JP2003014098A - 変速比無限大無段変速機の制御装置 - Google Patents

変速比無限大無段変速機の制御装置

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JP2003014098A
JP2003014098A JP2001202959A JP2001202959A JP2003014098A JP 2003014098 A JP2003014098 A JP 2003014098A JP 2001202959 A JP2001202959 A JP 2001202959A JP 2001202959 A JP2001202959 A JP 2001202959A JP 2003014098 A JP2003014098 A JP 2003014098A
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Japan
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range
clutch
pressure
port
valve
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Hiromasa Sakai
弘正 酒井
Shunichi Oshitari
俊一 忍足
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 故障などによって意図しない変速が行われる
のを確実に防ぎながらも、発進操作時のクラッチ締結シ
ョックを抑制する。 【解決手段】 予め設定した総変速比または変速比の範
囲で、選択した運転レンジに対してエンジンブレーキ側
のトルクを規制するエンジンブレーキ規制手段は、トロ
イダル型無段変速機のトラニオンを駆動する油圧アクチ
ュエータ30の2つの油室30A、30Bのうち、エン
ジンブレーキ側のトルクを支持する油室の背圧を供給圧
に等しく設定する背圧設定手段を有し、停車レンジから
前進レンジまたは後退レンジへ切り替えられたときに、
背圧が供給圧まで上昇するのを遅延させるオリフィス5
4、55またはアキュームレータ50、51とを備え
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両などに採用さ
れる変速比無限大無段変速機の制御装置の改良に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来から車両の変速機として、ベルト式
やトロイダル型の無段変速機が知られており、このよう
な無段変速機の変速領域をさらに拡大するために、トロ
イダル型の無段変速機に一定変速機と遊星歯車機構を組
み合わせて変速比を無限大まで制御可能とする変速比無
限大無段変速機が知られており、例えば、特開2001
−50387号公報などがある。
【0003】これは、動力循環モードクラッチを締結す
る一方、直結モードクラッチを解放することにより、無
段変速機と一定変速機の変速比の差に応じて、ユニット
変速比(IVT比iiでユニット入力軸回転数/ユニッ
ト出力軸回転数)を負の値から正の値まで無限大(=ギ
アードニュートラルポイントGNP)を含んで連続的に
変速制御を行う動力循環モードと、動力循環モードクラ
ッチを解放する一方、直結モードクラッチを締結して無
段変速機の変速比(CVT比ic)に応じて変速制御を
行う直結モードがあり、これら2つの運転モードを選択
的に使用しており、故障等により意図しない過大なエン
ジンブレーキが作用するのを回避するため、ギアードニ
ュートラルポイントGNPの近傍では、無段変速機の変
速制御弁のドレーンポートにライン圧を加えることで、
意図しないエンジンブレーキが発生するのを防止してい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、変速比無限
大無段変速機では、ユニット変速比が無限大となるギア
ードニュートラルポイントGNPで、Nレンジ(ニュー
トラル)またはPレンジ(駐車レンジ)からDレンジ
(前進レンジ)またはRレンジ(後退レンジ)へセレク
ト操作を行い、動力循環モードクラッチを締結して発進
することになるが、このとき、ユニット変速比が正確に
ギアードニュートラルポイントGNPにあれば、動力循
環モードクラッチを締結しても伝達トルクは発生しない
が、ギアードニュートラルポイントGNPから少しでも
ずれると、ずれた側へ伝達トルクが生じてしまう。そし
て、変速比無限大無段変速機の製造上の公差や制御精度
などにより、目標とするギアードニュートラルポイント
GNPを正確に達成するのは難しく、実際にはギアード
ニュートラルポイントGNPから微小にずれたユニット
変速比から発進を行うことになる。
【0005】しかしながら、上記従来例のように、ギア
ードニュートラルポイントGNPの近傍で、選択した走
行レンジに対してエンジンブレーキ側のトルクを伝達で
きないように、無段変速機の変速制御弁のドレーンポー
トにライン圧を加える構成では、N−DセレクトやN−
Rセレクトのような発進操作時に、上記のようなギアー
ドニュートラルポイントGNPからのずれによって、動
力循環モードクラッチの入出力間で回転差が生じている
ときでは、動力循環モードクラッチを締結する際にショ
ックが発生するという問題がある。
【0006】つまり、動力循環モードクラッチの締結前
に、セレクトした運転レンジに対してエンジンブレーキ
側の伝達トルクを制御する変速制御弁のドレーンポート
にライン圧が供給されているため、エンジンブレーキ側
の伝達トルクはできず、このため、クラッチを締結時に
はギアードニュートラルポイントGNPからのずれに応
じたトルクが生じ、トロイダル型の無段変速機では、こ
のトルクによってパワーローラが変位するため、伝達ト
ルクも変動するが、エンジンブレーキ側の伝達トルクを
制御できないために、この伝達トルクの変動を解消する
ことができず、N−DセレクトまたはN−Rセレクト時
に締結ショックが発生する原因となっていた。
【0007】そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなさ
れたもので、故障などによって意図しない変速が行われ
るのを確実に防ぎながらも、発進操作時のクラッチ締結
ショックを抑制することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、トロイダ
ル型の無段変速機と一定変速機とをユニット入力軸にそ
れぞれ連結するとともに、無段変速機と一定変速機の出
力軸を遊星歯車機構、動力循環モードクラッチ及び直結
モードクラッチを介してユニット出力軸に連結した変速
比無限大無段変速機と、運転状態に応じて前記動力循環
モードクラッチと直結モードクラッチのうちの少なくと
も一方に油圧を供給して動力循環モードと直結モードと
を制御するクラッチ制御手段と、前記トロイダル型無段
変速機のパワーローラを支持する油圧アクチュエータ
と、この油圧アクチュエータに設けた2つの油室へ選択
的に供給圧を供給し、これら油室の油圧を制御する変速
制御弁と、前記変速制御弁に供給圧を供給するライン圧
供給手段と、運転操作に応じて前進レンジ、後退レン
ジ、停車レンジのいずれかの運転レンジを選択する運転
レンジ設定手段と、前記運転レンジに基づいて変速制御
弁のドレーンポートへ供給圧を選択的に供給し、予め設
定した総変速比または変速比の範囲で、前記選択した運
転レンジに対してエンジンブレーキ側のトルクを規制す
るエンジンブレーキ規制手段とを備えた変速比無限大無
段変速機の制御装置において、前記エンジンブレーキ規
制手段は、前記運転レンジ設定手段が停車レンジから前
進レンジまたは後退レンジへ切り替えられたときに、前
記ドレーンポートへ供給する油圧が変速制御弁の供給圧
まで上昇するのを遅延させる遅延手段を備える。
【0009】また、トラニオンを駆動するとともにパワ
ーローラを支持する油圧アクチュエータは、前記油圧ア
クチュエータの油室へ供給圧とドレーンとを選択的に供
給する変速制御弁と、この変速制御弁を駆動するステッ
プモータとからなる伝達トルク制御手段を構成する。
【0010】さらに、動力循環モードクラッチは、ワン
ウェイクラッチとオーバーランクラッチとを並列的に配
置するとともに、これらワンウェイクラッチとオーバー
ランクラッチと直列的に配置したドライブクラッチ(フ
ォワードクラッチ)とから構成し、一定変速機出力軸と
遊星歯車機構の間に介装する構成としてもよい。
【0011】また、第2の発明は、前記第1の発明にお
いて、前記遅延手段は、前記運転レンジが停車レンジか
ら前進レンジまたは後退レンジへ切り替えられたとき
に、パワーローラの傾転角に応じて、前記供給圧を供給
する油室を切り替える切換バルブと、この切換バルブと
前記油室との間に流量調整手段を介装する。
【0012】あるいは、マニュアルバルブと動力循環モ
ードクラッチ間に流量調整手段を設け、この流量調整手
段の下流で動力循環モードクラッチ側の油路から切換バ
ルブを介して変速制御弁ドレンポートへ背圧を供給する
構成としてもよい。
【0013】また、第3の発明は、前記第1または第2
の発明において、前記遅延手段は、前記運転レンジが停
車レンジから前進レンジまたは後退レンジへ切り替えら
れたときに、パワーローラの傾転角に応じて、前記供給
圧を供給する油室を切り替える切換バルブと、この切換
バルブと前記油室との間にアキュームレータを介装す
る。
【0014】また、前記アキュームレータを切換バルブ
よりもマニュアルバルブ側に配置し、さらに、切換バル
ブと変速制御弁(油圧アクチュエータの油室側)の間に
流量調整手段を介装してもよい。
【0015】また、第4の発明は、前記第2または第3
の発明において、前記遅延手段は、前記供給圧が低下し
たときには、前記流量調整手段を迂回して前記ドレーン
ポート側の油圧を排出するチェック弁を有する。
【0016】
【発明の効果】したがって、第1の発明は、ギアードニ
ュートラルポイントGNPにおける無段変速機構の変速
比またはそれよりも所定値だけ選択したレンジの進行側
の変速比からGNP方向の変速比の範囲など、予め設定
した総変速比または変速比の範囲で、選択レンジ側のエ
ンジンブレーキ側トルクを規制することで、故障時など
に意図しないエンジンブレーキの発生を防ぐため、トロ
イダル型無段変速機のパワーローラを支えるサーボピス
トン(油圧アクチュエータ)の圧力を制御する変速制御
弁のドレンポートを、運転レンジに応じてライン圧(=
変速弁供給圧)に接続し、エンジンブレーキ側の伝達ト
ルクを支持する油室を供給圧に等しくすることで、エン
ジンブレーキ側への伝達トルクを0にしているが、ニュ
ートラルなどの停車レンジから、前進レンジまたは後退
レンジへの切換時に、動力循環モードクラッチの締結が
終了するまでの間は、油室に加える油圧背圧の上昇を遅
延させることで、供給圧と油室に加わる油圧との間に差
圧ができるため、N−DセレクトまたはN−Rセレクト
時に、クラッチの締結に起因して発生するトルクの振動
を防止でき、締結時のショックを低減できる。
【0017】また、第2の発明は、進行方向またはパワ
ーローラの傾転角に応じて、前記ドレーンポートに供給
圧を供給する油圧アクチュエータの油室を切り替える切
換バルブと油室との間に流量調整手段(例えば、オリフ
ィスやチョーク等)を介装することで、ドレーンポート
側の油圧の上昇を緩やかにし、この間、クラッチの締結
を行いながら、クラッチの締結に起因して発生するトル
クの振動を防止することができ、クラッチ締結の際のシ
ョックを低減できる。
【0018】また、第3の発明は、切換バルブと油室と
の間にアキュームレータを介装することで、ドレーンポ
ート側の油圧の上昇を緩やかにして、この間、クラッチ
の締結を完了させながら、クラッチの締結に起因して発
生するトルクの振動を防止するように、油圧アクチュエ
ータの差圧を制御することが可能となり、クラッチ締結
時のショックを低減できる。
【0019】また、第4の発明は、供給圧が低下したと
きには、流量調整手段を迂回してドレーンポート側の油
圧の排出を促進するチェック弁を設けたので、前進レン
ジまたは後退レンジから停車レンジへ切り替える場合に
は、ドレーンポート側の油圧アクチュエータの油圧を迅
速に下げて、クラッチの解放に伴う伝達トルクの振動を
解消することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を添付
図面に基づいて説明する。
【0021】図1は、ハーフトロイダルで構成されたダ
ブルキャビティ式のトロイダル型無段変速機2を用いて
変速比無限大無段変速機を構成した一例を示す。
【0022】図1において、変速比無限大無段変速機は
エンジンのクランクシャフト(図示せず)に連結される
ユニット入力軸1aに、変速比を連続的に変更可能な無
段変速機2と、ギア3a、ギア3bから構成された一定
変速機3(減速機)とを並列的に連結し、これらの出力
軸4、3cをユニット出力軸6側へ配設するとともに遊
星歯車機構5で連結したものである。
【0023】無段変速機出力軸4はユニット出力軸6と
同軸的かつ、相対回転自在に支持され、無段変速機2の
出力スプロケット2a、チェーン4b及びスプロケット
4aを介して連結されており、無段変速機出力軸4の一
端を遊星歯車機構5のサンギア5aに結合し、他端を直
結モードクラッチ10に結合する。
【0024】ギア3bと結合した一定変速機3の出力軸
3cも、ユニット出力軸6と同軸的かつ、相対回転自在
に支持され、動力循環モードクラッチ9を介して遊星歯
車機構5のキャリア5bに連結されており、このキャリ
ア5bのピニオンと歯合する遊星歯車機構5のリングギ
ア5cは、変速比無限大無段変速機の出力軸であるユニ
ット出力軸6に結合される。
【0025】そして、ユニット出力軸6の図中右側に
は、変速機出力ギア7が設けられ、この変速機出力ギア
7がディファレンシャルギア8のファイナルギア12と
歯合し、ディファレンシャルギア8に結合する駆動軸1
1は、無段変速機2の変速比CVT比icに応じたユニ
ット変速比iiで駆動力が伝達される。
【0026】無段変速機2は、図1に示すように、2組
の入力ディスク21、出力ディスク22で、パワーロー
ラ20をそれぞれ挟持、押圧するダブルキャビティのハ
ーフトロイダル型で構成され、パワーローラ20は、図
3、図4に示すように、下端を油圧シリンダ(サーボピ
ストン)30に結合して軸方向へ変位可能かつ軸まわり
に回転可能なトラニオン23に軸支されており、複数の
トラニオン23のうちの一つのトラニオン23の軸部2
3Aの下端には、トラニオン23の軸方向変位量とパワ
ーローラ20の傾転角φ(=トラニオン23の回転角≒
実変速比)を、後述するシフトコントロールバルブ24
6へフィードバックするためのプリセスカム135が設
けられる。
【0027】そして、プリセスカム135は、図3〜図
6に示すように円周方向に所定の傾斜を備えたカム溝ま
たはカム面135Aを備えており、このカム溝またはカ
ム面に揺動自在なフィードバックリンク38の一端が摺
接する。
【0028】フィードバックリンク38は、例えば、L
字状に形成されるとともに揺動軸39を中心に揺動自在
に支持されており、一端で上記カム溝またはカム面と摺
接する一方、他端で変速リンク37の一端と係合し、ト
ラニオン23の回転量、すなわちパワーローラ20の傾
転角と、軸方向変位量を変速リンク37の一端に伝達す
る。
【0029】変速リンク37は、図4に示すように、中
央部でシフトコントロールバルブ246のスプール24
6Sと連結する一方、フィードバックリンク38と連結
した変速リンク37の他端はステップモータ136(ア
クチュエータ)と連結し、変速リンク37はステップモ
