JP2003192773A - 生体吸収性ポリヒドロキシカルボン酸及びその製造法 - Google Patents
生体吸収性ポリヒドロキシカルボン酸及びその製造法Info
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Abstract
性材料として用いるのに適したポリヒドロキシカルボン
酸、及びその効率的な製造法を提供することである。 【解決手段】 製造されるポリヒドロキシカルボン酸1
kgに対して1dm3以上の不活性ガスを反応器内に流
通しながらヒドロキシカルボン酸を無触媒で加熱するこ
とにより、触媒及び有機溶媒を含有せず、且つ分子量の
低いオリゴマー及びモノマーの含有量が低いポリヒドロ
キシカルボン酸を製造する。
Description
特に徐放性材料として有用なポリヒドロキシカルボン
酸、およびその製造法に関する。
用いることのできるポリヒドロキシカルボン酸の製造法
は既に幾例かが知られている。
オン交換樹脂を触媒として重縮合させる方法(特公平1
−21166号)、乳酸とグリコール酸を無機固体酸存
在下で重合させる方法(特公平6−78425)などが
知られているが、これらの重縮合法により得られたポリ
ヒドロキシカルボン酸は、マイクロカプセル基剤として
使用した場合に薬剤の異常な初期放出(初期バースト)
の原因となる分子量の低いオリゴマーおよびモノマーを
多く含むという欠点を有している。
る分子量の低いオリゴマーおよびモノマーを低減する方
法として例えば、特許第2551756号および特許第
3200706号には、水または水と水可溶の有機溶媒
との混液により洗浄する方法が開示されている。
長期保存時のポリヒドロキシカルボン酸の加水分解を防
止するために、ポリマーから水を極力除去する必要があ
り乾燥に長時間を要するという問題がある。さらに、有
機溶媒を併用した場合には、析出したポリマーが有機溶
媒を取りこんで餅状の粘凋な塊となるため、取り扱いお
よび残存有機溶媒の除去が困難であるなどの問題があ
る。
の低いオリゴマーおよびモノマー含有量が少なく薬剤放
出特性の良好なポリヒドロキシカルボン酸を得ることは
困難であり、また、ポリヒドロキシカルボン酸の精製方
法についても様々な問題点を抱えており、分子量の低い
オリゴマーおよびモノマー含有量が少なく、かつ有機溶
媒を含まない生体吸収性材料に適したポリヒドロキシカ
ルボン酸およびその工業的に有利な製造方法の開発が望
まれている。
吸収性材料として用いるのに適した、触媒及び有機溶媒
を含有せず、且つ分子量の低いオリゴマーおよびモノマ
ーの含有量が低いポリヒドロキシカルボン酸、及びその
効率的な製造法を提供することである。
解決するため鋭意検討した結果、ヒドロキシカルボン酸
を原料として重合を行ないポリヒドロキシカルボン酸を
得るに際して、不活性ガスを反応器内に流通しながら加
熱することにより、無触媒で重合が進行し、分子量の低
いオリゴマーおよびモノマーの含有量が低レベルのポリ
ヒドロキシカルボン酸が得られることを見出し本発明を
完成した。
れる分子量の低いオリゴマーおよびモノマーは、水可溶
な酸性成分として定量することができる。すなわち、分
子量が低いオリゴマーは水可溶な成分として、本発明の
ポリヒドロキシカルボン酸と区別することができる。
分含有量とは、ポリマー中に含まれる原料ヒドロキシカ
ルボン酸量、及び原料由来の分子量の低いオリゴマー量
の和と定義する。
0.07モル/kg以下であり、重量平均分子量が40
00〜100000であり、触媒及び有機溶媒を含有し
ない生体吸収性ポリヒドロキシカルボン酸。 (2)水可溶な酸性成分含有量が一塩基酸に換算して
0.03モル/kg以下であり、重量平均分子量が70
00〜100000であり、触媒及び有機溶媒を含有し
ない生体吸収性ポリヒドロキシカルボン酸。 (3)ポリヒドロキシカルボン酸が、乳酸もしくはグリ
コール酸のホモポリマー、またはこれらのコポリマーで
ある(1)または(2)記載の生体吸収性ポリヒドロキ
シカルボン酸。 (4)ポリヒドロキシカルボン酸が、乳酸とグリコール
酸のコポリマーであり、そのモル比率が95/5ないし
40/60である(3)記載の生体吸収性ポリヒドロキ
シカルボン酸。 (5)反応器内に不活性ガスを流通しながらヒドロキシ
カルボン酸、またはそのオリゴマーを加熱することを特
徴とする、(1)乃至(4)記載の生体吸収性ポリヒド
ロキシカルボン酸の製造法。 (6)不活性ガスの流通量が、製造されるポリヒドロキ
