JP2003225968A - 容器用フィルムラミネート金属板 - Google Patents

容器用フィルムラミネート金属板

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JP2003225968A
JP2003225968A JP2002027608A JP2002027608A JP2003225968A JP 2003225968 A JP2003225968 A JP 2003225968A JP 2002027608 A JP2002027608 A JP 2002027608A JP 2002027608 A JP2002027608 A JP 2002027608A JP 2003225968 A JP2003225968 A JP 2003225968A
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resin film
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JP2002027608A
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Yoichiro Yamanaka
洋一郎 山中
Hiroki Iwasa
浩樹 岩佐
Shinsuke Watanabe
真介 渡辺
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Original Assignee
JFE Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 容器加工に要求される成形性、密着性、及び
耐衝撃性、またさらに内容物充填・レトルト殺菌処理後
の耐食性と耐レトルト白化性を兼ね備えた容器用フィル
ムラミネート金属板を提供する。 【解決手段】 非晶ヤング率が120〜220kg/m
2であって、厚さ10μm以上30μm以下の二軸延
伸ポリエステル樹脂フィルムを上層に有し、下層にエス
テル反復単位の75%以上95%以下がエチレンテレフ
タレート単位である厚さ2μm以上5μm未満のポリエ
ステル樹脂フィルムを有する、二層からなるポリエステ
ル樹脂フィルムを金属板表面にラミネートしたことを特
徴とする容器用フィルムラミネート金属板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として、飲料缶
の缶胴に用いられるラミネート金属板に関するものであ
る。さらに詳しくは、製缶工程での成形性、密着性及び
耐衝撃性が良好であり、さらに内容物充填・レトルト殺
菌処理後の耐食性及び耐白化性に優れるラミネート金属
板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、飲料缶に用いられる金属缶用素材
であるティンフリースチール(TFS)およびアルミニ
ウム等の金属板には塗装が施されていた。この塗装を施
す技術は、焼き付け工程が複雑であるばかりでなく、多
大な処理時間を必要とし、さらに多量の溶剤を排出する
という問題を抱えていた。そこで、これらの問題を解決
するため、熱可塑性樹脂フィルムを加熱した金属板に積
層する方法が数多く提案されている。例えば、特開昭6
4−22530号公報には、特定の密度・面配向係数を
有する金属板ラミネート用ポリエステルフィルム、特開
平2−57339号公報には特定の結晶性を有する金属
板ラミネート用共重合ポリエステルフィルム等が開示さ
れている。しかしながら、これらの提案は容器用途の多
岐にわたる要求特性を総合的に満足できるものではな
く、特に高度な成形性、優れた耐食性が要求される用途
では十分に満足できるレベルにあるとはいえなかった。
【0003】また、特開平9−155969号公報に
は、特定の構造を有する金属板ラミネート用ポリエステ
ルフィルム等が開示されている。この提案によって多岐
にわたる要求特性がある程度解決されるが、缶に成形す
る際の成形加工熱や成形後の加熱工程、内容物の充填後
の高温殺菌工程(レトルト殺菌処理工程)で、密着性の
劣化や加工性、耐食性の劣化等が生じる難点があった。
また内容物を充填した容器に衝撃が加えられたときに、
例えば、自動販売機で飲料缶を購入する際缶が取り出し
口に落ちるときや缶の持ち運び時に誤って缶を落として
しまったときなどにフィルムが損傷を受けやすいこと、
すなわち耐衝撃性に劣るという難点があった。またレト
ルト殺菌処理後にフィルムが白濁して見えるため商品価
値を著しく損なうという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】よって、本発明は、上
記事情を考慮し、容器加工に要求される成形性、密着
