JP2003010658A - ガス分離材及びその製造方法並びにリアクター - Google Patents

ガス分離材及びその製造方法並びにリアクター

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JP2003010658A JP2001201330A JP2001201330A JP2003010658A JP 2003010658 A JP2003010658 A JP 2003010658A JP 2001201330 A JP2001201330 A JP 2001201330A JP 2001201330 A JP2001201330 A JP 2001201330A JP 2003010658 A JP2003010658 A JP 2003010658A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガス生成反応効率の向上を実現するリアクタ
ー及び該リアクターに装備されるガス分離材を提供する
こと。 【解決手段】 上記課題を解決する本発明のガス分離材
(36)は多孔質支持体(35)と、その表面部に形成されたセ
ラミック膜(34)とを主体とし、そのセラミック膜には、
ガス透過率及びガス選択透過性が相互に異なる少なくと
も二つの部分(34A,34B)があり、該少なくとも二つの部
分は、多孔質支持体表面部上で所定の方向に沿って部分
毎に順次ガス透過率が低下し且つガス選択透過性が高ま
るようにしてその方向に配列されている。また、本発明
のリアクター(32)は、そのようなガス分離材をガス分離
モジュールとして備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、ガス分離可能な
セラミック膜を備えたガス分離材及びその製造方法に関
する。さらに、当該ガス分離材をモジュールとして備え
るリアクターに関する。特に、原料ガスを改質して水素
を生成するリアクター及び当該リアクターに備えられる
水素分離モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】 導入された原料ガスに種々の反応を引
き起こさせて目的のガスを生成するリアクター(反応
器)が広く利用されている。例えば、メタンやメタノー
ル等の原料ガスを改質(水蒸気改質反応等)することに
よって水素ガスを生成するリフォーマー即ち改質器があ
る。
【0003】ところで、リアクターのなかには、ガス反
応効率を向上させるために、所望するガス種を選択的に
透過させる膜、すなわちガス選択透過性を有するガス分
離膜を備えたものがある。例えば、水蒸気改質反応等に
よってメタン等の炭化水素類から水素を生成する改質器
において、水素生成反応効率(即ち転化率)を向上させ
るために水素選択透過性(水素ガスを透過させ易く他の
ガス種は比較的透過させ難い性質をいう。以下同じ。)
を有する水素分離膜を備えたものがある。例えば、特開
平3−217227号公報、特開平5−194281号
公報、特開平10−259002号公報には、水素分離
膜を備えた改質器が開示されている。
【0004】この種のガス分離膜を備えたリアクターの
内部には、外部から導入した原料ガスに所定のガス生成
反応を起こさせる反応部とその反応部に隣接するガス通
路とが設けられている。そして、その反応部とガス通路
との境界には当該反応部側からガス通路側に生成ガスを
選択的に透過させるガス分離膜が設けられている。かか
る構成のリアクターでは、反応部(例えば改質器におけ
る水素生成部)側で生成したガス(例えば水素)をガス
通路側に分離除去することが可能となる。その結果、当
該反応部において行われるガス生成反応において反応物
質(例えば水素生成反応)が生成する方に平衡がシフト
し、原料ガスから水素への転化率を向上させることがで
きる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】 ところで、上述した
公報に記載されるようなガス分離膜を備えた従来のリア
クターは、所定のガス生成反応効率の向上に関して一定
の成果をあげてはいるものの、さらなる改善の余地を残
