JP2003224024A - 耐食性永久磁石の製造方法 - Google Patents
耐食性永久磁石の製造方法Info
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- JP2003224024A JP2003224024A JP2003017451A JP2003017451A JP2003224024A JP 2003224024 A JP2003224024 A JP 2003224024A JP 2003017451 A JP2003017451 A JP 2003017451A JP 2003017451 A JP2003017451 A JP 2003017451A JP 2003224024 A JP2003224024 A JP 2003224024A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 Fe−B−Ra系永久磁石下地との密着性に
すぐれ、磁石表面の溶出を防止し、温度80℃、相対湿
度90%の雰囲気条件下で長時間放置した場合の初期磁
石特性からの劣化を極力少なくし、安定した高磁石特性
を有するFe−B−Ra系永久磁石の製造方法の提供。 【解決手段】 Fe−B−Ra系磁石体をスズアルコキ
シド化合物溶液に浸漬又はスプレーした磁石体表面を乾
燥後、200℃〜450℃に30分〜10時間の熱処理
により被膜し、エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂等
の樹脂をスプレー法、浸漬法などにより塗布したのち焼
付けを行うなどの公知の塗布焼付け方法にて25μm以
下の厚みに被着することにより、温度80℃、相対湿度
90%の条件下で、1000時間放置した後、その磁石
特性の劣化がほとんどない。
すぐれ、磁石表面の溶出を防止し、温度80℃、相対湿
度90%の雰囲気条件下で長時間放置した場合の初期磁
石特性からの劣化を極力少なくし、安定した高磁石特性
を有するFe−B−Ra系永久磁石の製造方法の提供。 【解決手段】 Fe−B−Ra系磁石体をスズアルコキ
シド化合物溶液に浸漬又はスプレーした磁石体表面を乾
燥後、200℃〜450℃に30分〜10時間の熱処理
により被膜し、エポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂等
の樹脂をスプレー法、浸漬法などにより塗布したのち焼
付けを行うなどの公知の塗布焼付け方法にて25μm以
下の厚みに被着することにより、温度80℃、相対湿度
90%の条件下で、1000時間放置した後、その磁石
特性の劣化がほとんどない。
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高磁気特性を有しか
つ耐食性にすぐれたFe−B−Ra系永久磁石に係り、
塗布・乾燥法により表面に酸化錫膜を介して耐酸化性樹
脂を被覆し、耐食性、特に80℃、相対湿度90%の雰
囲気に長時間放置した場合の初期磁石特性からの劣化が
少なく、きわめて安定した磁石特性を有するFe−B−
Ra系永久磁石の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】先に、NdやPrを中心とする資源的に
豊富な軽希土類を用いてB,Feを主成分とし、高価な
SmやCoを含有せず、従来の希土類コバルト磁石の最
高特性を大幅に超える新しい高性能永久磁石として、F
e−B−Ra系永久磁石が提案されている(特開昭59
−46008号公報、特開昭59−89401号公
報)。 【0003】前記磁石合金のキュリー点は、一般に30
0℃〜370℃であるが、Feの一部をCoにて置換す
ることにより、より高いキュリー点を有するFe−B−
Ra系永久磁石(特開昭59−64733号、特開昭5
9−132104号)を得ており、さらに、前記Co含
有のFe−B−Ra系希土類永久磁石と同等以上のキュ
リー点並びにより高い(BH)maxを有し、その温度
