JP2003040689A - 高純度多孔質酸化チタン及びその製造方法 - Google Patents

高純度多孔質酸化チタン及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高比表面積で熱安定性に優れ、細孔の大きさ
が精密に制御され、かつ、その細孔分布がシャープな高
純度多孔質酸化チタン及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 含水酸化チタンを乾燥し、焼成して得ら
れる多孔質酸化チタンであり、酸化チタンの純度が酸化
物(TiO2)基準で97wt%以上であってケイ素、燐、マグ
ネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、アルミニ
ウム、及びジルコニウムから選ばれた1種又は2種以上
の元素を含み、500℃、3時間の条件で焼成したとき
の細孔容積が0.3ml/g以上であって細孔シャープネス
度が50%以上であり、かつ、比表面積が80m2/g以上
である高純度多孔質酸化チタンである。また、乾燥・焼
成前の含水酸化チタン中に粒子成長調整剤としてケイ
素、燐、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガ
ン、アルミニウム、及びジルコニウムから選ばれた1種
又は2種以上の元素の化合物を存在せしめる高純度多孔
質酸化チタンの製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、触媒担体あるい
は触媒として有用な高比表面積で熱安定性に優れ、細孔
の大きさが精密に制御され、その細孔分布がシャープな
高純度多孔質酸化チタンとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化チタンを製造する従来技術を大別す
ると、四塩化チタンを酸素で燃焼して製造する気相法
と、硫酸チタンあるいは硫酸チタニルの加水分解、四塩
化チタン又は硫酸チタンのアルカリ中和、チタンアルコ
キシドの加水分解等の方法により酸化チタンの前駆物質
である含水酸化チタンを製造し、次いでこの含水酸化チ
タンを乾燥、焼成して酸化チタンを製造する液相法とが
知られている。上記液相法による酸化チタンの代表的な
製造方法には、以下のものが挙げられる。
【0003】硫酸チタニルの加水分解による方法とし
て、硫酸チタニルを170℃以上に加熱し、その飽和蒸
気圧以上の圧力下で加水分解して含水酸化チタンを製造
し、次いで400〜900℃の温度で焼成し、球状のア
ナターゼ型二酸化チタンを製造する方法(特開平05-16
3,022号公報)、硫酸チタニルの中和による方法とし
て、硫酸チタニルの針状結晶粒子をアルカリ水溶液と接
触させ、得られた針状含水酸化チタンを乾燥、焼成し針
状酸化チタンを製造する方法(特開平05-139,747号公
報)、及び、チタンアルコキシドを加水分解するゾル・
ゲル法として、チタニウムテトラアルコキシドと水の混
合により得られた沈殿物を濾過・水洗した後、水を加え
てスラリーとし、水熱処理して得られた生成物を乾燥
し、細孔容積が0.1〜0.5ml/g、平均細孔径が3〜
30nmのメソポーラス酸化チタン多孔体を製造する方法
(特開2001-031,422号公報)等がある。
【0004】しかしながら、これら従来の方法で製造さ
れる多孔質酸化チタンは、一般的に熱安定性が極めて悪
く、高温あるいは長時間の焼成により比表面積が急激に
低下し、高比表面積を維持することができないという問
題がある。この原因は、含水酸化チタンを乾燥、焼成す
る際に、含水酸化チタンの水酸基が脱離して含水酸化チ
タンの結晶粒子が大きく成長すること、及び高温焼成時
に酸化チタンがシンタリングをすること等による。
【0005】従来技術においても、高い比表面積を有し、
熱安定性に優れた多孔質酸化チタンを製造する試みが行
われている。例えば、酸化チタンにシリカ、アルミナ、
燐等の第二成分を加えて熱安定性を改良した多孔質酸化
チタンを製造する試みである。このような試みの具体例
としては、以下のようなものが挙げられる。
【0006】特開平07-275,701号公報には、酸性溶液中
にケイ素化合物及びチタン化合物を溶解し、更に塩基性
物質を添加して共沈、熟成してシリカ−チタニア(二酸
化チタン)を製造することが提案されている。この方法
においては、シリカに対するチタニアの割合を1〜50
wt%の範囲(実施例ではチタニアの割合が13wt%であ
る)とし、500℃で3時間焼成して得られたシリカ−
チタニア触媒はその比表面積が558m2/gと極めて高
い。しかし、チタニアはシリカよりも含有量が少なく、
シリカに対してチタニアを添加したものとなっており、
高純度多孔質酸化チタンということはできない。
【0007】また、特開平08-257,399号公報には、(1-
x)TiO2・xSiO2(x=0〜0.5)のモル比のチタンアル
コキシド及びシリコンアルコキシドの加水分解ゾルをゲ
ル化した後、350〜1200℃で焼成してチタニア系
触媒を製造することが提案されている。このチタニア系
触媒においては、チタニアに対するシリカの添加割合が
少なく、実施例によれば、チタニア対シリカのモル比
(TiO2:SiO2)は0.95:0.05であって500℃
で2時間焼成して得られたチタニア触媒の比表面積は1
60m2/gの値を示している。
【0008】更に、特開2,000-254,493号公報において
は、チタンアルコキシドとケイ素アルコキシドの混合物
をアルコール溶媒中で反応させ、反応生成物を焼成し、
触媒担体用のシリカ修飾チタニアを製造する方法が提案
されている。この触媒担体用のシリカ修飾チタニアは、
Ti/Si原子比が5〜50であって、800℃以上の高温
雰囲気で焼成した場合にもBET表面積が90m2/g以上
である。実施例によれば、Ti/Si原子比が10の場合、
600℃で焼成したシリカ修飾チタニアが比表面積18
5m2/gの値を示している。
【0009】更にまた、特開平2,000-220,038号公報に
は、チタンアルコキシドを溶媒に溶解させ、水分を添
加して加水分解反応及び重合反応を行ない重合体を生成
させ、該重合体を有機溶媒に溶解させて紡糸液を作
り、該紡糸液を紡糸して前駆体繊維を得、前駆体繊
維を焼成前及び/又は焼成時に水蒸気処理し触媒成分含
有チタニア繊維を製造することが提案されている。この
方法では、工程あるいは工程において、好ましくは
シリカ含有量が約5〜30wt%となるようにケイ素化合
物を添加しており、また、実施例によれば、シリカ12
wt%及びV2O519wt%を含み、空気中で500℃、1時間
焼成して得られた触媒チタニア繊維が比表面積173m2
