JP2003138029A - ポリ乳酸系樹脂製品 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂製品

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JP2003138029A
JP2003138029A JP2001333633A JP2001333633A JP2003138029A JP 2003138029 A JP2003138029 A JP 2003138029A JP 2001333633 A JP2001333633 A JP 2001333633A JP 2001333633 A JP2001333633 A JP 2001333633A JP 2003138029 A JP2003138029 A JP 2003138029A
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polylactic acid
based resin
heat
resin product
film
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JP2001333633A
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Mitsuyoshi Itada
光善 板田
Michihiro Hachitsuka
道浩 八塚
Masayuki Sukigara
正幸 鋤柄
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Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
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    • Y02W90/10Bio-packaging, e.g. packing containers made from renewable resources or bio-plastics

Abstract

(57)【要約】 【課題】 生分解性を有し且つ機械適性、透明性、耐熱
性、高速ヒートシール適性に優れたポリ乳酸系樹脂製品
を提供する。 【解決手段】 L −乳酸及び/又はD −乳酸が主成分の
ポリ乳酸重合体を主体とする樹脂製品おいて、結晶融解
熱量ΔHmが10J/g以上、且つ、実質1つの相転移
指標(Tα−Tg)が15℃以下であることを特徴とす
るポリ乳酸系樹脂製品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械適性、透明
性、耐熱性、高速ヒートシール適性に優れたポリ乳酸系
樹脂からなる生分解性を有するポリ乳酸系樹脂製品に関
するものである。本発明のポリ乳酸系樹脂製品とは、フ
ィルム及びシート状物や成形物、繊維、不織布、発泡
体、及び、それによって包装された包装体、並びに、そ
れを用いた複合材料を含むものである。更に詳しくは、
ポリ乳酸系樹脂からなる生分解性を有する熱収縮性又は
熱非収縮性の延伸フィルム及びシート、具体的には、弁
当や惣菜容器オーバーラップ用等の収縮性フィルム及び
シート、又は、チャック付き透明バッグ用等の非収縮性
フィルムに有用な延伸フィルム及びシート、それを用い
た包装体、複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】機械適性、透明性、耐熱性、高速ヒート
シール適性に優れる樹脂材料として、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチ
レン等の材料が挙げられ、幅広く使用されている。しか
しながら、これの樹脂材料の廃棄に関わる自然環境保護
の観点から、燃焼熱量が低く、土壌中で分解し、且つ安
全であるものが望まれ、ポリ乳酸系樹脂などの脂肪族ポ
リエステル等の生分解性樹脂を用いた製品、具体的には
フィルム・シートやボトルなどの容器や成形物、繊維、
不織布、発泡体、それらを用いた複合材料等の研究が活
発に行われている。
【0003】ポリ乳酸重合体は、光学活性中心を有する
乳酸の重縮合体であり、ポリマーを構成するL−乳酸及
び/又はD−乳酸単量体単位の構成比率から下記式によ
り計算される光学純度(OP:単位%)に応じて、光学
純度が80%以上と高いものは結晶性、光学純度が80
%未満と低いものは非晶性となる。 OP=|[L]−[D]| ,但し、[L]+[D]=
100 ここで、[L]はポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸の
重量比率(単位%)、[D]はポリ乳酸重合体を構成す
るD−乳酸の重量比率(単位%)、||は計算値の絶対
値を表す。
【0004】ポリ乳酸重合体は他の生分解性樹脂に比べ
て、曇り度(ASTM−D1003に準拠)が約4%未
満及び引張弾性率(ASTM−D882−95aに準
拠)が約2〜5GPaと透明性と剛性に優れており、特
に、それを延伸又は熱処理加工した製品は、引張破断強
度(ASTM−D882−95aに準拠)が約70〜3
00MPaと機械的強度が強く、例えばフィルム・シー
ト状物の場合、巻物状原反フィルムの連続裁断加工等の
機械適性や透明性に優れ、各種包装用フィルムとして適
しているが、これらの特性を損なうことなく耐熱性と高
速ヒートシール適性を両立した様なポリ乳酸重合体を主
体とするポリ乳酸系樹脂製品は未だに得られていない。
特に、弁当や惣菜容器オーバーラップ用等の収縮性フィ
ルムは包装体の熱収縮処理(シュリンク工程)に対する
耐熱性、チャック付き透明バッグ等に用いられる非収縮
性フィルムは延伸加工後の熱収縮抑制処理(ヒートセッ
ト工程)に対する耐熱性と、包装機械又は製袋機にて巻
物状原反フィルムから包装体やバッグ等を高速ヒートシ
ール加工するのに適した十分なホットタック強度(ヒー
トシールダイの開放後1秒以内に観測されるピーク強
