JP3941535B2 - 有機物の分解方法および分解装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機物の分解方法および分解装置に関し、ことに、上下水を処理した処理水や半導体製造における排水等に含まれるダイオキシンや環境ホルモンに代表される難分解性有機物の分解方法および分解装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、用水等の利用が多様化してきており、かかる用水中に含まれる比較的低濃度(希釈濃度)の有機物が問題となるケースが増加してきている。かかる問題に対して、従来は、有機物が拡散した処理水中にオゾンと過酸化水素水を供給し、オゾンと過酸化水素水の相互作用により、オゾンよりも強い酸化力を有する水酸化ラジカル(以下、OHラジカルという)の生成を行うことにより有機物を分解していた。また、OHラジカルの生成効率を向上させるために紫外(UV)光の照射が併用されていた。
図6は、特開昭62−176595号公報に開示された従来の有機物分解処理装置であり、有機物を含む処理水に過酸化水素とオゾンを添加すると共にUV照射し、OHラジカルを発生させて、有機物を分解させる方法が開示されている。
【0003】
かかる従来の有機物の分解方法においては、まず初め、有機物を含む原水が原水導入管100から反応槽102内に導かれる。この時、その途中にて、原水導入管100に接続された過酸化水素水注入管101を介して原水に過酸化水素水が注入される。また、反応槽102の底部付近には、先端に散気管104を接続したオゾン導入管105が配設されており。オゾンがオゾン導入管105を経由して散気管104に導入されることにより、反応槽102にオゾンが散気される。また、原水に対して紫外線ランプ103からUV光が照射されることにより、原水中の有機物が分解され、処理水として排出管106から系外に排出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の有機物の分解方法においては、原水に含まれる有機物が希釈濃度の場合、処理対象となる有機物の量に対し、原水の量が膨大であり、原水中に存在する有機物量がごく微量であっても大量のオゾンの供給が必要となるためオゾンの利用効率が低く、コストUPが避けられないという問題があった。また、有機物の分解効率の向上を図るため、オゾンより酸化力の強いOHラジカルが併用して用いられているが、OHラジカルの寿命はマイクロ秒〜ナノ秒と極めて短時間であるために、処理水中で生成したOHラジカルの殆どは、処理水中で希薄にしか存在しない有機物と会合する前に消滅してしまい、折角生成したOHラジカルが有効に活用されないという問題があった。
【0005】
かかる課題に対し、本願発明者らは、多くの特徴的性質を有することから近年、注目が高くなってきているカーボンナノチューブの適用を検討した。ここで、カーボンナノチューブ(以下、CNTとも言う)とは、炭素6員環が連なったグラファイトの1層(グラフェントシート)を丸めた円筒状の物質で、直径が1nm程度から数10nm程度、長さは1μm程度のものをいう。また、CNTには、1層のみからなる単層CNTと何層もが同心筒状になった多層CNTがあり、形状、電子物性、吸着特性及び機械的性質などにおいて他の物質にはない優れた特性が発見されてきている。本願発明者らはCNTが有する特性のうち、特に、その吸着特性および電子物性に着目し、種々の実験を重ねることにより、CNTにオゾンを作用させると有機物の高効率な分解が実現されることを見出し、本願発明に到達したものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる有機物の分解方法は、有機物とカーボンナノチューブを接触させた後、このカーボンナノチューブにオゾンを供給し、カーボンナノチューブとオゾンの反応により生成するラジカルまたはオゾンを用いてカーボンナノチューブに吸着された有機物の分解を行うものである。
