JP2003236389A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 可視光照射による水の分解用フッ化窒化チタンを含む光触媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】 Ti(IV)OaNbFcまたはTi(IV)OaNbFcにアルカリ又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属MeをドープしたMeTi(IV)OaNbFcで表されるフッ化窒化チタンを含む光触媒(但し、bが0.1〜1,cが0.1〜1,aはTi(IV)を維持する値であり、bおよびcとの関連で決まる。)。
【請求項2】 Ti(IV)OaNbFcはアナタース構造、そしてMeTi(IV)OaNbFcはペロブスカイト〜アナタース構造を持つことを特徴とする請求項1に記載のフッ化窒化チタンを含む光触媒。
【請求項3】 少なくともPt、NiおよびPdからなる群から選択される少なくとも一種の助触媒を担持させたことを特徴とする請求項1または2に記載のフッ化窒化チタンを含む光触媒。
【請求項4】 Ti(IV)OaNbFcまたはTi(IV)OaNbFcにアルカリ又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属MeをドープしたMeTi(IV)OaNbFcで表されるフッ化窒化チタンを含む光触媒(但し、bが0.1〜1,cが0.1〜1,aはTi(IV)を維持する値であり、bおよびcとの関連で決まる。)からなる光水分解用触媒。
【請求項5】 Ti(IV)OaNbFcはアナタース構造、そしてMeTi(IV)OaNbFcはペロブスカイト〜アナタース構造を持つことを特徴とする請求項4に記載のフッ化窒化チタンを含む光水分解用触媒。
【請求項6】 少なくともPt、NiおよびPdからなる群から選択される少なくとも一種の助触媒を担持させたことを特徴とする請求項4または5に記載のフッ化窒化チタンを含む光水分解用触媒。
【請求項7】 (NH4)2TiFdX6−d (但し、dは1〜6である。)で表され、少なくともFを含むフッ化ハロゲン化チタン二アンモニウムとハロゲン化アンモニウムとを等モル〜ハロゲン化アンモニウムを少量過剰で最高温度200℃〜500℃で焼成して粗原料を形成し、次いで該粗原料を酸素原子換算でアンモニアに対して0.02%〜10.00%の酸素、空気、または水を含んだアンモニア雰囲気で最高温度350℃〜700℃で5時間以上窒化熱合成してTi(IV)OaNbFcからなる光触媒を製造する方法。
【請求項8】 TiFxX6−xおよび/または(NH4)2TiFdX6−d (但し、xおよびdは1〜6である。)で表され少なくともFを含むフッ化ハロゲン化チタン二アンモニウムとSrO、SrOHおよびSrXからなる群から選択される少なくとも一種とを焼成して粗原料、またはSrTiF6を形成し、次いで該粗原料またはSrTiF6を酸素原子換算でアンモニアに対して0.02〜10.00%の酸素、空気、または水を含んだアンモニア雰囲気で、最高温度350℃〜700℃で5時間以上窒化熱合成してSrTi(IV)OaNbFcからなる光触媒を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ化窒化チタンを含む光触媒、特に可視光でプロトンを水素に還元、あるいは水を酸素に酸化できる水の可視光分解の可能性を持つ水の光分解反応に安定な光触媒関する。
【0002】
【従来の技術】
光で触媒反応を行う技術としては、光触媒能を有する固体化合物に光を照射し、生成した励起電子やホールで反応物を酸化、あるいは還元して目的物を得る方法が既に知られている。
中でも、水の光分解反応は光エネルギー変換の観点から興味が持たれている。また、水の光分解反応に活性を示す光触媒は、光吸収、電荷分離、表面での酸化還元反応といった機能を備えた高度な光機能材料と見ることができる。
工藤、加藤等は、タンタル酸アルカリ、アルカリ土類等が、水の完全光分解反応に高い活性を示す光触媒であることを多くの先行文献を挙げて説明している〔例えば、Catal.Lett.,58(1999).153-155、Chem.Lett.,(1999),1207、表面,Vol.36,No.12(1998),625-645(文献Aという)〕。
前記文献Aにおいては、水を水素または/および酸素に分解する反応を進めるのに有用な光触媒材料について解説しており、水の還元による水素生成反応、または酸化による酸素生成反応および水の完全光分解反応用光触媒についての多くの示唆をしている。
また、白金、NiOなどの助触媒を担持した光触媒などについいても言及している。
【0003】
しかしながら、ここで解説されているものは、非金属としては酸素を含むものが主である。また、多くの固体光触媒は価電子帯と伝導帯の間にある禁制帯の幅、即ち、バンドギャップエネルギ−が大きいため(>3eV)、低いエネルギーの可視光(エネルギー:3eV未満)で作動することができない。一方、バンドギャップエネルギーが小さく、可視光で電子、ホールを生ずることのできる従来の固体光触媒のほとんどは水の光分解反応等の反応条件下でである。例えばCdS、Cu−ZnS等はバンドギャップは2.4eVであるが酸化的な光腐食作用を受けるため、触媒反応が限定されている。地表に到達する太陽光のほとんどはエネルギーの小さい可視光であり、太陽光で効率的に多様な触媒反応を進行させるためには可視光で作動しかつ安定な光触媒が必要不可欠である。しかしながら上述のように従来の技術で満足できるものは存在しかった。
【0004】
前記したように地表で利用できる太陽光のほとんどは可視光であるため、可視光で励起電子とホールを生成でき、かつ種々の反応(酸化および還元)で安定な光触媒を開発する必要があった。従来の安定な光触媒のほとんどは金属酸化物、すなわち非金属元素として酸素を含むものである。このようなものでは、伝導帯及び価電子帯のエネルギー的な位置関係は酸素の価電子(O2p)軌道のエネルギーによって大きく支配されるため、バンドギャップエネルギ−が小さく、可視光で光触媒機能を発現させることができなかった。そこで、本発明者らは、価電子のエネルギーが酸素より高い元素を金属と化合させ、それらの価電子軌道を混成させた場合、価電子帯のエネルギー的位置が高くなり、バンドギャップエネルギーは小さくすることができ、このような化合物として光触媒反応条件下で安定であるものを見出すことができれば、可視光で作動する新しい光触媒を創出するものと考えて、窒素原子の価電子は酸素原子のそれに比べ高いエネルギーをもつため、窒素原子を含有する金属化合物のバンドギャップエネルギーは金属酸化物のそれに比べ小さくすることができ、適切な量の窒素原子と結合した金属及び金属化合物は長波長の可視光の吸収によって励起電子とホールを生成することが可能となり、可視光で作動する光触媒となると考え、更に水の光分解等の反応条件下でも安定である化合物を見出すべく鋭意検討して、少なくとも1つの遷移金属を含むオキシナイトライドからなる化合物が光触媒として機能することを発見し、前記課題を解決した発明として既に提案している(特願2000−256681;2000年8月28日)。その化合物の多くはペロブスカイト結晶構造を取り、安定性の効果はこれによるものと推測された。
【0005】
