JP2022119295A - 銀付調人工皮革及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】しなやかな風合いを維持しながら表面の折れ皺を緻密にし、さらに、釣り込みにおける面モロの発生を抑制できる銀付調人工皮革を提供する。【解決手段】第1の繊維を主体とする第1の不織布層と第2の繊維を主体とする第2の不織布層とを含む繊維絡合体と5~18質量%の水系ポリウレタンとを含む人工皮革基材、及び、第1の不織布層の表面に被着された銀面樹脂層と、を備え、第1の繊維が0.40dtex以下であり、第2の繊維は0.60dtex以下であり、第1の不織布層は第2の不織布層よりも繊維密度が高く、人工皮革基材の厚み方向の断面において、銀面樹脂層と第1の不織布層との界面から第2の不織布層に向かう厚さ200μmの領域である第1の領域、及び、第1の領域を除いた領域である第2の領域において、第1の領域の空隙率Aが10~20%であり、第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍である、銀付調人工皮革である。【選択図】図1
Description
本発明は、不織布を含む人工皮革基材に被着された銀面樹脂層を備える銀付調人工皮革に関する。
従来、不織布の内部の空隙にポリウレタンを付与した人工皮革基材の表面に、ポリウレタン樹脂層等の銀面調の樹脂層を積層した銀付調人工皮革等が知られている。このような銀付調人工皮革は、鞄、靴のアッパー材(甲材)、または衣類等の素材として広く用いられている。
天然皮革は、比重が高く、充実感が高いために、折り曲げたときには、細かい折れ皺が発生する。一方、銀付調人工皮革は、天然皮革に比べて充実感が低いために、折り曲げたときには、大柄な粗い皺が発生する。このような折り曲げたときの皺の状態の違いは、銀付調人工皮革と天然皮革との大きな違いとして認識されている。そのために、銀付調人工皮革においては、天然皮革の風合いにより近づけるべく、細かい折れ皺を発生させるような改良が求められている。
また、銀付調人工皮革は靴のアッパー材として広く用いられている。銀付調人工皮革をアッパー材として用いた靴の甲部は、次のような工程を経て製造される。型紙に沿って裁断された銀付調人工皮革の断片を縫製した後、銀付調人工皮革の断片を靴型(ラスト)に張力を掛けて引っ張りながら密着させた状態で、熱をかけてセットするような方法で靴の甲部の形状をセットする。このような成形は、釣り込みとも称されている。
釣り込みにおいては、銀付調人工皮革を引っ張りながら靴型に密着させるために、薄くなった銀付調人工皮革の銀面調の樹脂層の表面に、人工皮革基材を形成する繊維の凹凸の形状が表出する面モロとも称される外観を呈することがあった。このような面モロの発生は天然皮革には見られず、平滑な外観が好まれる皮革製の靴においては、欠点として認識されている。
銀付調人工皮革の外観や風合いの改良を目的としては、例えば、次のような技術が知られている。
例えば、下記特許文献1は、靴用途に好ましく使用される、天然皮革調の柔軟で充実感のある風合いと高い剥離強力を兼ね備えた銀付調人工皮革を開示する。具体的には、極細繊維を主体とする絡合不織布とその内部に含浸された弾性重合体からなり、下記を満足する人工皮革基材に銀面樹脂層を形成してなる銀付調人工皮革を開示する。(1)極細繊維の平均単繊度が0.06dtex以下であること、(2)極細繊維の強度が4.0cN/dtex未満であること、(3)人工皮革基材の表面側を構成する弾性重合体の見かけ密度Aと、裏面側を構成する弾性重合体の見かけ密度Bとが、0.07+B≧A≧0.01+B を満たすこと、(4)絡合不織布と弾性重合体との質量比が40:60~70:30であること、(5)人工皮革基材の見かけ密度が0.30~0.50g/cm3であること。
また、下記特許文献2は、機械的物性、特に人工皮革基材と銀面層との間の剥離強力に優れ、風合いが柔軟で、かつ天然皮革調の折れ皺と充実感を併せ持つ銀付調人工皮革を開示する。具体的には、平均繊度が0.001~0.5dtexである極細長繊維から成る長繊維絡合体と該絡合体に任意に含浸した高分子弾性体から成る人工皮革基材の少なくとも一方の面に銀面層を有し、かつ該銀面層と人工皮革基材が接着剤層により接着されている銀付調人工皮革であって、下記条件(1)と(2)とを同時に満足する銀付調人工皮革を開示する。:(1)人工皮革基材の高分子弾性体/極細長繊維の質量比が0/100~10/90の範囲である、(2)A1/A2≧0.85(式中、A1は銀付調人工皮革の厚さ方向に平行な任意の断面における、接着剤層と人工皮革基材の境界から人工皮革基材側に0~100μmの厚み範囲における高分子弾性体を除いた極細長繊維の平均空間占有率であり、A2は銀付調人工皮革の厚さ方向に平行な任意の断面における、接着剤層と基体層の境界から基体層側に100~300μmの厚み範囲における高分子弾性体を除いた極細長繊維の平均空間占有率である)
また、下記特許文献3は、柔軟で、充実感に優れ、銀付きシート状物にしたときの折れしわ感に優れ、更に上述したような片面側の突っ張り感のない、一体感のある天然皮革調の風合いを有するシート状物を開示する。具体的には、3次元絡合した不織布とミクロポーラス状に凝固したポリウレタンバインダーとからなるシート状物において、厚み方向に見掛け密度勾配を有する不織布に、ポリウレタンバインダーを多層に含有せしめることにより、繊維とポリウレタンバインダーの両者がシート状物の厚み方向において、同一方向の見掛け密度勾配を有することを特徴とする皮革様シート状物を開示する。
上述のように、従来から天然皮革調の折れ皺に近づけたり、充実感としなやかな風合いとを両立させたりするような技術は提案されてきた。しかしながら、しなやかな風合いを損なわずに表面の折れ皺を緻密にし、さらに、釣り込みにおける面モロの発生を抑制することができる銀付調人工皮革は得られにくかった。
本発明は、このような課題を解決した、しなやかな風合いを維持しながら表面の折れ皺を緻密にし、さらに、釣り込みにおける面モロの発生を抑制できる銀付調人工皮革を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、第1の繊維を主体とする第1の不織布層と第2の繊維を主体とする第2の不織布層とを含む繊維絡合体と繊維絡合体の空隙に付与された5~18質量%の水系ポリウレタンとを含む人工皮革基材、及び、第1の不織布層の表面に被着された銀面樹脂層と、を備え、第1の繊維の平均繊度が0.40dtex以下であり、第2の繊維の平均繊度は0.60dtex以下であり、第1の不織布層は第2の不織布層よりも繊維密度が高く、人工皮革基材の厚み方向の断面において、銀面樹脂層と第1の不織布層との界面から第2の不織布層に向かう厚さ200μmの領域である第1の領域、及び、第1の領域を除いた領域である第2の領域において、第1の領域の空隙率Aが10~20%であり、第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍である、銀付調人工皮革である。なお、ここで、主体とするとは、第1の不織布層を形成する繊維の60質量%以上が第1の繊維であること、または、第2の不織布層を形成する繊維の60質量%以上が第2の繊維であることを意味する。
このような銀付調人工皮革においては、第1の不織布層の繊維密度を第2の不織布層の繊維密度よりも高くして、人工皮革基材の銀面樹脂層を被着される第1の不織布の表層付近の第1の領域の空隙率Aを10~20%のように低くし、下層の第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍であるのように著しく高くなるように調整する。それにより、銀面樹脂層に被着される第1の不織布層の表層の充実度のみが高くなり、折り曲げたときに銀面樹脂層の表面に、細かい折れ皺を発生させやすくできる。また、水系ポリウレタンの含有割合が5~18質量%のように低く、第2の領域の空隙率Bが第1の領域の空隙率Aの2~3.3倍であることにより、人工皮革基材の中層~下層にしなやかな風合いを維持させることができる。また、水系ポリウレタンは第1の繊維及び第2の繊維を拘束しすぎない。このような構成によれば、第1の領域の空隙率Aが10~20%であって、第2の領域の空隙率Bよりも著しく低いために、銀付調人工皮革をアッパー材として用いて靴を製造する場合においては、靴型に釣り込んだ場合であっても、第2の領域の空隙率Bが高いために折り曲げたときの張力を緩和しやすく、また、第1の領域が緻密であるために、繊維の凹凸の形状が銀面樹脂層の表面に表出する面モロを発生させにくくする。
また、第2の繊維の平均繊度が第1の繊維の平均繊度の1.5倍以上であることが、上述のような第1の領域の空隙率Aを10~20%のように低くし、下層の第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍になるように調整しやすい点から好ましい。
また、第2の領域の空隙率Bは、第1の空隙率Aよりも15~40%高いことが、面モロを発生させにくい効果が充分に得られる点から好ましい。
また、第1の不織布層の繊維密度は、第2の不織布層の繊維密度の1.1~2.5倍であることが、上述したような空隙率の差を繊維密度の差によって形成することができ、それにより、銀面樹脂層に被着される第1の不織布層の表層の充実度のみが高くなり、折り曲げたときに銀面樹脂層の表面に、細かい折れ皺を発生させやすくできる点から好ましい。
また、第1の繊維は長繊維であり、第2の繊維は短繊維であることが好ましい。このような場合、第1の領域においては繊維密度がより緻密になりやすくなり、細かい皺を発生させやすくする。また、第2の領域においては繊維密度が疎になりやすく、折り曲げたときの張力を緩和しやすく、歪みを吸収しやすくなるために、面モロを発生させにくい効果が充分に得られやすくなる。
また、第1の不織布層と第2の不織布層との総厚みに対する第1の不織布層の割合が30~60%であることが、上述したような空隙率に調整しやすい点からより好ましい。