ータ136の駆動によってシフトコントロールバルブ2
46(変速制御弁)を軸方向に変位させるとともに、ト
ラニオン23の回動と軸方向変位に応じてシフトコント
ロールバルブ246のスプール246Sを軸方向に変位
させてCVT比icを変更する。
【0030】ここで、変速比無限大無段変速機を制御す
る変速制御コントロールユニット80には、図2に示す
ように、ユニット入力軸1の回転数Ni(=エンジン回
転数Ne)を検出する入力軸回転数センサ81からの出
力と、無段変速機出力軸4の回転数Noを検出する無段
変速機出力軸回転数センサ82からの出力と、ユニット
出力軸6の回転数Noutから車速VSPを検出する車
速センサ83からの出力や、セレクトレバー等に応動す
るインヒビタスイッチ85からのセレクト位置POS
や、アクセル開度センサ84からのアクセルペダルの踏
み込み量APS等がそれぞれ入力される。なお、車速セ
ンサ83は、ユニット出力軸回転数Noutに所定の定
数を乗じたものを、車速VSPとして求め、また、セレ
クト位置POSとしては、例えば、前進レンジとしての
Dレンジ、後退レンジとしてのRレンジ、停止レンジと
してのNレンジ、駐車レンジとしてのPレンジ、エンジ
ン回転数を高めに保つDsレンジ、降坂時にエンジンブ
レーキを効かせるLレンジなどがある。
【0031】変速制御コントロールユニット80は、こ
れらの検出値を運転状態として処理し、運転状態に応じ
たユニット変速比(IVT比ii)または速度比eとな
るようにステップモータ136を駆動して無段変速機2
の変速比(CVT比ic)の制御を行うとともに、この
運転状態に応じて直結クラッチソレノイド190、動力
循環クラッチソレノイド210を駆動することで直結モ
ードクラッチ10と動力循環モードクラッチ9とを選択
的に締結して、動力循環モードと直結モードを選択し、
運転モードが切り換えるときには、一時的に両クラッチ
を同時に締結して円滑に運転モードの切り換えを行う。
【0032】次に、図4〜図6に示した油圧回路につい
て、各要素毎に説明する。
【0033】<1.ライン圧及び潤滑圧制御系>オイル
ポンプの吐出ポート110pは、ライン圧回路101を
介してプレッシャーレギュレータバルブ100のライン
圧ポート100pに導かれる一方、ライン圧ソレノイド
90からの信号圧Psigplがプレッシャーレギュレ
ータバルブ100のポート100fに接続される。
【0034】この信号圧Psigplによる力と、スプ
リング100bの付勢力の合力と、吐出ポート110p
からの油圧が釣り合うようにスプール100aが変位し
て、ライン圧ポート100pに接続されたライン圧回路
101のライン圧PLが所定の値に制御される。
【0035】なお、ライン圧ソレノイド90は、変速制
御コントロールユニット80に制御されており、パイロ
ット圧回路102からのパイロット圧Ppを元圧として
信号圧を調圧するもので、このパイロット圧Ppは、パ
イロットバルブ103がプレッシャーレギュレータバル
ブ100からのライン圧PLに比例して調圧したもので
ある。また、ライン圧ソレノイド90とポート100f
の間には、アキュームレータ120が介装されている。
【0036】オイルポンプ110の吸入ポート110i
は、ポンプ吸入油路104に接続されており、ライン圧
PLが上昇した場合には、このポンプ吸入油路104と
連通したプレッシャーレギュレータバルブ100の第2
ドレンポート100dと、ライン圧ポート100pが連
通することで、ライン圧PLの上昇が抑制される。な
お、ライン圧PLが所定値を超えた場合には、リリーフ
バルブ140が作動して、ライン圧回路101の減圧を
行う。
【0037】第1ドレンポート100eは、クーラーレ
デューシングバルブ155の供給圧になっており、クー
ラーポート291にクーラーレデューシングバルブ15
5の制御圧が接続されている。
【0038】クーラーレデューシングバルブ155は、
クーラ供給圧が一定値を超えて増大することを防止し、
クーラ配管系を保護している。また、クーラーレデュー
シングバルブ155がスティックした場合に、クーラ系
圧力の異常上昇を防止するため、さらに作動の迅速なク
ーラリリーフバルブ150が、クーラーレデューシング
バルブ155の制御圧に接続されている。
【0039】クーラーレデューシングバルブ155の制
御圧は、クーラーポート291並びにオリフィスを介し
て潤滑ポート292に接続されて、変速比無限大無段変
速機の各部へ供給されて潤滑、冷却を行う。
【0040】プレッシャーレギュレータバルブ100に
よって調圧されたライン圧回路101には、図示しない
シフトレバー等に応動するマニュアルバルブ230、ト
ラニオン23の傾転角φに応動する後退トルク遮断バル
ブ240(切り換えバルブ、エンジンブレーキ規制手
段)、変速リンク37を介してステップモータ136と
プリセスカム135に応動するシフトコントロールバル
ブ246が接続される。
【0041】なお、ステップモータ136は、図2に示
すように、変速制御コントロールユニット80によって
駆動され、ステップモータ136は、ステップ数を減少
させるとCVT比icが小側(Hi側)となるように変
速リンク37を駆動し、ステップ数を増大させるとCV
T比icが大側(Lo側)となるように変速リンク37
を駆動する。
【0042】これに伴って、図3〜図6に示すように、
プリセスカム135のカム面135Aも、回転方向とフ
ィードバックリンク38の駆動方向の関係は、図3にお
いてに、プリセスカム135がCVT比icの大側(L
o側)に回転すると、フィードバックリンク38の端部
38aを図中下方に変位させる一方、プリセスカム13
5がCVT比icの小側(Hi側)に回転すると、フィ
ードバックリンク38の端部38aを図中上方に変位さ
せ、他端で係合した変速リンク37を駆動する。
【0043】<2.シフトコントロールバルブ>次に、
シフトコントロールバルブ246は、ライン圧回路10
1に連通した供給ポート246Pと、油圧シリンダ30
の油室30Aと連通したLo側ポート246Lと、油圧
シリンダ30の油室30Bと連通したHi側ポート24
6Hとを備え、変速リンク37と連結したスプール24
6Sの変位に応じて、ライン圧PLがLo側ポート24
6LまたはHi側ポート246Hの一方に供給される。
そして他方のポートは、排出ポート(ドレーンポート)
246Cまたは246Dに接続される。
【0044】Lo側ポート246Lと連通可能な排出ポ
ート246Cは、ドレーン油路105を介してモードフ
ィックスバルブ(モード切換制御弁)160のポート1
60kに接続され、また、Hi側ポート246Hと連通
可能なポート246Dは、ドレーン油路106を介して
後退トルク遮断バルブ240のポート240eとアキュ
ームレータ51に接続される。
【0045】<3.マニュアルバルブ>次に、マニュア
ルバルブ230のスプール230sは、セレクトレバー
等に応じて変位し、図7にも示すように、選択レンジに
応じた6つの位置のいずれかに設定される。
【0046】すなわち、DレンジやDsレンジ、Lレン
ジなどの前レンジが選択されときには、図7(A)〜
(C)のように、スプール230sが図中の情報に位置
する一方、Nレンジ、Rレンジ、Pレンジとなるにつれ
て、図7(D)〜(F)のように、スプール230sは
下降して、Pレンジで最も下方に位置する、{前進レン
ジ選択時}Dレンジやスポーツ走行に用いるDsレンジ
やLレンジ等の前進レンジが選択されたときには、図7
(A)〜(C)のいずれかの位置へスプール230sが
変位して、ライン圧回路101と連通したライン圧ポー
ト230bが、Dレンジ圧ポート230aに接続され、
図4〜図6に示すDレンジ圧回路107へライン圧PL
が供給される。
【0047】また、シャトル弁270と連通したRレン
ジ圧ポート230cは、ドレンされる。このシャトル弁
270は、図4において、Rレンジ圧ポート230cと
Dレンジ圧回路107の油圧のうち、高い方を油路10
8へ供給するもので、Dレンジを選択したときには、図
4〜図6のように、シャトル弁270の弁体は図中右側
に移動して、Dレンジ圧回路107から油路108へラ
イン圧PLが供給され、直結クラッチ制御バルブ180
と動力循環クラッチ制御バルブ200の両方にライン圧
PLが供給される。
【0048】したがって、動力循環モードクラッチ9と
直結モードクラッチ10は、運転モードに応じて締結す
ることができる。
【0049】{Nレンジ選択時}Nレンジのニュートラ
ルレンジが選択された場合には、図7(D)のように、
ライン圧ポート230bを封止するとともに、Dレンジ
圧ポート230aを大気開放し、Rレンジ圧ポート23
0cをドレーンポート230d、230eへ接続して、
Dレンジ圧回路107を大気開放し、Rレンジ圧回路1
11をドレーンポート230d、230eに接続して共
にドレーンし、直結クラッチ制御バルブ180と動力循
環クラッチ制御バルブ200へのライン圧PLを遮断
し、動力循環モードクラッチ9、直結モードクラッチ1
0の元圧を遮断することで解放させる。
【0050】{後退レンジ選択時}Rレンジの後退レン
ジが選択された場合には、図7(E)のように、スプー
ル230sは図中下方へ変位して、Rレンジ圧ポート2
30cをライン圧ポート230bと連通させる一方、D
レンジ圧ポート230aを大気開放して図中下方よりド
レーンする。
【0051】この結果、Dレンジ圧回路107の油圧が
抜ける一方、Rレンジ圧ポート230cにライン圧PL
が加わるため、シャトル弁270の弁体は図4〜図6に
おいて左側へ移動し、油路108のみにライン圧PLが
供給されて、動力循環クラッチ制御バルブ200を介し
て動力循環モードクラッチ9の締結を行うことができ、
また、直結クラッチ制御バルブ180には油圧が供給さ
れないため、直結モードクラッチ10は解放される。
【0052】{Pレンジ選択時}Pレンジの停止レンジ
が選択された場合には、図7(F)のように、ライン圧
ポート230bを封止するとともに、Dレンジ圧ポート
230aを大気開放して図中上方よりドレーンするとと
もに、Rレンジ圧ポート230cをドレーンポート23
0dへ接続して、Dレンジ圧回路107とRレンジ圧回
路111を共にドレーンし、直結クラッチ制御バルブ1
80と動力循環クラッチ制御バルブ200へのライン圧
PLを遮断して、動力循環モードクラッチ9、直結モー
ドクラッチ10の元圧を遮断することで解放させる。
【0053】そして、停止レンジを選択している際に
は、後退トルク遮断バルブ240のポート240dもR
レンジ圧ポート230cからドレーンされ、また、Dレ
ンジ圧ポート230aと連通したDレンジ圧回路107
がドレーンされる。
【0054】<4.クラッチ制御バルブ>次に、パイロ
ットバルブ103で調圧されたパイロット圧回路102
は、直結モードクラッチ10を制御するための直結クラ
ッチソレノイド190と、動力循環モードクラッチ9を
制御するための動力循環クラッチソレノイド210にパ
イロット圧Ppを供給する。
【0055】これら、直結クラッチソレノイド190
と、動力循環クラッチソレノイド210は、図2に示す
ように、変速制御コントロールユニット80によってデ
ューティ制御される。
【0056】直結クラッチソレノイド190で調圧され
た信号圧PsolH/Cは、直結クラッチ制御バルブ1
80のポート180eと、モードフィックスバルブ16
0のポート160cへ供給される。
【0057】また、動力循環クラッチソレノイド210
で調圧された信号圧PsolL/Cは、動力循環クラッ
チ制御バルブ200のポート200eへ供給される。
【0058】直結クラッチ制御バルブ180は、ポート
180eに供給された信号圧PsolH/Cに応じてス
プール180aを駆動し、ポート180gに供給された
Dレンジ圧回路107からのDレンジ圧Pd(ライン圧
PL)を減圧して、出力ポート180cから制御圧Ph
cとしてインヒビタバルブ170のポート170cに供
給する。なお、ポート180dは、ポンプ吸入油路10
4に接続されている。
【0059】信号圧PsolH/Cは、スプリング18
0bとともにDレンジ圧Pdに対抗してスプール180
aを付勢しており、信号圧PsolH/Cと、制御圧P
hcの関係は、図8に示すように設定され、信号圧Ps
olH/Cの増大に応じて、制御圧Phcが増大する。
【0060】そして、信号圧PsolH/Cが0のとき
には、直結クラッチ制御バルブ180は、スプリング1
80bの付勢力によって所定の制御圧Phcを生成する
ようになっており、この所定の制御圧は、直結モードク
ラッチ10のリターンスプリング力と同等の油圧に設定
されて、クラッチの無駄ストローク分だけストロークさ
せるが、クラッチの締結力がほとんど発生しない油圧に
設定されている。
【0061】同様に、動力循環クラッチ制御バルブ20
0は、ポート200eに供給された信号圧PsolL/
Cに応じてスプール200aを駆動し、ポート200g
に供給された油路108からのRレンジ圧Pr(ライン
圧PL)を減圧して、出力ポート200cから制御圧P
lcとしてインヒビタバルブ170に供給する。なお、
ポート200dは、ポンプ吸入油路104に接続されて
いる。
【0062】信号圧PsolL/Cは、スプリング20
0bとともにRレンジ圧Prに対抗してスプール200
aを付勢しており、信号圧PsolL/Cと、制御圧P
lcの関係は、図8に示すように設定され、信号圧Ps
olL/Cの増大に応じて、制御圧Plcが増大する。
【0063】そして、信号圧PsolL/Cが0のとき
には、動力循環クラッチ制御バルブ200は、スプリン
グ200bの付勢力によって所定の制御圧を生成するよ
うになっており、この所定の制御圧は、動力循環モード
クラッチ9のリターンスプリング力と同等の油圧に設定
されて、クラッチの無駄ストローク分だけストロークさ
せるが、クラッチの締結力がほとんど発生しない油圧に
設定されている。
【0064】また、これらの制御バルブ180、200
は、運転モード切換制御時にショックが小さくなるよう
に制御圧Phc、Plcを調整する。
【0065】<5.インヒビタバルブ>直結クラッチ制
御バルブ180と動力循環クラッチ制御バルブ200か
ら供給される制御圧Plc、Phcは、パワーローラ2
0の傾転角φに応動するスプール170aを備えたイン
ヒビタバルブ170を介して、動力循環モードクラッチ
9と直結モードクラッチ10へそれぞれ供給される。
【0066】直結クラッチ制御バルブ180の出力ポー
ト180cと、動力循環クラッチ制御バルブ200の出
力ポート200cは、それぞれインヒビタバルブ170
のポート170c、170fに接続されている。
【0067】インヒビタバルブ170のポート170
e、170hは、モードフィックスバルブ160の出力
ポート160h、160fにそれぞれ接続され、インヒ
ビタバルブ170のポート170d、170gは、それ
ぞれ直結モードクラッチ10、動力循環モードクラッチ
9に接続されて、スプール170aの変位に応じて、制
御圧Phc、Plcと、モードフィックスバルブ160
の出力ポート160f、160hからの油圧が選択的に
供給される。
【0068】インヒビタバルブ170のスプール170
aの端部には、ピン171が形成されており、このピン
171がトラニオン23に連結されたカム280のカム
溝280aに係合し、パワーローラ20の傾転角φに応
じてスプール170aが駆動される。
【0069】インヒビタバルブ170の170aの位置
に応じて、ポート170dに接続された直結モードクラ
ッチ10へ、ポート170cまたは170eからの油圧
を選択的に供給し、また、ポート170gに接続された
動力循環モードクラッチ9へ、ポート170fまたは1
70hからの油圧を選択的に供給する。
【0070】カム280は、図4〜図6において、CV