/gの値を有している。
【0010】また、特開平5-184,921号公報によれば、
アルミナに対してチタニアのモル比が2.0以下で、か
つ前記チタニアに対してハイドロオキシカルボン酸のモ
ル比が0.2〜2.0となるように、チタンのハイドロ
オキシカルボン酸塩及び/又はチタンの酸化物、水酸化
物のゾルとハイドロオキシカルボン酸を、アルミニウム
の酸化物及び/又は水酸化物に添加して混練し、焼成す
ることを特徴とするアルミナ・チタニア複合触媒担体の
製造方法がある。実施例によれば、600℃で2時間焼
成し、TiO2/Al2O3のモル比が1.53でハイドロオキ
シカルボン酸/TiO2比が1.0となる担体の比表面積は
200m2/gの値を示している。
【0011】また、特開平08-057,322号公報において
は、チタニウム塩を加水分解して得られたチタニア水和
物ケーキに所定量の燐酸を添加し、捏和して可塑化し、
所定の処方に従って成形、焼成することにより、燐を酸
化物換算で1〜5wt%含有するチタニア担体の調整方法
が提案されている。この方法は、実施例においては、P2O5
を5wt%含み、500℃で2時間焼成して得られたチタ
ニア担体が比表面積108m2/gの値を示している。
【0012】更に、特開平07-232,075号公報には、チタ
ンの酸化物又は水和酸化物と燐の化合物とをチタニアに
対する燐の混合量が0.1〜6wt%となるように混合し、
得られた混合物を450〜800℃で焼成して焼成体と
し、この焼成体にバナジウムを担持させて窒素酸化物除
去用触媒を製造する方法が提案されており、実施例によ
れば、550℃で2時間焼成して調製され、チタニアに
対する燐の割合が2.5wt%であるバナジウム担持前の
チタニア焼成体が比表面積125m2/gの値を示してい
る。
【0013】以上のとおり、シリカ、アルミナ、燐等の
第二成分を添加することにより、熱安定性が改良され、
高温の熱処理によっても高い比表面積を有する多孔質酸
化チタンを製造することが提案されている。しかしなが
ら、これらの従来技術においては酸化チタンの細孔及び
細孔分布をシャープに制御することは行われていない。
【0014】各種の化学反応に用いられる触媒担体や触
媒においては、単に高比表面積で熱安定性に優れている
というだけでなく、細孔径や細孔分布等の細孔構造が精
密に制御されていることが重要である。これは、化学反
応に関与する反応分子が触媒の活性点に容易に拡散して
接触し、また、反応終了後には容易に脱離することが重
要であるからである。このため、触媒担体や触媒におい
ては、その比表面積や熱安定性に加えて、その細孔径及び
細孔分布等の細孔構造が触媒の活性、選択性、及び寿命
に大きな影響を与える重要な物性である。そして、従来
においても、細孔径及び細孔分布等の細孔構造が制御さ
れた多孔質酸化チタンを製造する試みが行われている。
【0015】特開平06-340,421号公報には、加水分解性
チタン化合物、例えば四塩化チタンにアンモニア水を添
加して水和酸化チタンを生成し、これに多塩基性カルボ
ン酸を添加しキレート化せしめ、更にアルカリでpHを
弱酸性から中性領域にして有機酸化チタン化合物を析出
させ、得られた有機酸化チタン化合物を無機酸により解
膠し、更に仮焼して多孔性酸化チタンを製造することが
提案されており、その実施例には、300℃で24時間
仮焼して得られた多孔質酸化チタンが全細孔容積0.3
48ml/g、BET比表面積112m2/g、細孔半径32〜
120Åを有し、また、その細孔分布が半径120Åを
メインピークとして半径20〜500Åの範囲にあると
記載されている。
【0016】また、特開平11-322,338号公報には、チタ
ンアルコキシドを水混和性有機溶媒に溶解した溶液に、
弱酸と弱塩基、弱酸と強塩基及び弱塩基と強酸の中和に
より得られる塩より選ばれる1種又は2種以上と、水
と、希土類元素に属する金属を含む塩より選ばれる1種
又は2種以上とを添加してチタン−金属複合化合物を調
製し、次いで酸処理して複合化金属を除去することによ
り、また、この際に必要により加水分解抑制剤を共存さ
せることにより、微細構造が良好に制御された多孔質酸
化チタンを製造することが提案されており、その実施例
には、600℃で2時間焼成して得られた多孔質酸化チ
タンが比表面積90m2/g以上、細孔分布が100〜60
0Åの範囲にあると記載されている。
【0017】更に、特開昭56-120,508号公報には、触媒
担体として好適な細孔構造に調整された無機酸化物の製
造方法が提案されている。この方法は、チタニア等のヒ
ドロゲル形成物質を原料として多孔質無機酸化物を製造
する方法であり、a)ヒドロゲルの形成物質からのそのヒ
ドロゲルを得る工程、b)ヒドロゲルのpHを、ヒドロゲ
ル溶解領域とヒドロゲル沈殿領域との間を交互に変動さ
せると共に、ヒドロゲル溶解領域及びヒドロゲル沈殿領
域に少なくとも一方の領域へのpH変動に際して、ヒド
ロゲル形成物質を添加し、最終的に結晶成長し、疎凝集
体を形成したヒドロゲルを得る工程、c)ヒドロゲルを乾
燥してキセロゲルにした後、焼成して無機酸化物に変換
する工程を含むものである。そして、この方法により製
造される多孔質無機酸化物は、任意のサイズの細孔径に
制御されたシャープな細孔分布を有するものであるが、
チタニアの場合その熱安定性は高いとはいえない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
方法で得られる多孔質酸化チタンは、その純度、比表面
積、熱安定性、あるいは細孔径や細孔分布等の細孔構造の
いずれかの点で問題があり、必ずしも満足できるもので
はなかった。
【0019】そこで、本発明者らは、酸化チタンの純度
が97wt%以上で、高い熱安定性、すなわち500℃、
3時間の高温条件で焼成してもなお80m2/g以上の高比
表面積を有し、しかも、細孔径の大きさが任意にかつ精
密に制御され、かつ、その細孔分布がシャープである高
純度多孔質酸化チタンを製造することについて鋭意検討
した結果、合成・乾燥・焼成前の含水酸化チタン中に粒
子成長調整剤として微量のケイ素、燐、マグネシウム、
カルシウム、バリウム、マンガン、アルミニウム、及び
ジルコニウムから選ばれた1種又は2種以上の元素の化
合物を存在させることにより、細孔径が制御された状態
でかつ高比表面積で熱安定性に優れた高純度多孔質酸化
チタンを製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、細孔径が精密に制御された含水酸化チタン粒
子の熱的に離脱し易い水酸基が熱的に離脱し難い上記元
素の多価イオンにイオン交換され、更に、立体的な作用