度)を発現できる高速ヒートシール適性、更には被包装
物に表記された文字が明瞭に見える様な透明性の全てを
満足した生分解性ポリ乳酸系樹脂製品は未だ無い。
【0005】生分解性を有するポリ乳酸系樹脂製品に関
しては、特開2001−122989号公報には、結晶
性ポリ乳酸からなる動的粘弾性の温度依存性に対する試
験(JIS−K7198)での120℃の貯蔵弾性率E
* が100〜230MPaの結晶性のポリ乳酸系樹脂フ
ィルムが開示されているが、高速ヒートシール適性に欠
ける問題を有する。又、特開平11−222528号公
報には、ポリ乳酸系重合体換算融解熱量ΔHm1が35
J/g以下の非晶性ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルから
なるヒートシール性フィルム、及び、特開2000−1
98913号公報には、結晶性ポリ乳酸と脂肪族ポリエ
ステルからなる易引裂性二軸延伸フィルムが開示されて
いるが、共に樹脂相互の相溶性に欠けることにより透明
性に劣る問題がある。
【0006】殊に、特開平11−302521号公報に
は、動的粘弾性の温度依存性に対する試験(JIS−K
7198B)での貯蔵弾性率E* が6MPa以下で安定
した結晶性ポリ乳酸と非晶性ポリ乳酸の混合組成物が開
示されているが、該組成物は低弾性の熱可塑性エラスト
マーであって加重平均光学純度が80%未満となり、該
組成物からなるポリ乳酸系フィルム又はシートは成型加
工性は良いが流動変形しやすいことから、100℃を越
える様な温度雰囲気下で熱処理されるポリ乳酸系樹脂製
品に求められる耐熱性に欠ける問題を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、生分解性を
有し且つ機械適性、透明性、耐熱性、高速ヒートシール
適性に優れたポリ乳酸系樹脂製品、及び、それによる包
装体、複合材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記課題
を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきこと
に、ポリ乳酸系樹脂において、相転移温度Tαとガラス
転移温度Tgの差(Tα−Tg)が小さいほど粘弾性の
熱応答性が良く、昇温時におけるガラス状態からゴム状
態及びゴム状態から溶融状態への相転移速度の指標とし
て活用できること(本願において、(Tα−Tg)を相
転移指標と呼ぶ)、更には、実質1つの特定の相転移指
標(Tα−Tg)と結晶融解熱量ΔHmを持つポリ乳酸
系樹脂を用いることで本発明の目的を達成しうることを
見い出し、本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は下記の通りである。L
−乳酸及び/又はD −乳酸が主成分のポリ乳酸重合体を
主体とするポリ乳酸系樹脂製品おいて、結晶融解熱量Δ
Hmが10J/g以上、且つ、実質1つの相転移指標
(Tα−Tg)が15℃以下であることを特徴とするポ
リ乳酸系樹脂製品。[但し、上記式中の記号のTαは動
的粘弾性の温度依存性に対する試験(JIS−K719
8A)での損失正接tanδの相転移温度(単位℃)、
Tgは示差走査熱量測定(JIS−K7121)でのガ
ラス転移温度(単位℃)、ΔHmは示差走査熱量測定
(JIS−K7122)での融点Tmにおける結晶融解
熱量(単位J/g)である。]
【0010】つまり、本発明は、L −乳酸及び/又はD
−乳酸が主成分のポリ乳酸重合体を主体とするポリ乳酸
系樹脂を延伸及び/又は熱処理加工により成形されたポ
リ乳酸系樹脂製品において、下記の3つの要件の組合せ
である。 TαとTgが各々実質1つ[相転移指標(Tα−T
g)も実質1つ]である。これは、ポリ乳酸系樹脂が実
質的に単一相(相溶系)であることを示し、高度な透明
性が発現出来る。 相転移指標(Tα−Tg)≦15℃の範囲である。こ
れは、ポリ乳酸系樹脂製品の樹脂成分のうち非晶成分が
有効に存在して熱に対する分子鎖の運動性、熱応答性が
良い(相転移速度が速い)ことを示し、ホットタック強
度(ヒートシールダイの開放後1秒以内に観測されるピ
ーク強度)の優れた高速ヒートシール適性を発現出来
る。 結晶融解熱量ΔHm≧10J/gの範囲内である。こ
れは、結晶成分が適度な存在量であることを示し、熱処
理時の耐熱性を発現出来る。
【0011】本発明について、以下に具体的に説明す
る。本発明のポリ乳酸系樹脂製品は、ポリ乳酸系樹脂か
らなるフィルム及びシート状物(特に、延伸フィルム及
びシート状物)や成形物、繊維、不織布、発泡体、及
び、それによって包装された包装体、並びに、それを用
いた複合材料を含むものである。該ポリ乳酸系樹脂と
は、L−乳酸単位又はD−乳酸単位の単独重合体、L−
乳酸単位及びD−乳酸単位の共重合体、L−乳酸及び/
又はD−乳酸、DL−乳酸単位を主成分(80重量%以
上)として他のヒドロキシカルボン酸、ラクトン類、ジ
カルボン酸、多価アルコールからなる群の単量体との共
重合体から少なくとも1種選ばれたポリ乳酸重合体を主
体(50重量%以上)とした示差走査熱量測定(JIS
−K7121及びJIS−K7122)でのガラス転移
温度Tgが実質1 つの単一相である樹脂組成物であっ
て、好ましくは結晶融点Tmが140℃以上に少なくと
も1つ存在する樹脂組成物である。Tgが2つ以上ある
場合は、樹脂成分が相分離していることから、曇り度
(Haze)が4%以上となり、透明性に欠ける問題が
ある為による。又、Tmが140℃未満では100℃を
超える温度の熱処理時に耐熱性にかける場合がある。
【0012】該単量体のヒドロキシカルボン酸として
は、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキ
シ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草
酸、6−ヒドロキシカプロン酸等、;ラクトン類として
は、グリコリド、ラクチド、β−プロピオラクトン、γ