性、及び耐衝撃性、またさらに内容物充填・レトルト殺
菌処理後の耐食性と耐レトルト白化性を兼ね備えた容器
用フィルムラミネート金属板を提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、本発明に規定する
フィルムを用いたラミネート金属板によって、この目的
が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0006】すなわち本発明の要旨は以下のとおりであ
る。 (1)非晶ヤング率が120〜220kg/mm2であ
って、厚さ10μm以上30μm以下の二軸延伸ポリエ
ステル樹脂フィルムを上層に有し、下層にエステル反復
単位の75%以上95%以下がエチレンテレフタレート
単位である厚さ2μm以上5μm未満のポリエステル樹
脂フィルムを有する、二層からなるポリエステル樹脂フ
ィルムを金属板表面にラミネートしたことを特徴とする
容器用フィルムラミネート金属板。
【0007】(2)上層の二軸延伸ポリエステルフィル
ムの非晶ヤング率が140〜200kg/mm2である
ことを特徴とする(1)に記載の容器用フィルムラミネ
ート金属板。
【0008】(3)ラミネート後の二層からなるポリエ
ステル樹脂フィルムの複屈折率が0.02以下である領
域が、金属板との接触界面からフィルム厚み方向に5μ
m未満であることを特徴とする(1)または(2)に記
載の容器用フィルムラミネート金属板。
【0009】(4)前記(1)〜(3)において、下層
に、前記(1)に記載のエステル反復単位の75%以上
95%以下がエチレンテレフタレート単位である厚さ2
μm以上5μm未満のポリエステル樹脂フィルムに代え
て、厚さ2μm以上5μm未満の非晶性ポリマー樹脂フ
ィルムを有することを特徴とする容器用フィルムラミネ
ート金属板。
【0010】(5)上層の二軸延伸ポリエステルフィル
ムを構成するポリエステル単位の95モル%以上がエチ
レンテレフタレート単位であることを特徴とする(1)
〜(4)のいずれかに記載の容器用フィルムラミネート
金属板。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明のラミネート金属板は、以下に記載する二
層構造の樹脂フィルムを使用する。上層には二軸延伸ポ
リエステルフィルムを使用する。ポリエステル樹脂の二
軸延伸フィルムは、未延伸フィルムに比べて優れた特徴
をもち、引張強度、引裂強さ、衝撃強さ、水蒸気透過
性、ガス透過性などの性質を著しく向上できるためであ
る。
【0012】ポリエステルはジカルボン酸とグリコール
成分とからなるポリマーであり、ジカルボン酸成分とし
ては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカル
ボン酸、ジフェニルジカルボン酸等を用いることがで
き、なかでも好ましくはテレフタル酸、フタル酸を用い
ることができる。またグリコール成分としてはエチレン
グリコール、プロパンジオール、ブタンジオール等が挙
げられるが、中でもエチレングリコールが好ましい。な
お、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種
以上を併用しても良い。なお、上層のポリエステル樹脂
フィルムは、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成
成分として、ポリエステル単位の95モル%以上がエチ
レンテレフタレート単位であるフィルムが耐衝撃性の点
から、最も望ましい。
【0013】また、ポリエステルには、必要に応じて、
酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、
帯電防止剤、結晶核剤等を配合できる。
【0014】以上よりなるポリエステルは、引張強度、
弾性率、衝撃強度等の機械特性に優れるとともに極性を
有するため、これを主成分とすることでフィルムの密着
性、成形性を容器加工に耐えうるレベルまで向上させる
ことが可能となる。
【0015】また、DTR缶等のより高度な加工容器へ
の適用を考慮すると、前記上層に配置するポリエステル
樹脂フィルムは、長手方向、それと直角方向の両方の非
晶ヤング率が120〜220kg/mm2であること
が、優れた成形性、耐衝撃性、耐レトルト白化性を発現
させる点から必要である。フィルムには非晶構造の部分
が少なからず存在し、ラミネート時の熱履歴により、そ
の存在割合は増大する。従って、ラミネート後の金属板
の特性を支配するのは、むしろフィルム非晶部であっ
て、この機械特性値を適正に制御することが重要である
ものと考えられる。本発明者らは、以上の観点から鋭意
検討を進めた結果、フィルムの非晶ヤング率を変化させ
ることにより、ラミネート金属板の機械特性を有効に制
