JP2003012961A - 擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料からなる色剤およびそれを含む記録液 - Google Patents

擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料からなる色剤およびそれを含む記録液

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JP2003012961A
JP2003012961A JP2001199204A JP2001199204A JP2003012961A JP 2003012961 A JP2003012961 A JP 2003012961A JP 2001199204 A JP2001199204 A JP 2001199204A JP 2001199204 A JP2001199204 A JP 2001199204A JP 2003012961 A JP2003012961 A JP 2003012961A
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phthalocyanine
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English (en)
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Keiichi Kikawa
敬一 紀川
Momomi Aoki
百美 青木
Yorihisa Tsubaki
頼尚 椿
Tomoko Inoue
朋子 井上
Takahiro Horiuchi
貴洋 堀内
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Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 普通紙記録に対して滲みがなく、耐水性・耐
光性・耐擦過性に優れ、色濃度の高い高品質(高精細、
高彩度)記録が可能な擬1次結晶性フタロシアニン系有
機顔料を含む水性の記録液を提供することを課題とす
る。 【解決手段】 X線回折スペクトルにおいて、最大強度
を示す回折線を主要ピークとして有する擬1次元結晶性
フタロシアニン系有機顔料からなることを特徴とする色
剤により、上記の課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット記
録方式の記録(印刷)に好適な擬1次元結晶性フタロシ
アニン系有機顔料からなる色剤およびそれを含む記録液
に関する。なお、本発明の記録液は、各種マーキング用
具や器具の色剤としても好適に使用できる。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方式は、種々の機構
によりインクの小滴を吐出させ、その小滴をメディア上
に付着させ、ドットを形成して画像を記録する方式であ
る。このため、記録時の騒音が少ない、フルカラー化が
容易である、現像および定着が不要であり高速記録が可
能であるなどの特長を有している。近年、このインクジ
ェット記録方式は、ディスプレイなどに表示されたカラ
ー画像、各種図形、カラー原稿などを印刷する方法とし
て注目され、急速に普及している。
【0003】インクジェット記録方式の記録に用いられ
るインク(記録液)は、メディア上では速やかに乾燥定
着し、ノズル内では乾燥しにくく、ノズル詰まりを起こ
しにくいという矛盾した特性が要求される。また、基本
性能として保存安定性や安全性も要求される。さらに、
メディアの種類によって、インクの浸透・吸収状態が大
きく異なるため、使用できる紙が制限されるなどの問題
点がある。特に、近年ではオフィスで一般に使用されて
いるコピー用紙、レポート用紙、ノート、便箋などのい
わゆる普通紙に対しても良好な記録を行えることが要求
され、上記の問題点についての早急な改善が望まれてい
る。
【0004】インクは、着色剤(色剤)としての染料ま
たは顔料とそれを溶解または分散させるための溶媒を主
成分とする組成物であり、必要に応じて各種添加剤が含
まれている。顔料を用いたインクは、オフィス、パーソ
ナル分野向けに多用されている水溶性染料を用いたイン
クよりも、耐水性、耐光性に優れ、デザイン、ディスプ
レイ市場の向けの大判印刷の分野において実用化が進ん
でいる。しかし、多種多様なメディアに高画質の出力が
求められるオフィス、パーソナル分野向けへの応用は困
難な状況にある。
【0005】色剤として顔料を用いた水性インクとして
は、例えば、比較的極性の高い多孔質のカーボンブラッ
クを用いたもの(特開平8−3498号公報および特表
平10−510862号公報参照)、マイクロカプセル
