JP3411605B2 - 耐食性永久磁石 - Google Patents

耐食性永久磁石

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JP3411605B2 JP35679492A JP35679492A JP3411605B2 JP 3411605 B2 JP3411605 B2 JP 3411605B2 JP 35679492 A JP35679492 A JP 35679492A JP 35679492 A JP35679492 A JP 35679492A JP 3411605 B2 JP3411605 B2 JP 3411605B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、高磁気特性を有しか
つ耐食性にすぐれたFe−B−Ra系永久磁石に係り、
表面に酸化錫膜を介して、耐酸化性樹脂を被覆し、耐食
性、特に80℃、相対湿度90%の雰囲気に長時間放置
した場合の初期磁石特性からの劣化が少なく、きわめて
安定した磁石特性を有するFe−B−Ra系永久磁石に
関する。 【0002】 【従来の技術】先に、NdやPrを中心とする資源的に
豊富な軽希土類を用いてB,Feを主成分とし、高価な
SmやCoを含有せず、従来の希土類コバルト磁石の最
高特性を大幅に超える新しい高性能永久磁石として、F
e−B−Ra系永久磁石が提案されている(特開昭59
−46008号公報、特開昭59−89401号公
報)。 【0003】前記磁石合金のキュリー点は、一般に30
0℃〜370℃であるが、Feの一部をCoにて置換す
ることにより、より高いキュリー点を有するFe−B−
Ra系永久磁石(特開昭59−64733号、特開昭5
9−132104号)を得ており、さらに、前記Co含
有のFe−B−Ra系希土類永久磁石と同等以上のキュ
リー点並びにより高い(BH)maxを有し、その温度
特性、特にiHcを向上させるため、希土類元素(R
a)としてNdやPr等の軽希土類を中心としたCo含
有のFe−B−Ra系希土類永久磁石のRaの一部にD
y、Tb等の重希土類のうち少なくとも1種を含有する
ことにより、25MGOe以上の極めて高い(BH)m
axを保有したままで、iHcをさらに向上させたCo
含有のFe−B−Ra系希土類永久磁石が提案(特開昭
60−34005号)されている。 【0004】しかしながら、上記のすぐれた磁気特性を
有するFe−B−Ra系磁気異方性焼結体からなる永久
磁石は主成分として、空気中で酸化し易い希土類元素及
び鉄を含有するため、磁気回路に組込んだ場合に、磁石
表面に生成する酸化物により、磁気回路の出力低下及び
磁気回路間のばらつきを惹起し、また、表面酸化物の脱
落による周辺機器への汚染の問題があった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで、上記のFe−
B−Ra系永久磁石の耐食性の改善のため、磁石体表面
に無電解めっき法あるいは電解めっき法により耐食性金
属めっき層を被覆した永久磁石(特願昭58ー1623
50号)が提案されているが、このめっき法では永久磁
石体が焼結体で有孔性のため、この孔内にめっき前処理
での酸性溶液またはアルカリ溶液が残留し、経年変化と
ともに腐食する恐れがあり、また磁石体の耐薬品性が劣
るため、めっき時に磁石表面が腐食されて密着性、防蝕
性が劣る問題があった。また、耐食性めっき層を設けて
も、温度60℃、相対湿度90%の条件下の耐食性試験
で100時間放置にて、磁石特性は初期磁石特性の10
%以上劣化し、非常に不安定であった。また、上記のF
e−B−Ra系永久磁石の耐食性の改善のため、磁石体
表面に耐酸化性樹脂層も被覆した永久磁石(特開昭60
−63901号)が提案され、更にまた磁石体表面に耐
酸化性化成被膜と耐酸化性樹脂層を積層被覆した永久磁
石(特開昭60−63902号)が提案されているが、
前者は永久磁石表面との密着性が劣るため、防食性が十
分でなく、また後者は、化成処理液が永久磁石と均一に
反応せず、化成処理被膜が磁石表面に均一に被着せず、
密着性、防食性が劣る、問題点があった。 【0006】この発明は、Fe−B−Ra系永久磁石下
地との密着性にすぐれ、磁石表面の溶出を防止し、耐食
性の改善を目的とし、特に温度80℃、相対湿度90%
の雰囲気条件下で長時間放置した場合の初期磁石特性か
らの劣化を極力少なくし、安定した高磁石特性を有する
Fe−B−Ra系永久磁石を安価に提供することを目的
とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】この発明は、すぐれた耐
食性、特に温度80℃、相対湿度90%の雰囲気条件下で長
時間放置した場合においても、下地との密着性がすぐれ
磁石表面の溶出を防止し、その磁石特性が安定したFe-B
-Ra系永久磁石を目的に、永久磁石体の表面処理につい
て種々研究した結果、特定成分を有するFe-B-Ra系磁石
体表面に、スズアルコキシド化合物溶液を用いて熱分解
法により酸化錫被覆層を被着、さらに、耐酸化性樹脂層