前記推測に基づく可視光活性の化合物として、TaやNbを含むものは安定的に得られるが、Ti(IV)を含む化合物を得ることが困難であった。そこで、本発明者らは、Ti(IV)を含む前記ナイトライド結合軌道の混成の原理による化合物をいかにしたら容易に得られるかを検討し、前記原理に基づく特性の確認は有用と考えた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、Ti(IV)のナイトライド結合を持つ安定は化合物を提供することであり、また、当然ながら前記化合物の製造方法を提供することである。そこで、いかにしたら、光活性を持つTi(IV)を含む化合物にナイトライド結合を導入できるかを色々検討する中で、Ti(IV)のF結合を含む場合、Ti(IV)のナイトライド結合の導入が可能であることを見出し、TiOaNbFc、MeTiOaNbFc化合物類(ここで、MeはSrなどのアルカリ土類金属である。cは0.1〜1,bは0.1〜1であり、好ましくはb≧0.3であり、aは前記cおよびbとの関連において決まる。)が合成可能であり、可視光で活性、特に水の光分解により水素または酸素を生成させる触媒としての可能性を見出し、前記本発明の課題を解決することができた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、Ti(IV)OaNbFcまたはTi(IV)OaNbFcにアルカリ又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属MeをドープしたMeTi(IV)OaNbFcで表されるフッ化窒化チタンを含む光触媒(但し、bが0.1〜1,cが0.1〜1,aはTi(IV)を維持する値であり、bおよびcとの関連で決まる。)である。好ましくは、Ti(IV)OaNbFcはアナタース構造、そしてMeTi(IV)OaNbFcはペロブスカイト〜アナタース構造を持つことを特徴とする前記フッ化窒化チタンを含む光触媒であり、より好ましくは、少なくともPt、NiおよびPdからなる群から選択される少なくとも一種の助触媒を担持させたことを特徴とする前記フッ化窒化チタンを含む光触媒である。
【0008】
本発明の第2は、Ti(IV)OaNbFcまたはTi(IV)OaNbFcにアルカリ又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属MeをドープしたMeTi(IV)OaNbFcで表されるフッ化窒化チタンを含む光触媒(但し、bが0.1〜1,cが0.1〜1,aはTi(IV)を維持する値であり、bおよびcとの関連で決まる。)からなる光水分解用触媒である。好ましくは、Ti(IV)OaNbFcはアナタース構造、そしてMeTi(IV)OaNbFcはペロブスカイト〜アナタース構造を持つことを特徴とする前記フッ化窒化チタンを含む光水分解用触媒であり、より好ましくは、少なくともPt、NiおよびPdからなる群から選択される少なくとも一種の助触媒を担持させたことを特徴とする請求項4または5に記載のフッ化窒化チタンを含む光水分解用触媒である。
【0009】
本発明の第3は、(NH4)2TiFdX6−d (但し、dは1〜6である。)で表され、少なくともFを含むフッ化ハロゲン化チタン二アンモニウムとハロゲン化アンモニウムとを等モル〜ハロゲン化アンモニウムを少量過剰で最高温度200℃〜500℃、好ましくは300℃〜450℃、で焼成して粗原料を形成し、次いで該粗原料を酸素原子換算でアンモニアに対して0.02%〜10.00%の酸素、空気、または水を含んだアンモニア雰囲気で最高温度350℃〜700℃、好ましくは400℃〜600℃で5時間以上窒化熱合成してTi(IV)OaNbFcからなる光触媒を製造する方法である。
【0010】
発明の第4、TiFxX6−xおよび/または(NH4)2TiFdX6−d (但し、xおよびdは1〜6である。)で表され少なくともFを含むフッ化ハロゲン化チタン二アンモニウムとSrO、SrOHおよびSrXからなる群から選択される少なくとも一種とを焼成して粗原料、またはSrTiF6を形成し、次いで該粗原料またはSrTiF6を酸素原子換算でアンモニアに対して0.02〜10.00%の酸素、空気、または水を含んだアンモニア雰囲気で、最高温度350℃〜700℃で5時間以上窒化熱合成してSrTi(IV)OaNbFcからなる光触媒を製造する方法である。
【0011】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明の光触媒類は、特許請求の範囲で記載された構成用件を満足すれば得られる。
(NH4)2TiFdX6−dでしては、(NH4)2TiF6、(NH4)2TiF2Cl4などを好ましいものとして挙げることができる。
SrTi(IV)OaNbFcを作製する組原料を得るための原料としては、TiF4とSrF2とを混合を好ましいものとして挙げることができる。
【0012】
【実施例】
ここでは、本発明をより理解し易くするために具体例を挙げて説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0013】
実施例1
まずヘキサフルオロチタン(IV)酸二アンモニウム〔(NH4)2TiF6〕と塩化アンモニウム(NH4Cl) をモル比で1:1で混合する。次にこの混合物を金管の中に入れ、口を溶接によって封じる。この封じた金管を電気炉の中で400℃(673K),12時間焼成する。焼成後、酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.2dm3・min−1,酸素流速1cm3・min−1)で600℃(873K),12時間の窒化により合成した。白金の上記材料への担持は、0.1mol・0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金 Pt(NH4)3Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
【0014】
焼成後の材料のX線回折を図 1 に示す。図中の回折ピークはすべてTiNF(論文;Angew. Chem. Int. Ed. Engle. 27 (1988), No.7,p929-930,から引用。)に帰属され、TiNFの生成が確認された。上記材料の紫外・可視吸収を図2に示す。図2より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。元素分析の結果よりTi:O:N:Fは1:1.76:0.13:0.10(TiO1.76N0.13F0.10)となった。
図3に上記の通り白金3%担持した材料0.2gを10vol.%メタノール水溶液 0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300Wキセノンランプを用い、カットオフフィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図に示されるように、上記材料は420nm以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図4に上記材料0.2gを0.01moldm−3 AgNO3水溶液0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図4より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。
以上のことから、TiNFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0015】
実施例2
まずヘキサフルオロチタン(IV)酸二アンモニウム〔(NH4)2TiF6〕と塩化アンモニウム(NH4Cl)をモル比で1:1で混合する。次にこの混合物をガラス管の中に入れ、中を真空にして口を溶接によって封じる。この封じたガラス管を電気炉の中で400℃(673K),12時間焼成する。焼成後、酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.04dm3・min−1,酸素流速0.2cm3・min−1),500℃(773K),10時間の窒化により合成した。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金Pt(NH3)4Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料 0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K) で2時間水素により還元処理を行った。
【0016】
焼成後の材料のX線回折を図5に示す。図5中の回折ピークはすべてTiNF(前記論文参照)に帰属され、TiNFの生成が確認された。上記材料の紫外・可視吸収を図6 に示す。図6より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。元素分析の結果よりTi:O:N:Fは1:1.64:0.14:0.30となった。
