JP2002180174A - Mg系高吸蔵量水素吸蔵合金 - Google Patents

Mg系高吸蔵量水素吸蔵合金

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Abstract

(57)【要約】 【課題】多量の水素を短時間で吸蔵・放出することがで
きる高吸蔵量・高反応性の水素吸蔵合金を提案するこ
と。 【解決手段】一般式;Mg1-x-y Nixy 0.01≦x≦0.32 0.01≦y≦0.32 0.02≦x+y≦0.33 M:Li、Al、Si、Ca、Ti、YおよびZrから選ばれる1種以
上の元素で表される、水素吸蔵量が3.6mass%超であるM
g系高吸蔵量水素吸蔵合金。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来の水素吸蔵合
金に比べると、水素吸蔵量が著しく多くかつ水素を短時
間に吸蔵放出可能な高反応性で高吸蔵量のMg系高吸蔵量
水素吸蔵合金に関する提案である。
【0002】
【従来の技術】水素は高圧ガスボンベに充填すると、そ
の体積は約150分の1に縮小でき、さらに液化すると約8
00分の1まで縮小することができる物質である。水素吸
蔵合金は、その合金内に気体状の水素を吸蔵(吸収)して
固体状態にして蓄えられるので、見かけ上はこの水素の
体積を約1000分の1にまで縮小することができ、取り扱
いも容易である。このことから、水素の分散輸送・貯蔵
を水素吸蔵合金を用いて行うことには実用上のメリット
が大きいと言える。 また、この水素吸蔵合金を用いた水素の貯蔵は、液体水
素や高圧の水素ガスを取り扱う必要がないので、安全面
においても優れた特性を有している。さらに、該合金中
に貯蔵した水素は温度や水素圧力の調整のみで、水素を
繰り返して自由に出し入れすることができるため、水素
吸蔵合金を用いた水素の貯蔵は、低コストの設備で運用
できるという特性もある。このような理由から、これか
らは、水素の分散輸送・貯蔵を実現するための高性能な
水素吸蔵合金の開発が、焦眉の急務とされている。
【0003】ところで、これまでに提案されている水素
吸蔵合金の基本型としては、LaNi5等のAB5型、ZrMn2
のAB2型、TiFe等のAB型、Mg2Ni等のA2B型の二元系金属
間化合物が知られている。これらの水素吸蔵合金の水素
吸蔵量は、LaNi5の場合で、合金の質量に対して約1.4ma
ss%、ZrMn2の場合で約1.7mass%、TiFeの場合で約1.8m
ass%と少なく、しかも希土類元素あるいはZr等の比較
的重い元素を主体としているため、質量当たりの水素吸
蔵量を増加させることも困難である。また、V等の高価
な元素を使用するため、コスト的にもメリットは少な
い。一方、軽量、安価な元素であるMgを主体とした水素
吸蔵合金は、非常に大きい水素吸蔵量を持っていること
が知られている。その代表としてMg2Niが挙げられる
が、その水素吸蔵量は3.6mass%である。しかし、Mg系
水素吸蔵合金は、水素の吸蔵・放出のための水素解離温
度として300℃以上もの高温が必要になる。また、AB5
合金が室温で数分以内に水素を吸蔵できるのに対して、
Mg2Niでは水素の吸蔵に数時間も必要であり、反応速度
の面で実用上の大きな障害になっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、軽量
で水素吸蔵量の大きなMgを主原料として使用するMg系水
素吸蔵合金において、多量の水素を短時間で吸蔵・放出
することができる高吸蔵量・高反応性の水素吸蔵合金を
提案することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは、従来技術が
抱える上述した問題を解決するために、Mg系、とくにMg
2Ni系水素吸蔵合金について鋭意研究を重ねた結果、Mg
に対しNiの他さらに第3元素としてM成分を好適な割合
いで複合化(合金化)すれば、水素吸蔵・放出反応が著
しく改善できることを見いだし、本発明を開発するに到
った。
【0006】すなわち発明は、 一般式;Mg1-x-y Nixy 0.01≦x≦0.32 0.01≦y≦0.32 0.02≦x+y≦0.33 M:Li、Al、Si、Ca、Ti、YおよびZrから選ばれる1種以
上の元素で表される、水素吸蔵量が3.6mass%超である
水素吸蔵合金である。
【0007】本発明はまた、 一般式;Mg1-x-y Nixy 0.01≦x≦0.21 0.01≦y≦0.21 0.02≦x+y≦0.22 M:Li、Al、Si、Ca、Ti、YおよびZrから選ばれる1種以
上の元素で表される、水素吸蔵量が5.0mass%以上であ
る水素吸蔵合金である。
【0008】なお、本発明は、試料2gを、約3MPaの
