JP3826752B2 - 伸縮性に優れた人工皮革とその製造方法 - Google Patents

伸縮性に優れた人工皮革とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性に優れた人工皮革およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の不織布構造物からなる人工皮革は、伸縮性に乏しく、特に長さ方向については、殆ど伸縮性がないものであった。これは、製造工程において絶えず長さ方向に張力が加えられ、長さが伸びることが原因として挙げられる。幅方向については、製造工程において比較的リラックスした状態で加工されるので、長さ方向に比べると伸縮性を付与しやすく、例えば特公平6−39747号公報では、極細繊維絡合体の内部に伸縮性織物が介在した積層絡合体中に高分子弾性体が充填された人工皮革により、幅方向に伸縮性を有する人工皮革が示されているが、長さ・幅ともに伸縮性を有する人工皮革を製造することは難しかった。
【0003】
長さ方向の伸縮性を付与する方法として、特開2000−303365号公報では、長さを縮める手段として、染色前にオーバーフィードし熱処理する方法が示唆されているが、不織布の絡合体のみでは生機加工段階までに収縮処理が施されているため、更なる染色前での熱処理による長さ方向の収縮は極めて難しく、伸長率5〜15%程度の低レベルなものを製造することは可能だが、伸長率15%を越えるような十分な伸縮性を得ることが難しいので、この方法は極めて限られたシートのみに有効であり、一般的とは言い難い。
【0004】
また人工皮革に伸縮性を付与すべく、極細繊維の密度を低くし、高分子弾性体の密度を高くした場合、幅方向の伸縮性は向上するとしても、上述の理由により、長さ方向の伸縮性を付与することは難しい上に、極細繊維の密度が低いことにより表面品位が良好な人工皮革を得るのが難しかった。
【0005】
更に人工皮革に伸縮性を与えた場合、耐摩耗特性、特に抗ピル性が悪化し、人工皮革をシャツ等に縫製して着用しているうちに、襟や袖などの摩擦頻度の高い部分において毛玉(ピリング)が多数発生し外観を悪化させるため、人工皮革の価値を著しく低下させるという問題を有していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、人工皮革の表面品位を低下させることなく、伸縮性、特に従来の方法では安定して達成できなかった長さ方向の伸縮性を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために次のような構成を有する。即ち、主として単繊維繊度0.9dtex以下のポリアミド類またはポリエステル類の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革において、長さ方向の伸長率が15%以上、長さ方向の伸長回復率が80%以上、かつ少なくとも片側の表面に高分子層が形成されていることを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革および主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革の少なくとも片側の表面に、収縮処理により長さ方向に10%以上収縮する収縮性シートを接着した後に、収縮処理を施し、次いで収縮性シートを除去することを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で言う伸縮性に優れた人工皮革とは、長さ方向の伸長率が15%以上、好ましくは20%以上で、かつ長さ方向の伸長回復率が80%以上、好ましくは85%以上であるものを言うものである。伸長率が15%未満では、人工皮革をシャツなどに縫製して着用したときの「つっぱり感」が大きいため好ましくない。伸長回復率が80%未満では、肘などの伸びやすい部分で「わらい」が生じやすいので好ましくない。長さ方向に加え、幅方向の伸長率が15%以上、好ましくは20%以上で、かつ幅方向の伸長回復率が80%以上、好ましくは85%以上であることが、着用感を高めるためには好ましい。
【0009】
本発明の伸縮性に優れた人工皮革は、少なくとも片側の表面に高分子層が形成されている。本発明における高分子層とは、高分子が人工皮革の少なくとも片側の表面に膜状、多数の点状、格子状などの形状で存在しているものを言う。
【0010】
本発明に用いる高分子は、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、天然ゴム、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂など、接着剤の成分として用いられるものであればどのようなものでも良いが、伸縮性に優れている点で高分子弾性体であるのが好ましく、中でもポリウレタン樹脂が伸縮性および実用性に優れている点で特に好ましい。
【0011】
高分子層として高分子弾性体の層を用いる場合には、高分子層の形状は膜状、多数の点状、格子状などどのような形状でも構わないが、高分子層として伸縮性の低い高分子を用いる場合には、高分子層の形状は多数の点状など、人工皮革の伸縮性を阻害しないような形状にするのが好ましい。
【0012】
更に、製品表面の耐久性としては、JISB7753に規定されるサンシャインカーボンアーク灯式耐光性試験機で100時間光照射後、温度70℃、相対湿度90%の雰囲気に1週間放置することにより、人工皮革を強制劣化させた後の、JISL1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後における外観変化は、JISL1076に規定される判定基準で3号以上であることが重要である。3号未満では人工皮革をシャツなどに縫製して着用したときに毛玉(ピリング)が発生しやすいため好ましくない。