図 7 に上記の通り白金3wt%担持した材料0.2gを10vol.%メタノール水溶液0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300キセノンランプを用い、カットオフフィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図に示されるように、上記材料は420nm以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図8に上記材料0.2gを 0.01 moldm−3AgNO3水溶液 0.310dm−3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図8より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。
以上のことから、TiNFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0017】
実施例 3
まずヘキサフルオロチタン(IV)酸二アンモニウム〔(NH4)2TiF6〕と塩化アンモニウム(NH4Cl) をモル比で1:1で混合する。次にこの混合物をガラス管の中に入れ、中を真空にして口を溶接によって封じる。この封じたガラス管を電気炉の中で400℃(673K),12時間焼成する。焼成後、不活性ガス気流下で300℃(573K),10時間焼成後、酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.2dm3・min−1,酸素流速1cm3・min−1)600℃(873K),15時間の窒化により合成した。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金Pt(NH4)3Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
焼成後の材料のX線回折を図9に示す。図9中の回折ピークはすべてTiNFに帰属され、TiNFの生成が確認された。上記材料の紫外・可視吸収を図10に示す。図10より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。元素分析の結果よりTi:O:N:Fは1:1.74:0.13:0.14となった。
図 11に上記の通り白金3wt%担持した材料0.2gを10vol.% メタノール水溶液 0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300Wキセノンランプを用い、カットオフフィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図に示されるように、上記材料は420nm以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図12 に上記材料0.2gを0.01moldm−3AgNO3水溶液0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図12より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。
以上のことから、TiNFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0018】
実施例4
まずヘキサフルオロチタン(IV)酸二アンモニウム〔(NH4)2TiF6〕と塩化アンモニウム(NH4Cl) をモル比で1:1で混合する。次にこの混合物を金管の中に入れ、溶接によって封じる。この封じた金管をガラス管の中に入れる。ガラス管の中真空にした後、口を溶接によって封じる。この管を電気炉の中で400℃(673K),12時間焼成する。焼成後、不活性ガス気流下で300℃(573K),10時間焼成し、さらに酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.04dm3・min−1,乾燥空気0.2cm3・min-1)でアンモニア気流下で流速0.04dm3・min−1 500℃(773K),10時間の窒化により合成した。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金Pt(NH3)4Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
【0019】
焼成後の材料のX線回折を図13に示す。図中の回折ピークはすべてTiNF(前記論文参照)に帰属され、TiNFの生成が確認された。上記材料の紫外・可視吸収を図 14に示す。図14より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。元素分析の結果よりTi:O:N:Fは1:1.45:0.30:0.20となった。
【0020】
図15に上記の通り白金3wt%担持した材料0.2gを 10vol.% メタノール水溶液 0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300Wキセノンランプを用い、カットオフフィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図に示されるように、上記材料は420nm以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図16 に上記材料 0.2gを 0.01 moldm−3AgNO3水溶液 0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。
【0021】
以上のことから、TiNFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0022】
実施例5
フッ化チタンTiF4(0.9g)とフッ化ストロンチウムSrF2(0.6g)をAr雰囲気中で混合し、金チューブに封管する。さらにこれをパイレックスガラス管内に真空封管して、10K/分で昇温した後、450℃で8時間保ち、その後室温まで降温することにより、SrTiF6を合成した。これを、酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.4dm3・min−1,酸素流速0.4cm3・min-1)で流速 40dm3/分のアンモニアNH3気流中下において、昇温速度10K/分で673Kまで昇温した後、この温度で5時間保ち、その後Ar気流中下で室温まで降温することによりSrTiONF材料を合成した。元素分析の結果よりSr:Ti:O:N:Fは1:2.35:0.30:0.40となった。助触媒であるPtは塩化白金酸HPtCl6を以下に示す反応溶液中に懸濁して光を照射することにより触媒上に析出させる光電着により行った。助触媒の含浸量は、0.1〜10重量%の範囲で変更できる。
上記材料の紫外・可視吸収を図17に示す。図17より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。図18に上記の通り白金1重量%を担持させた光触媒を0.2gを10容量%のメタノール水溶液0.200dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300Wキセノンランプを用い、420nm以下の波長光をカットする波長フィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図18に示されるように、上記材料は420nm 以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図19に上記材料0.2gを0.01モル/dm3AgNO3水溶液0.200dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図19より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。以上のことから、SrTiONFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0023】