水素中、300℃に保持し、真空排気による活性化処理を
5回繰返したときの、10分経過後の水素吸蔵量で表され
る反応速度が3mass%/10min以上、より好ましくは5m
ass%/10min以上であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】Mg系水素吸蔵合金は、水素吸蔵量
が多く、応用面での期待が大きい合金の1つである。し
かし、この合金系のものは、水素の吸蔵・放出速度(反
応性)が、他のAB5系の合金などに比べて遅いという欠
点がある。とくに、Mgを66.7at.%以上含むMg2Ni系2元
合金は、Mg相とMg2Ni相との共晶組織をもつものである
が、このMg相自体は水素ガス分子の解離に対する触媒作
用に乏しいことと、水素化時に表面に発生したMg水素化
物中での水素の拡散が遅いため、水素化物の内部への浸
透性が悪く、反応速度が遅い点に解決課題を残してい
た。
【0010】そこで、本発明では、Mg2Ni系合金に、第3
元素を加えて擬似3元合金とすることにより、Mg系合金
の大きな水素吸蔵特性を生かしたまま、水素吸蔵・放出
速度(反応性)を改善することにした合金を提案する。
このような考え方の下に開発したのが、 一般式;Mg1-x-y Nixy 0.01≦x≦0.32 0.01≦y≦0.32 0.02≦x+y≦0.33 Mは、Li、Al、Si、Ca、Ti、YおよびZrから選ばれる一
種以上の元素であるで表される、水素吸蔵量が3.6mass
%超である水素吸蔵合金である。
【0011】一般に、Mg相とMg2Ni相の2相からなる共
晶型の金属組織をもつ、Mg-Ni系2元合金は、この合金
に第3成分(M元素)を添加すると、これらの成分がMg
相に固溶してその一部はMgとの化合物を形成する。この
ようにM元素を固溶したMg相は、水素を最初に印加した
際に、Mgの水素化物を形成して、一方すでに固溶してい
たM元素はM元素の水素化物あるいは、M元素としてMg相
からは分離してしまい(この一連の反応を不均化反応と
いう)、そして不均化反応により生じたM元素の水素化
物あるいはM元素は、Mg組織を分断、微細化してMg相中
の水素の拡散経路になると共に、水素ガス分子を単原子
に解離させる触媒作用を果す。そして、MgとM元素の化
合物もまた、Mgの水素化物とM元素の水素化物に不均化
して同様の作用を発揮する。このようにして、本発明に
係るMg2Ni系水素吸蔵合金においては、Niの触媒効果と
微細なM元素の水素化物もしくはM元素の触媒効果との相
乗作用、ならびにMg組織の分断、微細化による水素の拡
散経路の多量形成作用とが相俟って、反応速度の著しい
改善が達成されるのである。
【0012】本発明のMg2Ni系水素吸蔵合金において
は、Mg系水素吸蔵合金の高水素吸蔵量を生かすという観
点から、Mgの含有量は原子組成比(以下、単に「組成
比」という)で0.67以上であることが好ましい。そし
て、水素吸蔵量が、Mg2Ni系合金の水素吸蔵量:3.6mass
%を超えるようにするには、Niを0.01〜0.32、M元素を
0.01〜0.32にすると共に、Ni+M=0.02〜0.33の組成比
に調整することが必要である。即ち、Niの添加量は、少
ないと、生成するMg2Ni相が少量となりすぎて、水素ガ
スの解離に十分な触媒活性を発揮しなくなるため、組成
比で0.01以上にする。また、このNi含有量の上限はMgの
含有量との関係で必然的に0.32以下に規定される。これ
に対し、M元素の添加量は、少なすぎるとMg相を不均化
によって十分に分断、微細化できなくなるので、組成比
で0.01以上とする。また、添加の上限はMgの含有量の関
係で必然的に0.32以下に規定される。なお、NiとMの合
計量を組成比で0.02〜0.33にした理由は、本発明合金の
水素吸蔵・放出はMg及びMg2Ni相が担っており、3.6mass
%超の水素吸蔵量を得るためにはMgの含有量が組成比で
0.67以上であることが必要なためである。
【0013】次に、本発明のMg2Ni等水素吸蔵合金にお
いて、5mass%以上の高い水素吸蔵量を付与するには、
Ni含有量の上限を0.21にすると共に、M元素の上限もや
はり0.21に制限し、これらの合金の合計量は0.02〜0.22
に制限することが必要である。この理由は、本発明合金
の水素吸蔵・放出はMg及びMg2Ni相が担っており、5mas
s%以上の水素吸蔵量を得るためにはMgの含有量が組成
比で0.78以上であることが必要なためである。この場
合、上記一般式は次のように表わすことができる。 一般式;Mg1-x-y Nixy 0.01≦x≦0.21 0.01≦y≦0.21 0.02≦x+y≦0.22 Mは、Li、Al、Si、Ca、Ti、Y、Zrから選ばれる一種以
上の元素である