特性、特にiHcを向上させるため、希土類元素(R
a)としてNdやPr等の軽希土類を中心としたCo含
有のFe−B−Ra系希土類永久磁石のRaの一部にD
y、Tb等の重希土類のうち少なくとも1種を含有する
ことにより、25MGOe以上の極めて高い(BH)m
axを保有したままで、iHcをさらに向上させたCo
含有のFe−B−Ra系希土類永久磁石が提案(特開昭
60−34005号)されている。 【0004】しかしながら、上記のすぐれた磁気特性を
有するFe−B−Ra系磁気異方性焼結体からなる永久
磁石は主成分として、空気中で酸化し易い希土類元素及
び鉄を含有するため、磁気回路に組込んだ場合に、磁石
表面に生成する酸化物により、磁気回路の出力低下及び
磁気回路間のばらつきを惹起し、また、表面酸化物の脱
落による周辺機器への汚染の問題があった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで、上記のFe−
B−Ra系永久磁石の耐食性の改善のため、磁石体表面
に無電解めっき法あるいは電解めっき法により耐食性金
属めっき層を被覆した永久磁石(特願昭58−1623
50号)が提案されているが、このめっき法では永久磁
石体が焼結体で有孔性のため、この孔内にめっき前処理
での酸性溶液またはアルカリ溶液が残留し、経年変化と
ともに腐食する恐れがあり、また磁石体の耐薬品性が劣
るため、めっき時に磁石表面が腐食されて密着性、防蝕
性が劣る問題があった。また、耐食性めっき層を設けて
も、温度60℃、相対湿度90%の条件下の耐食性試験
で100時間放置にて、磁石特性は初期磁石特性の10
%以上劣化し、非常に不安定であった。 【0006】また、上記のFe−B−Ra系永久磁石の
耐食性の改善のため、磁石体表面に耐酸化性樹脂層も被
覆した永久磁石(特開昭60−63901号)が提案さ
れ、更にまた磁石体表面に耐酸化性化成被膜と耐酸化性
樹脂層を積層被覆した永久磁石(特開昭60−6390
2号)が提案されているが、前者は永久磁石表面との密
着性が劣るため、防食性が十分でなく、また後者は、化
成処理液が永久磁石と均一に反応せず、化成処理被膜が
磁石表面に均一に被着せず、密着性、防食性が劣る、問
題点があった。 【0007】この発明は、Fe−B−Ra系永久磁石下
地との密着性にすぐれ、磁石表面の溶出を防止し、耐食
性の改善を目的とし、特に温度80℃、相対湿度90%
の雰囲気条件下で長時間放置した場合の初期磁石特性か
らの劣化を極力少なくし、安定した高磁石特性を有する
Fe−B−Ra系永久磁石を安価に提供することを目的
とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】この発明は、すぐれた耐
食性、特に温度80℃、相対湿度90%の雰囲気条件下
で長時間放置した場合においても、下地との密着性がす
ぐれ磁石表面の溶出を防止し、その磁石特性が安定した
Fe−B−Ra系永久磁石を目的に、永久磁石体の表面
処理について種々研究した結果、特定成分を有するFe
−B−Ra系磁石体表面に、スズアルコキシド化合物溶
液を用いて熱分解法により酸化錫被覆層を被着、さら
に、塗布・乾燥法にて耐酸化性樹脂層を被着することに
より、すぐれた耐食性と共にFe−B−Ra磁石表面と
の密着性がすぐれ、すぐれた耐食性ときわめて安定した
磁石特性が安価に得られることを知見し、この発明を完
成したものである。 【0009】すなわち、この発明は、主相が正方晶相か
らなるFe−B−Ra系永久磁石体表面にスズアルコキ
シド化合物溶液を熱分解法にてCを100ppm〜10
00ppm含有する膜厚500Å以下の酸化錫膜を形成
する工程と、該酸化錫膜上に耐酸化性樹脂を塗布・乾燥
法にて耐酸化性樹脂層を被覆する工程とを有することを
特徴とする耐食性永久磁石の製造方法である。 【0010】 【発明の実施の形態】この発明において、磁石体表面の
酸化錫被膜層は、スズアルコキシド化合物溶液(一般式
Sn(OR)n、R:アルキル基またはアルキル基+