【0013】
本発明において、伸縮性を付与するために用いられる人工皮革は、主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革であり、公知の方法により製造することができるが、このものの製造方法は特に限定されるものではない。
【0014】
また本発明の人工皮革には、編織物が絡合一体化されていても構わない。編織物は、平織、紗織など、どのような組織を用いても良く、編織物を構成する糸としては、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維糸条が使用される。
【0015】
極細繊維を形成するポリマーとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロンなどのポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよび/またはそれらの共重合体などのポリエステル類を用いる
【0016】
極細繊維の繊度は、0.9dtex以下であり、好ましくは0.0001dtex以上0.9dtex以下である。極細繊維の繊度が0.9dtexを越えると、人工皮革特有の表面のソフトなタッチが得られ難いので好ましくない。極細繊維の繊度が0.0001dtex未満であると、繊維強度が低くなるため好ましくない。
【0017】
極細繊維を製造する方法としては、極細化可能な複合繊維を製造した後に、極細化可能な複合繊維の少なくとも1成分を溶解除去または物理的、化学的作用により剥離、分割して得る方法、あるいは単成分の極細繊維を直接紡糸、延伸して得る方法を用いることができる。極細化可能な複合繊維を用いる場合には、極細化可能な複合繊維をシート化した後に極細化処理を施すのが一般的である。
【0018】
極細化可能な複合繊維を構成するポリマーの組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよび/またはそれらの共重合体などのポリエステル類、ポリエチレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン類などを適宜組み合わせて用いることができる。
【0019】
極細繊維または極細化可能な繊維は、繊維をウェブ化し、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチおよびこれらを組み合わせた絡合手段によりシート化することができるが特に限定されるものではない。
【0020】
こうして得られたシートに対し、極細化処理および高分子弾性体付与処理を行うことにより、主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革を得ることができる。
【0021】
極細化処理とは、例えばポリエチレンテレフタレートとポリスチレンからなる海島型繊維であればトリクロロエチレンなどによる脱海処理であり、分割型繊維であればアルカリ処理や擦過、叩解などの機械的刺激によって、極細繊維を発現させる処理のことである。
【0022】
極細化処理は高分子弾性体をシートに付与する前に行っても良いし、高分子弾性体を付与した後に行っても良い。
【0023】
高分子弾性体としては、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができるが、中でも、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが実用性に優れている点で好ましい。これらのポリウレタン系エラストマーとしては、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルポリエーテルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどの平均分子量500〜3500のポリマージオールから選ばれた少なくとも1種を用いるのが好ましい。製品の耐久性の観点から、より好ましくは、ポリカーボネートジオールを30重量%以上含むポリマージオールを用いたポリウレタンがよい。ポリカーボネートジオールが30重量%未満では、耐久性が低下するので好ましくない。
【0024】
本発明でいうポリカーボネートジオールとは、ジオール骨格がカーボネート結合を介して連結されて高分子鎖を形成し、その両末端に水酸基を有するものである。該ジオール骨格は、原料として用いるグリコールにより決定されるが、その種類は特に制限されることはなく、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを用いることができる。また、これらのグリコール群から選ばれた少なくとも2種以上のグリコールを原料として用いた共重合ポリカーボネートジオールは、特に柔軟性と外観に優れた人工皮革を得ることができるので好ましい。また、特に柔軟性に優れた人工皮革を得る場合は、耐久性を損なわない範囲でポリマージオール中にカーボネート結合以外の結合、例えば、エステル結合、エーテル結合などを導入することが好ましい。
【0025】
かかる化学結合を導入する形態としては、ポリカーボネートジオールとそれ以外のポリマージオールをそれぞれ単独で重合したものを混合して、ポリウレタンの重合時に適当な比率で組み合わせて用いる方法を採用することができる。
【0026】