によりイオン交換された上記元素の多価イオンは、近傍
の水酸基の脱離による縮重合をも防止する効果を発現
し、これによって乾燥や焼成の熱処理時に含水酸化チタ
ン粒子の水酸基が脱離してその粒子が成長するのを効果
的に抑制し、また、防止することができることを見出
し、本発明を完成した。
【0020】従って、本発明の目的は、高比表面積で熱
安定性に優れ、細孔の大きさが精密に制御され、かつ、
その細孔分布がシャープな高純度多孔質酸化チタンを提
供することにある。この細孔の大きさを精密に制御する
ということは、酸化チタン粒子の粒子径を均一に、かつ
精密に制御することをも意味する。また、本発明の他の
目的は、このように高比表面積で熱安定性に優れ、細孔
の大きさが精密に制御され、かつ、その細孔分布がシャ
ープな高純度多孔質酸化チタンを製造する方法を提供す
ることにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、含
水酸化チタンを乾燥し、焼成して得られる多孔質酸化チ
タンであり、酸化チタンの純度が酸化物(TiO2)基準で9
7wt%以上であってケイ素、燐、マグネシウム、カルシ
ウム、バリウム、マンガン、アルミニウム、及びジルコ
ニウムから選ばれた1種又は2種以上の元素を含み、5
00℃、3時間の条件で焼成したときの細孔シャープネ
ス度が50%以上であって細孔容積が0.3ml/g以上で
あり、かつ、比表面積が80m2/g以上であることを特徴
とする高純度多孔質酸化チタンである。
【0022】また、本発明は、水系溶媒中でチタン原料
とpH調整剤とを反応させて含水酸化チタンを合成し、
次いでこの含水酸化チタンを乾燥し、焼成して請求項1
に記載の多孔質酸化チタンを製造するに際し、焼成前の
含水酸化チタン中にケイ素、燐、マグネシウム、カルシ
ウム、バリウム、マンガン、アルミニウム、及びジルコ
ニウムから選ばれた1種又は2種以上の元素の化合物を
存在せしめることを特徴ととする高純度多孔質酸化チタ
ンの製造方法である。更に、本発明は、上記高純度多孔
質酸化チタンの製造方法において、その含水酸化チタン
の合成時に、含水酸化チタンの沈殿領域pHと溶解領域
pHとの間を交互に複数回以上スイングせしめる方法で
ある。
【0023】本発明の高純度多孔質酸化チタンにおい
て、その酸化チタンの純度は酸化物(TiO2)基準で97wt
%以上、好ましくは98wt%以上であるのがよく、また、
500℃、3時間の条件で焼成したときの細孔容積は
0.3ml/g以上、更に、細孔シャープネス度は50%以
上、好ましくは60%以上であるのがよく、更にまた、比
表面積は80m2/g以上、好ましくは100m2/g以上であ
るのがよい。
【0024】ここで、多孔質酸化チタンの特性を強く発
現させる触媒として用いるためには、酸化チタンは高純
度である必要がある。そして、この酸化チタンは軽油の
脱硫反応に使用した場合、Ramirezら(J. Ramirez, S. F
uentes, G. Diaz, M. Vrinat, M. Breysse, M. Lacroi
x, Appl. Catal., 52, 211(1989))によれば単位比表面
積当りの脱硫活性はアルミナのおよそ4倍であると報告
されている。また、戸河里ら(Togari, O., Ono, T., Na
kamura, M., Sekiyu Gakkaishi, 22, (6), 336(1979))
によれば、触媒担体Al2O3・TiO2 及びSiO2・TiO2の複合
化合物において、それぞれAl2O3及びSiO2の含有量が増
加すると触媒担体の酸強度が大きくなることが示されて
いる。更に、特開平08-57,322号公報にも述べられてい
るように、酸化チタン中に燐の含有量が増えると強い酸
点を発現する。石油留分の水素化脱硫反応においては、
触媒上の強い酸点により、コークが生成し触媒の活性劣
化が起こり易くなる。
【0025】従って、酸化チタンに特有な単位比表面積
当たりの高い脱硫活性を維持し、更にコークの生成を抑
制するためには、触媒担体として利用する酸化チタンの
純度は酸化物(TiO2)基準で97wt%以上、好ましくは9
8wt%以上であるのがよい。
【0026】また一般に、触媒反応では、反応分子の細
孔径内における分子拡散が律速とならないようにするこ
とは重要であり、このため各反応分子に最適となるサイ
ズの細孔径を有する触媒をあるいは触媒担体を選定、採
用する努力がなされている。例えば、石油留分の水素化
脱硫においては、軽油、重質油等の処理対象とする留分
に応じた最適な細孔径を有する触媒が使用されている。
【0027】本発明では、細孔シャープネス度として、
最適細孔径範囲を規定している。すなわち、全細孔容積
の50%における細孔径(メディアン直径)を求め、次
にメディアン直径の対数値の±5%の細孔径範囲内に有
する細孔容積(PVM)を求め、その細孔容積(PVM)と全
細孔容積(PVT)から、以下の式 細孔シャープネス度(%)=(PVM/PVT)×100 により細孔分布の細孔シャープネス度を求め、この細孔
シャープネス度が50%以上であれば、ほとんどの細孔
径が最適細孔径の近傍にあるといえる。この細孔シャー
プネス度が50%未満では、反応に有効に使われる細孔
容積が少なく、触媒の活性が低下する。従って、本発明
の酸化チタンにおいては、その細孔シャープネス度が5
0%以上であるのがよい。
【0028】更に、本発明の酸化チタンに各種触媒金属
を担持させる場合、触媒金属の担持により細孔容積は減
少する。例えば、軽油の脱硫触媒では、一般的に触媒金
属としてモリブデンを担体に担持する。本発明の酸化チ
タンにモリブデンを酸化物(MoO3)として13wt%担持
させた場合、細孔容積は0.04ml/gの減少が見られ
る。加えて、コーク劣化が起こり易い重油の脱硫反応で
は、先に述べたシリカ、アルミナ及び燐等により発現す
る酸点や高温、低水素分圧条件でコークが生成し、触媒
細孔を閉塞する。例えば、戸河里ら(Togari, O., Takah
ashi, H., Nakamura, M., Sekiyu Gakkaishi, 23, (4),
256(1980))によれば、常圧残油の水素化処理でアルミ
ナ担体の触媒で700時間運転を行なった場合に、生成
したコーク等により、使用前に0.51ml/gであった細
孔容積は、使用後に0.33ml/gにまで減少し、0.1
8ml/gの細孔容積の閉塞が起こっている。
【0029】従って、本発明の酸化チタンには担持金属
による細孔容積の減少、及びコーク等の生成による触媒
細孔の閉塞に対応する必要があり、先に述べたように金
属担持に必要な細孔容積を0.04ml/gとし、コーク等
による触媒細孔の閉塞に対応するための細孔容積を0.