他の官能基、n:酸化数)に浸漬又はスプレーした磁石
体表面を乾燥後、200℃〜450℃に30分〜10時
間の熱処理する、熱分解法により被膜され、酸化錫膜の
厚みは500Å以下が好ましい。かかる酸化錫膜厚が5
00Åを超えると、膜の密着強度が低下して、酸化錫膜
表面に被着の金属層が剥離する恐れがあるため、500
Å以下の厚みとする。 【0011】また、この発明の酸化錫膜中には、Cを1
00ppm〜1000ppm含有することを特徴とする
が、C量が100ppm未満では膜内でクラックが生
じ、1000ppmを超えると熱分解が十分でなく、好
ましくないためである。 【0012】また、この発明において、耐酸化性樹脂に
はエポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、アルキド樹
脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂などの塗料用合成樹脂
あるいはこれらの樹脂の複合樹脂であればよく、防錆塗
膜補強改善の目的で、上記樹脂中に酸化亜鉛、クロム酸
亜鉛、クロム酸ストロンチウム、鉛丹などの防錆用顔料
を含有してもよく、あるいはベンゾトリアゾールを含有
するものでもよい。樹脂中に含有される上記顔料は、樹
脂に対して80%以下でよく、またベンゾトリアゾール
量は樹脂に対して1%以下でよい。 【0013】また、この発明において、酸化錫膜層を有
する永久磁石体表面に耐酸化性樹脂層を被覆する方法と
しては、スプレー法、浸漬法などにより塗布したのち焼
付けを行う等の乾燥処理する塗布・乾燥法があり、かか
る樹脂層は5μm以上の厚みがあればよく、25μmを
超えると所定の製品の寸法精度を得ることが困難となる
ため、25μm以下の厚みが好ましい。 【0014】この発明の永久磁石に用いる希土類元素R
aは、組成の10原子%〜30原子%を占めるが、N
d、Pr、Dy、Ho、Tbのうち少なくとも1種、あ
るいはさらに、La、Ce、Sm、Gd、Er、Eu、
Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種を含むもの
が好ましい。また、通常Raのうち1種をもって足りる
が、実用上は2種以上の混合物(ミッシュメタル,ジジ
ム等)を入手上の便宜等の理由により用いることができ
る。なお、このRaは純希土類元素でなくてもよく、工
業上入手可能な範囲で製造上不可避な不純物を含有する
ものでも差支えない。 【0015】Raは、上記系永久磁石における必須元素
であって、10原子%未満では結晶構造がα−鉄と同一
構造の立方晶組織となるため、高磁気特性、特に高保磁
力が得られず、30原子%を超えるとRaリッチな非磁
性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下してすぐ
れた特性の永久磁石が得られない。よって、Ra10原
子%〜30原子%の範囲が望ましい。 【0016】Bは、上記系永久磁石における必須元素で
あって、2原子%未満では菱面体構造が主相となり、高
い保磁力(iHc)は得られず、28原子%を超えると
Bリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)
が低下するため、すぐれた永久磁石が得られない。よっ
て、Bは2原子%〜28原子%の範囲が望ましい。 【0017】Feは、上記系永久磁石において必須元素
であり、65原子%未満では残留磁束密度(Br)が低
下し、80原子%を超えると高い保磁力が得られないの
で、Feは65原子%〜80原子%の含有が望ましい。 【0018】また、Feの一部をCoで置換すること
は、得られる磁石の磁気特性を損うことなく、温度特性
を改善することができるが、Co置換量がFeの20%
を超えると、逆に磁気特性が劣化するため、好ましくな
い。Coの置換量がFeとCoの合計量で5原子%〜1
5原子%の場合は、(Br)は置換しない場合に比較し
て増加するため、高磁束密度を得るために好ましい。 【0019】また、Ra、B、Feの他、工業的生産上