御できることを見出した。すなわち、非晶ヤング率を適
正な範囲に制御することにより、ラミネート金属板の成
形性、耐衝撃性を大きく改善させることが可能となる。
【0016】一方、本発明は、耐レトルト白化性に優れ
るという特長もある。レトルト殺菌処理とは、食品を缶
詰にパックする際に行われる殺菌処理のことであり、1
25℃で30分間程度の加圧水蒸気中に保持するもので
ある。フィルム内の非晶部分は、レトルト殺菌処理時の
熱により等方的に結晶化するため、容易に球晶構造を形
成することが明らかになった。生成した球晶組織は、可
視光を乱反射させるため、レトルト殺菌処理後のフィル
ム表面は人間の眼には白濁して見えるようになる。これ
がレトルト白化といわれる現象であり、色調ムラの要因
であって商品価値を著しく低下させてしまう。
【0017】本発明では、フィルムの非晶部分の運動性
に着目し、球晶構造の形成がヤング率という因子で整理
可能であることを見出し、これを適正な範囲に制御する
ことで球晶構造の形成を有効に抑制し、以ってレトルト
処理後の白化を有効に防止すること、すなわち耐レトル
ト白化性を改善することを可能としたものである。
【0018】ここで、非晶ヤング率の適正範囲について
であるが、フィルム長手方向、それと直角方向の少なく
とも一方の非晶ヤング率が120kg/mm2未満の場
合、容器成形後の耐衝撃性が低下し不適である。またフ
ィルム長手方向、それと直角方向の少なくとも一方の非
晶ヤング率が220kg/mm2を超えると、フィルム
の伸度が低くなる等、成形性に劣り十分な容器成形がで
きず不適である。また、耐レトルト白化性も劣化してし
まう。前記非晶ヤング率は140〜200kg/mm2
であることがより望ましい。
【0019】非晶ヤング率は下記式より算出されるもの
であり、非晶部の伸びやすさを示すものと考えられる。 Ea=(1−Φ)Ef ここで、Ea:非晶ヤング率、Φ:結晶化度、Ef:フ
ィルムのヤング率であり、結晶化度Φは、密度勾配管を
用いて測定したフィルムの密度ρに基づいて、下記式か
ら算出される。 Φ=(ρ−1.335)/0.12 非晶ヤング率を前記で規定した範囲内にするには、フィ
ルム製造時に高温延伸法を採用することによっても達成
できるが、この方法に限定されるものではなく、例えば
原料の固有粘度、触媒、ジエチレングリコール量や延伸
条件、熱処理条件などの適正化により達成できる。
【0020】本発明において、優れた成形性を得るため
には、フィルムの破断伸度はフィルム長手、それと直角
の各々の方向で170%以上が望ましく、さらに望まし
くは180%以上、特に望ましくは200%以上であ
る。破断伸度170%未満であると成形性が低下し、望
ましくない。
【0021】また、レトルト殺菌処理後の耐食性を向上
させるためには、上記の上層フィルムの下層に、エステ
ル反復単位の75〜95%がエチレンテレフタレート単
位であるポリエステル樹脂フィルムを用いる必要があ
る。以下にその理由を説明する。
【0022】ラミネート鋼板を用いた2ピース飲料缶の
場合、缶成形後フィルム表面に残留した潤滑油を完全に
除去するため、200℃以上の温度で2分30秒ほどの
加熱処理が施されるのが一般的である。この加熱処理に
より、缶成形後のフィルム内では、結晶化が進行し、特
に鋼板との密着界面近傍の領域では、等方的な結晶成長
が起こり、球晶を形成することが明らかになった。等方
的な結晶成長が起こる理由は、この領域が熱融着ラミネ
ート時に溶融し、アモルファス状態になっているためで
ある。
【0023】球晶は、高次の結晶集合組織であるため、
脆性的であり応力集中部となり易い。そのため、レトル
ト殺菌処理時に発生する缶内部での圧力によってフィル
ム内に応力が導入された場合、鋼板との密着界面近傍領
域内の球晶部を起点として割れが発生し、フィルムが破
壊してしまうことになる。フィルムが破壊された部位
は、密着性が低下し、あるいは鋼板が露出することで耐
食性が極端に劣化することになる。
【0024】本発明者等は、以上のメカニズムを解明で
きたことから、レトルト殺菌処理後の耐食性向上のため
には、上記加熱処理時の球晶生成を抑制することが重
要であり、そのためには、アモルファス状態となる領
域のフィルムを、エステル反復単位の75〜95%がエ
チレンテレフタレート単位であるポリエステル樹脂とす
ることが有効であることを見出した。
【0025】このフィルムを適用することにより、ポリ
エチレンテレフタレート分子の結晶化速度が一定の値以
下にコントロールされ、上記の加熱処理時に急激な結晶
成長が起こらず、よって球晶生成を抑制することが可能
となる。エステル反復単位の75%以上に規定したの
は、75%未満では、結晶化速度がほぼ一定となって効
果が飽和するとともに、エチレンテレフタレートの有す
る機械特性等の有利な物性が損なわれ、成形性などが劣