シカルボン酸1kgに対して1dm3以上であることを
特徴とする(5)記載の製造法。
カルボン酸とはヒドロキシカルボン酸の重合物である。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコ
ール酸、ヒドロキシプロパン酸、ヒドロキシカプロン酸
等が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸には、
D体、L体およびそれらの混合物が存在するものがある
が、それらはいずれでもよい。
ては、生体内での分解が、適度な速度で進行するものが
好ましく、例えば乳酸およびグリコール酸のホモポリマ
ー、及びコポリマーが挙げられる。これらの中でも、特
に好ましい例として、乳酸とグリコール酸のモル比率が
それぞれ95/5ないし40/60のコポリマーが挙げら
れる。
平均分子量としては、4000〜100000が好まし
く、7000〜100000がより好ましい。重量平均
分子量がこれより小さいと、生体内での分解が早すぎる
し、ポリマーに含まれる水可溶な酸性成分量が著しく増
大する。また、分子量がこれより大きいと、生体内での
分解性が遅すぎる場合がある。
有量は、ポリマーを徐放性材料として用いたときに安定
した薬剤の徐放特性が得られる点で、一塩基酸に換算し
て0.07モル/kg以下であることが好ましく、0.
03モル/kg以下であることがさらに好ましい。
スチレンを基準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー
法などがある。
ては、例えば、ポリヒドロキシカルボン酸0.5gをジ
クロロメタン50cm3に完全に溶解させ、蒸留水40
cm3を加えて10分間振とうした後、有機層と水層に
分け、次にこの有機層に蒸留水30cm3を加えて10
分間振とうした後、有機層と水層に分け、この水層を先
の水層と併せた後、0.01N−水酸化ナトリウム水溶
液により中和滴定を行う方法がある。
製造する際に、原料として使用するヒドロキシカルボン
酸は、例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシプロパ
ン酸、ヒドロキシカプロン酸等が挙げられ、ヒドロキシ
カルボン酸がD体、L体またはそれらの混合物である場
合には、それらはいずれも使用することができる。
単独で使用することができるし、二種類以上を組み合わ
せて使用することもできる。さらには、一つの分子中に
一つ以上のカルボン酸末端と水酸基を有するヒドロキシ
カルボン酸のオリゴマーを原料として使用することもで
きる。オリゴマーとしては、例えばヒドロキシカルボン
酸の二量体、三量体、四量体などが挙げられ、また公知
の方法によりヒドロキシカルボン酸を重縮合した結果得
られる重量平均分子量4000未満の重合物が挙げられ
る。
には、一般に水溶液として提供されているものもある
が、それらも原料として使用できる。
重合するに際して、反応器内に不活性ガスを流通するこ
とが好ましい。
て、反応に影響しないものであれば特に限定されない
が、経済性の観点から、アルゴン、窒素及び二酸化炭素
等が好ましく、特に窒素が好ましい。
工業的用途に供されるレベルの不活性ガスに含まれる量
であれば特に問題となることは無いが、公知の方法によ
り水分量を低減させた不活性ガスを使用することが好ま
しい。不活性ガス中に含まれる水分量は少ないほど有利
であるが、例えば、冷却トラップを使用して露点を−6
5ないし−70℃とした窒素ガスなどを使用することが
できる。
性成分量が少なく重合速度の著しい低下がない点で、製
造されるポリマー1kgに対して累積で1dm3以上流
通することが好ましく、10dm3以上流通することが
さらに好ましく、100dm3以上流通することがより
いっそう好ましく、1000dm3以上流通することが
特に好ましい。ここで、累積とは、流通させた不活性ガ
スの総体積を意味する。
下、流通速度という)は、特に限定されず一定の流通速
度で流通してもよいし、必要に応じて流通速度を変化さ
せてもよい。
に行うことができる。間欠的に流通させる場合には、前
記流通速度は実際に不活性ガスを流通させている期間に
おける流通速度を意味し、前記流通時間は実際に不活性
ガスを流通させた時間の合計の時間を意味する。
通してもよいし、また重合中の全部の期間において連続
的または間欠的に流通してもよい。