−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラ
クトンおよびこれらにメチル基などの種々の基が置換し
たラクトン類等、;ジカルボン酸としては、コハク酸、
グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、
テレフタル酸、イソフタル酸等、;多価アルコールとし
ては、ビスフェノール/エチレンオキサイド付加反応物
などの芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プ
ロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオー
ル、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリ
メチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂
肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチ
レングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピ
レングリコールなどのエーテルグリコール等が挙げられ
る。
【0013】本発明のポリ乳酸系樹脂製品の融点Tmに
おける結晶融解熱量ΔHmは、ポリ乳酸系樹脂製品の1
00℃を越える温度に対する耐熱性、例えば、収縮フィ
ルムの場合は製品製造後の熱収縮処理に対する耐熱性、
非収縮フィルムの場合は製品製造時の熱収縮抑制処理に
対する耐熱性の観点から、10J/g以上である。ΔH
mが10J/g未満では結晶量が少なくて耐熱性が不足
する場合があり、一方、ΔHmが30J/gを超えると
結晶量が多くてホットタック強度が低く高速ヒートシー
ル適性に欠ける場合があり、10J/g以上30J/g
以下が好ましく、15J/g以上25J/g以下がより
好ましい。又、本発明のポリ乳酸系樹脂製品の相転移指
標(Tα−Tg)は、ポリ乳酸系樹脂製品のヒートシー
ル強度の経時的安定性の観点から、15℃以下である。
相転移指標が15℃を超えると、以下でも述べるように
相転移速度が遅くなりホットタック強度が低く高速ヒー
トシール適性に欠ける場合があり、相転移指標が10℃
未満では、相転移速度が速いが耐熱性に欠ける場合があ
り、10℃以上15℃以下が好ましい。
【0014】ところで、本発明のポリ乳酸系樹脂製品の
結晶融解熱量ΔHmは、既に述べたように結晶量を表す
ものであり、相転移指標(Tα−Tg)は、ポリ乳酸系
樹脂の熱に対する分子鎖運動性(熱応答性)、言い換え
ると非晶成分の熱に対する分子鎖再配列のし易さ(相転
移速度)を表わすものである。そして、この相転移速度
について更に述べると、ポリ乳酸系樹脂の溶融/固化速
度を支配するものであり、この速度が速いとポリ乳酸系
樹脂の溶融/固化速度が速くなり、瞬時に融着し一定レ
ベル以上のヒートシール強度を発現し、これとは逆に該
速度が遅いとポリ乳酸系樹脂の溶融/固化速度が遅くな
り、瞬時に融着して一定レベル以上のヒートシール強度
を発現することが困難になる。以上のことから、相転移
速度、ひいては相転移指標(Tα−Tg)は、ホットタ
ック強度(ヒートシールダイの開放後1秒以内に観測さ
れるピーク強度)の指標とすることができ、相転移指標
(Tα−Tg)≦15℃であると、ポリ乳酸系樹脂は瞬
時に融着し一定レベル以上のヒートシール強度を発現
(ホットタック強度が大)し、結果として、高速ヒート
シール加工が可能となる。
【0015】上記結晶融解熱量ΔHmと相転移指標(T
α−Tg)は、ポリ乳酸系樹脂の非晶成分の量及び配向
度や結晶成分の分散性に依存しており、即ち、樹脂組成
に依存する割合が多いが、延伸及び/又は熱処理加工に
よっても変位するものであり、ポリ乳酸系樹脂製品の性
能(機械適性、透明性、耐熱性、高速ヒートシール適
性)を表す意義において、その有用性は大きい。そし
て、本発明のポリ乳酸系樹脂製品は、後述の様な市販の
装置(動的粘弾性測定装置、示差走査熱量計)を用いた
簡便なスクリーニング法により、樹脂組成(例えば、上
記光学純度OP(A) の結晶性ポリ乳酸(A) /光学純度O
(B) の非晶性ポリ乳酸(B)における、各々の結晶性の
レベルや両者(A) /(B)の割合、或いは第3成分として
の相溶性可塑剤の添加)、延伸及び/又は熱処理加工条
件を適宜選択制御することにより、上記した特定の結晶
融解熱量ΔHmと相転移指標(Tα−Tg)を有するこ
とができる。
【0016】本発明が従来技術と最も相違する点は、特
定の結晶融解熱量及び相転移指標を有する光学純度の高
い緻密な結晶部分と光学純度の低い乱疎な非晶部分の組
成構造のポリ乳酸樹脂を主体にしたポリ乳酸系樹脂を延
伸及び/又は熱処理加工したポリ乳酸系樹脂製品が、良
好な透明性や機械適性を損なうことなく、100℃を越
える温度に対しても熱変形等の起こることのない様な耐
熱性、及びホットタック強度が5N/inchW以上
(包装機械等で高速シール加工が可能なレベル)の高速
ヒートシール適性を併せ持つという点である。
【0017】ここで、良好な透明性とは、例えば包装体
の内容物に表示された文字の色調及び輪郭が明瞭に見え
るレベルである曇り度(Haze)が3%未満のものを
示す。曇り度が4%以上の場合、文字の色調及び輪郭が
霞んで見える問題がある。又、良好な機械適性とは、例
えば、フィルム・シート状物の場合の巻物状原反フィル
ムの連続裁断加工等の機械適性であって、引張弾性率が
約0.5〜5GPaの範囲の剛性のあるものを示す。か
かる範囲外である場合、軟らか過ぎたり固過ぎたりする
ことで、包装機械や製袋機等におけるフィルム搬送時に
シワ等が入ったり、フィルムが伸びたり切れたり、フィ
ルムがカールしたりして機械適性に欠ける問題がある。
【0018】本発明の結晶融解熱量ΔHmが10J/g
以上で実質1つの相転移指標(Tα−Tg)が15℃以
