JP2003147472A - マグネシウム系水素吸蔵合金 - Google Patents

マグネシウム系水素吸蔵合金

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JP2003147472A JP2001338145A JP2001338145A JP2003147472A JP 2003147472 A JP2003147472 A JP 2003147472A JP 2001338145 A JP2001338145 A JP 2001338145A JP 2001338145 A JP2001338145 A JP 2001338145A JP 2003147472 A JP2003147472 A JP 2003147472A
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magnesium
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Masakazu Aoki
正和 青木
Kazuhiko Ito
一彦 伊東
Shinichi Towata
真一 砥綿
Toshihiro Mori
敏洋 毛利
Katsushi Saito
克史 斉藤
Michiyo Kaneko
美智代 金子
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Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水素吸蔵量が大きく、かつ水素の吸蔵・放出
速度が速い水素吸蔵合金を提供する。 【解決手段】 水素吸蔵合金を、組成式Mg1-(x+y)
xy(Rはイットリウム、ミッシュメタル、希土類金
属から選ばれる少なくとも1種以上:0<x<0.3、
0<y<0.1)で表され、観察された断面組織におい
てMg晶の短軸径およびMg2Ni晶の短軸径がそれぞ
れ5μm以下となるマグネシウム系水素吸蔵合金とす
る。Mg晶およびMg2Ni晶が微細化されているた
め、結晶界面が増加し、水素の拡散速度が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可逆的に水素を吸
蔵・放出することのできる水素吸蔵合金に関し、詳しく
は、水素吸蔵量の大きいマグネシウム系水素吸蔵合金に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、二酸化炭素の排出による地球の温
暖化等の環境問題や、石油資源の枯渇等のエネルギー問
題から、クリーンな代替エネルギーとして水素エネルギ
ーが注目されている。水素エネルギーの実用化にむけ
て、水素を安全に貯蔵・輸送する技術の開発が重要とな
る。なかでも、水素吸蔵合金は、爆発性のある水素を金
属水素化物という安全な固体の形で貯蔵できることか
ら、輸送可能な新しい貯蔵媒体として期待されている。
【0003】例えば、マグネシウムは、軽量で、水素の
吸蔵量が大きいことから水素貯蔵材料の一つとして注目
されている。しかし、マグネシウムは、マグネシウム水
素化物中における水素拡散の活性化エネルギーが比較的
大きいため、水素の吸蔵・放出に高温を必要とし、水素
の吸蔵・放出速度も極めて遅く、実用には適さないとい
う問題を有している。このため、水素の吸蔵に触媒的な
役割を果たすニッケルや銅等を添加してマグネシウム合
金とする等、その特性の向上を図る試みが進められてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これま
でに開発されたマグネシウム合金の水素の吸蔵・放出速
度は、実用にはいまだ充分とはいえず、上述した問題の
解決には至っていない。
【0005】本発明は、このような実状に鑑みてなされ
たものであり、マグネシウムの利点を生かし、水素吸蔵
量が大きく、かつ水素の吸蔵・放出速度が速い水素吸蔵
合金を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のマグネシウム系
水素吸蔵合金は、組成式Mg1-(x+y)Nixy(Rはイ
ットリウム、ミッシュメタル、希土類金属から選ばれる
少なくとも1種以上:0<x<0.3、0<y<0.
