JP2003089983A - 伸縮性に優れた人工皮革とその製造方法 - Google Patents

伸縮性に優れた人工皮革とその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】人工皮革の表面品位を低下させることなく、伸
縮性、特に従来の方法では達成できなかった長さ方向の
伸縮性を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革
の製造方法を提供すること。 【解決手段】主として単繊維繊度0.9dtex以下の
極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された
人工皮革において、長さ方向の伸長率が15%以上、長
さ方向の伸長回復率が80%以上、かつ少なくとも片側
の表面に高分子層が形成されていることを特徴とする伸
縮性に優れた人工皮革、および主として単繊維繊度0.
9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾
性体で構成された人工皮革の少なくとも片側の表面に、
収縮処理により長さ方向に10%以上収縮する収縮性シ
ートを接着した後に、収縮処理を施し、次いで収縮性シ
ートを除去する伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伸縮性に優れた人
工皮革およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の不織布構造物からなる人工皮革
は、伸縮性に乏しく、特に長さ方向については、殆ど伸
縮性がないものであった。これは、製造工程において絶
えず長さ方向に張力が加えられ、長さが伸びることが原
因として挙げられる。幅方向については、製造工程にお
いて比較的リラックスした状態で加工されるので、長さ
方向に比べると伸縮性を付与しやすく、例えば特公平6
−39747号公報では、極細繊維絡合体の内部に伸縮
性織物が介在した積層絡合体中に高分子弾性体が充填さ
れた人工皮革により、幅方向に伸縮性を有する人工皮革
が示されているが、長さ・幅ともに伸縮性を有する人工
皮革を製造することは難しかった。
【0003】長さ方向の伸縮性を付与する方法として、
特開2000−303365号公報では、長さを縮める
手段として、染色前にオーバーフィードし熱処理する方
法が示唆されているが、不織布の絡合体のみでは生機加
工段階までに収縮処理が施されているため、更なる染色
前での熱処理による長さ方向の収縮は極めて難しく、伸
長率5〜15%程度の低レベルなものを製造することは
可能だが、伸長率15%を越えるような十分な伸縮性を
得ることが難しいので、この方法は極めて限られたシー
トのみに有効であり、一般的とは言い難い。
【0004】また人工皮革に伸縮性を付与すべく、極細
繊維の密度を低くし、高分子弾性体の密度を高くした場
合、幅方向の伸縮性は向上するとしても、上述の理由に
より、長さ方向の伸縮性を付与することは難しい上に、
極細繊維の密度が低いことにより表面品位が良好な人工
皮革を得るのが難しかった。
【0005】更に人工皮革に伸縮性を与えた場合、耐摩
耗特性、特に抗ピル性が悪化し、人工皮革をシャツ等に
縫製して着用しているうちに、襟や袖などの摩擦頻度の
高い部分において毛玉(ピリング)が多数発生し外観を悪
化させるため、人工皮革の価値を著しく低下させるとい
う問題を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、人工
皮革の表面品位を低下させることなく、伸縮性、特に従
来の方法では安定して達成できなかった長さ方向の伸縮
性を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革およ
びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために次のような構成を有する。即ち、主とし
て単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維
絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革において、
長さ方向の伸長率が15%以上、長さ方向の伸長回復率
が80%以上、かつ少なくとも片側の表面に高分子層が
形成されていることを特徴とする伸縮性に優れた人工皮
革および主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細
繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工
皮革の少なくとも片側の表面に、収縮処理により長さ方
向に10%以上収縮する収縮性シートを接着した後に、
収縮処理を施し、次いで収縮性シートを除去することを
特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で言う伸縮性に優れた人工
皮革とは、長さ方向の伸長率が15%以上、好ましくは
20%以上で、かつ長さ方向の伸長回復率が80%以
上、好ましくは85%以上であるものを言うものであ
る。伸長率が15%未満では、人工皮革をシャツなどに
縫製して着用したときの「つっぱり感」が大きいため好