比較例 1
日本エアロジル社製酸化チタンP25を使用した。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金 〔Pt(NH3)4Cl2〕 溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
上記材料のX線回折を図 20 に示す。図中には、酸化チタンのアナターゼ相とルチル相の回折ピークが観られた。上記材料の紫外・可視吸収を図 21 に示す。図21より、上記材料は400nmまでの紫外光のみを吸収し、可視光領域に吸収を持たないことがわかった。
【0024】
実施例 1 と同様の条件で水素生成反応と酸素生成反応を行ったが、水素、酸素ともに生成しなかった。以上のことから、酸化チタンP25は420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力はない。
【0025】
比較例2
酸化チタンを流速 1dm3・min−1のアンモニアNH3気流中下、昇温速度 10 Kmin−1で600℃(873 K)まで昇温した後、この温度で15時間焼成することで窒化物を得た。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3テトラアンミンジクロロ白金Pt(NH3)4Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
【0026】
焼成後の材料のX線回折を図22に示す。図22中に回折ピークは見られなかった。上記材料の紫外・可視吸収を図23に示す。図23より、上記材料は400nmまでの紫外光のみを吸収し、可視光領域に吸収を持たないことがわかった。
実施例 1 と同様の条件で水素生成反応と酸素生成反応を行ったが、水素、酸素は生成しなかった。以上のことから、酸化チタンの窒化物では420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力はない。
【0027】
比較例3
市販されているチタン酸ストロンチウムSrTiO3を用いた。助触媒であるPtは塩化白金酸HPtCl6を以下に示す反応溶液中に懸濁して光を照射することにより触媒上に析出させる光電着により行った。 助触媒の含浸量は、0.1〜10重量%の範囲で変更できる。
焼成後の材料のX線回折を図24に示す。図24中の回折ピークはSrTiO3 に帰属された。上記材料の紫外・可視吸収を図25 に示す。図25より、上記材料は370nmまでの紫外光を吸収することがわかった。実施例1と同様に可視光照射下で反応を行ったときH2およびO2の生成は、みられなかった。
【0028】
比較例4
市販されているチタン酸ストロンチウムSrTiO3を、流速 40dm3/分のアンモニアNH3気流中下において、昇温速度10K/分で400℃(673K)まで昇温した後、この温度で5時間保ち、その後Ar気流中下で室温まで降温することによりSrTi(ON)x材料を合成した。助触媒であるPtは塩化白金酸HPtCl6を以下に示す反応溶液中に懸濁して光を照射することにより触媒上に析出させる光電着により行った。 助触媒の含浸量は、0.1〜10重量%の範囲で変更できる。
焼成後の材料のX線回折を図26に示す。図26中の回折ピークはSrTiO3 に帰属された。上記材料の紫外・可視吸収を図27 に示す。図27より、上記材料は約600nmまでの可視光を吸収することがわかった。実施例と同様に可視光照射下で反応を行ったときH2およびO2の生成は、みられなかった。
【0029】
以上のことから、SrTiO3の酸素の一部を窒素とフッ素に置き換えたSrTiONFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0030】
【発明の効果】
このように、本発明のTi(IV)のナイトライド結合を導入したTiOaNbFc、MeTiOaNbFc化合物類(ここで、MeはSrなどのアルカリ土類金属である。cは0.1〜1,bは0.1〜1であり、好ましくはb≧0.3であり、aは前記cおよびbとの関連において決まる。)は可視光において光触媒活性があるという。優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物のX線回折
【図2】 実施例1の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物の紫外・可視吸収
【図3】 実施例1の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物に白金3%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図4】 図3の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図5】 実施例2の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物のX線回折
【図6】 実施例2の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物の紫外・可視吸収
【図7】 実施例2の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物に白金3%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図8】 図7の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図9】 実施例3の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物のX線回折
【図10】 実施例3の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物の紫外・可視吸収
【図11】 実施例3の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物に白金3%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図12】 図11の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図13】 実施例4の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物のX線回折
【図14】 実施例4の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物の紫外・可視吸収
【図15】 実施例4の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物に白金3%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図16】 図15の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図17】 実施例5のSrTiONF材料の紫外・可視吸収
【図18】 実施例5のSrTiONF材料に白金1重量%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図19】 図18の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図20】 比較例1の市販の酸化チタンP25焼成後の化合物のX線回折
【図21】 図20の化合物の紫外・可視吸収
【図22】 比較例2の酸化チタンをアンモニアNH3気流中下で最高温度600℃で、15時間焼成した窒化化合物のX線回折、
【図23】 図22の窒化化合物の紫外・可視吸収
【図24】 市販されているチタン酸ストロンチウムSrTiO3の焼成後の材料のX線回折
【図25】 図24の化合物の紫外・可視吸収
【図26】 比較例4の市販されているチタン酸ストロンチウムSrTiO3をアンモニアNH3気流中下において、昇温速度10K/分で400℃(673K)まで昇温した後、この温度で5時間保持した化合物のX線回折