1)で表され、観察された断面組織においてMg晶の短
軸径およびMg2Ni晶の短軸径がそれぞれ5μm以下
であることを特徴とする。
【0007】本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、
マグネシウムにニッケルおよびR(Rはイットリウム、
ミッシュメタル、希土類金属から選ばれる少なくとも1
種以上)を添加して合金化したものである。Niは主に
水素分子を解離させる触媒機能を果たし、Rは合金組織
の微細化や合金粉の焼結を抑制する役割を果たすと考え
られる。そして、合金組織は、Mg相、Mg2Ni相、
Mg−R相、R−Ni相等の種々の相から構成され、後
に写真を示すが、その断面組織におけるMg晶およびM
2Ni晶の短軸径がそれぞれ5μm以下と小さいもの
である。つまり、晶出したMg晶やMg2Ni晶が、微
粒子状や薄片状に微細化された合金組織となっている。
これらMg晶およびMg2Ni晶は、水素との反応速度
が遅いと考えられる。また、合金内に拡散した水素は各
相の界面に沿って移動すると考えられる。したがって、
上記Mg晶等を微細化することによって、界面を増加さ
せ、水素の拡散速度を向上させることができ、水素をM
g晶等に侵入し易くすることができる。また、上記Mg
晶等が微細化しているため、水素の吸蔵・放出反応に寄
与する表面積が大きくなり、Mg2Ni、R−Ni等に
よる水素解離作用も効果的に作用し、水素の吸蔵・放出
反応が促進されると考えられる。このように、本発明の
マグネシウム系水素吸蔵合金は、マグネシウムが有する
優れた特性を生かしつつ、水素吸蔵・放出速度の大きい
合金となる。
【0008】また、通常、水素吸蔵合金を使用する前に
は、水素を吸蔵し易い温度で高圧水素下で保持する等の
いわゆる活性化処理が行われる。そして、この活性化処
理の条件や回数等は、水素吸蔵合金により異なるもので
ある。例えば、マグネシウムの場合では、温度350〜
400℃、水素圧力5MPa程度の条件下で保持し、そ
の後真空脱気するという操作を、通常10回程度繰り返
して活性化処理される。後の実施例で明らかになったこ
とであるが、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、
この活性化処理を容易に行うことができる合金となる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明のマグネシウム系水
素吸蔵合金について詳細に説明する。なお、説明する実
施形態は一実施形態にすぎず、本発明のマグネシウム系
水素吸蔵合金が下記の実施形態に限定されるものではな
い。下記実施形態を始めとして、当業者が行い得る変
更、改良等を施した種々の形態にて実施することができ
る。
【0010】本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、
組成式Mg1-(x+y)Nixy(0<x<0.3、0<y
<0.1)で表されるものである。上述したように、N
iは主に水素分子を解離させる触媒機能を果たすもので
あり、合金中のNiの含有割合、つまり組成式における
xの値の範囲は0<x<0.3とする。Niの含有割合
が0.3以上の場合には、上記触媒作用は大きくなる
が、その分だけ主構成元素であるMgの割合が低下する
ため、合金の水素吸蔵量が減少するからである。水素吸
蔵量を考慮した場合には、Niの含有割合を0.1以
下、すなわち、xの値の範囲をx≦0.1とすることが
望ましい。なお、Niの触媒機能を効果的に発揮させる
観点からは、Niの含有割合を0.02以上、すなわ
ち、xの値の範囲を0.02≦xとすることが望まし
い。また、上述したように、R(イットリウム、ミッシ
ュメタル、希土類金属から選ばれる少なくとも1種以
上)は合金組織の微細化や合金粉の焼結を抑制する役割
を果たすものであり、合金中のRの含有割合、つまり組
成式におけるyの値の範囲は0<y<0.1とする。R
はその重量が大きいため、Rの含有割合が0.1以上の
場合には、合金の単位重量当たりの水素吸蔵量が減少す
るからである。単位重量当たりの水素吸蔵量を考慮した
場合には、Rの含有割合を0.05以下、すなわち、y
の値の範囲をy≦0.05とすることが望ましい。な