ましくない。伸長回復率が80%未満では、肘などの伸
びやすい部分で「わらい」が生じやすいので好ましくな
い。長さ方向に加え、幅方向の伸長率が15%以上、好
ましくは20%以上で、かつ幅方向の伸長回復率が80
%以上、好ましくは85%以上であることが、着用感を
高めるためには好ましい。
【0009】本発明の伸縮性に優れた人工皮革は、少な
くとも片側の表面に高分子層が形成されている。本発明
における高分子層とは、高分子が人工皮革の少なくとも
片側の表面に膜状、多数の点状、格子状などの形状で存
在しているものを言う。
【0010】本発明に用いる高分子は、酢酸ビニル樹
脂、アクリル樹脂、天然ゴム、ポリウレタン樹脂、エポ
キシ樹脂など、接着剤の成分として用いられるものであ
ればどのようなものでも良いが、伸縮性に優れている点
で高分子弾性体であるのが好ましく、中でもポリウレタ
ン樹脂が伸縮性および実用性に優れている点で特に好ま
しい。
【0011】高分子層として高分子弾性体の層を用いる
場合には、高分子層の形状は膜状、多数の点状、格子状
などどのような形状でも構わないが、高分子層として伸
縮性の低い高分子を用いる場合には、高分子層の形状は
多数の点状など、人工皮革の伸縮性を阻害しないような
形状にするのが好ましい。
【0012】更に、製品表面の耐久性としては、JIS
B7753に規定されるサンシャインカーボンアーク灯
式耐光性試験機で100時間光照射後、温度70℃、相
対湿度90%の雰囲気に1週間放置することにより、人
工皮革を強制劣化させた後の、JISL1906に規定
されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦
した前後における外観変化は、JISL1076に規定
される判定基準で3号以上であることが重要である。3
号未満では人工皮革をシャツなどに縫製して着用したと
きに毛玉(ピリング)が発生しやすいため好ましくない。
【0013】本発明において、伸縮性を付与するために
用いられる人工皮革は、主として単繊維繊度0.9dt
ex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で
構成された人工皮革であり、公知の方法により製造する
ことができるが、このものの製造方法は特に限定される
ものではない。
【0014】また本発明の人工皮革には、編織物が絡合
一体化されていても構わない。編織物は、平織、紗織な
ど、どのような組織を用いても良く、編織物を構成する
糸としては、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維
糸条が使用される。
【0015】極細繊維を形成するポリマーとしては、例
えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重
合ナイロンなどのポリアミド類、ポリエチレンテレフタ
レート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン
テレフタレートおよび/またはそれらの共重合体などの
ポリエステル類などを用いることができるが、特に限定
されるものではない。
【0016】極細繊維の繊度は、0.9dtex以下で
あり、好ましくは0.0001dtex以上0.9dt
ex以下である。極細繊維の繊度が0.9dtexを越
えると、人工皮革特有の表面のソフトなタッチが得られ
難いので好ましくない。極細繊維の繊度が0.0001
dtex未満であると、繊維強度が低くなるため好まし
くない。
【0017】極細繊維を製造する方法としては、極細化
可能な複合繊維を製造した後に、極細化可能な複合繊維
の少なくとも1成分を溶解除去または物理的、化学的作
用により剥離、分割して得る方法、あるいは単成分の極
細繊維を直接紡糸、延伸して得る方法を用いることがで
きる。極細化可能な複合繊維を用いる場合には、極細化
可能な複合繊維をシート化した後に極細化処理を施すの
が一般的である。
【0018】極細化可能な複合繊維を構成するポリマー
の組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート、
ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタ
レートおよび/またはそれらの共重合体などのポリエス
テル類、ポリエチレン、ポリスチレンなどのポリオレフ
ィン類などを適宜組み合わせて用いることができる。
【0019】極細繊維または極細化可能な繊維は、繊維
をウェブ化し、ニードルパンチ、ウォータージェットパ
ンチおよびこれらを組み合わせた絡合手段によりシート
化することができるが特に限定されるものではない。
【0020】こうして得られたシートに対し、極細化処
理および高分子弾性体付与処理を行うことにより、主と
して単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊
維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革を得るこ
とができる。
【0021】極細化処理とは、例えばポリエチレンテレ
フタレートとポリスチレンからなる海島型繊維であれば
トリクロロエチレンなどによる脱海処理であり、分割型