化有機顔料を用いたもの(特開平9−151342号公
報および特開平10−140065号公報参照)がある
が、彩度、乾燥速度、耐擦過性などの点で未だ充分とは
言えない。
【0006】顔料系のインクでは、長期間安定に溶媒中
に顔料を分散させること(保存安定性)、記録装置のノ
ズルの目詰まりがないことが特に求められる。例えば、
特開平6−212106号公報には、高分子分散剤、界
面活性剤などの分散剤などを用いて溶媒中に顔料を分散
させる技術が開示されている。しかしながら、このよう
な分散剤の添加は、一般にインクの泡立ちの原因とな
り、インクの吐出過程に影響を及ぼし、その結果、印字
ムラを引き起こすという問題がある。
【0007】特許第3000672号公報には、分散質
としての着色成分(色剤)の粒子径ならびに分散媒の表
面張力特性を特定の範囲に制御することにより滲みの発
生を抑えたインクジェット記録用インクが開示されてい
る。しかしながら、上記の公報には、X線回折スペクト
ルにおいて、最大強度を示す回折線を主要ピークとして
有する擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料を色剤
として用いるという技術思想はない。
【0008】耐光性に優れた顔料を色剤として使用すれ
ば耐水性・耐光性は容易に達成できるが、インクジェッ
ト記録方式のインクとしては、安定なインクの吐出の確
保、インクの保存安定性、メディア表面への定着性が問
題となる。また、高い色濃度と耐擦過性の確保も未だ達
成できていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、普通紙記録
に対して滲みがなく、耐水性・耐光性・耐擦過性に優
れ、色濃度の高い高品質(高精細、高彩度)記録が可能
な擬1次結晶性フタロシアニン系有機顔料を含む水性の
記録液を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、X線回折ス
ペクトルにおいて、最大強度を示す回折線を主要ピーク
として有する擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料
からなる色剤を主成分として含む記録液を用いることに
よって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明
を完成するに到った。また、本発明者らは、表面改質技
術を用いて親水化を施す過程で上記の条件を満たす擬1
次元結晶性フタロシアニン系有機顔料が得られることを
見出した。
【0011】さらに、本発明者らは、上記の擬1次元結
晶性フタロシアニン系有機顔料を主成分とした記録液を
用いると、普通紙に対する滲みが抑止され、色の濁りの
ない極めて高精彩な記録装置が実現できること、本発明
の記録液は、長期間放置後もその安定したインク吐出性
能の確保を可能にし、再起動時にノズルの目詰まりがな
いことを見出した。
【0012】かくして、本発明によれば、X線回折スペ
クトルにおいて、最大強度を示す回折線を主要ピークと
して有する擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料か
らなることを特徴とする色剤が提供される。
【0013】また、本発明によれば、上記の色剤を主成
分とし、界面活性剤および水を含むことを特徴とする記
録液が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、擬1次元結晶性フタロシア
ニン系有機顔料からなる色剤およびそれを用いた顔料分
散型の水系の記録液について述べるが、これに限定され
るものではなく、本発明の技術思想は非水系の記録液に
も適用できる。
【0015】本発明の色剤は、X線回折スペクトルにお
いて、最大強度を示す回折線を主要ピークとして有する
擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料からなること
を特徴とする。本発明における「擬1次元結晶性」と
は、実質的に1軸方向の周期性が認められる結晶を意味
する。また、「主要ピーク」とは、最大強度を示す回折
線のピーク面積が、全回折線のピーク面積の65%以上
であることを意味するが、X線回折スペクトルは、最大
強度を示す回折線のみからなるのが好ましい。
【0016】本発明の色剤を構成する擬1次元結晶性フ
タロシアニン系有機顔料は、X線回折スペクトルにおい
て、最大強度を示す回折線を主要ピークとして有する
が、そのX線回折スペクトルは顔料の種類によって異な
る。擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料のX線回
折スペクトルにおける最大強度を示す回折線のブラッグ
角(2θ±0.5°)は、X線としてCuKα線(0.
