JP2003138057A - ポリイミド多孔質膜及びその製造方法 - Google Patents

ポリイミド多孔質膜及びその製造方法

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JP2003138057A JP2001336239A JP2001336239A JP2003138057A JP 2003138057 A JP2003138057 A JP 2003138057A JP 2001336239 A JP2001336239 A JP 2001336239A JP 2001336239 A JP2001336239 A JP 2001336239A JP 2003138057 A JP2003138057 A JP 2003138057A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】電池セパレータや精密フィルタに用いる透過性
の高いポリイミド多孔質膜およびその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 膜の内部においてポリイミド相と空間相
とが網目構造を有して微細な連続孔を形成しており、膜
の両表面では多孔質構造を有する、ガ−レ−数が200
秒/100ml以下であるポリイミド多孔質膜、及び極
限粘度数数が2.2以上のポリイミドまたはポリイミド
前駆体の有機溶媒溶液を溶媒置換誘起の粘弾性相分離に
よりポリマ−成分を析出し、多孔質化することを特徴と
する請求項1あるいは5に記載のポリイミド多孔質膜の
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ポリイミド多孔
質膜及びその製造方法に関する。この明細書において、
微細な連続孔とは、任意の表面から細孔が通路状に他の
表面まで連続している、いわゆる開放孔をいい、細孔が
屈曲しながらある面から反対面に通じているものをい
う。また、この明細書において、実質的に独立孔を有さ
ずとは、ポリイミド多孔質膜の任意の断面の断面電子顕
微鏡写真において、独立孔が全孔(連続孔と独立孔との
合計)の30%以下の割合であることを意味する。この
明細書において、ガ−レ−数とは透気抵抗度を示し、秒
/100mlで表示され、JIS−P8117で測定さ
れるものである。
【0002】
【従来の技術】従来、物質分離用の膜としては、ガス状
分子を分離するための数十Åの目開きを有する有するガ
ス分離膜から、固体粒子を分離するフィルタ−まで多数
ある。公知のフィルタ−は、目開き(濾過孔径)が大き
く、微小な粒子の捕集効率が低く、微粒子の捕集が困難
であった。また、気体から粉塵捕集・分離用のバグフィ
ルタ−は、目開きは、特に細かいもので、せいぜい10
μm程度である。耐熱性のバグフィルタ−は、多くはガ
ラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などの耐熱性繊維か
らなる。
【0003】例えば、特開平10−5521号公報に
は、強度、耐久性を備えたポリイミド繊維からなるフィ
ルタ−エレメントが開示されている。また、特開平10
−298340号公報には、水処理、精密濾過に好適な
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法が開示されている。
しかし、ポリオレフィン多孔膜は、温度200℃以上の
耐熱性用途には、フィルタ−として、耐熱性の点で不適
当である。一方、耐熱性樹脂繊維からなるフィルタ−エ
レメントは、厚くて、重量的に重いという欠点がある。
【0004】そこで、この発明者らにより特開平11−
310658号公報に記載されているように、フィルム
断面に貫通孔を有し且つ表面に緻密層の存在しないポリ
イミド多孔質膜およびその製造法が提案された。この製
造法は、ポリイミド前駆体溶液を基板上に流延し、溶媒
置換速度調整材を介して凝固溶媒に接触させることによ
って、上記貫通孔を有するポリイミド前駆体の多孔質膜
を析出させている。また、特開2001−145826
号公報に記載されているように、ポリイミド前駆体に良
溶媒と非溶媒の混合液をド−プとして用いることを特徴