下の相転移速度の速い結晶性ポリ乳酸系樹脂製品の好ま
しい樹脂組成としては、分子構造的には分子間に働く力
の目安になる分子の凝集エネルギー密度(CED)の平
方根であるSP値(溶解度係数)が接近した相溶系組成
であって、特定量の光学純度の高い緻密な結晶部分と光
学純度の低い乱疎な非晶部分が海島状の分子構造を有す
る樹脂組成物が挙げられる。より好ましくは、光学純度
が高い結晶性ポリ乳酸と光学純度が低い非晶性ポリ乳酸
の混合樹脂を主体にしたポリ乳酸系樹脂が挙げられ、そ
の一例としては、光学純度OP(A) が100〜90%の
高結晶性ポリ乳酸(A)と光学純度OP(B)が80〜7
0%の低結晶性ポリ乳酸(B)をブレンドして、重量比
(A)/(B)が80/20〜40/60、且つ、加重
平均光学純度OP(av)が90〜80%の範囲のポリ乳酸
重合体を主体(50重量%以上)とした結晶性樹脂組成
物がある。
【0019】重量比(A)/(B)での(A)割合が9
0%越で且つ加重平均光学純度OP (av)90%越である
と結晶成分が多いことからポリ乳酸系樹脂製品は高速ヒ
ートシール適性に欠ける場合があり、重量比(A)/
(B)での(A)割合が40%未満且つOP(av)80%
未満であると結晶成分が少ないことからポリ乳酸系樹脂
製品は熱処理時の耐熱性に劣る場合がある。尚、加重平
均光学純度OP(av)(単位%)は下記式にて算出され
る。 OP(av)=([A]×OP(A) +[B]×OP(B) )/
100 ,但し、[A]+[B]=100 ここで、OP(A) 及び[A]は結晶性ポリ乳酸(A)の
光学純度(単位%)及び重量比率(単位%)、OP(B)
及び[B]は非晶性ポリ乳酸(B)の光学純度(単位
%)及び重量比率(単位%)を表す。
【0020】結晶性の異なるポリ乳酸重合体の混合方法
や混合装置は、特に限定されないが、例えば、同一の単
軸又は二軸押出混練機にそれぞれの原料を供給して溶融
混合して行われ、そのまま口金より押出して直接にフィ
ルム等の製品に加工する方法、或いはストランド形状に
押出してペレットを作製し再度押出機にてフィルム等の
製品に加工する方法が挙げられる。溶融押出温度として
は、ポリ乳酸系樹脂の融点及び混合比率を考慮して適宜
選択されるが、通常100〜250℃の温度範囲が選ば
れる。
【0021】ポリ乳酸重合体の重合方法としては、縮合
重合法(溶液法:特開平7−2987号公報に記載され
た方法等)、開環重合法(ラクチド法:特開平9−31
171号公報に記載された方法等)などの公知の方法を
採用でき、L−乳酸、D−乳酸に由来する単量体比率
(L/D比)を変化させることにより、結晶性や融点を
自在に調整することができる。例えば、縮重合法(溶液
法)では、L−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混
合物を直接脱水縮重合して、任意の組成を持ったポリ乳
酸を得ることができる。また、開環重合法(ラクチド
法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に
応じて重合調整剤等を用いながら、選ばれた触媒を使用
してポリ乳酸を得ることができる。また、ポリイソシア
ネート、ポリエポキシ化合物、酸無水物、多官能酸塩化
物などの結合剤を使用して分子量を増大する重合方法を
用いることもできる。ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量
は5万〜100万の範囲が好ましく、さらに好ましくは
重量平均分子量10万〜50万の範囲である。分子量が
5万より小さいと機械的強度や耐熱性等の実用物性が十
分に得られず、分子量が100万を越えると成形加工性
に劣る問題がある。
【0022】次に、本発明のポリ乳酸系樹脂製品の製造
方法について述べる。延伸及び/又は熱処理加工の方法
としては、例えば、フィルム又はシート状物の形態にお
いては、インフレーション法やテンター法などの従来公
知の延伸方法にて一軸延伸、或いは、同時又は逐次二軸
延伸することにより得られる。その際、押出されたチュ
ーブ状またはシート状の樹脂を溶融状態から急冷し非晶
状態に近い状態で固化させた後、続いてそのチューブ状
またはシート状の樹脂をガラス転移温度以上融点以下に
加熱しインフレーション法またはテンター法で延伸する
ことで、或いは、その後にフィルム又はシート状物の熱
収縮性の抑制の為にフィルム又はシート状物を把持した
状態等で熱処理を行うことで、収縮性或いは非収縮性フ
ィルム又はシート状物を得ることができる。
【0023】延伸倍率としては、MD方向およびTD方
向それぞれに1.5〜6倍延伸するとよく、機械的強度
や剛性による機械適性の観点から、好ましくは2〜5倍
の範囲である。延伸倍率は大きい方が得られるフィルム
又はシート状物の強度及び厚み精度の観点から好ましい
が、延伸倍率がMD方向もTD方向も両方6倍を越える
延伸は、延伸安定性が極端に低下して、 安定した製膜が
行えなくなることがある。又、非収縮フィルム又はシー
ト状物を得る場合には、熱処理温度は100℃〜融点T
mの間、熱処理時間は少なくとも2〜10秒の範囲内で
ある。かかる範囲を下回ると得られたフィルムの熱収縮
率が高くて非収縮フィルムにはならず、かかる範囲を上
回ると熱処理中にフィルムが融解し破断する場合があ
る。延伸後のフィルム又はシート状物の厚みは、好まし
くは5〜500μmであり、より好ましくは7〜400
μmであるが、本発明では特に限定されるものではな
い。
【0024】本発明のポリ乳酸系樹脂製品には、所望に
より当該技術分野において通常用いられる添加剤、例え
ば、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸
収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、造核剤、架橋剤、着
色剤等を本発明の要件と特性を損なわない範囲で配合す
ることが可能である。可塑剤としては、当業界で一般に
用いられているものから選択使用でき、樹脂組成物に1