高分子弾性体の付量は、製品の柔軟性、表面タッチ、染色均一性などから、固形分として対極細繊維重量比で10〜70重量%の範囲が好ましい。付量が10重量%未満では、摩耗性が低下しやすく、付量が70重量%を越えると風合が硬くなるので好ましくない。
【0027】
高分子弾性体中に必要に応じて着色剤、酸化防止剤、制電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤などの添加剤を配合してもよい。
【0028】
以上の構成を有する人工皮革の少なくとも片側の表面は起毛処理により繊維立毛面が形成されている。繊維立毛面を形成させる方法は、サンドペーパーなどによるバフィングなどの各種方法を用いる。この人工皮革はサーキュラー、ユニエースなどの液流染色機を用いて染色したものであっても良いし、以下の方法で伸縮性を与えた後に染色することも可能である。
【0029】
次いで上記の人工皮革に伸縮性を与える方法を説明する。
【0030】
本発明では単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革の少なくとも片側の表面に、収縮処理により長さ方向に10%以上収縮する収縮性シートを接着した後に、収縮処理を施し、次いで収縮性シートを除去することにより、人工皮革に伸縮性を与える。
【0031】
収縮性シートとしては、シュリンクフィルムやポリエステル系高収縮糸で構成された編織物のように加熱により面積収縮するシートや、ポリアミド糸で構成された編織物のようにベンジルアルコールまたはフェニルエチルアルコールの乳化液を用いて面積収縮させることのできるシートを使用することができる。
【0032】
収縮性シートの収縮率は、長さ方向に10%以上、好ましくは15%以上である。収縮率が10%未満では、人工皮革に15%以上の伸長率を与えるのが難しいので好ましくない。長さ方向および幅方向ともに10%以上収縮する収縮性シートを用いれば、長さ方向および幅方向の両方に伸縮性を付与することも可能である。
【0033】
シュリンクフィルムの成分は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどを適宜選択することができる。またシュリンクフィルムの厚みを厚くすることにより、シュリンクフィルムの収縮力を高め、人工皮革と接着させた後、収縮処理した時の収縮率を高めることができる。
【0034】
ポリエステル系高収縮糸を形成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートまたはそれらの共重合体などのポリエステル類の未延伸糸、または延伸倍率を低くすることにより収縮率を高めたものや、イソフタル酸などの共重合成分を加えることで収縮率を高めたものを用いることができる。
【0035】
ポリアミド糸を形成するポリマーとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロンなどのポリアミド類を用いることができる。
【0036】
ポリエステル系高収縮糸で構成された編織物あるいはポリアミド糸で構成された編織物は、平織、紗織など、どのような組織を用いても構わないが、熱処理などを極力抑え、収縮率を低下させないように製織したものであるのが好ましい。
【0037】
前述の人工皮革と収縮性シートは接着剤により接着する。
【0038】
本発明で用いる接着剤は、酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、天然ゴム系、ポリウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系などどのようなものを用いても構わないが、紫外線硬化型接着剤や湿式凝固型接着剤のように非加熱で接着できるものが好ましく、中でも湿式凝固型ポリウレタン樹脂系接着剤が伸縮性および実用性が優れている点で特に好ましい。加熱により接着する接着剤を用いる場合には、収縮性シートが収縮する温度以上で加熱すると、人工皮革と収縮性シートが完全に接着する前に収縮性シートのみが収縮し、人工皮革と収縮性シートが剥離しやすくなるので、低温で接着可能な接着剤を選択するか、低温で時間をかけて接着する方法を適用すると良い。
【0039】
また本発明に用いる接着剤は、最終的に人工皮革の少なくとも片側の表面に高分子層として残留させることにより、人工皮革の伸縮性を制御するものであるので、高分子層の形状も重要である。高分子層の形状は、膜状、点状、格子状などであり、接着剤の塗布方法により調整が可能である。例えば、接着剤をシート全面に膜状に塗布する面接着を行えば、接着剤の層は膜状の形状にすることができる。この場合には、接着剤としては高分子弾性体からなる接着剤を用いることにより、高分子弾性体の膜状の層を形成させ、人工皮革の伸長回復率を向上させることができる。高分子弾性体からなる接着剤としては、ポリウレタン樹脂系接着剤を用いるのが伸縮性および実用性に優れている点で好ましい。また接着剤に用いるポリマーの種類や膜の厚みは、要求される伸縮性に応じて適宜選択することができる。
【0040】
接着方法として、接着剤を多数の点状に塗布し点状の接着剤層を形成させる点接着、あるいは接着剤を格子などの模様状に塗布し格子状の接着剤層を形成させる接着方法を用いれば、収縮後に人工皮革表面に意図的に凹凸を形成させることも可能である。
【0041】
次いで人工皮革と収縮性シートが接着一体化したシートを収縮させる。収縮方法は、被処理試料を加熱により収縮させる場合には、熱風、熱水、スチームなどを用いることができる。この時の収縮率は長さ方向に10%以上であることが、人工皮革に15%以上の伸長率を与えるためには好ましい。