T比icがLo側(大側)へ変化するとき時計回りに回
転する一方、CVT比icがHi側(小側)へ変化する
と反時計回りに回転するトラニオン23に結合される。
【0071】図4〜図6において、カム280のカム溝
280aは、パワーローラ20の傾転角φ(以下、単に
傾転角φとする)がCVT比icのHi側へ変化すると
き、図中所定の傾転角φclからφchにかけて、イン
ヒビタバルブ170のスプール170aを図中上方から
下方へストロークさせるように形成されており、φcl
よりもCVT比icのLo側では図中上方に固定される
一方、φchよりHi側では図中下方の位置で固定され
るようになっている。
【0072】なお、CVT比icと傾転角φの関係は、
図10に示すように設定されて、CVT比icのLo側
(大側)が傾転角φの小側、CVT比icのHi側(小
側)が傾転角φの大側となり、CVT比icの制御で用
いる傾転角φの範囲は、CVT比icの最Lo=icl
oに相当する傾転角φloから、CVT比icの最Hi
=ichiに相当する傾転角φhiの範囲に設定され、
φlo<φhiである。
【0073】そして、スプール170aが、図4〜図6
の上方と下方の間で位置を変更する傾転角φは、図9
(B)、図10に示すように、傾転角φclとφchの
間のφcに設定されている。
【0074】図4〜図6でスプール170aが図中上方
に固定される状態、つまり図9(A)の状態では、傾転
角はφclより小側(CVT比icはLo側)にあり、
ポート170dと170cが連通して、直結モードクラ
ッチ10には直結クラッチ制御バルブ180からの制御
圧Phcが供給され、また、ポート170gと170f
が連通して、動力循環モードクラッチ9には動力循環ク
ラッチ制御バルブ200からの制御圧Plcが供給され
る。
【0075】一方、スプール170aが図4〜図6の下
方に固定される状態、つまり図9(C)の状態では、傾
転角がφcより大側(CVT比icはHi側)にあり、
ポート170dと170eが連通して、直結モードクラ
ッチ10はモードフィックスバルブ160のポート16
0hと連通し、また、ポート170gと170hが連通
して、動力循環モードクラッチ9はモードフィックスバ
ルブ160のポート160fと連通する。
【0076】また、スプール170aの位置が、図9
(A)の上方と、図9(C)の下方のほぼ中間となる傾
転角φcでは、図9(B)に示すように、直結モードク
ラッチ10と連通したポート170dと、動力循環モー
ドクラッチ9と連通したポート170gがそれぞれ封止
されて、締結または解放状態が維持される。
【0077】つまり、このインヒビタバルブ170は、
傾転角がφcよりも小側で動力循環モードクラッチ9、
直結モードクラッチ10に、各々のクラッチ制御バルブ
180、200の出力ポートを接続し、傾転角がφcよ
りも大側では、モードフィックスバルブ160のスプー
ル160aの位置に応じて、動力循環モードクラッチ9
または直結モードクラッチ10の一方にライン圧PLが
供給され、他方が大気開放される。
【0078】したがって、傾転角がφcより小側(CV
T比icのLo側)では運転モード切り換え領域とな
り、動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ1
0の油圧を同時に制御できるので、運転モード切り換え
の際に両者のクラッチ容量制御を許可することになり、
傾転角がφcより大側(CVT比icのHi側)ではモ
ードフィックスバルブ160のスプール160aの位置
によって、どちらか一方のクラッチが締結されて運転モ
ードが決定されることになる。
【0079】ここで、傾転角φcは、図10に示したよ
うに、CVT比ic=icc(第1変速比)に対応して
おり、図11に示すCVT比icとIVT速度比eの関
係では、CVT比iccのときに、動力循環モードでは
IVT速度比=ecl、直結モードではIVT速度比=
echとなる。なお、IVT速度比eは、IVT比ii
の逆数で、ユニット出力軸回転数/ユニット入力軸回転
数である。
【0080】そして、スプール170aの位置が切り替
わる傾転角φcに対応したCVT比iccでは、図11
に示すように、CVT比がiccよりも大きい(Lo
側)ときに、動力循環モードクラッチ9(図中L/C)
と直結モードクラッチ10(H/C)が同時に油圧を制
御可能となって、運転モードの切り換えを行うことがで
きる。
【0081】一方、CVT比がicc以下(Hi側)で
は同時締結禁止領域となって、動力循環モードクラッチ
9または直結モードクラッチ10のどちらか一方のみ
が、締結を許可されて、動力循環モードか直結モードの
一方を維持する。
【0082】なお、動力循環クラッチ制御バルブ200
の油圧制御範囲は、CVT比icc以上でのみ、直結モ
ードクラッチ10と同時に締結できないようにしている
ため、少なくとも、図11においてIVT速度比ecl
以上で、必要な油圧以上に設定すれば十分である。
【0083】通常、動力循環モードクラッチ9に必要な
伝達トルク容量TL/Cは、図16にも示すように、I
VT速度比eが小さくなる(GNPに近づく)程大きく
なる。
【0084】よって、このインヒビタバルブ170は、
動力循環クラッチ制御バルブ200の油圧制御範囲を、
図16のL/Ccont.V必要容量で示すように小さ
くすることができ、制御圧Plcのバラツキ減少と制御
精度の向上による運転モード切換え時の制御精度を向上
させることが可能となり、運転モード切換え時のショッ
クの低減にも寄与している。
【0085】また、インヒビタバルブ170のスプール
170aのストロークは、運転モード切り換え領域と同
時締結禁止領域の2位置の間でストロークできればよ
く、この2位置の切り換えを、傾転角φc(切り換え位
置)の近傍に設定された傾転角φclと傾転角φchの
間で行うようにしたため、スプール170aを傾転角φ
に比例して駆動する場合に比して、ストローク量を大幅
に低減でき、インヒビタバルブ170の小型化を推進す
ることができる。
【0086】<6.モードフィックスバルブ>図4〜図
6において、インヒビタバルブ170のポート170
e、170hへの油圧を制御して、運転モードの切り換
えを許可するモードフィックスバルブ160には、直結
クラッチソレノイド190からの信号圧PsolH/C
に応じて変位可能、かつ、カム280の位置に応じて選
択的に変位を規制されるスプール160aが収装され、
このスプール160aの位置に応じてポート170e、
170hへの油圧が決定される。
【0087】モードフィックスバルブ160のポート1
60cには、直結クラッチソレノイド190からの信号
圧PsolH/Cが導かれ、図4〜図6の下方に配設さ
れたスプリング160bに対抗してスプール160aを
付勢する。
【0088】図4〜図6及び図9の(D)に示すよう
に、スプール160aが上方の位置にあるとき、油路1
08を介してRレンジまたはDレンジが選択されたとき
にライン圧回路101に接続される出力ポート160d
を、動力循環モードクラッチ9と連通可能なインヒビタ
バルブ170のポート170hに接続された出力ポート
160fと連通させるとともに、直結モードクラッチ1
0と連通可能なインヒビタバルブ170のポート170
eに接続された出力ポート160hをドレンポート16
0gに連通させる。
【0089】また、スプール160aが図4〜図6及び
図9の(D)に示すように、上方の位置にあるときで
は、ドレーン油路105を介してシフトコントロールバ
ルブ246の排出側ポート246Cに接続されたポート
160kを、ポート160jに連通させて、後退トルク
制御バルブのポート240cと連通した油路109と連
通する。
【0090】一方、図9(E)に示すように、スプール
160aが図中下方の位置にあるときは、Dレンジ圧回
路107に接続されたポート160iを、直結モードク
ラッチ10と連通可能なインヒビタバルブ170のポー
ト170eに接続された出力ポート160hと連通させ
るとともに、動力循環モードクラッチ9と連通可能なポ
ート170hに接続された出力ポート160fを、ドレ
ンポート160gに連通させる。
【0091】さらに、スプール160aが図9(E)の
ように下方の位置では、シフトコントロールバルブ24
6の排出側ポート246Cに接続されたポート160k
を、ポンプ吸入油路104に接続されたポート160l
に連通させる。
【0092】ここで、モードフィックスバルブ160の
スプール160aは、傾転角φに応じて回動するカム2
80によって、スプール160aの変位を規制するロッ
ク機構を備えている。
【0093】このロック機構は、図4〜図6、図9
(D)、図9(E)、図12に示すように、バルブボデ
ィ(図示せず)に支持されて図中左右方向へ摺動自在な
スライダ161(係止部材)と、スライダ161の一端
に配設されてカム280に形成したカム溝280bと係
合するピン162と、スプール160aに形成されてス
ライダ161の端部と係合可能な溝部163、164か
ら構成される。
【0094】カム溝280bは、上記インヒビタバルブ
170を制御するカム溝280aと同一のカム280で
隣り合うように配設されて、図12(A)〜(C)に示
すように、傾転角φに応じてピン162を介してスライ
ダ161を変位させ、スプール160aの溝部163ま
たは164と対向したときには係合可能となり、溝部1
63または164にスライダ161が係合したときに
は、スプール160aを軸方向で固定することができ
る。なお、溝部163は、図4〜図6、図9の上方に形
成され、また、溝部164は、図4〜図6、図9の下方
に形成される。
【0095】運転モードが動力循環モードのときには、
直結モードクラッチ10を締結する必要がないため、直
結クラッチソレノイド190からの信号圧PsolH/
Cは発生していないので、ポート160cには油圧が供
給されない。
【0096】よって、モードフィックスバルブ160の
スプール160aは、スプリング160b(弾性部材)
に付勢されて図4〜図6、図9(D)のように上方に位
置する。
【0097】この位置では、動力循環モードクラッチ9
と連通可能なインヒビタバルブ170のポート170h
には、出力ポート160f、ポート160d、油路10
8を介してRレンジ圧Pr(ライン圧PL)が導かれ、
直結モードクラッチ10と連通可能な出力ポート170
eは、ポート160h、ポート160gを介してドレー
ンされている。
【0098】また、シフトコントロールバルブ246の
排出ポート246Cは、このとき、ドレーン油路10
5、モードフィックスバルブ160のポート160k、
160jを介して油路109と連通し、アキュームレー
タ50と後退トルク制御バルブ240のポート240c
と連通する。
【0099】運転モードが直結モードのときには、直結
モードクラッチ10を締結するため、直結クラッチソレ
ノイド190からの信号圧PsolH/Cが運転状態に
応じて発生し、ポート160cには油圧が供給される。
【0100】よって、モードフィックスバルブ160の
スプール160aは、スプリング160bに抗して付勢
され、図4〜図6、図9(E)のように下方に位置す
る。
【0101】この位置では、直結モードクラッチ10と
連通可能なインヒビタバルブ170のポート170eに
は、出力ポート160h、ポート160i、Dレンジ圧
回路107を介してDレンジ圧Pdが導かれ、動力循環
モードクラッチ10と連通可能なポート170hは、出
力ポート160f、ポート160gを介してドレーンさ
れている。
【0102】また、シフトコントロールバルブ246の
排出ポート246Cは、このとき、ドレーン油路10
5、モードフィックスバルブ160のポート160k、
160lを介して、ポンプ吸入油路104と連通してド
レーンされる。
【0103】次に、パワーローラ20の傾転角φと、カ
ム溝280b及びスライダ161を主体とするロック機
構について説明する。
【0104】カム280に形成されたカム溝280b
は、上記<5.インヒビタバルブ>で述べたように、ト
ラニオン23に連結されてパワーローラ20の傾転角φ
に応じて回動する。
【0105】そして、カム溝280bは、図4〜図6、
図12において、傾転角φがCVT比icのLo側から
Hi側へ変化するとき、図中所定の傾転角φclからφ
chにかけては、ピン162がスライダ161を図中左
側{図12(C)}から右側{図12(A)}へ変位さ
せるように形成されており、また、傾転角がφclより
もCVT比icのLo側では図中左側{図12(C)}
に固定される一方、傾転角がφchよりHi側では図中
右側{図12(A)}の位置で固定されるようになって
いる。
【0106】なお、図12において、傾転角がφcより
も大きいとき(CVT比icがHi側)には、図12
(A)のようにスライダ161がスプール160aの溝
部163または164へ挿入されて、スプール160a
を係止する一方、傾転角がφc以下のとき(CVT比i
cがLo側)には、図12(B)、(C)のように、ス
ライダ161がスプール160aの溝部163または1
64から抜けて、スプール160aの変位を許容する。
この状態では、後述するように、信号圧PsolH/C
に応じてスプール160aが変位でき、運転モードの切
り換えが許可される。
【0107】この傾転角φとCVT比icの関係は、上
記図10のように設定されて、CVT比icのLo側
(大側)が傾転角φの小側、CVT比icのHi側(小
側)が傾転角φの大側となり、CVT比icの制御で用
いる傾転角φの範囲は、CVT比icの最Lo=icl
oに相当する傾転角φloから、CVT比icの最Hi
=ichiに相当する傾転角φhiの範囲に設定され、
φlo<φhiである。
【0108】そして、スライダ161が、スプール16
0aの溝部163または164への挿入が開始される傾
転角φcは、図12、図10、図11に示すように、傾
転角φclとφchの間のφcよりも小側、すなわち、
CVT比icが図10のiccよりも大側のときとな
る。
【0109】いま、図12において、傾転角がφcより
も小側のときには、スライダ161は(C)の位置とな
り、スライダ161の端部がスプール160aの側面か
ら離れてロック機構が解除されるため軸方向変位を許容
し、スプール160aは信号圧PsolH/Cの大きさ
に応じてストロークできる。
【0110】一方、傾転角がφcより大側では、図12
(A)のように、スライダ161がスプール160aの
溝部163または164に挿入されて、ロック機構が作
動することとなり、スプール160aは図9(D)、
(E)に示した上方のまたは下方のいずれかで固定され
る。
【0111】つまり、スプール160aが変位できない
ため、出力ポート160f、160hへの油圧を切り換
えることができず、運転モードの切り換えが禁止され
る。
【0112】したがって、図10、図11に示すよう
に、パワーローラ20の傾転角がφcよりも大側、換言
するとCVT比icがiccよりも小側(Hi側)であ
れば、動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ
10を繋ぎ替えて運転モードを切り換えたり、同時に双
方のクラッチを締結することは不可能で、運転モードは
スプール160aの位置に応じてメカニカルに固定され
る。
【0113】一方、傾転角がφc以下の場合、換言する
とCVT比icがiccよりも大側(Lo側)であれ
ば、スプール160aはスライダ161に係止されるこ
となく信号圧PsolH/Cに応じて変位できるため、
動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ10を
繋ぎ替えて運転モードの切り換えを行うことができ、ま