不可避的不純物の存在を許容でき、例えば、Bの一部を
4.0wt%以下のC、2.0wt%以下のP、2.0
wt%以下のS、2.0wt%以下のCuのうち少なく
とも1種、合計量で2.0wt%以下で置換することに
より、永久磁石の製造性改善、低価格化が可能である。 【0020】さらに、Al、Ti、V、Cr、Mn、B
i、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、
Ni、Si、Zn、Hf、のうち少なくとも1種は、F
e−B−Ra系永久磁石材料に対してその保磁力、減磁
曲線の角型性を改善あるいは製造性の改善、低価格化に
効果があるため添加することができる。なお、添加量の
上限は、磁石材料の(BH)maxを20MGOe以上
とするには、(Br)が少なくとも9kG以上必要とな
るため、該条件を満す範囲が望ましい。 【0021】また、この発明の永久磁石は平均結晶粒径
が1〜80μmの範囲にある正方晶系の結晶構造を有す
る化合物を主相とし、体積比で1%〜50%の非磁性相
(酸化物相を除く)を含むことを特徴とする。この発明
による永久磁石は、保磁力iHc≧1kOe、残留磁束
密度Br>4kG、を示し、最大エネルギー積(BH)
maxは、(BH)max≧10MGOeを示し、最大
値は25MGOe以上に達する。 【0022】この発明による金属被覆層と耐酸化性樹脂
層を有するFe−B−Ra系永久磁石が、苛酷な雰囲気
条件下において、初期磁石特性からの劣化が少なく、磁
石特性値が極めて安定する理由は未だ明らかではない。
しかし、前記Fe−B−Ra系焼結磁石体表面に、スプ
レー法で塗布したのち焼付けを行った耐酸化性樹脂層を
被着した場合は、温度60℃、相対湿度90%に100
時間放置の苛酷な耐食性試験条件で、その磁石特性値は
劣化し不安定となるが、これに対して、前記焼結磁石体
表面に特定膜厚を有する酸化錫被膜層を介して、耐酸化
性樹脂層を形成することにより、下地との密着性が改善
し該金属被覆層は緻密となり、湿気、ガス等の外部環境
の変化に対して、永久磁石を完全に保護できることが明
らかとなった。 【0023】 【実施例】実施例1 公知の鋳造インゴットを粉砕し、微粉砕後に成形、焼
結、熱処理後に、15Nd−8B−77Fe組成の径1
2mm×厚み2mm寸法の磁石体試験片を得た。その磁
石特性を表1に示す。次に、Sn(OC3H7)4 1g
rをトリエタノールアミン1lに溶解して、Snアルコ
キシド溶液を調製し、この溶液をよく撹拌した後、前記
磁石体試験片を浸漬し、引き上げて余分な液を除去し
て、80℃で乾燥後、Ar雰囲気中で400℃に5時間
の熱処理にて酸化錫被膜を生成し、膜厚200Åの被膜
を得た。膜中のC量は300ppmであった。 【0024】さらに、表1に示す樹脂並びに塗膜条件で
樹脂被覆処理した。ついで各試料の磁気特性、耐酸化
性、接着強度及び寸法精度を測定し、その結果を表2に
示す。なお、耐酸化性試験は、上記試験片を60℃の温
度、90%の湿度の雰囲気に3日間放置した場合の試験
片の酸化増量をもって評価した。耐酸化性試験後の磁気
特性を表3に示す。 【0025】また、接着強度試験は、樹脂被覆処理後の
上記試験片を保持板に接着材(商品名アラルダイトAW
−106)で接着した後、試験片にアムスラー試験機に
より剪断力を加えて、単位面積当たりの接着強度を測定
した。また、寸法精度は処理後の試験片の寸法を測定
し、最大値−最小値=Rにて表してある。 【0026】比較例1 実施例1と同一組成、同一製造条件にて得られた焼結磁
石体に、実施例1と同一のスズアルコキシド溶液の熱分
解法を10回繰り返して、0.25μm厚の酸化錫を得
た。 【0027】この発明の永久磁石(試料No.1−1)
を、温度80℃、相対湿度90%の条件下で500時間
放置した後の磁石特性、及びその劣化状況を測定した。
その結果を第3表に表す。1000時間後の表面におい
ても、錆は発生せず。磁石特性も、ほとんど変わらな
い。 【0028】これに対して、比較例1焼結磁石体の耐食