している。すなわち、上記公報に記載されているような
従来のリアクター(改質器等)では、ガス分離膜自体の
巨視的及び微視的性質に関する改良・工夫がいまだ不十
分であり、ガス生成効率向上のためにはガス分離膜のさ
らなる高機能化や至適化が求められている。
【0006】本発明は、かかる要望に応えるべく創出さ
れたものであり、その目的とするところは、リアクター
内で行われるガス生成反応(改質反応等)の平衡状態を
反応物質の生成が進む方向にシフトさせて従来よりも反
応効率の向上を実現し得るガス分離膜及び当該ガス分離
膜を備えたガス分離材を提供することである。また、そ
のようなガス分離膜及びガス分離材の製造方法を提供す
ることである。さらに、そのようなガス分離材をガス分
離モジュールとして組み込んだ改質器その他のリアクタ
ーを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】 本発明によって提供さ
れるガス分離材は、多孔質支持体と、その表面部に形成
されたセラミック膜とを主体とするガス分離材である。
そのセラミック膜(ガス分離膜)には、ガス透過率及び
ガス選択透過性が相互に異なる少なくとも二つの部分が
ある。そして、当該少なくとも二つの部分は、多孔質支
持体表面部上で所定の方向に沿ってそれらの部分毎に順
次ガス透過率が低下し且つガス選択透過性が高まるよう
にして、その方向に配列(典型的には連続的配列である
が、配列する部分間に所定の間隔を有する場合でもよ
い。)されていることを特徴とする。なお、ここで「部
分」とは、セラミック膜をいくつかの領域に区分けした
場合の巨視的な一領域をいい、微視的サイズの一スポッ
トをいうものではない。従って、ある「部分」について
のガス透過率及びガス選択透過性とは、その部分全体に
関しての平均的ガス透過率及びガス選択透過性を指すも
のであり、その部分内における特定の微視的一スポット
についてのガス透過率及びガス選択透過性を指すもので
はない。また、本明細書において「ガス透過率」とは、
セラミック膜を挟んでガス供給側とガス透過側との分圧
差が1Paであるときの単位時間(1秒)及び単位膜表
面積(1m2)当りのガス透過量(モル/m2・s・Pa)を
いう(後記の「実施例」の欄参照)。また、本明細書に
おいて「ガス選択透過性」とは、所定のガス種を透過し
易く当該ガス種以外のものは相対的に透過し難い性質を
いう。従って、水素選択透過性というときは、水素ガス
を透過し易く、水素以外のもの(例えば窒素ガス)は相
対的に透過し難い性質をいう。
【0008】かかる構成の本発明のガス分離材では、多
孔質支持体上に形成されているセラミック膜のガス透過
率及びガス選択透過性が膜全体で一定ではなく、所定の
方向(例えば多孔質支持体が長板状又は長管状の場合、
典型的にはその長軸方向)に沿って段階的にガス透過率
が低下し且つガス選択透過性が増大していく。なお、こ
のことを逆方向からみると段階的にガス透過率が増大し
且つガス選択透過性が低下していくこととなる。かかる
構成のガス分離材をガス分離モジュールとしてリアクタ
ー内に配置した際には、ガス選択透過性よりも分離対象
とするガスの透過量自体を重視するのが望ましい箇所
(即ち量的なガス分離が好ましい箇所)と、それとは反
対にガス透過量よりもガス選択透過性を重視するのが望
ましい箇所(即ち質的・選択的なガス分離が好ましい箇
所)との両方に対応させることができる。このことを以
下に詳述する。
【0009】リアクター内の反応部(導入された原料ガ
スから目的のガスを生成するための反応が行われる場所
をいう。以下同じ。)では、当該反応部に導入される原
料ガスの流動する方向に沿って、例えば原料ガスの導入
口に近い部分(上流部)のように、原料ガスがリッチに
存在する領域であって生成ガス即ち分離対象とするガス
は相対的に低濃度で存在する領域(以下「原料ガス高濃
度領域」という。)と、その領域よりも原料ガスの流動
方向で下流側に位置する領域であってガス生成反応によ
る消費で原料ガスが比較的少なくなって逆に生成ガスが
比較的高濃度で存在する領域(以下「原料ガス低濃度領
域」という。)とが存在する。而して、ガス生成反応の