た、同時に双方のクラッチを締結することが可能とな
る。
【0114】<7.後退トルク遮断バルブ> {7.1 バルブの構成}次に、図4〜図6において、
Rレンジ圧回路111を介してマニュアルバルブ230
と、ドレーン油路106を介してシフトコントロールバ
ルブ246と、油路109を介してモードフィックスバ
ルブ160とそれぞれ接続された後退トルク遮断バルブ
240について説明する。
【0115】後退トルク遮断バルブ240のスプール2
40aは、トラニオン23’に連結されたカム290の
カム溝290aと係合して、傾転角φに応じて変位す
る。
【0116】そして、スプール240aの変位に応じ
て、油路109、ポート160j、160kを介してシ
フトコントロールバルブ246の排出ポート246Cと
連通可能なポート240cを、Dレンジ圧回路107に
接続されポート240P、またはポンプ吸入油路104
に接続されたポート240bと選択的に連通させ、また
ドレーン油路106を介してシフトコントロールバルブ
246の排出ポート246D及びアキュームレータ51
と連通したポート240eを、Rレンジ圧回路111に
接続されポート240d、またはポンプ吸入油路104
に接続されたポート240fと選択的に連通させるもの
である。
【0117】図4〜図6及び図13に示すように、後退
トルク遮断バルブ240のスプール240aの一端に
は、カム溝290aに係合したピン241が形成され、
CVT比icが大側(Lo側)に変化するとトラニオン
23’及びカム290は図中反時計回りに回動する一
方、CVT比icが小側(Hi側)に変化すると、トラ
ニオン23’及びカム290は図中時計回りに回転す
る。
【0118】カム290に形成されたカム溝290a
は、ギアードニュートラルポイントGNPに対応する傾
転角φgnpの近傍に設定された、傾転角φd、φrを
境にして、スプール240aの駆動を行う。
【0119】なお、傾転角φgnp、φd、φrの関係
は、図10に示すとおりで、φlo<φd<φgnp<
φr<φhiで、これらの傾転角とCVT比icの関係
は、φgnp=icgnp、φd=icd、φr=ic
r、φlo=iclo、φhi=ichiとなる。
【0120】図13において、傾転角がφloからφd
未満での区間では、図13(A)に示すように、スプー
ル240aは図中カム側の位置に固定されて、Rレンジ
圧ポート240dがポート240eと連通して、マニュ
アルバルブ230のポート230cのRレンジ圧Pr
(ライン圧PL)をドレーン油路106へ供給する一
方、ポート240cがポート240bと連通して、油路
109がポンプ吸入油路104に接続される。また、傾
転角φd未満でスプール240aを図中上方へ固定する
ようにしたため、バルブの全長を短縮できる。
【0121】CVT比icがicloから小側(Hi
側)へ変化して、傾転角がφd以上になると、図13
(B)のように、スプール240aが図中右側へ変位し
て、ポート240cが封止される。
【0122】さらに、CVT比icが小側(Hi側)へ
変化して、傾転角がギアードニュートラルポイントGN
Pに対応するφgnpになると、図13(C)のよう
に、スプール240aはストロークのほぼ中央に位置し
て、Rレンジ圧ポート240dと240eを連通させ、
また、Dレンジ圧ポート240pとポート240cを連
通させる。
【0123】次に、傾転角φgnpからφrへ向けてC
VT比icの小側へ変化すると、図13(D)のよう
に、Dレンジ圧ポート240pとポート240cが連通
したまま、ポート240eが封止される。
【0124】さらに傾転角がφrを超えてφhiへ向け
て変化すると、図13(E)で示すように、Dレンジ圧
ポート240pとポート240cが連通した状態を維持
する一方、ポート240eが240fに連通して、マニ
ュアルバルブ230のポート230cをポンプ吸入油路
104に接続する。
【0125】なお、所定の傾転角φdは、少なくとも使
用するCVT比icの制御範囲(変速比幅)の中の最L
o(iclo)よりHi側であり、かつ動力循環モード
と直結モードの回転同期点であるRSPの傾転角φrs
pよりは、CVT比icのHi側に設定される。
【0126】<7.2 後退トルク制御バルブまわりの
油路>後退トルク制御バルブ240のポート240c
は、油路109を介してモードフィックスバルブ160
に接続されており、この油路109には、図4、図6に
示すように、アキュームレータ50が配設される。
【0127】また、油路109とDレンジ圧回路107
との間には、油路109からDレンジ圧回路107へ向
かう流れを許容し、逆の流れを遮断するチェック弁(逆
止弁)52が設けられ、油路109の油圧がDレンジ圧
回路107よりも高くなると、チェック弁52が開弁し
て油路109からDレンジ圧回路107及びポート24
0pへ油圧を供給する。
【0128】また、後退トルク制御バルブ240のポー
ト240dに連通するRレンジ圧回路111と、ポート
240eに接続されるドレーン油路106との間には、
ドレーン油路106からRレンジ圧回路111へ向かう
流れを許容する一方、逆方向の流れを遮断するチェック
弁53が介装されて、ドレーン油路106の油圧がRレ
ンジ圧回路111よりも高くなるとチェック弁53が開
弁する。
【0129】さらに、ポート240eとシフトコントロ
ールバルブ246の排出ポート246Dとを連通するド
レーン油路106には、アキュームレータ51が介装さ
れる。
【0130】また、無段変速機のPhi側の油室30B
と連通可能なドレン油路106にアキュームレータ51
が設けられ、そこから後退トルク制御バルブ240のポ
ート240eまでの油路で、Rレンジ圧回路111との
間に設けられたチェック弁53との分岐位置よりもポー
ト240e側にオリフィス(流量調整手段)56が設け
られている。
【0131】また、無段変速機のPlo側の油室30A
と連通可能なドレーン油路105は、モードフィックス
バルブ160のポート160k、160jを介して、動
力循環モードのみ、後退トルク制御バルブ240のポー
ト240cに接続される。
【0132】そして、油路109に設けたアキュームレ
ータ51とチェック弁52よりもポート240c側には
オリフィス(流量調整手段)54が設けられている。
【0133】<8.動作>上記図1〜図13に示したよ
うな、変速制御装置による変速制御の一例について、各
運転状態毎に説明する。
【0134】{8.1 NレンジまたはPレンジ}主に
車両の停車状態で選択されるNレンジまたはPレンジの
停止レンジでは、図4〜図6、図7(B)に示すよう
に、ライン圧回路101に接続されたライン圧ポート2
30bが封止され、Dレンジ圧回路107と油路108
に接続されるポート230b、230aは、それぞれド
レーンされるため、動力循環モードクラッチ9及び直結
モードクラッチ10には油圧が供給されず、無段変速機
2はトルクを伝達することができない。
【0135】よって、変速比無限大無段変速機も動力を
伝達できず、ニュートラルを実現している。この状態に
おいても、無段変速機2は傾転角φを制御できるよう
に、油室30A(油圧=Plo)、油室30B(油圧=
Phi)の双方の排出ポート246C、246Dは、図
7(B)のようにポート230b、230dを介してポ
ンプ吸入油路104に接続されており、無段変速機2単
体は増速、減速どちらの方向にも自由に変速させること
が可能である。
【0136】なお、車両の停止状態(車速=0)であれ
ば、CVT比ic及びIVT速度比eは、通常ギアード
ニュートラルポイントGNPに制御される。
【0137】{8.2 N−Dセレクト}停車中に運転
者が図示しないセレクトレバーをNレンジからDレンジ
へ操作すると、マニュアルバルブ230のスプール23
0sは、図7(D)に示すNレンジの位置より上方にス
トロークし、図7(C)の位置となり、ライン圧ポート
230bがポート230aと連通して、Dレンジ圧回路
107にライン圧PLが供給され、Dレンジ圧Pd(=
PL)が発生する。
【0138】停止時のN−Dセレクト操作では、CVT
変速比icはGNP位置にいる。この状態では、Dレン
ジ圧回路107、シャトル弁270、油路108、モー
ドフィックスバルブ160のポート160d、160f
を介してDレンジ圧Pdがインヒビタバルブ170のポ
ート170h、170gから動力循環モードクラッチ9
に供給される。
【0139】このギアードニュートラルポイントGNP
においては、図13(C)で示したように、後退トルク
制御バルブ240のポート240cと240pが連通し
て、Dレンジ圧回路107のDレンジ圧Pdが油路10
9、モードフィックスバルブ160、油路105を介し
てシフトコントロールバルブ246の排出ポート246
Cへ背圧が供給されることになる。
【0140】ここでN−Dセレクトを行うと、マニュア
ルバルブ230により、Dレンジ圧回路107がライン
圧回路101に接続される。よってセレクト操作と同時
に動力循環モードクラッチ9に油圧が供給されるが、ク
ラッチには無駄ストロークがあるため、そのストローク
の間は動力循環モードクラッチ9は締結されず、また、
インヒビタバルブ170のポート170hの手前に介装
したオリフィス55によって、動力循環モードクラッチ
9の締結が遅延される。
【0141】また、セレクト操作と同時にDレンジ圧P
dがシフトコントロールバルブ246の排出ポート24
6Cに背圧として供給されるが、オリフィス54、アキ
ュームレータ50によって、この油路109の圧力上昇
をクラッチ締結に要する時間以上に遅延している。
【0142】これにより、動力循環モードクラッチ9の
締結が完了するまではシフトコントロールバルブ246
の排出ポート246Cに作用する油圧(背圧)はライン
圧PLに達しないため、この圧力上昇が遅延している間
は、ライン圧PLとポート246Cに加わる背圧の差圧
の範囲で伝達トルクの制御を行うことができ、動力循環
モードクラッチ9の締結に起因して発生する無段変速機
の伝達トルクをトリガーとする伝達トルクの振動(変
動)を防止することが可能となる。
【0143】すなわち、図17に示すように、時間T1
でN−Dセレクトが行われると、動力循環モードクラッ
チ9の制御圧Plcと油路105を介してシフトコント
ロールバルブ246の排出ポート246Cのドレーン圧
(背圧で、ここでは、油室30Aの油圧Ploとする)
の上昇が開始される。
【0144】動力循環モードクラッチ9の制御圧Plc
は、時間T1〜T2までの間は、オリフィス55によっ
て油圧の立ち上がりが遅延するのに加え、解放されてい
た動力循環モードクラッチ9の無駄ストロークによって
油圧の立ち上がりが遅延し、無駄ストロークが終了した
時間T2でクラッチ9の締結が完了し、その後、制御圧
Plcはライン圧PL(Dレンジ圧Pd)に到達する。
【0145】一方、シフトコントロールバルブ246の
排出ポート246Cにかかるドレーン圧Ploは、時間
T1からのDレンジ圧Pdによってライン圧PLへ向け
て上昇しようとするが、オリフィス54によって油圧の
立ち上がりが遅延し、さらに、アキュームレータ50の
油圧が所定値に達する時間T3までは、ドレーン圧Pl
oがライン圧PLよりも小さいアキューム棚が形成され
るため、このライン圧PLとドレーン圧Ploの差圧に
応じて、Dレンジでのエンジンブレーキ側の伝達トルク
を制御でき、シフトコントロールバルブ246のスプー
ル246sを駆動することで、動力循環モードクラッチ
9の締結時に生じる伝達トルクの振動を解消する方向に
制御できるのである。
【0146】そして、このアキューム棚は、動力循環モ
ードクラッチ9の締結が完了した時間T2以降も継続す
るように設定され、時間T2を経過した所定の時間T3
で、アキュームレータ50が満たされて油路105のド
レーン圧Ploはライン圧PLへ向けて上昇し、時間T
4では、ドレーン圧Plo=ライン圧PLとなって、エ
ンジンブレーキ側のトルク伝達を禁止する。
【0147】したがって、ライン圧PLとドレーン圧P
loの差圧が確保可能な時間T3まで伝達トルクの振動
を抑制し、その後、時間T4以降ではエンジンブレーキ
側のトルクの発生を防ぐことが可能となるわけである。
【0148】{8.3 発進および動力循環(L)モー
ド走行}アクセルペダルの解放状態(APS=0)で
は、特開平10−267117号にも開示されるとお
り、所定のクリープトルクを得るため、図11、図22
に示すように、ステップモータ136が前進方向(CV
T比icの大側)に送られる。
【0149】そして、アクセルペダルを踏み込むと、通
常のCVT比icの制御は、車速VSPに対して、所定
の入力軸回転を達成するように制御され、例えば、図1
4の変速マップに示すように、アクセル踏み込み量AP
Sと、車速VSPに応じた目標入力軸回転数Ninが決
定される。
【0150】なお、図14の変速マップにおいて、目標
入力軸回転数Nin/無段変速機出力軸回転数Noが目
標とするCVT比icを示し、回転同期点RSPに対応
したCVT比icrspと、目標CVT比と車速VSP
に基づいて、運転モードも決定される。なお、このマッ
プでは、運転モードの切り換えを、回転同期点RSPに
対応したCVT比icrspで行う場合を示している。
【0151】そして、ユニット出力軸回転数Noutを
この目標入力軸回転数Ninで除して、目標のIVT速
度比e=Nout/Ninを算出し、さらに図15のマ
ップより運転モードを考慮して、目標のCVT比icを
算出する。
【0152】その後、図10の逆算にて、目標とするC
VT比icから、目標とする傾転角φを算出し、ステッ
プモータ136の位置を目標傾転角に対してフィードバ
ック制御する。
【0153】この動力循環モードにおける油圧回路の動
作は、次のようになる。
【0154】マニュアルバルブ230のスプール230
sは、図4〜図6、図7(A)の位置になっており、モ
ードフィックスバルブ160は、図9(D)の位置に設
定されるから、図4〜図6に示すように、シフトコント
ロールバルブ246のPlo側の排出ポート246C
が、ポート160k、160j、ポート230b、23
0bを介して後退トルク遮断バルブ240のポート24
0cに接続される。
【0155】一方、シフトコントロールバルブ246の
Phi側の排出ポート246Dは、ポート230d、2
30cを介してポンプ吸入油路104に接続される。
【0156】後退トルク遮断バルブ240の240dに
はライン圧PLが供給されており、スプール240aは
カム290の溝290aにより、図4〜図6に示すギア
ードニュートラルポイントGNPの位置に設定される。
【0157】ギアードニュートラルポイントGNPに対
応した傾転角φgnpにおいて、シフトコントロールバ
ルブ246のPlo側の排出ポート246Cが接続され
ている後退トルク遮断バルブ240のポート240c
は、Rレンジ圧ポート240dと連通する一方、ポンプ
吸入油路104に接続されたポート240bとは遮断さ
れている。
【0158】したがって、ギアードニュートラルポイン
トGNPにおいては、シフトコントロールバルブ246
のPlo側の排出ポート246Cがライン圧PLとなっ
ているため、シフトコントロールバルブ246のスプー
ル位置に関わらず、油室30Aの油圧Ploは必ずライ
ン圧PLとなる。
【0159】一方、シフトコントロールバルブ246の
Phl側の排出ポート246Dは、ポンプ吸入油路10
4に接続されているため、スプール246Sの位置に応
じて油室30Bの油圧=Phiは、ほぼ0からライン圧
PLの間で変化するが、油圧Phiの方がPloよりも
高い圧力となることは有り得ない。
【0160】したがって、Dレンジの動力循環モードに
おけるギアードニュートラルポイントGNPでは、常に
Plo≧Phiという差圧の関係が成立する。