化するためである。一方、95%以下に規定したのは、
この値を超えると、結晶化速度が、球晶生成を形成する
に足るレベルまで上昇するためである。
【0026】一方、エステル反復単位の残りの5〜25
%は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク
酸、アゼライン酸、アジピン酸、セパシン酸、ドデカン
ジオン酸、ジフェニルカルボン酸、2,6ナフタレンジ
カルボン酸、1,4シクロヘキサンジカルボン酸のうち
から選ばれる1種または2種以上の酸成分と、エチレン
グリコール、1,4ブタンジオール、1,5ペンタンジ
オール、1,6ヘキサンジオール、プロピレングリコー
ル、ポリテトラメチレングリコール、トリエチレングリ
コール、ネオペンチルグリコール、1,4シクロヘキサ
ンジメタノールのうちから選ばれる1種あるいは2種以
上の飽和多価アルコールが使用される。なかでも、イソ
フタル酸とエチレングリコールからなるエチレンイソフ
タレートが、成形性等に対して有利であるため望まし
い。
【0027】球晶生成が生じ易い金属板との密着界面近
傍の領域に、上記のフィルムを使用することで該領域で
球晶形成が抑制されるため、レトルト殺菌処理で起こる
フィルム割れが抑制され、もって耐食性の劣化が抑制さ
れる。
【0028】なお、本発明に規定する二層構造からなる
フィルム(複層フィルム)の構成としては、上層のフィ
ルム厚みが10μm以上30μm以下であって、下層の
フィルム厚みが2μm以上5μm未満であることが必要
である。
【0029】上層フィルムの厚み範囲を上記のように規
定することで、成形性、密着性、耐衝撃性を良好とする
ことができる。厚みを10μm未満とすると、これらの
効果が乏しくなるため不適であり、30μm超として
も、効果が飽和するため、コストパフォーマンスの低下
につながるためである。
【0030】一方、下層フィルムの厚みは、ラミネート
時にフィルムが溶融する領域と対応させる必要がある。
そのため、下層フィルムの厚みが2μm未満であると、
密着性に関与するフィルム領域が不十分となって密着性
が劣ってしまう。5μm以上としても、密着性への寄与
が飽和するのとともに、複層フィルム全体に対する下層
フィルムの体積占有率が増すため、上層フィルムの有利
な効果が十分に発揮されない可能性がある。
【0031】金属板上にラミネートされた後の該複層フ
ィルムの構造としては、複屈折率が0.02以下である
領域を、金属板との接触界面からフィルム厚み方向に5
μm未満とすることが望ましい。ラミネート金属板の製
造は、フィルムを熱せられた金属板に接触させ圧着する
ことで金属板界面のフィルム樹脂を溶融させ金属板に濡
れさせることで金属板とフィルムとの接着を行うのが通
常である。従って、フィルムと金属板との密着性を確保
するためにはフィルムが溶融していることが必要であ
り、必然的にラミネート後の金属板と接する部分のフィ
ルムの複屈折率は低下することとなる。本発明に規定す
るようにこの部分のフィルムの複屈折率が0.02以下
であれば、ラミネート時のフィルム溶融濡れが十分であ
ることを示し、従って優れた密着性を確保することが可
能となる。
【0032】このようなポリエステル樹脂の複屈折率
は、以下の測定手法にて求められる値を採用する。
【0033】偏光顕微鏡を用いてラミネート金属板の金
属板を除去した後のフィルムの断面方向のレタデーショ
ンを測定し、樹脂フィルムの断面方向の複屈折率を求め
る。フィルムに入射した直線偏光は、二つの主屈折率方
向の直線偏光に分解される。この時、高屈折率方向の光
の振動が低屈折率方向よりも遅くなり、そのためフィル
ム層を通り抜けた時点で位相差を生じる。この位相差を
レタデーションRと呼び、複屈折率△nとの関係は、式
(1)で定義される。 △n=R/d…(1) 但し、d:フィルム層の厚み。
【0034】次に、レタデーションの測定方法について
説明する。単色光を偏光板を通過させることで、直線偏
光とし、この光をサンプル(フィルム)に入射する。入
射された光は上記のように、レタデーションを生じるた
め、フィルム層を透過後、楕円偏光となる。この楕円偏
光はセナルモン型コンペンセーターを通過させることに
より、最初の直線偏光の振動方向に対してθの角度をも
った直線偏光となる。このθを偏光板を回転させて測定
する。レタデーションRとθの関係は式(2)で定義さ
れる。 R=λ・θ/180 …(2) 但し、λ:単色光の波長。
【0035】よって複屈折率△nは、式(1)、(2)
から導き出される式(3)で定義される。 △n=(θ・λ/180)/d…(3) また、上記に示す複屈折率が0.02以下の部分の厚み
は、金属板との接触界面からフィルム厚み方向へ5μm
未満の領域に限定することが望ましい。この理由は下層
