾン
は、図2の装置の場合と同様にして、窒素ガスにより排
オゾン分解器15にて分解処理後、外部放出される。
【0031】実施の形態2にて示した図2の装置におい
ては、粉末状のカーボンナノチューブを用いたために、
処理液を排出する前にろ過を行う必要があった。これに
対して、図4に示した本実施の形態に係る有機物の分解
装置においては、カーボンナノチューブを多孔質セラミ
ックス19に保持させたので、反応槽に対し外部からカ
ーボンナノチューブを供給する手段及び有機物の分解処
理後にカーボンナノチューブを回収する手段が不要とな
り、装置構成が簡略化されている。かかるカーボンナノ
チューブを坦持させた多孔質セラミックスは、例えば、
アクリル系またはセルロース系の有機バインダーとアル
ミナ等のセラミックスを混合して作成したスラリーに、
1〜10重量%程度のカーボンナノチューブを分散させ
た後、約450〜550℃程度に加熱することで得るこ
とができる。
【0032】次にかかる有機物分解装置を用いて有機成
分を含んだ処理液を処理した結果について説明する。実
施の形態1と同じ条件でカーボンナノチューブおよび水
溶性油を分散させた溶液に、200g/Nm、2l/
minのオゾンガスを曝気法で供給した。オゾンを供給
してから5分経過後、処理液を配管45bから排出させ
た。そしてその排出液のTOC測定を行った。その結
果、カーボンナノチューブを含まない油脂溶液に直接オ
ゾンを曝気した場合、油分の分解は殆ど進まなかったの
に比して、カーボンナノチューブを坦持させた担体にオ
ゾンを曝気した場合、約50%の有機成分が酸化・分解
されていることがわかった。
【0033】実施の形態6 次にカーボンナノチューブのオゾンに対する安定性を明
らかにするために、実施の形態4で実施した処理を繰り
返すことにより耐久性の確認を行った。その結果、上述
の処理を30回繰り返した後の有機成分の分解量は1回
目とほぼ同等であり、その性能に変化がないことが確認
され、オゾンに対するカーボンナノチューブの安定性が
確認された。
【0034】実施の形態7 次に本発明にかかる有機物分解装置を用いて、気体中の
有機物の分解処理について検討した結果につき説明す
る。図5は本発明にかかる有機物分解装置の一実施例を
示す図である。図中、25はカーボンナノチューブを坦
持した多孔質セラミックス19を保持した反応装置、2
6は有機物を含んだ気体を反応装置に送風するための被
処理ガス送風器、27は乾燥オゾンを湿潤化させるため
の水の入ったバブリングボトル、28a〜29bはバル
ブ、42〜50dは配管で、その他の符号は図1、2ま
たは4に示したものと同じか若しくは相当するものを表
している。
【0035】次にかかる有機物分解装置を用いた気体中
の有機物の分解方法について説明する。かかる分解方法
においては、まず最初、バルブ29a、バルブ29b、
バルブ28bを閉、バルブ28aを開の状態で有機物を
含んだ気体を被処理ガス送風器26から配管50a、5
0b、49bを経由して反応装置25内に送風し、有機
物をカーボンナノチューブへ吸着させる。次に、適当な
吸着時間を経過させた後、バルブ28aを閉、バルブ2
8を開bとし、オゾン発生器12から発生した乾燥オゾ
ンを配管42、46bを経由してバブリングボトル27
に導入し、湿潤化させ、配管49a、49bを経由して
反応器25に供給する。反応器25に供給された湿潤化
オゾンはカーボンナノチューブとの相互作用により酸素
ラジカルや水酸化ラジカルを発生する。これらのラジカ
ルが吸着された有機物と高効率に反応することにより有
機物の除去を行う。有機物の分解の終了後、バルブ29
a、バルブ28aを閉、バルブ28b、バルブ29bを
開とし、窒素ガス供給器16より配管46a、46bを
取ってバブリングボトル27に窒素ガスを供給する。そ
して、未反応のオゾンと一緒にこの窒素ガスを配管49
a、49bから反応装置25に供給し、処理後のガスを
反応装置25から配管45a、45cを経由して排オゾ
ン分解器15に送り、未分解のオゾンを分解させた後、
配管45bから外部へ放出する。また、被処理ガスを反
応装置25に送り込む時に、バルブ29b、バルブ28
bを閉、バルブ28a、バルブ29aを開として、配管
50a、50b、49b、反応装置25、配管45a、
50c、50dを循環させてもよい。この場合は、被処
理ガスを一定時間循環させた後、バルブ28a、バルブ
29aを閉、バルブ28b、バルブ29bを開として、
上述のように反応装置25にて有機物の分解処理を行
う。処理されたガスの排気手順は上述した場合と同じで
ある。
【0036】本装置に揮発性の有機物であるクロロホル
ムを10%含むガスを作用させると、ガス中のクロロホ
ルムの数10%がカーボンナノチューブ表面に吸着され
ることが確認され、本実施の形態によって、カーボンナ
ノチューブが気体中の有機物に対しても吸着特性を有す
ることが判明した。
【0037】実施の形態8 次に本発明にかかる有機物分解装置を用いて、揮発性有
機物であるクロロホルムを含むガスに対するオゾン作用
