JP2003147471A - マグネシウム系水素吸蔵合金 - Google Patents

マグネシウム系水素吸蔵合金

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JP2003147471A
JP2003147471A JP2001338123A JP2001338123A JP2003147471A JP 2003147471 A JP2003147471 A JP 2003147471A JP 2001338123 A JP2001338123 A JP 2001338123A JP 2001338123 A JP2001338123 A JP 2001338123A JP 2003147471 A JP2003147471 A JP 2003147471A
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Masakazu Aoki
正和 青木
Kazuhiko Ito
一彦 伊東
Shinichi Towata
真一 砥綿
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水素吸蔵量が大きく、かつ水素の吸蔵・放出
速度が速い水素吸蔵合金を提供する。 【解決手段】 水素吸蔵合金を、組成式Mg1-(x+y)
xCay(0<x<0.3、0<y<0.1)で表さ
れ、観察された断面組織において、Mg晶の短軸径およ
びMg2Ni晶の短軸径がそれぞれ5μm以下であり、
短軸径が1μmを超えるMg晶の面積率および短軸径が
1μmを超えるMg2Ni晶の面積率がそれぞれ30%
以下となるマグネシウム系水素吸蔵合金とする。Mg晶
およびMg2Ni晶が微細化されているため、結晶界面
が増加し、水素の拡散速度が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、可逆的に水素を吸
蔵・放出することのできる水素吸蔵合金に関し、詳しく
は、水素吸蔵量の大きいマグネシウム系水素吸蔵合金に
関する。 【0002】 【従来の技術】近年、二酸化炭素の排出による地球の温
暖化等の環境問題や、石油資源の枯渇等のエネルギー問
題から、クリーンな代替エネルギーとして水素エネルギ
ーが注目されている。水素エネルギーの実用化にむけ
て、水素を安全に貯蔵・輸送する技術の開発が重要とな
る。なかでも、水素吸蔵合金は、爆発性のある水素を金
属水素化物という安全な固体の形で貯蔵できることか
ら、輸送可能な新しい貯蔵媒体として期待されている。 【0003】例えば、マグネシウムは、軽量で、水素の
吸蔵量が大きいことから水素貯蔵材料の一つとして注目
されている。しかし、マグネシウムは、マグネシウム水
素化物中における水素拡散の活性化エネルギーが比較的
大きいため、水素の吸蔵・放出に高温を必要とし、水素
の吸蔵・放出速度も極めて遅く、実用には適さないとい
う問題を有している。このため、水素の吸蔵に触媒的な
役割を果たすニッケルや銅等を添加してマグネシウム合
金とする等、その特性の向上を図る試みが進められてい
る。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これま
でに開発されたマグネシウム合金の水素の吸蔵・放出速
度は、実用にはいまだ充分とはいえず、上述した問題の
解決には至っていない。 【0005】本発明は、このような実状に鑑みてなされ
たものであり、マグネシウムの利点を生かし、水素吸蔵
量が大きく、かつ水素の吸蔵・放出速度が速い水素吸蔵
合金を提供することを課題とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明のマグネシウム系
水素吸蔵合金は、組成式Mg1-(x+y)NixCay(0<
x<0.3、0<y<0.1)で表され、観察された断
面組織において、Mg晶の短軸径およびMg2Ni晶の
短軸径がそれぞれ5μm以下であり、短軸径が1μmを
超えるMg晶の面積率および短軸径が1μmを超えるM
2Ni晶の面積率がそれぞれ30%以下であることを
特徴とする。 【0007】本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、
マグネシウムにニッケルとカルシウムとを添加して合金
化したものである。Niは主に水素分子を解離させる触
媒機能を果たし、Caは合金組織の微細化や、合金粉の
焼結を抑制する役割を果たすと考えられる。そして、合
金組織におけるMg晶およびMg2Ni晶が微細化され