【0007】
この発明にかかる有機物の分解方法は、カーボンナノチューブをカーボンナノチューブ保持手段により保持するものである。
【0008】
この発明にかかる有機物の分解方法は、ラジカルを、カーボンナノチューブとオゾン、または、カーボンナノチューブとオゾンと水もしくは水素との反応により生成される酸素ラジカルもしくは水酸化ラジカルとするものである。
【0009】
本発明にかかる有機物の分解装置は、有機物を分解処理する反応槽と、反応槽に各々接続されたカーボンナノチューブを供給するカーボンナノチューブ供給手段及びオゾンを供給するオゾン供給手段とを備え、カーボンナノチューブ供給手段及びオゾン供給手段から反応槽にカーボンナノチューブとオゾンを供給し、カーボンナノチューブに吸着された有機物を分解するように構成されたものである。
【0010】
本発明にかかる有機物の分解装置は、有機物を分解処理する反応槽と、反応槽に配置された、カーボンナノチューブを保持したカーボンナノチューブ保持手段と、反応槽に接続された、オゾンを供給するオゾン供給手段とを備え、オゾン供給手段からカーボンナノチューブ保持手段にオゾンを供給し、カーボンナノチューブに吸着された有機物を分解するように構成されたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明するために、添付の図面に基づいてこれを説明する。
実施の形態1
図1は本発明にかかる有機物分解装置の一実施例を示す図で、図中、11は反応槽、12はオゾン発生器、13はカーボンナノチューブ生成器、14はカーボンナノチューブ回収器、15は排オゾン分解器、31〜35は配管である。
【0012】
本発明にかかる有機物分解装置は、反応槽11に、有機物を導入するための配管31とオゾン発生器12とカーボンナノチューブ生成器13が接続されている。有機物の分解に際しては、配管31から反応槽11に気体もしくは液体の有機物が導入された後、オゾン発生器12およびカーボンナノチューブ生成器13からカーボンナノチューブとオゾンが反応槽11に導入される。カーボンナノチューブとオゾンが反応槽11に導入されると、有機物と接触したカーボンナノチューブは有機物を吸着するため、カーボンナノチューブ表面における有機物の濃度が上昇する。また、カーボンナノチューブと接触したオゾンは酸素ラジカル(以下、Oラジカルともいう)や水酸化ラジカル(以下、OHラジカルともいう)などのラジカルを生成するため、オゾンと反応してこれらのラジカルを生成するカーボンナノチューブが、その表面に有機物を吸着している場合には、これらのラジカルによりカーボンナノチューブの表面に吸着された有機物が効率的に分解される。
【0013】
有機物の分解が終了すると、これら気体もしくは液体は配管34aを通って、カーボンナノチューブ回収器14に導入され、これら気体中もしくは液体中に含まれたカーボンナノチューブが回収される。カーボンナノチューブが回収された後は、配管34bを通って排オゾン分解器15にて未反応のオゾンが分解され、気体もしくは液体が配管35から外部へ排出され、有機物の分解処理が終了する。
【0014】
このように、有機物を含む処理液中にカーボンナノチューブを分散させる場合、カーボンナノチューブとオゾン、または、カーボンナノチューブとオゾンと水もしくは水素との反応により生成されるOラジカルもしくはOHラジカルにより有機物が分解される。特に、OHラジカルは寿命が短いため、効率的に有機物を分解することは通常は困難であるが、本発明においては、分解対象物である有機物を表面に吸着したカーボンナノチューブと、分解対象物である有機物の極く近傍にてOHラジカルが生成されることになるため、効率的な有機物の分解処理が実現される。
【0015】
以上、本発明にかかる有機物の分解方法においては、カーボンナノチューブが希釈濃度の有機物を吸着し、カーボンナノチューブ表面にて有機物の濃度を高める効果を有するため、投入されるオゾンの利用効率が向上する。そのため、オゾンの消費量が抑制され、低コストな有機物の分解方法が実現される。
