JP2008013375A - 水素化物複合体及び水素貯蔵材料 - Google Patents

水素化物複合体及び水素貯蔵材料 Download PDF

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Abstract

【課題】化学的に安定であり、入手が比較的容易であり、水素の吸蔵放出に伴う劣化の可能性が少ない添加剤を含み、かつ、水素吸蔵・放出温度を低温化することが可能な水素化物複合体及び水素貯蔵材料を提供すること。
【解決手段】金属水素化物と、金属アミド化合物と、フラーレンとを粉砕混合することにより得られる水素化物複合体、及び、この水素化物複合体に含まれる水素の全部又は一部を放出させることにより得られる水素貯蔵材料。
【選択図】図2

Description

本発明は、水素化物複合体及び水素貯蔵材料に関し、さらに詳しくは、水素吸蔵放出反応を促進させる触媒としてフラーレンを用いた水素化物複合体及び水素貯蔵材料に関する。
水素エネルギーは、例えば、電気自動車用電源などに利用される燃料電池をはじめとして様々な用途への利用が期待されている。水素エネルギーを実用化するためには、水素を安全、かつ、効率的に貯蔵・輸送する技術が重要となる。水素を貯蔵する技術としては、例えば、水素を高圧で圧縮したり、低温で液化してボンベなどの容器に充填する方法がある。
高圧で圧縮する方法では、実用的な量の水素を貯蔵する場合に、その容器体積が大きくなってしまう。また、低温で液化する方法では、水素を20K以下に冷却する必要があり、加えて、容器を常に冷却しておく必要もあるため、そのコストが大きくなるという欠点を有する。
一方、容器に水素を吸蔵放出可能な材料を充填しておき、その材料に水素を吸収させて貯蔵する方法もある。水素の吸蔵放出可能な材料には、水素の金属中への溶解を用いた水素吸蔵合金、水素の表面吸着を用いた炭素材料、熱分解などの化学反応を用いた錯体系水素化物などが挙げられる。
これらの中でも錯体系水素化物は、重量当たりの水素吸蔵量が大きいことが知られており、また水素を放出後、再び水素化することも可能である。しかしながら、この材料から水素を放出させるためには、高温での長時間加熱を要することが問題となってきた。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、LiHとMg(NH2)2の混合物にTiCl3を金属成分の合計モル量の1.0mol%となるように配合し、ミリング処理することにより得られる水素貯蔵材料が開示されている。同文献には、TiCl3を触媒として添加することによって、水素発生温度及び水素放出ピーク温度が低下し、水素放出後の材料を高い水素貯蔵率で再生することができる点が記載されている。
また、特許文献2には、LiHとLiNH2の混合物又はLiHとMg(NH2)2の混合物にTiナノ粒子又はTiO2ナノ粒子を配合し、ミリング処理することにより得られる水素貯蔵材料が開示されている。同文献には、Tiナノ粒子又はTiO2ナノ粒子を触媒として添加することによって、水素発生温度及び水素放出ピーク温度が低下し、水素放出後の材料を高い水素貯蔵率で再生することができる点が記載されている。
特開2005−306724号公報 特開2006−7064号公報
軽元素を含む錯体水素化物は、相対的に重量が軽く、資源確保も比較的容易であり、相対的に低コストである。しかしながら、従来知られている錯体系水素化物は、熱的に過度に安定であり、水素を取り出しにくいという欠点をもつ。水素放出反応に高温と長時間を要するのは、現在、試験研究がなされている化合物が熱的に安定なためである。また、水素放出反応は平衡反応であるので、反応初期に発生した水素の分圧により、反応が阻害されるためでもある。
これに対し、無機水素化物と金属アミドの混合物を用いる場合において、無機水素化物及び金属アミドに2種以上の金属種が含まれていると、水素放出温度を低温化することができる。また、無機水素化物と金属アミドの混合物にある種の触媒を添加すると、水素放出反応を迅速化することができる。