また、人工皮革基材は、0.50~0.70g/cm3の見掛け密度を有することが、充実感に優れる点から好ましい。
また、第1の繊維及び第2の繊維はポリエステル繊維であることが、熱収縮性が高いために、上述したような空隙率に調整しやすい点からより好ましい。
また、本発明の他の一局面は、上述した何れかの銀付調人工皮革の製造方法であって、第1の繊維を形成するための第1の海島型複合繊維のウェブである第1の繊維ウェブと、第2の繊維を形成するための第2の海島型複合繊維のウェブである第2の繊維ウェブと、を準備する工程と、少なくとも1層の第1の繊維ウェブの少なくとも1面に少なくとも1層の第2の繊維ウェブを積層して積層ウェブを形成する工程と、積層ウェブを形成する第1の海島型複合繊維と第2の海島型複合繊維とを絡合処理させた絡合繊維シートを形成する工程と、絡合繊維シートを熱収縮させることにより熱収縮繊維シートを形成する工程と、熱収縮繊維シートの空隙に水系ポリウレタンの水性液を含浸付与し、加熱乾燥することにより、水系ポリウレタンを付与する工程と、水系ポリウレタンを付与された熱収縮繊維シートに極細繊維化処理を施すことにより、第1の不織布層と第2の不織布層とを含む繊維絡合体を形成させる工程と、第1の不織布層の表面を平坦化することにより、人工皮革基材を形成させる工程と、平坦化された第1の不織布層の表面に銀面樹脂層を被着させる工程と、を備え、第1の海島型複合繊維の島成分割合が第2の海島型複合繊維の島成分割合よりも高い、銀付調人工皮革の製造方法である。このような製造方法によれば、表面に細かい折れ皺を発生させ、面モロを発生させにくい銀付調人工皮革が得られる。
本発明によれば、しなやかな風合いを維持しながら表面の折れ皺を緻密にし、さらに、釣り込みにおける面モロの発生を抑制できる銀付調人工皮革が得られる。
以下に本発明に係る一実施形態の銀付調人工皮革10について、図面を参照して説明する。図1は、銀付調人工皮革10の厚さ方向の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図1を参照すれば、銀付調人工皮革10は、第1の繊維を主体とする第1の不織布層1、及び第1の不織布層1に絡合一体化された第2の繊維を主体とする第2の不織布層2、を含む人工皮革基材3と、第1の不織布層1の表面に被着された銀面樹脂層4とを備える。そして、第1の不織布層1は第2の不織布層2よりも繊維密度が高い。そして、人工皮革基材3は、第1の不織布層1と第2の不織布層2とを含む繊維絡合体の空隙に付与された水系ポリウレタン5を5~18質量%含有する。
そして、このような人工皮革基材3の厚み方向の断面において、第1の不織布1の表面から第2の不織布2に向かう厚さ200μmの領域である第1の領域R1、及び、第1の領域R1を除いた領域である第2の領域R2において、第1の領域R1の空隙率Aが10~20%であり、第2の領域R2の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍である銀付調人工皮革である。
このような銀付調人工皮革について、その製造方法の一例に沿って以下に詳しく説明する。銀付調人工皮革は、例えば、次のような工程を経て製造される。
(1)第1の繊維を形成するための第1の海島型複合繊維のウェブである第1の繊維ウェブと、第2の繊維を形成するための第2の海島型複合繊維のウェブである第2の繊維ウェブを準備する工程、(2)少なくとも1層の第1の繊維ウェブの少なくとも1面に少なくとも1層の第2の繊維ウェブを積層して積層ウェブを形成する工程、(3)積層ウェブを形成する第1の海島型複合繊維と第2の海島型複合繊維とを絡合処理させた絡合繊維シートを形成する工程、(4)絡合繊維シートを熱収縮させることにより熱収縮繊維シートを形成する工程、(5)熱収縮繊維シートの空隙に水系ポリウレタンの水性液を含浸付与し、加熱乾燥することにより、水系ポリウレタンを付与する工程、(6)水系ポリウレタンを付与された熱収縮繊維シートに極細繊維化処理を施すことにより、第1の不織布層と第2の不織布層とを含む繊維絡合体を形成させる工程、(7)第1の不織布層の表面を平坦化することにより、人工皮革基材を形成させる工程、及び、(8)平坦化された第1の不織布層の表面に銀面樹脂層を被着させる工程、を経て銀付調人工皮革が製造される。
そして、このような製造方法において、第1の海島型複合繊維の島成分割合を第2の海島型複合繊維の島成分割合よりも高くしたり、第2の繊維の平均繊度を第1の繊維の平均繊度よりも高くしたり、することにより、第1の不織布層の繊維密度を第2の不織布層の繊維密度よりも高くする。
また、このような製造方法において、人工皮革基材が水系ポリウレタンを5~18質量%含有し、銀面樹脂層と第1の不織布層との界面から第2の不織布層に向かう厚さ200μmの領域である第1の領域、及び、第1の領域を除いた領域である第2の領域において、第1の領域の空隙率Aが10~20%であり、第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍であることを満たすように調整することにより製造される。以下、各工程について、詳しく説明する。
(1)第1の海島型複合繊維のウェブである第1の繊維ウェブと、第2の海島型複合繊維のウェブである第2の繊維ウェブを準備する工程
人工皮革基材の製造においては、第1の繊維を主体とする第1の不織布層を形成させるための第1の海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブ、及び第2の繊維を主体とする第2の不織布層を形成させるための第2の海島型複合繊維を含む第2の繊維ウェブを準備する。
人工皮革基材の製造においては、第1の繊維を主体とする第1の不織布層を形成させるための第1の海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブ、及び第2の繊維を主体とする第2の不織布層を形成させるための第2の海島型複合繊維を含む第2の繊維ウェブを準備する。
海島型複合繊維とは、繊維断面において、マトリクスとなる海成分の樹脂中に、海成分とは異なる種類のドメインとなる島成分の樹脂が分散されており、海成分を除去することにより、島成分の樹脂を主体とする繊維束状の極細繊維を発生させる繊維である。海島型複合繊維によれば、内部に空隙を保持する極細繊維の繊維束を形成できるために、しなやかな人工皮革基材が得られる。
海島型複合繊維を含む繊維ウェブの製造方法としては、スパンボンド法を用いて、海島型複合繊維を溶融紡糸し、これを切断せずにネット上に捕集して連続繊維の長繊維のウェブを形成する方法や、海島型複合繊維を溶融紡糸し、延伸した後、さらに必要に応じてクリンプを付与し、カットした原綿をカード機に通してウェブ化するような方法等が挙げられる。
スパンボンド法の場合、溶融複合紡糸用口金の個々のノズル孔から溶融させた海成分の樹脂と島成分の樹脂とをそれぞれ別々で吐出させ、それらを接触させた後、高速気流を用いて冷却しながらコンベヤベルト状の移動式のネット上に堆積させることにより長繊維の海島型複合繊維を含む繊維ウェブが形成される。
また、カットされた短繊維を製造する場合、多数のノズル孔が、所定のパターンで配置された複合紡糸用口金を用いて、海島型複合繊維を溶融紡糸法を用いて紡糸し、延伸した後、さらに必要に応じてクリンプを付与し、カットした原綿をカード機に通すことにより、短繊維の海島型複合繊維を含む繊維ウェブが形成される。
また、得られた繊維ウェブは、形態安定性を付与されるために熱プレスされてもよい。
海島型複合繊維の島成分の熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、テレフタル酸単位とエチレングリコール単位との共重合体であるポリエチレンテレフタレート(PET)、テレフタル酸単位と1,4-ブタンジオール単位との共重合体であるポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエステルエラストマー等のポリエステル等、または、それらの変性体等の変性ポリエステル;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、芳香族ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂または、それらの変性体等の変性ポリアミドが挙げられる。なお、変性体とは、樹脂の固有粘度や融点や結晶性を調整する目的で、主たるポリマー形成単位の一部を他の少量のモノマー単位で置換したポリマーを意味する。例えば、ポリエステルを変性する少量のモノマー単位としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の非対称型芳香族カルボン酸や、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、エチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール類等が挙げられる。これらのモノマー単位を導入することにより、各ポリエステルの固有粘度や融点や結晶性を調整することができる。熱可塑性樹脂は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリエステルが、熱収縮性がとくに高い点から好ましい。
一方、海成分の熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、スチレンエチレン共重合体、スチレンアクリル共重合体、などが挙げられる。これらの中では、湿熱処理や熱水処理で収縮し易い点から、水溶性を有するポリビニルアルコール系樹脂、特にエチレン変性ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