お、Rの添加効果を充分に発揮させるという観点から
は、Rの含有割合を0.01以上、すなわち、yの値の
範囲を0.01≦yとすることが望ましい。
【0011】また、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合
金は、その断面組織においてMg晶およびMg2Ni晶
の短軸径がそれぞれ5μm以下である。ここで、短軸径
とは、上記各結晶をそれに接する2本の平行線で挟んだ
場合の最短長さを意味する。後に写真で示すように、合
金の断面組織において、例えば、結晶の断面形状が円形
に近い場合には、短軸形は円の直径に近くなる。また、
例えば、結晶の断面形状が針状の場合には、短軸形はそ
の幅を示すものとなる。つまり、合金の断面組織におい
てMg晶およびMg2Ni晶の短軸径が5μmを超える
と、結晶が大きくなるため、各結晶界面が減少して水素
の拡散速度が遅くなり、水素の吸蔵・放出速度を向上さ
せることが困難となるのである。より水素の吸蔵・放出
速度の向上を図るためには、1μm以下とすることが望
ましい。なお、合金の断面組織の観察は、通常行われて
いる方法に従えばよく、例えば、光学顕微鏡、走査型電
子顕微鏡(SEM)により観察すればよい。本明細書で
は、SEM観察による反射電子像で合金の断面組織を特
定している。
【0012】本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金の製
造方法は、特に限定されるものではなく、通常の合金の
製造方法、すわわち、原料となる各金属を目的の組成と
なるように混合、溶解した後、凝固させるというプロセ
スに従えばよい。合金組織は、例えば、凝固時の冷却速
度や、凝固後の熱処理等によりコントロールすることが
できる。また、合金の組成が共晶組成に近い場合は、M
gおよびMg2Niの初晶の晶出をある程度抑制するこ
とができる。特に、Mg晶およびMg2Ni晶を微細化
するという観点から、凝固時の冷却速度を大きくする、
つまり急冷することが望ましい。より具体的には、凝固
時の冷却速度を102〜105K/sとすることが望まし
い。このような製造方法として、鋳造法において急冷す
る方法の他、例えば、ロール急冷法、ガスアトマイズ法
等の急冷凝固法が挙げられる。
【0013】
【実施例】上記実施形態に基づいて、本発明のマグネシ
ウム系水素吸蔵合金を種々製造した。そして、各水素吸
蔵合金について水素を吸蔵・放出させ、その吸蔵量と放
出量とを測定した。以下、製造したマグネシウム系水素
吸蔵合金および水素吸蔵量および放出量の評価について
説明する。
【0014】(1)第1シリーズのマグネシウム系水素
吸蔵合金 (a)水素吸蔵合金の製造 組成式Mg0.925Ni0.025Nd0.05で表される合金(以
下#11の合金と示す)と組成式Mg0.85Ni0.1Nd
0.05で表される合金(以下#12の合金と示す)との2
種類の水素吸蔵合金を鋳造により製造した。まず、M
g、Ni、Ndを上記それぞれの合金組成となるように
混合し、加熱炉にて溶解した後、厚さ2mmの銅金型に
流し込み急冷することにより板状のインゴットに鋳造し
た。なお、急冷は冷却速度を約102K/sとして行っ
た。得られた板状の#11、#12の各合金について粉
末法によるX線回折分析を行い、そのX線回折スペクト
ルから、#11、#12の両合金には、Mg相、Mg2
Ni相、Mg12Nd相、Mg4 1Nd5相、NdNi5相が
生成していることが確認された。また、#11の合金の
断面組織のSEM観察による反射電子像の一例を図1に
示す。図1中、黒色で表されている結晶がMg晶であ
る。図1より、#11の合金における断面組織には、短
軸径が1〜2μmのMg晶が観察され、Mg晶が微細化
されていることが確認できる。なお、本反射電子像では
Mg2Ni晶とMg12Nd晶との区別は困難であったた
めMg2Ni晶については明らかではないが、おそらく
Mg晶と同程度の大きさであると思われる。また同様
に、#12の合金の断面組織の反射電子像の一例を図2
に示す。図2中、黒色で表されている結晶がMg晶であ
る。図2より、#12の合金における断面組織には、短
軸径が0.03〜0.5μmのMg晶が観察され、Mg
晶が極めて微細化されていることが確認できる。なお、