【0161】この差圧の関係は、傾転角がφd(図1
0、図11参照)以上ならば成立するようにカム290
のカム溝290aが設定されている。
【0162】これにより、Dレンジ(前進レンジ)の動
力循環モードにおいて、IVT速度比eが前進側(e≧
0)で、所定の値ed(CVT比=icd)よりもギア
ードニュートラルポイントGNP側(IVT速度比eの
Lo側)になったところで、エンジンブレーキ側(=後
退側)のトルクが発生しないように制御できる。
【0163】次に、IVT速度比eがギアードニュート
ラルポイントGNP(e=o)から前進側、すなわちC
VT比icのLo側に変速すると、後退トルク遮断バル
ブ240のスプール240aは図4〜図6の上方へ移動
する。
【0164】そして、傾転角がφgnpからφd(CV
T比icd)まで変速すると、油室30Aの排出ポート
246Cと連通した後退トルク遮断バルブ240のポー
ト240cは、図13(B)のように、Rレンジ圧ポー
ト240dから遮断された後、さらに傾転角がφloへ
向けて変速することで、後退トルク遮断バルブ240の
スプール240aは図13(A)の位置となり、ポート
240cはポート240bと連通して、ポンプ吸入油路
104に接続され、油圧Ploが抜かれることになる。
【0165】これにより、Plo側の排出ポート246
Cと連通した後退トルク遮断バルブ240のポート24
0cはほぼ大気圧となり、油圧シリンダ30の油圧Pl
o、Phiの大小関係はシフトコントロールバルブ24
6のスプール246S位置に応じて入れ代わることも可
能となる。
【0166】このDレンジの動力循環モードでは、IV
T速度比eが正で(前進側)で、所定の値ed(図11
参照)よりも増速側(IVT速度比eの大側)になった
ところで、エンジンブレーキ側(逆走=後退側)の伝達
トルクを制御することが可能になる。
【0167】すなわち、動力循環モードの前進レンジ
で、エンジンブレーキを必要としない低速域(図11で
CVT比icd以下)においては、たとえステップモー
タ136が変速制御コントロールユニット80の故障等
により、CVT比icの小側(Hi側)に駆動される誤
動作が生じても、CVT比icがギアードニュートラル
ポイントGNPに至る手前の所定の変速比icdで、エ
ンジンブレーキ側(後退側)へのトルクの発生を防止で
きる。
【0168】{8.4 運転モード切り換え(動循→直
結)}図14の変速マップに基づいて走行している際
に、車速VSPの増大やアクセルペダルの解放などで、
目標とするIVT速度比eが所定の速度比(例えば、回
転同期点ersp、図11参照)より大きく(Hi側)
なって、動力循環モード(Lモード)から直結モード
(Hモード)に切り換える判断を行った場合には、締結
するクラッチを動力循環モードクラッチ9から直結モー
ドクラッチ10へ掛け換える運転モード切り換え制御を
行う。
【0169】なお、運転モードの切り換えの判断は、例
えば、図14の変速マップに示すように、車速VSPと
アクセル踏み込み量APSで決まるCVT比icの目標
値が、回転同期点RSPに対応するCVT比icrsp
をよぎるときに行ってもよい。
【0170】動力循環モードでは、動力循環クラッチソ
レノイド210から信号圧PsolL/Cが出力され
て、動力循環モードクラッチ9には、動力循環クラッチ
制御バルブ200からの制御圧Plcが出力されてい
る。
【0171】ただし、インヒビタバルブ170の働きに
より、CVT比がiccより大側(φ<φc)の運転モ
ード切り換え領域でないと、スプール170aは図9
(B)、(C)の位置となるため、動力循環クラッチ制
御バルブ200と直結クラッチ制御バルブ180の制御
圧Plc、Phcがクラッチには供給されないようにな
っている。
【0172】なお、運転モード切り換え領域は、IVT
速度比eを用いる場合には、図11に示すように、回転
同期点RSPでの速度比erspを挟んだecl以上か
つech未満の範囲となる。
【0173】また、モードフィックスバルブ160は、
CVT比がicc以下の小側の運転モード切り換え禁止
領域では、図9(D)に示すように、ロック機構が作動
してスプール160aが係止されるため、運転モードの
切り換えを行うことができない。
【0174】したがって、運転モード切換制御は、図1
1に示したように、CVT比icc以上の領域で動力循
環クラッチ制御バルブ200と直結クラッチ制御バルブ
180を同時に制御することで、スムーズな掛け換え制
御を行う。
【0175】アクセル踏み込み量APSが一定で車速V
SPが増大する場合のオートアップ変速は、IVT速度
比eの目標値が連続的に変化するので、図11におい
て、CVT比icがicc以上で変速及びクラッチ切り
換えの開始判断を行い、例えば、回転同期点RSPでク
ラッチの切り換えを行った後に、目標のCVT比icへ
向けて再び変速する。なお、回転同期点RSPでは、無
段変速機出力軸4とユニット出力軸6の回転数が一致
し、また、一定変速機出力軸3cとキャリア5bの回転
数が一致するため、クラッチを締結、解放する際のショ
ックを防いで、円滑な切換を行うことができる。
【0176】また、動力循環モードで走行中に、踏み込
んでいたアクセルを解放する足離しアップシフトによ
り、IVT速度比eの目標が動力循環モードから直結モ
ードへ急変するときには、図11において、一旦CVT
比icがicc以上になる領域まで変速させた後、動力
循環クラッチ制御バルブ200と直結クラッチ制御バル
ブ180を同時に作動させて、半クラッチ状態としてク
ラッチの掛け換え制御を完了させた上で、CVT比ic
を目標値へ向けて制御する。
【0177】なお、CVT比icがicc以上の領域で
は、図12(C)のように、モードフィックスバルブ1
60のロックが解除されて、スプール160aの変位が
許容されており、この状態でクラッチ掛け換えのため
に、直結クラッチソレノイド190に通電して信号圧P
soIH/Cが発生すると、モードフィックスバルブ1
60は図4〜図6の下方にストロークし、その結果図9
(E)の位置となり、インヒビタバルブ170への油圧
供給を、動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッ
チ10へ、信号圧PsolH/Cのオン、オフによって
切り換えることができる。
【0178】ただし、CVT比が所定値iccより大側
では、インヒビタバルブ170が、動力循環クラッチ制
御バルブ200と直結クラッチ制御バルブ180の制御
圧Plc、Phcを、ポート170f、170g及びポ
ート170c、170dを介してそれぞれのクラッチに
供給しており、モードフィックスバルブ160からの油
路(ポート170e、170h)は遮断されるため、実
際のモード切り換えは、動力循環クラッチ制御バルブ2
00と直結クラッチ制御バルブ180に制御されること
になり、単純なオン、オフ切換えではなく、例えば、両
クラッチを半クラッチ状態とすれば、滑らかなモード切
換えが可能になる。
【0179】ここで、動力循環クラッチ制御バルブ20
0と直結クラッチ制御バルブ180の制御が同時に可能
となるCVT比iccは、エンジンブレーキ側へのトル
ク伝達を許可するCVT比icdよりも回転同期点RS
P側に設定されており、モード切換制御を行う領域(図
11のL/C&H/C制御可)では、どちらの向きのC
VT通過トルク(無段変速機2の通過トルク)も伝達す
ることが可能となっているため、モード切換制御中には
CVT通過トルクが反転するが、これに対してCVT比
制御性を悪化させないようになっている。
【0180】なお、変速比無限大無段変速機では、無段
変速機2を通過する伝達トルクの方向(通過トルク)
は、直結モードと動力循環モードの前進時では、次のよ
うに異なる。
【0181】いま、図1において、入力ディスク21か
ら出力ディスク22へトルクが伝達される方向を正と
し、出力ディスク22から入力ディスク21へトルクが
伝達されると負の方向とする。
【0182】直結モードでは、無段変速機2からのトル
クがユニット出力軸6へ伝達されるため、正方向のトル
クで車両の駆動が行われる一方、負方向のトルクでエン
ジンブレーキが作用する。
【0183】したがって、直結モードでは、無段変速機
2を通過する正のトルクを制御することで、駆動側の伝
達トルクを制御できる。
【0184】一方、動力循環モードでは、動力循環モー
ドクラッチ9が締結される一方、直結モードクラッチ1
0が解放されるため、図1において、一定変速機3に駆
動されるキャリア5bのピニオンの公転速度と、無段変
速機2のCVT比に応じたサンギア5aの回転速度の差
によって、車両の前後進とギアードニュートラルポイン
トGNPが決定され、この動力循環モードでは、車両の
進行方向によって、無段変速機2を通過するトルクの方
向が変化する。
【0185】まず、動力循環モードにおける前進時は、
キャリア5bのピニオンの公転速度がサンギア5aの回
転速度よりも大きい場合、すなわち、無段変速機2のC
VT比icが、図11に示すギアードニュートラルポイ
ントGNPより大側(Lo側)にあるときで、キャリア
5bに伝達されたトルクは、リングギア5cとサンギア
5aに伝達されるため、無段変速機2への入力トルク
は、チェーン4bを介して出力ディスク22側から入力
され、負の方向となる。ちなみに、出力ディスク22か
ら入力ディスク21へ伝達されたトルクは、ユニット入
力軸1から一定変速機3へ伝達されて、駆動力が循環す
ることになる。
【0186】一方、動力循環モードにおける後進時で
は、サンギア5aの回転速度がキャリア5bのピニオン
の公転速度よりも十分大きい場合、すなわち、無段変速
機2のCVT比が、図11に示すギアードニュートラル
ポイントGNPよりも小側(Hi側)にあるときで、こ
のとき、サンギア5aに伝達されたトルクは、キャリア
5bとリングギア5cに伝達されるため、無段変速機2
への入力トルクは、入力ディスク21から出力ディスク
22へ伝達される正方向となり、サンギア5aを介して
キャリア5bに伝達されたトルクは、一定変速機3を介
して再び入力ディスク21へ循環する。
【0187】したがって、動力循環モードの前進時で
は、無段変速機2を通過する負のトルクを制御すること
で、駆動側の伝達トルクを制御でき、動力循環モードの
後進時では、上記の関係が逆になって、無段変速機2を
通過する正のトルクを制御することで、駆動側の伝達ト
ルクを制御できる。
【0188】{8.5 直結(H)モード走行}上記
8.4で動力循環モードから直結モードへ運転モード切
り換えを行った後、この直結モードから動力循環モード
へ切り換えを行わない限り、直結モードクラッチ10を
締結した状態で無段変速機2を制御して走行する直結モ
ード走行となる。
【0189】この直結モードでは、動力循環クラッチ制
御バルブ200の故障等で、急に制御圧Plcが発生し
た場合でも、CVT比icがicc以下(傾転角はφc
以上)の同時締結禁止領域では、図4〜図6及び図9
(C)のように、インヒビタバルブ170のスプール1
70aが図中下方に変位し、モードフィックスバルブ1
60のスプール160aが図9(E)のように下方に位
置しており、動力循環モードクラッチ9と連通した出力
ポート170gが、ポート170h、160f、160
gを介してドレーンされているため、動力循環モードク
ラッチ9の油圧は動力循環クラッチ制御バルブ200の
状態に関わらず大気開放している。
【0190】なお、同時締結禁止領域は、CVT比ic
cに代わって、図11に示すように、IVT速度比eを
用いる場合ではecl以下またはech以上の領域であ
る。
【0191】したがって、動力循環クラッチ制御バルブ
200等が故障しても、動力循環モードクラッチ9が締
結されることを確実に防止し、運転者の意図しない変速
(ダウンシフト)を防止することができる。
【0192】一方、CVT比icがicc以上では、図
11に示したように、動力循環モードクラッチ9と直結
モードクラッチ10を同時に締結することが可能になる
運転モード切り換え領域となるが、上記のような故障に
よって両クラッチが同時に締結されても、IVT速度比
eの変化は、図11に示すechからeclの範囲で、
変速幅が小さいため、大きなダウンシフトは発生しな
い。
【0193】すなわち、両クラッチの同時締結を許可す
るCVT比iccを、回転同期点RSP側に設定するこ
とで、インヒビタバルブ170とモードフィックスバル
ブ160の働きにより、直結モード走行中に動力循環ク
ラッチ制御バルブ200が故障しても、IVT速度比e
のLo側への変速幅を小さくすることができ、意図しな
いダウンシフトを低減することが可能になる。
【0194】{8.6 運転モード切り換え(直結→動
循)}直結モードから動力循環モードへの運転モード切
り換えは、上記8.4に示した動力循環モードから直結
モードへの運転モード切り換えの逆になる。
【0195】直結モード走行中に、車速VSPの低下や
アクセルの踏み込みが発生し、図14の変速マップで、
目標のCVT比icがモード切り換え用のCVT比ic
rspをよぎると、直結モード走行から動力循環モード
への切り換え制御が開始される。
【0196】直結モードでは、直結モードクラッチ10
を締結するように、直結クラッチソレノイド190、直
結クラッチ制御バルブ180から信号圧PsolH/
C、制御圧Phcがそれぞれ出力されている。
【0197】ただし、インヒビタバルブ170の働きに
より、CVT比がiccより大側にないと、スプール1
70aが図4〜図6及び図9(C)の下方に位置し、動
力循環クラッチ制御バルブ200と直結クラッチ制御バ
ルブ180の制御圧Plo、Phcが、直接クラッチに
は供給されないようになっている。
【0198】また、モードフィックスバルブ160は、
CVT比がicc以下では、図9(E)のように、ロッ
ク機構が作動して変位が規制されているため、運転モー
ド切り換えが禁止されている。
【0199】したがって、運転モード切換制御は、図1
1に示したように、CVT比icがicc以上の領域
で、動力循環クラッチ制御バルブ200と直結クラッチ
制御バルブ180を同時に制御することでスムーズな掛
け換えを行う。
【0200】まず、アクセルを解放したコーストダウン
では、IVT速度比eの目標値が連続的に変化するの
で、CVT比icがicc以上となってから、変速及び
クラッチ切り換えの判断を行い、例えば、回転同期点R
SPでクラッチの切り換えを行った後に、CVT比ic
を小側(Hi側)へ変速させる(IVT速度比eはLo
側)。
【0201】一方、アクセルを踏み込んでIVT速度比
の目標値が急変するときには、一度CVT比icがic
c以上になる領域まで変速させた後、動力循環クラッチ
制御バルブ200と直結クラッチ制御バルブ180を使
用して掛け換え制御を完了させた上で、CVT比icを
到達目標に制御する。
【0202】なお、CVT比icがicc以上では、図
12(C)のように、モードフィックスバルブ160の
スプール160aはロックが解除されており、この状態
で掛け換えのために直結クラッチソレノイド190制御
して信号圧PsoIH/Cを低下させると、モードフィ
ックスバルブ160はリターンスプリング力により図4
〜図6の上方へストロークし、動力循環モードクラッチ
9側の出力ポート160fと160dを連通させて、イ
ンヒビタバルブ170のポート170e、170fに供
給するライン圧PLを切り換え、オン、オフすることが
できる。
【0203】ただし、CVT比がiccより大側では、
インヒビタバルブ170のスプール170aは、図9
(A)の位置で、動力循環クラッチ制御バルブ200と
直結クラッチ制御バルブ180の制御圧Plo、Phi
を、ポート170f、170g及びポート170c、1
70dを介してそれぞれのクラッチに供給して、モード