【図27】 図26の化合物の紫外・可視吸収
【発明の名称】 可視光照射による水の分解用フッ化窒化チタンを含む光触媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】 Ti(IV)OaNbFcまたはTi(IV)OaNbFcにアルカリ又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属MeをドープしたMeTi(IV)OaNbFcで表されるフッ化窒化チタンを含む光触媒(但し、bが0.1〜1,cが0.1〜1,aはTi(IV)を維持する値であり、bおよびcとの関連で決まる。)。
【請求項2】 Ti(IV)OaNbFcはアナタース構造、そしてMeTi(IV)OaNbFcはペロブスカイト〜アナタース構造を持つことを特徴とする請求項1に記載のフッ化窒化チタンを含む光触媒。
【請求項3】 少なくともPt、NiおよびPdからなる群から選択される少なくとも一種の助触媒を担持させたことを特徴とする請求項1または2に記載のフッ化窒化チタンを含む光触媒。
【請求項4】 Ti(IV)OaNbFcまたはTi(IV)OaNbFcにアルカリ又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属MeをドープしたMeTi(IV)OaNbFcで表されるフッ化窒化チタンを含む光触媒(但し、bが0.1〜1,cが0.1〜1,aはTi(IV)を維持する値であり、bおよびcとの関連で決まる。)からなる光水分解用触媒。
【請求項5】 Ti(IV)OaNbFcはアナタース構造、そしてMeTi(IV)OaNbFcはペロブスカイト〜アナタース構造を持つことを特徴とする請求項4に記載のフッ化窒化チタンを含む光水分解用触媒。
【請求項6】 少なくともPt、NiおよびPdからなる群から選択される少なくとも一種の助触媒を担持させたことを特徴とする請求項4または5に記載のフッ化窒化チタンを含む光水分解用触媒。
【請求項7】 (NH4)2TiFdX6−d (但し、dは1〜6である。)で表され、少なくともFを含むフッ化ハロゲン化チタン二アンモニウムとハロゲン化アンモニウムとを等モル〜ハロゲン化アンモニウムを少量過剰で最高温度200℃〜500℃で焼成して粗原料を形成し、次いで該粗原料を酸素原子換算でアンモニアに対して0.02%〜10.00%の酸素、空気、または水を含んだアンモニア雰囲気で最高温度350℃〜700℃で5時間以上窒化熱合成してTi(IV)OaNbFcからなる光触媒を製造する方法。
【請求項8】 TiFxX6−xおよび/または(NH4)2TiFdX6−d (但し、xおよびdは1〜6である。)で表され少なくともFを含むフッ化ハロゲン化チタン二アンモニウムとSrO、SrOHおよびSrXからなる群から選択される少なくとも一種とを焼成して粗原料、またはSrTiF6を形成し、次いで該粗原料またはSrTiF6を酸素原子換算でアンモニアに対して0.02〜10.00%の酸素、空気、または水を含んだアンモニア雰囲気で、最高温度350℃〜700℃で5時間以上窒化熱合成してSrTi(IV)OaNbFcからなる光触媒を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ化窒化チタンを含む光触媒、特に可視光でプロトンを水素に還元、あるいは水を酸素に酸化できる水の可視光分解の可能性を持つ水の光分解反応に安定な光触媒関する。
【0002】
【従来の技術】
光で触媒反応を行う技術としては、光触媒能を有する固体化合物に光を照射し、生成した励起電子やホールで反応物を酸化、あるいは還元して目的物を得る方法が既に知られている。
中でも、水の光分解反応は光エネルギー変換の観点から興味が持たれている。また、水の光分解反応に活性を示す光触媒は、光吸収、電荷分離、表面での酸化還元反応といった機能を備えた高度な光機能材料と見ることができる。
工藤、加藤等は、タンタル酸アルカリ、アルカリ土類等が、水の完全光分解反応に高い活性を示す光触媒であることを多くの先行文献を挙げて説明している〔例えば、Catal.Lett.,58(1999).153-155、Chem.Lett.,(1999),1207、表面,Vol.36,No.12(1998),625-645(文献Aという)〕。
前記文献Aにおいては、水を水素または/および酸素に分解する反応を進めるのに有用な光触媒材料について解説しており、水の還元による水素生成反応、または酸化による酸素生成反応および水の完全光分解反応用光触媒についての多くの示唆をしている。
また、白金、NiOなどの助触媒を担持した光触媒などについいても言及している。
【0003】
しかしながら、ここで解説されているものは、非金属としては酸素を含むものが主である。また、多くの固体光触媒は価電子帯と伝導帯の間にある禁制帯の幅、即ち、バンドギャップエネルギ−が大きいため(>3eV)、低いエネルギーの可視光(エネルギー:3eV未満)で作動することができない。一方、バンドギャップエネルギーが小さく、可視光で電子、ホールを生ずることのできる従来の固体光触媒のほとんどは水の光分解反応等の反応条件下でである。例えばCdS、Cu−ZnS等はバンドギャップは2.4eVであるが酸化的な光腐食作用を受けるため、触媒反応が限定されている。地表に到達する太陽光のほとんどはエネルギーの小さい可視光であり、太陽光で効率的に多様な触媒反応を進行させるためには可視光で作動しかつ安定な光触媒が必要不可欠である。しかしながら上述のように従来の技術で満足できるものは存在しかった。
【0004】
前記したように地表で利用できる太陽光のほとんどは可視光であるため、可視光で励起電子とホールを生成でき、かつ種々の反応(酸化および還元)で安定な光触媒を開発する必要があった。従来の安定な光触媒のほとんどは金属酸化物、すなわち非金属元素として酸素を含むものである。このようなものでは、伝導帯及び価電子帯のエネルギー的な位置関係は酸素の価電子(O2p)軌道のエネルギーによって大きく支配されるため、バンドギャップエネルギ−が小さく、可視光で光触媒機能を発現させることができなかった。そこで、本発明者らは、価電子のエネルギーが酸素より高い元素を金属と化合させ、それらの価電子軌道を混成させた場合、価電子帯のエネルギー的位置が高くなり、バンドギャップエネルギーは小さくすることができ、このような化合物として光触媒反応条件下で安定であるものを見出すことができれば、可視光で作動する新しい光触媒を創出するものと考えて、窒素原子の価電子は酸素原子のそれに比べ高いエネルギーをもつため、窒素原子を含有する金属化合物のバンドギャップエネルギーは金属酸化物のそれに比べ小さくすることができ、適切な量の窒素原子と結合した金属及び金属化合物は長波長の可視光の吸収によって励起電子とホールを生成することが可能となり、可視光で作動する光触媒となると考え、更に水の光分解等の反応条件下でも安定である化合物を見出すべく鋭意検討して、少なくとも1つの遷移金属を含むオキシナイトライドからなる化合物が光触媒として機能することを発見し、前記課題を解決した発明として既に提案している(特願2000−256681;2000年8月28日)。その化合物の多くはペロブスカイト結晶構造を取り、安定性の効果はこれによるものと推測された。
【0005】