また、島成分の熱可塑性樹脂及び海成分の熱可塑性樹脂のそれぞれには、必要に応じて、有機粒子、無機粒子、難燃剤や帯電防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
海島型複合繊維の海成分と島成分との質量割合としては、海成分:島成分=5:95~80:20の範囲であることが好ましい。なお、後述するように、第1の繊維ウェブから形成される第1の不織布層は、第2の繊維ウェブから形成される第2の不織布層よりも、繊維密度が高くなるように調整する。第1の海島型複合繊維の島成分割合が、第2の海島型複合繊維の島成分割合よりも高い場合には、第1の不織布層の繊維密度を第2の不織布層の繊維密度よりも高くなるように調整できる。海島型複合繊維の海成分割合が低ければ低いほど、形成される極細繊維の繊維束は圧縮されるために、繊維密度は高くなりやすくなる。
具体的には、第1の海島型複合繊維の島成分割合は第2の海島型複合繊維の島成分割合よりも10~30質量%高いことが好ましい。例えば、第1の海島型複合繊維の島成分割合は、60~80質量%であり、第2の海島型複合繊維の島成分割合は、40~60質量%であることが上述したような空隙率に調整しやすい点から好ましい。
また、海島型複合繊維の島成分の数としては、例えば、5~200個、さらには10~50個、とくには10~30個であることが好ましい。島成分の数が多く、形成される極細繊維の繊度が低ければ低いほど、形成される極細繊維の繊維束は圧縮されるために、繊維密度は高くなりやすくなる。
海島型複合繊維は、後に施される極細繊維化処理により、所定の平均繊度を有する極細繊維に変換されるような島成分を含むように溶融紡糸される。具体的には、第1の繊維の平均繊度は0.40dtex以下であり、第2の繊維の平均繊度は0.60dtex以下である。また、好ましくは、第2の繊維の平均繊度が第1の繊維の平均繊度の1.5倍以上、さらには1.6~10倍になるように調整されることが、第2の不織布層よりも繊維密度が高い第1の不織布層が形成されやすい点から好ましい。このように、第1の繊維及び第2の繊維の平均繊度及び含有割合を調整することにより、上述したような空隙率に調整しやすくなる。
第1の繊維ウェブから形成される第1の繊維の平均繊度は0.40dtex以下であり、0.075~0.40dtex、さらには、0.10~0.35dtex、であることが好ましい。第1の繊維の平均繊度が0.40dtexを超える場合には、人工皮革基材の銀面樹脂層に被着される表層の充実度が低くなる。
また、第2の繊維ウェブから形成される第2の繊維の平均繊度は0.60dtex以下であり、0.05~0.55dtex、さらには、0.1~0.40dtex、であることが好ましい。第2の繊維の平均繊度が0.60dtexを超える場合には、得られる銀付調人工皮革の風合いが低下する。また、後述する第1の領域の空隙率Aを10~20%以下にし、第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍になるように調整しにくくなる。
第1の繊維ウェブ及び第2の繊維ウェブを形成するための海島型複合繊維の平均繊維長はとくに限定されない。スパンボンド法により連続的に紡糸されて得られる長繊維(連続繊維)の場合、例えば、100mm以上、さらには、200mm以上、とくには、数m、数百m、ことには数km以上の繊維長の繊維が得られる。また、溶融紡糸された海島型複合繊維をカットして得られる繊維の場合には、100mm未満、さらには30~80mm程度の短繊維が製造される。
第1の繊維ウェブを形成する第1の海島型複合繊維は、長繊維であっても短繊維の何れであってもよいが、熱収縮しやすいためにより緻密な繊維構造が得られて空隙率を低くしやすい点から長繊維であることが特に好ましい。また、第2の繊維ウェブを形成する第2の海島型複合繊維も、長繊維であっても短繊維の何れであってもよいが、疎な繊維構造が得られて空隙率を高くしやすい点から短繊維であることが特に好ましい。
このような方法により、0.40dtex以下の平均繊度を有する第1の繊維を形成するための第1の海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブ、及び、0.60dtex以下の平均繊度を有する第2の繊維を形成するための第2の海島型複合繊維を含む第2の繊維ウェブを製造することができる。
(2)少なくとも1層の第1の繊維ウェブの少なくとも1面に少なくとも1層の第2の繊維ウェブを積層して積層ウェブを形成する工程
次に、第1の繊維ウェブと第2の繊維ウェブとを所定の目付になるように重ねて積層することにより積層ウェブを形成する。
次に、第1の繊維ウェブと第2の繊維ウェブとを所定の目付になるように重ねて積層することにより積層ウェブを形成する。
積層ウェブの製造方法としては、例えば、少なくとも1層の第1の繊維ウェブの少なくとも一面、好ましくは両面に少なくとも1層の第2の繊維ウェブが配されるように、所望の目付になるようにクロスラッパーを用いて4~100枚程度を積み重ねるクロスラッピングが挙げられる。第1の繊維ウェブ及び第2の繊維ウェブの各積層数は、各繊維ウェブの目付けに応じて適宜調製される。また、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、織物、編物、その他の不織布等を重ねてもよい。
なお、クロスラッピングの際には、ニードルパンチの際にニードルの針が折れたり損傷したりすることを防止するために、使用する繊維の表面に、あるいは繊維ウェブの表面に針折れ防止油剤や帯電防止剤等を付与することが好ましい。
第1の繊維ウェブと第2の繊維ウェブとの割合は特に限定されないが、銀付調人工皮革において、第1の繊維ウェブから形成される第1の不織布層と第2の繊維ウェブから形成される第2の不織布層との総厚みに対する第1の不織布層の厚み割合が、30~60%、さらには、35~55%になるようになる割合であることが好ましい。
(3)第1の海島型複合繊維と第2の海島型複合繊維とを絡合処理させた絡合繊維シートを形成する工程
次に、第1の繊維ウェブを形成する第1の海島型複合繊維と第2の繊維ウェブを形成する第2の海島型複合繊維とを絡合させることにより絡合繊維シートを形成する。絡合繊維シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いて、積層ウェブに絡合処理を施すことにより形成される。本実施形態では、ニードルパンチによる絡合処理について代表例として詳しく説明する。
次に、第1の繊維ウェブを形成する第1の海島型複合繊維と第2の繊維ウェブを形成する第2の海島型複合繊維とを絡合させることにより絡合繊維シートを形成する。絡合繊維シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いて、積層ウェブに絡合処理を施すことにより形成される。本実施形態では、ニードルパンチによる絡合処理について代表例として詳しく説明する。
積層ウェブに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。その後、ニードルパンチにより三次元的に第1の海島型複合繊維と第2の海島型複合繊維とを絡合させる絡合処理を行う。
ニードルパンチ処理においては、例えば、片面又は、両面から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件でニードルパンチを行う。パンチング密度は積層ウェブの目付や繊維密度等にもよるが、1000~5000P(パンチ)/cm2、さらには、1500~4000P/cm2、であることが、高い機械的特性が維持される点から好ましい。
このようにして製造される積層ウェブを形成する第1の海島型複合繊維と第2の海島型複合繊維とを絡合処理させた絡合繊維シートの目付は、特に限定されないが、200~1500g/m2、さらには、300~1000g/m2であることが、機械的特性と適度な工程通過性とのバランスに優れた人工皮革基材を得ることができる点から好ましい。
(4)絡合繊維シートを熱収縮させることにより熱収縮繊維シートを形成する工程
次に、絡合繊維シートを熱収縮させることにより、絡合繊維シートの繊維密度および絡合度合を高めさせる。熱収縮処理の具体例としては、例えば、絡合繊維シートを水蒸気に連続的に接触させる方法や、絡合繊維シートに水を付与した後、加熱エアーや赤外線などの電磁波で水を加熱する方法等が挙げられる。また、熱収縮処理により緻密化された絡合繊維シートに片面又は両面からさらに熱プレスすることにより、形成される第1の不織布層及び第2の不織布層の繊維密度を調整してもよい。
次に、絡合繊維シートを熱収縮させることにより、絡合繊維シートの繊維密度および絡合度合を高めさせる。熱収縮処理の具体例としては、例えば、絡合繊維シートを水蒸気に連続的に接触させる方法や、絡合繊維シートに水を付与した後、加熱エアーや赤外線などの電磁波で水を加熱する方法等が挙げられる。また、熱収縮処理により緻密化された絡合繊維シートに片面又は両面からさらに熱プレスすることにより、形成される第1の不織布層及び第2の不織布層の繊維密度を調整してもよい。
熱収縮処理工程における絡合繊維シートの目付の変化としては、熱収縮処理前の目付に比べて、1.1倍(質量比)以上、さらには、1.3倍以上で、2倍以下、さらには1.6倍以下であることが好ましい。
このようにして製造される熱収縮繊維シートの目付としては、特に限定されないが、350~2800g/m2、さらには、550~1800g/m2であることが、機械的特性と適度な工程通過性とのバランスに優れた人工皮革基材を得ることができる点から好ましい。
(5)熱収縮繊維シートに水系ポリウレタンを付与する工程
人工皮革基材の製造においては、人工皮革基材に形態安定性を付与し、また、充実感を高めさせるために、工程(4)で得られた熱収縮繊維シートに水系ポリウレタンを含浸付与する。工程(4)で得られた熱収縮繊維シートに水系ポリウレタンが付与された後に、工程(6)において海島型複合繊維を極細繊維化処理するために、形成される第1の繊維及び第2の繊維が水系ポリウレタンで拘束され過ぎず、しなやかな風合いに優れた人工皮革基材が得られる。