ている点に特徴を有する。すなわち、合金組織は、Mg
相、Mg2Ni相、Mg2Ca相、Ca−Ni相等の種々
の相から構成され、後に写真を示すが、その断面組織に
おけるMg晶およびMg2Ni晶の短軸径はそれぞれ5
μm以下と小さく、さらに短軸径が1μmを超えるMg
晶およびMg2Ni晶の割合が小さくなっている。つま
り、晶出したMg晶やMg2Ni晶が、薄片状等に微細
化された合金組織となっている。これらMg晶およびM
2Ni晶は、水素との反応速度が遅いと考えられる。
また、合金内に拡散した水素は各相の界面に沿って移動
すると考えられる。したがって、上記Mg晶等を微細化
することによって、界面を増加させ、水素の拡散速度を
向上させることができ、水素をMg晶等に侵入し易くす
ることができる。また、上記Mg晶等が微細化している
ため、水素の吸蔵・放出反応に寄与する表面積が大きく
なり、表面に存在するMg2Ni、Ca−Ni等による
水素解離作用も効果的に作用し、水素の吸蔵・放出反応
が促進されると考えられる。このように、本発明のマグ
ネシウム系水素吸蔵合金は、マグネシウムが有する優れ
た特性を生かしつつ、水素吸蔵・放出速度の大きい合金
となる。 【0008】また、通常、水素吸蔵合金を使用する前に
は、水素を吸蔵し易い温度で高圧水素下で保持する等の
いわゆる活性化処理が行われる。そして、この活性化処
理の条件や回数等は、水素吸蔵合金により異なるもので
ある。例えば、マグネシウムの場合では、温度350〜
400℃、水素圧力5MPa程度の条件下で保持し、そ
の後真空脱気するという操作を、通常10回程度繰り返
して活性化処理される。後の実施例で明らかになったこ
とであるが、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、
この活性化処理を容易に行うことができる合金となる。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明のマグネシウム系水
素吸蔵合金について詳細に説明する。なお、説明する実
施形態は一実施形態にすぎず、本発明のマグネシウム系
水素吸蔵合金が下記の実施形態に限定されるものではな
い。下記実施形態を始めとして、当業者が行い得る変
更、改良等を施した種々の形態にて実施することができ
る。 【0010】本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、
組成式Mg1-(x+y)NixCay(0<x<0.3、0<
y<0.1)で表されるものである。上述したように、
Niは主に水素分子を解離させる触媒機能を果たすもの
であり、合金中のNiの含有割合、つまり組成式におけ
るxの値の範囲は0<x<0.3とする。Niの含有割
合が0.3以上の場合には、上記触媒作用は大きくなる
が、その分だけ主構成元素であるMgの割合が低下する
ため、合金の水素吸蔵量が減少するからである。水素吸
蔵量を考慮した場合には、Niの含有割合を0.1以
下、すなわち、xの値の範囲をx≦0.1とすることが
望ましい。なお、Niの触媒機能を効果的に発揮させる
観点からは、Niの含有割合を0.05以上、すなわ
ち、xの値の範囲を0.05≦xとすることが望まし
い。また、上述したように、Caは合金組織の微細化
や、合金粉の焼結を抑制する役割を果たすものであり、
合金中のCaの含有割合、つまり組成式におけるyの値
の範囲は0<y<0.1とする。Caはその重量が大き
いため、Caの含有割合が0.1以上の場合には、合金
の単位重量当たりの水素吸蔵量が減少するからである。
単位重量当たりの水素吸蔵量を考慮した場合には、Ca
の含有割合を0.05以下、すなわち、yの値の範囲を
y≦0.05とすることが望ましい。なお、Caの添加
効果を充分に発揮させるという観点からは、Caの含有
割合を0.02以上、すなわち、yの値の範囲を0.0
2≦yとすることが望ましい。 【0011】また、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合
金は、観察された断面組織において、Mg晶の短軸径お
よびMg2Ni晶の短軸径がそれぞれ5μm以下であ
り、短軸径が1μmを超えるMg晶の面積率および短軸
径が1μmを超えるMg2Ni晶の面積率がそれぞれ3
0%以下である。ここで、合金の断面組織は、通常行わ
れている方法で観察すればよく、例えば、光学顕微鏡、
走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察すればよい。