0重量%程度添加してもブリードアウトしないものが好
ましい。例えば、脂肪族多価カルボン酸エステル、脂肪
酸多価アルコールエステル、オキシ酸エステル、エポキ
シ系可塑剤等が含まれる。具体例としては、トリアセチ
ン(TA)、アセチルクエン酸トリブチル(ATB
C)、ジオクチルセバケート(DBS)、トリエチレン
グリコールジアセテート、グリセリンエステル類、オレ
イン酸ブチル(BO)、アジピン酸エーテル・エステ
ル、エポキシ化大豆油(ESO)、等が挙げられる。充
填剤としては、一般に合成樹脂分野において強度や耐久
性などの諸性質を改善する目的で添加される物質であ
る。充填剤の種類としては無機系と有機系があるが目的
とするフィルムにより適宜選択して使用できる。無機系
充填剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウ
ム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、珪素、アンチモ
ン、チタン等の金属の酸化物、その水和物(水酸化
物)、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩のごとき化合物、これら
の複塩並びにこれらの混合物に大別される。具体例とし
ては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、その水
和物、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム(マグネシ
ア)、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、鉛丹
及び鉛白のごとき鉛の酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸
カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ホワイトカーボ
ン、マイカ、タルク、ガラス繊維、ガラス粉末、ガラス
ビーズ、クレー、珪藻土、シリカ、ワラストナイト、酸
化鉄、酸化アンチモン、酸化チタン(チタニア)、リト
ポン、軽石粉、硫酸アルミニウム(石膏など)、珪酸ジ
ルコニウム、炭酸バリウム、ドロマイト、二硫化モリブ
デン及び砂鉄が挙げられる。一方、有機系充填剤として
は、セルロース系、澱粉系(可塑化澱粉も含む)等が挙
げられる。酸化防止剤としてはp−t−ブチルヒドロキ
シトルエン、p−t−ブチルヒドロキシアニソール等の
ヒンダードフェノール系酸化防止剤;熱安定剤としては
トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイ
ト、トリスノリルフェニルホスファイト等;紫外線吸収
剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2
−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒド
ロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノ
ン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン等;滑
剤としてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜
鉛、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸ナトリウム
等;帯電防止剤としてはN,N−ビス(ヒドロキシエチ
ル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリル
スルホネート、アルキルスルフォネート等;難燃剤とし
てはヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−
ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンタブロモフェニ
ルアリルエーテル等;造核剤としてはポリエチレンテレ
フタレート、ポリ−トランスシクロヘキサンジメタノー
ルテレフタレート等が挙げられる。
【0025】又、 本発明のポリ乳酸系樹脂製品は単体材
料でも異種又は同種の複合材料でも良い。更には、印
刷、コーテイング、ラミネート等の目的で、ポリオレフ
ィン系樹脂製品に比べて親水性ではあるが、ポリ乳酸系
樹脂製品表面をコロナ処理などによりさらに親水化処理
することもできる。その際の表面張力としては、40d
yn/cm〜60dyn/cmの範囲が好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】実施例および比較例によって本発
明を説明する。実施例および比較例で用いた評価方法に
ついて以下に説明する。まず、ポリ乳酸系樹脂製品の構
成組成の評価方法は以下の通りである。 (1)ポリ乳酸重合体の光学純度OP ポリ乳酸系樹脂製品を構成する主体の樹脂であるポリ乳
酸重合体の光学純度(OP:単位%)は、前述の通り、
ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸及び/又はD−乳酸
単量体単位の構成比率から下記式により計算される。 OP=|[L]−[D]| ,但し、[L]+[D]=
100
【0027】ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸及び/
又はD−乳酸単量体単位の構成比率は、以下の測定条件
で、試料を1N−NaOHでアルカリ分解後に1N−H
Clで中和して蒸留水で濃度調整した加水分解試料
(液)について、光学異性体分離カラムを装着した島津
製作所製の高速液体クロマトグラフィー(HPLC:L
C−10A−VP)にて、紫外線UV254nmでのL
−乳酸とD−乳酸の検出ピーク面積比(垂線法による面