平衡状態を生成反応が進む方にシフトさせて当該反応を
より効果的に促進するためには、原料ガス高濃度領域に
おいては、比較的高いガス透過率のガス分離膜を使用し
て単位時間当り量的により多くの生成ガスを分離するこ
とが好ましい。すなわち、かかる原料ガス高濃度領域
は、上述した量的なガス分離が好ましい箇所である。一
方、原料ガス低濃度領域においては、比較的ガス選択透
過性の高いガス分離膜を使用して選択的に生成ガスを分
離することが好ましい。すなわち、原料ガス高濃度領域
と比較して原料ガス低濃度領域は、量的なガス分離より
も質的・選択的なガス分離が好ましい箇所である。
【0010】従って、本発明のガス分離材をリアクター
内に配置する際、上記少なくとも二つの部分のうちの相
対的にガス透過率が高くガス選択透過性が低い部分(以
下、当該少なくとも二つの部分のうちの相対的な関係に
おいて「高ガス透過性部分」という。)を原料ガス高濃
度領域に配置し、且つ、上記少なくとも二つの部分のう
ちの相対的にガス透過率が低くガス選択透過性が高い部
分(以下、当該少なくとも二つの部分のうちの相対的な
関係において「高ガス選択性部分」という。)を原料ガ
ス低濃度領域に配置することによって、それら領域ごと
にガス生成反応を効率よく促進することが可能である。
そして、本発明のガス分離材は、多孔質支持体表面部上
で所定の方向に沿って順次ガス透過率が減少し且つガス
選択透過性が高まっていくように配列・形成されてい
る。このため、かかる所定の方向とリアクター内の反応
部に導入される原料ガスの流動方向とを一致させること
によって、当該反応部における原料ガス(生成ガス)の
濃度差に応じて上記領域別にガス生成反応の平衡をガス
生成反応がすすむ方向に効果的にシフトすることができ
る。すなわち、反応系全体で効率よくガス生成反応を促
進することができる。
【0011】本発明のガス分離材として好ましい一つの
ものでは、上記少なくとも二つの部分は、上記所定の方
向に沿って部分毎に順次水素透過率が低下し且つ水素/
窒素透過係数比が高まるように形成されている。なお、
本明細書において「水素/窒素透過係数比」とは、同条
件下における水素透過率と窒素透過率との比率、即ち同
条件下での水素ガス透過量の窒素ガス透過量に対する比
(モル比)をいう。本構成のガス分離材を水素分離モジ
ュールとして種々の原料ガスから水素生成を目的とする
リアクター(改質器)に用いると、リアクター内の反応
部における水素生成反応の平衡を、原料ガス(生成ガ
ス)の濃度差に応じて反応部内の領域別に当該水素生成
反応がすすむ方向に効果的にシフトすることができる。
このため、反応部全体からみて水素生成反応を効率よく
促進することができる。
【0012】また、本発明のガス分離材として好ましい
他の一つのものでは、上記セラミック膜はSi−N結合
主体の繰返し構造を基本骨格とするセラミック焼成体に
より構成されている。Si−N結合主体の繰返し構造
(即ちシラザン骨格)を基本骨格とする焼成膜(以下
「ポリシラザン膜」という。)は、従来のシリカ質の膜
(即ちSi−O結合主体の繰返し構造から成るシロキサ
ン骨格を基本骨格とするセラミック膜)とは異なり、3
50℃を越えるような高温条件下においても微細孔構造
を安定に保つことができる。このため、本構成のガス分
離材は、かかる高温(典型的には600〜800℃或い
はそれ以上)又は水蒸気雰囲気の条件下で所望するガス
透過率及びガス選択透過性を維持しつつ高精度のガス分
離を実現することができる。
【0013】また、本発明のガス分離材として好ましい
他の一つのものは、上記多孔質支持体が管状に形成され
ており、上記セラミック膜が当該管状支持体の外壁面及
び/又は内壁面に形成されており、ここで上記少なくと
も二つの部分は、その管状支持体の長軸方向に沿って配
列されている。このような管形状のガス分離材は、その
長軸方向の一方の末端側から他方の末端側に原料ガスが
流れるような管状(筒状)の反応部を備えたリアクター
内で使用するガス分離モジュールとして好適である。
【0014】また、本発明は、上述したガス分離材をガ
ス分離モジュールとして備えた改質器その他のリアクタ