Mg2Ni晶については上記#11の合金と同様に、M
g晶と同程度の大きさであると思われる。すなわち、#
11および#12の合金は、本発明のマグネシウム系水
素吸蔵合金であることが確認できた。
【0015】(b)水素吸蔵量および放出量の測定 #11および#12の両合金を活性化処理した後、水素
加圧チャンバーに入れ、温度300℃、約1.3MPa
の水素加圧下でそれぞれ水素を吸蔵させた。活性化処理
は、300℃、水素圧5MPa下で水素を吸蔵させた
後、真空脱気するという処理を2回繰り返すことにより
行った。また、吸蔵した水素量は、圧力−組成等温線
(PCT線)を求めるジーベルツ法により測定した(J
IS H 7201−1991)。図3に、#11および
#12の各合金の水素吸蔵量の経時変化を示す。なお、
参考例として、同様の条件下でのマグネシウムの水素吸
蔵量の経時変化を図3に併せて示す。図3から明らかな
ように、水素の充填開始から600秒(10分)経過後
の水素吸蔵量は、#11の合金では5.2wt%、#1
2の合金では5.4wt%となり、2.5wt%である
Mgの2倍以上となった。そして、#11、#12の合
金は、ともにその水素吸蔵量が5wt%程度となるまで
に、水素の充填開始から約100秒しか要しておらず、
水素吸蔵速度が極めて速いことがわかる。
【0016】次に、温度を室温とした以外は、上記と同
様の条件で、#11、#12の各合金に水素を吸蔵させ
た。その場合における#11、#12の各合金の水素吸
蔵量の経時変化を図4に示す。なお、参考例として、同
様の条件下でのマグネシウムの水素吸蔵量の経時変化を
図4に併せて示す。図4から明らかなように、室温下で
のMgの水素吸蔵量は0.1wt以下となり、時間が経
過しても変わらないのに対し、#11、#12の各合金
の水素吸蔵量は、時間の経過とともに増加し、マグネシ
ウムの値を大幅に上回るものとなった。特に、#12の
合金の水素吸蔵量は、水素の充填開始から約3時間経過
後に約2.8wt%と大きくなった。
【0017】また、上記各#11、#12の合金および
Mgに最大量の水素を吸蔵させた後、300℃の温度下
で水素の放出量を測定した。図5に、#11、#12の
合金およびマグネシウムの水素放出量の経時変化を示
す。図5から明らかなように、水素の充填開始から12
00秒(20分)経過後の水素放出量は、Mgが0.5
wt%に過ぎなかったのに対し、#11の合金では5.
2wt%、#12の合金では4.7wt%と大きくなっ
た。そして、#11、#12の合金は、ともに水素放出
速度が速いことがわかる。
【0018】以上より、本発明のマグネシウム系水素吸
蔵合金は、水素吸蔵量が大きく、水素吸蔵・放出速度が
速い合金であることが確認できた。また、室温という低
い温度であっても水素吸蔵量の大きな合金であることが
確認できた。なお、#11、#12の両合金は、マグネ
シウムと比較して、その活性化のための温度が低く、回
数も2回程度で充分であった。つまり、本発明のマグネ
シウム系水素吸蔵合金は、活性化処理を容易に行うこと
のできる水素吸蔵合金であることが確認できた。
【0019】(2)第2シリーズのマグネシウム系水素
吸蔵合金 (a)水素吸蔵合金の製造 組成式Mg0.67Ni0.23Nd0.1で表される合金(以下
#21の合金と示す)と組成式Mg0.96Ni0.02Nd
0.02で表される合金(以下#22の合金と示す)との2
種類の水素吸蔵合金を、上記第1シリーズの合金と同様
の方法で製造した。得られた板状の#21、#22の各
合金について粉末法によるX線回折分析を行い、そのX
線回折スペクトルから、#21の合金には、Mg相、M
2Ni相、Mg12Nd相、Mg41Nd5相が、また、#
22の合金には、Mg相、Mg2Ni相、Mg12Nd相
がそれぞれ生成していることが確認された。さらに、#
21の合金における断面組織のSEM観察による反射電
子像では、短軸径が0.05〜0.5μmのMg晶、お
よび短軸径が0.05〜30μmのMg2Ni晶が観察
された。同様に、#22の合金における断面組織のSE
M観察による反射電子像では、短軸径が0.05〜30
μmのMg晶、および短軸径が0.05μm〜0.2μ
mのMg2Ni晶が観察された。つまり、#21、#2
2の合金は、その断面組織におけるMg晶やMg2Ni