【0016】
実施の形態2
図2は本発明にかかる有機物分解装置の一実施例を示す図で、図中、16は有機物分解処理後のオゾンを反応槽11から排出するための窒素ガス供給器、17は超純水中に所定量の油分およびカーボンナノチューブを分散させた処理水、18はオゾン発生器12から供給されるオゾンを効率的に処理水中に分散させるためのオゾン散気ヘッド、41a〜46bまでは配管で、その他の符号は図1に示したものと同じか若しくは相当するものを表している。
【0017】
本実施の形態における有機物分解装置は、処理水が配管41a、41bを通って反応槽11に導入された後、カーボンナノチューブ生成器13からカーボンナノチューブが配管43、41bを通って反応槽11に導入され、、水中に分散した油分を予めカーボンナノチューブに吸着させる。続いて、オゾン発生器12から配管42、46bを通ってオゾン散気ヘッド18に導入し、オゾン散気ヘッド18より処理水中にオゾンを供給することで、希釈濃度の油分の処理時の濃度を高め、オゾンによる油分の分解が効率的に進行するものである。油分の分解処理が終了すると、処理液は配管44a、44bを通って外部に排出される。また、油分の分解に利用されたオゾンは、窒素ガス供給器16から配管46a、46bを通って反応槽11に供給される窒素ガスと共に、配管45aを通って排オゾン分解器15に導入され、分解処理された後、配管45bを通って、窒素ガスと共に外部へ放出される。
【0018】
また、かかる有機物分解装置においては、カーボンナノチューブ回収器14とカーボンナノチューブ生成器13は配管44cにより連結されており、カーボンナノチューブ回収器14にて処理液から分離回収されたカーボンナノチューブは配管44cによりカーボンナノチューブ生成器13へ導入され、再利用される構成となっている。
【0019】
次に、かかる分解装置を用いてカーボンナノチューブの有機物吸着特性について検討を行った。超純水中200cc中に0.2gのカーボンナノチューブ粉末を分散させ、その分散させた液に水溶性油0.5gを溶解させた。所定の時間経過後、液を濾過してカーボンナノチューブ粉末を取り除いたところ、カーボンナノチューブ作用前には白く縣濁していたろ液の色がうすくなり、溶液中の水溶性油がカーボンナノチューブに吸着したことが確認された。
【0020】
続いて、カーボンナノチューブへの油分の吸着量を正確に見積もるために、JIS K 0102に準拠したTOC(全有機炭素)測定を行った。その結果、カーボンナノチューブに吸着された油分量は添加した水溶性油の約20%であることがわかった。ここでは詳細な結果を述べないが、カーボンナノチューブは、他の有機物、例えばベンゼン、ダイオキシン、高分子化合物、たんぱく質などにも吸着特性を有することが確認されている。以上の検討よりカーボンナノチューブは、溶液中の有機物を吸着する吸着特性を有すること、即ち濃縮機能を有することが確認された。
【0021】
図3は本発明にかかる有機物の分解方法の反応を模式的に表す図で、図中、1はカーボンナノチューブ、2は分解対象の汚染有機物、3はオゾン分子、4はオゾンとカーボンナノチューブとの相互作用によって発生したOHラジカル又はOラジカル等のラジカル、5はカーボンナノチューブ上で濃縮された汚染有機物、6はオゾンあるいはラジカルによって分解された分解生成物を示している。
【0022】
本発明にかかる有機物の分解方法においては、溶液中に分散する汚染有機物2が、カーボンナノチューブ1の表面に疎水−疎水相互作用によって吸着し、カーボンナノチューブ1上で濃縮される。一方、処理液中にガス状、或いは溶存状態で存在するオゾン分子3はカーボンナノチューブ1との相互作用によってOHラジカルやOラジカル等のラジカル4を発生する。この発生したラジカル4は、近傍の濃縮された有機物5と速やかに反応する。その結果、濃縮された有機物5は、酸化・分解され、親水性分子となって水中へと溶解するか、もしくは二酸化炭素などの気体となって系外に排出される。これらの過程を繰り返すことによって処理液中の有機物5の分解が促進され、水の浄化がなされることになる。