本明細書では、SEM観察による反射電子像で合金の断
面組織を特定している。合金の断面組織においてMg晶
およびMg2Ni晶の短軸径は5μm以下とする。短軸
径とは、上記各結晶をそれに接する2本の平行線で挟ん
だ場合の最短長さを意味する。後に写真で示すように、
合金の断面組織において、例えば、結晶の断面形状が円
形に近い場合には、短軸形は円の直径に近くなる。ま
た、例えば、結晶の断面形状が針状の場合には、短軸形
はその幅を示すものとなる。つまり、短軸径が5μmを
超えると、結晶が大きくなるため、各結晶界面が減少し
て水素の拡散速度が遅くなり、水素の吸蔵・放出速度を
向上させることが困難となる。より水素の吸蔵・放出速
度の向上を図るためには、1μm以下とすることが望ま
しい。 【0012】また、短軸径が1μmを超えるMg晶の面
積率および短軸径が1μmを超えるMg2Ni晶の面積
率はそれぞれ30%以下とする。つまり、合金の断面組
織を観察した場合において、短軸径が1μmを超える比
較的大きなMg晶の占有面積が、その断面全体の面積の
30%以下であり、かつ、短軸径が1μmを超える比較
的大きなMg2Ni晶の占有面積が、その断面全体の面
積の30%以下であることが必要となる。なお、合金組
織において、短軸径が1μmを超える上記結晶が晶出し
ない場合もあり得る。本発明の水素吸蔵合金は、短軸径
が1μmを超える上記各結晶が存在しない態様をも含む
ものである。つまり、短軸径が1μmを超えるMg晶
や、短軸径が1μmを超えるMg2Ni晶が存在した場
合に、それらの面積率がそれぞれ30%以下であるとい
う意味である。 【0013】短軸径が1μmを超えるMg晶の面積率が
30%を超えると、大きな結晶の割合が大きくなるた
め、水素の拡散速度が遅くなり、水素の吸蔵・放出速度
を向上させることが困難となる。特に、10%以下とす
ることが望ましい。短軸径が1μmを超えるMg2Ni
晶の面積率が30%を超えると、大きな結晶の割合が大
きくなるため、上記同様に、水素の吸蔵・放出速度を向
上させることが困難となる。なお、本面積率も10%以
下とすることが望ましい。なお、各結晶界面を増加さ
せ、より水素の拡散速度を向上させるという観点から、
上記両結晶の面積率の合計を15%以下とすることがよ
り望ましい。 【0014】本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金の製
造方法は、特に限定されるものではなく、通常の合金の
製造方法、すわわち、原料となる各金属を目的の組成と
なるように混合、溶解した後、凝固させるというプロセ
スに従えばよい。合金組織は、例えば、凝固時の冷却速
度や、凝固後の熱処理等によりコントロールすることが
できる。また、合金の組成が共晶組成に近い場合は、M
gおよびMg2Niの初晶の晶出をある程度抑制するこ
とができる。特に、Mg晶およびMg2Ni晶を微細化
するという観点から、凝固時の冷却速度を大きくする、
つまり急冷することが望ましい。より具体的には、凝固
時の冷却速度を102〜105K/sとすることが望まし
い。このような製造方法として、鋳造法において急冷す
る方法の他、例えば、ロール急冷法、ガスアトマイズ法
等の急冷凝固法が挙げられる。 【0015】 【実施例】上記実施形態に基づいて、本発明のマグネシ
ウム系水素吸蔵合金を種々製造した。そして、各水素吸
蔵合金について水素を吸蔵・放出させ、その吸蔵量と放
出量とを測定した。以下、製造したマグネシウム系水素
吸蔵合金および水素吸蔵量および放出量の評価について
説明する。 【0016】(1)第1シリーズのマグネシウム系水素
吸蔵合金 (a)水素吸蔵合金の製造 組成式Mg0.85Ni0.1Ca0.05で表される合金(以下
#11の合金と示す)と組成式Mg0.9Ni0.02Ca
0.08で表される合金(以下#12の合金と示す)との2
種類の水素吸蔵合金を鋳造により製造した。まず、M
g、Ni、Caを上記それぞれの合金組成となるように
混合し、加熱炉にて溶解した後、厚さ2mmの銅金型に
流し込み急冷することにより板状のインゴットに鋳造し
た。なお、急冷は冷却速度を約102K/sとして行っ
た。得られた板状の#11、#12の各合金について粉
末法によるX線回折分析を行った。そのX線回折スペク
トルから、#11の合金には、Mg相、Mg2Ni相、
Mg2Ca相、CaNi5相が、#12の合金には、Mg
相、Mg2Ni相、Mg2Ca相が生成していることが確
認された。また、#11の合金の断面組織のSEM観察
による反射電子像の一例を図1に示す。図1中、黒色で