とするポリイミド多孔質膜の製造方法が提案された。
【0005】前記の方法によれば、微細な連続孔を有す
るポリイミド多孔質膜が得られる。しかし、透過性を高
くするために空孔率を大きくすると独立孔の割合が多く
なり却って透過性が低くなり、より透過性の高いものが
求められている。つまり、電池セパレ−タ−や精密フィ
ルタ−に用いるとき透気性能の点から、上記の改良が求
められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、よ
り透過性の高いポリイミド多孔質膜およびその製造方法
を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、膜の内部に
おいてポリイミド相と空間相とが網目構造を有して微細
な連続孔を形成しており、膜の両表面では多孔質構造を
有する、ガ−レ−数が200秒/100ml以下である
ポリイミド多孔質膜に関する。
【0008】また、この発明は、実質的に独立孔を有さ
ず連続孔からなり、空孔率が25〜55%であるポリイ
ミド多孔質膜に関する。さらに、この発明は、極限粘度
数数が2.2以上のポリイミドまたはポリイミド前駆体
の有機溶媒溶液を溶媒置換誘起の粘弾性相分離によりポ
リマ−成分を析出し、多孔質化する上記のポリイミド多
孔質膜の製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】この発明の好適な実施の形態を以
下に説明する。 1)ガ−レ−数が30〜200秒/100ml、特に5
0〜120秒/100mlである上記のポリイミド多孔
質膜。 2)電池セパレ−タ−用である上記のポリイミド多孔質
膜。 3)単層または複層の上記のポリイミド多孔質膜。
【0010】4)ポリイミドまたはポリイミド前駆体の
有機溶媒溶液が、ポリイミドまたはポリイミド前駆体の
濃度が12重量%以下でかつ溶液粘度が400ポイズ以
上である上記のポリイミド多孔質膜の製造方法。 5)溶媒置換誘起が、溶媒置換速度調整材を用いて凝固
溶媒とポリイミドまたはポリイミド前駆体の有機溶媒溶
液との直接接触を避けて行う上記のポリイミド多孔質膜
の製造方法。
【0011】この発明のポリイミド多孔質膜は、ガ−レ
−数が200秒/100ml以下であり、好適には30
〜200秒/100ml、特に50〜120秒/100
mlである。ポリイミド多孔質膜のガ−レ−数が200
/秒より大きいと目的を達成することができない。この
発明のポリイミド多孔質膜は、好適には表面の孔の平均
孔径が0.01〜2μmであり、特に0.03〜1μm
である。
【0012】また、この発明のポリイミド多孔質膜は、
好適には最大孔径が5μm以下である。さらに、この発
明のポリイミド多孔質膜は、好適には膜厚が5〜100
μmである。膜厚が5μmより薄いと、機械的強度が弱い
ものになってしまう。また、膜厚100μmを越える
と、連続孔の割合が減少し、通過量が少なくなる。
【0013】また、この発明のポリイミド多孔質膜は、
耐熱温度が200℃以上である。ここで言う耐熱性と
は、たとえばDSCで評価したガラス転移温度(Tg)
のことを言う。耐熱温度が200℃より低くなると、形
状が熱によって、収縮したり、伸びたり、変形すること
がある。
【0014】この発明のポリイミド多孔質膜は、1層も
しくは2層以上を積層し、あるいはポリイミド多孔質膜
と他の不織布あるいは多孔膜、織物を積層することによ
ってフィルタ−として使用することができる。1層また
は2層以上のポリイミド多孔膜を組み合わせると、さら
に、フィルタ−として、幅広い性能が期待できる。2層
以上組み合わせて使用すると、捕集率がさらに増加す
る。また、他のフィルタ−エレメントである不織布、織
物を積層して単層または複層構造のフィルタ−を得るこ
とができる。組み合わせる不織布、織物としては、ガラ
ス繊維、炭素繊維、金属繊維、有機耐熱性繊維などの不
織布、織物などが耐熱性で好ましい。また、他の多孔質
の炭素板、黒鉛粉末、窒化珪素、窒化アルミなど無機物
の焼結膜、板状のものも多孔膜であれば好適に使用する
ことができる。
【0015】特に、ポリイミド多孔質膜を有するフィル
タ−からなるバグフィルタ−は、0.5μm以上の微粒
子が捕捉される。