フィックスバルブ160からの油路(ポート170e、
170h)を遮断しているため、実際のモード切り換え
は、動力循環クラッチ制御バルブ200と直結クラッチ
制御バルブ180に制御され、単純なオンオフ切り換え
ではなく、滑らかなモード切り換えが可能になる。
【0204】{8.7 Rレンジ}停車中に運転者が図
示しないセレクトレバーをNレンジからRレンジへ操作
すると、マニュアルバルブ230のスプール230s
は、図7(D)に示すNレンジの位置より下方にストロ
ークし、図7(D)の位置となり、ライン圧ポート23
0bがポート230cと連通して、Rレンジ圧回路11
1にライン圧PLが供給され、Rレンジ圧Pr(=P
L)が発生する。
【0205】停止時のN−Rセレクト操作では、CVT
変速比icはGNP位置にいる。この状態では、Rレン
ジ圧回路111、シャトル弁270、油路108、モー
ドフィックスバルブ160のポート160d、160f
を介してRレンジ圧Prがインヒビタバルブ170のポ
ート170h、170gから動力循環モードクラッチ9
に供給される。
【0206】このギアードニュートラルポイントGNP
においては、図13(C)で示したように、後退トルク
制御バルブ240のポート240dと240eが連通し
て、Rレンジ圧回路111のRレンジ圧Prが油路10
6を介してシフトコントロールバルブ246の排出ポー
ト246Dへ背圧(ドレーン圧)として供給されること
になる。
【0207】ここでN−Rセレクトを行うと、マニュア
ルバルブ230により、Rレンジ圧回路111がライン
圧PLに接続される。よってセレクト操作と同時に動力
循環モードクラッチ9に油圧が供給されるが、クラッチ
には無駄ストロークがあるため、そのストロークの間は
動力循環モードクラッチ9が締結されない。
【0208】また、セレクト操作と同時にRレンジ圧P
rがシフトコントロールバルブ246の排出ポート24
6Dに供給されるが、オリフィス(流量調整手段)5
6、アキュームレータ51によって、この油路106の
圧力上昇をクラッチ締結に要する時間以上に遅延してい
る。
【0209】これにより、動力循環モードクラッチ9の
締結が完了するまではシフトコントロールバルブ246
の排出ポート246Dに作用する背圧はライン圧PLに
達しないため、この圧力上昇が遅延している間、ライン
圧PLと背圧の差圧の範囲で伝達トルクの制御を行うこ
とができ、動力循環モードクラッチ9の締結に起因して
発生する無段変速機の伝達トルクをトリガーとする伝達
トルクの振動(変動)を防止することが可能となるので
ある。
【0210】そして、動力循環モードクラッチ9は締結
が完了し、アキュームレータ51が所定の圧力PLに達
すると、セレクト制御が終了する。
【0211】したがって、このN−Rセレクトの際に
も、上記図17に示したN−Dセレクトのときと同様
に、動力循環モードクラッチ9の締結は時間T2で完了
するが、シフトコントロールバルブ246の排出ポート
246Dのドレーン圧Phi(背圧)は、アキューム棚
によりライン圧PLとの間に差圧を形成することがで
き、この差圧に応じて、動力循環モードクラッチ9の締
結時に生じる伝達トルクの振動を解消するように制御す
ることが可能となるのである。
【0212】次に、アクセルを解放した状態では、上記
N−Dセレクトと同様に、所定のクリープトルクを得ら
れるように、ステップモータ136が後退方向(図11
でIVT速度比eが負)に駆動される。
【0213】また、RレンジにおけるCVT比icの制
御も、上記動力循環モードのDレンジと同様に、車速V
SPとアクセル踏み込み量APSに基づいて、図14の
変速マップから求めた目標入力回転Ninより、目標の
CVT比icを演算してステップモータ136を駆動す
る。
【0214】このRレンジでは、マニュアルバルブ23
0が図7(C)の位置に、モードフィックスバルブ16
0が図9(D)の位置に設定され、シフトコントロール
バルブ246のPlo側排出ポート246Cは、ポート
160k、160j、230b及びポート230cを介
してポンプ吸入油路104と連通する。
【0215】また、シフトコントロールバルブ246の
Phi側の排出ポート246Dは、マニュアルバルブ2
30のポート230d、230e及び後退トルク遮断バ
ルブ240のポート240eに接続される。
【0216】後退トルク遮断バルブ240のスプール2
40aは、カム290のカム溝290aにより、傾転角
φに応じて位置が規制され、Rレンジへ切り換えた直後
では、ギアードニュートラルポイントGNPに対応した
位置となる、ギアードニュートラルポイントGNPに対
応した傾転角φgnpにおいて、図13(C)のよう
に、シフトコントロールバルブ246のPhi側の排出
ポート246Dと連通した後退トルク遮断バルブ240
のポート240eは、Rレンジ圧ポート240dに接続
されており、ポンプ吸入油路104に接続されたポート
240fとは遮断されている。
【0217】ギアードニュートラルポイントGNPにお
いては、シフトコントロールバルブ246のPhi側排
出ポート246Dがライン圧PLとなるため、シフトコ
ントロールバルブ246のスプール位置に関わらず、油
室30Bの油圧Phiはライン圧PLとなる。
【0218】油室30A側の排出ポート246Cは、ポ
ンプ吸入油路104に接続されているため、シフトコン
トロールバルブ246の位置に応じて、油室30Aの油
圧Ploは、ほぼ0からライン圧PLの間で変化する
が、Ploの方がPhiよりも高い圧力となることは有
り得ない。
【0219】したがって、Rレンジのギアードニュート
ラルポイントGNPにおいては、常にPhi≧Ploと
いう差圧の関係が成立する。
【0220】この関係は、図10、図11、図13に示
すように、傾転角がφr以上(CVT比icr以下)な
らば成立するようにカム290の溝290aが設定され
ており、Rレンジでは、IVT速度比eが後退側で、傾
転角φが所定の値φrよりも減速側(GNP側)になっ
たところで、エンジンブレーキ側(逆走=前進側)のト
ルクが発生しないようになる。
【0221】Rレンジの走行では、図11において、I
VT速度比eが後退側(e≦0で、所定の速度比er=
CVT比icr)よりもギアードニュートラルポイント
GNP側(IVT速度比eのLo側)になったところ
で、エンジンブレーキ側(=前進側)のトルクが発生し
ないように制御できる。
【0222】次に、IVT速度比eがギアードニュート
ラルポイントGNP(e=o)から後退側、すなわちC
VT比icのHi側に変速すると、後退トルク遮断バル
ブ240のスプール240aは図4〜図6の下方へ移動
する。
【0223】そして、傾転角がφgnpからφr(CV
T比icr)まで変速すると、油室30Bの排出ポート
246Dと連通したポート240eは、図13(D)の
ように、Rレンジ圧ポート240dから遮断された後、
さらに傾転角がφhiへ向けて変速することで、後退ト
ルク遮断バルブ240のスプール240aは図13
(E)の位置となり、ポート240eはポート240f
と連通して、ポンプ吸入油路104に接続され、油圧P
hiが抜かれることになる。
【0224】これにより、Phi側の排出ポート246
Dと連通した後退トルク遮断バルブ240のポート24
0eはほぼ大気圧となり、油圧シリンダ30の油圧Pl
o、Phiの大小関係は、シフトコントロールバルブ2
46のスプール246S位置に応じて入れ代わることも
可能となる。
【0225】したがって、後退レンジでは、IVT速度
比eが負(後退側)で、所定の値erよりも増速側(後
退レンジのHi側)になったところで、エンジンブレー
キ側(前進側)の伝達トルクを制御することが可能にな
る。
【0226】そして、後退レンジでエンジンブレーキを
必要としない低速域(図11でCVT比icr以上)に
ついては、ステップモータ136などがCVT比icの
大側(Lo側)に駆動される誤動作が生じても、CVT
比icがギアードニュートラルポイントGNPに至る手
前の所定の変速比icrで、エンジンブレーキ側(逆走
側)へのトルクの発生を防止できる。
【0227】以上のように、パワーローラ20の傾転角
φに応動するインヒビタバルブ170と、後退トルク遮
断バルブ240及び傾転角φと信号圧PsolH/Cに
応動するモードフィックスバルブ160を設けたため、
CVT比icが所定の値icdよりも大側となるまで
は、動力循環モードクラッチ9と直結モードクラッチ1
0が同時に締結されるのを確実に禁止して、前記後者の
従来例と同様に、故障などによって同時締結が発生する
と回転同期点RSPへ向けて意図しない変速が生じるの
を防止できるとともに、シフトコントロールバルブ24
6のドレーン圧を制御する油路に、アキュームレータ5
0、51及びオリフィス54、55、56を設けたた
め、シフトコントロールバルブ246の排出ポート24
6C、246Dへ供給する油圧の立ち上がりを、クラッ
チの締結が完了する期間よりも遅延させることが可能と
なり、動力循環モードクラッチ9の締結完了直後まで、
エンジンブレーキ側のトルクを制御することが可能とな
って、発進時のN−DセレクトまたはN−Rセレクト操
作の際に、クラッチの締結に伴うトルク変動(振動)を
解消することができるのである。
【0228】そして、Dレンジ圧回路107と油路10
9の間に、オリフィス54を迂回して排出ポート246
Cへの油圧を迅速に排出するチェック弁52を設け、ま
た、Rレンジ圧回路111と油路106の間に、オリフ
ィス56を迂回して排出ポート246Dへの油圧を迅速
に排出するチェック弁53を設けたので、Dレンジまた
はRレンジからNレンジへセレクト操作が行われたとき
に、クラッチの解放よりも、シフトコントロールバルブ
246の排出ポート246C、246Dの供給圧(油圧
シリンダ30の背圧)を先に抜くことができるので、ク
ラッチ解放に起因する伝達トルクの振動(変動))を抑
制することができる。
【0229】さらに、動力循環モードクラッチ9と直結
モードクラッチ10の同時締結を許容するCVT比ic
c以上の運転モード切り換え領域は、このCVT比ic
cがギアードニュートラルポイントGNPよりも回転同
期点RSP側に設定されているため、仮に、故障などに
よって同時締結が生じても、速度比eの変速幅が小さい
ため、故障による意図しない変速を抑制しながら、両ク
ラッチを同時に締結することで、ショックを抑制しなが
ら運転モードの切り換えを円滑に行うことができる。
【0230】また、後退トルク遮断バルブ240によっ
て、前進側ではCVT比がicd以下の低速域で、後退
側ではCVT比がicr以上の低速域で、それぞれエン
ジンブレーキ側のトルクを伝達しないようにしたため、
故障などによりステップモータ136がエンジンブレー
キ側へ誤動作しても、エンジンブレーキ側のトルクが遮
断されているため、低速域での故障によるエンジンブレ
ーキを防止できるのである。
【0231】図18〜図21は、第2の実施形態を示
し、前記第1実施形態に示した動力循環モードクラッチ
9を、ドライブクラッチ(図中DR/C)91、オーバ
ーラン&リバースクラッチ(図中OVR/C)92、ワ
ンウェイクラッチ(図中OWC/C)93から構成した
もので、その他の構成については前記第1実施形態と同
様である。
【0232】一定変速機出力軸3cとキャリア5bの間
には、これら一定変速機出力軸3cとキャリア5bとを
選択的に締結するドライブクラッチ91、オーバーラン
&リバースクラッチ92、ワンウェイクラッチ93が介
装される。なお、オーバーラン&リバースクラッチ92
とワンウェイクラッチ93は並列に配置され、これらク
ラッチと、ドライブクラッチ91は直列的に配置されて
いる。
【0233】また、ワンウェイクラッチ93は、一定変
速機出力軸3cからキャリア5bへ向けたトルクを伝達
する一方、逆方向(キャリア5bから一定変速機出力軸
3c)のトルクを遮断する。
【0234】このキャリア5bの他端は、無段変速機出
力軸4の途中に配設された遊星歯車機構5のピニオン5
b’’に連結される。
【0235】ここで、無段変速機出力軸4の一端には、
無段変速機構2の出力スプロケット2aとチェーン4b
を介して歯合するスプロケット4aが配設され、無段変
速機出力軸4の途中には、遊星歯車機構5のサンギア5
aが形成される。
【0236】遊星歯車機構5は、このサンギア5aがキ
ャリア5bを介して一定変速機出力軸3cと選択的に結
合するピニオン5b’と歯合し、さらにこのピニオン5
b’は、ユニット出力軸6の一端と結合したリングギア
5cと歯合する。
【0237】そして、無段変速機出力軸4の他端と、ユ
ニット出力軸6の途中との間には、直結モードのときに
締結するハイクラッチ(H/C)10’が介装される。
なお、このハイクラッチ10’は前記第1実施形態の直
結モードクラッチ10と同様である。
【0238】この変速比無限大無段変速機の出力軸とな
るユニット出力軸6は、他端に設けた変速機出力ギア7
から、ファイナルギア12を介して駆動軸11へトルク
を伝達する。
【0239】なお、上記ドライブクラッチ91と、オー
バーラン&リバースクラッチ92及びワンウェイクラッ
チ93の3つが、動力循環モードのときに少なくともひ
とつか締結されるクラッチユニット9’を構成する。
【0240】前記第1実施形態に示したものと同様の変
速制御コントロールユニット80は、車両の運転状態に
応じて、図19に示すように、アクチュエータとしての
ハイクラッチソレノイド(図中のH/C SOL)19
0、オーバーランクラッチソレノイド(図中OVR/C
SOL)211、モード切り換えソレノイド(図中M
/C SOL)260を駆動することでドライブクラッ
チ91、ハイクラッチ(H/C)10’、オーバーラン
&リバースクラッチ(OVR/C)92を選択的に締結
して、動力循環モードと直結モードを切り換えるととも
に、運転状態に応じたユニット変速比(IVT比)とな
るようにステップモータ136を駆動する。
【0241】上記のような構成の変速比無限大無段変速
機では、ハイクラッチ10’(第2締結手段)、ドライ
ブクラッチ91、オーバーラン&リバースクラッチ92
を選択的に締結することにより、次の表のように運転状
態を選択することができる。
【0242】
【表1】 ただし、○:締結 ×:解放 ◎:動力循環モード(Lモード)で所定車速以上、か
つ、運転者がエンジンブレーキの要求をしたとき(Dsレ
ンジ、Mレンジ)のみ締結 である。なお、Mレンジはマニュアルモードを示す。
【0243】まず、NレンジまたはPレンジのときに
は、ハイクラッチ10’、ドライブクラッチ91、オー
バーラン&リバースクラッチ92をすべて解放すること
で、キャリア5bはフリーとなってサンギア5aの回転
に応じて空転し、リングギア5cにはトルクが伝達され
ない。
【0244】後退レンジとしてのRレンジのときには、
クラッチユニット9’のうち、ドライブクラッチ91と
オーバーラン&リバースクラッチ92を締結すること
で、キャリア5bと一定変速機出力軸3cを結合し、サ
ンギア5aに伝達された無段変速機構2からのトルク
を、ピニオン5b’とリングギア5cへそれぞれ分割し
て伝達し、図11、図15に示したように、IVT速度
比eが負となる動力循環モードの後退方向となる。
【0245】この、動力循環モードの後退方向では、キ
ャリア5bへ伝達された無段変速機構2からのトルクの
一部は、ドライブクラッチ91、オーバーラン&リバー
スクラッチ92から一定変速機出力軸3c、一定変速機
構3を介して、ユニット入力軸1から無段変速機構2へ
入力されて、トルクが循環する。
【0246】一方、前進レンジとしてのDレンジでは、
図11、図15に示したように動力循環モード(上記表
1のLow)と、直結モード(上記表1のHigh)で
クラッチの締結状態が異なる。