表されている結晶がMg晶、白色で表されている結晶が
Mg2Ni晶である。図1より、#11の合金における
断面組織には、短軸径が30〜150nmの針状のMg
晶、および短軸径が30〜150nmの針状のMg2
i晶が観察され、両者ともに微細化されていることが確
認できる。そして、短軸径が1μmを超えるMg晶の面
積率は5%、短軸径が1μmを超えるMg2Ni晶の面
積率は10%であった。 【0017】また同様に、#12の合金の断面組織の反
射電子像の一例を図2に示す。図2中、黒色で表されて
いる結晶がMg晶、白色で表されている結晶がMg2
i晶である。図2より、#12の合金における断面組織
には、短軸径が0.05〜3μmのMg晶、および短軸
径が0.05〜2μmのMg2Ni晶が観察され、両者
ともに微細化されていることが確認できる。そして、短
軸径が1μmを超えるMg晶の面積率は30%、短軸径
が1μmを超えるMg2Ni晶の面積率は10%であっ
た。以上より、#11および#12の合金は、本発明の
マグネシウム系水素吸蔵合金であることが確認できた。 【0018】(b)水素吸蔵量および放出量の測定 #11および#12の両合金を活性化処理した後、水素
加圧チャンバーに入れ、温度300℃、約1.3MPa
の水素加圧下でそれぞれ水素を吸蔵させた。活性化処理
は、300℃、水素圧5MPa下で水素を吸蔵させた
後、真空脱気するという処理を4回繰り返すことにより
行った。また、吸蔵した水素量は、圧力−組成等温線
(PCT線)を求めるジーベルツ法により測定した(J
IS H 7201−1991)。図3に、#11および
#12の各合金の水素吸蔵量の経時変化を示す。なお、
参考例として、同様の条件下でのマグネシウムの水素吸
蔵量の経時変化を図3に併せて示す。図3から明らかな
ように、水素の充填開始から600秒(10分)経過後
の水素吸蔵量は、#11の合金では5.9wt%、#1
2の合金では4.2wt%となり、2.5wt%である
Mgを大幅に上回る値となった。そして、#11の合金
は、水素の充填開始から約100秒で5.5wt%の水
素を吸蔵し、#12の合金は約100秒で3.5wt%
の水素を吸蔵していることから、上記両合金は水素吸蔵
速度が極めて速いことがわかる。 【0019】次に、上記各#11、#12の合金および
Mgに最大量の水素を吸蔵させた後、300℃の温度下
で水素の放出量を測定した。図4に、#11、#12の
合金およびマグネシウムの水素放出量の経時変化を示
す。図4から明らかなように、水素の充填開始から12
00秒(20分)経過後の水素放出量は、Mgが0.5
wt%に過ぎなかったのに対し、#11の合金では5.
7wt%、#12の合金では5.0wt%と大きくなっ
た。そして、#11、#12の合金は、ともに水素放出
速度が速いことがわかる。 【0020】以上より、本発明のマグネシウム系水素吸
蔵合金は、水素吸蔵量が大きく、水素吸蔵・放出速度が
速い合金であることが確認できた。なお、#11、#1
2の両合金は、マグネシウムと比較して、その活性化の
ための温度が低く、回数も4回程度で充分であった。つ
まり、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金は、活性化
処理を容易に行うことのできる水素吸蔵合金であること
が確認できた。 【0021】(2)第2シリーズのマグネシウム系水素
吸蔵合金 (a)水素吸蔵合金の製造 組成式Mg0.67Ni0.23Ca0.1で表される合金(以下
#21の合金と示す)と組成式Mg0.96Ni0.02Ca
0.02で表される合金(以下#22の合金と示す)との2
種類の水素吸蔵合金を、上記第1シリーズの合金と同様
の方法で製造した。得られた板状の#21、#22の各
合金について粉末法によるX線回折分析を行い、そのX
線回折スペクトルから、#21の合金には、Mg相、M
2Ni相、Mg2Ca相、MgNi2相、CaNi5
が、また、#22の合金には、Mg相、Mg2Ni相、
Mg2Ca相がそれぞれ生成していることが確認され
た。さらに、#21の合金における断面組織のSEM観
察による反射電子像では、短軸径が0.05〜0.5μ
mのMg晶、および短軸径が0.05〜35μmのMg
2Ni晶が観察された。そして、短軸径が1μmを超え
るMg晶は観察されず面積率は0%であったが、短軸径
が1μmを超えるMg2Ni晶の面積率は60%であっ
た。また、同様に、#22の合金における断面組織のS
EM観察による反射電子像では、短軸径が0.05〜3
0μmのMg晶、および短軸径が0.05〜0.2μm