前記推測に基づく可視光活性の化合物として、TaやNbを含むものは安定的に得られるが、Ti(IV)を含む化合物を得ることが困難であった。そこで、本発明者らは、Ti(IV)を含む前記ナイトライド結合軌道の混成の原理による化合物をいかにしたら容易に得られるかを検討し、前記原理に基づく特性の確認は有用と考えた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、Ti(IV)のナイトライド結合を持つ安定は化合物を提供することであり、また、当然ながら前記化合物の製造方法を提供することである。そこで、いかにしたら、光活性を持つTi(IV)を含む化合物にナイトライド結合を導入できるかを色々検討する中で、Ti(IV)のF結合を含む場合、Ti(IV)のナイトライド結合の導入が可能であることを見出し、TiOaNbFc、MeTiOaNbFc化合物類(ここで、MeはSrなどのアルカリ土類金属である。cは0.1〜1,bは0.1〜1であり、好ましくはb≧0.3であり、aは前記cおよびbとの関連において決まる。)が合成可能であり、可視光で活性、特に水の光分解により水素または酸素を生成させる触媒としての可能性を見出し、前記本発明の課題を解決することができた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、Ti(IV)OaNbFcまたはTi(IV)OaNbFcにアルカリ又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属MeをドープしたMeTi(IV)OaNbFcで表されるフッ化窒化チタンを含む光触媒(但し、bが0.1〜1,cが0.1〜1,aはTi(IV)を維持する値であり、bおよびcとの関連で決まる。)である。好ましくは、Ti(IV)OaNbFcはアナタース構造、そしてMeTi(IV)OaNbFcはペロブスカイト〜アナタース構造を持つことを特徴とする前記フッ化窒化チタンを含む光触媒であり、より好ましくは、少なくともPt、NiおよびPdからなる群から選択される少なくとも一種の助触媒を担持させたことを特徴とする前記フッ化窒化チタンを含む光触媒である。
【0008】
本発明の第2は、Ti(IV)OaNbFcまたはTi(IV)OaNbFcにアルカリ又はアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属MeをドープしたMeTi(IV)OaNbFcで表されるフッ化窒化チタンを含む光触媒(但し、bが0.1〜1,cが0.1〜1,aはTi(IV)を維持する値であり、bおよびcとの関連で決まる。)からなる光水分解用触媒である。好ましくは、Ti(IV)OaNbFcはアナタース構造、そしてMeTi(IV)OaNbFcはペロブスカイト〜アナタース構造を持つことを特徴とする前記フッ化窒化チタンを含む光水分解用触媒であり、より好ましくは、少なくともPt、NiおよびPdからなる群から選択される少なくとも一種の助触媒を担持させたことを特徴とする請求項4または5に記載のフッ化窒化チタンを含む光水分解用触媒である。
【0009】
本発明の第3は、(NH4)2TiFdX6−d (但し、dは1〜6である。)で表され、少なくともFを含むフッ化ハロゲン化チタン二アンモニウムとハロゲン化アンモニウムとを等モル〜ハロゲン化アンモニウムを少量過剰で最高温度200℃〜500℃、好ましくは300℃〜450℃、で焼成して粗原料を形成し、次いで該粗原料を酸素原子換算でアンモニアに対して0.02%〜10.00%の酸素、空気、または水を含んだアンモニア雰囲気で最高温度350℃〜700℃、好ましくは400℃〜600℃で5時間以上窒化熱合成してTi(IV)OaNbFcからなる光触媒を製造する方法である。
【0010】
発明の第4、TiFxX6−xおよび/または(NH4)2TiFdX6−d (但し、xおよびdは1〜6である。)で表され少なくともFを含むフッ化ハロゲン化チタン二アンモニウムとSrO、SrOHおよびSrXからなる群から選択される少なくとも一種とを焼成して粗原料、またはSrTiF6を形成し、次いで該粗原料またはSrTiF6を酸素原子換算でアンモニアに対して0.02〜10.00%の酸素、空気、または水を含んだアンモニア雰囲気で、最高温度350℃〜700℃で5時間以上窒化熱合成してSrTi(IV)OaNbFcからなる光触媒を製造する方法である。
【0011】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明の光触媒類は、特許請求の範囲で記載された構成用件を満足すれば得られる。
(NH4)2TiFdX6−dでしては、(NH4)2TiF6、(NH4)2TiF2Cl4などを好ましいものとして挙げることができる。
SrTi(IV)OaNbFcを作製する組原料を得るための原料としては、TiF4とSrF2とを混合を好ましいものとして挙げることができる。
【0012】
【実施例】
ここでは、本発明をより理解し易くするために具体例を挙げて説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0013】
実施例1
まずヘキサフルオロチタン(IV)酸二アンモニウム〔(NH4)2TiF6〕と塩化アンモニウム(NH4Cl) をモル比で1:1で混合する。次にこの混合物を金管の中に入れ、口を溶接によって封じる。この封じた金管を電気炉の中で400℃(673K),12時間焼成する。焼成後、酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.2dm3・min−1,酸素流速1cm3・min−1)で600℃(873K),12時間の窒化により合成した。白金の上記材料への担持は、0.1mol・0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金 Pt(NH4)3Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
【0014】
焼成後の材料のX線回折を図 1 に示す。図中の回折ピークはすべてTiNF(論文;Angew. Chem. Int. Ed. Engle. 27 (1988), No.7,p929-930,から引用。)に帰属され、TiNFの生成が確認された。上記材料の紫外・可視吸収を図2に示す。図2より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。元素分析の結果よりTi:O:N:Fは1:1.76:0.13:0.10(TiO1.76N0.13F0.10)となった。
図3に上記の通り白金3%担持した材料0.2gを10vol.%メタノール水溶液 0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300Wキセノンランプを用い、カットオフフィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図に示されるように、上記材料は420nm以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図4に上記材料0.2gを0.01moldm−3 AgNO3水溶液0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図4より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。
以上のことから、TiNFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0015】
実施例2
まずヘキサフルオロチタン(IV)酸二アンモニウム〔(NH4)2TiF6〕と塩化アンモニウム(NH4Cl)をモル比で1:1で混合する。次にこの混合物をガラス管の中に入れ、中を真空にして口を溶接によって封じる。この封じたガラス管を電気炉の中で400℃(673K),12時間焼成する。焼成後、酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.04dm3・min−1,酸素流速0.2cm3・min−1),500℃(773K),10時間の窒化により合成した。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金Pt(NH3)4Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料 0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K) で2時間水素により還元処理を行った。
【0016】
焼成後の材料のX線回折を図5に示す。図5中の回折ピークはすべてTiNF(前記論文参照)に帰属され、TiNFの生成が確認された。上記材料の紫外・可視吸収を図6 に示す。図6より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。元素分析の結果よりTi:O:N:Fは1:1.64:0.14:0.30となった。