人工皮革基材の製造においては、人工皮革基材に形態安定性を付与し、また、充実感を高めさせるために、工程(4)で得られた熱収縮繊維シートに水系ポリウレタンを含浸付与する。工程(4)で得られた熱収縮繊維シートに水系ポリウレタンが付与された後に、工程(6)において海島型複合繊維を極細繊維化処理するために、形成される第1の繊維及び第2の繊維が水系ポリウレタンで拘束され過ぎず、しなやかな風合いに優れた人工皮革基材が得られる。
水系ポリウレタンとは、水系媒体に水系ポリウレタンまたはそのプレポリマーが分散されたエマルジョンやディスパージョン等のポリウレタン水分散液に由来するポリウレタンである。水系ポリウレタンは、例えば、イソシアネート基を2個有するジイソシアネート化合物、高分子ジオール、鎖伸長剤及び、必要に応じて用いられる多官能性化合物や酸基含有化合物等を含むウレタン原料を反応させることにより得られる。
ジイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個有する化合物である。その具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート:イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等の3官能や4官能のイソシアネート等の分岐構造を与える多官能性化合物である、多官能イソシアネートやそのイソシアネートブロック体、等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、高分子ジオールはヒドロキシ基を2個有する高分子ジオールである。その具体例としては、例えば、ポリプロピレンカーボネートジオール、ポリ(2-メチル-1,3-プロピレンカーボネート)ジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリオクタメチレンカーボネートジオール、ポリ(2-メチル-1,8-オクチレンカーボネート)ジオール、ポリノナメチレンカーボネートジオール、ポリデカメチレンポリカーボネートジオール、ポリドデカメチレンポリカーボネートジオール等のポリカーボネート系ジオールまたはそれらの共重合体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等のポリエーテル系ジオールまたはそれらの共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンセバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリエステル系ジオールまたはそれらの共重合体;ポリエステルカーボネートジオール等の高分子ジオールが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリプロピレンカーボネートジオール、ポリ(2-メチル-1,3-プロピレンカーボネート)ジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリオクタメチレンカーボネートジオール、ポリ(2-メチル-1,8-オクチレンカーボネート)ジオール、ポリノナンメチレンカーボネートジオール、ポリノナメチレンポリカーボネートジオール、ポリデカメチレンポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種を含む高分子ジオールであることが好ましい。
また、鎖伸長剤は、水酸基やアミノ基等の活性水素を有する官能基を2個有する低分子化合物である。鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびそれらの誘導体;アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジアミン;ジエチレントリアミン等のトリアミン;トリエチレンテトラミン等のテトラミン;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール等のジオール;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコール等のアミノアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水系ポリウレタンは、耐水性、耐摩耗性および耐加水分解性を向上させる目的で、架橋させてもよい。ポリウレタンを架橋させるための架橋剤は、ポリウレタンに対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、またポリウレタン分子構造内に予め架橋構造となる反応点を導入する内部架橋剤であってもよい。架橋剤としては、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、メラミン樹脂、およびシラノール基などを有する化合物が挙げられる。
ポリウレタン水分散液としては、例えば、ウレタン骨格に酸基を導入したようなアニオン性の親水性基、ウレタン骨格にアンモニウム基等のイオン性基を導入したようなカチオン性の親水性基、ウレタン骨格に非イオン性の親水性基を導入したような自己乳化型ポリウレタンを含むエマルジョンまたはディスパージョン;親水性基を有しないポリウレタンを乳化剤で強制乳化した強制乳化型ポリウレタンのエマルジョン;自己乳化型ポリウレタンと強制乳化型ポリウレタンとを併用したエマルジョンまたはディスパージョンが挙げられる。これらの中では、ウレタン骨格に酸基を導入したようなアニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンのエマルジョン、親水性基を有しない強制乳化型ポリウレタンのエマルジョン、またはこれらを併用したものが分散安定性に優れる点から好ましい。
ポリウレタン水分散液には、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤および酸化防止剤、紫外線吸収剤、および光安定剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、撥水剤、粘度調整剤、帯電防止剤等の界面活性剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、および凝固調整剤、およびシリカや酸化チタン等の無機粒子等を含有させてもよい。
水系ポリウレタンの割合は、得られる人工皮革基材に対して、5~18質量%であり、6~18質量%、さらには、7~15質量%であることが極細繊維束の拘束が不足したり、拘束し過ぎたりしない点から好ましい。水系ポリウレタンの含有割合が5質量%未満である場合には、形態安定性が低下したり、工程通過性が低下したりする。また、水系ポリウレタンの含有割合が18質量%を超える場合には、極細繊維束を拘束しすぎて硬くなり、また、繊維密度が低い第2の不織布層を形成する繊維が拘束され過ぎて伸びにくくなり、面モロが発生しやすくなる。
熱収縮繊維シートに水系ポリウレタンを含浸付与する方法としては、例えば、ポリウレタン水分散液で満たされた浴中に熱収縮繊維シートを浸した後、プレスロール等で所定の含浸状態になるように絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法が挙げられる。
ポリウレタン水分散液を熱収縮繊維シートに含浸し、ポリウレタン水分散液を乾燥凝固させることにより、水系ポリウレタンを熱収縮繊維シートに含浸付与することができる。なお、凝固させた水系ポリウレタンを架橋させるために、凝固及び乾燥後に、熱処理や熟成処理を行ってもよい。
(6)水系ポリウレタンを付与された熱収縮繊維シートに極細繊維化処理を施すことにより、第1の不織布層と第2の不織布層とを含む繊維絡合体を形成させる工程
本工程では、熱収縮繊維シート中の海島型複合繊維を極細繊維化処理することにより、第1の繊維を主体とする第1の不織布層と第2の繊維を主体とする第2の不織布層とを含む繊維絡合体を形成させる。
本工程では、熱収縮繊維シート中の海島型複合繊維を極細繊維化処理することにより、第1の繊維を主体とする第1の不織布層と第2の繊維を主体とする第2の不織布層とを含む繊維絡合体を形成させる。
熱収縮繊維シートに含まれる海島型複合繊維から、海成分を水や溶剤等で抽出または分解除去して繊維束状の極細繊維に変換することにより、第1の繊維を主体とする第1の不織布層と、第2の繊維を主体とする第2の不織布層と、を含む繊維絡合体が形成される。例えば、水溶性のポリビニルアルコール系樹脂を海成分に用いた海島型複合繊維の場合においては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水加熱処理することにより海成分である水溶性のポリビニルアルコール系樹脂が除去される。
第1の繊維は、平均繊度が0.40dtex以下であり、0.075~0.40dtex、さらには、0.09~0.35dtex、であることが好ましい。第1の繊維の平均繊度が0.40dtexを超える場合には、人工皮革基材の銀面樹脂層に被着される表層の充実度が低くなる。
また、第2の繊維は、平均繊度が0.60dtex以下であり、0.05~0.55dtex、さらには、0.10~0.40dtex、であることが好ましい。第2の繊維の平均繊度が0.60dtexを超える場合には、得られる銀付調人工皮革の風合いが低下する。
また、第1の不織布層は第2の不織布層よりも繊維密度が高い。繊維密度は、特に限定されないが、例えば、次のようにして算出できる。各不織布層の厚み方向の中央付近の繊維断面が並んでいる50μm×50μmの範囲に入る極細繊維の数をカウントする。そして、平均繊度/極細繊維の比重×100の式から極細繊維の平均断面積(μm2)を求める。例えば、ポリエチレンテレフタレートの場合、比重は1.4g/cm3である。そして、極細繊維の平均断面積に極細繊維の数を乗じることにより、繊維密度が求められる。