【0042】
収縮率は、収縮処理時の加熱温度、収縮性シートの収縮率および収縮力などにより制御することが可能である。例えばシュリンクフィルムの場合には、ポリマー種やフィルム厚みにより収縮力を調節できる。
【0043】
また被処理試料をベンジルアルコールまたはフェニルエチルアルコールの乳化液で処理して収縮させる場合には、被処理試料を常温の乳化液中に浸漬した後、熱水に浸漬する方法、被処理試料を加熱した乳化液中に浸漬する方法、または被処理試料を乳化液中に浸漬し徐々に昇温して加熱する方法を用いることができる。
【0044】
以上の収縮処理を行った時、人工皮革が収縮性シートの収縮力に引きつられて収縮するため、人工皮革を構成する極細繊維は挫屈構造を形成する。したがって、次いで収縮性シートを除去することにより、伸縮性に優れた人工皮革を得ることができる。
【0045】
人工皮革と収縮性シートが接着一体化したシートを収縮させた後、収縮性シートを除去する方法としては、機械的な剥離、サンドペーパーによる研削、またはスライスなどの方法を用いることができる。
【0046】
収縮性シートを除去したとき、接着剤の一部は人工皮革に残留し人工皮革の表面に高分子層を形成することにより、人工皮革の伸縮性を調整することができ、高分子層が高分子弾性体の膜状または格子状の層であれば、伸長回復率を向上させることも可能である。肌触り、見た目などが問題となる場合には、サンドペーパーによる研削やスライスなどの方法で、伸縮性を損なわない程度に高分子層を除去しても構わない。
【0047】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0048】
実施例における伸長率および伸長回復率は、以下に示す方法で測定したものである。
(1)伸長率:
5cm×約30cmのサンプルを長さ方向、幅方向にそれぞれ3枚ずつ採取し、定速伸長型引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、引張速度20cm/minで1.8kgまで引き伸ばし、その時のつかみ間隔を測り、次の式により伸長率(%)を求め、3枚の平均値より求めた。
【0049】
伸長率=(L1−L)/L×100(%)
L :つかみ間隔
L1:1.8kgまで引き伸ばしたときのつかみ間隔
(2)伸長回復率:
5cm×約30cmのサンプルを長さ方向、幅方向にそれぞれ3枚ずつ採取し、定速伸長型引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、次に上記の方法で求めた伸長率の80%の長さまで伸ばして、1分間放置した後、同じ速度で元の位置まで戻し3分間放置する。この動作を5回繰り返した後に、サンプルの重さと同等の荷重まで引き伸ばしたときの伸びを5回繰り返し伸長後の残留伸びとし、次の式により伸長回復率(%)を求め、3枚の平均値より求めた。
【0050】
伸長回復率(%)=(L2−L3)/L2×100
L2:伸長率の80%の伸びに相当するチャート上の長さ(cm)
L3:5回繰り返し伸長後の残留伸びに相当するチャート上の長さ(cm)
(3)耐久性:
JIS B7753規定のサンシャインカーボンアーク灯式耐光性試験機で1000時間光照射した後、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中に3週間放置する強制劣化処理を施した直径4.5cmの円形サンプルを、JIS L1096に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で摩擦した前後の外観変化をJISL1076規定の判定基準で判定した。
実施例1
極細繊維成分がポリエチレンテレフタレート、高分子弾性体がポリマージオールとしてポリテトラメチレングリコールとポリカプロラクトングリコールの75:25混合物、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、鎖伸長剤としてメチレンビスアニリンを用い常法により作製したポリウレタンである人工皮革であって、伸度が長さ方向79%、幅方向118%、伸長率が長さ方向6.8%、幅方向17.4%、伸長回復率が長さ方向74.8%、幅方向78.1%である人工皮革の片側の表面に、湿式凝固型ポリウレタンからなる接着剤を塗布した後、収縮性シートとして沸騰水収縮率が長さ方向45.8%、幅方向47.6%であるポリエチレンテレフタレートのシュリンクフィルム(厚み40μm)を積層し、次いで水に浸漬し接着剤を凝固させることにより接着した。
【0051】
次いで、シートを沸騰水に浸漬し収縮させた。このシートを乾燥後、シュリンクフィルムを剥離して除去したところ、接着剤の層が人工皮革に残留し、伸縮性の極めて良好な人工皮革が得られた。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
実施例2
ポリマージオールとしてポリヘキサメチレンカーボネートグリコールとポリネオペンチルアジペートの70:30混合物、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、鎖伸長剤としてエチレングリコールを用い常法により作製したポリウレタンを用いる以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
実施例3
収縮性シートとして、沸騰水収縮率が長さ方向17.3%、幅方向17.2%、目付26.4g/m2 、厚み0.1mmであるポリエチレンテレフタレートの平織物を用いる以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