しかしながら、従来知られている触媒は、大気に対して不安定、入手が困難、水素の吸蔵放出に伴う劣化の可能性、などの問題がある。一方、水素放出を容易化するために化合物を不安定化させると、不純物ガスが発生する可能性もある。
本発明が解決しようとする課題は、水素吸蔵・放出温度を低温化することが可能な水素化物複合体及び水素貯蔵材料を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、化学的に安定であり、入手が比較的容易であり、水素の吸蔵放出に伴う劣化の可能性が少ない添加剤を含む水素化物複合体及び水素貯蔵材料を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る水素化物複合体は、金属水素化物と、金属アミド化合物と、フラーレンとを粉砕混合することにより得られるものからなる。
また、本発明に係る水素貯蔵材料は、本発明に係る水素化物複合体に含まれる水素の全部又は一部を放出させることにより得られるものからなる。
フラーレンは、無機錯体水素化物の水素吸蔵・放出反応の触媒となる。また、フラーレンは、化学的に安定であり、入手も比較的容易で、水素吸蔵・放出を繰り返しても劣化のおそれが少ない。さらに、フラーレンは、ナノ粒子であり、無機錯体混合物中への均一な分散が容易である。そのため、無機錯体水素化物にフラーレンを触媒として添加すると、水素吸蔵・放出反応を低温化させることができる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る水素化物複合体は、金属水素化物と、金属アミド化合物と、フラーレンとを粉砕混合することにより得られるものからなる。
また、本発明に係る水素貯蔵材料は、本発明に係る水素化物複合体に含まれる水素の全部又は一部を放出させることにより得られるものをいう。
なお、本発明において、「水素化物複合体」とは、貯蔵した水素を放出することができるものをいう。また、「水素貯蔵材料」とは、水素ガスを貯蔵する能力を有するものをいう。また、「水素貯蔵材料」という時は、水素を完全に放出した材料だけでなく、最大貯蔵量に満たない水素を貯蔵している材料も含まれる。
本発明において、金属水素化物の種類は、特に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができる。
金属水素化物としては、具体的には、
(1) LiH、NaH、KHなどのアルカリ金属水素化物、
(2) MgH2、BeH2、CaH2などのアルカリ土類金属水素化物、
などがある。水素化物複合体には、これらのいずれか1種の金属水素化物が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていてもよい。
特に、Li又はMgを含む金属水素化物は、単位重量当たりの水素吸蔵量が多く、安価であり、かつ、水素の吸蔵放出が容易であるので、水素化物複合体の構成要素として好適である。
本発明において、金属アミド化合物の種類は、特に限定されるものではなく、種々の材料を用いることができる。
金属アミド化合物としては、具体的には、
(1) LiNH2、NaNH2、KNH2などのアルカリ金属アミド、
(2) Mg(NH2)2、Ca(NH2)2などのアルカリ土類金属アミド、
などがある。水素化物複合体には、これらのいずれか1種の金属アミド化合物が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていてもよい。
特に、Li又はMgを含む金属アミド化合物は、単位重量当たりの水素吸蔵量が多く、安価であり、かつ、水素の吸蔵放出が容易であるので、水素化物複合体の構成要素として好適である。
水素化物複合体を構成する金属水素化物及び金属アミド化合物に含まれる金属種は、1種であっても良く、あるいは、2種以上であってもよい。特に、2種以上の金属種が含まれていると、水素の吸蔵放出温度を低温化することができる。