第1の不織布層の繊維密度は、第2の不織布層の繊維密度の1.1~2.5倍であることが、上述したような空隙率の差を繊維密度の差によって形成することができ、それにより、銀面樹脂層に被着される第1の不織布層の表層の充実度のみが高くなり、折り曲げたときに銀面樹脂層の表面に、細かい折れ皺を発生させやすくできる点から好ましい。
このような繊維密度の差は、上述の通り、第1の繊維を形成するための第1の海島型複合繊維の島成分の割合を、第2の繊維を形成するための第2の海島型複合繊維の島成分の割合よりも高くしたり、第1の繊維の平均繊度を、第2の繊維の平均繊度よりも低くしたり、第1の繊維と第2の繊維との総厚みに対する第1の繊維の含有割合を低くしたり、することにより、上述したような空隙率に調整できる。
具体的には、第1の海島型複合繊維の島成分割合を第2の海島型複合繊維の島成分割合よりも10~30質量%高くしたり、第2の繊維の平均繊度が第1の繊維の平均繊度の1.5倍以上高くなるように調整したりすることにより、第1の不織布層の繊維密度を第2の不織布層の繊維密度よりも高くすることができる。
このようにして形成される第1の繊維及び第2の繊維は、繊維束を形成している。具体的には、例えば、5~200本、さらには10~50本、とくには10~30本の極細繊維が繊維束を形成して存在していることが好ましい。第1の繊維及び第2の繊維が繊維束として存在することにより、より高い機械的強度を発現させる。
以上のような工程により人工皮革基材の中間体が得られる。得られた人工皮革基材の中間体は、乾燥後、厚さ方向に垂直な方向に複数枚にスライスしたり、研削したりすることにより、厚さ調節される。
(7)第1の不織布層の表面を平坦化することにより、人工皮革基材を形成させる工程
次に、人工皮革基材の中間体の第1の不織布層の表面を平坦化することにより、人工皮革基材を形成させる。具体的には、人工皮革基材の中間体の第1の不織布層の表層を、サンドペーパーなどを用いてバフィング処理することにより、第1の不織布層の表面が平坦化される。また、平坦化に加えて、必要に応じて、揉み柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
次に、人工皮革基材の中間体の第1の不織布層の表面を平坦化することにより、人工皮革基材を形成させる。具体的には、人工皮革基材の中間体の第1の不織布層の表層を、サンドペーパーなどを用いてバフィング処理することにより、第1の不織布層の表面が平坦化される。また、平坦化に加えて、必要に応じて、揉み柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
このようにして形成される人工皮革基材の目付は、特に限定されないが、例えば、100~1000g/m2、さらには、200~600g/m2であることが好ましい。
また、人工皮革基材の見掛け密度は、例えば、0.30~0.70g/cm3の、さらには、0.50~0.70g/cm3、とくには0.50~0.60g/cm3であることが充実感に優れた銀付調人工皮革が得られる点から好ましい。
(8)平坦化された第1の不織布層の表面に銀面樹脂層を被着させる工程
平坦化された人工皮革基材の第1の不織布層の表面に銀面樹脂層を被着させることにより、銀付調人工皮革が得られる。人工皮革基材の表面に銀面樹脂層を被着させる方法としては、例えば、離型紙上に高分子弾性体をコートして人工皮革基材の表面に貼り合わせる乾式造面法や、樹脂を含む塗液を人工皮革基材の表面に直接、ロールコーターやスプレーコーターにより塗布した後、乾燥させることにより形成する方法であるダイレクトコート法が用いられる。これらの中では、乾式造面法が銀面樹脂層の厚さの調整が容易であり、工程性に優れる点から好ましい。
平坦化された人工皮革基材の第1の不織布層の表面に銀面樹脂層を被着させることにより、銀付調人工皮革が得られる。人工皮革基材の表面に銀面樹脂層を被着させる方法としては、例えば、離型紙上に高分子弾性体をコートして人工皮革基材の表面に貼り合わせる乾式造面法や、樹脂を含む塗液を人工皮革基材の表面に直接、ロールコーターやスプレーコーターにより塗布した後、乾燥させることにより形成する方法であるダイレクトコート法が用いられる。これらの中では、乾式造面法が銀面樹脂層の厚さの調整が容易であり、工程性に優れる点から好ましい。
乾式造面法は、銀面樹脂層として剥離シート上に銀面層を形成するための着色した樹脂層を形成するための樹脂を含む塗液を塗布した後、乾燥させることにより樹脂層を形成し、樹脂層を人工皮革基材の表面に銀面樹脂層を構成する接着層を介して貼り合わせた後、剥離シートを剥離する方法である。また、銀面樹脂層にはエンボス加工等によりシボ模様等の凹凸模様を形成してもよい。エンボス加工としては、例えば、表面にシボ模様が付与されたシボ付離型紙に銀面層皮膜を形成したり、銀面樹脂層が未硬化の状態でシボ模様を転写した後、銀面樹脂層を硬化させたりするような方法が挙げられる。
銀面樹脂層を形成するための樹脂成分としては、ポリウレタン、アクリル系弾性体、シリコーン系弾性体、ジエン系弾性体、ニトリル系弾性体、フッ素系弾性体、ポリスチレン系弾性体、ポリオレフィン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ハロゲン系弾性体等の高分子弾性体が好ましく用いられる。
銀面樹脂層の厚みは特に限定されないが、30~500μm、さらには40~100μmであることが好ましい。また、銀面樹脂層を構成する接着層の厚みは10~300μm、さらには30~100μmであることが好ましい。
このようにして、第1の繊維を主体とする第1の不織布層と第2の繊維を主体とする第2の不織布層とを含む繊維絡合体と繊維絡合体の空隙に付与された5~18質量%の水系ポリウレタンとを含む人工皮革基材、及び、第1の不織布層の一面に被着された銀付調人工皮革が得られる。
このようにして得られる銀付調人工皮革は、図1を参照すれば、銀面樹脂層4と第1の不織布層1との界面から第2の不織布層に向かう厚さ200μmの領域である第1の領域R1、及び、第1の領域R1を除いた領域である第2の領域R2において、第1の領域R1の空隙率Aが10~20%であり、第2の領域R2の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍であること、を満たすように調整されている。また、好ましくは、第2の領域R2の空隙率Bは、第1の領域R1の空隙率Aよりも15~40%、さらには、16~35%高いことが、表面に細かい折れ皺を発生させ、面モロを発生させにくい効果が充分に得られる点から好ましい。
本実施形態の銀付調人工皮革は、第1の不織布層を第2の不織布層よりも繊維密度を高くすることにより、上述した空隙率の関係に調整されている。このように調整されていることにより、しなやかな風合いを維持しながら表面の折れ皺を緻密にし、さらに、釣り込みにおける面モロの発生を抑制できる銀付調人工皮革が得られる。このような銀付調人工皮革は、靴、鞄、インテリア、壁装、雑貨などの高級感が求められる各種用途に好ましく用いられる
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
はじめに本実施例で用いた評価方法を以下にまとめて説明する。
〈平均繊度〉
平均繊度は、銀付調人工皮革の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を3000倍で撮影し、繊維の断面をランダムに10個選んで断面積を測定し、その断面積の平均値を算出し、各樹脂の密度から換算して算出した。
平均繊度は、銀付調人工皮革の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を3000倍で撮影し、繊維の断面をランダムに10個選んで断面積を測定し、その断面積の平均値を算出し、各樹脂の密度から換算して算出した。
〈人工皮革基材及び熱収縮繊維シートの見掛け密度〉
JIS L1913に準じて、厚さ(mm)および目付け(g/m2)を測定し、これらの値から見掛け密度(g/cm3)を算出した。
JIS L1913に準じて、厚さ(mm)および目付け(g/m2)を測定し、これらの値から見掛け密度(g/cm3)を算出した。
〈空隙率測定〉
銀付調人工皮革の全層の断面を70倍の倍率により走査型電子顕微鏡で観察した。得られた写真を画像解析ソフトPopImaging(Digitalbeing kids.Co製)を用い、銀面樹脂層4と第1の不織布層1との界面から200μmまでの第1の領域と第1の領域よりも下層の第2の領域の画像に分割した。そして、image pro premier(media cybernetics社)の二値化ツールを用いて、閾値150で二値化処理し、空隙を黒色、その他を白色と判定し、ヒストグラムツール内にある黒色のドット数と白色のドット数を読み取り、黒色ドット数/(白色ドット数+黒色ドット数)×100(%)の式により、第1の領域の空隙率A及び第2の領域の空隙率Bを算出した。
銀付調人工皮革の全層の断面を70倍の倍率により走査型電子顕微鏡で観察した。得られた写真を画像解析ソフトPopImaging(Digitalbeing kids.Co製)を用い、銀面樹脂層4と第1の不織布層1との界面から200μmまでの第1の領域と第1の領域よりも下層の第2の領域の画像に分割した。そして、image pro premier(media cybernetics社)の二値化ツールを用いて、閾値150で二値化処理し、空隙を黒色、その他を白色と判定し、ヒストグラムツール内にある黒色のドット数と白色のドット数を読み取り、黒色ドット数/(白色ドット数+黒色ドット数)×100(%)の式により、第1の領域の空隙率A及び第2の領域の空隙率Bを算出した。
〈折れシワ評価〉
銀付調人工皮革からタテ6cm、ヨコ6cmの正方形の試験片を切出した。そして、試験片の銀面樹脂層側を内側にして折り込んで、1cm間隔にしたノギスのジョウ間に挟み、そのときに折り目に発生した折れシワを観察した。