量が増大する操作を行っている期間を意味し、具体的に
は原料のヒドロキシカルボン酸、またはそのオリゴマー
を反応器内に投入した後、加温により重縮合反応が開始
してから、所定の分子量に達した後、冷却して重縮合反
応が停止するまでを意味する。
ン酸を再び加熱して溶融状態とし、ポリヒドロキシカル
ボン酸が所定の重量平均分子量および水可溶な酸性成分
含有量に到達するまで不活性ガスを流通してもよい。こ
の操作は、ポリヒドロキシカルボン酸がすでに所定の重
量平均分子量を有している場合において水可溶な酸性成
分含有量を低減する場合にも行うことができる。
応装置を簡略化できるので、常圧であることが好まし
い。
されないが、溶融ポリマーと気相の界面上を通過するよ
うに流通するか溶融ポリマー内に吹き込むのが好まし
く、溶融ポリマー中に吹き込むのが特に好ましい。
中に放出しても良いが、低温トラップ等の公知の装置に
より、不活性ガス中に含まれる水分等を低減させた後、
再び反応器内に流通することもできる。
ないが、120℃以上ポリヒドロキシカルボン酸の分解
温度以下の範囲であることが好ましく、特に150℃以
上ポリヒドロキシカルボン酸の分解温度以下の範囲であ
ることが好ましい。反応温度がこれより低いと、反応速
度が低下して非効率的であるし、また反応温度がこれよ
り高いと、ポリマーが分解する傾向がある。
ボン酸が水と同時に留出することを防止するために、低
温より段階的に反応温度を上昇させ、原料ヒドロキシカ
ルボン酸をオリゴマー化した後に、先に述べた反応温度
に上昇させても良い。
ポリヒドロキシカルボン酸に溶解しない触媒を使用して
行うことができる。得られるポリヒドロキシカルボン酸
中に触媒が全く残存しない点で無触媒で重合を行うのが
好ましい。
媒とは、具体的には、活性白土、酸性白土、ケイ酸アル
ミニウム、ケイ酸マグネシウム等の無機固体酸類が挙げ
られる。
限定されないが、溶融ポリヒドロキシカルボン酸と不活
性ガスの接触面積が広くなるように高速に攪拌できる装
置が備えられていることが好ましい。本発明における製
造法により得られたポリヒドロキシカルボン酸に対して
は、通常、特に精製操作は必要としないが、濾過等によ
り固形不純物を取り除く操作を行っても良い。
明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定
されるものではない。
レンを基準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー法に
よった。
system−11(昭和電工製)を用い、カラムは
PLgel 5μm MIXED−C(ポリマーラボラ
トリー社製)を使用した。クロロホルムを溶媒として用
い、流量は1.0cm3/分とし、カラム温度40℃で測
定を行った。
コに、90%DL−乳酸水溶液(武蔵野乳酸製、100
g)と70%グリコール酸水溶液(大塚化学製、36
g)を加えて攪拌して均一の溶液とした。165ないし
170℃のオイルバスに反応器を漬けて2時間その温度
を維持し、留出水を除去した。このときの重量平均分子
量は1000以下であった。次いで、露点−65ないし
−70℃の窒素を一分間あたり3.6dm3の流通速度
で連続的に流通し、オイルバスの温度を185ないし1
90℃として重合を進行させた。この温度と窒素流通速
度を45時間維持したところ、乳白色のポリマーが得ら
れた。得られたポリマーの重量平均分子量は1850
0、分散度は2.90であった。ポリマー中の水可溶な
酸性成分含有量は0.007モル/kgであった。重合
中に反応器内に流通した窒素の累計は得られたポリマー
1kgあたり106000dm3であった。
に、90%DL−乳酸水溶液(武蔵野乳酸製、100
g)と70%グリコール酸水溶液(大塚化学製、19
g)を加えて攪拌して均一の溶液とした。165ないし
170℃のオイルバスに反応器を漬けて2時間その温度
を維持し、留出水を除去した。次いで、露点−65ない
し−70℃の窒素を一分間あたり5.0dm3の流通速
度で連続的に流通し、オイルバスの温度を225ないし
230℃として重合を進行させた。この温度と窒素流通
速度を18.5時間維持したところ、乳白色のポリマー
が得られた。得られたポリマーの重量平均分子量は36
000、分散度は3.50であった。ポリマー中の水可
溶な酸性成分含有量は0.001モル/kgであった。
重合中に反応器内に流通した窒素の累計は得られたポリ
マー1kgあたり68000dm3であった。