この場合、金属水素化物及び金属アミド化合物のいずれか一方にのみ、2種以上の金属種が含まれていても良く、あるいは、金属水素化物に1種又は2種以上の金属種を含み、かつ、金属アミド化合物に金属水素化物とは異なる1種又は2種以上の金属種が含まれていてもよい。
金属水素化物と金属アミド化合物の配合比は、金属水素化物及び金属アミド化合物の組成に応じて最適な配合比を選択する。
次の(a)式及び(b1)〜(b3)式に、金属水素化物及び金属アミド化合物の水素放出反応の一例を示す。
LiNH2 + LiH → Li2NH+H2 ・・・(a)
3Mg(NH2)2+12LiH → 4Li3N+Mg32+12H2 ・・・(b1)
3Mg(NH2)2+ 8LiH → 4Li2NH+Mg32+8H2 ・・・(b2)
3Mg(NH2)2+ 6LiH → 3Li2Mg(NH2)2 +6H2 ・・・(b3)
(a)式に基づく総水素放出量は、6.5wt%である。また、(b1)〜(b3)式に基づく総水素放出量は、それぞれ、9.1、6.9、5.6wt%である。実際には、水素放出反応は、温度、雰囲気、及び圧力などの条件に依存するため、実測される水素放出量は、必ずしも化学式から予測される値に一致しない。
例えば、金属水素化物が水素化リチウム(LiH)であり、金属アミド化合物がリチウムアミド(LiNH2)である場合、(a)式に示すように、理想的にはリチウムアミドと水素化リチウムの混合比がモル比で1:1の時に最大の水素吸蔵放出量が得られる。しかしながら、実際に使用する際には、必ずしも化学量論組成である必要はなく、化学量論組成から多少ずれてもよい。
但し、水素化リチウムの混合比が少なくなりすぎると、過剰のリチウムアミドの分解で生じたアンモニアが系外に排出され、可逆的な水素の吸蔵放出が困難となる。従って、リチウムアミド1モルに対する水素化リチウムの混合比は、0.5モル以上が好ましい。
一方、水素化リチウムの混合比が多くなりすぎると、リチウムアミドと反応しない水素化リチウムが多量に残留し、低温における水素放出量が低下する。従って、水素化リチウムの混合比は、3モル以下が好ましい。
また、例えば、金属水素化物が水素化リチウム(LiH)であり、金属アミド化合物がマグネシウムアミド(Mg(NH2)2)である場合、(b1)〜(b3)式に示すように、理想的には、マグネシウムアミドと水素化リチウムの混合比がモル比で1:4の時に最大の水素吸蔵放出量が得られる。しかしながら、実際に使用する際には、化学量論組成である必要はなく、化学量論組成から多少ずれていてもよい。
但し、水素化リチウムの混合比が少なくなりすぎると、マグネシウムアミドが窒化物まで分解しないので、水素放出量が低下する。従って、水素化リチウムの混合比は、2モル以上が好ましい。
一方、水素化リチウムの混合比が多くなりすぎると、マグネシウムアミドと反応しない水素化リチウムが多量に残留し、低温における水素放出量が低下する。従って、水素化リチウムの混合比は、5モル以下が好ましい。
フラーレンとは、周知のように、60個以上の炭素原子が強く結合して球状あるいは、チューブ状に閉じたネットワーク構造を形成しているものをいう。フラーレンには、60個の炭素原子からなるサッカーボール状のフラーレン「C60」の他、炭素数が70、74、76、78…等のフラーレン(高次フラーレン)もある。本発明においては、フラーレンを構成する炭素数は特に限定されるものではなく、種々の炭素数を有するものを用いることができる。また、触媒として使用するフラーレンは、炭素数が同一である一種類のフラーレンであっても良く、あるいは、炭素数が異なる2種以上のフラーレンの混合物であってもよい。
フラーレンの添加量(=フラーレンのモル数×100/(金属水素化物のモル数+金属アミド化合物のモル数))は、0.01モル%以上1モル%以下が好ましい。フラーレンの添加量が0.005モル%未満であると、十分な触媒能が得られず、水素吸蔵放出温度の低温化が困難となる。一方、フラーレンの添加量が1モル%を超えると、単位重量当たりの水素放出量が低下する。