【0023】
また、カーボンナノチューブはオゾンにより分解されることがないため、反応槽内に一旦添加しておけば、有機物の分解処理を繰返し行うことができるという利点も有する。
【0024】
実施の形態3
次に実施の形態2と同じ条件でカーボンナノチューブおよび水溶性油を分散させた溶液に、200g/Nm、2l/minのオゾンを曝気法で供給した。オゾンを供給して5分経過後、溶液をろ過してカーボンナノチューブを除去し、ろ液のTOC測定を行った。測定結果(試験No3)を対照実験(試験No1、2、4、5)の結果と併せ、表1に示す。
【表1】
Figure 0003941535
【0025】
表1に示されたように、カーボンナノチューブを含まない油脂溶液に直接オゾンガスを曝気した場合(試験No5:TOC値=97ppm)、そのTOC値は油脂のみの場合(試験No1:TOC値=103ppm)と同様、油分の分解は殆んど進まなかった。また有機物濃度の約10%の過酸化水素を添加しながらオゾンを供給する過酸化水素添加法では(試験No4:TOC値=78ppm)、オゾンのみの供給に比べ分解効率は向上したが、それでもせいぜい24%程度であった。
【0026】
これに比して、カーボンナノチューブを分散させた後、オゾンを曝気した場合(試験No3:TOC値=32ppm)、約70%の油分の減少が確認された。油脂+カーボンナノチューブ+酸素バブリング(試験No2:TOC値=80ppm)によって得られた約20%の油分減少量(103−80=23ppm)を、カーボンナノチューブへの油分吸着量として差し引いても、約50%の有機成分は酸化、分解されていると見積もられる。この分解効率はオゾンのみを供給した場合の約6%、もしくはオゾン+過酸化水素添加の場合の約24%に比べても明らかに大きく、カーボンナノチューブを共存させることで難分解性の有機物の分解効率が向上することが確認された。
【0027】
ここでは詳細な結果を述べないが、他の有機物、例えばベンゼン、トルエン、クレゾール、n-ヘキサン、マレイン酸、ダイオキシン、有機塩素化合物、高分子化合物、たんぱく質などにもカーボンナノチューブは吸着特性と分解効率向上の効果を有することも確認されている。またカーボンナノチューブが共存した本実施の形態に、過酸化水素水素添加法やUV照射法を併用した場合には、さらに分解効率が向上することも合わせて確認されている。以上のように、本実施の形態によって、カーボンナノチューブと有機物の共存下でのオゾン分解の効果が確認された。
【0028】
実施の形態4
次に固体有機薄膜の処理についても検討を行った。本実施の形態においては、有機薄膜として半導体製造に用いられるフォトレジストの1つであるクレゾール系ノボラックレジストの処理を実施した。前記レジスト薄膜をカーボンナノチューブを分散させた超純水中に浸漬させた。この溶液中に200g/Nm、2l/minのオゾンを曝気法で供給し、オゾンを供給してから3分経過後にレジスト膜を取り出し、その膜厚の変化を計測した。その結果、カーボンナノチューブを添加した場合のレジスト膜の剥離速度は0.20μm/minであり、カーボンナノチューブを添加しなかった場合のレジスト膜の剥離速度は0.12μm/minであった。このように、カーボンナノチューブを添加することでレジスト膜の剥離速度が向上すること、即ち、カーボンナノチューブの存在下においてオゾンを供給することにより、固体有機薄膜の分解が促進されることが確認された。
【0029】
実施の形態5
図4は本発明にかかる有機物の分解装置の一実施例を示す図であり、図中、19はカーボンナノチューブを分散保持させた多孔質セラミックス、20は多孔質セラミックス保持のためのメッシュ状保持体、21は処理水入口、22は処理水出口、23、24はバルブ、その他の符号は図1または2に示したものと同じか若しくは相当するものを表している。
【0030】