試験前後の磁石特性の劣化は、温度80℃、相対湿度9
0%の条件下で500時間放置後の特性を表3に示すと
おりであり、その後1000時間では表面部分的に錆が
発生した。 【0029】 【表1】 【0030】 【表2】【0031】 【表3】 【0032】 【発明の効果】この発明によるFe−B−Ra系永久磁
石体は、実施例の如く、苛酷な耐食試験条件、特に、温
度80℃、相対湿度90%の条件下で、1000時間放
置した後、その磁石特性の劣化はほとんどなく、現在、
最も要求されている高性能かつ安価な永久磁石として極
めて適している。
つ耐食性にすぐれたFe−B−Ra系永久磁石に係り、
塗布・乾燥法により表面に酸化錫膜を介して耐酸化性樹
脂を被覆し、耐食性、特に80℃、相対湿度90%の雰
囲気に長時間放置した場合の初期磁石特性からの劣化が
少なく、きわめて安定した磁石特性を有するFe−B−
Ra系永久磁石の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】先に、NdやPrを中心とする資源的に
豊富な軽希土類を用いてB,Feを主成分とし、高価な
SmやCoを含有せず、従来の希土類コバルト磁石の最
高特性を大幅に超える新しい高性能永久磁石として、F
e−B−Ra系永久磁石が提案されている(特開昭59
−46008号公報、特開昭59−89401号公
報)。 【0003】前記磁石合金のキュリー点は、一般に30
0℃〜370℃であるが、Feの一部をCoにて置換す
ることにより、より高いキュリー点を有するFe−B−
Ra系永久磁石(特開昭59−64733号、特開昭5
9−132104号)を得ており、さらに、前記Co含
有のFe−B−Ra系希土類永久磁石と同等以上のキュ
リー点並びにより高い(BH)maxを有し、その温度
特性、特にiHcを向上させるため、希土類元素(R
a)としてNdやPr等の軽希土類を中心としたCo含
有のFe−B−Ra系希土類永久磁石のRaの一部にD
y、Tb等の重希土類のうち少なくとも1種を含有する
ことにより、25MGOe以上の極めて高い(BH)m
axを保有したままで、iHcをさらに向上させたCo
含有のFe−B−Ra系希土類永久磁石が提案(特開昭
60−34005号)されている。 【0004】しかしながら、上記のすぐれた磁気特性を
有するFe−B−Ra系磁気異方性焼結体からなる永久
磁石は主成分として、空気中で酸化し易い希土類元素及
び鉄を含有するため、磁気回路に組込んだ場合に、磁石
表面に生成する酸化物により、磁気回路の出力低下及び
磁気回路間のばらつきを惹起し、また、表面酸化物の脱
落による周辺機器への汚染の問題があった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで、上記のFe−
B−Ra系永久磁石の耐食性の改善のため、磁石体表面
に無電解めっき法あるいは電解めっき法により耐食性金
属めっき層を被覆した永久磁石(特願昭58−1623
50号)が提案されているが、このめっき法では永久磁
石体が焼結体で有孔性のため、この孔内にめっき前処理
での酸性溶液またはアルカリ溶液が残留し、経年変化と
ともに腐食する恐れがあり、また磁石体の耐薬品性が劣
るため、めっき時に磁石表面が腐食されて密着性、防蝕
性が劣る問題があった。また、耐食性めっき層を設けて
も、温度60℃、相対湿度90%の条件下の耐食性試験
で100時間放置にて、磁石特性は初期磁石特性の10
%以上劣化し、非常に不安定であった。 【0006】また、上記のFe−B−Ra系永久磁石の
耐食性の改善のため、磁石体表面に耐酸化性樹脂層も被
覆した永久磁石(特開昭60−63901号)が提案さ
れ、更にまた磁石体表面に耐酸化性化成被膜と耐酸化性
樹脂層を積層被覆した永久磁石(特開昭60−6390
2号)が提案されているが、前者は永久磁石表面との密
着性が劣るため、防食性が十分でなく、また後者は、化
成処理液が永久磁石と均一に反応せず、化成処理被膜が
磁石表面に均一に被着せず、密着性、防食性が劣る、問