のMg2Ni晶が観察された。そして、短軸径が1μm
を超えるMg晶の面積率は50%であった。なお、短軸
径が1μmを超えるMg2Ni晶は観察されなかった。
つまり、#21、#22の合金は、その断面組織におけ
るMg晶やMg2Ni晶が大きく、充分に微細化されて
いないことがわかる。 【0022】(b)水素吸蔵量および放出量の測定 #21および#22の両合金を活性化処理した後、水素
加圧チャンバーに入れ、温度300℃、約1.3MPa
の水素加圧下でそれぞれ水素を吸蔵させた。活性化処理
は、#21の合金では、300℃、水素圧5MPa下で
水素を吸蔵させた後、真空脱気するという処理を4回繰
り返すことにより、また、#22の合金では、300
℃、水素圧5MPa下で水素を吸蔵させた後、真空脱気
するという処理を8回繰り返すことにより行った。な
お、吸蔵した水素量は、第1シリーズの合金における測
定方法と同様の方法で測定した。その結果、水素の充填
開始から600秒(10分)経過後の水素吸蔵量は、#
21、#22の合金ともに3.8wt%となった。ま
た、上記各#21、#22の合金に最大量の水素を吸蔵
させた後、300℃の温度下で水素の放出量を測定し
た。その結果、水素の充填開始から1200秒(20
分)経過後の水素放出量は、#21の合金では4.0w
t%、#22の合金では5.8wt%となった。 【0023】以上より、本第2シリーズの水素吸蔵合金
は、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金である第1シ
リーズの水素吸蔵合金と比較して、水素吸蔵量が小さ
く、また水素吸蔵・放出速度もそれほど向上していない
ことがわかる。 【0024】(3)第3シリーズのマグネシウム系水素
吸蔵合金 (a)水素吸蔵合金の製造 組成式Mg0.82Ni0.1Ca0.08で表される合金(以下
#31の合金と示す)を単ロール急冷法により製造し
た。まず、Mg、Ni、Caを上記合金組成となるよう
に混合し、その混合物を一端がノズル状に加工された石
英ガラス管に入れ、単ロール液体急冷装置に取り付け
た。真空脱気した後、アルゴン雰囲気にて上記混合物を
高周波溶解し、3000rpmの回転速度で回転する単
ロールにノズルから吹き付けることにより、フレーク状
の合金を製造した。なお、冷却速度は約105K/sと
した。得られた#31の合金について粉末法によるX線
回折分析を行い、そのX線回折スペクトルから、#31
の合金には、Mg相、Mg2Ni相、Mg2Ca相、Ca
Ni5相が生成していることが確認された。さらに、#
31の合金における断面組織のSEM観察による反射電
子像では、短軸径が50nm以下のMg晶、および短軸
径が200nm以下のMg2Ni晶が観察された。そし
て、短軸径が1μmを超えるMg晶およびMg2Ni晶
は、ともに観察されず両面積率は0%であり、両者はと
もに微細化されていることが確認できる。すなわち、#
31の合金は、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金で
あることが確認できた。 【0025】(b)水素吸蔵量および放出量の測定 #31の合金に、上記第1シリーズの合金について行っ
たのと同様にして、温度300℃、約1.3MPaの水
素加圧下で水素を吸蔵させた。その結果、水素の充填開
始から600秒(10分)経過後の水素吸蔵量は5.5
wt%となり、2.5wt%であるMgの2倍以上の吸
蔵量となった。次に、#31の合金に最大量の水素を吸
蔵させた後、300℃の温度下で水素の放出量を測定し
た。その結果、水素の充填開始から1200秒(20
分)経過後の水素放出量は、上記Mgが0.5wt%に
過ぎなかったのに対し、5.5wt%と大きくなった。 【0026】以上より、本発明のマグネシウム系水素吸
蔵合金は、水素吸蔵量が大きく、水素吸蔵・放出速度が
速い合金であることが確認できた。なお、#31の合金
も、上記第1シリーズの合金と同様の活性化処理で充分
であった。よって、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合
金は、活性化処理を容易に行うことのできる水素吸蔵合
金であることが確認できた。 【0027】(4)第4シリーズのマグネシウム系水素
吸蔵合金 (a)水素吸蔵合金の製造 組成式Mg0.88Ni0.08Ca0.04で表される水素吸蔵合
金(以下#41の合金と示す)をガスアトマイズ法によ
り製造した。まず、Mg、Ni、Caを上記合金組成と
なるように混合し、その混合物をガスアトマイズ用坩堝