を被着することにより、すぐれた耐食性と共にFe-B-Ra
磁石表面との密着性がすぐれ、すぐれた耐食性ときわめ
て安定した磁石特性が安価に得られることを知見し、こ
の発明を完成したものである。 【0008】すなわち、この発明は、主相が正方晶相か
らなるFe−B−Ra系永久磁石体表面に、Cを100
ppm〜1000ppm含有する膜厚500Å以下の酸
化錫膜を介して、塗布焼付けによる耐酸化性樹脂を被覆
してなることを特徴とする耐食性永久磁石である。 【0009】この発明において、磁石体表面の酸化錫被
膜層は、スズアルコキシド化合物溶液(一般式 Sn
(OR)n、R:アルキル基またはアルキル基+他の官
能基、n:酸化数)に浸漬又はスプレーした磁石体表面
を乾燥後、200℃〜450℃に30分〜10時間の熱
処理により被膜され、酸化錫膜の厚みは500Å以下が
好ましい。かかる酸化錫膜厚が500Åを超えると、膜
の密着強度が低下して、酸化錫膜表面に被着の金属層が
剥離する恐れがあるため、500Å以下の厚みとする。
また、この発明の酸化錫膜中には、Cを100ppm〜
1000ppm含有することを特徴とするが、C量が1
00ppm未満では膜内でクラックが生じ、1000p
pmを超えると熱分解が十分でなく、好ましくないため
である。 【0010】また、この発明において、耐酸化性樹脂に
はエポキシ樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、アルキド樹
脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂などの塗料用合成樹脂
あるいはこれらの樹脂の複合樹脂であればよく、防錆塗
膜補強改善の目的で、上記樹脂中に酸化亜鉛、クロム酸
亜鉛、クロム酸ストロンチウム、鉛丹などの防錆用顔料
を含有してもよく、あるいはベンゾトリアゾールを含有
するものでもよい。樹脂中に含有される上記顔料は、樹
脂に対して80%以下でよく、またベンゾトリアゾール
量は樹脂に対して1%以下でよい。また、この発明にお
いて、酸化錫膜層を有する永久磁石体表面に耐酸化性樹
脂層を被覆する方法としては、スプレー法、浸漬法など
により塗布したのち焼付けを行うのもよく、かかる樹脂
層は5μm以上の厚みがあればよく、25μmを超える
と所定の製品の寸法精度を得ることが困難となるため、
25μm以下の厚みが好ましい。 【0011】この発明の永久磁石に用いる希土類元素R
aは、組成の10原子%〜30原子%を占めるが、N
d、Pr、Dy、Ho、Tbのうち少なくとも1種、あ
るいはさらに、La、Ce、Sm、Gd、Er、Eu、
Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種を含むもの
が好ましい。また、通常Raのうち1種をもって足りる
が、実用上は2種以上の混合物(ミッシュメタル,ジジ
ム等)を入手上の便宜等の理由により用いることができ
る。なお、このRaは純希土類元素でなくてもよく、工
業上入手可能な範囲で製造上不可避な不純物を含有する
ものでも差支えない。Raは、上記系永久磁石における
必須元素であって、10原子%未満では結晶構造がα−
鉄と同一構造の立方晶組織となるため、高磁気特性、特
に高保磁力が得られず、30原子%を超えるとRaリッ
チな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下
してすぐれた特性の永久磁石が得られない。よって、R
a10原子%〜30原子%の範囲が望ましい。 【0012】Bは、上記系永久磁石における必須元素で
あって、2原子%未満では菱面体構造が主相となり、高
い保磁力(iHc)は得られず、28原子%を超えると
Bリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)
が低下するため、すぐれた永久磁石が得られない。よっ
て、Bは2原子%〜28原子%の範囲が望ましい。 【0013】Feは、上記系永久磁石において必須元素
であり、65原子%未満では残留磁束密度(Br)が低
下し、80原子%を超えると高い保磁力が得られないの
で、Feは65原子%〜80原子%の含有が望ましい。
また、Feの一部をCoで置換することは、得られる磁
石の磁気特性を損うことなく、温度特性を改善すること
ができるが、Co置換量がFeの20%を超えると、逆
に磁気特性が劣化するため、好ましくない。Coの置換
量がFeとCoの合計量で5原子%〜15原子%の場合
は、(Br)は置換しない場合に比較して増加するた
め、高磁束密度を得るために好ましい。 【0014】また、Ra、B、Feの他、工業的生産上
不可避的不純物の存在を許容でき、例えば、Bの一部を
4.0wt%以下のC、2.0wt%以下のP、2.0
wt%以下のS、2.0wt%以下のCuのうち少なく
とも1種、合計量で2.0wt%以下で置換することに
より、永久磁石の製造性改善、低価格化が可能である。
さらに、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、T
a、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、