積測定)から、ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸の重
量比率[L](単位%)、ポリ乳酸重合体を構成するD
−乳酸の重量比率[D](単位%)を求め、1重合体当
り3点の算術平均(四捨五入)をもって測定値とした。 カラム:東ソー製TSKgel−Enantio−L1
[4.6mm経×25cm長] 移動相:1mM−CuSO4 水溶液 試料溶液濃度:25pg/μL [ポリ乳酸重合体とし
ての濃度] 試料溶液注入量:10μL 溶媒流速:0.5〜0.8ml/分 カラム温度:40℃
【0028】(2)ポリ乳酸重合体の重量平均分子量M
w 東ソー製のゲルパーミエイションクロマトグラフィー装
置(GPC:データ処理部GPC−8020、検出器R
I−8020)を用いて、以下の測定条件で、標準ポリ
スチレンを用いてポリスチレン換算して重量平均分子量
Mwを求め、1重合体当り3点の算術平均(四捨五入)
をもって測定値とした。 カラム:昭和電工製Shodex K −805とK −801の
連結カラム[7.8mm経×60cm長] 溶離液:クロロホルム 試料溶液濃度:0.2wt/vol% 試料溶液注入量:200μL 溶媒流速:1ml/分 カラム・検出器温度:40℃
【0029】(3)融点Tm、ガラス転移温度Tg、結
晶融解熱量ΔHm JIS−K7121及びJIS−K7122に準拠し
て、ポリ乳酸系樹脂製品の融点Tm、ガラス転移温度T
g、結晶融解熱量ΔHmを測定した。すなわち、標準状
態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放
置)したポリ乳酸系樹脂製品から試験片として長手方向
(MD)及び幅方向(TD)に各々2点(2箇所)ずつ
約10mgを切り出した後、パーキンエルマー(Per
kin−Elmer)社製の示差走査熱量計(熱流速型
DSC)、DSC−7型を用いて、窒素ガス流量25m
l/分、10℃/分で室温(23℃)から200℃まで
昇温し(1次昇温)、200℃で10分間保持して完全
に融解させた後、30℃/分で−100℃まで降温させ
て−100℃で2分間保持し、更に上記昇温条件で2回
目の昇温(2次昇温)する間に描かれるDSC曲線のう
ち、1次昇温時の融解(吸熱)ピーク頂点から融点Tm
(℃)、吸熱ピーク面積から結晶融解熱量ΔHm(単位
J/g)、2次昇温時の階段状変化部分曲線と各ベース
ライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点
(中間点ガラス転移温度)をTg(単位℃)として測定
し、1製品当り4点の算術平均(四捨五入)をもって測
定値とした。
【0030】(4)相転移温度Tα 標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週
間放置)したポリ乳酸系樹脂製品から試験片として30
μm厚×7mm幅×35mm長の短冊状フィルムを長手
方向(MD)及び幅方向(TD)に各々2点ずつ切り出
した後、JIS−K7198Aに準拠して、レオメトリ
ックス(Rheometric)社製の動的粘弾性測定
装置(Dynamic Mechanical Ana
lyzer :DMA)、RSA−II型を用いて、測
定周波数1Hz、2℃/分で−100℃から160℃ま
で昇温する間に描かれる動的粘弾性の温度依存曲線のう
ち、損失正接tanδの極大点の温度を相転移温度Tα
(単位℃)として測定し、1製品当り4点の算術平均
(四捨五入)をもって測定値とした。 (5)相転移指標 本発明における相転移指標(Tg−Tα)は、上記
(1)及び(2)の方法で測定されるTg及びTαの差
の絶対値とした。
【0031】次に、ポリ乳酸系樹脂製品の性能評価の方
法は以下の通りである。 <機械適性>標準状態(23℃65%RH)で状態調節
(23℃1週間放置)したポリ乳酸系樹脂製品から試験
片として長手方向(MD)及び幅方向(TD)に30μ
m厚×10mm幅×200mm長の短冊状フィルムを各
々3点ずつ切り出した後、ASTM−D882−95a
に準拠して、A&D社製のテンシロン万能試験機、RT
C−1210型を用いて、チャック間100mm、引張
速度10mm/分で標準状態下で引張試験を行い、製品
当り6点の算術平均値(有効数字2桁)もって引張弾性
率(単位GPa)を算出した。機械適性の観点から、フ
ィルム搬送時に皺の入らない程度の腰の強さの目安とし
て、引張弾性率が0.5GPa以上5GPa以下の範囲
内にあるものを適性あり(評価記号:○)、同範囲外に
あるものを適性なし(評価記号:×)として評価した。
【0032】<透明性>標準状態(23℃65%RH)
で状態調節(23℃1週間放置)したポリ乳酸系樹脂製
品から試験片として30μm厚み×50mm角の正方形
状フィルムに切り出した後、ASTM−D1003−9
5に準拠して、日本電色工業製の濁度計( ヘーズメータ
ー)、NDH−1001DP型を用いて、曇り度(Ha
ze:単位%)を標準状態下で測定し、1製品当り6点
の算術平均値(有効数字2桁)もって測定値とした。ポ
リ乳酸系樹脂製品の透明性は、フィルム又はシート状物
のポリ乳酸系樹脂製品の形態において包装体とした時の
被包装物上に印字された文字の視認性の観点から以下の
ように評価した。 評価尺度: 評価記号 曇り度 尺度 ○ 3.0未満 透明性が非常に良く、文字の色調及 び輪郭が明瞭。 △ 3.0以上4.0未満 透明性がやや劣り、文字の色調が霞 んで見える。 × 4.0以上 透明性が劣り、文字の色調及び輪郭 が霞んで見える。
【0033】<耐熱性>標準状態(23℃65%RH)
で状態調節(23℃1週間放置)したポリ乳酸系樹脂製
品から試験片として30μm厚×300mm角の正方形
状フィルムに3点切り出した後、約20mm厚×300
mm外角(260mm内角)の木枠に両面テープ及び金
属クリップにてフィルムを緊張状態で固定したもの(緊
張試験片)を用いた。ポリ乳酸系樹脂製品の耐熱性の評
価は、収縮フィルムにおける熱収縮処理工程(例えば、