に入れ高周波溶解した。その後、溶湯出口部に取り付け
られたノズルから高圧アルゴンガスを噴射することによ
り、粉末状の合金を製造した。なお、冷却速度は約10
2K/sとした。得られた#41の合金について粉末法
によるX線回折分析を行い、そのX線回折スペクトルか
ら、#41の合金には、Mg相、Mg2Ni相、Mg2
a相が生成していることが確認された。さらに、#41
の合金における断面組織のSEM観察による反射電子像
では、短軸径が0.03〜3μmのMg晶、および短軸
径が0.03〜0.1μmのMg2Ni晶が観察され、
両者はともに微細化されていることが確認できる。な
お、短軸径が1μmを超えるMg晶の面積率は2%であ
った。すなわち、#41の合金は、本発明のマグネシウ
ム系水素吸蔵合金であることが確認できた。 【0028】(b)水素吸蔵量および放出量の測定 #41の合金に、上記第1シリーズの合金について行っ
たのと同様にして、温度300℃、約1.3MPaの水
素加圧下で水素を吸蔵させた。その結果、水素の充填開
始から600秒(10分)経過後の水素吸蔵量は6.1
wt%となり、上記マグネシウムの値を大幅に上回るも
のとなった。次に、#41の合金に最大量の水素を吸蔵
させた後、300℃の温度下で水素の放出量を測定し
た。その結果、水素の充填開始から1200秒(20
分)経過後の水素放出量は、上記Mgが0.5wt%に
過ぎなかったのに対し、6.0wt%と大きくなった。 【0029】以上より、本発明のマグネシウム系水素吸
蔵合金は、水素吸蔵量が大きく、水素吸蔵・放出速度が
速い合金であることが確認できた。なお、#41の合金
も、上記第1シリーズの合金と同様の活性化処理で充分
であった。よって、本発明のマグネシウム系水素吸蔵合
金は、活性化処理を容易に行うことのできる水素吸蔵合
金であることが確認できた。 【0030】 【発明の効果】本発明のマグネシウム系水素吸蔵合金
は、マグネシウムとニッケルとカルシウムとを所定の組
成で合金化し、その合金組織におけるMg晶およびMg
2Ni晶が微細化されたものである。Mg晶およびMg2
Ni晶が微細化されているため、結晶界面が増加し、水
素の拡散速度が向上する。また、水素の吸蔵・放出反応
に寄与する表面積も大きくなり、水素の吸蔵・放出反応
が促進される。したがって、本発明のマグネシウム系水
素吸蔵合金は、水素吸蔵量が大きく、水素吸蔵・放出速
度の速い合金となる。さらに、活性化処理を容易に行う
ことができる合金となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 #11の合金の断面組織のSEM観察による
反射電子像の一例を示す。 【図2】 #12の合金の断面組織のSEM観察による
反射電子像の一例を示す。 【図3】 #11、#12の各合金およびマグネシウム
の水素吸蔵量の経時変化を示す(300℃、水素圧1.
3MPa)。 【図4】 #11、#12の合金およびマグネシウムの
水素放出量の経時変化を示す(300℃)。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】 【提出日】平成13年11月6日(2001.11.
6) 【手続補正1】 【補正対象書類名】図面 【補正対象項目名】図1 【補正方法】変更 【補正内容】 【図1】【手続補正2】 【補正対象書類名】図面 【補正対象項目名】図2 【補正方法】変更 【補正内容】 【図2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 砥綿 真一 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 組成式Mg1-(x+y)NixCay(0<x
    <0.3、0<y<0.1)で表され、観察された断面
    組織において、Mg晶の短軸径およびMg2Ni晶の短
    軸径がそれぞれ5μm以下であり、短軸径が1μmを超
    えるMg晶の面積率および短軸径が1μmを超えるMg
    2Ni晶の面積率がそれぞれ30%以下であるマグネシ
    ウム系水素吸蔵合金。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008523240A (ja) * 2004-12-07 2008-07-03 ザ ユニバーシティー オブ クイーンズランド 水素吸蔵のためのマグネシウム合金
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