かかる有機物の分解装置においてはカーボンナノチューブを保持した多孔質セラミックス19を備えた反応槽11に、配管21を通って処理水が導入され、処理水中に含まれた有機物がカーボンナノチューブに吸着される。その後、オゾン発生器12から反応槽11にオゾンが導入され、カーボンナノチューブ及び水と反応しOラジカルおよびOHラジカルを発生することにより有機物を分解する。分解処理が終了した処理水は配管22から外部へ放出され、また、分解処理後のオゾンは、図2の装置の場合と同様にして、窒素ガスにより排オゾン分解器15にて分解処理後、外部放出される。
【0031】
実施の形態2にて示した図2の装置においては、粉末状のカーボンナノチューブを用いたために、処理液を排出する前にろ過を行う必要があった。これに対して、図4に示した本実施の形態に係る有機物の分解装置においては、カーボンナノチューブを多孔質セラミックス19に保持させたので、反応槽に対し外部からカーボンナノチューブを供給する手段及び有機物の分解処理後にカーボンナノチューブを回収する手段が不要となり、装置構成が簡略化されている。
かかるカーボンナノチューブを坦持させた多孔質セラミックスは、例えば、アクリル系またはセルロース系の有機バインダーとアルミナ等のセラミックスを混合して作成したスラリーに、1〜10重量%程度のカーボンナノチューブを分散させた後、約450〜550℃程度に加熱することで得ることができる。
【0032】
次にかかる有機物分解装置を用いて有機成分を含んだ処理液を処理した結果について説明する。実施の形態1と同じ条件でカーボンナノチューブおよび水溶性油を分散させた溶液に、200g/Nm、2l/minのオゾンガスを曝気法で供給した。オゾンを供給してから5分経過後、処理液を配管45bから排出させた。そしてその排出液のTOC測定を行った。その結果、カーボンナノチューブを含まない油脂溶液に直接オゾンを曝気した場合、油分の分解は殆ど進まなかったのに比して、カーボンナノチューブを坦持させた担体にオゾンを曝気した場合、約50%の有機成分が酸化・分解されていることがわかった。
【0033】
実施の形態6
次にカーボンナノチューブのオゾンに対する安定性を明らかにするために、実施の形態4で実施した処理を繰り返すことにより耐久性の確認を行った。その結果、上述の処理を30回繰り返した後の有機成分の分解量は1回目とほぼ同等であり、その性能に変化がないことが確認され、オゾンに対するカーボンナノチューブの安定性が確認された。
【0034】
実施の形態7
次に本発明にかかる有機物分解装置を用いて、気体中の有機物の分解処理について検討した結果につき説明する。
図5は本発明にかかる有機物分解装置の一実施例を示す図である。図中、25はカーボンナノチューブを坦持した多孔質セラミックス19を保持した反応装置、26は有機物を含んだ気体を反応装置に送風するための被処理ガス送風器、27は乾燥オゾンを湿潤化させるための水の入ったバブリングボトル、28a〜29bはバルブ、42〜50dは配管で、その他の符号は図1、2または4に示したものと同じか若しくは相当するものを表している。
【0035】
次にかかる有機物分解装置を用いた気体中の有機物の分解方法について説明する。かかる分解方法においては、まず最初、バルブ29a、バルブ29b、バルブ28bを閉、バルブ28aを開の状態で有機物を含んだ気体を被処理ガス送風器26から配管50a、50b、49bを経由して反応装置25内に送風し、有機物をカーボンナノチューブへ吸着させる。次に、適当な吸着時間を経過させた後、バルブ28aを閉、バルブ28を開bとし、オゾン発生器12から発生した乾燥オゾンを配管42、46bを経由してバブリングボトル27に導入し、湿潤化させ、配管49a、49bを経由して反応器25に供給する。反応器25に供給された湿潤化オゾンはカーボンナノチューブとの相互作用により酸素ラジカルや水酸化ラジカルを発生する。これらのラジカルが吸着された有機物と高効率に反応することにより有機物の除去を行う。