【0247】まず、Dレンジの動力循環モードでは、ク
ラッチユニット9’のうち、ドライブクラッチ91のみ
を締結することで、一定変速機出力軸3cからワンウェ
イクラッチ93、ドライブクラッチ91を介してキャリ
ア5bへトルクを伝達し、図11、図15に示したよう
に、IVT速度比e(またはIVT比ii)が正で、ギ
アードニュートラルポイントGNPから回転同期点RS
Pの範囲でCVT比ic及びIVT速度比eを制御する
ことができる。
【0248】この、動力循環モードの前進方向では、一
定変速機出力軸3cからワンウェイクラッチ93、ドラ
イブクラッチ91を介してキャリア5bへ伝達されたト
ルクが、ピニオン5b’と歯合したリングギア5c及び
サンギア5aへそれぞれ伝達され、リングギア5cへ伝
達されたトルクで車両が推進され、サンギア5aへ伝達
されたトルクは、無段変速機構2の出力側から入力側へ
伝達され、ユニット入力軸1を介して一定変速機構3へ
入力されて循環する。
【0249】動力循環モードの前進方向では、ドライブ
クラッチ91のみを締結している場合、ワンウェイクラ
ッチ93によって、キャリア5bから一定変速機出力軸
3cへ向かうトルク(エンジンブレーキ側のトルク)が
遮断されるので、エンジンブレーキは作動しない。
【0250】そこで、運転者がエンジンブレーキを要求
したときには、上記表1の◎で示すように、ドライブク
ラッチ91に加えてオーバーラン&リバースクラッチ9
2も同時に締結することで、駆動側のトルクに加えて、
エンジンブレーキ側のトルクも伝達することができる。
【0251】なお、エンジンブレーキの要求は、例え
ば、Dsレンジ(スポーツレンジ)、Mレンジ(マニュ
アルモード)あるいはLレンジ(低速レンジ)などを図
4に示すインヒビタスイッチ85で選択可能にしてお
き、これらのレンジが選択されたときに、オーバーラン
&リバースクラッチ92を締結する。
【0252】次に、Dレンジで、ハイクラッチ10’と
ドライブクラッチ91を締結すると、無段変速機出力軸
4とユニット出力軸6が結合されて、無段変速機構2の
CVT比icに応じてユニット出力軸6へトルクが伝達
される直結モードとなり、図11、図15に示したよう
に、IVT速度比eが回転同期点ersp以上の領域
で、変速制御を行うことができる。
【0253】この直結モードでは、遊星歯車機構5のサ
ンギア5aとともに、ピニオン5b’が公転してキャリ
ア5bも駆動されるが、図11において、回転同期点R
SPに対応するIVT速度比ersp以上では、キャリ
ア5bの回転数が、一定変速機出力軸3cの回転数より
も高くなり、ワンウェイクラッチ93によってキャリア
5bから一定変速機出力軸3cへの動力伝達経路が遮断
されるため、キャリア5bはサンギア5a及びリングギ
ア5cとともに連れ回るだけとなる。
【0254】したがって、直結モードではハイクラッチ
10’のみを締結しておけばよいのであるが、クラッチ
ユニット9’のうちのドライブクラッチ91を締結して
おいても支障がないため、前進レンジのDレンジでは、
常時ドライブクラッチ91を締結しておく。
【0255】前進レンジで、ドライブクラッチ91を常
時締結しておけば、ハイクラッチ10’の締結状態だけ
を制御することで、動力循環モードと直結モードの切り
換えを迅速かつ容易に行うことができ、ドライブクラッ
チ91とハイクラッチ10’の双方を繋ぎ代えて運転モ
ードの切り換えを行う場合に比して、運転モードの切り
換え制御を大幅に簡略化することができる。
【0256】なお、クラッチユニット9’の動作は、ま
ず、ドライブクラッチ91のみを締結すると、ワンウェ
イクラッチ93によって一定変速機出力軸3cからキャ
リア5bへの一方向のみにトルクを伝達する。
【0257】そして、オーバーラン&リバースクラッチ
92を締結すれば、ドライブクラッチ91の締結状態に
係わらず、一定変速機出力軸3cとキャリア5bの双方
へトルクを伝達することができる。
【0258】また、ドライブクラッチ91とオーバーラ
ン&リバースクラッチ92を共に解放すれば、一定変速
機出力軸3cとキャリア5bの間でトルクの伝達を遮断
するのである。
【0259】次に、図19を参照しながら油圧回路につ
いて説明する。なお、前記第1実施形態と同一のものに
は同一の符号を付した。
【0260】まず、マニュアルバルブ230自体は、前
記第1実施形態の図7と同様であり、ポート230aに
はDレンジ圧回路107が、ポート230bにはライン
圧回路101が、ポート230cにはRレンジ圧回路1
11が接続される。
【0261】Dレンジ圧回路107は、ポート230a
から供給されるDレンジ圧Pd(=ライン圧PL)を、
直結クラッチ制御バルブのポート180g、後退トルク
遮断弁245のポート245d、シャトル弁270へ供
給する。
【0262】Rレンジ圧回路111は、ポート230c
から供給されるRレンジ圧Pr(=PL)を、シャトル
弁271を介してオーバーラン&リバースクラッチ92
と、油路206を介して後退トルク遮断弁245のポー
ト245rと、シャトル弁270へそれぞれ供給する。
【0263】なお、Rレンジ圧回路111には、オリフ
ィス(流量調整手段)63が介装されて油圧の立ち上が
りを抑制しており、また、このオリフィス63と並列的
にチェック弁62が配置され、シャトル弁270を介し
てオーバーラン&リバースクラッチ92の油圧を速やか
に排出可能となっている。
【0264】Dレンジ圧回路107とRレンジ圧回路1
11とそれぞれ接続したシャトル弁270は、Dレンジ
圧回路107とRレンジ圧回路111のうち、油圧の高
い方を油路207へ供給し、オリフィス55を介してド
ライブクラッチ91に油圧を供給する。
【0265】次に、マニュアルバルブ230のセレクト
位置に応じた油圧の供給について説明する。
【0266】{Dレンジ選択時}Dレンジやスポーツ走
行に用いるDsレンジ等の前進レンジが選択されたとき
には、図7(C)に示す位置へスプール230sが変位
して、ライン圧回路101と連通したライン圧ポート2
30bが、Dレンジ圧ポート230aに接続され、Dレ
ンジ圧回路107(第1油圧供給手段)へライン圧PL
が供給される。
【0267】Dレンジを選択したときには、図19にお
いて、Dレンジ圧回路107からハイクラッチ制御バル
ブ180と、シャトル弁270を介してドライブクラッ
チ91にDレンジ圧Pd(ライン圧PL)が供給され
る。さらに、Dレンジ圧回路107は、トラニオン23
の傾転角φに応動する後退トルク遮断バルブ245のポ
ート245dへライン圧PLを供給する。
【0268】そして、後述するように、傾転角φが所定
の値以下になると、後退トルク遮断バルブ245のスプ
ール245aが図19の上方へ変位して、このポート2
45dと245bを連通し、オーバーラン&リバースク
ラッチ制御バルブ201へ、Dレンジ圧回路107から
のライン圧PLを供給してオーバーラン&リバースクラ
ッチ92の締結を許可し、Dレンジの前進時でエンジン
ブレーキを作動可能にできる。
【0269】また、Rレンジ圧回路111と連通したR
レンジ圧ポート230cはドレンポート230dに接続
され、シャトル弁271を介してRレンジ圧回路111
に接続されたオーバーラン&リバースクラッチ(以下O
VR/Cとする)92には、Rレンジ圧回路111から
の油圧の供給が遮断される。
【0270】{NレンジまたはPレンジ選択時}Nレン
ジまたはPレンジの停止レンジが選択された場合には、
図7(D)、(F)のようにスプール230sは変位し
て、ライン圧ポート230bを封止するとともに、Dレ
ンジ圧ポート230aを大気開放してドレーンし、ま
た、Rレンジ圧ポート230cをドレーンポート230
dへ接続して、Dレンジ圧回路107とRレンジ圧回路
111を共にドレーンし、ドライブクラッチ91とハイ
クラッチ制御バルブ180へのライン圧PLを遮断する
ことで、ドライブクラッチ91、ハイクラッチ10’及
びOVR/C92をすべて解放させ、ユニット入力軸1
からユニット出力軸6との間のトルクの伝達を遮断す
る。
【0271】{後退レンジ選択時}Rレンジの後退レン
ジが選択された場合には、図7(E)のように、スプー
ル230sは変位して、Rレンジ圧ポート230cをラ
イン圧ポート230bと連通させる一方、Dレンジ圧ポ
ート230aを大気開放してドレーンする。
【0272】この結果、Rレンジ圧ポート230gから
Rレンジ圧回路111にライン圧PLが加わるため、シ
ャトル弁271の弁体は図19において左側へ移動し、
OVR/C92が締結される。
【0273】同時に、シャトル弁270の弁体は図中上
方へ移動して、Rレンジ圧回路111のRレンジ圧Pr
(=PL)は、シャトル弁270、油路207を介して
ドライブクラッチ91に供給されて、ドライブクラッチ
91g供給される。
【0274】また、油路206を介して後退トルク遮断
弁245のポート245rにもRレンジ圧Prが供給さ
れる。<クラッチ制御バルブ>次に、パイロットバルブ
103で調圧されたパイロット圧回路102は、ハイク
ラッチ10’を制御するハイクラッチソレノイド190
と、OVR/C92を制御するOVR/Cソレノイド2
11と、モード切り換えバルブ175を制御するモード
切り換えソレノイド260に、それぞれパイロット圧P
pを供給する。なお、OVR/Cソレノイド211、O
VR/C制御弁201は、前記第1実施形態の動力循環
クラッチソレノイド210と動力循環クラッチ制御バル
ブと同一の構成である。
【0275】これら、ハイクラッチソレノイド190
と、OVR/Cソレノイド211、モード切り換えソレ
ノイド260は、図19に示すように、変速制御コント
ロールユニット80によってデューティ制御される。
【0276】ハイクラッチソレノイド190で調圧され
た信号圧PsolH/Cは、ハイクラッチ制御バルブ1
80のポート180eへ供給される。
【0277】また、OVR/Cソレノイド211で調圧
された信号圧PsolOVR/Cは、OVR/C制御バ
ルブ201のポート201eへ供給される。
【0278】ハイクラッチ制御バルブ180は、ポート
180eに供給された信号圧PsolH/Cに応じてス
プールを駆動し、ポート180gに供給されたDレンジ
圧回路107からのDレンジ圧Pd(ライン圧PL)を
減圧して、出力ポート180cから制御圧Phcとして
モード切り換えバルブ175に供給する。
【0279】信号圧PsolH/Cは、スプリング及び
Dレンジ圧Pdに対抗してスプール180aを付勢して
おり、信号圧PsolH/Cの増大に応じて、制御圧P
hcが図20に示すように増大する。
【0280】そして、信号圧PsolH/Cが所定値未
満のときには、ハイクラッチ制御バルブ180は、ポー
ト180cをドレーンしてポート180dに連通させ
て、制御圧Phcを抜く。
【0281】同様に、OVR/C制御バルブ201は、
ポート201eに供給された信号圧PsolOVR/C
に応じてスプールを駆動し、後退トルク遮断弁245の
ポート245bから油路108を介して供給されるDレ
ンジ圧Pdをポート201gへ導いて減圧した後、ポー
ト201cからモード切り換えバルブ175のポート1
75h、シャトル弁271を介してオーバーラン&リバ
ースクラッチ92に供給される。
【0282】信号圧PsolOVR/Cは、スプリング
201b及びDレンジ圧Pdに対抗してスプール201
aを付勢しており、信号圧PsolOVR/Cの増大に
応じて、制御圧Povrcが図20に示すように増大す
る。
【0283】そして、信号圧PsolOVR/Cが所定
値未満のときには、OVR/C制御バルブ201は、ス
プリング201bの付勢力によって出力ポート201c
とポート201dを連通させて、制御圧Povrcをポ
ンプ吸入油路104へ排出する。
【0284】<モード切り換えバルブ>ハイクラッチ制
御バルブ180と、OVR/C制御バルブ201から供
給される制御圧Phcと制御圧Povrcは、モード切
り換えソレノイド260からの信号圧PsolMCに応
動するスプール175aを備えたモード切り換えバルブ
175を介して、OVR/C92とハイクラッチ10’
へ選択的に供給される。
【0285】ハイクラッチ制御バルブ180の出力ポー
ト180cと、OVR/C制御バルブ201の出力ポー
ト201cは、それぞれモード切り換えバルブ175の
ポート175d、175hに接続されている。
【0286】モード切り換えバルブ175のポート17
5eは、ハイクラッチ10’と連通する一方、ポート1
75gは、シャトル弁271を介してOVR/C92と
連通し、これらポート175e、175gの間に形成さ
れたポート175fは、ドレーンされ、スプール175
aの変位に応じて、ハイクラッチ10’への制御圧Ph
cまたはOVR/C92への制御圧Povrcのどちら
か一方が供給される。
【0287】このため、モード切り換えバルブ175の
スプール175aの端部には、モード切り換えソレノイ
ド260からの信号圧PsolMCを受ける油室175
cが形成されており、信号圧PsolMCがスプリング
175b(または弾性部材)に対向してスプール175
aを押圧する。
【0288】信号圧PsolMCが0のときには、図1
9に示すように、スプール175aはスプリング175
bに押し切られて図中上方へ変位し、ポート175dを
ポート175eと連通して、制御圧Phcをハイクラッ
チ10’へ供給する一方、ポート175g、175fを
連通させて、シャトル弁271への油圧をドレーンす
る。
【0289】一方、信号圧PsolMCが最大になる
と、図19において、スプール175aはスプリング1
75bを押し切って図中下方へ変位し、ポート175g
をポート175hと連通して、制御圧Povrcをシャ
トル弁271を介してOVR/C92へ供給する一方、
ポート175e、175fを連通させて、ハイクラッチ
10’をドレーンさせて解放する。
【0290】<後退トルク遮断バルブ>次に、図19、
図21において、シフトコントロールバルブ246の排
出ポートと、OVR/C制御バルブ201と、油路20
6を介してRレンジ圧回路111に接続された後退トル
ク遮断バルブ245について説明する。
【0291】後退トルク遮断バルブ245のスプール2
45aは、トラニオン23に連結されたカム290のカ
ム溝290aと係合するピン241を備えて、パワーロ
ーラ20の傾転角φに応じて変位する。
【0292】そして、スプール245aの変位に応じ
て、油路108を介してOVR/C制御バルブ201と
連通したポート245bを、Dレンジ圧回路107に接
続したDレンジ圧ポート245dまたはドレーンポート
245cへ接続し、油路106を介してシフトコントロ
ールバルブ246の排出ポート246Dと連通したポー
ト245eを、油路206を介してRレンジ圧回路11
1に連通したRレンジ圧ポート245rまたはドレーン
(ポンプ吸入油路104)に接続されたドレーンポート
245fに接続する。
【0293】図19及び図20に示すように、後退トル
ク遮断バルブ245のスプール245aの一端には、カ
ム溝290aに係合したピン241が形成され、CVT
比icが大側(Lo側)に変化するとトラニオン23及
びカム290は図中反時計回りに回動する一方、CVT
比icが小側(Hi側)に変化すると、トラニオン23
及びカム290は図中時計回りに回動する。
【0294】カム290に形成されたカム溝290a
は、図19、図21に示すように、ギアードニュートラ
ルポイントGNPに対応する傾転角φgnpよりも大側
に設定された傾転角φrと、傾転角φgnpよりも小側
に設定された傾転角φdとの間、すなわち、φgnpを
挟んだφdからφrの間で、スプール245aの駆動を
行い、傾転角φd未満または傾転角φrを超える領域
で、スプール245aを固定する。