そして、STD174 Break/Pipiness Scale(英国 SATRA社製)の1級から8級の判定基準に従って、折れシワの級数を判定した。1級がシワが最も細かく、8級がシワが最も粗いことを示す。
銀付調人工皮革からタテ6cm、ヨコ6cmの正方形の試験片を切出した。そして、試験片の銀面樹脂層側を内側にして折り込んで、1cm間隔にしたノギスのジョウ間に挟み、そのときに折り目に発生した折れシワを観察した。
そして、STD174 Break/Pipiness Scale(英国 SATRA社製)の1級から8級の判定基準に従って、折れシワの級数を判定した。1級がシワが最も細かく、8級がシワが最も粗いことを示す。
〈面モロ評価〉
銀付調人工皮革を直径9cmに切出して試験片を作成した。そして、JIS K6546で定める革の半球状可塑性試験方法に従い試験片の銀面樹脂層が形成されていない面から圧力をかけ、銀面樹脂層の表面に記載した線が20%伸びるまで延伸し、その状態の面モロ状態を以下の基準により判定した。
1級:凹凸が全くない
2級:凹凸はほとんどない
3級:凹凸が少しある
4級:凹凸が多数ある
銀付調人工皮革を直径9cmに切出して試験片を作成した。そして、JIS K6546で定める革の半球状可塑性試験方法に従い試験片の銀面樹脂層が形成されていない面から圧力をかけ、銀面樹脂層の表面に記載した線が20%伸びるまで延伸し、その状態の面モロ状態を以下の基準により判定した。
1級:凹凸が全くない
2級:凹凸はほとんどない
3級:凹凸が少しある
4級:凹凸が多数ある
〈風合い評価〉
得られた銀付調人工皮革を折り曲げて、腰や柔軟性の感触を以下の基準で判定した。
A:充実感があり、ボキ折れすることなく、柔軟性に優れた風合いであった。
B:充実感に欠ける、ボキ折れする、硬い、のいずれか1つ以上に該当する風合いであった。
得られた銀付調人工皮革を折り曲げて、腰や柔軟性の感触を以下の基準で判定した。
A:充実感があり、ボキ折れすることなく、柔軟性に優れた風合いであった。
B:充実感に欠ける、ボキ折れする、硬い、のいずれか1つ以上に該当する風合いであった。
〈第1の不織布層の割合〉
銀付調人工皮革の全層の厚さ方向の断面を70倍の倍率で走査型電子顕微鏡で観察し、断面写真を撮影した。そして、得られた断面写真から、第1の不織布層と銀面樹脂層との界面から銀付調人工皮革の下面までの距離Xと、及び、第1の不織布層と銀面樹脂層との界面から第1の不織布層と第2の不織布層との界面までの距離Yと、を測定した。そして、Y/X×100から第1の不織布層の割合(%)を算出した。任意に選択された3箇所のXとYとを測定して、3箇所の第1の不織布層の割合を算出し、その平均値を求めた。
銀付調人工皮革の全層の厚さ方向の断面を70倍の倍率で走査型電子顕微鏡で観察し、断面写真を撮影した。そして、得られた断面写真から、第1の不織布層と銀面樹脂層との界面から銀付調人工皮革の下面までの距離Xと、及び、第1の不織布層と銀面樹脂層との界面から第1の不織布層と第2の不織布層との界面までの距離Yと、を測定した。そして、Y/X×100から第1の不織布層の割合(%)を算出した。任意に選択された3箇所のXとYとを測定して、3箇所の第1の不織布層の割合を算出し、その平均値を求めた。
〈繊維密度〉
銀付調人工皮革の全層の厚さ方向の断面を400倍の倍率で走査型電子顕微鏡で観察し、断面写真を撮影した。そして、得られた断面写真から、第1の不織布層の厚み方向の中央付近の繊維断面が並んでいる50μm×50μmの範囲に入る極細繊維の本数N1を数えた。そして、予め測定した平均繊度から、平均繊度/極細繊維の比重×100の式から極細繊維の平均断面積S1(μm2)を求めた。なお、極細繊維の比重は、ポリエチレンテレフタレートの比重1.4g/cm3を用いた。そして、極細繊維の平均断面積S1に極細繊維の本数N1を乗じるN1×S1の式により、第1の不織布層の繊維密度を求めた。第2の不織布層についても第1の不織布層と同様にして、極細繊維の本数N2に極細繊維の平均断面積S2を乗じたN2×S2を求め、第2の不織布層の繊維密度を求めた。なお、N1×S1及びN2×S2は、50μm×50μmの範囲における極細繊維の断面の総面積であり、大きい方が繊維密度が高いことを示す。そして、それぞれ、任意に選択された3箇所で繊維密度を求め、その平均値を求めた。
銀付調人工皮革の全層の厚さ方向の断面を400倍の倍率で走査型電子顕微鏡で観察し、断面写真を撮影した。そして、得られた断面写真から、第1の不織布層の厚み方向の中央付近の繊維断面が並んでいる50μm×50μmの範囲に入る極細繊維の本数N1を数えた。そして、予め測定した平均繊度から、平均繊度/極細繊維の比重×100の式から極細繊維の平均断面積S1(μm2)を求めた。なお、極細繊維の比重は、ポリエチレンテレフタレートの比重1.4g/cm3を用いた。そして、極細繊維の平均断面積S1に極細繊維の本数N1を乗じるN1×S1の式により、第1の不織布層の繊維密度を求めた。第2の不織布層についても第1の不織布層と同様にして、極細繊維の本数N2に極細繊維の平均断面積S2を乗じたN2×S2を求め、第2の不織布層の繊維密度を求めた。なお、N1×S1及びN2×S2は、50μm×50μmの範囲における極細繊維の断面の総面積であり、大きい方が繊維密度が高いことを示す。そして、それぞれ、任意に選択された3箇所で繊維密度を求め、その平均値を求めた。
[実施例1]
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂(PVA;海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、長繊維をネット上に捕集した。このようにして、平均繊度3.0dtexの第1の海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブA1を得た。
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂(PVA;海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、長繊維をネット上に捕集した。このようにして、平均繊度3.0dtexの第1の海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブA1を得た。
一方、PVAと変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が50/50(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が800m/minで紡糸を行った。次に、延伸し平均繊度7.5dtexの第2の海島型複合繊維を紡糸した後、捲縮を付与した。得られた捲縮後の第2の海島型複合繊維を51mmにカットし、カード機を通して第2の繊維ウェブB1を得た。
次に、得られたウェブを第2の繊維ウェブB1/第1の繊維ウェブA1/第2の繊維ウェブB1=1/1.2/1の質量比で積層し、積層ウェブを形成した。そして、積層ウェブに対して1バーブと6バーブとのニードル針を用いて3450P/cm2のパンチング密度でニードルパンチ処理を行うことにより、目付け730g/m2の絡合繊維シートを形成した。
次に、絡合繊維シートを110℃、23.5%RHの条件でスチーム処理した。そして、90~110℃のオーブン中で乾燥させた後、さらに、120℃で熱プレスすることにより、目付1158g/m2、見掛け密度0.60g/cm3、厚み2.1mmの熱収縮処理された熱収縮繊維シートを得た。
次に、熱収縮繊維シートに、水系ポリウレタンのエマルジョン(固形分14.5質量%)をpick up45%で含浸させた。なお、水系ポリウレタンは、ポリカーボネート系無黄変ポリウレタンであった。さらにエマルジョンには、ポリウレタン100質量部に対してカルボジイミド系架橋剤1.5質量部と硫酸アンモニウム8.3質量部を添加し、ポリウレタンの固形分が10質量%となるよう調整した。そして、エマルジョンを含浸させた熱収縮繊維シートを115℃、25%RH雰囲気下で乾燥処理し、さらに、150℃で乾燥処理した。
そして、ポリウレタンを付与された熱収縮繊維シートを、ニップ処理、及び高圧水流処理しながら95℃の熱水中に10分間浸漬することによりPVAを溶解除去させた。このようにして、平均繊度0.1dtexの第1の繊維層を主体とする第1の不織布層の両面に、平均繊度0.3dtexの第2の繊維を主体とする第2の不織布層とを含む繊維絡合体を形成させた。そして、乾燥することにより人工皮革基材の中間体を得た。
そして、人工皮革基材の中間体を中央でスライス処理して半裁した。そして、スライス処理された面を主面とし、その反対面を裏面とした。そして、人工皮革基材の中間体のスライス処理された裏面を♯600ペーパーで脱落しやすい毛羽を除去し、表面を♯600ペーパーを用い研削して平坦化した。このようにして、目付け346g/m2、見かけ密度0.53g/cm3、厚み0.65mmの人工皮革基材を製造した。
そして、離型紙の表面に表皮層用ポリウレタン溶液をコートして乾燥することにより厚み25μmの表皮層を形成し、さらに、表皮層に中間層用ポリウレタン溶液をコートして乾燥することにより厚み30μmの中間層を形成し、さらに中間層に、接着層用ポリウレタン溶液をコートして乾燥することにより厚み60μmの接着層を形成した。そして、人工皮革基材の主面に、離型紙上に形成された表皮層と中間層と接着層とを含む銀面樹脂層を接着層を介してドライラミネートして乾式造面処理を行った。そして、100℃で2分間乾燥し、さらに、60℃で2日間熟成した後、離型紙を剥離することにより、銀付調人工皮革を得た。そして、上記評価方法により評価した。図1に実施例1で得られた銀付調人工皮革の厚さ方向の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