フィルムの膜厚限定理由と同様である。すなわち、複屈
折率が0.02以下の部分の厚みが5μm以上となる
と、密着性への寄与が飽和するのとともに、複層フィル
ム全体に対する複屈折率が0.02以下の部分の体積占
有率が増すため、上層フィルムの有利な効果が十分に発
揮されない可能性がある。
【0036】更なるレトルト殺菌処理後耐食性の向上を
狙う場合には、下層の樹脂フィルムとして、上記で説明
したエステル反復単位の75%以上95%以下がエチレ
ンテレフタレート単位であるポリエステル樹脂フィルム
に代えて、非晶性ポリマー樹脂フィルムを使用すること
が望ましい。ここでいう非晶性ポリマー樹脂フィルムと
は、樹脂組成上結晶構造を構成できないポリマー樹脂フ
ィルムを意味し、例えば、ポリエチレンテレフタレート
の成分であるグリコールの一部を1,4シクロヘキサン
ジメタノールと置換したポリマー樹脂フィルムや、フタ
ル酸の一部をイソフタル酸と置換した共重合樹脂フィル
ム、ポリエーテルイミド、非晶ポリアリレートなどの樹
脂フィルムが挙げられる。下層のフィルム厚さは既に記
載した理由から2μm以上5μm未満とする必要があ
る。
【0037】非晶性ポリマーは結晶化しないことから、
上記加熱処理時においても球晶を生成せず、レトルト殺
菌処理時のフィルム割れを完全に抑止できる。もって、
レトルト殺菌処理後耐食性の大幅な改善が可能となる。
【0038】フィルム自体の製造方法は、特に限定され
ないが、例えば各ポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥
した後、各々を公知の溶融積層押出機に供給し、スリッ
ト状のダイからシート状に共に押出しながら複層化させ
た後、静電印加等の方式によりキャスティングドラムに
密着させ冷却固化し複層の未延伸シートを得る。
【0039】この未延伸シートをフィルムの長手方向及
び幅方向に延伸することにより二軸延伸フィルムを得
る。延伸倍率は目的とするフィルムの配向度、強度、弾
性率等に応じて任意に設定することができるが、好まし
くはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好
ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次
二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同じに延伸して
いく同時二軸延伸方式が望ましい。
【0040】次に、前記フィルムを金属板にラミネート
してラミネート金属板を製造する方法について述べる。
本発明では、金属板をフィルムの融点を超える温度で加
熱し、その両面に該樹脂フィルムを圧着ロール(以後ラ
ミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる
方法を用いる。
【0041】ラミネート条件については、本発明に規定
するフィルム構造が得られるものであれば特に制限され
るものではない。例えば、ラミネート開始時の温度を2
80℃以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度
履歴として、フィルムの融点以上の温度になる時間を1
〜20msecの範囲とすることが好適である。このよ
うなラミネート条件を達成するためには、高速でのラミ
ネートに加え接着中の冷却も必要である。
【0042】ラミネート時の加圧は特に規定するもので
はないが、面圧として1〜30kgf/cm2が好まし
い。この値が低すぎると、融点以上であっても時間が短
時間であるため十分な密着性を得難い。また、加圧が大
きいとラミネート金属板の性能上は不都合がないもの
の、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度
が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
【0043】金属板としては、缶用材料として広く使用
されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることがで
き、特に下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物から
なる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(所謂TFS)
等が最適である。
【0044】TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層
の付着量についても、特に限定されないが、加工後密着
性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム
層は70〜200mg/m2、クロム水酸化物層は10
〜30mg/m2の範囲とすることが望ましい。
【0045】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。厚
さ0.18mm・幅977mmの冷間圧延、焼鈍、調質
圧延を施した鋼板を、脱脂、酸洗後、クロムめっきを行
い、クロムめっき鋼板(TFS)を製造した。クロムめ
っきは、CrO3、F-、SO4 2-を含むクロムめっき浴
でクロムめっき、中間リンス後、CrO3、F-を含む化
成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電
気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物
付着量を、それぞれ120mg/m2、15mg/m2
調整した。
【0046】次いで、図1に示す金属帯のラミネート装
置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板1を金属帯加熱
装置2で加熱し、ラミネートロール3で前記クロムめっ
き鋼帯1の一方の面に、容器成形後に容器内面側になる
樹脂フィルム4a、他方の面に、容器成形後に容器外面
側となる樹脂フィルム4bをラミネート(熱融着)し、
ラミネート金属帯を製造した。ラミネートロール3は内
部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フ
ィルム接着中の冷却を行った。ラミネートした樹脂フィ
ルムの内容を表1に記載する。なお、樹脂フィルムをク
ロムめっき鋼板にラミネートする際に、該クロムめっき
鋼板に接する界面のフィルム温度が、フィルムの融点以
上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
【0047】なお、ポリエステルの非晶ヤング率につ
いては、以下の方法にて測定した。また、以上の方法で
製造したラミネート金属板に対し、以下の方法で、複
屈折率、成形性、密着性、耐衝撃性、耐レトル
ト白化性、耐食性を評価した。
【0048】非晶ヤング率 引張ヤング率は、ASTM−D882−81(A法)に
準じて測定した。その際の破断伸度を伸度とした。非晶
ヤング率(Ea)は上記で測定されたヤング率(Ef)
から次式により算出した。 非晶ヤング率(Ea)=(1−Φ)Ef ただし、Φは結晶化度であり、密度勾配管を用いて測定
した密度(ρ)より下記式で算出される。 Φ=(ρ−1.335)/0.12。
【0049】複屈折率 ラミネート金属板の金属板を除去した後のフィルムにつ
いて、偏光顕微鏡を用いてフィルムの断面方向のレタデ
ーションを測定し、断面方向の複屈折率を求めた。
【0050】成形性 ラミネート金属板にワックス塗布後、直径179mmの
円板を打ち抜き、絞り比1.60で浅絞り缶を得た。次
いで、この絞りカップに対し、絞り比2.10及び2.
80で再絞り加工を行った。このようにして得た深絞り
缶のフィルムの損傷程度を目視観察した。 (評点について) ◎:成形後フィルムに損傷なく、フィルム剥離も認めら
れない。 ○:成形可能であるが、ごく僅かにフィルム剥離が認め
られる。 △:成形可能であるが、明確なフィルム剥離が認められ
る。 ×:缶が破胴し、成形不可能。
【0051】密着性 上記で成形可能であった缶に対し、缶胴部よりピール
試験用のサンプル(幅15mm×長さ120mm)を切
り出した。切り出したサンプルの缶内面側の長辺側端部
からフィルムを一部剥離し、引張試験機で剥離した部分
のフィルムを、フィルムが剥離されたクロムめっき鋼板
とは反対方向(角度:180°)に開き、引張速度30
mm/minでピール試験を行い、密着力を評価した。
なお、密着力測定対象面は、缶内面側とした。 (評点について) ◎:0.15kg/15mm以上。 ○:0.10kg/15mm以上、0.15kg/15
mm未満。 ×:0.10kg/15mm未満。
【0052】耐衝撃性 上記で成形可能であった缶に対し、水を満注し、缶全
体を5℃以下に調整した水中に一時間以上保持する。そ
の後、取り出した缶に対して、缶底部から90〜100
mmの位置に1kgの鉄球を落下させ衝撃を与える。缶
を切り開いた後、衝撃を与えた部位(缶内面側)に対し
て、電極との間に6Vの電圧を印加させ、5秒後の電流
値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。 (評点について) ◎:0.01mA未満。 ○:0.01mA以上、0.1mA未満。 ×:0.1mA以上。
【0053】耐レトルト白化性 上記で成形可能であった缶に対し、水を満注した後、
蓋を巻き締め、各試験について、10個づつを加圧水蒸
気中に125℃で30分間保持し、底面および胴部分の