による分解特性を検証した。カーボンナノチューブを坦
持した多孔質セラミックス19にクロロホルムを吸着さ
せた後に、湿潤化させたオゾンを作用させた。オゾンを
作用させた後のガスを分析することによってクロロホル
ムが分解されていることが確認された。ドライ状態のオ
ゾンについても同様に分解特性を検証した結果、湿潤化
オゾンより分解効率はやや低下するが、クロロホルムの
分解が可能であることが確認されている。
【0038】また、ここでは詳細な結果は述べないが、
例えばベンゼン、ダイオキシン、ホルムアルデヒド、ア
セトアルデヒド、フタル酸化合物、アミン化合物、アセ
トン、などにも分解特性を有していることも確認されて
いる。以上、カーボンナノチューブとオゾンを用いた有
機物除去について説明してきたが、本発明はオゾンを用
いた酸化反応制御に関わるものであり、主に有機物の分
解に有効である。例えば、上下水などの水処理分野、半
導体基板や液晶基板の洗浄などに用いられた有機系薬液
の廃液処理、プリント配線板や実装基板の洗浄、精密部
品の脱脂洗浄後の廃液処理などにも有効であることはい
うまでもない。
【0039】
【発明の効果】以上、本発明にかかる有機物の分解方法
によれば、有機物を含有した媒体中にカーボンナノチュ
ーブを分散させた後、カーボンナノチューブにオゾンを
供給し、カーボンナノチューブとオゾンの反応により生
成するラジカルまたはオゾンを用いて有機物の分解除去
を行うことにより、有機物を含んだ媒体中に分散された
カーボンナノチューブが有機物を吸着した後に、このカ
ーボンナノチューブとオゾンが反応することにより酸素
ラジカル等のラジカルが生成される。即ち、有機物の濃
度が希釈な場合であっても、カーボンナノチューブが有
機物を吸着し希釈濃度の有機物を濃縮する効果を有する
ため、カーボンナノチューブとオゾンの反応により生成
される酸素ラジカル等のラジカルまたはオゾンが効率的
に有機物と反応し、オゾンの有効利用が図られることか
ら、オゾンの消費量が抑制され、効率的かつ低コストな
有機物の分解方法が実現される。
【0040】また、本発明にかかる有機物の分解方法に
よれば、カーボンナノチューブを保持したカーボンナノ
チューブ保持手段を備えた反応槽に有機物を含有した媒
体を導入した後、カーボンナノチューブにオゾンを供給
することにより、カーボンナノチューブとオゾンの反応
により生成するラジカルまたはオゾンを用いて有機物の
分解除去を行うため、カーボンナノチューブ保持手段に
安定的に保持されたカーボンナノチューブが有機物を吸
着した後に、このカーボンナノチューブとオゾンが反応
することにより酸素ラジカル等のラジカルが生成され
る。即ち、有機物の濃度が希釈な場合であっても、カー
ボンナノチューブが有機物を吸着し希釈濃度の有機物を
濃縮する効果を有するため、カーボンナノチューブとオ
ゾンの反応により生成される酸素ラジカル等のラジカル
またはオゾンが効率的に有機物と反応し、オゾンの有効
利用が図られることからオゾンの消費量が抑制され、効
率的かつ低コストな有機物の分解方法が実現される。ま
た、反応槽外部からのカーボンナノチューブの供給及び
有機物分解後のカーボンナノチューブの回収が不要とな
るという利点も併せ持つ。
【0041】さらに、媒体が水または水素を含み、カー
ボンナノチューブとオゾンの反応により酸素ラジカルに
加えて水酸化ラジカルを生成し、有機物の分解除去を、
酸素ラジカル及び水酸化ラジカルを用いて行う場合に
は、有機物の分解効率が高く、かつ寿命の短い水酸化ラ
ジカルの有効利用が図られることにより有機物が効率的
に分解され、さらに好適である。
【0042】本発明にかかる有機物の分解装置によれ
ば、有機物を分解処理する反応槽と、反応槽に各々接続
されたカーボンナノチューブを供給するカーボンナノチ
ューブ供給手段及びオゾンを供給するオゾン供給手段と
を備え、カーボンナノチューブ供給手段およびオゾン供
給手段から反応槽にカーボンナノチューブとオゾンを供
給し、有機物を分解除去するように構成されているた
め、有機物の濃度が希釈な場合であっても、カーボンナ
ノチューブが有機物を吸着し希釈濃度の有機物を濃縮す
る効果を有するため、カーボンナノチューブとオゾンの
反応により生成される酸素ラジカル等のラジカルまたは
オゾンが効率的に有機物と反応し、オゾンの有効利用が
図られることから、オゾンの消費量が抑制され、有機物
を効率的かつ低コストに分解することが可能な有機物の
分解装置が実現される。
【0043】本発明にかかる有機物の分解装置によれ
ば、有機物を分解処理する反応槽と、反応槽に配置され
た、カーボンナノチューブを保持したカーボンナノチュ
ーブ保持手段と、反応槽に接続された、オゾンを供給す
るオゾン供給手段とを備え、オゾン供給手段からカーボ
ンナノチューブにオゾンを供給し、有機物を分解除去す
る構成されているため、、有機物の濃度が希釈な場合で
あっても、カーボンナノチューブが有機物を吸着し希釈
濃度の有機物を濃縮する効果を有するため、カーボンナ
ノチューブとオゾンの反応により生成される酸素ラジカ
ル等のラジカルまたはオゾンが効率的に有機物と反応