繊維であればアルカリ処理や擦過、叩解などの機械的刺
激によって、極細繊維を発現させる処理のことである。
【0022】極細化処理は高分子弾性体をシートに付与
する前に行っても良いし、高分子弾性体を付与した後に
行っても良い。
【0023】高分子弾性体としては、例えば、ポリウレ
タンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレ
タン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、
アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン
・ブタジエンエラストマーなどを用いることができる
が、中でも、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエ
ラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーな
どのポリウレタン系エラストマーが実用性に優れている
点で好ましい。これらのポリウレタン系エラストマーと
しては、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテル
ジオール、ポリエステルポリエーテルジオール、ポリラ
クトンジオール、ポリカーボネートジオールなどの平均
分子量500〜3500のポリマージオールから選ばれ
た少なくとも1種を用いるのが好ましい。製品の耐久性
の観点から、より好ましくは、ポリカーボネートジオー
ルを30重量%以上含むポリマージオールを用いたポリ
ウレタンがよい。ポリカーボネートジオールが30重量
%未満では、耐久性が低下するので好ましくない。
【0024】本発明でいうポリカーボネートジオールと
は、ジオール骨格がカーボネート結合を介して連結され
て高分子鎖を形成し、その両末端に水酸基を有するもの
である。該ジオール骨格は、原料として用いるグリコー
ルにより決定されるが、その種類は特に制限されること
はなく、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,5−
ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチ
ル−1,5−ペンタンジオールを用いることができる。
また、これらのグリコール群から選ばれた少なくとも2
種以上のグリコールを原料として用いた共重合ポリカー
ボネートジオールは、特に柔軟性と外観に優れた人工皮
革を得ることができるので好ましい。また、特に柔軟性
に優れた人工皮革を得る場合は、耐久性を損なわない範
囲でポリマージオール中にカーボネート結合以外の結
合、例えば、エステル結合、エーテル結合などを導入す
ることが好ましい。
【0025】かかる化学結合を導入する形態としては、
ポリカーボネートジオールとそれ以外のポリマージオー
ルをそれぞれ単独で重合したものを混合して、ポリウレ
タンの重合時に適当な比率で組み合わせて用いる方法を
採用することができる。
【0026】高分子弾性体の付量は、製品の柔軟性、表
面タッチ、染色均一性などから、固形分として対極細繊
維重量比で10〜70重量%の範囲が好ましい。付量が
10重量%未満では、摩耗性が低下しやすく、付量が7
0重量%を越えると風合が硬くなるので好ましくない。
【0027】高分子弾性体中に必要に応じて着色剤、酸
化防止剤、制電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤な
どの添加剤を配合してもよい。
【0028】以上の構成を有する人工皮革の少なくとも
片側の表面は起毛処理により繊維立毛面が形成されてい
る。繊維立毛面を形成させる方法は、サンドペーパーな
どによるバフィングなどの各種方法を用いる。この人工
皮革はサーキュラー、ユニエースなどの液流染色機を用
いて染色したものであっても良いし、以下の方法で伸縮
性を与えた後に染色することも可能である。
【0029】次いで上記の人工皮革に伸縮性を与える方
法を説明する。
【0030】本発明では単繊維繊度0.9dtex以下
の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成され
た人工皮革の少なくとも片側の表面に、収縮処理により
長さ方向に10%以上収縮する収縮性シートを接着した
後に、収縮処理を施し、次いで収縮性シートを除去する
ことにより、人工皮革に伸縮性を与える。
【0031】収縮性シートとしては、シュリンクフィル
ムやポリエステル系高収縮糸で構成された編織物のよう
に加熱により面積収縮するシートや、ポリアミド糸で構
成された編織物のようにベンジルアルコールまたはフェ
ニルエチルアルコールの乳化液を用いて面積収縮させる
ことのできるシートを使用することができる。
【0032】収縮性シートの収縮率は、長さ方向に10
%以上、好ましくは15%以上である。収縮率が10%
未満では、人工皮革に15%以上の伸長率を与えるのが
難しいので好ましくない。長さ方向および幅方向ともに
10%以上収縮する収縮性シートを用いれば、長さ方向
および幅方向の両方に伸縮性を付与することも可能であ
る。
【0033】シュリンクフィルムの成分は、ポリ塩化ビ
ニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレ
フタレートなどを適宜選択することができる。またシュ
リンクフィルムの厚みを厚くすることにより、シュリン
クフィルムの収縮力を高め、人工皮革と接着させた後、
収縮処理した時の収縮率を高めることができる。
【0034】ポリエステル系高収縮糸を形成するポリマ
ーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまた
はそれらの共重合体などのポリエステル類の未延伸糸、
または延伸倍率を低くすることにより収縮率を高めたも
のや、イソフタル酸などの共重合成分を加えることで収
縮率を高めたものを用いることができる。
【0035】ポリアミド糸を形成するポリマーとして
は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合
ナイロンなどのポリアミド類を用いることができる。
【0036】ポリエステル系高収縮糸で構成された編織
物あるいはポリアミド糸で構成された編織物は、平織、
紗織など、どのような組織を用いても構わないが、熱処
理などを極力抑え、収縮率を低下させないように製織し
たものであるのが好ましい。
【0037】前述の人工皮革と収縮性シートは接着剤に
より接着する。
【0038】本発明で用いる接着剤は、酢酸ビニル樹脂
系、アクリル樹脂系、天然ゴム系、ポリウレタン樹脂
系、エポキシ樹脂系などどのようなものを用いても構わ
ないが、紫外線硬化型接着剤や湿式凝固型接着剤のよう
に非加熱で接着できるものが好ましく、中でも湿式凝固
型ポリウレタン樹脂系接着剤が伸縮性および実用性が優
れている点で特に好ましい。加熱により接着する接着剤
を用いる場合には、収縮性シートが収縮する温度以上で
加熱すると、人工皮革と収縮性シートが完全に接着する
前に収縮性シートのみが収縮し、人工皮革と収縮性シー
トが剥離しやすくなるので、低温で接着可能な接着剤を
選択するか、低温で時間をかけて接着する方法を適用す
ると良い。
【0039】また本発明に用いる接着剤は、最終的に人
工皮革の少なくとも片側の表面に高分子層として残留さ
せることにより、人工皮革の伸縮性を制御するものであ
るので、高分子層の形状も重要である。高分子層の形状
は、膜状、点状、格子状などであり、接着剤の塗布方法
により調整が可能である。例えば、接着剤をシート全面
に膜状に塗布する面接着を行えば、接着剤の層は膜状の
形状にすることができる。この場合には、接着剤として
は高分子弾性体からなる接着剤を用いることにより、高
分子弾性体の膜状の層を形成させ、人工皮革の伸長回復
率を向上させることができる。高分子弾性体からなる接
着剤としては、ポリウレタン樹脂系接着剤を用いるのが
伸縮性および実用性に優れている点で好ましい。また接
着剤に用いるポリマーの種類や膜の厚みは、要求される
伸縮性に応じて適宜選択することができる。
【0040】接着方法として、接着剤を多数の点状に塗
布し点状の接着剤層を形成させる点接着、あるいは接着
剤を格子などの模様状に塗布し格子状の接着剤層を形成
させる接着方法を用いれば、収縮後に人工皮革表面に意
図的に凹凸を形成させることも可能である。
【0041】次いで人工皮革と収縮性シートが接着一体
化したシートを収縮させる。収縮方法は、被処理試料を
加熱により収縮させる場合には、熱風、熱水、スチーム
などを用いることができる。この時の収縮率は長さ方向
に10%以上であることが、人工皮革に15%以上の伸
長率を与えるためには好ましい。
【0042】収縮率は、収縮処理時の加熱温度、収縮性
シートの収縮率および収縮力などにより制御することが
可能である。例えばシュリンクフィルムの場合には、ポ
リマー種やフィルム厚みにより収縮力を調節できる。
【0043】また被処理試料をベンジルアルコールまた
はフェニルエチルアルコールの乳化液で処理して収縮さ
せる場合には、被処理試料を常温の乳化液中に浸漬した
後、熱水に浸漬する方法、被処理試料を加熱した乳化液
中に浸漬する方法、または被処理試料を乳化液中に浸漬
し徐々に昇温して加熱する方法を用いることができる。
【0044】以上の収縮処理を行った時、人工皮革が収
縮性シートの収縮力に引きつられて収縮するため、人工
皮革を構成する極細繊維は挫屈構造を形成する。したが
って、次いで収縮性シートを除去することにより、伸縮
性に優れた人工皮革を得ることができる。
【0045】人工皮革と収縮性シートが接着一体化した
シートを収縮させた後、収縮性シートを除去する方法と
しては、機械的な剥離、サンドペーパーによる研削、ま
たはスライスなどの方法を用いることができる。
【0046】収縮性シートを除去したとき、接着剤の一
部は人工皮革に残留し人工皮革の表面に高分子層を形成
することにより、人工皮革の伸縮性を調整することがで
き、高分子層が高分子弾性体の膜状または格子状の層で
あれば、伸長回復率を向上させることも可能である。肌
触り、見た目などが問題となる場合には、サンドペーパ
ーによる研削やスライスなどの方法で、伸縮性を損なわ
ない程度に高分子層を除去しても構わない。
【0047】
【実施例】次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説
明する。
【0048】実施例における伸長率および伸長回復率