図 7 に上記の通り白金3wt%担持した材料0.2gを10vol.%メタノール水溶液0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300キセノンランプを用い、カットオフフィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図に示されるように、上記材料は420nm以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図8に上記材料0.2gを 0.01 moldm−3AgNO3水溶液 0.310dm−3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図8より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。
以上のことから、TiNFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0017】
実施例 3
まずヘキサフルオロチタン(IV)酸二アンモニウム〔(NH4)2TiF6〕と塩化アンモニウム(NH4Cl) をモル比で1:1で混合する。次にこの混合物をガラス管の中に入れ、中を真空にして口を溶接によって封じる。この封じたガラス管を電気炉の中で400℃(673K),12時間焼成する。焼成後、不活性ガス気流下で300℃(573K),10時間焼成後、酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.2dm3・min−1,酸素流速1cm3・min−1)600℃(873K),15時間の窒化により合成した。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金Pt(NH4)3Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
焼成後の材料のX線回折を図9に示す。図9中の回折ピークはすべてTiNFに帰属され、TiNFの生成が確認された。上記材料の紫外・可視吸収を図10に示す。図10より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。元素分析の結果よりTi:O:N:Fは1:1.74:0.13:0.14となった。
図 11に上記の通り白金3wt%担持した材料0.2gを10vol.% メタノール水溶液 0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300Wキセノンランプを用い、カットオフフィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図に示されるように、上記材料は420nm以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図12 に上記材料0.2gを0.01moldm−3AgNO3水溶液0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図12より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。
以上のことから、TiNFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0018】
実施例4
まずヘキサフルオロチタン(IV)酸二アンモニウム〔(NH4)2TiF6〕と塩化アンモニウム(NH4Cl) をモル比で1:1で混合する。次にこの混合物を金管の中に入れ、溶接によって封じる。この封じた金管をガラス管の中に入れる。ガラス管の中真空にした後、口を溶接によって封じる。この管を電気炉の中で400℃(673K),12時間焼成する。焼成後、不活性ガス気流下で300℃(573K),10時間焼成し、さらに酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.04dm3・min−1,乾燥空気0.2cm3・min-1)でアンモニア気流下で流速0.04dm3・min−1 500℃(773K),10時間の窒化により合成した。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金Pt(NH3)4Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
【0019】
焼成後の材料のX線回折を図13に示す。図中の回折ピークはすべてTiNF(前記論文参照)に帰属され、TiNFの生成が確認された。上記材料の紫外・可視吸収を図 14に示す。図14より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。元素分析の結果よりTi:O:N:Fは1:1.45:0.30:0.20となった。
【0020】
図15に上記の通り白金3wt%担持した材料0.2gを 10vol.% メタノール水溶液 0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300Wキセノンランプを用い、カットオフフィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図に示されるように、上記材料は420nm以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図16 に上記材料 0.2gを 0.01 moldm−3AgNO3水溶液 0.310dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。
【0021】
以上のことから、TiNFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0022】
実施例5
フッ化チタンTiF4(0.9g)とフッ化ストロンチウムSrF2(0.6g)をAr雰囲気中で混合し、金チューブに封管する。さらにこれをパイレックスガラス管内に真空封管して、10K/分で昇温した後、450℃で8時間保ち、その後室温まで降温することにより、SrTiF6を合成した。これを、酸素を含んだアンモニア気流下(アンモニア流速0.4dm3・min−1,酸素流速0.4cm3・min-1)で流速 40dm3/分のアンモニアNH3気流中下において、昇温速度10K/分で673Kまで昇温した後、この温度で5時間保ち、その後Ar気流中下で室温まで降温することによりSrTiONF材料を合成した。元素分析の結果よりSr:Ti:O:N:Fは1:2.35:0.30:0.40となった。助触媒であるPtは塩化白金酸HPtCl6を以下に示す反応溶液中に懸濁して光を照射することにより触媒上に析出させる光電着により行った。助触媒の含浸量は、0.1〜10重量%の範囲で変更できる。
上記材料の紫外・可視吸収を図17に示す。図17より、上記材料は600nmまでの可視光を吸収することがわかった。図18に上記の通り白金1重量%を担持させた光触媒を0.2gを10容量%のメタノール水溶液0.200dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、水素生成量の経時変化を示す。光源は300Wキセノンランプを用い、420nm以下の波長光をカットする波長フィルターを通すことにより、420nm以上の可視光を照射した。図18に示されるように、上記材料は420nm 以上の可視光照射下でメタノール水溶液から水素を定常的に生成できることがわかった。また、図19に上記材料0.2gを0.01モル/dm3AgNO3水溶液0.200dm3に懸濁し、420nm以上の可視光を照射したときの、酸素生成量の経時変化を示す。反応は上記と同様の条件で行った。図19より、上記材料は420nm以上の可視光照射下で硝酸銀水溶液から酸素を生成できることがわかった。以上のことから、SrTiONFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0023】
比較例 1