題点があった。 【0007】この発明は、Fe−B−Ra系永久磁石下
地との密着性にすぐれ、磁石表面の溶出を防止し、耐食
性の改善を目的とし、特に温度80℃、相対湿度90%
の雰囲気条件下で長時間放置した場合の初期磁石特性か
らの劣化を極力少なくし、安定した高磁石特性を有する
Fe−B−Ra系永久磁石を安価に提供することを目的
とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】この発明は、すぐれた耐
食性、特に温度80℃、相対湿度90%の雰囲気条件下
で長時間放置した場合においても、下地との密着性がす
ぐれ磁石表面の溶出を防止し、その磁石特性が安定した
Fe−B−Ra系永久磁石を目的に、永久磁石体の表面
処理について種々研究した結果、特定成分を有するFe
−B−Ra系磁石体表面に、スズアルコキシド化合物溶
液を用いて熱分解法により酸化錫被覆層を被着、さら
に、塗布・乾燥法にて耐酸化性樹脂層を被着することに
より、すぐれた耐食性と共にFe−B−Ra磁石表面と
の密着性がすぐれ、すぐれた耐食性ときわめて安定した
磁石特性が安価に得られることを知見し、この発明を完
成したものである。 【0009】すなわち、この発明は、主相が正方晶相か
らなるFe−B−Ra系永久磁石体表面にスズアルコキ
シド化合物溶液を熱分解法にてCを100ppm〜10
00ppm含有する膜厚500Å以下の酸化錫膜を形成
する工程と、該酸化錫膜上に耐酸化性樹脂を塗布・乾燥
法にて耐酸化性樹脂層を被覆する工程とを有することを
特徴とする耐食性永久磁石の製造方法である。 【0010】 【発明の実施の形態】この発明において、磁石体表面の
酸化錫被膜層は、スズアルコキシド化合物溶液(一般式
Sn(OR)n、R:アルキル基またはアルキル基+
他の官能基、n:酸化数)に浸漬又はスプレーした磁石
体表面を乾燥後、200℃〜450℃に30分〜10時
間の熱処理する、熱分解法により被膜され、酸化錫膜の
厚みは500Å以下が好ましい。かかる酸化錫膜厚が5
00Åを超えると、膜の密着強度が低下して、酸化錫膜
表面に被着の金属層が剥離する恐れがあるため、500
Å以下の厚みとする。 【0011】また、この発明の酸化錫膜中には、Cを1
00ppm〜1000ppm含有することを特徴とする
が、C量が100ppm未満では膜内でクラックが生
じ、1000ppmを超えると熱分解が十分でなく、好
ましくないためである。 【0012】また、この発明において、耐酸化性樹脂に
はエポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、アルキド樹
脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂などの塗料用合成樹脂
あるいはこれらの樹脂の複合樹脂であればよく、防錆塗
膜補強改善の目的で、上記樹脂中に酸化亜鉛、クロム酸
亜鉛、クロム酸ストロンチウム、鉛丹などの防錆用顔料
を含有してもよく、あるいはベンゾトリアゾールを含有
するものでもよい。樹脂中に含有される上記顔料は、樹
脂に対して80%以下でよく、またベンゾトリアゾール
量は樹脂に対して1%以下でよい。 【0013】また、この発明において、酸化錫膜層を有
する永久磁石体表面に耐酸化性樹脂層を被覆する方法と
しては、スプレー法、浸漬法などにより塗布したのち焼
付けを行う等の乾燥処理する塗布・乾燥法があり、かか
る樹脂層は5μm以上の厚みがあればよく、25μmを
超えると所定の製品の寸法精度を得ることが困難となる
ため、25μm以下の厚みが好ましい。 【0014】この発明の永久磁石に用いる希土類元素R
aは、組成の10原子%〜30原子%を占めるが、N
d、Pr、Dy、Ho、Tbのうち少なくとも1種、あ
るいはさらに、La、Ce、Sm、Gd、Er、Eu、
Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種を含むもの
が好ましい。また、通常Raのうち1種をもって足りる