3方シールしたピロー又はL型包装機での包装体シュリ
ンク工程)、及び、非収縮フィルムにおける製造時の熱
収縮抑制の為の熱固定処理工程(例えば、テンター内で
の逐次二軸延伸後のヒートセット加工)を想定する為、
この緊張試験片をベルトコンベアで加熱炉内を移動させ
て任意に熱処理温度(熱風温度)と熱処理時間(加熱炉
通過時間)を設定することが可能な装置である加熱トン
ネル、K&Uシステムズ製のシュリンクトンネル、MS
−8441型を用いて、緊張試験片を120℃の加熱ト
ンネル内を3秒間で通過させた熱処理前後の外観の変化
を観察して、以下のように評価した。 評価尺度: 評価記号 尺度 ○ フィルムの外観は変わらず、良好であった。 × 部分的に靄(厚薄斑のある様な外観)が発生し、美観が損われた 。
【0034】<高速ヒートシール適性>標準状態(23
℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)したポ
リ乳酸系樹脂製品から試験片として長手方向(MD)に
30μm厚×25.4mm幅(=1inch幅)×25
0mm長の短冊状フィルムを3点切り出した後、AST
M−F1921−98に準拠してTheller社製の
ホットタック測定器を用いて、ダイの開放後1000m
S(=1秒)までの間に観測されるピーク強度であるホ
ットタック強度(HT強度:単位N/1inchW)を
以下のシール条件で測定した。 上部ダイ形状:60度V字型(先端断面R=1mmの半
丸状×5.25inch長)金属製ダイ 下部ダイ形状:平型(0.5inch幅×5.25in
ch長)ゴムライニングダイ シール面寸法:1inch×1mm シール温度:(上部ダイ温度)120℃、(下部ダイ温
度)25℃ シール時間:1000mS シール圧力:13±1MPa
【0035】ポリ乳酸系樹脂製品の高速ヒートシール適
性は、フィルム又はシート状物のポリ乳酸系樹脂製品
が、巻物状原反フィルムの状態から包装機械又は製袋機
にて連続して包装体やバッグ等に高速ヒートシール加工
する場合に、被包装物がシール部より破出したりシール
部が部分的に剥離(又は破断)しない連続ヒートシール
安定性の観点から、包装機械や製袋機における高速ヒー
トシール強度に相当するホットタック強度(HT強度:
ピーク強度、単位N/1inchW)により、以下のよ
うに評価した。 評価尺度: 評価記号 HT強度 尺度 ○ 5以上 強度が実用域で、被包装体の破出やシール線破れ がない。 × 5未満 シール部が剥離(破断)し、被包装物が破出する 場合がある。
【0036】(8)総合評価 上記の機械適性、透明性、耐熱性、高速ヒートシール適
性の評価の総合結果指標を以下に示す。 評価尺度: 評価記号 尺度 ○ ×、△が無くて○がある場合、課題は高水準に達成される。 △ ×が無くて△がある場合で、課題を達成したとは言い難い。 × ×がある場合で、課題が達成されていない。 以下の実施例および比較例においては、ポリ乳酸系樹脂
製品の一つの形態であるフィルムについて評価を行っ
た。そして、ポリ乳酸系樹脂は、公知の縮重合法(溶液
法)や開環重合法(ラクチド法)により得られた表1に
示すポリ乳酸重合体を用いた。尚、市販されているポリ
乳酸重合体も同様な方法で得られることは言うまでも無
く、表1に示す可塑剤、脂肪族ポリエステルと同様に商
業的に容易に入手可能である。
【0037】フィルムへの延伸加工は、表2の樹脂組成
となる様に表1の樹脂原料を同方向2軸押出機を用いて
溶融混練してTダイより樹脂温度200℃の樹脂を押出
し、35℃のキャステイングロールにて急冷して得た実
質的に非晶質シートを、75℃に加熱してMD方向に3
倍ロール延伸、次いでテンターで延伸温度80℃にてT
D方向に4倍延伸して、その後延伸した状態でフィルム
を室温付近まで冷却することで、厚さ30μmのポリ乳
酸系樹脂の延伸フィルムを得た。尚、実施例と比較例の
全ての例において、上記の延伸加工によるフィルムを使
用した。但し、本発明におけるポリ乳酸系樹脂製品の樹
脂組成及び形態がこれに限定されるものではない。
【0038】
【実施例1〜3】及び
【比較例1〜2】表2に示す実施例1〜3及び比較例1
〜2のポリ乳酸系樹脂製品は、表1の高結晶性ポリ乳酸
(A)と低結晶性ポリ乳酸(B)のポリ乳酸重合体のみ
からなる樹脂組成の延伸フィルムについて評価したもの
である。表1内の評価結果に示すように、ΔHm≧10
且つ相転移指標(Tα−Tg)≦15、又は、重量比
(A)/(B)が80/20〜40/60且つ加重平均
光学純度OP(av)が90〜80の範囲に相当する実施例
1〜3は、機械適性、透明性、耐熱性、高速ヒートシー
ル適性の全てに優れたものであった。
【0039】
【実施例4及び比較例3】表2に示す実施例4及び比較
例3のポリ乳酸系樹脂製品は、表1の高結晶性ポリ乳酸
(A)及び/又は低結晶性ポリ乳酸(B)のポリ乳酸重
合体に対して可塑剤を配合した樹脂組成の延伸フィルム
について評価したものである(ポリ乳酸重合体を100
重量部として可塑剤配合量を重量部で表示した)。表2
内の評価結果に示すように、比較例3はポリ乳酸重合体
に相溶性のある可塑剤配合により、若干のホットタック
強度の向上が見られるが、相転移指標(Tα−Tg)が
依然大きいためにホットタック強度は十分とは言えず、
実用域での高速ヒートシール適性に欠ける結果となっ
た。実施例4はΔHm≧10且つ相転移指標(Tα−T
g)≦15であるため、機械適性、透明性、耐熱性、高
速ヒートシール適性の全てに優れたものであった。
【0040】
【比較例4〜5】表2に示す比較例4のポリ乳酸系樹脂
製品は、表1の高結晶性ポリ乳酸(A)及び/又は低結
晶性ポリ乳酸(B)のポリ乳酸重合体に脂肪族ポリエス
テルを配合した樹脂組成の延伸フィルムについて評価し
たものである(ポリ乳酸重合体を100重量部として脂
肪族ポリエステル配合量を重量部で表示した)。表2内
の評価結果に示すように、ポリ乳酸重合体と相溶性の悪
い樹脂の配合により、相転移温度Tαやガラス転移温度