18ml/gとした場合に、これらに対応するための細孔容
積は0.22ml/gとなる。従って、本発明の酸化チタン
の担体は、その細孔容積が0.3ml/g以上であるのがよ
い。
【0030】更にまた、軽油の脱硫反応における最高反
応温度は、380℃付近であり、また減圧軽油の水素化
処理反応における反応温度は430℃付近である。従っ
て、本発明の多孔質酸化チタンをこれらの水素化処理触
媒として使用する場合は、これらの処理温度よりも高い
温度、すなわち500℃で焼成処理を行なえば、触媒の
熱安定性は十分である。また、本発明の多孔質酸化チタ
ンを500℃で焼成する場合の時間は、焼成を3時間以
上とすることで重量が定常となる。従って、本発明の多
孔質酸化チタンの焼成は、500℃で3時間とするのが
よい。
【0031】また、本発明の酸化チタンの比表面積を8
0m2/g以上とする理由は、軽油の脱硫に用いられる市販
のアルミナ担体触媒の比表面積が約250m2/gであり、
また、先に引用したように酸化チタンを担体とした触媒
の比表面積当りの軽油の脱硫活性は、アルミナのおよそ
4倍となっている。従って、アルミナ担体触媒の相対活
性を1とすると、比表面積が80m2/gである酸化チタン
担体の触媒の相対活性は1.3と予想され、アルミナ担
体触媒を上回ることとなる。従って、本発明の酸化チタ
ンの比表面積については80m2/g以上、好ましくは10
0m2/gとするのがよい。
【0032】本発明の高純度多孔質酸化チタンの製造方
法において、乾燥・焼成前の含水酸化チタンの合成に使
用するチタン原料については、チタンの塩化物、弗化
物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸
塩、燐酸塩、ホウ酸塩、蓚酸塩、フッ酸塩、ケイ酸塩、
ヨウ素酸塩等のチタン塩、チタン酸、チタンのオキソ酸
塩及びチタンのアルコキシド類等を挙げることができ、
好ましいものとしては、例えば、四塩化チタン、硫酸チ
タン、硫酸チタニル、三塩化チタン、チタンメトキシ
ド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイ
ソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタ
ンテトラブトキシド、オルトチタン酸、メタチタン酸、
四臭化チタン、四弗化チタン、三弗化チタン、チタン酸
カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム等を
挙げることができる。これらのチタン原料は、その1種
のみを単独で使用できるほか、2種以上の混合物として
使用することもできる。
【0033】また、含水酸化チタンの合成に用いるpH
調整剤としては、例えば、四塩化チタン、硫酸チタン、
硫酸チタニル、三塩化チタン、四臭化チタン、四弗化チ
タン、三弗化チタン等の他に、硝酸、塩酸、硫酸等の酸
や、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、
炭酸水素カリウム等のアルカリを挙げることができ、こ
れらのpH調整剤についても、その1種のみを単独で使
用できるほか、2種以上の混合物として使用することも
できる。
【0034】更に、含水酸化チタンを合成する際に用い
る水系溶媒としては、特に制限されるものではないが、
水の他、メタノール、エタノール、プロパノール、テト
ラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン等の水溶性有機
溶剤の水溶液等を用いることもできる。
【0035】ここで、この含水酸化チタンを合成する際
の反応条件について、含水酸化チタンを合成する時の水
系溶媒中におけるチタンの濃度は、酸化チタン換算で通
常0.1〜15wt%、好ましくは0.5〜10wt%である
のがよく、反応温度は常温から300℃、好ましくは常
温から180℃、より好ましくは常温から100℃であ
り、また、反応圧力が常圧(0MPa)から9.0MPa、好ま
しくは0〜1.0MPa、より好ましくは0〜0.5MPaで
あり、更に、pH値は通常0.5〜11、好ましくは1
〜10の範囲であるのがよい。
【0036】そして、本発明の製造方法においては含水
酸化チタン中に粒子成長調整剤として微量のケイ素、
燐、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、
アルミニウム、及びジルコニウムから選ばれた1種又は
2種以上の元素の化合物を存在せしめる。この粒子成長
調整剤が、含水酸化チタン粒子の成長を抑制するメカニ
ズムは以下の様な作用によるものと考えられる。
【0037】すなわち、含水酸化チタン微粒子は水溶液
中で帯電する。含水酸化チタンの等電点はアナターゼ結
晶型ではpHが6.1近傍である。そして、pHが等電
点未満の溶液中では、含水酸化チタン粒子表面の水酸基
は正に帯電し、溶液中で負に帯電しているアニオンがこ
の含水酸化チタン粒子の表面に容易に付着し、また、p
Hが等電点を超える溶液中では、含水酸化チタン粒子表
面の水酸基は負に帯電し、溶液中で正に帯電しているカ
チオンがこの含水酸化チタン粒子の表面に容易に付着す
る。また、このような場合に、溶液中のアニオンあるい
はカチオンは、静電気的な作用で含水酸化チタン粒子表
面に高分散し、表面水酸基に対して比較的少量でも有効
にかつ強固に結合する。このため、含水酸化チタンを焼
成した場合に、アニオンあるいはカチオンでイオン交換
された部分は、アニオンあるいはカチオンと強固に結合
しているために含水酸化チタンの結晶格子(Ti-O-Ti)
が形成されず、結晶の成長にはつながらないものと考え
られる。更に、アニオンあるいはカチオンの結合部分に
近接した水酸基は、アニオンあるいはカチオン部分の立
体障害を受けるため、他のチタニア粒子表面の水酸基と
結合し難くなるものと考えられる。
【0038】なお、上述のように含水酸化チタンの粒子
の成長を抑制するアニオンあるいはカチオンは、1価の
もよりも多価のものがより多くの水酸基と結合が可能で
あり、乾燥・焼成時により優れた含水酸化チタン粒子の
成長阻害効果を発現する。そして、このような多価のア
ニオンあるいはカチオンを形成し、含水酸化チタンの粒
子成長調整剤として用いるのに好適な元素の化合物が、
上記のケイ素、燐、マグネシウム、カルシウム、バリウ
ム、アルミニウム、及びジルコニウムの化合物である。
【0039】ここで、上記含水酸化チタンの粒子成長調
整剤として用いられる元素の化合物としては、具体的に
は以下のようなものを例示することができ、これらの化
合物は1種のみを単独で使用できるほか、2種以上の混
合物として使用してもよい。すなわち、ケイ素系の化合
物としては、四塩化ケイ素、二酸化ケイ素、ケイ酸、ケ
イ酸塩、無水ケイ酸、ケイ酸モリブデン、ケイ酸イオン
等を挙げることができる。また、燐系の化合物として
は、燐酸、亜燐酸、メタ燐酸、ピロ燐酸、酸化燐、燐酸
のアンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バ
リウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等を挙げることが
できる。
【0040】更に、マグネシウム系の化合物としては、
硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウ
ム、ホウ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化マグ
ネシウム、水酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、塩
化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウ
ム、炭化マグネシウム、マグネシウムを含む有機酸、マ
グネシウム、マグネシウムイオン、モリブデン酸マグネ
シウム及び以上の化合物の水和物等を挙げることができ
る。
【0041】カルシウム系の化合物としては、硝酸カル
シウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸カル
シウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カル
シウム、弗化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシ
ウム、ヨウ化カルシウム、炭化カルシウム、カルシウム
を含む有機酸、カルシウム、カルシウムイオン、モリブ
デン酸カルシウム及び以上の化合物の水和物等を挙げる
ことができる。
【0042】バリウム系の化合物としては、硝酸バリウ
ム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホウ酸バリウム、酢
酸バリウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、弗化バリ
ウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、
炭化バリウム、バリウムを含む有機酸、バリウム、バリ
ウムイオン、モリブデン酸バリウム及び以上の化合物の
水和物等を挙げることができる。
【0043】ジルコニウム系の化合物としては、硫酸ジ
ルコニウム、硫酸化ジルコニア、炭化ジルコニウム、四
塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、水素化ジ
ルコニウム、四ヨウ化ジルコニウム、酸化ジルコニウ
ム、ジルコニウムn-プロポキシド、硝酸ジルコニル、炭
酸ジルコニル、水酸化ジルコニル、硫酸ジルコニル、酢
酸ジルコニル、ジルコニウム及び以上の化合物の水和物
等を挙げることができる。
【0044】マンガン系の化合物としては、硝酸マンガ
ン、硫酸マンガン、硫酸アンモニウムマンガン、炭酸マ
ンガン、ホウ酸マンガン、酢酸マンガン、酸化マンガ
ン、水酸化マンガン、弗化マンガン、塩化マンガン、臭
化マンガン、ヨウ化マンガン、炭化マンガン、マンガン
を含む有機酸、マンガン、過マンガン酸塩、モリブデン
酸マンガン及び以上の化合物の水和物等を挙げることが
できる。
【0045】アルミニウム系の化合物としては、酢酸ア
ルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、臭化アル
ミニウム、塩化アルミニウム、弗化アルミニウム、水酸
化アルミニウム、乳酸アルミニウム、硝酸アルミニウ
ム、過塩素酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウ
ム、ケイ酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウ
ム、硫酸アルミニウム、三弗化アルミニウム、アルミニ
ウム及び以上の化合物の水和物等を挙げることができ
る。
【0046】ところで、含水酸化チタンの粒子成長調整
剤のケイ素化合物や燐化合物は、酸化物として安定であ
ることから、水溶液中でオキシアニオンの形態で存在す
る場合にその効果が大きい。水溶液中での化合物形態は
ケイ素化合物では主にSiO3 2-であり、燐化合物ではPO4
3-であると考えられ、更に、イオン化傾向が大きいマグ
ネシウム、カルシウム、バリウム、ジルコニウム、及び
マンガンの化合物は、水溶液中でカチオンの形態で存在
する場合に効果が大きい。これらの粒子成長調整剤の水
溶液中での化合物形態はそれぞれMg2+、Ca2+、Ba2+、Zr
4+、Mn2+であると考えられる。また、アルミニウムの化
合物は、水酸化物Al2O3・xH2Oとして比較的安定であ
り、また、アニオンあるいはカチオンのいずれの形をも
取り得るので、アニオンとしてはAlO3 3-として存在し、
また、カチオンとしてはAl3+の形態で存在すると考えら
れる。
【0047】本発明の製造方法において、含水酸化チタ
ン中にその粒子成長調整剤として存在させるケイ素、
燐、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、
アルミニウム、及びジルコニウムから選ばれた1種又は
2種以上の元素の化合物の濃度は、得られた多孔質酸化
チタンを少なくとも97wt%以上の高純度に維持する必
要があることから、酸化物基準で、酸化チタン中に0.