154050nm)を用いた場合、通常5〜7°の間に
ある。それらの好ましい例を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】本発明の擬1次元結晶性フタロシアニン系
有機顔料の体積平均粒子径は、175nm以下かつ60
nm以上の範囲が好ましい。「体積平均粒子径」は、粒
子が立方体であると仮定して、体積の個数平均値を粒子
径に換算した値であり、電気泳動光散乱計などで測定し
たデータをもとに求めることができる。
【0019】本発明の擬1次元結晶性フタロシアニン系
有機顔料の粒子は、従来の記録液に含まれる顔料の粒子
(例えば1000〜5000nm)と比べて非常に微細
であり、このように顔料の粒子径を限定することによっ
て本発明のより優れた効果(例えば、保存安定性)が発
揮される。また、本発明の擬1次元結晶性フタロシアニ
ン系有機顔料の粒子は、全粒子の90%以上が上記の範
囲に含まれ、かつその分布が単一のピークであることが
好ましい。
【0020】本発明において用いられる擬1次元結晶性
フタロシアニン系有機顔料は、例えば、通常の結晶性フ
タロシアニン系有機顔料を化学的処理および/または物
理的処理により改質することにより製造することができ
る。この処理は粒子表面のみの改質には止まらず、結晶
格子を大きく歪ませる程度まで改質するものであり、処
理方法によっては同時に親水性も付与される。
【0021】擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料
を製造するための化学的処理および/または物理的処理
としては、酸素雰囲気での紫外線照射(例えば、酸素ガ
ス雰囲気中で低圧水銀ランプ(λ:185nm)を照射
する方法)、反応性プラズマガス中での暴露(例えば、
真空下で低圧酸素ガスのグロー放電プラズマ中に暴露す
る方法)および酸処理(例えば、大気下、湿式で、発煙
硫酸やクロロスルホン酸で処理する方法)が挙げられる
が、擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料が最も得
られやすいことから、酸処理が好ましい。酸処理として
は、例えば、結晶性フタロシアニン系有機顔料と顔料重
量の10〜50倍程度の濃硫酸(98%)とを10℃程
度で、0.5〜3時間程度攪拌し、得られた混合溶液を
0℃程度の水中に急速に滴下攪拌する方法が挙げられ
る。
【0022】上記の改質処理では、有機顔料の耐性が求
められる。つまり、顔料によっては改質処理中に分解し
たり変色することもあるので、処理条件を最適化すると
共に耐性のある顔料の選定が重要となる。
【0023】このような顔料としては、例えば、印刷イ
ンク、トナー、塗料などの色剤として用いられる結晶性
フタロシアニン系有機顔料が挙げられる。これらの顔料
を上記の処理に付すことにより、本発明の色剤、すなわ
ち擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料が得られ
る。
【0024】結晶性フタロシアニン系有機顔料として
は、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー
15:3、C.I.ピグメントブルー15:4などの銅フタ
ロシアニン系、およびヒドロキシアルミニウムフタロシ
アニン顔料のようなアルミニウムフタロシアニン系の結
晶性フタロシアニン系有機顔料などが挙げられる。
【0025】本発明の記録液は、上記の擬1次元結晶性
フタロシアニン系有機顔料からなる色剤を主成分として
含む。色剤はその1種を単独で、または2種以上を適宜
組み合わせて用いられる。その含有量は、1〜10重量
%が好ましく、2〜5重量%がより好ましい。色剤が1
重量%未満の場合には、印字濃度が低くなるので好まし
くない。また、色剤が10重量%を超える場合には、粘
度が高く、分散安定性に劣るので好ましくない。
【0026】本発明の記録液は、本発明の色剤を主成分
とし、界面活性剤および水を含むことを特徴とする。
【0027】界面活性剤は、記録液の浸透性の制御、す
なわち、メディア表面に色剤を効率的に定着させたり、
あるいは普通紙において滲みを防止するといった浸透性
を制御するという重要な役割を果たす。浸透性を制御す
るために、記録液には界面活性剤、特にノニオン性界面
活性剤を添加するのが好ましい。記録液への界面活性剤
の添加量は、0.1〜5重量%程度、好ましくは0.5
〜4重量%である。なお、界面活性剤の添加量が前記の
範囲外の場合には、滲み、裏写りが大きくなるので好ま
しくない。カチオン界面活性剤は、本発明の色剤との組
み合わせにおいて、インクジェット記録方式のヘッドを
錆付かせ易く、しかも分散安定性を劣化させ易く、滲み
や裏写りを大きくし易いので好ましくない。
【0028】ノニオン性界面活性剤の好ましい例として
は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシ
エチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチ
ルエーテルなどのアルキルエーテル型、ポリオキシエチ
レンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオク
チルフェニルエーテルなどのアルキルフェノール型、ポ
リオキシエチレンモノステアレートなどのアルキルエス
テル型、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノ
ラウレートなどのソルビタンエステル型、ポリオキシエ
チレンソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエス
テルエーテル型が挙げられる。
【0029】本発明の記録液は、さらにpH調整剤、目
詰まり防止剤、湿潤剤、浸透剤などが添加されていても
よい。
【0030】pH調整剤の好ましい例としては、尿素、