が、実用上は2種以上の混合物(ミッシュメタル,ジジ
ム等)を入手上の便宜等の理由により用いることができ
る。なお、このRaは純希土類元素でなくてもよく、工
業上入手可能な範囲で製造上不可避な不純物を含有する
ものでも差支えない。 【0015】Raは、上記系永久磁石における必須元素
であって、10原子%未満では結晶構造がα−鉄と同一
構造の立方晶組織となるため、高磁気特性、特に高保磁
力が得られず、30原子%を超えるとRaリッチな非磁
性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下してすぐ
れた特性の永久磁石が得られない。よって、Ra10原
子%〜30原子%の範囲が望ましい。 【0016】Bは、上記系永久磁石における必須元素で
あって、2原子%未満では菱面体構造が主相となり、高
い保磁力(iHc)は得られず、28原子%を超えると
Bリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)
が低下するため、すぐれた永久磁石が得られない。よっ
て、Bは2原子%〜28原子%の範囲が望ましい。 【0017】Feは、上記系永久磁石において必須元素
であり、65原子%未満では残留磁束密度(Br)が低
下し、80原子%を超えると高い保磁力が得られないの
で、Feは65原子%〜80原子%の含有が望ましい。 【0018】また、Feの一部をCoで置換すること
は、得られる磁石の磁気特性を損うことなく、温度特性
を改善することができるが、Co置換量がFeの20%
を超えると、逆に磁気特性が劣化するため、好ましくな
い。Coの置換量がFeとCoの合計量で5原子%〜1
5原子%の場合は、(Br)は置換しない場合に比較し
て増加するため、高磁束密度を得るために好ましい。 【0019】また、Ra、B、Feの他、工業的生産上
不可避的不純物の存在を許容でき、例えば、Bの一部を
4.0wt%以下のC、2.0wt%以下のP、2.0
wt%以下のS、2.0wt%以下のCuのうち少なく
とも1種、合計量で2.0wt%以下で置換することに
より、永久磁石の製造性改善、低価格化が可能である。 【0020】さらに、Al、Ti、V、Cr、Mn、B
i、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、
Ni、Si、Zn、Hf、のうち少なくとも1種は、F
e−B−Ra系永久磁石材料に対してその保磁力、減磁
曲線の角型性を改善あるいは製造性の改善、低価格化に
効果があるため添加することができる。なお、添加量の
上限は、磁石材料の(BH)maxを20MGOe以上
とするには、(Br)が少なくとも9kG以上必要とな
るため、該条件を満す範囲が望ましい。 【0021】また、この発明の永久磁石は平均結晶粒径
が1〜80μmの範囲にある正方晶系の結晶構造を有す
る化合物を主相とし、体積比で1%〜50%の非磁性相
(酸化物相を除く)を含むことを特徴とする。この発明
による永久磁石は、保磁力iHc≧1kOe、残留磁束
密度Br>4kG、を示し、最大エネルギー積(BH)
maxは、(BH)max≧10MGOeを示し、最大
値は25MGOe以上に達する。 【0022】この発明による金属被覆層と耐酸化性樹脂
層を有するFe−B−Ra系永久磁石が、苛酷な雰囲気
条件下において、初期磁石特性からの劣化が少なく、磁
石特性値が極めて安定する理由は未だ明らかではない。
しかし、前記Fe−B−Ra系焼結磁石体表面に、スプ
レー法で塗布したのち焼付けを行った耐酸化性樹脂層を
被着した場合は、温度60℃、相対湿度90%に100
時間放置の苛酷な耐食性試験条件で、その磁石特性値は
劣化し不安定となるが、これに対して、前記焼結磁石体
表面に特定膜厚を有する酸化錫被膜層を介して、耐酸化
性樹脂層を形成することにより、下地との密着性が改善
し該金属被覆層は緻密となり、湿気、ガス等の外部環境
の変化に対して、永久磁石を完全に保護できることが明
らかとなった。 【0023】 【実施例】実施例1 公知の鋳造インゴットを粉砕し、微粉砕後に成形、焼