実施例4
収縮性シートとして、ナイロン糸の平織物を用い、収縮方法として常温のベンジルアルコール乳化液に浸漬後、沸騰水に浸漬する方法を用いる以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。ナイロン糸の平織物のベンジルアルコール処理による収縮率は、長さ方向21.2%、幅方向13.0%であった。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
比較例1
沸騰水収縮率が長さ方向6.0%、幅方向3.7%で、目付70g/m2 、厚み0.2mmであるポリエチレンテレフタレートの平織物を用いる以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
比較例2
実施例1の方法で得られた人工皮革から、片側の表面に形成された接着剤の層をサンドペーパーで研削して完全に取り除いた人工皮革を作製した。評価結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
Figure 0003826752
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、人工皮革の表面品位を低下させることなく、伸縮性、特に従来の方法では達成できなかった長さ方向の伸縮性を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革の製造方法を提供することができる。

Claims (13)

  1. 主として単繊維繊度0.9dtex以下のポリアミド類またはポリエステル類の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革において、長さ方向の伸長率が15%以上、長さ方向の伸長回復率が80%以上、かつ少なくとも片側の表面に高分子層が形成されていることを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革。
  2. 伸長率が長さ方向および幅方向ともに15%以上、伸長回復率が長さ方向および幅方向ともに80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性に優れた人工皮革。
  3. 高分子層が高分子弾性体の層であることを特徴とする請求項1または2に記載の人工皮革。
  4. 高分子弾性体が、ポリカーボネートジオールを30重量%以上含むポリマージオールを含有したポリウレタンであること特徴とする請求項1、2または3に記載の伸縮性に優れた人工皮革。
  5. 下記条件で強制劣化処理を行った後、JISL1906に規定されるマーチンデール摩耗試験条件で10000回摩擦した前後における外観変化が、JISL1076に規定される判定基準で3号以上であることを特徴とする請求項に記載の伸縮性に優れた人工皮革。
    強制劣化処理:下記の処理を(1)、(2)の順で施す。
    (1)JISB7753に規定されるサンシャインカーボンアーク灯式耐光性試験機で100時間光照射。
    (2)温度70℃、相対湿度90%の雰囲気に1週間放置。
  6. 主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革の少なくとも片側の表面に、収縮処理により長さ方向に10%以上収縮する収縮性シートを接着した後に、収縮処理を施し、次いで収縮性シートを除去することを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
  7. 収縮処理により長さ方向および幅方向ともに10%以上収縮する収縮性シートを用いることを特徴とする請求項6に記載の伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
  8. 収縮性シートがシュリンクフィルムであり、収縮処理が加熱処理であることを特徴とする請求項6または7に記載の伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
  9. 収縮性シートがポリエステル系高収縮糸で構成された編織物であり、収縮処理が加熱処理であることを特徴とする請求項6または7に記載の伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
  10. 収縮性シートがポリアミド糸で構成された編織物であり、収縮処理がベンジルアルコールまたはフェニルエチルアルコールの乳化液で処理することを特徴とする請求項6または7に記載の伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
  11. 収縮処理が、常温のベンジルアルコールまたはフェニルエチルアルコールの乳化液に浸漬した後に、熱水に浸漬して収縮させる方法であることを特徴とする請求項10に記載の人工皮革の製造方法。
  12. 収縮処理が、加熱したベンジルアルコールまたはフェニルエチルアルコールの乳化液に浸漬して収縮させる方法であることを特徴とする請求項10に記載の人工皮革の製造方法。
  13. 収縮処理が、常温のベンジルアルコールまたはフェニルエチルアルコールの乳化液に浸漬した後に、乳化液を徐々に昇温して収縮させる方法であることを特徴とする請求項10に記載の人工皮革の製造方法。
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