し、オゾンの有効利用が図られることから、オゾンの消
費量が抑制され、有機物を効率的かつ低コストに分解す
ることが可能で、かつ、反応槽外部からのカーボンナノ
チューブの供給及び有機物分解後のカーボンナノチュー
ブの回収が不要となる有機物の分解装置が実現され、好
適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる有機物分解装置の構成説明図
である。
【図2】 本発明にかかる有機物分解装置の構成説明図
である。
【図3】 本発明にかかる有機物分解反応を説明するイ
メージ図である。
【図4】 本発明にかかる有機物分解装置の構成説明図
である。
【図5】 本発明にかかる有機物分解装置の構成説明図
である。
【図6】 従来の有機物分解装置の構成説明図である。
【符号の説明】
1 カーボンナノチューブ、2 汚染有機物、3 オゾ
ン分子、4 酸素ラジカル又は水酸化ラジカル、5 汚
染有機物、6 分解された有機物、11 反応槽、12
オゾン発生器、13 カーボンナノチューブ生成器、
14 カーボンナノチューブ回収器、15 排オゾン分
解器、16 窒素ガス供給器、17 有機物およびカー
ボンナノチューブを分散させた溶液、18 オゾン散気
部、19 多孔質セラミックス、20 メッシュ状保持
体、21 処理水入口、22 処理水出口、23 バル
ブ、24 バルブ、25 筐体、26 被処理ガス送風
器、27 バブリングボトル、28a バルブ、28b
バルブ、29a バルブ、29b バルブ、31〜5
0d 配管、100 原水導入管、101 過酸化水素
注入管、102 反応槽、103 紫外線ランプ、10
4 散気管、105 オゾン導入管、106 排出管。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河相 好孝 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 Fターム(参考) 4D024 AA01 AA04 AB04 AB11 BA03 BB01 BC04 DB24 4D050 AA01 AA12 AB15 AB19 BB02 CA06 4H006 AA04 AA05 AC13 AC26 BD81 BE20 BE31 BE60

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機物を含有した媒体中にカーボンナノ
    チューブを分散させた後、このカーボンナノチューブに
    オゾンを供給し、前記カーボンナノチューブと前記オゾ
    ンの反応により生成するラジカルまたは前記オゾンを用
    いて前記有機物の分解除去を行う有機物の分解方法。
  2. 【請求項2】 カーボンナノチューブを保持したカーボ
    ンナノチューブ保持手段を備えた反応槽に有機物を含有
    した媒体を導入した後、前記カーボンナノチューブにオ
    ゾンを供給することにより、前記カーボンナノチューブ
    と前記オゾンの反応により生成するラジカルまたは前記
    オゾンを用いて前記有機物の分解除去を行う有機物の分
    解方法。
  3. 【請求項3】 前記媒体が水または水素を含み、前記カ
    ーボンナノチューブと前記オゾンの反応により前記酸素
    ラジカルに加えて水酸化ラジカルを生成し、前記有機物
    の分解除去を、前記酸素ラジカル及び当該水酸化ラジカ
    ルを用いて行う請求項1または2に記載の有機物の分解
    方法。
  4. 【請求項4】 有機物を分解処理する反応槽と、この反
    応槽に各々接続されたカーボンナノチューブを供給する
    カーボンナノチューブ供給手段及びオゾンを供給するオ
    ゾン供給手段とを備え、前記カーボンナノチューブ供給
    手段および前記オゾン供給手段から前記反応槽に前記カ
    ーボンナノチューブと前記オゾンを供給し、前記有機物
    を分解除去することを特徴とする有機物の分解装置。
  5. 【請求項5】 有機物を分解処理する反応槽と、この反
    応槽に配置された、カーボンナノチューブを保持したカ
    ーボンナノチューブ保持手段と、前記反応槽に接続され
    た、オゾンを供給するオゾン供給手段とを備え、前記オ
    ゾン供給手段から前記カーボンナノチューブにオゾンを
    供給し、前記有機物を分解除去することを特徴とする有
    機物の分解装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008517863A (ja) * 2004-10-22 2008-05-29 ハイピリオン カタリシス インターナショナル インコーポレイテッド カーボンナノチューブの改善されたオゾン分解
CN104028087A (zh) * 2014-05-30 2014-09-10 浙江大学 一种脱除高温烟气中二恶英的方法及其装置

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