【0016】この発明のポリイミド多孔質は、好適には
次の方法によって製造することができる。極限粘度数数
が2.2以上、特に3〜4.5のポリイミドまたはポリ
イミド前駆体、好適にはポリイミド前駆体の溶液、好適
にはポリイミド前駆体溶液の流延物を溶媒置換速度調整
材を介して凝固溶媒と接触させてポリイミド前駆体の析
出、多孔質化を行い、次いで多孔質化されたポリイミド
前駆体フィルムを熱イミド化あるいは化学イミド化して
ポリイミド多孔質を製造する。前記の極限粘度数数が
2.2未満では目的とするガ−レ−数が200秒/10
0ml以下のポリイミド多孔質を得ることが困難であ
る。
【0017】以下、この発明のポリイミド多孔質の製造
方法に関し、好適例であるポリイミド前駆体を使用する
場合について述べるが、ポリイミドについても同様に行
うことできる。前記のポリイミド前駆体とは、テトラカ
ルボン酸成分とジアミン成分、好ましくは芳香族モノマ
−を重合して得られたポリアミック酸或いはその部分的
にイミド化したものであり、熱イミド化あるいは化学イ
ミド化することで閉環してポリイミド樹脂とすることが
できるものである。ポリイミドとは、イミド化率(IR
測定法)が約70%以上、好適には約90%以上の耐熱
性ポリマ−である。
【0018】前記のポリイミド前駆体の溶媒として用い
る有機溶媒は、パラクロロフェノ−ル、N−メチル−2
−ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N−ジメチル
アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチ
ルスルホキシド、テトラメチル尿素、フェノ−ル、クレ
ゾ−ルなどが挙げられる。
【0019】前記のテトラカルボン酸成分とジアミン成
分は、上記の有機溶媒中に大略等モル溶解し重合して、
極限粘度数数(30℃、NMP/水混合溶媒、ウベロ−
デ粘度計)が2.2以上、特に3〜4.5であるポリイ
ミド前駆体が製造される。また、重合を約80℃以上の
温度で行った場合に、部分的に閉環してイミド化したポ
リイミド前駆体が製造される。前記の2.2以上の極限
粘度数ポリイミド前駆体は、市販のジアミンおよびテト
ラカルボン酸二無水物を使用しても達成することができ
ず、ジアミンを昇華精製しテトラカルボン酸二無水物の
水分吸着を防止したものをそれぞれ使用することが好ま
しい。
【0020】前記のジアミンとしては、例えば、一般式
(1) H2N−R(R1)m−A−(R2)nR’−NH2 (1) (ただし、前記一般式において、RおよびR’は直接結
合あるいは二価の芳香族環、R1およびR2は、水素、低
級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン原子などの置換
基であり、Aは、直接結合、O、S、CO、SO2、S
O、CH2、C(CH32などの二価の基であり、mお
よびnは1〜4の整数である。)で示されるジアミン化
合物、特に芳香族ジアミン化合物が好ましい。
【0021】前記芳香族ジアミンの具体的な化合物とし
ては、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル(以下、
DADEと略記することもある)、3,3’−ジメチル
−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−
ジエトキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、
パラフェニレンジアミン(以下p−PDAと略記するこ
ともある)などが挙げられる。
【0022】また、前記のジアミン成分としては、ジア
ミノピリジンであってもよく、具体的には、2,6−ジ
アミノピリジン、3,6−ジアミノピリジン、2,5−
ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジンなどが挙
げられる。ジアミン成分は上記の各ジアミンを2種以上
組み合わせて使用してもよい。
【0023】前記のテトラカルボン酸成分としては、好
適にはビフェニルテトラカルボン酸成分が挙げられ、例