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3
−ジメチル−イミダゾリジノン、ジエタノールアミン、
トリエタノールアミンなどの含窒素有機溶剤が挙げられ
る。これらの含窒素有機溶剤はインクの乾燥に伴う目詰
まり防止剤としても機能し、有効に用いられる。記録液
への含窒素有機溶剤の添加量は、1〜10重量%程度、
好ましくは2〜8重量%である。
【0031】湿潤剤は、記録液の保存安定性、記録特性
およびメディアに対する定着性の向上にも寄与する。ま
た、含窒素有機溶剤と同様に、インクの乾燥によるノズ
ルやオリフィスでの目詰まり防止剤としても機能する。
記録液への湿潤剤の添加量は、0.5〜40重量%程
度、好ましくは3〜8重量%である。
【0032】湿潤剤の好ましい例としては、ジエチレン
グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン
グリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタエチ
レングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエ
チレングリコール、オクタエチレングリコール、エチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコ
ール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサン
トリオール、チオグリコール、へキシレングリコール、
トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが
挙げられる。
【0033】さらに、上記の湿潤剤に加えて、記録液に
は低沸点有機溶剤を添加するのが好ましい。記録液への
低沸点有機溶剤の添加量は、0.5〜10重量%程度、
好ましくは1.5〜6重量%である。低沸点有機溶剤の
好ましい例としては、メタノール、エタノール、n−プ
ロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、
sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−
ブタノール、n−ペンタノールなどの1級、2級および
3級アルコールが挙げられ、特に1級アルコールが好ま
しい。
【0034】浸透剤は、乾燥性を早めるだけではなく、
メディア表面に色剤を効率的に定着させたり、あるいは
普通紙において滲みを防止するといった重要な役割を果
たす。記録液への浸透剤の添加量は、0.1〜5重量%
程度、好ましくは0.5〜4重量%である。なお、浸透
剤の添加量が前記の範囲外の場合には、乾燥性、滲み防
止の効果が劣化するので好ましくない。
【0035】浸透剤の好ましい例としては、エチレング
リコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール
−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−n−
ブチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエ
ーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル
などのグリコールエーテル類、アニオン型であるパーフ
ルオロアルキルスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオ
ロアルキルスルホン酸カリウム塩、パーフルオロアルキ
ルカルボン酸カリウム塩 、ないしはノニオン型である
パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、
パーフルオロアルキルアルコキシレート、フッ素化アル
キルエステルなどのフッ素系界面活性剤などが挙げられ
るが、表面張力を低下させる機能をもつものであれば、
これらに限定されるものではない。
【0036】本発明の記録液には、さらにインクの諸物
性を改善するために必要に応じて適当な調整剤を添加す
ることができる。物性調整剤としては、例えば、粘度調
整剤、防カビ剤、防腐剤などが挙げられる。
【0037】本発明の記録液は、上記の各成分を適宜、
適当な方法で水に分散あるいは混合することによって調
製することができる。凝集状態の本発明の色剤(擬1次
元結晶性フタロシアニン系有機顔料)を、本発明におい
て規定する体積平均粒子径の微粒子にまで分散する方法
としては、ダイノミル分散法、ペイントシェーカー分散
法、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミ
ル分散法、ビーズミル分散法、超音波分散法などの通常
の方法を採用することができる。
【0038】本発明によれば、色濃度の高い記録を実現
すると同時に、色剤粒子の光散乱を制御することで鮮や
かな色再現(高彩色記録)も得られ、かつ普通紙に記録
した場合でも滲みと裏写りが極めて少ない記録が得られ
る。また、本発明によれば、記録液の分散安定性、保存
安定性も向上する。さらに、本発明の記録液を用いるこ
とにより、極めて品質の高い記録を実現できる記録装置
を提供することもできる。記録装置としては、インクジ
ェットプリンターのような公知の装置を用いることがで
きる。
【0039】
【実施例】本発明を製造例、比較製造例、実施例および
比較例に基づいてさらに具体的に説明するが、これらの
製造例および実施例により本発明が限定されるものでは
ない。
【0040】製造例において得られた顔料のX線回折ス
ペクトル、ならびに実施例および比較例において得られ
た記録液のX線回折スペクトルを、マックサイエンス社
製の粉末X線回折装置MXP−18(X線源:CuKα
=0.154050nm)を用いて測定した。
【0041】(製造例1)150℃に加熱した濃硫酸
(98%)約200gに、銅フタロシアニン構造のC.I.