最適なフラーレン添加量は、金属水素化物及び金属アミド化合物の種類及び配合比によって異なる。
例えば、LiH−LiNH2混合体の場合、水素吸蔵放出反応を促進するためには、フラーレン添加量は、0.01モル%以上が好ましく、さらに好ましくは、0.02モル%以上である。一方、単位重量当たりの水素放出量を高く維持するためには、フラーレン添加量は、1モル%以下が好ましく、さらに好ましくは、0.6モル%以下、さらに好ましくは、0.5モル%以下である。
例えば、LiH−Mg(NH2)2混合体の場合、水素吸蔵放出反応を促進するためには、フラーレン添加量は、0.01モル%以上が好ましく、さらに好ましくは、0.10モル%以上、さらに好ましくは、0.15mol%以上である。一方、単位重量当たりの水素放出量を高く維持するためには、フラーレン添加量は、1モル%以下が好ましく、さらに好ましくは、さらに好ましくは、0.45モル%以下、さらに好ましくは、0.38モル%以下、さらに好ましくは、0.30モル%以下である。
次に、本発明に係る水素化物複合体の製造方法について説明する。本発明に係る水素化物複合体の製造方法は、配合工程と、粉砕混合工程とを備えている。
配合工程は、金属水素化物、金属アミド化合物及びフラーレンを所定の比率で配合する工程である。出発原料である金属水素化物及び金属アミド化合物の形態は、特に限定されるものではないが、通常は、粉末を用いる。
また、出発原料として粉末を用いる場合、その粒径は、特に限定されるものではない。一般に、出発原料として粒径の細かい粉末を用いるほど、複合化させる際の負荷を軽減することができる。一方、必要以上に細かい粉末を出発原料として用いると、粉末表面が酸化等により被毒されるおそれがある。従って、粉末の粒径は、作業性、コスト、被毒の有無等を考慮して、最適な粒径を選択するのが好ましい。
粉砕混合工程は、配合工程で得られた配合物を粉砕混合する工程である。
粉砕混合方法は、特に限定されるものではなく、出発原料に機械的応力を与え、粉砕しながら均一に混合する方法であればよい。粉砕混合方法としては、具体的には、遊星ボールミル、回転ミル、振動ミル等の粉砕機を用いて原料粉末を粉砕混合する方法が好適である。粉砕混合は、出発原料の酸化を防ぐために、非酸化雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下、水素雰囲気下など)で行うのが好ましい。
また、粉砕混合時間は、出発原料の均一かつ微細な混合物が得られるように、粉砕方法、出発原料の種類、形態等に応じて、最適な処理時間を選択する。一般に、処理時間が長くなるほど、出発原料が微細に粉砕され、粉砕された粉末が均一に混合した複合体が得られる。但し、必要以上の処理は、効果に差がなく、実益がない。例えば、遊星ボールミルを用いて混合粉砕する場合において、出発原料として粉末を用いる時には、処理時間は、1〜十数時間が好ましい。
このようにして得られた水素化物複合体は、粉末状態のまま使用しても良く、あるいは、これを適当な大きさに成形した圧粉体の状態で使用しても良い。さらに、粉末の表面を他の材料(例えば、銅などの熱伝導性の良い材料)からなる被膜で被覆し、これを成形して使用しても良い。この場合、被覆方法には、PVD法、CVD法などの物理的方法を用いるのが好ましい。
さらに、得られた水素化物複合体は、金属水素化物及び金属アミド化合物を出発原料に用いており、既に水素を貯蔵している状態にある。そのため、これを所定の温度に加熱すると、水素化物複合体から水素が放出され、水素貯蔵材料となる。一般に、加熱温度が高くなるほど、水素放出量は多くなる。
また、水素の全部または一部を放出した水素貯蔵材料と水素ガスとを所定の条件下で反応させると、再び水素が吸蔵され、最終的には金属水素化物及び金属アミド化合物の複合体からなる水素化物複合体に戻る。一般に、水素ガス圧が高くなるほど、及び/又は、水素との反応温度が高くなるほど、短時間で水素を吸蔵することができる。
次に本発明に係る水素化物複合体及び水素貯蔵材料の作用について説明する。