1〜3wt%の範囲以内、好ましくは0.2〜2wt%の範囲
内であるのが効果的である。この含水酸化チタン中の粒
子成長調整剤の濃度が0.1wt%より少ないと、酸化チタ
ンの比表面積を増大させる効果が充分に発現せず、反対
に、3wt%より多くすると、高純度の多孔質酸化チタンが
得られなくなるほか、酸化チタン自身の比表面積もあま
り向上しない。
【0048】なお、含水酸化チタン中に粒子成長調整剤
として存在させる元素の化合物は、含水酸化チタンの高
比表面積を維持する効果を発現させることのほか、酸化
チタンの細孔分布制御の際にその障害にならないこと、
多孔質酸化チタン中に酸化物として存在して触媒毒にな
らないこと、及び経済性の観点から安価であることなど
も重要な要素である。
【0049】本発明の製造方法において、含水酸化チタ
ン中に粒子成長調整剤としてケイ素、燐、マグネシウ
ム、カルシウム、バリウム、マンガン、アルミニウム、
及びジルコニウムから選ばれた1種又は2種以上の元素
の化合物を所定の割合で存在せしめる方法については、
特に制限されるものではなく、含水酸化チタンのヒドロ
ゾル又はヒドロゲルの製造時に、当該含水酸化チタンの
合成原料(例えば、チタン化合物、pH調整剤、水系溶剤
等)中、合成時の反応溶媒中、又は合成後脱水前のいず
れの段階で添加してもよい。
【0050】原料のチタン塩化物をアンモニアで中和し
て含水酸化チタンを製造した場合には、含水酸化チタン
のヒドロゾルあるいはヒドロゲル中に塩素やアンモニア
等の不純物が残存し、これらの不純物を洗浄水で洗浄し
て除去する必要がある。例えば、この含水酸化チタン合
成後のろ過・洗浄工程で用いる洗浄水として所定の粒子
成長調整剤を含む洗浄水、好ましくは粒子成長調整剤を
その元素の酸化物基準で1〜100ppmの範囲で含む洗
浄水を用い、この洗浄水を介して含水酸化チタン中に粒
子成長調整剤を添加してもよく、また、洗浄後のゲル状
含水酸化チタンに粒子成長調整剤を混合してもよい。こ
れらの方法によれば、含水酸化チタン中に粒子成長調整
剤を添加する操作を大幅に簡略化できる。また、含水酸
化チタンの粒子成長調整剤は乾燥処理後の含水酸化チタ
ンに添加することもできる。
【0051】なお、含水酸化チタンの粒子成長調整剤と
して多価アニオンを添加する場合には、含水酸化チタン
のゾル又はゲルのpH値をチタン水酸化物の等電点未満
とするのがよく、また、含水酸化チタンの粒子成長調整
剤として多価カチオンを添加する場合には、含水酸化チ
タンのゾル又はゲルのpH値をチタン水酸化物の等電点
を超えた値とするのがよい。また、含水酸化チタンの粒
子成長調整剤として多価アニオンと多価カチオンを共に
添加する場合には、含水酸化チタンのゾル又はゲルのp
H値をチタン水酸化物の等電点±0.5とすることによ
り、含水酸化チタンのゾルあるいはゲルに粒子成長調整
剤を有効に付着させることができる。
【0052】更に、本発明の製造方法において、水系溶媒
中でチタン原料とpH調整剤とを反応させて含水酸化チ
タンのヒドロゾル又はヒドロゲルを合成する際には、酸
化チタンの電気化学ポテンシャル図(M.Pourbaix,"Atla
s of Electrochemical Equilibria in Aquieous Soluti
on",Pergamon Press,London(1966),p.218)に示される
含水酸化チタンの沈殿領域pHと溶解領域pHとの間を
交互に複数回以上、通常2〜20回スイングせしめるの
がよく、この際の沈殿領域pHの値、溶解領域pHの値、
及びスイングの回数を調整することにより、合成される
含水酸化チタン粒子の細孔径及び細孔分布等の細孔構造
をより高度に制御することができる。
【0053】例えば、pH1とpH7との間を2回スイ
ングさせた時には細孔分布において細孔径のピークが
8.2nmであって、また、pH1とpH7との間を4回ス
イングさせた時には細孔分布において細孔径のピークが
16.1nmである等、細孔構造が厳密に制御された多孔
質酸化チタンを製造することができる。
【0054】このようにして製造された含水酸化チタン
は、次にろ過、脱水、乾燥、焼成されて多孔質酸化チタ
ンとなるが、この際に、含水酸化チタンを固形物基準で
含水量200〜900wt%、好ましくは250〜600w
t%にまで脱水あるいは乾燥し、所要の形状に成形した
後、更に温度40〜350℃、好ましくは80〜200
℃で0.5〜24時間、好ましくは0.5〜5時間乾燥
し、その後に温度350〜1200℃、好ましくは40
0〜700℃で0.5〜24時間、好ましくは0.5〜
5時間焼成する。これら一連の製造操作によって、触媒
担体あるいは触媒として有用な高比表面積で熱安定性に
優れ、また、細孔構造が精密に制御され、その細孔分布
がシャープな高純度多孔質酸化チタンを製造することが
できる。
【0055】
【発明の実施の形態】以下、実施例及び比較例に基づい
て、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。な
お、ここで記載する実施例は、本発明を具体的に説明す
るためのものであって、これらの実施例によって本発明
が限定されるものではない。また、以下の実施例及び比
較例において、比表面積、細孔容積及び細孔分布、並び
に細孔シャープネス度は以下の方法により測定した。
【0056】〔比表面積〕多孔質酸化チタンの比表面積
は、測定機器としてマウンテック社製Macsorb Model-12
01を使用し、BET(詳しくは、S. Brunauer, P. H. E
mmett, E. Teller., J. Am. Chem., Soc., 60, 309(193
8))の三点法により測定した。
【0057】〔細孔容積及び細孔分布〕多孔質酸化チタ
ンの細孔容積と細孔分布は、測定機器として島津製作所
製オートポア9200形を使用し、水銀圧入法(詳しくは、
E. W. Washburn, Proc. Natl.Acad. Sci., 7, 115(192
1), H. L. Ritter, L. E. Drake, Ind. Eng. Chem. Ana
l., 17, 782, 787(1945), L. C. Drake, Ind. Eng. Che
m., 41, 780(1949),及びH. P. Grace, J. Amer. Inst.