ピグメントブルー15:3(クラリアントジャパン株式
会社製、Hostaperm Blue B2G)を約
4g加え、2時間攪拌後、0℃の水中に急速に滴下攪拌
し、顔料を回収した。得られた顔料のX線回折スペクト
ルを図1に示す。X線回折スペクトルでは、ブラッグ角
(2θ±0.5°)5.6°(FWHM(半値全幅)=
0.8°)に最大回折ピークのみが観測された。
【0042】(製造例2)170℃に加熱した濃硫酸
(98%)約200gに、アルミニウムフタロシアニン
構造のヒドロキシアルミニウムフタロシアニン(山陽色
素株式会社製、Cyanine Blue A−13
Y)を約5g加え、3時間攪拌後、0℃の水中に急速に
滴下攪拌し、顔料を回収した。得られた顔料のX線回折
スペクトルを図2に示す。X線回折スペクトルでは、ブ
ラッグ角(2θ±0.5°)5.5°(FWHM=1.
1°)に最大回折ピークのみが観測された。
【0043】(比較製造例)顔料としてインダンスレン
構造の顔料、C.I.ピグメントブルー60を製造例1およ
び製造例2と同様にして処理したが、何れの改質技術に
おいても、変色が激しく、鮮やかな色彩が得られず、本
発明に使用できる顔料を得ることができなかった。ま
た、顔料としてトリフェニル構造の顔料、C.I.ピグメン
トブルー18、C.I.ピグメントブルー19、C.I.ピグメ
ントブルー56およびC.I.ピグメントブルー61を製造
例1および製造例2と同様にして処理したが、何れの改
質技術においても、所望の耐水性が得られず、本発明に
使用できる顔料を得ることができなかった。
【0044】実施例および比較例において得られた記録
液中の顔料の粒子サイズを、大塚電子株式会社製の電気
泳動光散乱光度計ELS−8000を用いて測定し、得
られたデータから体積平均粒子径(nm)を求めた。
【0045】 (実施例1) 製造例1の顔料 2.5重量% ジエチレングリコール 5重量% テトラプロピレングリコール 5重量% トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 8重量% n−プロパノール 3重量% 尿素 5重量% ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 0.2重量% イオン交換水 残部
【0046】ジエチレングリコール、テトラプロピレン
グリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエー
テル、n−プロパノール、尿素、ポリオキシエチレンオ
クチルフェニルエーテル(ノニオン性界面活性剤)を除
く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置
(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニ
アビーズと共に8時間分散処理を施し、ジルコニアビー
ズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μmの
メンブランフィルターで濾過して記録液を得た。得られ
た記録液中での顔料の体積平均粒子径は95nmであっ
た。また、記録液のX線回折スペクトルでは、ブラッグ
角(2θ±0.5°)6.0°(FWHM=0.8°)
に最大回折ピークのみが観測された。
【0047】 (実施例2) 製造例2の顔料 2.5重量% ジエチレングリコール 5重量% テトラプロピレングリコール 5重量% トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 8重量% n−プロパノール 3重量% 尿素 5重量% ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 0.2重量% イオン交換水 残部
【0048】ジエチレングリコール、テトラプロピレン
グリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエー
テル、n−プロパノール、尿素、ポリオキシエチレンオ
クチルフェニルエーテル(ノニオン性界面活性剤)を除
く前記成分を混合し、ペイントコンディショナー装置
(レッドレベル社製)により直径0.8mmのジルコニ
アビーズと共に15時間分散処理を施し、ジルコニアビ
ーズを除去後、残りの構成成分を混合し、0.45μm
のメンブランフィルターで濾過して記録液を得た。得ら
れた記録液中での顔料の体積平均粒子径は52nmであ
った。また、記録液のX線回折スペクトルでは、ブラッ
グ角(2θ±0.5°)5.5°(FWHM=1.1
°)に最大回折ピークのみが観測された。
【0049】 (比較例1) 顔料C.I.ピグメントブルー15:3 4.5重量% (製造例1において用いた未処理の顔料) ソルスパース27000 2.5重量% n−プロパノール 2重量% 尿素 5重量% ジプロピレングリコール 5重量% テトラプロピレングリコール 5重量% イオン交換水 残部
【0050】n−プロパノール、尿素、ジプロピレング