は、以下に示す方法で測定したものである。 (1)伸長率:5cm×約30cmのサンプルを長さ方
向、幅方向にそれぞれ3枚ずつ採取し、定速伸長型引張
試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、引張速度2
0cm/minで1.8kgまで引き伸ばし、その時の
つかみ間隔を測り、次の式により伸長率(%)を求め、3
枚の平均値より求めた。
【0049】伸長率=(L1−L)/L×100(%) L :つかみ間隔 L1:1.8kgまで引き伸ばしたときのつかみ間隔 (2)伸長回復率:5cm×約30cmのサンプルを長
さ方向、幅方向にそれぞれ3枚ずつ採取し、定速伸長型
引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、次に上
記の方法で求めた伸長率の80%の長さまで伸ばして、
1分間放置した後、同じ速度で元の位置まで戻し3分間
放置する。この動作を5回繰り返した後に、サンプルの
重さと同等の荷重まで引き伸ばしたときの伸びを5回繰
り返し伸長後の残留伸びとし、次の式により伸長回復率
(%)を求め、3枚の平均値より求めた。
【0050】 伸長回復率(%)=(L2−L3)/L2×100 L2:伸長率の80%の伸びに相当するチャート上の長
さ(cm) L3:5回繰り返し伸長後の残留伸びに相当するチャー
ト上の長さ(cm) (3)耐久性:JIS B7753規定のサンシャイン
カーボンアーク灯式耐光性試験機で1000時間光照射
した後、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中に3週
間放置する強制劣化処理を施した直径4.5cmの円形
サンプルを、JIS L1096に規定されるマーチン
デール摩耗試験条件で摩擦した前後の外観変化をJIS
L1076規定の判定基準で判定した。 実施例1 極細繊維成分がポリエチレンテレフタレート、高分子弾
性体がポリマージオールとしてポリテトラメチレングリ
コールとポリカプロラクトングリコールの75:25混
合物、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメ
タンジイソシアネート、鎖伸長剤としてメチレンビスア
ニリンを用い常法により作製したポリウレタンである人
工皮革であって、伸度が長さ方向79%、幅方向118
%、伸長率が長さ方向6.8%、幅方向17.4%、伸
長回復率が長さ方向74.8%、幅方向78.1%であ
る人工皮革の片側の表面に、湿式凝固型ポリウレタンか
らなる接着剤を塗布した後、収縮性シートとして沸騰水
収縮率が長さ方向45.8%、幅方向47.6%である
ポリエチレンテレフタレートのシュリンクフィルム(厚
み40μm)を積層し、次いで水に浸漬し接着剤を凝固
させることにより接着した。
【0051】次いで、シートを沸騰水に浸漬し収縮させ
た。このシートを乾燥後、シュリンクフィルムを剥離し
て除去したところ、接着剤の層が人工皮革に残留し、伸
縮性の極めて良好な人工皮革が得られた。かくして得ら
れた人工皮革の評価結果を表1に示した。 実施例2 ポリマージオールとしてポリヘキサメチレンカーボネー
トグリコールとポリネオペンチルアジペートの70:3
0混合物、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニ
ルメタンジイソシアネート、鎖伸長剤としてエチレング
リコールを用い常法により作製したポリウレタンを用い
る以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。かくし
て得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。 実施例3 収縮性シートとして、沸騰水収縮率が長さ方向17.3
%、幅方向17.2%、目付26.4g/m2 、厚み
0.1mmであるポリエチレンテレフタレートの平織物
を用いる以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。
かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。 実施例4 収縮性シートとして、ナイロン糸の平織物を用い、収縮
方法として常温のベンジルアルコール乳化液に浸漬後、
沸騰水に浸漬する方法を用いる以外は実施例1と同じ方
法で人工皮革を得た。ナイロン糸の平織物のベンジルア
ルコール処理による収縮率は、長さ方向21.2%、幅
方向13.0%であった。かくして得られた人工皮革の
評価結果を表1に示した。 比較例1 沸騰水収縮率が長さ方向6.0%、幅方向3.7%で、
目付70g/m2 、厚み0.2mmであるポリエチレン
テレフタレートの平織物を用いる以外は実施例1と同じ
方法で人工皮革を得た。かくして得られた人工皮革の評
価結果を表1に示した。 比較例2 実施例1の方法で得られた人工皮革から、片側の表面に
形成された接着剤の層をサンドペーパーで研削して完全
に取り除いた人工皮革を作製した。評価結果を表1に示
した。
【0052】
【表1】
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、人工皮革の表面品位を
低下させることなく、伸縮性、特に従来の方法では達成
できなかった長さ方向の伸縮性を付与することのできる