えば3,3’,4,4’− ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもあ
る)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物(以下、a−BPDAと略記することもあ
る)が好ましく、上記の各ビフェニルテトラカルボン酸
二無水物の混合物であってもよい。
【0024】また、上記のテトラカルボン酸成分は、ピ
ロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテ
トラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ
フェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェ
ニル)スルホン,ビス(3,4−ジカルボキシフェニ
ル)エ−テル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)
チオエ−テルあるいはそれらの酸二無水物であってもよ
い。
【0025】前記のポリイミド前駆体は、前記有機溶媒
に12重量%以下、特に1%〜12重量%の割合で溶解
してポリイミド前駆体溶液に調製することが好ましい
(有機溶媒を加えてもよくあるいは重合溶液をそのまま
用いても良い)。ポリイミド前駆体の割合が12重量%
より大きいと多孔質フィルムのイオン透過性が低下する
ため、上記範囲の割合が好適である。また、調製された
ポリイミド前駆体溶液の溶液粘度は400ポイズ以上、
特に400〜10000ポイズが好ましい。
【0026】ポリイミド前駆体溶液にはその他、繊維、
粉末、織物などの充填材を配合してもよい。たとえば、
炭素繊維、ガラス繊維、窒化珪素繊維、金属繊維、黒鉛
粉末、窒化珪素、窒化硼素、石英、炭素繊維布などを配
合してもよい。これらの添加剤及び補強材は上記ポリイ
ミド前駆体溶液に、この発明のポリイミド多孔質膜を阻
害しない範囲で、適宜配合することができる。
【0027】ポリイミド前駆体溶液は、フィルム状に流
延して流延物とした後、少なくとも片面に溶媒置換速度
調整材を配した積層フィルムとされる。ポリイミド前駆
体溶液の流延積層フィルムを得る方法としては特に制限
はないが、該ポリイミド前駆体溶液を基台となるガラス
等の板上或いは可動式のベルト上に流延した後、流延物
表面を溶媒置換速度調整材で覆う方法、該ポリイミド前
駆体溶液をスプレ−法あるいはドクタ−ブレ−ド法を用
いて溶媒置換速度調整材上に薄くコ−ティングする方
法、該ポリイミド前駆体溶液をTダイから押出して溶媒
置換速度調整材間に挟み込み、両面に溶媒置換速度調整
材を配した3層積層フィルムを得る方法などの手法を用
いることができる。
【0028】溶媒置換速度調整材としては、前記多層フ
ィルムを凝固溶媒と接触させてポリイミド前駆体を析出
させる際に、ポリイミド前駆体の溶媒及び凝固溶媒が適
切な速度で透過する事が出来る程度の透過性を有するも
のが好ましい。特に、透気度が50〜1000秒/10
0ml、特に250〜800秒/100mlであるもの
が好ましい。溶媒置換速度調整材の膜厚は5〜500μ
m、好ましくは10〜100μmであり、フィルム断面
方向に貫通した0.01〜5μm、好ましくは0.03
〜1μmの孔が十分な密度で分散しているものが好適で
ある。溶媒置換速度調整材の膜厚が上記範囲より小さい
と溶媒置換速度が速すぎる為に析出したポリイミド前駆
体表面に緻密層が形成されるだけでなく凝固溶媒と接触
させる際にシワが発生する場合があるので適当でなく、
上記範囲より大きいと溶媒置換速度が遅くなる為にポリ
イミド前駆体内部に形成される孔構造が不均一となる。
【0029】溶媒置換速度調整材としては、具体的に
は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィ
ン、セルロ−スなどを材料とした不織布或いは多孔膜な
どが用いられ、特にポリオレフィン製の微多孔質膜を用
いた際に、製造されたポリイミド多孔質フィルム表面の
平滑性に優れるので好適である。
【0030】複層化されたポリイミド前駆体流延物は、
溶媒置換速度調整材を介して凝固溶媒と接触させること
でポリイミド前駆体の析出、多孔質化を行う。ポリイミ