晶が充分に微細化されていないことがわかる。
【0020】(b)水素吸蔵量および放出量の測定 #21および#22の両合金を活性化処理した後、水素
加圧チャンバーに入れ、温度300℃、約1.3MPa
の水素加圧下でそれぞれ水素を吸蔵させた。活性化処理
は、#21の合金では、300℃、水素圧5MPa下で
水素を吸蔵させた後、真空脱気するという処理を2度繰
り返すことにより、また、#22の合金では、300
℃、水素圧5MPa下で水素を吸蔵させた後、真空脱気
するという処理を7回繰り返すことにより行った。な
お、吸蔵した水素量は、第1シリーズの合金における測
定方法と同様の方法で測定した。その結果、水素の充填
開始から600秒(10分)経過後の水素吸蔵量は、#
21の合金では3.6wt%、#22の合金では4.5
wt%となった。また、上記各#21、#22の合金に
最大量の水素を吸蔵させた後、300℃の温度下で水素
の放出量を測定した。その結果、水素の充填開始から1
200秒(20分)経過後の水素放出量は、#21の合
金では3.5wt%、#22の合金では5.1wt%と
なった。
【0021】以上より、本第2シリーズの水素吸蔵合金
は、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金である第1シ
リーズの水素吸蔵合金と比較して、水素吸蔵量が小さ
く、また水素吸蔵・放出速度もそれほど向上していない
ことがわかる。
【0022】(3)第3シリーズのマグネシウム系水素
吸蔵合金 (a)水素吸蔵合金の製造 組成式Mg0.85Ni0.1La0.05で表される合金(以下
#31の合金と示す)と組成式Mg0.925Ni0.025
0.05で表される合金(以下#32の合金と示す)との2
種類の水素吸蔵合金を単ロール急冷法により製造した。
まず、Mg、Ni、La、Yを上記それぞれの合金組成
となるように混合し、その混合物を一端がノズル状に加
工された石英ガラス管に入れ、単ロール液体急冷装置に
取り付けた。真空脱気した後、アルゴン雰囲気にて上記
混合物を溶解し、3000rpmの回転速度で回転する
単ロールにノズルから吹き付けることにより、フレーク
状の合金を製造した。なお、冷却速度は約105K/s
とした。得られた#31、#32の各合金について粉末
法によるX線回折分析を行い、そのX線回折スペクトル
から、#31の合金には、Mg相、Mg2Ni相、Mg
12La相、Mg17La2相、LaNi5相が、また、#2
2の合金には、Mg相、Mg2Ni相、Mg24 5相がそ
れぞれ生成していることが確認された。さらに、#31
の合金における断面組織のSEM観察による反射電子像
では、短軸径が50nm以下のMg晶、および短軸径が
200nm以下のMg2Ni晶が観察され、両者ともに
微細化されていることが確認できる。同様に、#32の
合金における断面組織のSEM観察による反射電子像で
は、短軸径が1μm以下のMg晶、および短軸径が20
0nm以下のMg2Ni晶が観察され、両者ともに微細
化されていることが確認できる。すなわち、#31およ
び#32の合金は、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合
金であることが確認できた。
【0023】(b)水素吸蔵量および放出量の測定 #31および#32の各合金に、上記第1シリーズの合
金について行ったのと同様にして、温度300℃、約
1.3MPaの水素加圧下で水素を吸蔵させた。その結
果、水素の充填開始から600秒(10分)経過後の水
素吸蔵量は、#31の合金では5.4wt%、#32の
合金では5.4wt%となり、2.5wt%であるMg
の2倍以上の吸蔵量となった。次に、温度を室温とし
て、同様に水素を吸蔵させた。その結果、#31、#3
2の各合金の水素吸蔵量は、時間の経過とともに増加
し、水素の充填開始から約3時間経過した後では、#3
1の合金が約2.8wt%、#32の合金は約1.0w
t%となった。この値は、上記マグネシウムの値を大幅
に上回るものである。
【0024】また、上記各#31、#32の合金に最大
量の水素を吸蔵させた後、300℃の温度下で水素の放
出量を測定した。その結果、水素の充填開始から120
0秒(20分)経過後の水素放出量は、上記Mgが0.