【0295】ギアードニュートラルポイントGNPに対
応した傾転角φgnp(=CVT比icgnp)では、
カム溝290aに駆動されたスプール245aは、図1
9及び図21(C)で示すように、ストロークのほぼ中
間に位置し、ポート245bとポート245cが連通し
て、OVR/C制御バルブ201のポート201gをポ
ンプ吸入油路104へ接続するともに、Rレンジ圧ポー
ト245rとポート245eが連通して、Rレンジが選
択されたときには、油路106を介してシフトコントロ
ールバルブ246の排出ポート246DへRレンジ圧P
r(=PL)を供給する。なお、油路106と油路20
6の間にはチェック弁61が介装されて、油路106か
ら油路206への排出のみを許容する。
【0296】このギアードニュートラルポイントGNP
からCVT比icが大側(Lo側)に変化すると、傾転
角はφgnpからφdへ向けて減少し、カム290は図
19及び図21(F)で反時計回りに回動する。
【0297】このとき、カム溝290aは、スプール2
45aが図中上方へ変位するように溝が形成されてお
り、傾転角がφgnpからφdまでCVT比icの大側
へ変化すると、スプール245aは、図21(D)の位
置へ変位する。
【0298】傾転角がφdの位置では、ポート245e
はRレンジ圧ポート245rに連通したまま、ポート2
45cと連通していたポート245bが封止され、傾転
角がφd未満になると、図21(E)で示すように、ポ
ート245bはポート245dと連通して、OVR/C
制御バルブ201のポート201gをDレンジ圧回路1
07に接続する。
【0299】さらに、CVT比icが大側へ変化する
と、スプール245aはさらに上方へ変位し、図21
(E)に示すように、ポート245bとポート245c
のシール性を確保した位置で保持され、この後、傾転角
が制御で用いる最小値φlo(CVT比はicloとな
る)まで変化しても、図21(E)の位置より上方へ変
位することがなく、後退トルク遮断バルブ245の全長
が増大するのを抑制している。
【0300】一方、ギアードニュートラルポイントGN
PからCVT比icが小側(Hi側)に変化すると、図
10にも示すように、傾転角はφgnpからφdへ向け
て増大し、カム290は図19及び図21(F)で時計
回りに回動する。
【0301】このとき、カム溝290aは、スプール2
45aが図中下方へ変位するように溝が形成されてお
り、傾転角がφgnpからφrまでCVT比icの小側
へ変化すると、スプール245aは、図21(B)の位
置へ変位する。
【0302】傾転角がφrの位置では、ポート245b
とポート245cが連通したまま、ポート245eが封
止され、傾転角がφrを超えると、ポート245eはポ
ート245fと連通して、シフトコントロールバルブ2
46の排出ポート246Dをポンプ吸入油路104に接
続する。
【0303】さらに、CVT比icが小側へ変化する
と、スプール245aはさらに下方へ変位し、図21
(A)に示すように、ポート245eとドレーンポート
245fのシール性を確保した位置で保持され、この
後、傾転角が制御で用いる最大値φhi(CVT比はi
chiとなる)まで変化しても、図21(E)の位置よ
り図中右側へ変位することがなく、後退トルク遮断バル
ブ245の全長が増大するのを抑制している。したがっ
て、後退レンジのRレンジでは、図21(C)に示した
ギアードニュートラルポイントGNPでは、シフトコン
トロールバルブ246の排出ポート246Dは後退トル
ク遮断バルブ245のポート245eに接続されるた
め、傾転角φr未満(図10においてCVT比icrか
らiclo)の領域、換言すれば、傾転角φrよりも前
進側の領域では、排出ポート246DへRレンジ圧(ラ
イン圧PL)が供給されて、後退レンジでのエンジンブ
レーキが禁止されて、変速制御コントロールユニット8
0の故障などによる意図しない過大なエンジンブレーキ
が生じるのを確実に防ぐことができる。
【0304】一方、傾転角φrを超える領域(図10に
おいてCVT比icrからichi)では、排出ポート
246Dがポンプ吸入油路104へ接続されて、油室3
0Bの油圧Ploを、ライン圧PLと0の間で任意に設
定することができるため、後退レンジにおけるエンジン
ブレーキを制御することができる。
【0305】次に、OVR/C制御バルブ201は、前
進レンジとしてのDレンジでのみ元圧の供給を受け、図
11に示す動力循環モードの前進側では、モード切り換
えソレノイド260の信号圧PsolMCと、OVR/
Cソレノイド211からの信号圧PsolOVR/Cが
発生したときのみ、制御圧PovrcによってOVR/
C92を締結して、動力循環モードの前進側におけるエ
ンジンブレーキを制御可能にする。
【0306】一方、直結モードでは、信号圧PsolM
Cが0となって、モード切り換えバルブ175のスプー
ル175aが図19に示すように上方へ変位し、OVR
/C92と連通可能なポート175gは、ポート175
fと連通してドレーンされるため、OVR/Cソレノイ
ド211やOVR/C制御バルブ201に故障が生じて
も、OVR/C92が締結されることはない。
【0307】この実施形態においても、Dレンジで前進
する際には、動力循環モードのときに、モード切り換え
ソレノイド260の信号圧PsolMCをONにしてお
くことで、ハイクラッチ10’はモード切り換えバルブ
175のポート175e、ポート175fからドレーン
されているため、故障などで制御圧Phcが発生しても
締結することができず、前記従来例のような回転同期点
RSPへ向けた意図しない変速を防ぐことができる。
【0308】一方、ハイクラッチ10’を締結した直結
モードのときには、モード切り換えソレノイド260の
信号圧PsolMCを0にしておくことで、OVR/C
92はモード切り換えバルブ175のポート175g、
ポート175fからドレーンされているため、故障など
で制御圧Povrcが発生しても締結することができ
ず、回転同期点RSPへ向けた意図しない変速を防ぐこ
とができる。
【0309】さらに、後退トルク遮断弁245のポート
245rと連通する油路206は、Rレンジ圧回路11
1のオリフィス63よりも下流に接続されるため、N−
Rセレクト時には、油路206、後退トルク遮断弁24
5を介してシフトコントロールバルブ246の排出ポー
ト246Dへ供給されるRレンジ圧Pr(=PL)の立
ち上がりを抑制し、この間、クラッチ締結による伝達ト
ルクの変動を解消するように制御することが可能となる
のである。
【0310】すなわち、図22にも示すように、時間T
1でN−Rセレクトを行うと、マニュアルバルブ230
により、Rレンジ圧回路111がライン圧回路101に
接続され、セレクトと同時にOVR/C92に油圧の供
給が開始されるが、解放していたOVR/Cクラッチ9
2には無駄ストロークがあるため、そのストロークの間
は時間T2までOVR/C92が締結されない。
【0311】そして、この間はオリフィス63により、
OVR/C92側の油路の油圧はライン圧PLまで上昇
しない。
【0312】したがって、この油圧を供給圧とするPh
iドレーン油路106の油圧はOVR/C92の締結完
了まで上昇しないことになる。
【0313】よってクラッチ締結が完全に行われるまで
の間は、無段変速機2は双方向の伝達トルクを制御可能
な状態にあり、クラッチ締結に起因して発生する伝達ト
ルクそして、時間T3以降は、Phiの排出ポート24
6Dに供給される油路106の油圧はライン圧PLとな
って、エンジンブレーキ側へのトルクを遮断するのであ
る。
【0314】なお、この実施形態において、Rレンジは
ドライブクラッチ91とOVR/C92を同時に締結す
る構成となっているが、オリフィス63は、ドライブク
ラッチ91よりも後でOVR/C92を締結するように
設定されてあり、OVR/C92の締結完了が、N−R
セレクト時のクラッチ締結完了を意味するようになって
いる。これにより、Phi=PLとなった状態ではクラ
ッチ締結は確実に終了している。
【0315】また、OVR/C92の締結終了とPhi
ドレーン圧がライン圧PLとなるタイミングが連動(図
22の時間T3)するため、非常に簡易な構成でありな
がら意図しないエンジンブレーキの防止と、N−Rセレ
クト操作時の無段変速機の振動防止を両立することが可
能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す変速比無限大無段変
速機の概略構成図。
【図2】同じく変速比無限大無段変速機の制御概念図。
【図3】トロイダル型無段変速機の概念図。
【図4】変速制御装置の油圧回路図の全体図。
【図5】同じく変速制御装置の油圧回路図の拡大図を示
し、その前半部。
【図6】同じく変速制御装置の油圧回路図の拡大図を示
し、その後半部。
【図7】マニュアルバルブを示し、(A)はLレンジ、
(B)はDsレンジ、(C)はDレンジ、(D)はNレ
ンジ、(E)はRレンジ、(F)はPレンジのときのス
プールとポートの関係を示す。
【図8】信号圧と直結クラッチ制御バルブ及び動力循環
クラッチ制御バルブの制御圧の関係を示すグラフ。
【図9】カムの位置に応じたインヒビタバルブとモード
フィックスバルブのスプールの位置関係を示し、(A)
は傾転角がφcl未満のときのインヒビタバルブ、
(B)は傾転角がφcのときのインヒビタバルブ、
(C)は傾転角がφchを超えるときのインヒビタバル
ブを示し、(D)は動力循環モードでのモードフィック
スバルブ、(E)は直結モードでのモードフィックスバ
ルブをそれぞれ示す。
【図10】傾転角φとCVT比icの関係を示すマップ
である。
【図11】CVT比icとIVT速度比eの関係を示す
マップ。
【図12】カムの位置に応じたモードフィックスバルブ
のロック機構の概略図で、(A)は傾転角がφchを超
えるときのスプールとスライダの係止状態を、(B)は
傾転角がφcのときでスライダがスプールと摺接する位
置を、(C)は傾転角がφcl未満で、スライダが溝部
から抜けた位置をそれぞれ示す。
【図13】カムの位置に応じた後退トルク制御バルブの
概略図で、(A)は傾転角がφloのとき、(B)は傾
転角がφdのとき、(C)は傾転角がφgnpのとき、
(D)は傾転角がφrのとき、(E)は傾転角がφhi
のときをそれぞれ示す。
【図14】車速VSPとアクセル踏み込み量APSに応
じた目標入力軸回転数Ninの変速マップで、図中波線
がCVT比icを示す。
【図15】IVT速度比eとCVT比icに応じた運転
モードのマップである。
【図16】IVT速度比eに応じた動力循環モードクラ
ッチの伝達トルクを示すマップである。
【図17】N−Dレクト時のタイムチャートで、油圧及
びセレクトレンジと時間の関係を示す。
【図18】第2の実施形態を示し、変速比無限大無段変
速機の概略構成図。
【図19】同じく、変速制御装置の油圧回路図。
【図20】信号圧と直結クラッチ制御バルブ及びオーバ
ーラン&リバースクラッチ制御バルブの制御圧の関係を
示すグラフ。
【図21】カムの位置に応じた後退トルク制御バルブの
概略図で、(A)は傾転角がφhioのとき、(B)は
傾転角がφrのとき、(C)は傾転角がφgnpのと
き、(D)は傾転角がφdのとき、(E)は傾転角がφ
loのときをそれぞれ示す。
【図22】N−Dレクト時のタイムチャートで、油圧及
びセレクトレンジと時間の関係を示す。
【符号の説明】
1 ユニット入力軸 2 無段変速機 3 一定変速機 5 遊星歯車機構 9 動力循環モードクラッチ 10 直結モードクラッチ 50、51 アキュームレータ 52、53 チェック弁 54、55 オリフィス 63 オリフィス 80 変速制御コントローラ 101 ライン圧回路 102 パイロット圧回路 104 ポンプ吸入油路 107 Dレンジ圧回路 108 油路 111 Rレンジ圧回路 120 アキュームレータ 135 プリセスカム 160 モードフィックスバルブ 170 インヒビタバルブ 180 直結クラッチ制御バルブ 190 直結クラッチソレノイド 200 動力循環クラッチ制御バルブ 210 動力循環クラッチソレノイド 230 マニュアルバルブ 240、245 後退トルク遮断バルブ 246 シフトコントロールバルブ 270 シャトル弁 280 カム 290 カム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J552 MA09 MA29 NB01 PA02 PA37 RB17 SA46 SB31 TB12 UA07 VA62W VC02W

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トロイダル型の無段変速機と一定変速機
    とをユニット入力軸にそれぞれ連結するとともに、無段
    変速機と一定変速機の出力軸を遊星歯車機構、動力循環
    モードクラッチ及び直結モードクラッチを介してユニッ
    ト出力軸に連結した変速比無限大無段変速機と、 運転状態に応じて前記動力循環モードクラッチと直結モ
    ードクラッチのうちの少なくとも一方に油圧を供給して
    動力循環モードと直結モードとを制御するクラッチ制御
    手段と、 前記トロイダル型無段変速機のパワーローラを支持する
    油圧アクチュエータと、 この油圧アクチュエータに設けた2つの油室へ選択的に
    供給圧を供給し、これら油室の油圧を制御する変速制御
    弁と、 前記変速制御弁に供給圧を供給するライン圧供給手段
    と、 運転操作に応じて前進レンジ、後退レンジ、停車レンジ
    のいずれかの運転レンジを選択する運転レンジ設定手段
    と、 前記運転レンジに基づいて変速制御弁のドレーンポート
    へ供給圧を選択的に供給し、予め設定した総変速比また
    は変速比の範囲で、前記選択した運転レンジに対してエ
    ンジンブレーキ側のトルクを規制するエンジンブレーキ
    規制手段とを備えた変速比無限大無段変速機の制御装置
    において、 前記エンジンブレーキ規制手段は、 前記運転レンジ設定手段が停車レンジから前進レンジま
    たは後退レンジへ切り替えられたときに、前記ドレーン
    ポートへ供給する油圧が変速制御弁の供給圧まで上昇す
    るのを遅延させる遅延手段を備えたことを特徴とする変
    速比無限大無段変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】前記遅延手段は、前記運転レンジが停車レ
    ンジから前進レンジまたは後退レンジへ切り替えられた
    ときに、パワーローラの傾転角に応じて、前記供給圧を
    供給する油室を切り替える切換バルブと、この切換バル
    ブと前記油室との間に流量調整手段を介装したことを特
    徴とする請求項1に記載の変速比無限大無段変速機の制
    御装置。
  3. 【請求項3】前記遅延手段は、前記運転レンジが停車レ
    ンジから前進レンジまたは後退レンジへ切り替えられた
    ときに、パワーローラの傾転角に応じて、前記供給圧を
    供給する油室を切り替える切換バルブと、この切換バル
    ブと前記油室との間にアキュームレータを介装したこと
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載の変速比無
    限大無段変速機の制御装置。
  4. 【請求項4】 前記遅延手段は、前記供給圧が低下した
    ときには、前記流量調整手段を迂回して前記ドレーンポ
    ート側の油圧を排出するチェック弁を有することを特徴
    とする請求項2または請求項3に記載の変速比無限大無
    段変速機の制御装置。
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