ド前駆体の凝固溶媒としては、エタノ−ル、メタノ−ル
等のアルコ−ル類、アセトン、水等のポリイミド前駆体
の非溶媒またはこれら非溶媒99.9〜40重量%と前
記ポリイミド前駆体の溶媒0.1〜60重量%とのの混
合溶媒を用いることができる。非溶媒及び溶媒の組合わ
せには特に制限はないが、凝固溶媒に非溶媒と溶媒から
なる混合溶媒を用いた場合に析出したポリイミド前駆体
の多孔質構造が均一となるので好適である。特に、凝固
溶媒として、ポリイミド前駆体の溶媒0.1〜50重量
%と非溶媒99.9〜50重量%とからなる混合溶媒を
用いることが好ましい。
【0031】多孔質化されたポリイミド前駆体フィルム
は、ついで熱イミド化処理或いは化学イミド化処理が施
される。ポリイミド前駆体フィルムの熱イミド化は、溶
媒置換速度調整材を取除いたポリイミド前駆体多孔質フ
ィルムをピン、チャック或いはピンチロ−ル等を用いて
熱収縮が生じないように固定し、大気中にて280〜5
00℃で5〜60分間行われる。
【0032】ポリイミド前駆体多孔質フィルムの化学イ
ミド化処理は、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物を脱水
剤として用い、トリエチルアミン等の第三級アミンを触
媒として行われる。また、特開平4−339835のよ
うに、イミダ−ル、ベンズイミダゾ−ル、もしくはそれ
らの置換誘導体を用いても良い。
【0033】ポリイミド前駆体多孔質フィルムの化学イ
ミド化処理は、ポリイミド多孔質膜を複層構成で製造す
る場合に好適に用いられる。複層ポリイミド多孔質膜
は、例えば溶媒置換速度調整材として用いるポリオレフ
ィン微多孔膜表面をポリイミド多孔質膜層との界面接着
性を改良するためにプラズマ、電子線或いは化学処理し
た後、ポリイミド前駆体溶液流延物と複層化し、凝固溶
媒との接触によってポリイミド前駆体溶液流延物を析
出、多孔質化し、得られた前駆体多孔質フィルムを複層
化する。最後に化学イミド化処理を行うことで複層ポリ
イミド多孔質フィルムを製造することができる。複層ポ
リイミド多孔質フィルムの化学イミド化処理は、積層す
る溶媒置換速度調整材の融点或いは耐熱温度以下の温度
範囲で行われることが好ましい。
【0034】また、該ポリイミド多孔質膜は単層あるい
は複層いずれの構成であってもよくフィルム全体の膜厚
が5〜100μm、耐熱温度が200℃以上、特に10
5℃で8時間熱処理した際の熱収縮率は±1%以下であ
るものが好ましい。
【0035】ポリイミド前駆体多孔質フィルムの化学処
理は、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物を脱水剤として
用い、トリエチルアミン等の第三級アミンを触媒として
行われる。また、特開平4−339835のように、イ
ミダ−ル、ベンズイミダゾ−ル、もしくはそれらの置換
誘導体を用いても良い。
【0036】熱処理或は化学処理したポリイミド多孔質
フィルムのイミド化率は、80%以上、好ましくは95
%以上である。イミド化率が80%より小さいと、フィ
ルタ−を高温で使用する際に、イミド化による脱水が起
こる、またはフィルタ−が変形してしまうので不都合で
ある。
【0037】このようにして製造されるポリイミド多孔
質フィルムは、前記製造条件の選択によっても多少異な
るが、空孔率25〜55%、平均孔径0.01〜2μ
m、最大孔径5μm以下であり、特に膜厚みが5〜10
0μmである。
【0038】
【実施例】以下、実施例によりこの発明を具体的に説明
するが、この発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。参考例、実施例、比較例における試験・評価方
法または判定基準は次に示すとおりである。
【0039】ポリイミド多孔質膜(フィルム)の評価 ポリイミド多孔質フィルムの膜厚、空孔率、平均孔径の
測定は以下に従って行った。 ガ−レ−値:JIS−P8117によって測定。 空孔率:所定の大きさに切取った多孔質フィルムの膜厚
及び重量を測定し、目付重量から空孔率を次の式(1)
によって求めた。式(1)のSは多孔質フィルムの面
積、dは膜厚、wは測定した重量、Dはポリイミドの密