白化程度を以下の基準で目視判定した。 ◎:変化なし。 ○:ほとんど変化が認められない。 △:部分的にわずかに白化が認められる。 ×:全体に白化が認められる。
【0054】耐食性 上記で成形可能であった缶に対してネック成形を施
し、常温で水を満注して蓋を巻き締めた。続いて、12
5℃×30分の条件でレトルト殺菌処理を行い、処理後
40℃で一週間及び一ヶ月経時を行った。経時終了後、
缶蓋を除去し、水を捨て、缶内面側の腐食状況を目視観
察した。 (評点について) ○:赤錆発生あり。 ×:赤錆発生なし。
【0055】評価結果を表1及び2に記載した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】表1及び2に示すように、本発明範囲内の
発明例の鋼板は、いずれも成形性、密着性、耐衝撃性、
耐食性に優れ、また耐レトルト白化性も優れている。
【0059】本発明例において、フィルムの複屈折率の
値が0.02以下である領域が金属板との接触界面から
厚さが5μm未満のものは、成形性がより優れている。
【0060】また、本発明例において、下層フィルムに
非晶性ポリマー樹脂を使用したものは耐衝撃性、耐レト
ルト白化性がより優れている。
【0061】これに対し、樹脂フィルムが本発明範囲を
外れる比較例は、成形性、密着性、耐衝撃性、耐食性、
耐レトルト白化性のうちの少なくとも一つが不良であっ
た。
【0062】
【発明の効果】本発明に係るラミネート金属板は、成形
性、密着性、耐衝撃性、耐レトルト白化性及び耐食性が
良好である。本発明に係るラミネート金属板は、絞り加
工等を行う容器用素材、特にDTR加工などの高度な加
工が施される飲料缶用素材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属板のラミネート装置の要部を示す図。
【符号の説明】
1 金属板(クロムめっき鋼板) 2 金属帯加熱装置 3 ラミネートロール 4a,4b フィルム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 真介 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 3E086 AA22 AB02 AD30 BA04 BA13 BA15 BA33 BB41 BB85 BB90 CA11 4F100 AB01C AB03 AK41A AK42A AK42B BA03 BA10A BA10C BA42 EJ38A GB16 JA12A JA12B JB02 JK06 JK07A JK10 JL01 JN18 JN28 YY00A YY00B

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非晶ヤング率が120〜220kg/m
    2であって、厚さ10μm以上30μm以下の二軸延
    伸ポリエステル樹脂フィルムを上層に有し、下層にエス
    テル反復単位の75%以上95%以下がエチレンテレフ
    タレート単位である厚さ2μm以上5μm未満のポリエ
    ステル樹脂フィルムを有する、二層からなるポリエステ
    ル樹脂フィルムを金属板表面にラミネートしたことを特
    徴とする容器用フィルムラミネート金属板。
  2. 【請求項2】 上層の二軸延伸ポリエステルフィルムの
    非晶ヤング率が140〜200kg/mm2であること
    を特徴とする請求項1に記載の容器用フィルムラミネー
    ト金属板。
  3. 【請求項3】 ラミネート後の二層からなるポリエステ
    ル樹脂フィルムの複屈折率が0.02以下である領域
    が、金属板との接触界面からフィルム厚み方向に5μm
    未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の
    容器用フィルムラミネート金属板。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3において、下層に、請求項
    1に記載のエステル反復単位の75%以上95%以下が
    エチレンテレフタレート単位である厚さ2μm以上5μ
    m未満のポリエステル樹脂フィルムに代えて、厚さ2μ
    m以上5μm未満の非晶性ポリマー樹脂フィルムを有す
    ることを特徴とする容器用フィルムラミネート金属板。
  5. 【請求項5】 上層の二軸延伸ポリエステルフィルムを
    構成するポリエステル単位の95モル%以上がエチレン
    テレフタレート単位であることを特徴とする請求項1〜
    4のいずれかに記載の容器用フィルムラミネート金属
    板。
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