従来知られている無機錯体系水素化物は、水素放出に要する温度が高く、時間もかかる。そのため、車載用燃料電池などへの応用が困難と考えられており、水素放出反応の低温化、迅速化が望まれている。
一方、無機錯体系水素化物にTiCl3などの触媒を加えると、水素放出反応を低温化できることが知られている。しかしながら、TiCl3は、大気中で不安定である。また、TiCl3が無機錯体系水素化物と反応し、水素の吸蔵放出に伴う劣化の可能性もある。さらに、TiCl3は、ある種の無機錯体系水素化物に対して有効であるが、水素放出反応を低温化させることができる系は限られている。
これに対し、フラーレンは、無機錯体水素化物の水素吸蔵・放出反応の触媒となり、しかも、従来の触媒に比べて高い触媒能を有する。フラーレンに高い触媒機能がある理由の詳細は不明であるが、おそらく、
(1) フラーレン同士は、分子間力により弱く結合しているだけであるので、粉砕混合によって、フラーレンを無機錯体水素化物中に均一に分散させることができるため、
(2) フラーレンを均一に分散させることによって、加熱中における無機錯体混合物の結晶の格子欠損が保持され、反応活性な場が保持されるため、及び、
(3) 対称性が高く、安定で、また電子の授受により安定なイオンとして存在しうるというフラーレンの性質が以上の効果に寄与しているため、
と考えられる。
さらに、フラーレンは、化学的に安定であり、入手も比較的容易で、水素吸蔵・放出を繰り返しても劣化のおそれが少ない。そのため、無機錯体水素化物にフラーレンを触媒として添加すると、水素吸蔵量を損なうことなく、水素吸蔵・放出反応に要するエネルギーを低減すること(すなわち、水素吸蔵・放出反応を低温化させること)ができる。また、水素貯蔵材料を充填する容器などの材質や構造の制限を緩和することもできる。
(実施例1)
[1. 試料の作製]
以下の手順に従い、水素化物複合体を作製した。
(1) アルゴン雰囲気下において、金属アミド化合物、金属水素化物、及び触媒を量りとった。金属アミド化合物及び金属水素化物の混合比率は、以下の通りである。また、触媒には、フラーレンC60-70(MER Corp.製、Refined Mixed Fullerenes)、TiCl3、TiCl3−1/3AlCl3、TiF3、TiI4、マイクロNi、ナノNiを用いた。また、フラーレンC60-70の添加量は、0.05〜1.0mol%とし、その他の触媒の添加量は、0.8〜1.0mol%としたた。
(a) LiNH2:LiH=1:1
(b) Mg(NH2)2:LiH=3:12
(2) 上記原料を内容積80mLのクロム鋼製の遊星ボールミルに、直径9.5mmの鋼製ボールとともにバルブ付ミル容器に投入した。試料と鋼製ボールの質量比は、1:100とした。
(3) 試料と鋼製ボールを内蔵した遊星ボールミル容器内部を真空排気し、続いて0.9MPaの水素を導入した後、ミル容器を密封した。これを室温、190rpmの回転数で所定時間ミリング処理することにより、試料を調製した。
(4) ミリング後の試料は、アルゴン雰囲気下において取り出した。
[2. 試験方法]
得られた試料を、アルゴン雰囲気下で約0.1g精秤し、昇温脱離測定用試料とした。反応雰囲気は、85mL/minのアルゴン気流下であり、反応管として鈴木商館製のSUS316耐圧チューブを用いた。
測定試料は、アルゴン気流下、303K(摂氏30℃)で30分間前処理し、20K/minで523K(摂氏250℃)まで昇温後、6時間保持、その後923K(摂氏650℃)まで2K/minで昇温した。水素放出反応の速さは、試料が4.0wt%の水素を放出するのに要した時間を用いて比較した。但し、試料温度が525Kに到達した時間をゼロとし、水素放出量は、測定開始時(303K)からの積算を用いた。
[3. 結果(1):LiNH2/LiH水素化物複合体]
表1に、各種試料の4.0wt%の水素を放出するのに要した到達時間、及び理論水素放出量を示す。また、図1及び図2に、各種試料の水素放出曲線を示す。