度を意味し、ポリイミドの密度は1.34g/cm3
した。 空孔率=S×d×D/w×100
【0040】平均孔径:多孔質フィルム表面の走査型電
子顕微鏡写真より、50点以上の開孔部について孔面積
を測定し、該孔面積の平均値から式(2)に従って孔形
状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めた。
式(2)のSaは孔面積の平均値を意味する。 平均孔径=2×(Sa/π)1/2
【0041】参考例1〜4 テトラカルボン酸成分として乾燥したs−BPDAを、
ジアミン成分として市販あるいは昇華精製したDADE
を用い、NMP中、s−BPDAに対するDADEのモ
ルを比0.994〜1.000の間で調整して重合を行
うことで、極限粘度数および濃度の異なるポリアミック
酸溶液を得た。
【0042】実施例1 得られたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体濃
度:10重量%、溶液粘度:2620ポイズ、極限粘度
数:3.25)を、研磨したステンレス板上に厚みが均
一になるように流延し、溶媒置換速度調整材として透気
度550秒/100mlのポリオレフィン製微多孔膜
(宇部興産社製、UP3025)でシワの生じないよう
に表面を覆った。該積層物をメタノ−ル中に7分間浸漬
し、ポリイミド前駆体の析出、多孔質化を行った。この
多孔質フィルムを水中に15分間浸漬した後、ピンテン
タ−に固定した状態で、大気中にて320℃、10分間
熱処理を行った。得られたポリイミド多孔質膜は、ガ−
レ−値が108秒/100ml、空孔率が38%で、膜
厚みが28μmで、平均孔径が0.15μmであった。
【0043】比較例1 得られたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体濃
度:10重量%、溶液粘度:124ポイズ、極限粘度
数:1.91)を使用した他は実施例1と同様に実施し
て、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド多
孔質膜は、ガ−レ−値が298秒/100ml、空孔率
が64%で、膜厚みが36μmで、平均孔径が0.40
μmであった。
【0044】実施例2 得られたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体濃
度:9.5重量%、溶液粘度:1076ポイズ、極限粘
度数:3.40)を使用した他は実施例1と同様に実施
して、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド
多孔質膜は、ガ−レ−値が103秒/100ml、空孔
率が38%で、膜厚みが28μmで、平均孔径が0.1
3μmであった。また、実施例1および実施例2で得ら
れたポリイミド多孔質膜の断面電子顕微鏡写真から、独
立孔の割合は20%以下であった。
【0045】比較例2 得られたポリイミド前駆体溶液(ポリイミド前駆体濃
度:11重量%、溶液粘度:250ポイズ、極限粘度
数:1.85)を使用した他は実施例1と同様に実施し
て、ポリイミド多孔質膜を得た。得られたポリイミド多
孔質膜は、ガ−レ−値が1240秒/100ml、空孔
率が56%で、膜厚みが50μmで、平均孔径が0.1
5μmであった。
【0046】参考例5 テトラカルボン酸成分として乾燥したs−BPDAを、
ジアミン成分として昇華精製したPPDを用い、NMP
中、s−BPDAに対するDADEのモルを比0.99
9で調整して重合を行うことで、極限粘度数3.32お
よび濃度9.5重量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0047】実施例3 参考例5で得られたポリイミド前駆体溶液を使用し、メ
タノ−ルの変わりにメタノ−ル/イソプロピルアルコ−
ル(体積比1/1)の混合溶媒を使用した他は実施例1
と同様に実施して、ポリイミド多孔質膜を得た。得られ
たポリイミド多孔質膜は、ガ−レ−値が197秒/10
0ml、空孔率が48%で、膜厚みが23μmで、平均
孔径が0.20μmであった。また、実施例1〜3で得
られたポリイミド多孔質膜は比較例1、比較例2で得ら