スコに、90%DL−乳酸水溶液(武蔵野乳酸製、50
0g)と70%グリコール酸水溶液(大塚化学製、18
1g)を加えて攪拌して均一の溶液とした。165ない
し170℃のオイルバスに反応器を漬けて3.5時間そ
の温度を維持し、留出水を除去した。次いで、露点−6
5ないし−70℃の窒素を一分間あたり5.0dm3の
流通速度で連続的に流通し、オイルバスの温度を205
ないし210℃として重合を進行させた。この温度と窒
素流通速度を22.5時間維持したところ、乳白色のポ
リマーが得られた。得られたポリマーの重量平均分子量
は17100、分散度は3.06であった。ポリマー中
の水可溶な酸性成分含有量は0.010モル/kgであ
った。重合中に反応器内に流通した窒素の累計は得られ
たポリマー1kgあたり14800dm3であった。
コに、90%DL−乳酸水溶液(武蔵野乳酸製、100
g)と70%グリコール酸水溶液(大塚化学製、36
g)を加えて攪拌して均一の溶液とした。165ないし
170℃のオイルバスに反応器を漬けて2時間その温度
を維持し、留出水を除去した。次いで、露点−65ない
し−70℃の窒素を一分間あたり1.0dm3の流通速
度で連続的に流通し、オイルバスの温度を185ないし
190℃として重合を進行させた。この温度と窒素流通
速度を20時間維持したところ、乳白色のポリマーが得
られた。得られたポリマーの重量平均分子量は1010
0、分散度は2.51であった。ポリマー中の水可溶な
酸性成分含有量は0.021モル/kgであった。重合
中に反応器内に流通した窒素の累計は得られたポリマー
1kgあたり13000dm3であった。
スコに、90%DL−乳酸水溶液(武蔵野乳酸製、50
0g)と70%グリコール酸水溶液(大塚化学製、18
1g)を加えて攪拌して均一の溶液とした。165ない
し170℃のオイルバスに反応器を漬けて3.5時間そ
の温度を維持し、留出水を除去した。次いで、露点−6
5ないし−70℃の窒素を一分間あたり1.0dm3の
流通速度で連続的に流通し、オイルバスの温度を205
ないし210℃として重合を進行させた。この温度と窒
素流通速度を17時間維持したところ、乳白色のポリマ
ーが得られた。得られたポリマーの重量平均分子量は1
0700、分散度は2.53であった。ポリマー中の水
可溶な酸性成分含有量は0.027モル/kgであっ
た。重合中に反応器内に流通した窒素の累計は得られた
ポリマー1kgあたり2200dm3であった。
実施例の水可溶な遊離酸量は、全て水可溶な遊離酸量を
低減させるような精製操作を全く行っていない、重合直
後のの測定値である。従来技術の製法による未精製ポリ
マーの結果(特許2551756)を比較例として併せ
て表1に示す。
ーストの原因となる分子量の低いオリゴマーおよびモノ
マー含有量が少なく、さらに触媒、有機溶媒を全く含ま
ない生体吸収性材料に適した高品質なポリヒドロキシカ
ルボン酸を提供できる。さらに、該ポリヒドロキシカル
ボン酸を生産性よく製造できる。
Claims (6)
- 【請求項1】 水可溶な酸性成分含有量が一塩基酸に換
算して0.07モル/kg以下であり、重量平均分子量
が4000〜100000であり、触媒及び有機溶媒を
含有しない生体吸収性ポリヒドロキシカルボン酸。 - 【請求項2】 水可溶な酸性成分含有量が一塩基酸に換
算して0.03モル/kg以下であり、重量平均分子量
が7000〜100000であり、触媒及び有機溶媒を
含有しない生体吸収性ポリヒドロキシカルボン酸。 - 【請求項3】 ポリヒドロキシカルボン酸が、乳酸もし
くはグリコール酸のホモポリマー、またはこれらのコポ
リマーである請求項1または2記載の生体吸収性ポリヒ
ドロキシカルボン酸。 - 【請求項4】 ポリヒドロキシカルボン酸が、乳酸とグ
リコール酸のコポリマーであり、そのモル比率が95/
5ないし40/60である請求項3記載の生体吸収性ポ
リヒドロキシカルボン酸。 - 【請求項5】 反応器内に不活性ガスを流通しながらヒ
ドロキシカルボン酸、またはそのオリゴマーを加熱する
ことを特徴とする、請求項1乃至4記載の生体吸収性ポ
リヒドロキシカルボン酸の製造法。 - 【請求項6】 不活性ガスの流通量が、製造されるポリ
ヒドロキシカルボン酸1kgに対して1dm3以上であ
ることを特徴とする、請求項5記載の製造法。
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