表1、並びに、図1及び図2より、以下のことがわかる。
(1) 添加剤を加えないLiNH2/LiH混合材料は、525K到達後、約2時間(128min)で4wt%の水素を放出した。
(2) 1mol%のTiCl3−1/3AlCl3を加えた試料は、4wt%の水素を放出するのに約3時間要した。これは、TiCl3−1/3AlCl3を加えた場合、約3wt%までの水素放出は迅速に起こるものの、それ以降の反応の進行が遅いためである。また、添加剤自身の質量により、試料重量あたりの水素放出量が減少したことも一因と考えられる。
(3) 1mol%のTiCl3を加えた場合、反応は3wt%を超えた後も遅延せず、約1時間で4wt%の水素を放出した。
(4) 1mol%のTiF3を加えた場合、約1.5時間で4wt%の水素を放出した。
(5) 1mol%のTiI4を加えた場合、523K到達後6時間内に4wt%の放出は達成しなかった。これは、TiI4の大きな分子量のため、試料質量あたりの水素放出量が減少したことが主な原因である。
(6) 1mol%のZrCl4あるいはナノ−Niの添加は、脱水素反応に大きな寄与を及ぼさない。マイクロ−Niは、反応後期において水素の放出を遅延させた。
(7) 1mol%のフラーレンC60-70を用いた場合、C60-70の質量の大きさのために6時間内には4wt%の水素の放出は達成できなかった。しかしながら、加えるC60-70の量を減らすことにより、反応の迅速性が達成された。0.2mol%のC60-70の添加によって、1時間で4wt%の水素を放出した。また、0.05mol%のC60-70の添加は、理論水素放出量を損なうことなく、TiCl3と同時間内に4wt%の水素の放出を達成した。
Figure 2008013375
[4. 結果(2):Mg(NH2)2/LiH水素化物複合体]
表2に、各種試料の4.0wt%の水素を放出するのに要した到達時間、及び理論水素放出量を示す。また、図3に、各種試料の水素放出曲線を示す。
(1) Mg:Li=3:12混合物については、1mol%TiCl3あるいはナノ−TiNを添加剤として加えた場合、4.0wt%の水素放出に要する時間は、添加剤のない場合に比べて延長された。
(2) C60-70の添加によって、水素放出に要する時間は大きく変化しており、C60-70がこの混合材料に対して物理的あるいは化学的な作用を持つことを示している。
0.2mol%のC60-70を添加することにより、約30分で4wt%の水素放出を達成できた。これは、添加剤を加えない場合の約1/5の時間であり、最も迅速な水素放出能力を有する混合材料である。
Figure 2008013375
[5. 結果(3): C60-70添加量の比較]
LiNH2/LiH混合材料について4.0wt%の水素放出に要する時間(以下、単に「水素放出時間」という)を、C60-70の添加量に対して比較した。図5に、C60-70の添加量と4wt%の水素放出時間との関係を示す。C60-70を添加しない場合に比べて、0.05mol%のC60-70を加えることで、水素放出時間は、大幅に短縮された。0.20mol%を添加することにより、さらに水素放出時間は短縮された。一方、0.8mol%以上のC60-70を添加した場合、全水素放出量が減少するために、より長時間が必要となると考えられる。図5より、C60-70の添加量を0.6mol%以下とすると、水素放出時間は、無添加と同等以下となり、0.02〜0.5mol%以下とすると、水素放出時間は、約100分以下になることがわかる。
Mg(NH2)2/LiH混合材料(3:12)について、水素放出時間をC60-70の添加量に対して比較した。図6に、C60-70の添加量と水素放出時間との関係を示す。C60-70を添加しない場合に比べて、0.11mol%のC60-70を加えることで、水素放出時間は大幅に短縮され、0.21mol%の添加により、さらに所要時間は短縮された。0.5mol%以上のC60-70を添加した場合、全水素放出量が減少するために、より長時間が必要となることが予想される。図6より、C60-70の添加量を0.45mol%以下とすると、水素放出時間は、無添加と同等以下となり、0.10〜0.38mol%とすると、水素放出時間は約100分以下となり、0.15〜0.30mol%とすると、水素放出時間は、約50分以下となることがわかる。