ーを提供する。すなわち、本発明によって提供されるリ
アクターは、外部から導入された原料ガスから所定のガ
スを生成するリアクターであって、その内部には、導入
された原料ガスを利用して所定のガスを生成する反応部
と、その反応部に隣接するガス通路とが設けられてい
る。その反応部とガス通路の境界には、反応部側からガ
ス通路側へ所定のガスを選択的に透過させるためのガス
分離モジュールが備えられている。そのガス分離モジュ
ールは、多孔質支持体とその表面部に形成されたセラミ
ック膜とを主体として構成されている。そのセラミック
膜には、ガス透過率及びガス選択透過性が相互に異なる
少なくとも二つの部分があり、それら部分は多孔質支持
体表面部上で所定の方向に沿って部分毎に順次ガス透過
率が低下し且つガス選択透過性が高まるようにその方向
に沿って配列されている。そして、上記ガス分離モジュ
ールは、反応部内における原料ガスの流動方向に沿って
その上流側から下流側へ順次ガス透過率が低下し且つガ
ス選択透過性が高まるように、上記配列方向と原料ガス
の流動方向とを適合させた状態で配置されている。
【0015】かかる構成の本発明のリアクターでは、上
記少なくとも二つの部分のうちの高ガス透過性部分が原
料ガス高濃度領域に配置され、且つ、上記少なくとも二
つの部分のうちの高ガス選択性部分が原料ガス低濃度領
域に配置されている。このため、原料ガスの濃度差に応
じて上記領域別にガス生成反応の平衡をガス生成反応が
すすむ方向に効果的にシフトすることができる。従っ
て、反応部全体でガス生成反応を効率よく促進すること
ができる。
【0016】また、本発明のリアクターとして好ましい
一つのものでは、上記セラミック膜が反応部側からガス
通路側へ水素を透過させるための水素分離膜であり、上
記少なくとも二つの部分は、上記ガス流動方向に沿って
部分毎に順次水素透過率が低下し且つ水素/窒素透過係
数比が高まっていくように形成されている。本構成のリ
アクター(即ち改質器)によると、反応部における水素
生成反応の平衡を原料ガスの濃度差に応じて領域別に水
素生成反応がすすむ方向に効果的にシフトすることがで
きる。このため、反応部全体からみて水素生成反応を効
率よく促進することができる。
【0017】また、本発明のリアクターとして好ましい
他の一つのものは、上記セラミック膜がSi−N結合主
体の繰返し構造を基本骨格とするセラミック焼成体によ
り構成されている。本構成のリアクターは、ポリシラザ
ン骨格を基本骨格とするガス分離膜を備えた結果、高温
条件下(典型的には600〜800℃或いはそれ以上)
及び/又は水蒸気雰囲気条件下においても所望するガス
透過率及びガス選択透過性を安定的に維持することがで
きる。このため、かかる高温過酷条件下であっても反応
部内のガス生成反応の平衡を原料ガスの濃度差に応じて
領域別にガス生成反応がすすむ方向に効果的にシフトす
ることができる。従って、本構成のリアクター(改質器
等)によると、高温条件下で高い転化率を実現しつつ高
効率にガス生成(例えば水素の生成)を行うことができ
る。
【0018】また、本発明のリアクターとして好ましい
他の一つのものは、上記ガス分離モジュールが管状に形
成された多孔質支持体を主体として構成されており、上
記セラミック膜は当該管状多孔質支持体の外壁面及び/
又は内壁面に形成されている。そして、上記少なくとも
二つの部分は、その管状多孔質支持体の長軸方向に沿っ
て配列されている。ここで上記反応部内に導入された原
料ガスは管状多孔質支持体の長軸方向に沿ってその一方
の末端側から他方の末端側へ流動するように構成されて
いる。本構成のリアクターでは、反応部において生じ得
る原料ガスの濃度差に対応して、ガス分離膜の上記高ガ
ス透過性部分および高ガス選択性部分が適切な位置に配
置される。このため、本構成のリアクター(改質器等)
によると、高効率にガス生成(例えば水素の生成)を行
うことができる。
【0019】また、本発明は、上述のガス分離材を製造
する好適な方法を提供する。すなわち、本発明によって
提供される多孔質支持体とその表面部に形成されたセラ
ミック膜とを主体とするガス分離材の製造方法は、(a).