リコール、テトラプロピレングリコールを除く前記成分
を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベ
ル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共
に15時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去
後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブラ
ンフィルターで濾過して記録液を得た。得られた記録液
中での顔料の体積平均粒子径は101nmであった。ま
た、記録液のX線回折スペクトルでは、複数の回折ピー
クが観測された(図3参照)。
【0051】 (比較例2) 顔料ヒドロキシアルミニウムフタロシアニン 4.5重量% (製造例2において用いた未処理の顔料) ソルスパース27000 2.5重量% n−プロパノール 2重量% 尿素 5重量% ジプロピレングリコール 5重量% テトラプロピレングリコール 5重量% イオン交換水 残部
【0052】n−プロパノール、尿素、ジプロピレング
リコール、テトラプロピレングリコールを除く前記成分
を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレベ
ル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと共
に15時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去
後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブラ
ンフィルターで濾過して記録液を得た。得られた記録液
中での顔料の体積平均粒子径は157nmであった。ま
た、記録液のX線回折スペクトルでは、複数の回折ピー
クが観測された(図4参照)。
【0053】 (比較例3) 製造例1の顔料 2.5重量% ジエチレングリコール 5重量% テトラプロピレングリコール 5重量% トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル 8重量% n−プロパノール 3重量% 尿素 5重量% テトラブチルアンモニウムブロマイド 0.2重量% イオン交換水 残部
【0054】ジエチレングリコール、テトラプロピレン
グリコール、トリエチレングリコール−n−ブチルエー
テル、n−プロパノール、尿素、テトラブチルアンモニ
ウムブロマイド(カチオン性界面活性剤)を除く前記成
分を混合し、ペイントコンディショナー装置(レッドレ
ベル社製)により直径0.8mmのジルコニアビーズと
共に8時間分散処理を施し、ジルコニアビーズを除去
後、残りの構成成分を混合し、0.45μmのメンブラ
ンフィルターで濾過して記録液を得た。得られた記録液
中での顔料の体積平均粒子径は98nmであった。ま
た、記録液のX線回折スペクトルでは、ブラッグ角(2
θ±0.5°)5.7°(FWHM=1.1°)に最大
回折ピークのみが観測された。
【0055】実施例および比較例で得られた記録液の特
性を、それぞれ以下に示す方法で評価した。
【0056】(A)反射濃度 各記録液を一定量(1.0ml)採取し、専用コート紙
(RW−P4A4)上にアプリケータ塗布したものを乾
燥して、反射濃度測定用サンプルを得た。得られたサン
プルについて、濃度計RD−918(マクベス社製)を
用いて、反射濃度を測定した。反射濃度が1.40以上
であれば、印字濃度が高いと評価した。
【0057】(B)色特性 反射濃度測定用サンプルについて、分光測色計(Spectr
odensitometer)X−Rite938(日本平版機材株
式会社製)を用いて、L***表色系における色特性
(明度、色度)を評価した。色の鮮やかさ(彩度C*
は、次式により求めた。彩度が50以上であれば、鮮や
かな色彩であると評価した。
【0058】
【数1】
【0059】(C)保存安定性 各記録液(約20ml)をラボランスクリュー管瓶に入
れ、60℃で1ヶ月の保存テストを実施した。1ヶ月後
に動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500(株式会
社堀場製作所製)を用いて、顔料の粒子径を測定した。
得られた結果と予め測定しておいた保存テスト前の粒子
径とから変化率を求め、以下の基準により保存安定性を
評価した。 ◎ :変化率が15%以下のもの ○ :変化率が20%以下のもの △ :変化率が30%以下のもの × :変化率が30%を超えるもの
【0060】(D)耐擦過性 反射濃度測定用サンプルの一部分を指で擦り、印字の汚
れの有無を目視観察し、以下の基準で耐擦過性を評価し
た。 ○ :地汚れが全く確認できないもの × :地汚れが確認できるもの
【0061】(E)滲み特性 マイクロシリンジを用いて、一定量の記録液(0.7μ
l)を普通紙(SF−4AM3)面に付着させて、紙面