Zn、Hf、のうち少なくとも1種は、Fe−B−Ra
系永久磁石材料に対してその保磁力、減磁曲線の角型性
を改善あるいは製造性の改善、低価格化に効果があるた
め添加することができる。なお、添加量の上限は、磁石
材料の(BH)maxを20MGOe以上とするには、
(Br)が少なくとも9kG以上必要となるため、該条
件を満す範囲が望ましい。 【0015】また、この発明の永久磁石は平均結晶粒径
が1〜80μmの範囲にある正方晶系の結晶構造を有す
る化合物を主相とし、体積比で1%〜50%の非磁性相
(酸化物相を除く)を含むことを特徴とする。この発明
による永久磁石は、保磁力iHc≧1kOe、残留磁束
密度Br>4kG、を示し、最大エネルギー積(BH)
maxは、(BH)max≧10MGOeを示し、最大
値は25MGOe以上に達する。 【0016】 【作用】この発明による金属被覆層を有するFe−B−
Ra系永久磁石が、苛酷な雰囲気条件下において、初期
磁石特性からの劣化が少なく、磁石特性値が極めて安定
する理由は未だ明らかではない。しかし、前記Fe−B
−Ra系焼結磁石体表面に、スプレー法で塗布したのち
焼付けを行った耐酸化性樹脂層を被着した場合は、温度
60℃、相対湿度90%に100時間放置の苛酷な耐食
性試験条件で、その磁石特性値は劣化し不安定となる
が、これに対して、前記焼結磁石体表面に特定膜厚を有
する酸化錫被膜層を介して、耐酸化性樹脂層を形成する
ことにより、下地との密着性が改善し該金属被覆層は緻
密となり、湿気、ガス等の外部環境の変化に対して、永
久磁石を完全に保護できることが明らかとなった。 【0017】 【実施例】実施例1 公知の鋳造インゴットを粉砕し、微粉砕後に成形、焼
結、熱処理後に、15Nd−8B−77Fe組成の径1
2mm×厚み2mm寸法の磁石体試験片を得た。その磁
石特性を表1に示す。次に、Sn(OC374 1g
rをトリエタノールアミン1lに溶解して、Snアルコ
キシド溶液を調製し、この溶液をよく撹拌した後、前記
磁石体試験片を浸漬し、引き上げて余分な液を除去し
て、80℃で乾燥後、Ar雰囲気中で400℃に5時間
の熱処理にて酸化錫被膜を生成し、膜厚200Åの被膜
を得た。膜中のC量は300ppmであった。さらに、
表1に示す樹脂並びに塗膜条件で樹脂被覆処理した。つ
いで各試料の磁気特性、耐酸化性、接着強度及び寸法精
度を測定し、その結果を表2に示す。なお、耐酸化性試
験は、上記試験片を60℃の温度、90%の湿度の雰囲
気に3日間放置した場合の試験片の酸化増量をもって評
価した。耐酸化性試験後の磁気特性を表3に示す。 【0018】また、接着強度試験は、樹脂被覆処理
上記試験片を保持板に接着材(商品名アラルダイトAW-10
6)で接着した後、試験片にアムスラー試験機により剪断
力を加えて、単位面積当たりの接着強度を測定した。ま
た、寸法精度は処理後の試験片の寸法を測定し、最大値
-最小値=Rにて表してある。 【0019】比較例1 実施例1と同一組成、同一製造条件にて得られた焼結磁
石体に、実施例1と同一のスズアルコキシド溶液の熱分
解法を10回繰り返して、0.25μm厚の酸化錫を得
た。 【0020】 【表1】【0021】 【表2】 【0022】この発明の永久磁石(試料No.1-1)を、温度
80℃、相対湿度90%の条件下で500時間放置した後の磁石
特性、及びその劣化状況を測定した。その結果を表3
表す。1000時間後の表面においても、錆は発生せず。磁
石特性も、ほとんど変わらない。これに対して、比較例
1焼結磁石体の耐食試験前後の磁石特性の劣化は、温度8
0℃、相対湿度90%の条件下で500時間放置後の特性を表3
に示すとおりであり、その後1000時間では表面部分的に
錆が発生した。 【0023】 【表3】【0024】 【発明の効果】この発明によるFe−B−Ra系永久磁
石体は、実施例の如く、苛酷な耐食試験条件、特に、温
度80℃、相対湿度90%の条件下で、1000時間放
置した後、その磁石特性の劣化はほとんどなく、現在、
最も要求されている高性能かつ安価な永久磁石として極
めて適している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−176911(JP,A) 特開 昭63−77102(JP,A) 特開 平2−162035(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 1/00 - 1/117 C22C 38/00 303 C23C 28/00 C25D 13/12 H01F 7/02

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 主相が正方晶相からなるFe−B−Ra
    系永久磁石体表面に、Cを100ppm〜1000pp
    m含有する膜厚500Å以下の酸化錫膜を介して、塗布
    焼付けによる耐酸化性樹脂を被覆してなることを特徴と
    する耐食性永久磁石。
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