Tgがそれぞれ複数存在しており、透明性の悪いもので
あった。
【0041】念の為に、表2に示す実施例1〜4及び比
較例1〜4のポリ乳酸系樹脂製品であるフィルムについ
て、フジキカイ製の横型ピローシュリンク包装機、FW
3451A型を用いて、40パック/分の速度でシュリ
ンク包装体を100パックずつ作成し、仕上がり外観の
評価を行った。被包装物としては発泡ポリスチレン製ト
レーに延伸ポリスチレン透明シートの蓋の付いた弁当容
器を用い、弁当容器の周りにフィルムを筒状に送り、被
包装物の底部のフィルムの合わせ目を高速ヒートシール
し、引き続き、筒状になったフィルムの両端を溶断シー
ルを行った(余裕率は縦及び横方向共に30%)。空気
抜きの小孔は被包装物の底部に針状の突起により生じさ
せた。引き続き120℃の加熱トンネルに搬送し、トン
ネル滞留時間は3秒で収縮を行い、シュリンク包装体を
得た。比較例1及び比較例4のフィルムによるシュリン
ク包装体は、いづれも全ての包装体のポリスチレン透明
シート蓋を覆っているフィルム部分の表面上に部分的に
フィルムの厚み斑の様な靄が見られ仕上がり美観が悪い
ものとなり、比較例2及び比較例3のフィルムによるシ
ュリンク包装体は、いづれも8割方の包装体のシール部
に破れが見られた。比較例5のフィルムによるシュリン
ク包装体は、被包装物の透明シートの蓋部分が白く霞ん
で見えた。本実施例のフィルムによるシュリンク包装体
は、いづれも100パック全てにおいて、シール部での
破れも無く、フィルムの外観及び仕上がりに優れてお
り、機械適性、透明性、耐熱性、高速ヒートシール適性
の全てを満足するものであることを確認した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】本発明のポリ乳酸系樹脂製品は自然環境
中での生分解性を有し、機械適性、透明性、耐熱性、高
速ヒートシール適性に優れたポリ乳酸系樹脂製品であ
る。また、それによって包装された包装体、並びに、そ
れを用いた複合材料は、ポリ乳酸系樹脂からなる生分解
性を有する熱収縮性又は熱非収縮性の延伸フィルム又は
シート状物、具体的には、弁当や惣菜容器オーバーラッ
プ用等の収縮性フィルム又はシート状物、又は、チャッ
ク付き透明バッグ用等の非収縮性フィルム又はシート状
物として非常に有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鋤柄 正幸 三重県鈴鹿市平田中町1番1号 旭化成株 式会社内 Fターム(参考) 3E086 AB02 AD13 AD16 BA02 BA04 BA16 BA19 BA35 BB22 BB41 BB51 BB57 BB62 BB67 BB90 CA01 4F071 AA43 AA83 AA86 AA89 AF29Y AF52 AH04 BC01 BC07 BC12 BC17 4J002 CF18W CF18X CF19W CF19X GG00

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 L −乳酸及び/又はD −乳酸が主成分の
    ポリ乳酸重合体を主体とするポリ乳酸系樹脂製品おい
    て、結晶融解熱量ΔHmが10J/g以上、且つ、実質
    1つの相転移指標(Tα−Tg)が15℃以下であるこ
    とを特徴とするポリ乳酸系樹脂製品。[但し、上記式中
    の記号のTαは動的粘弾性の温度依存性に対する試験
    (JIS−K7198A)での損失正接tanδの相転
    移温度(単位℃)、Tgは示差走査熱量測定(JIS−
    K7121)でのガラス転移温度(単位℃)、ΔHmは
    示差走査熱量測定(JIS−K7122)での融点Tm
    における結晶融解熱量(単位J/g)である。]
  2. 【請求項2】 10≦(Tα−Tg)≦15、且つ、1
    0≦ΔHm≦30である請求項1記載のポリ乳酸系樹脂
    製品。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載のポリ乳酸
    系樹脂製品よりなる層を少なくとも1層含む複合体であ
    ることを特徴とするポリ乳酸系樹脂製品。
  4. 【請求項4】ASTM−F1921−98に準拠したヒ
    ートシール部位25.4mm幅当りのホットタック強度
    のピーク値が5N以上であることを特徴とする請求項1
    〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂製品。
  5. 【請求項5】 厚み30μm当りの曇度が3%未満であ
    ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポ
    リ乳酸系樹脂製品。
  6. 【請求項6】 L −乳酸及び/又はD −乳酸が主成分の
    ポリ乳酸重合体を主体とするポリ乳酸系樹脂製品おい
    て、該ポリ乳酸重合体が、下記式(1)〜(3)を満足
    する光学純度OP(A) の結晶性ポリ乳酸(A) と光学純度
    OP(B) の非晶性ポリ乳酸(B)を混合した組成物である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ
    乳酸系樹脂製品。 (1) 90%≦OP(A) ≦100%, 70%≦OP
    (B) ≦80% (2) 40%≦[A]/([A]+[B])≦80% (3) 80%≦OP(av)≦90% [但し、OP(av)は加重平均光学純度、OP(av)
    ([A]×OP(A) +[B]×OP(B) )/100、
    [A]+[B]=100である。又、OP(A) 及び
    [A]は結晶性ポリ乳酸(A)の光学純度(単位%)及
    び重量比率(単位%)、OP (B) 及び[B]は非晶性ポ
    リ乳酸(B)の光学純度(単位%)及び重量比率(単位
    %)を表す。]
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