Chem. Engrs., 2. 307(1965)などの文献に記載されてい
る)により測定した。水銀の表面張力は0.48N/mと
し、使用接触角は140°とし、絶対水銀圧力を0.0
8〜414MPaまで変化させて測定した。
【0058】〔細孔シャープネス度〕水銀圧入法により
測定された累積細孔分布曲線に関し、先に定義された細
孔シャープネス度の計算式に基づいて求めた。ここで求
められる細孔シャープネス度は、全細孔容積に対する反
応に最適な細孔容積の度合いを評価するための因子であ
り、細孔シャープネス度が大きい程、反応系に必要な細
孔容積が多く存在するシャープな細孔分布を有して好ま
しいものである。
【0059】実施例1 (含水酸化チタン粒子の合成工程)含水酸化チタンの粒
子成長調整剤として四塩化ケイ素(SiCl4)を用い、上
記四塩化ケイ素の水溶液〔ケイ素濃度(SiO2換算)0.
29g/l〕5500gが入ったベッセル中に、500g/l
濃度の四塩化チタン水溶液165gと14wt%濃度のアン
モニア水166gとを加え、含水酸化チタンのヒドロゾ
ルスラリーを合成した。このときの合成温度は60℃と
した。
【0060】得られた含水酸化チタンのヒドロゾルスラ
リー中に、500g/l濃度の四塩化チタン水溶液165g
を加えてpHを酸性側の含水酸化チタンの溶解領域に戻
し、その後に166gの14wt%濃度のアンモニア水を加
えてスラリーのpHをアルカリ側の含水酸化チタンの沈
殿領域とするpHスイング操作を行い、更に引き続いて
このpHスイング操作を1回繰り返し、含水酸化チタン
粒子を合成した。また、この際の含水酸化チタンヒドロ
ゾルスラリーの最終的な溶液のpH値を5とした。
【0061】(ろ過・洗浄工程)合成した含水酸化チタ
ンのヒドロゾルスラリーをろ過し、得られたゲル中の塩
素及びアンモニウムイオンを洗い出すため、スラリー中
に洗浄水として7.5リットルの水を混合し、次いでろ
過・洗浄する操作を2回繰り返して行なった。このろ過
・洗浄操作終了後、最終的に吸引ろ過を行って含水酸化
チタンのゲルを得た。このゲルの含水量は固形物基準で
300wt%であった。
【0062】(押出成形工程)ピストン型ゲル押出成形
器を用い、含水酸化チタンのゲルを1.5mmφの円柱状
に成形した。
【0063】(乾燥・焼成工程)押出成形工程で得られ
た含水酸化チタンヒドロゲルの1.5mmφの円柱状成形
物を、乾燥器により120℃、3時間の条件で乾燥し、
得られた乾燥物を電気炉で、500℃、3時間の条件で
焼成し、多孔質酸化チタンを得た。なお、焼成後はデシ
ケータ内で放冷した。得られた多孔質酸化チタンの物性
を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】実施例2 含水酸化チタンの粒子成長調整剤として燐酸の水溶液
〔燐濃度(P2O5換算)0.25 g/l〕を用いて合成温
度を80℃とした以外は、実施例1と同様にして多孔質
酸化チタンを得た。得られた多孔質酸化チタンの物性を
表2に示す。
【0066】実施例3 含水酸化チタンの粒子成長調整剤として塩化マグネシウ
ム六水和物の水溶液〔マグネシウム濃度(MgO換算)
0.08g/l〕を用いて合成温度を100℃とし、また
含水酸化チタンの生成量が実施例1と同じになる条件で
pHスイングを2回行ない、更に含水酸化チタンヒドロ
ゾルスラリーの最終的な溶液のpH値を8とした以外
は、実施例1と同様にして多孔質酸化チタンを得た。得
られた多孔質酸化チタンの物性を表2に示す。
【0067】実施例4 含水酸化チタンの粒子成長調整剤として塩化カルシウム
二水和物の水溶液〔カルシウム濃度(CaO換算)0.1
7g/l〕の塩化カルシウム水溶液を用いて合成温度を1
20℃とし、また含水酸化チタンの生成量が実施例1と
同じになる条件でpHスイングを6回行ない、更に含水
酸化チタンヒドロゾルスラリーの最終的な溶液のpH値
を8とした以外は、実施例1と同様にして多孔質酸化チ
タンを得た。得られた多孔質酸化チタンの物性を表2に
示す。
【0068】実施例5 含水酸化チタンの粒子成長調整剤として塩化バリウム二
水和物の水溶液〔バリウム濃度(BaO換算)0.24g/
l〕を用いて合成温度を140℃とし、更に含水酸化チ
タンヒドロゾルスラリーの最終的な溶液のpH値を8と
した以外は、実施例1と同様にして多孔質酸化チタンを
得た。得られた多孔質酸化チタンの物性を表2に示す。
【0069】実施例6 含水酸化チタンの粒子成長調整剤としてオキシ塩化ジル
コニウム八水和物の水溶液〔ジルコニウム濃度(ZrO2
算)0.33g/l〕を用いて合成温度を160℃とした
以外は、実施例5と同様にして多孔質酸化チタンを得
た。得られた多孔質酸化チタンの物性を表2に示す。
【0070】実施例7 含水酸化チタンの粒子成長調整剤として塩化マンガン四
水和物の水溶液〔マンガン濃度(MnO換算)0.22g/
l〕を用いて合成温度を180℃とし、また含水酸化チタ
ンの生成量が実施例1と同じになる条件でpHスイングを
2回行ない、更に含水酸化チタンヒドロゾルスラリーの
最終的な溶液のpH値を8とした以外は実施例1と同様
にして多孔質酸化チタンを得た。得られた多孔質酸化チ
タンの物性を表2に示す。
【0071】実施例8 含水酸化チタンの粒子成長調整剤として塩化アルミニウ
ムの水溶液〔アルミニウム濃度(Al2O3換算)0.30g
/l〕を用いて合成温度を40℃とした以外は、実施例1
と同様にして多孔質酸化チタンを得た。得られた多孔質
酸化チタンの物性を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】表1及び表2のそれぞれの実施例におい
て、本発明が目的とする酸化チタンの純度が97wt%以
上、比表面積が80m2/g以上、細孔容積(PVT)が0.