その多孔質支持体の表面部に所定のガス透過率及びガス
選択透過性を有するセラミック膜を形成する工程と、
(b).その(a).工程で形成されたセラミック膜の一部分
に、当該セラミック膜と実質的に同じ組成のセラミック
構造を堆積させて、その部分に隣接する当該セラミック
膜の他の部分よりもその部分のガス透過率を低下させ且
つガス選択透過性を高める工程とを包含する。そして、
当該(b).工程を上記セラミック膜の一部分或いは多孔質
支持体表面部上を所定の方向に沿って順次移動させつつ
二以上の部分で行うことによって、ガス透過率及びガス
選択透過性が相互に異なる少なくとも二つの部分を形成
する。
【0020】かかる構成の製造方法では、多孔質支持体
表面部に形成されたセラミック膜上にさらに同組成のセ
ラミック構造を堆積することにより、その部分のセラミ
ック膜(即ち支持体上に最初に形成された膜とその上に
堆積した部分とから新たに構成された膜)のガス透過率
を上記(a).工程で最初に形成されたセラミック膜よりも
低下させる一方、ガス選択透過性は逆に高めることがで
きる。典型的には、堆積させる量が多いほどガス透過率
が低く且つガス選択透過性が高い膜部分を形成すること
ができる。従って、本発明の製造方法によると、上述し
た本発明のガス分離材を好適に製造することができる。
【0021】また、本発明の製造方法として好ましいも
のは、上記(a).工程において、Si−N結合主体の繰返
し構造を基本骨格とするセラミック焼成膜を形成するこ
とを特徴とする。この製造方法によると、ポリシラザン
から成るガス分離膜を有する本発明のガス分離材を製造
することができる。また、本発明の製造方法として好ま
しい他のものは、上記多孔質支持体として管状に形成さ
れたものを使用し、その管状支持体の外壁面及び/又は
内壁面にセラミック膜を形成し、さらに上記少なくとも
二つの部分を、それらが上記管状支持体の長軸方向に沿
って配列されるように形成することを特徴とする。この
製造方法によると、管形状の本発明のガス分離材を製造
することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】 以下、本発明の好適な実施形態
を詳細に説明する。先ず、本発明のガス分離材について
説明する。上述のとおり、本発明のガス分離材は、ガス
分離膜に所定の方向性(形成位置及び順序がランダムで
ないことをいう。)をもたせて上記少なくとも二つの部
分(典型的には一つの高ガス透過性部分とそれに隣接す
る一つの高ガス選択性部分)が並んで形成されておれば
よく、ガス分離材自体の形状やガス分離膜の形成位置を
特に限定するものではない。多孔質支持体の性状も特に
限定されない。例えば、従来の改質器に装備されている
ガス分離材(モジュール)の支持体を構成する組成のも
のであれば、本発明の実施に際しても特に制限なく使用
することができる。本発明の実施に好ましい多孔質支持
体としては、窒化珪素、炭化珪素、シリカ、α−アルミ
ナ、γ−アルミナ、ジルコニア、チタニア、カルシア、
各種ゼオライト等の多孔質セラミック材が挙げられる。
あるいは、これらセラミック材に種々の金属成分(P
d、Ni、Ti、Al、W、Nb、Ta、Co、Ru
等)やそれらの合金若しくは金属酸化物成分を含有した
ものであってもよい。
【0023】また、多孔質支持体の形状は特に限定され
ず、用途に応じて管形状、膜(薄板)形状、モノリス形
状、ハニカム形状、多角形平板形状その他の立体形状で
あり得る。これらのうち、管形状のものがガス分離モジ
ュール(特に水素分離モジュール)として種々のリアク
ターに適用し易く好適である。なお、所望する形状のセ
ラミック系多孔質支持体は、従来行われている周知の成
形技法(押出し成形、鋳込み成形、テープ成形、プレス
成形等)やセラミック焼成技法を実施することによって
製造することができる。かかる多孔質支持体製造・成形
技法自体は何ら本発明を特徴付けるものではなく、詳細
な説明は省略する。
【0024】また、かかる多孔質支持体の孔径は、水素
等のガス透過に影響を与えない限りにおいて特に限定さ
れないが、ガス分離膜における平均孔径よりも大きな平
均孔径を有するものが適当である。0.1μm〜10μ
m程度の細孔径分布のピーク値及び/又は平均孔径を有