5wt%に過ぎなかったのに対し、#31の合金では
4.7wt%、#32の合金では5.5wt%と大きく
なった。
【0025】以上より、本発明のマグネシウム系水素吸
蔵合金は、水素吸蔵量が大きく、水素吸蔵・放出速度が
速い合金であることが確認できた。また、室温という低
い温度であっても水素吸蔵量の大きな合金であることが
確認できた。なお、#31、#32の両合金も、上記第
1シリーズの合金と同様の活性化処理で充分であった。
よって、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、活性
化処理を容易に行うことのできる水素吸蔵合金であるこ
とが確認できた。
【0026】(4)第4シリーズのマグネシウム系水素
吸蔵合金 (a)水素吸蔵合金の製造 組成式Mg0.85Ni0.10.025Nd0.025で表される水
素吸蔵合金(以下#41の合金と示す)をガスアトマイ
ズ法により製造した。まず、Mg、Ni、Y、Ndを上
記合金組成となるように混合し、その混合物をガスアト
マイズ用坩堝に入れ高周波溶解した。その後、溶湯出口
部に取り付けられたノズルから高圧アルゴンガスを噴射
することにより、粉末状の合金を製造した。なお、冷却
速度は約102K/sとした。#41の合金における断
面組織のSEM観察による反射電子像では、Mg晶、M
2Ni晶ともに微細化されていることが確認でき、#
41の合金は、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金で
あることが確認できた。
【0027】(b)水素吸蔵量および放出量の測定 #41の合金に、上記第1シリーズの合金について行っ
たのと同様にして、室温、約1.3MPaの水素加圧下
で水素を吸蔵させた。その結果、水素の充填開始から3
時間経過後の水素吸蔵量は、3.0wt%となり、上記
マグネシウムの値を大幅に上回るものであった。これよ
り、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、室温とい
う低い温度であっても水素の吸蔵量の大きな合金である
ことが確認できた。なお、#41の合金も、上記第1シ
リーズの合金と同様の活性化処理で充分であった。よっ
て、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、活性化処
理を容易に行うことのできる水素吸蔵合金であることが
確認できた。
【0028】
【発明の効果】本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金
は、マグネシウムとニッケルとR(Rはイットリウム、
ミッシュメタル、希土類金属から選ばれる少なくとも1
種以上)とを所定の組成で合金化し、その合金組織にお
けるMg晶およびMg2Ni晶が微細化されたものであ
る。Mg晶およびMg2Ni晶が微細化されているた
め、結晶界面が増加し、水素の拡散速度が向上する。ま
た、水素の吸蔵・放出反応に寄与する表面積も大きくな
り、水素の吸蔵・放出反応が促進される。したがって、
本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、水素吸蔵量が
大きく、水素吸蔵・放出速度の速い合金となる。さら
に、活性化処理を容易に行うことができる合金となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 #11の合金の断面組織のSEM観察による
反射電子像の一例を示す。
【図2】 #12の合金の断面組織のSEM観察による
反射電子像の一例を示す。
【図3】 #11、#12の各合金およびマグネシウム
の水素吸蔵量の経時変化を示す(300℃、水素圧1.
3MPa)。
【図4】 #11、#12の各合金およびマグネシウム
の水素吸蔵量の経時変化を示す(室温、水素圧1.3M
Pa)。
【図5】 #11、#12の合金およびマグネシウムの
水素放出量の経時変化を示す(300℃)。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年11月6日(2001.11.
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
フロントページの続き (72)発明者 伊東 一彦 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 砥綿 真一 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 毛利 敏洋 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 斉藤 克史 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 金子 美智代 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式Mg1-(x+y)Nixy(Rはイッ
    トリウム、ミッシュメタル、希土類金属から選ばれる少
    なくとも1種以上:0<x<0.3、0<y<0.1)
    で表され、観察された断面組織においてMg晶の短軸径
    およびMg2Ni晶の短軸径がそれぞれ5μm以下であ
    るマグネシウム系水素吸蔵合金。
  2. 【請求項2】 前記組成式におけるRは、ネオジム、イ
    ットリウム、ランタンから選ばれる少なくとも1種以上
    である請求項1に記載のマグネシウム系水素吸蔵合金。
JP2001338145A 2001-11-02 2001-11-02 マグネシウム系水素吸蔵合金 Pending JP2003147472A (ja)

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