結、熱処理後に、15Nd−8B−77Fe組成の径1
2mm×厚み2mm寸法の磁石体試験片を得た。その磁
石特性を表1に示す。次に、Sn(OC3H7)4 1g
rをトリエタノールアミン1lに溶解して、Snアルコ
キシド溶液を調製し、この溶液をよく撹拌した後、前記
磁石体試験片を浸漬し、引き上げて余分な液を除去し
て、80℃で乾燥後、Ar雰囲気中で400℃に5時間
の熱処理にて酸化錫被膜を生成し、膜厚200Åの被膜
を得た。膜中のC量は300ppmであった。 【0024】さらに、表1に示す樹脂並びに塗膜条件で
樹脂被覆処理した。ついで各試料の磁気特性、耐酸化
性、接着強度及び寸法精度を測定し、その結果を表2に
示す。なお、耐酸化性試験は、上記試験片を60℃の温
度、90%の湿度の雰囲気に3日間放置した場合の試験
片の酸化増量をもって評価した。耐酸化性試験後の磁気
特性を表3に示す。 【0025】また、接着強度試験は、樹脂被覆処理後の
上記試験片を保持板に接着材(商品名アラルダイトAW
−106)で接着した後、試験片にアムスラー試験機に
より剪断力を加えて、単位面積当たりの接着強度を測定
した。また、寸法精度は処理後の試験片の寸法を測定
し、最大値−最小値=Rにて表してある。 【0026】比較例1 実施例1と同一組成、同一製造条件にて得られた焼結磁
石体に、実施例1と同一のスズアルコキシド溶液の熱分
解法を10回繰り返して、0.25μm厚の酸化錫を得
た。 【0027】この発明の永久磁石(試料No.1−1)
を、温度80℃、相対湿度90%の条件下で500時間
放置した後の磁石特性、及びその劣化状況を測定した。
その結果を第3表に表す。1000時間後の表面におい
ても、錆は発生せず。磁石特性も、ほとんど変わらな
い。 【0028】これに対して、比較例1焼結磁石体の耐食
試験前後の磁石特性の劣化は、温度80℃、相対湿度9
0%の条件下で500時間放置後の特性を表3に示すと
おりであり、その後1000時間では表面部分的に錆が
発生した。 【0029】 【表1】 【0030】 【表2】【0031】 【表3】 【0032】 【発明の効果】この発明によるFe−B−Ra系永久磁
石体は、実施例の如く、苛酷な耐食試験条件、特に、温
度80℃、相対湿度90%の条件下で、1000時間放
置した後、その磁石特性の劣化はほとんどなく、現在、
最も要求されている高性能かつ安価な永久磁石として極
めて適している。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 池田 重良
大阪府吹田市青山台4丁目23番4
Fターム(参考) 5E062 CD04 CG07
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 主相が正方晶相からなるFe−B−Ra
系永久磁石体表面にスズアルコキシド化合物溶液を熱分
解法にてCを100ppm〜1000ppm含有する膜
厚500Å以下の酸化錫膜を形成する工程と、該酸化錫
膜上に耐酸化性樹脂を塗布・乾燥法にて耐酸化性樹脂層
を被覆する工程とを有する耐食性永久磁石の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003017451A JP2003224024A (ja) | 2003-01-27 | 2003-01-27 | 耐食性永久磁石の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014232777A (ja) * | 2013-05-28 | 2014-12-11 | 日本電産サンキョー株式会社 | 希土類磁石、ロータおよび希土類磁石の製造方法 |
-
2003
- 2003-01-27 JP JP2003017451A patent/JP2003224024A/ja active Pending
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