日本エアロジル社製酸化チタンP25を使用した。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3のテトラアンミンジクロロ白金 〔Pt(NH3)4Cl2〕 溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
上記材料のX線回折を図 20 に示す。図中には、酸化チタンのアナターゼ相とルチル相の回折ピークが観られた。上記材料の紫外・可視吸収を図 21 に示す。図21より、上記材料は400nmまでの紫外光のみを吸収し、可視光領域に吸収を持たないことがわかった。
【0024】
実施例 1 と同様の条件で水素生成反応と酸素生成反応を行ったが、水素、酸素ともに生成しなかった。以上のことから、酸化チタンP25は420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力はない。
【0025】
比較例2
酸化チタンを流速 1dm3・min−1のアンモニアNH3気流中下、昇温速度 10 Kmin−1で600℃(873 K)まで昇温した後、この温度で15時間焼成することで窒化物を得た。白金の上記材料への担持は、0.1 moldm−3テトラアンミンジクロロ白金Pt(NH3)4Cl2溶液0.00357dm3(Pt 3 wt%)を上記材料0.3gに湯浴上で含浸させ、水分を蒸発させた。これを300℃(573 K)で2時間水素により還元処理を行った。
【0026】
焼成後の材料のX線回折を図22に示す。図22中に回折ピークは見られなかった。上記材料の紫外・可視吸収を図23に示す。図23より、上記材料は400nmまでの紫外光のみを吸収し、可視光領域に吸収を持たないことがわかった。
実施例 1 と同様の条件で水素生成反応と酸素生成反応を行ったが、水素、酸素は生成しなかった。以上のことから、酸化チタンの窒化物では420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力はない。
【0027】
比較例3
市販されているチタン酸ストロンチウムSrTiO3を用いた。助触媒であるPtは塩化白金酸HPtCl6を以下に示す反応溶液中に懸濁して光を照射することにより触媒上に析出させる光電着により行った。 助触媒の含浸量は、0.1〜10重量%の範囲で変更できる。
焼成後の材料のX線回折を図24に示す。図24中の回折ピークはSrTiO3 に帰属された。上記材料の紫外・可視吸収を図25 に示す。図25より、上記材料は370nmまでの紫外光を吸収することがわかった。実施例1と同様に可視光照射下で反応を行ったときH2およびO2の生成は、みられなかった。
【0028】
比較例4
市販されているチタン酸ストロンチウムSrTiO3を、流速 40dm3/分のアンモニアNH3気流中下において、昇温速度10K/分で400℃(673K)まで昇温した後、この温度で5時間保ち、その後Ar気流中下で室温まで降温することによりSrTi(ON)x材料を合成した。助触媒であるPtは塩化白金酸HPtCl6を以下に示す反応溶液中に懸濁して光を照射することにより触媒上に析出させる光電着により行った。 助触媒の含浸量は、0.1〜10重量%の範囲で変更できる。
焼成後の材料のX線回折を図26に示す。図26中の回折ピークはSrTiO3 に帰属された。上記材料の紫外・可視吸収を図27 に示す。図27より、上記材料は約600nmまでの可視光を吸収することがわかった。実施例と同様に可視光照射下で反応を行ったときH2およびO2の生成は、みられなかった。
【0029】
以上のことから、SrTiO3の酸素の一部を窒素とフッ素に置き換えたSrTiONFは420nm以上の波長を有する可視光でプロトンを水素に還元、及び水を酸素に酸化する能力を有することが確認された。
【0030】
【発明の効果】
このように、本発明のTi(IV)のナイトライド結合を導入したTiOaNbFc、MeTiOaNbFc化合物類(ここで、MeはSrなどのアルカリ土類金属である。cは0.1〜1,bは0.1〜1であり、好ましくはb≧0.3であり、aは前記cおよびbとの関連において決まる。)は可視光において光触媒活性があるという。優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物のX線回折
【図2】 実施例1の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物の紫外・可視吸収
【図3】 実施例1の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物に白金3%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図4】 図3の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図5】 実施例2の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物のX線回折
【図6】 実施例2の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物の紫外・可視吸収
【図7】 実施例2の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物に白金3%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図8】 図7の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図9】 実施例3の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物のX線回折
【図10】 実施例3の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物の紫外・可視吸収
【図11】 実施例3の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物に白金3%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図12】 図11の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図13】 実施例4の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物のX線回折
【図14】 実施例4の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物の紫外・可視吸収
【図15】 実施例4の窒化後のフッ化窒化チタンを含む化合物に白金3%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図16】 図15の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図17】 実施例5のSrTiONF材料の紫外・可視吸収
【図18】 実施例5のSrTiONF材料に白金1重量%担持した光触媒による420nm以上の可視光での10vol.%メタノール水溶液からのH2生成
【図19】 図18の光触媒による420nm以上の可視光でのAgNO3水溶液からのO2生成
【図20】 比較例1の市販の酸化チタンP25焼成後の化合物のX線回折
【図21】 図20の化合物の紫外・可視吸収
【図22】 比較例2の酸化チタンをアンモニアNH3気流中下で最高温度600℃で、15時間焼成した窒化化合物のX線回折、
【図23】 図22の窒化化合物の紫外・可視吸収
【図24】 市販されているチタン酸ストロンチウムSrTiO3の焼成後の材料のX線回折
【図25】 図24の化合物の紫外・可視吸収
【図26】 比較例4の市販されているチタン酸ストロンチウムSrTiO3をアンモニアNH3気流中下において、昇温速度10K/分で400℃(673K)まで昇温した後、この温度で5時間保持した化合物のX線回折
【図27】 図26の化合物の紫外・可視吸収
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