有機物の分解の終了後、バルブ29a、バルブ28aを閉、バルブ28b、バルブ29bを開とし、窒素ガス供給器16より配管46a、46bを取ってバブリングボトル27に窒素ガスを供給する。そして、未反応のオゾンと一緒にこの窒素ガスを配管49a、49bから反応装置25に供給し、処理後のガスを反応装置25から配管45a、45cを経由して排オゾン分解器15に送り、未分解のオゾンを分解させた後、配管45bから外部へ放出する。また、被処理ガスを反応装置25に送り込む時に、バルブ29b、バルブ28bを閉、バルブ28a、バルブ29aを開として、配管50a、50b、49b、反応装置25、配管45a、50c、50dを循環させてもよい。この場合は、被処理ガスを一定時間循環させた後、バルブ28a、バルブ29aを閉、バルブ28b、バルブ29bを開として、上述のように反応装置25にて有機物の分解処理を行う。処理されたガスの排気手順は上述した場合と同じである。
【0036】
本装置に揮発性の有機物であるクロロホルムを10%含むガスを作用させると、ガス中のクロロホルムの数10%がカーボンナノチューブ表面に吸着されることが確認され、本実施の形態によって、カーボンナノチューブが気体中の有機物に対しても吸着特性を有することが判明した。
【0037】
実施の形態8
次に本発明にかかる有機物分解装置を用いて、揮発性有機物であるクロロホルムを含むガスに対するオゾン作用による分解特性を検証した。カーボンナノチューブを坦持した多孔質セラミックス19にクロロホルムを吸着させた後に、湿潤化させたオゾンを作用させた。オゾンを作用させた後のガスを分析することによってクロロホルムが分解されていることが確認された。ドライ状態のオゾンについても同様に分解特性を検証した結果、湿潤化オゾンより分解効率はやや低下するが、クロロホルムの分解が可能であることが確認されている。
【0038】
また、ここでは詳細な結果は述べないが、例えばベンゼン、ダイオキシン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フタル酸化合物、アミン化合物、アセトン、などにも分解特性を有していることも確認されている。以上、カーボンナノチューブとオゾンを用いた有機物除去について説明してきたが、本発明はオゾンを用いた酸化反応制御に関わるものであり、主に有機物の分解に有効である。例えば、上下水などの水処理分野、半導体基板や液晶基板の洗浄などに用いられた有機系薬液の廃液処理、プリント配線板や実装基板の洗浄、精密部品の脱脂洗浄後の廃液処理などにも有効であることはいうまでもない。
【0039】
【発明の効果】
以上、本発明にかかる有機物の分解方法によれば、有機物の濃度が希釈な場合であっても、カーボンナノチューブが有機物を吸着し希釈濃度の有機物を濃縮する効果を有するため、カーボンナノチューブとオゾンの反応により生成される酸素ラジカル等のラジカルまたはオゾンが効率的に有機物と反応し、オゾンの有効利用が図られることから、オゾンの消費量が抑制され、効率的かつ低コストな有機物の分解方法が実現される。
【0040】
また、本発明にかかる有機物の分解方法によれば、有機物の濃度が希釈な場合であっても、カーボンナノチューブが有機物を吸着し希釈濃度の有機物を濃縮する効果を有するため、カーボンナノチューブとオゾンの反応により生成される酸素ラジカル等のラジカルまたはオゾンが効率的に有機物と反応し、オゾンの有効利用が図られることからオゾンの消費量が抑制され、効率的かつ低コストな有機物の分解方法が実現される。また、反応槽外部からのカーボンナノチューブの供給及び有機物分解後のカーボンナノチューブの回収が不要となるという利点も併せ持つ。
【0041】
さらに本発明にかかる有機物の分解方法によれば、有機物の分解除去を、酸素ラジカル及び水酸化ラジカルを用いて行う場合には、有機物の分解効率が高く、かつ寿命の短い水酸化ラジカルの有効利用が図られることにより有機物が効率的に分解され、さらに好適である。
【0042】