するものが好ましい。また、気孔率は、30〜60%が
適当であり、好ましくは35〜50%である。但し、リ
アクターへの取付け等を考慮すれば、ある程度の物理的
強度が支持体に要求される。例えば、高温域(例えば8
00℃)における3点曲げ強度が30MPa以上(より
好ましくは60MPa以上、さらに好ましくは90MP
a以上)である材質、平均孔径、空隙率を有するものが
好ましい。また、使用する多孔質支持体の孔径分布のピ
ーク値に対するセラミック膜の孔径分布のピーク値の比
率が概ね1/15以下(より好ましくは1/20以下)
となるように、用いる多孔質支持体を決定することが好
ましい。
【0025】次に、上述したような多孔質支持体の表面
部に形成するガス分離膜の好適例及びそれらの製造例に
ついて説明する。本発明のガス分離材では、ガス分離用
途に用い得る限り、多孔質支持体の表面部に形成される
膜の材質・組成に特に制限はない。例えば、従来既知の
材料・膜形成方法に基づいて、各種のゼオライト膜(X
型、Y型、A型、シリカライト、モルデナイト、ZSM
−5型等)、シリカ膜、α−アルミナ膜、γ−アルミナ
膜等を支持体表面に形成することができる。
【0026】ところで、ガス分離材を水素分離用途に使
用する場合、ガス分離膜の水素分離性能は、上述の水素
/窒素透過係数比および水素透過率を指標に判断するこ
とができる。水素分離材(水素分離モジュール)として
好ましいものは、高ガス透過性部分(典型的には反応部
内の原料ガス流動方向における上流側に相当する部位に
配置される部分)において、400℃(好ましくは60
0℃)での水素/窒素透過係数比が2.5以上10以下
であり且つ同温度での水素透過率が0.1×10-6モル
/m2・s・Pa以上(好ましくは0.3×10-6モル/m2
・s・Pa以上)のものである。さらに、対応する高ガス
選択性部分(典型的には反応部内の原料ガス流動方向か
らみて下流側に相当する部位に配置される部分)におい
て、400℃(好ましくは600℃)における水素/窒
素透過係数比が10以上(典型的には10〜20)であ
るものが好ましい。この水素/窒素透過係数比を実現し
つつ水素透過率が0.1×10-7モル/m2・s・Pa以上
(好ましくは0.5×10-7モル/m 2・s・Pa以上、特
に好ましくは0.1×10-6モル/m2・s・Pa以上)あ
るものがよい。400℃又は600℃における上記要件
を具備しつつ更に700℃においても、同様の水素/窒
素透過係数比や水素透過率を示すものがさらに好まし
い。700℃における上記要件を具備しつつ更に800
℃においても、同様の水素/窒素透過係数比や水素透過
率を示すものが特に好ましい。
【0027】上記したようなレベルの水素/窒素透過係
数比や水素透過率を実現し得る好適なガス分離用セラミ
ック膜の一つとして、分子構造がSi−N結合の繰返し
構造(−Si−N−Si−N−)すなわちシラザン骨格
を主たる骨格とすることで特定されるポリシラザン膜が
挙げられる。ポリシラザン膜は、基本骨格(主たる骨
格)がシラザン骨格である限り、その他の結合や分子構
造を含み得る。典型的には、Si−N結合の繰返し構造
に対してSi−C結合、Si−O結合、Si−H結合等
が一部付加されることによって、ポリシラザン膜全体の
基本構造(三次元の網目構造)が形成されている。な
お、かかるポリシラザン膜が形成されたガス分離材を水
素分離モジュールとして組み込んだ改質器を高温条件下
(例えば600℃以上1100℃以下の高温域)でメタ
ン等の原料ガスを改質(水蒸気改質反応等)して水素ガ
スを生成するために使用する場合、ポリシラザン膜中に
存在する全珪素(Si)原子数に対するSi−N結合を
形成しているSi原子数の割合は10%以上が好まし
く、その割合が20%以上となるものが特に好ましい。
【0028】また、ガス分離膜の孔径分布のピーク値
(典型的には当該ピーク値は平均孔径と近似し得る)は
100nm以下(例えば0.1nm〜100nm)が好
ましく、孔径分布のピーク値及び/又は平均孔径が50
nm以下(例えば0.1nm〜50nm)であるとなお
好ましい。特に水素分離用途では、孔径分布のピーク値
及び/又は平均孔径が10nm以下(例えば0.1nm
〜10nm)のものが好適である。かかる孔径分布のピ