以上の結果を下記表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、第2の繊維ウェブB1/第1の繊維ウェブA1/第2の繊維ウェブB1=1/1.2/1の質量比で積層した代わりに、1/1.1/1の質量比で積層した。また、熱プレスロールのクリアランスを変更することにより、見掛け密度0.65g/cm3の熱収縮繊維シートに調整した。それら以外は実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、第2の繊維ウェブB1/第1の繊維ウェブA1/第2の繊維ウェブB1=1/1.2/1の質量比で積層した代わりに、1/1.1/1の質量比で積層した。また、熱プレスロールのクリアランスを変更することにより、見掛け密度0.65g/cm3の熱収縮繊維シートに調整した。それら以外は実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、第2の繊維ウェブB1/第1の繊維ウェブA1/第2の繊維ウェブB1=1/1.2/1の質量比で積層した代わりに、1/1.1/1の質量比で積層した。また、熱プレスロールのクリアランスを変更することにより、見掛け密度0.70g/cm3の熱収縮繊維シートに調整した。それら以外は実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、第2の繊維ウェブB1/第1の繊維ウェブA1/第2の繊維ウェブB1=1/1.2/1の質量比で積層した代わりに、1/1.1/1の質量比で積層した。また、熱プレスロールのクリアランスを変更することにより、見掛け密度0.70g/cm3の熱収縮繊維シートに調整した。それら以外は実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が50/50(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、長繊維をネット上に捕集し、平均繊度4.3dtexの海島型複合繊維を含む第2の繊維ウェブB2を得た。第2の繊維ウェブB1の代わりに、得られた第2の繊維ウェブB2を用いた以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が50/50(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、長繊維をネット上に捕集し、平均繊度4.3dtexの海島型複合繊維を含む第2の繊維ウェブB2を得た。第2の繊維ウェブB1の代わりに、得られた第2の繊維ウェブB2を用いた以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、長繊維をネット上に捕集し、平均繊度3.0dtexの海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブA2を得た。第1の繊維ウェブA1の代わりに、得られた第1の繊維ウェブA2を用いた以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、長繊維をネット上に捕集し、平均繊度3.0dtexの海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブA2を得た。第1の繊維ウェブA1の代わりに、得られた第1の繊維ウェブA2を用いた以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
水系ポリウレタンの含有割合を10質量%になるように調整した代わりに、5質量%になるように調整するように水系ポリウレタンの含浸条件を変更した以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
水系ポリウレタンの含有割合を10質量%になるように調整した代わりに、5質量%になるように調整するように水系ポリウレタンの含浸条件を変更した以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
水系ポリウレタンの含有割合を10質量%になるように調整した代わりに、15質量%になるように調整するように水系ポリウレタンの含浸条件を変更した以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
水系ポリウレタンの含有割合を10質量%になるように調整した代わりに、15質量%になるように調整するように水系ポリウレタンの含浸条件を変更した以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出し、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、長繊維をネット上に捕集し、平均繊度4.5dtexの海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブA3を得た。
また、PVAと変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が50/50(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:6島/繊維)より吐出し、紡糸速度が800m/minで紡糸を行った。次に、延伸し平均繊度5.0dtexの繊維を得た後、捲縮を付与した。得られた捲縮後の繊維を51mmにカットし、カード機を通して第2の繊維ウェブB3を得た。そして、第1の繊維ウェブA1の代わりに第1の繊維ウェブA3を用い、第2の繊維ウェブB1の代わりに第2の繊維ウェブB3を用いた以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出し、紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、長繊維をネット上に捕集し、平均繊度4.5dtexの海島型複合繊維を含む第1の繊維ウェブA3を得た。
また、PVAと変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が50/50(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:6島/繊維)より吐出し、紡糸速度が800m/minで紡糸を行った。次に、延伸し平均繊度5.0dtexの繊維を得た後、捲縮を付与した。得られた捲縮後の繊維を51mmにカットし、カード機を通して第2の繊維ウェブB3を得た。そして、第1の繊維ウェブA1の代わりに第1の繊維ウェブA3を用い、第2の繊維ウェブB1の代わりに第2の繊維ウェブB3を用いた以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1の乾式造面処理において、人工皮革基材の主面に銀面樹脂層を接着層を介してドライラミネートする代わりに、裏面に銀面樹脂層をドライラミネートした以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。また、図2に、比較例1で得られた銀付調人工皮革の厚さ方向の断面のSEM写真を示す。
実施例1の乾式造面処理において、人工皮革基材の主面に銀面樹脂層を接着層を介してドライラミネートする代わりに、裏面に銀面樹脂層をドライラミネートした以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。また、図2に、比較例1で得られた銀付調人工皮革の厚さ方向の断面のSEM写真を示す。
[比較例2]
実施例2の乾式造面処理において、人工皮革基材の表側面に銀面樹脂層を接着層を介してドライラミネートする代わりに、裏面に銀面樹脂層をドライラミネートした以外は、実施例2と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
実施例2の乾式造面処理において、人工皮革基材の表側面に銀面樹脂層を接着層を介してドライラミネートする代わりに、裏面に銀面樹脂層をドライラミネートした以外は、実施例2と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例3の乾式造面処理において、人工皮革基材の表側面に銀面樹脂層を接着層を介してドライラミネートする代わりに、裏面に銀面樹脂層をドライラミネートした以外は、実施例3と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
実施例3の乾式造面処理において、人工皮革基材の表側面に銀面樹脂層を接着層を介してドライラミネートする代わりに、裏面に銀面樹脂層をドライラミネートした以外は、実施例3と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例4]
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が60/40(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が800m/minで紡糸し、延伸して平均繊度8.1dtexの第2の海島型複合繊維を紡糸し、さらに、第2の海島型複合繊維に捲縮を付与した。得られた捲縮後の第2の海島型複合繊維を51mmにカットし、カード機を通して第2の繊維ウェブB4を得た。
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が60/40(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が800m/minで紡糸し、延伸して平均繊度8.1dtexの第2の海島型複合繊維を紡糸し、さらに、第2の海島型複合繊維に捲縮を付与した。得られた捲縮後の第2の海島型複合繊維を51mmにカットし、カード機を通して第2の繊維ウェブB4を得た。