【0014】また、本発明に係る上記の合金は、試料2
gを、約3MPaの水素中、300℃に保持し、真空排気をす
る活性化処理を5回繰返したときの、10分経過後の水素
吸蔵量で表される反応速度が3mass%/10min以上であ
ることが好ましい。この理由は、水素の吸蔵・放出の速
度がこの程度はないと、水素吸蔵合金を水素貯蔵媒体に
使用したシステムを設計した際に、システムを機能させ
るために合金重量当たりに十分な放出量が得られないた
めである。
【0015】なお、本発明においては、所期の効果を妨
げない範囲内であれば、原料、るつぼ等から必然的に混
入する不純物元素を含むことを許容する。
【0016】
【実施例】この実施例において用いた試料は、歩留りを
考慮して、Mg、Ni及びM元素を秤量した後、高周波誘導
炉にて溶解し、水冷鉄鋳型に鋳造して作製した。作製し
たこれら試料は、ICP発光分光解析法によって目標通り
の組成になっていることを確認した。 特性の評価は、数meshに粉砕した試料2gを、300℃で
約3MPaの水素下に保持し、真空排気をするという活性
化操作を5回繰り返した後に、その温度で行った。評価
項目としては、PCT(組成圧力等温線)の測定、および
水素吸蔵速度の測定とし、水素吸蔵速度は、約3MPaの
水素圧下に試料を2時間保持し、その間の圧力変化から
水素吸蔵量を算出して、10分間及び2時間経過時の水
素吸蔵量を反応速度の指標とした。
【0017】実施例合金及び比較例合金の合金組成およ
び金属組織的に予測される理論水素吸蔵量、10分間及
び2時間経過時の水素吸蔵量を表1に示した。また、図
1に実施例合金の組成と比較例合金の組成を示した。そ
の結果、比較例1の純粋なMgや比較例2のM元素を含ま
ない合金では、理論的な水素吸蔵量は大きいが、2時間
経過時の水素吸蔵量は小さく反応速度は遅くなった。一
方、本発明の実施例合金では、反応速度が速いため10
分間経過時には既に、平衡状態まで水素を吸蔵してい
る。また、図2に示した実施例合金のPCT図から見て取
れるように、本発明に適合する合金は、大気圧付近での
吸蔵放出が可能で、実際に使用する際に使いやすい合金
であると言える。
【0018】
【表1】
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、Mg
系水素吸蔵合金の高水素吸蔵量という特性を生かしたま
ま、実用に耐えうる速度で水素を吸蔵・放出する水素吸
蔵合金の提供が可能になる。しかも、安価で軽いMgを主
原料にする合金系であるため、合金製造コストの大幅な
削減が図れるため、高効率な水素の分散輸送・貯蔵が可
能になり、水素エネルギーを利用した各種技術の実用化
を飛躍的に促進する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例および比較例における使用合金の
組成を示すMg-Ni-M系3元状態図である。
【図2】実施例合金における水素圧力と水素吸蔵量との
関係を示すPCT線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺下 尚克 茨城県つくば市東光台5丁目9番6号 日 本重化学工業株式会社筑波研究所内 (72)発明者 速水 昇 東京都中央区日本橋小網町8番4号 日本 重化学工業株式会社内 (72)発明者 角掛 繁 東京都中央区日本橋小網町8番4号 日本 重化学工業株式会社内 Fターム(参考) 4G040 AA44 AA45 AA46 4G140 AA44 AA45 AA46

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式;Mg1-x-y Nixy 0.01≦x≦0.32 0.01≦y≦0.32 0.02≦x+y≦0.33 Mは、Li、Al、Si、Ca、Ti、YおよびZrから選ばれる一
    種以上の元素である で表される、水素吸蔵量が3.6mass%超であるMg系高吸
    蔵量水素吸蔵合金。
  2. 【請求項2】 一般式;Mg1-x-y Nixy 0.01≦x≦0.21 0.01≦y≦0.21 0.02≦x+y≦0.22 Mは、Li、Al、Si、Ca、Ti、Y、Zrから選ばれる一種以
    上の元素である で表される、水素吸蔵量が5.0mass%以上であるMg系高
    吸蔵量水素吸蔵合金。
  3. 【請求項3】 試料2gを、約3MPaの水素中、300℃に
    保持し、真空排気による活性化処理を5回繰返したとき
    の、10分経過後の水素吸蔵量で表される反応速度が3ma
    ss%/10min以上であることを特徴とする請求項1また
    は2に記載のMg系高吸蔵量水素吸蔵合金。
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