上での広がり(ドット径)を測定し、紙面上でのドット
の真円度の基準としてその標準偏差を求め、以下の基準
により滲み特性を評価した。 ◎ :広がりが1.5mm以下のもの ○ :広がりが2.5mm以下のもの × :広がりが2.5mmを超えるもの (△):標準偏差が0.2以上となるもの(真円度が悪
いもの)
【0062】(F)インクヘッド適性 各記録液をインクジェットプリンター(シャープ株式会
社製、AJ−2100)のヘッド部に充填し、印字動作
を行い、インク吐出の経時変化を観察し、以下の基準で
インクヘッド適性を評価した。 ○ :問題なく印字(印刷)ができるもの △ :印字物が擦れるもの × :全く印字できないもの 以上の評価結果をまとめて表2および表3に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】この結果より明らかなように、本発明の実
施例では、保存安定性に優れた記録液が得られ、その印
字物は高い反射濃度を有し、色の鮮やかで、摩擦にも強
く、滲みの少ないことがわかった。また、インクジェッ
トプリンターに搭載しても、長期間、安定したインク供
給を実現できることがわかった。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、X線回折スペクトルに
おいて、最大強度を示す回折線を主要ピークとして有す
る擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料からなる色
剤を主成分とし、界面活性剤および水を含む記録液を用
いることにより、従来の有機顔料を用いた記録液の欠点
であったくすんだ色しか再現できないという課題が克服
できると共に、色合いや鮮やかさが向上する。また、水
系(水溶媒系)での色剤の高分散性、普通紙の紙面上で
の優れた耐水性、高い擦過性、滲み防止効果も期待され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の記録液(実施例1)のX線回折スペク
トルである。
【図2】本発明の記録液(実施例2)のX線回折スペク
トルである。
【図3】従来の記録液(比較例1)のX線回折スペクト
ルである。
【図4】従来の記録液(比較例2)のX線回折スペクト
ルである。
フロントページの続き (72)発明者 椿 頼尚 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 井上 朋子 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 堀内 貴洋 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA13 FC01 2H086 BA55 BA59 4J039 AE07 BC07 BC12 BC20 BC60 BE01 BE22 CA06 EA35 EA36 EA38 EA42 EA47 GA24

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線回折スペクトルにおいて、最大強度
    を示す回折線を主要ピークとして有する擬1次元結晶性
    フタロシアニン系有機顔料からなることを特徴とする色
    剤。
  2. 【請求項2】 擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔
    料が、結晶性フタロシアニン系有機顔料を化学的処理お
    よび/または物理的処理により改質された顔料である請
    求項1に記載の色剤。
  3. 【請求項3】 擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔
    料が、銅フタロシアニン系またはアルミニウムフタロシ
    アニン系の結晶性フタロシアニン系有機顔料を改質する
    ことにより得られた擬1次元結晶性フタロシアニン系有
    機顔料である請求項1または2に記載の色剤。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1つに記載の色
    剤を主成分とし、ノニオン性界面活性剤および水を含む
    ことを特徴とする記録液。
JP2001199204A 2001-06-29 2001-06-29 擬1次元結晶性フタロシアニン系有機顔料からなる色剤およびそれを含む記録液 Pending JP2003012961A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011217484A (ja) * 2010-03-31 2011-10-27 Hitachi Ltd 回転電機およびその製造方法
JP2018034504A (ja) * 2012-12-19 2018-03-08 イノヴィア フィルムズ リミテッド フィルム

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