本発明にかかる有機物の分解装置によれば、有機物の濃度が希釈な場合であっても、カーボンナノチューブが有機物を吸着し希釈濃度の有機物を濃縮する効果を有するため、カーボンナノチューブとオゾンの反応により生成される酸素ラジカル等のラジカルまたはオゾンが効率的に有機物と反応し、オゾンの有効利用が図られることから、オゾンの消費量が抑制され、有機物を効率的かつ低コストに分解することが可能な有機物の分解装置が実現される。
【0043】
本発明にかかる有機物の分解装置によれば、有機物の濃度が希釈な場合であっても、カーボンナノチューブが有機物を吸着し希釈濃度の有機物を濃縮する効果を有するため、カーボンナノチューブとオゾンの反応により生成される酸素ラジカル等のラジカルまたはオゾンが効率的に有機物と反応し、オゾンの有効利用が図られることから、オゾンの消費量が抑制され、有機物を効率的かつ低コストに分解することが可能で、かつ、反応槽外部からのカーボンナノチューブの供給及び有機物分解後のカーボンナノチューブの回収が不要となる有機物の分解装置が実現され、好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる有機物分解装置の構成説明図である。
【図2】 本発明にかかる有機物分解装置の構成説明図である。
【図3】 本発明にかかる有機物分解反応を説明するイメージ図である。
【図4】 本発明にかかる有機物分解装置の構成説明図である。
【図5】 本発明にかかる有機物分解装置の構成説明図である。
【図6】 従来の有機物分解装置の構成説明図である。
【符号の説明】
1 カーボンナノチューブ、2 汚染有機物、3 オゾン分子、
4 酸素ラジカル又は水酸化ラジカル、5 汚染有機物、
6 分解された有機物、11 反応槽、12 オゾン発生器、
13 カーボンナノチューブ生成器、14 カーボンナノチューブ回収器、
15 排オゾン分解器、16 窒素ガス供給器、
17 有機物およびカーボンナノチューブを分散させた溶液、
18 オゾン散気部、19 多孔質セラミックス、20 メッシュ状保持体、
21 処理水入口、22 処理水出口、23 バルブ、24 バルブ、
25 筐体、26 被処理ガス送風器、27 バブリングボトル、
28a バルブ、28b バルブ、29a バルブ、29b バルブ、
31〜50d 配管、100 原水導入管、101 過酸化水素注入管、
102 反応槽、103 紫外線ランプ、104 散気管、
105 オゾン導入管、106 排出管。

Claims (5)

  1. 有機物とカーボンナノチューブを接触させた後、このカーボンナノチューブにオゾンを供給し、前記カーボンナノチューブと前記オゾンの反応により生成するラジカルまたは前記オゾンを用いて前記カーボンナノチューブに吸着された有機物の分解を行う有機物の分解方法。
  2. 前記カーボンナノチューブはカーボンナノチューブ保持手段により保持される請求項1記載の有機物の分解方法。
  3. 前記ラジカルは、カーボンナノチューブとオゾン、または、カーボンナノチューブとオゾンと水もしくは水素との反応により生成される酸素ラジカルもしくは水酸化ラジカルである請求項1または2に記載の有機物の分解方法。
  4. 有機物を分解処理する反応槽と、この反応槽に各々接続されたカーボンナノチューブを供給するカーボンナノチューブ供給手段及びオゾンを供給するオゾン供給手段とを備え、前記カーボンナノチューブ供給手段及び前記オゾン供給手段から前記反応槽に前記カーボンナノチューブと前記オゾンを供給し、前記カーボンナノチューブに吸着された有機物を分解することを特徴とする有機物の分解装置。
  5. 有機物を分解処理する反応槽と、この反応槽に配置された、カーボンナノチューブを保持したカーボンナノチューブ保持手段と、前記反応槽に接続された、オゾンを供給するオゾン供給手段とを備え、前記オゾン供給手段から前記カーボンナノチューブ保持手段にオゾンを供給し、前記カーボンナノチューブに吸着された有機物を分解することを特徴とする有機物の分解装置。
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