伸縮性に優れた人工皮革の製造方法を提供することがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06M 15/564 D06M 15/564 D06N 3/14 101 D06N 3/14 101 D06M 3/38 Fターム(参考) 3B154 AA07 AA08 AB20 AB22 AB40 BA39 BA60 BB12 BB32 BD15 BD17 BE07 BF07 BF20 DA06 4F055 AA01 AA02 BA11 CA10 DA04 EA04 EA05 EA12 EA13 EA24 FA20 HA09 HA14 4L031 AA20 AB32 AB33 AB36 BA33 CA15 CA16 4L033 AA07 AA08 AB07 AC11 AC15 BA13 CA50

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主として単繊維繊度0.9dtex以下の
    極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された
    人工皮革において、長さ方向の伸長率が15%以上、長
    さ方向の伸長回復率が80%以上、かつ少なくとも片側
    の表面に高分子層が形成されていることを特徴とする伸
    縮性に優れた人工皮革。
  2. 【請求項2】伸長率が長さ方向および幅方向ともに15
    %以上、伸長回復率が長さ方向および幅方向ともに80
    %以上であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性
    に優れた人工皮革。
  3. 【請求項3】高分子層が高分子弾性体の層であることを
    特徴とする請求項1または2に記載の人工皮革。
  4. 【請求項4】下記条件で強制劣化処理を行った後、JI
    SL1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件
    で10000回摩擦した前後における外観変化が、JI
    SL1076に規定される判定基準で3号以上であるこ
    とを特徴とする請求項1、2または3に記載の伸縮性に
    優れた人工皮革。 強制劣化処理:下記の処理を(1)、(2)の順で施
    す。 (1)JISB7753に規定されるサンシャインカー
    ボンアーク灯式耐光性試験機で100時間光照射。 (2)温度70℃、相対湿度90%の雰囲気に1週間放
    置。
  5. 【請求項5】高分子弾性体が、ポリカーボネートジオー
    ルを30重量%以上含むポリマージオールを含有したポ
    リウレタンであること特徴とする請求項1、2、3また
    は4に記載の伸縮性に優れた人工皮革。
  6. 【請求項6】主として単繊維繊度0.9dtex以下の
    極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された
    人工皮革の少なくとも片側の表面に、収縮処理により長
    さ方向に10%以上収縮する収縮性シートを接着した後
    に、収縮処理を施し、次いで収縮性シートを除去するこ
    とを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
  7. 【請求項7】収縮処理により長さ方向および幅方向とも
    に10%以上収縮する収縮性シートを用いることを特徴
    とする請求項6に記載の伸縮性に優れた人工皮革の製造
    方法。
  8. 【請求項8】収縮性シートがシュリンクフィルムであ
    り、収縮処理が加熱処理であることを特徴とする請求項
    6または7に記載の伸縮性に優れた人工皮革の製造方
    法。
  9. 【請求項9】収縮性シートがポリエステル系高収縮糸で
    構成された編織物であり、収縮処理が加熱処理であるこ
    とを特徴とする請求項6または7に記載の伸縮性に優れ
    た人工皮革の製造方法。
  10. 【請求項10】収縮性シートがポリアミド糸で構成され
    た編織物であり、収縮処理がベンジルアルコールまたは
    フェニルエチルアルコールの乳化液で処理することを特
    徴とする請求項6または7に記載の伸縮性に優れた人工
    皮革の製造方法。
  11. 【請求項11】収縮処理が、常温のベンジルアルコール
    またはフェニルエチルアルコールの乳化液に浸漬した後
    に、熱水に浸漬して収縮させる方法であることを特徴と
    する請求項10に記載の人工皮革の製造方法。
  12. 【請求項12】収縮処理が、加熱したベンジルアルコー
    ルまたはフェニルエチルアルコールの乳化液に浸漬して
    収縮させる方法であることを特徴とする請求項10に記
    載の人工皮革の製造方法。
  13. 【請求項13】収縮処理が、常温のベンジルアルコール
    またはフェニルエチルアルコールの乳化液に浸漬した後
    に、乳化液を徐々に昇温して収縮させる方法であること
    を特徴とする請求項10に記載の人工皮革の製造方法。
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