実施例5の第2の繊維ウェブとしてB4を用い、第2の繊維ウェブB4/第1の繊維ウェブA2/第2の繊維ウェブB4=1/3.2/1の質量比で積層し、また、絡合繊維シートを110℃、23.5%RHの条件のスチーム処理し、90~110℃のオーブン中で乾燥させた後、さらに、熱プレスロールのクリアランスを変更し120℃で熱プレスすることにより、見掛け密度0.70g/cm3の熱収縮繊維シートを得た。また、ポリウレタンの固形分が8質量%となるよう調整した。それ以外は実施例5と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例5]
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が50/50(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が800m/minで紡糸し、延伸して、平均繊度8.1dtexの第2の海島型複合繊維を紡糸した。さらに、第2の海島型複合繊維に捲縮を付与した。得られた捲縮後の第2の海島型複合繊維を51mmにカットし、カード機を通して第2の繊維ウェブB5を得た。
PVA(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が50/50(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:12島/繊維)より吐出させ、紡糸速度が800m/minで紡糸し、延伸して、平均繊度8.1dtexの第2の海島型複合繊維を紡糸した。さらに、第2の海島型複合繊維に捲縮を付与した。得られた捲縮後の第2の海島型複合繊維を51mmにカットし、カード機を通して第2の繊維ウェブB5を得た。
実施例5の第2の繊維ウェブとしてB5を用い、第2の繊維ウェブB5/第1の繊維ウェブA2/第2の繊維ウェブB5=1/3.2/1の質量比で積層し、また、絡合繊維シートを110℃、23.5%RHの条件のスチーム処理し、90~110℃のオーブン中で乾燥させた後、さらに、熱プレスロールのクリアランスを変更し120℃で熱プレスすることにより、見掛け密度0.70g/cm3の熱収縮繊維シートを得た。また、ポリウレタンの固形分が8質量%となるよう調整した。それ以外は実施例5と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例6]
実施例1において、第2の繊維ウェブB1/第1の繊維ウェブA1/第2の繊維ウェブB1=1/1.2/1の質量比で積層した代わりに、第1の繊維ウェブA1のみを用いた以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、第2の繊維ウェブB1/第1の繊維ウェブA1/第2の繊維ウェブB1=1/1.2/1の質量比で積層した代わりに、第1の繊維ウェブA1のみを用いた以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例7]
水系ポリウレタンの含有割合を10質量%になるように調整した代わりに、20質量%になるように調整するように水系ポリウレタンの含浸条件を変更した以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
水系ポリウレタンの含有割合を10質量%になるように調整した代わりに、20質量%になるように調整するように水系ポリウレタンの含浸条件を変更した以外は、実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例8]
実施例1において、熱プレスロールのクリアランスを変更することにより、見掛け密度0.55g/cm3の熱収縮繊維シートを得た。それ以外は実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
実施例1において、熱プレスロールのクリアランスを変更することにより、見掛け密度0.55g/cm3の熱収縮繊維シートを得た。それ以外は実施例1と同様にして銀付調人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
表1を参照すれば、実施例1~8で得られた銀付調人工皮革は何れも、折れシワが細かく、また、面モロも発生しにくく、風合いにも優れていた。
一方、第1の領域の空隙率Aが高く、第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2倍未満である比較例1~比較例5で得られた銀付調人工皮革は、銀面樹脂層が形成された表面が疎であったために、折れシワが粗く、また、面モロも目立った。また、実施例1の銀付調人工皮革の第1の不織布層の形成に用いた第1の繊維ウェブA1の1種類のみを用いて形成された不織布を含む比較例6の銀付調人工皮革も、折れシワが粗く、また、面モロも目立った。また、不織布層の空隙に付与された水系ポリウレタンの割合が高すぎた比較例7で得られた銀付調人工皮革は、表面の充実感にも優れるために折れシワは細かく、好ましいものであったが、不織布層を形成する繊維が拘束され過ぎて、釣りこんだときに面モロが目立った。また、第2の領域の空隙率Bが高すぎて、第2の領域の空隙率Bが空隙率Aよりも高すぎる比較例8で得られた銀付調人工皮革も、第2の領域が疎になりすぎて釣りこんだときに面モロが目立った。
一方、第1の領域の空隙率Aが高く、第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2倍未満である比較例1~比較例5で得られた銀付調人工皮革は、銀面樹脂層が形成された表面が疎であったために、折れシワが粗く、また、面モロも目立った。また、実施例1の銀付調人工皮革の第1の不織布層の形成に用いた第1の繊維ウェブA1の1種類のみを用いて形成された不織布を含む比較例6の銀付調人工皮革も、折れシワが粗く、また、面モロも目立った。また、不織布層の空隙に付与された水系ポリウレタンの割合が高すぎた比較例7で得られた銀付調人工皮革は、表面の充実感にも優れるために折れシワは細かく、好ましいものであったが、不織布層を形成する繊維が拘束され過ぎて、釣りこんだときに面モロが目立った。また、第2の領域の空隙率Bが高すぎて、第2の領域の空隙率Bが空隙率Aよりも高すぎる比較例8で得られた銀付調人工皮革も、第2の領域が疎になりすぎて釣りこんだときに面モロが目立った。
1 第1の不織布層
2 第2の不織布層
3 人工皮革基材
4 銀面樹脂層
5 水系ポリウレタン
R1 第1の領域
R2 第2の領域
10 銀付調人工皮革
2 第2の不織布層
3 人工皮革基材
4 銀面樹脂層
5 水系ポリウレタン
R1 第1の領域
R2 第2の領域
10 銀付調人工皮革
Claims (9)
- 第1の繊維を主体とする第1の不織布層と第2の繊維を主体とする第2の不織布層とを含む繊維絡合体と前記繊維絡合体の空隙に付与された5~18質量%の水系ポリウレタンとを含む人工皮革基材、及び、前記第1の不織布層の表面に被着された銀面樹脂層と、を備え、
前記第1の繊維の平均繊度が0.40dtex以下であり、第2の繊維の平均繊度は0.60dtex以下であり、
前記第1の不織布層は前記第2の不織布層よりも繊維密度が高く、
前記人工皮革基材の厚み方向の断面において、
前記銀面樹脂層と前記第1の不織布層との界面から前記第2の不織布層に向かう厚さ200μmの領域である第1の領域、及び、前記第1の領域を除いた領域である第2の領域において、
前記第1の領域の空隙率Aが10~20%であり、前記第2の領域の空隙率Bが空隙率Aの2~3.3倍である、ことを特徴とする銀付調人工皮革。 - 前記第2の繊維の平均繊度が前記第1の繊維の平均繊度の1.5倍以上である請求項1に記載の銀付調人工皮革。
- 前記空隙率Bは、前記空隙率Aよりも15~40%高い請求項1または2に記載の銀付調人工皮革。
- 前記第1の不織布層の繊維密度が前記第2の不織布層の繊維密度の1.1~2.5倍である請求項1~3の何れか1項に記載の銀付調人工皮革。
- 前記第1の繊維は長繊維であり、前記第2の繊維は短繊維である、請求項1~4の何れか1項に記載の銀付調人工皮革。
- 前記第1の不織布層と前記第2の不織布層との総厚みに対する前記第1の不織布層の割合が、30~60%である請求項1~5の何れか1項に記載の銀付調人工皮革。
- 前記人工皮革基材は、0.50~0.70g/cm3の見掛け密度を有する請求項1~6の何れか1項に記載の銀付調人工皮革。
- 前記第1の繊維及び前記第2の繊維はポリエステル繊維である請求項1~7の何れか1項に記載の銀付調人工皮革。
- 請求項1~8の何れか1項に記載の銀付調人工皮革の製造方法であって、
前記第1の繊維を形成するための第1の海島型複合繊維のウェブである第1の繊維ウェブと、前記第2の繊維を形成するための第2の海島型複合繊維のウェブである第2の繊維ウェブと、を準備する工程と、
少なくとも1層の前記第1の繊維ウェブの少なくとも1面に少なくとも1層の第2の繊維ウェブを積層して積層ウェブを形成する工程と、
前記積層ウェブを形成する前記第1の海島型複合繊維と前記第2の海島型複合繊維とを絡合処理させた絡合繊維シートを形成する工程と、
前記絡合繊維シートを熱収縮させることにより熱収縮繊維シートを形成する工程と、
前記熱収縮繊維シートの空隙に水系ポリウレタンの水性液を含浸付与し、加熱乾燥することにより、水系ポリウレタンを付与する工程と、
前記水系ポリウレタンを付与された前記熱収縮繊維シートに極細繊維化処理を施すことにより、前記第1の不織布層と前記第2の不織布層とを含む繊維絡合体を形成させる工程と、
前記第1の不織布層の表面を平坦化することにより、人工皮革基材を形成させる工程と、
平坦化された前記第1の不織布層の表面に前記銀面樹脂層を被着させる工程と、を備え、
前記第1の海島型複合繊維の島成分割合が前記第2の海島型複合繊維の島成分割合よりも高いことを特徴とする、銀付調人工皮革の製造方法。
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