3ml/g以上でかつ細孔シャープネス度が50%以上とな
っている。
【0074】実施例9 含水酸化チタンの粒子成長調整剤としてケイ素濃度(Si
O2換算)0.05g/lの四塩化ケイ素水溶液を用いた以
外は、実施例1と同様にして多孔質酸化チタンを得た。
得られた多孔質酸化チタンの物性を表3に示す。
【0075】実施例10 含水酸化チタンの粒子成長調整剤としてケイ素濃度(Si
O2換算)及び燐濃度(P2O5換算)がそれぞれ0.09g/
lの四塩化ケイ素・燐酸水溶液を用いて合成温度を80
℃とし、また含水酸化チタンの生成量が実施例1と同じ
になる条件でpHスイングを6回行なった以外は、実施例
1と同様にして多孔質酸化チタンを得た。得られた多孔
質酸化チタンの物性を表3に示す。
【0076】実施例11 含水酸化チタンの粒子成長調整剤として四塩化ケイ素、
塩化カルシウム二水和物及び塩化マグネシウム六水和物
を使用し、合成工程の水系溶媒としてケイ素濃度(SiO2
換算)、カルシウム濃度(CaO換算)及びマグネシウム
濃度(MgO換算)がそれぞれ0.15g/l、0.15g/l
及び0.04g/lの四塩化ケイ素・塩化カルシウム・塩
化マグネシウム水溶液を使用した。他に合成温度を10
0℃とし、また含水酸化チタンの生成量が実施例1と同
じになる条件でpHスイングを9回行ない、更に含水酸化
チタンヒドロゾルスラリーの最終的な溶液のpH値を7
とした以外は、実施例1と同様にして多孔質酸化チタン
を得た。得られた多孔質酸化チタンの物性を表3に示
す。
【0077】実施例12 含水酸化チタンの粒子成長調整剤を使用しなかった以外
は、実施例1と同様にして含水酸化チタンヒドロゾルス
ラリーを調製し、得られたチタニアヒドロゲルスラリー
の洗浄工程に用いる洗浄水として、ケイ素濃度(SiO2
算)、カルシウム濃度(CaO換算)及びマグネシウム濃
度(MgO換算)がそれぞれ0.03g/l、0.03g/l及
び0.01g/lの四塩化ケイ素・塩化カルシウム・塩化
マグネシウム水溶液を用い、洗浄操作を行なった。これ
らの操作以外は実施例1と同様にして多孔質酸化チタン
を得た。得られた多孔質酸化チタンの物性を表3に示
す。
【0078】実施例13 含水酸化チタンの粒子成長調整剤を使用しなかった以外
は、実施例1と同様にして洗浄を終了した含水酸化チタン
ヒドロゲルを得た。TiO2重量として50gとなる含水酸
化チタンヒドロゲル(含水量は固形物基準で300wt
%)に、粒子成長調整剤として燐酸2水素アンモニウム
粉末をP2O5換算で0.92gを加え、含水酸化チタン中
に均一となるように混練した。その後は実施例1と同様
にして多孔質酸化チタンを得た。
【0079】実施例14 TiO2として50g相当の含水酸化チタンの成形乾燥物
を、含水酸化チタンの粒子成長調整剤として燐濃度(P2
O5換算)4.8g/lの燐酸溶液200ml中に浸漬し、そ
の後、再度実施例1と同様にして多孔質酸化チタンを得
た。得られた多孔質酸化チタンの物性を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】実施例10、11は複数の含水酸化チタン
の粒子成長調整剤を合成溶媒に添加した場合の効果であ
り、実施例12は含水酸化チタンの粒子成長調整剤をゲ
ルの洗浄時に添加した場合であり、また実施例13及び
14は、それぞれ含水酸化チタンゲルへの混練、あるい
は乾燥物への含浸によって粒子成長調整剤を多孔質酸化
チタンに添加した場合を示している。いずれの場合にお
いても本発明が目的とする酸化チタンの純度が97wt%
以上、比表面積が80m2/g以上、細孔容積(PVT)が
0.3ml/g以上でかつ細孔シャープネス度が50%以上
となっている。
【0082】比較例1 2lの沸騰した水が入ったベッセル中に、500g/l濃度
の四塩化チタン水溶液0.3lを加え、更に液温を95
℃に保持し、14wt%濃度のアンモニア水0.4lとを加
え、含水酸化チタンのヒドロゾルスラリーを合成した。
その後、沸騰状態で四塩化チタン水溶液とアンモニア水
を添加する同様の操作を2回繰り返し、含水酸化チタン
粒子を合成した。また、この際の含水酸化チタンヒドロ
ゾルスラリーの最終的な溶液のpH値を7とした。その
後は実施例1と同様にして多孔質酸化チタンを得た。得
られた多孔質酸化チタンの物性を表4に示す。
【0083】比較例2 含水酸化チタンの粒子成長調整剤を使用せず、またpH
スイングを行なわずに1回の反応で実施例1のpHスイ
ング3回に相当する量の含水酸化チタンを合成し、含水
酸化チタンヒドロゾルスラリーのpHを7とした以外
は、実施例1と同様にして多孔質酸化チタンを得た。得ら
れた多孔質酸化チタンの物性を表4に示す。
【0084】比較例3 含水酸化チタンの合成工程でケイ素濃度(SiO2換算)
0.009g/lの四塩化ケイ素水溶液を用いた以外は、実
施例1と同様として多孔質酸化チタンを得た。得られた
多孔質酸化チタンの物性を表4に示す。
【0085】比較例4 含水酸化チタンの合成工程でケイ素濃度(SiO2換算)
0.60g/lの四塩化ケイ素水溶液を用いた以外は、上記
実施例1と同様として多孔質酸化チタンを得た。得られ
た多孔質酸化チタンの物性を表4に示す。
【0086】比較例5 含水酸化チタンの合成工程でケイ素濃度(SiO2換算)
1.68g/lの四塩化ケイ素水溶液を用いた以外は、実施
例1と同様にして多孔質酸化チタンを得た。得られた多
孔質酸化チタンの物性を表4に示す。
【0087】比較例6 含水酸化チタンの合成工程でマグネシウム濃度(MgO換
算)0.08g/lの塩化マグネシウム水溶液を用い、ま
た、含水酸化チタンヒドロゾルスラリーの最終的な溶液
のpHを4とした以外は、実施例1と同様にして多孔質酸
化チタンを得た。得られた多孔質酸化チタンの物性を表
4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】表4において比較例1は、特開昭56-120,5
08号公報の実施例2を1/5のスケールでpHスイング
を3回行ない製造した多孔質酸化チタンであり、比較例
2は含水酸化チタンの粒子成長調整剤を添加しないで製
造した多孔質酸化チタンである。比較例1及び比較例2
はいずれも比表面積は80m2/gよりも小さい。比較例3
は、粒子成長調整剤が0.1wt%以下の場合で比表面積
は80m2/gよりも小さく、また、比較例4及び5は、粒
子成長調整剤が3wt%よりも大きく、酸化チタンの純度
が97wt%よりも低い場合である。また、比較例6は合
成溶媒中で多価カチオンとして存在すると考えられる含
酸化チタンの粒子成長調整剤(塩化マグネシウム六水和
物)を添加し、含水酸化チタンヒドロゾルスラリーの最
終的な溶液のpHを、アナターゼ結晶の等電点よりも低
い4とした場合であり、この条件では酸化チタン中にマ
グネシウムがわずかしか取り込まれないことを示してい
る。
【0090】実施例1、9及び比較例3〜5の結果に基
づいて、含水酸化チタンの粒子成長調整剤の添加効果に
ついて説明する。水5500 gが入ったベッセル中に、
100g/l濃度のケイ酸ソーダの水溶液150 gを加
え、次に20wt%の硫酸溶液を添加してpHを4とし、
含水酸化ケイ素のヒドロゾルスラリーを合成した。その
後同様の添加操作を2回繰り返し、pHスイングを3回行
なった含水酸化ケイ素のヒドロゾルスラリーを得た。そ
の後は実施例1と同様にして多孔質酸化ケイ素を得た。
得られた純度99.4wt%の高純度酸化ケイ素につい
て、その比表面積を測定したところ650m2/gの値を示
した。これと比較例2で得られた酸化チタン純度99.