以上、LiNH2/LiH水素化物複合体又はMg(NH2)2/LiH水素化物複合体へのフラーレンの添加効果をまとめると以下のようになる。
(1) LiNH2/LiH水素化物複合体に対し、0.2mol%のフラーレンの添加により、添加剤なしの材料に比べて半分以下の時間で4wt%の水素の放出を達成した。これは、現在まで最も効果の高かったTiCl3添加剤を上回る反応の促進効果である。また、0.05mol%のフラーレンの添加によって、TiCl3と同等の促進効果を持ちながら、添加剤なしの材料と同等の水素貯蔵量を持つ混合材料が得られた。
(2) Mg(NH2)2/LiH水素化物複合体において、Mg:Li=3:12混合物で4wt%の水素を放出するのに要する時間は、フラーレンの添加により大きく向上した。添加剤を加えない場合に比べ、フラーレンを0.1mol%加えることにより半分、0.2mol%加えることで約1/5の時間で4wt%の水素の放出が達成された。
(3) フラーレンは、空気、水分に対して安定であり取り扱いが容易であること、及び、炭素のみが組成に含まれるため今後安価な原材料の確保が可能であることから、錯体系水素貯蔵材料の水素化/脱水素化反応における有用な添加剤として期待される。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る水素化物複合体及水素貯蔵材料は、燃料電池システム用の水素貯蔵手段、超高純度水素製造装置、ケミカル式ヒートポンプ、アクチュエータ、金属−水素蓄電池用の水素貯蔵体等に用いられる水素貯蔵材料及びその製造方法として使用することができる。
各種添加剤を含むLiNH2/LiH水素化物複合体の523Kにおける水素放出曲線である。 各種添加剤を含むLiNH2/LiH水素化物複合体の523Kにおける水素放出曲線である。 各種添加剤を含むMg(NH2)2/LiH水素化物複合体(Mg:Li=3:12)の523Kにおける水素放出曲線である。 LiNH2/LiH水素化物複合体へのC60-70の添加量と、4wt%の水素放出に要する時間との関係を示す図である。 Mg(NH2)2/LiH水素化物複合体(Mg:Li=3:12)へのC60-70の添加量と、4wt%の水素放出に要する時間との関係を示す図である。

Claims (9)

  1. 金属水素化物と、金属アミド化合物と、フラーレンとを粉砕混合することにより得られる水素化物複合体。
  2. 前記金属水素化物及び前記金属アミド化合物に含まれる金属種が二種以上である請求項1に記載の水素化物複合体。
  3. 前記金属種は、リチウム及びマグネシウムからなる群から選ばれるいずれか1以上である請求項1又は2に記載の水素化物複合体。
  4. 前記水素化物は水素化リチウムであり、前記金属アミド化合物はリチウムアミドである請求項1に記載の水素化物複合体。
  5. 前記リチウムアミド1モルに対する前記水素化リチウムの混合比は0.5モル以上3モル以下である請求項4に記載の水素化物複合体。
  6. 前記金属水素化物は水素化リチウムであり、前記金属アミド化合物はマグネシウムアミドである請求項1に記載の水素化物複合体。
  7. 前記マグネシウムアミド1モルに対する前記水素化リチウムの混合比は2モル以上5モル以下である請求項6に記載の水素化物複合体。
  8. 前記フラーレンの添加量は、0.01モル%以上1モル%以下である請求項1から7までのいずれかに記載の水素化物複合体。
  9. 請求項1から8までのいずれかに記載の水素化物複合体に含まれる水素の全部又は一部を放出させることにより得られる水素貯蔵材料。
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