れたポリイミド多孔質膜に比べて引張強度の大きいもの
であった。
【0048】実施例4 実施例3で得られたポリイミド多孔質膜をアルゴンガス
の雰囲気中で、通気性の炭素シ−トに挟み込み、昇温速
度10℃/分で、1400℃まで昇温して多孔質炭素膜
を得た。この多孔質炭素膜は、空孔が炭化前の空孔より
概ね70%小さくなっており、走査型電子顕微鏡写真の
結果よりポリイミドが有していた微細な連続孔を保持し
ていることが確認された。続いて、熱間等方圧装置(H
IP)により、アルゴンガス中、昇温速度5℃/分、圧
力150MPaで、温度3000℃まで昇温し、120
分保持した。降温後、得られた黒鉛膜は、光沢のある多
孔質膜を呈していた。この多孔質黒鉛膜は、黒鉛化前の
空孔より少し小さくなっており、走査型電子顕微鏡写真
の結果より微細な連続孔を有していることが確認され
た。
【0049】
【発明の効果】この発明のポリイミド多孔質膜は、耐熱
性が高く、微細な連続孔を有しているため、透過性が良
好で圧力損失が小さい。この発明によれば、均質で耐熱
性が高く、微細な連続孔を有しているため、透過性が良
好で圧力損失が小さいポリイミド多孔質膜を容易に得る
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の範囲内の一例のポリイミド
多孔質膜の断面電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、この発明の範囲外の一例のポリイミド
多孔質膜の断面電子顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B32B 27/34 B32B 27/34 // H01M 2/16 H01M 2/16 P C08L 79:08 C08L 79:08 Fターム(参考) 4D006 GA41 LA06 MA06 MA21 MA22 MA28 MB03 MB15 MC58 MC58X NA10 NA12 NA41 NA62 PA01 PB66 PC73 PC80 4F074 AA74 CB44 DA02 DA23 DA24 DA49 4F100 AK49A AK49B BA02 BA14 DC11A DC11B DJ03A DJ03B GB41 JA06A JA06B JA20 5H021 BB13 CC08 HH00 HH01 HH02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】膜の内部においてポリイミド相と空間相と
    が網目構造を有して微細な連続孔を形成しており、膜の
    両表面では多孔質構造を有する、ガ−レ−数が200秒
    /100ml以下であるポリイミド多孔質膜。
  2. 【請求項2】ガ−レ−数が30〜200秒/100m
    l、特に50〜120秒/100ml/秒である請求項
    1に記載のポリイミド多孔質膜。
  3. 【請求項3】電池セパレ−タ−用である請求項1に記載
    のポリイミド多孔質膜。
  4. 【請求項4】単層または複層の請求項1に記載のポリイ
    ミド多孔質膜。
  5. 【請求項5】実質的に独立孔を有さず連続孔からなり、
    空孔率が25〜55%であるポリイミド多孔質膜。
  6. 【請求項6】極限粘度数数が2.2以上のポリイミドま
    たはポリイミド前駆体の有機溶媒溶液を溶媒置換誘起の
    粘弾性相分離によりポリマ−成分を析出し、多孔質化す
    ることを特徴とする請求項1あるいは5に記載のポリイ
    ミド多孔質膜の製造方法。
  7. 【請求項7】ポリイミドまたはポリイミド前駆体の有機
    溶媒溶液が、ポリイミドまたはポリイミド前駆体の濃度
    が12重量%以下でかつ溶液粘度が400ポイズ以上で
    ある請求項6に記載のポリイミド多孔質膜の製造方法。
  8. 【請求項8】溶媒置換誘起が、溶媒置換速度調整材を用
    いて凝固溶媒とポリイミドまたはポリイミド前駆体の有
    機溶媒溶液との直接接触を避けて行う請求項6に記載の
    ポリイミド多孔質膜の製造方法。
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