2wt%の高純度多孔質酸化チタンの比表面積60m2/gの
高純度多孔質酸化チタンとを混合した混合物の比表面積
は酸化ケイ素と酸化チタンの混合割合比で表すことがで
きる。
【0091】実施例1、9及び比較例3〜5の多孔質酸
化チタンは、その製造過程で含水酸化チタンの粒子成長
調整剤として添加された四塩化ケイ素由来の多孔質酸化
ケイ素を含んでいる。従って、添加した四塩化ケイ素由
来の比表面積増加効果を除く含水酸化チタンの粒子成長
調整剤単独の比表面積増加効果は、実施例1、9及び比
較例3〜5と同じ割合で高純度酸化チタンと高純度酸化
ケイ素を混合した混合物の比表面積の値との差(比表面
積の増加分)として表すことができる。
【0092】そこで、実施例1、9及び比較例3〜5に
おける含水酸化チタンの粒子成長調整剤としてのみの添
加効果を確認するために、各実施例1、9及び比較例3
〜5の多孔質酸化チタン中の酸化ケイ素含有量に見合う
酸化ケイ素由来の比表面積を除いた比表面積の増加分を
求めた。結果を、多孔質酸化チタンの酸化ケイ素含有率
をx軸とし、比表面積の増加分をy軸とした図1に示
す。
【0093】この図1より明らかなように、酸化ケイ素
含有率が3wt%までは比表面積の増加分が大きく、特に
酸化ケイ素含有率が2wt%までの比表面積の増加分は顕
著であり、含水酸化チタンの粒子成長調整剤が比表面積
の増加に大きな効果を発現しているのが分かる。だた
し、比較例3に示した酸化ケイ素含有率0.1wt%以下
では、本発明の目的とする比表面積80m2/g以上を達成
できていない。また、酸化ケイ素含有率が3wt%を越え
ると、比表面積の増加効果は徐々に低下し、この値を超
えて含水酸化チタンの粒子成長調整剤を添加しても、そ
の効果が小さいことが分かる。
【0094】
【発明の効果】以上のとおり、本発明の高純度多孔質酸
化チタンは、高比表面積で熱安定性に優れ、しかも、細
孔の大きさが精密に制御され、かつ、その細孔分布がシ
ャープであり、例えば触媒又は触媒担体として酸化チタ
ンの性質を高度に求められる多くの用途に好適に用いら
れる。また、本発明の製造方法によれば、このような高
純度多孔質酸化チタンを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施例1、9及び比較例3〜5の多
孔質酸化チタンを用いて含水酸化チタンの粒子成長調整
剤の添加効果を調べたグラフ図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 工藤 英彦 神奈川県横浜市港北区新吉田町2892、エス ペランサ綱島206 (72)発明者 眞壁 利治 神奈川県厚木市下落合524の1−304号 (72)発明者 小野 健雄 神奈川県川崎市幸区古市場1−38 Fターム(参考) 4G019 FA04 FA11 GA02 4G047 CA02 CB04 CC03 CD04 4G069 AA01 AA02 AA03 AA08 BA01A BA01B BA02A BA02B BA04A BA04B BA05A BA05B BA06A BA06B BB04A BB04B BC09A BC09B BC13A BC13B BC62A BC62B BD07A BD07B EC02X EC02Y EC03X EC03Y EC06X EC06Y FB08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 含水酸化チタンを乾燥し、焼成して得ら
    れる多孔質酸化チタンであり、酸化チタンの純度が酸化
    物(TiO2)基準で97wt%以上であってケイ素、燐、マグ
    ネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、アルミニ
    ウム、及びジルコニウムから選ばれた1種又は2種以上
    の元素を含み、500℃、3時間の条件で焼成したとき
    の細孔シャープネス度が50%以上であって細孔容積が
    0.3ml/g以上であり、かつ、比表面積が80m2/g以上
    であることを特徴とする高純度多孔質酸化チタン。
  2. 【請求項2】 ケイ素、燐、マグネシウム、カルシウ
    ム、バリウム、マンガン、アルミニウム、及びジルコニ
    ウムから選ばれた1種又は2種以上の元素を酸化物基準
    で0.1wt%以上3wt%未満の範囲で含有する請求項1に
    記載の高純度多孔質酸化チタン。
  3. 【請求項3】 水系溶媒中でチタン原料とpH調整剤と
    を反応させて含水酸化チタンを合成し、次いでこの含水
    酸化チタンを乾燥し、焼成して請求項1又は2に記載の
    高純度多孔質酸化チタンを製造するに際し、焼成前の含
    水酸化チタン中にケイ素、燐、マグネシウム、カルシウ
    ム、バリウム、マンガン、アルミニウム、及びジルコニ
    ウムから選ばれた1種又は2種以上の元素の化合物を存
    在せしめることを特徴とする高純度多孔質酸化チタンの
    製造方法。
  4. 【請求項4】 含水酸化チタンの製造時に、含水酸化チ
    タンの沈殿領域pHと溶解領域pHとの間を交互に複数
    回以上スイングさせる請求項3に記載の高純度多孔質酸
    化チタンの製造方法。
  5. 【請求項5】 含水酸化チタンの製造時に、当該含水酸
    化チタンの合成原料中、合成時の反応溶媒中、合成後脱
    水前、又は、合成後焼成前のいずれかの時点に、含水酸
    化チタンの粒子成長調整剤としてケイ素、燐、マグネシ
    ウム、カルシウム、バリウム、マンガン、アルミニウ
    ム、及びジルコニウムから選ばれた1種又は2種以上の
    元素の化合物を添加する請求項3又は4に記載の高純度
    多孔質酸化チタンの製造方法。
  6. 【請求項6】 含水酸化チタンの製造時における含水酸
    化チタンのろ過洗浄工程において、含水酸化チタンの粒
    子成長調整剤であるケイ素、燐、マグネシウム、カルシ
    ウム、バリウム、マンガン、アルミニウム、及びジルコ
    ニウムから選ばれた1種又は2種以上の元素の化合物を
    含む洗浄水により含水酸化チタンを洗浄する請求項3又
    は4に記載の高純度多孔質酸化チタンの製造方法。
  7. 【請求項7】 洗浄水が、含水酸化チタンの粒子成長調
    整剤であるケイ素、燐、マグネシウム、カルシウム、バ
    リウム、マンガン、アルミニウム、及びジルコニウムか
    ら選ばれた1種又は2種以上の元素の化合物を、上記元
    素の酸化物基準で、1〜100ppmの範囲で含む請求項
    6に記載する高純度多孔質酸化チタンの製造方法。
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