ーク値及び/又は平均孔径のものであれば、いわゆるモ
レキュラーシーブまたはクヌッセン的分離が発現する。
クヌッセン的分離とはガス分子の透過速度の差を利用し
た分離または濃縮をいい、細孔(典型的には孔径約10
nm以下)内においてはガス分子相互の衝突よりも孔壁
との衝突が支配的になるという性質に基づくものであ
る。さらに上記孔径分布のピーク値及び/又は平均孔径
が0.1〜5nm或いは1nm以下のものが、水素のよ
うな比較的小さいサイズ(動的分子直径約0.29n
m)の無極性分子を混合ガスから選択的に分離するのに
特に効果的である。而して、本発明のガス分離材では、
高ガス透過性部分の孔径分布のピーク値及び平均孔径
が、その部分よりも高ガス選択性である部分の孔径分布
のピーク値及び平均孔径より相対的に大きいことが望ま
しい。なお、特に限定するものではないが、ガス分離膜
の膜厚は10μm以下が適当であり、1μm以下の膜厚
が好ましく、0.1μm以下の膜厚が更に好ましい。特
に、かかる膜厚のポリシラザン膜によると、高温条件下
においても比較的高い水素分離能(水素選択性)を保持
しつつ、効率よく水素分離処理を行うことができる。
【0029】次に、多孔質支持体の表面部に所定のガス
透過率及びガス選択透過性を有するセラミック膜(ガス
分離膜)を形成する方法の好適例について説明する。本
発明の実施にあたっては、従来広く利用されている一般
的な膜形成方法に基づいてアルミナ等のセラミック多孔
質支持体の表面部にセラミック膜を形成すればよく、膜
形成方法自体を制限する必要はない。そのような一般的
な膜形成方法として、ゾル−ゲル法、熱分解法、水熱合
成法、気相合成法等が挙げられる。典型的には、セラミ
ック膜形成用ゾルを多孔質支持体表面部に塗布し、それ
を適当な温度条件と雰囲気下で焼成することによって所
望するガス透過率及びガス選択透過性を実現する多孔質
のセラミック製ガス分離膜を形成することができる。以
下、本発明によって提供されるポリシラザン膜を多孔質
支持体表面部に形成する場合の一好適例を説明する。
【0030】上述のとおり、ポリシラザン膜はSi−N
結合の繰返し構造を基本骨格とするものであるから、当
該Si−N結合を基本構造とする珪素化合物から製造す
ることができる。かかる好適な珪素化合物として、以下
の一般式(1)によって表されるポリシラザンが挙げら
れる。典型的には式(1)のR,R,Rは、それ
ぞれ、水素または炭素数が1〜10である脂肪族系若し
くは芳香族系の炭化水素基である。
【0031】
【化1】
【0032】而して、かかるポリシラザンは、例えば、
以下のように調製することができる。すなわち、ジハロ
シラン(RSiHX)或いは当該ジハロシランと他
のジハロシラン(RSiX)との混合物をアン
モニアと反応させることによってシラザンオリゴマーを
得る。次いで、塩基性触媒の存在下で当該シラザンオリ
ゴマーの脱水素反応を起こさせる。これにより、珪素原
子に隣接する窒素原子の脱水素が行われ、結果、シラザ
ンオリゴマーが相互に脱水素架橋して成るポリシラザン
を生成することができる。なお、この生成プロセスに使
用されるジハロシランの好ましいものは、上記R、R
、Rが、それぞれ、炭素数が1〜6の低級アルキル
基、置換アリル基、非置換アリル基、炭素数が6〜10
の非置換アリール基、トリアルキルアミノ基、ジアルキ
ルアミノ基のいずれかである。或いは、Rは水素であ
り、RおよびRが上記列挙した官能基のいずれかで
ある。このときR、RおよびRは全て同じ基でも
よく、相互に異なる基でもよい。なお、上記ジハロシラ
ンの式中のXはハロゲン基である。なお、使用するポリ
シラザンの分子量に特に制限はないが、薄膜を形成する
過程における粘性制御等の観点から、重量平均分子量で
1000〜20000程度のものが好ましい。
【0033】而して、上述のようにしてシラザンオリゴ
マーから調製したポリシラザンまたは市販のポリシラザ
ンを不活性雰囲気中で焼成することによって、微細孔を
有する無機材料を形成することができる。概略すれば、
典型的には予め所望する形状に成形された対称又は非対
称構造を有する多孔質支持体(アルミナ等)の表面部に
ポリシラザン溶液を所望する厚さ(例えば1〜3μm)
で塗布する。次いで、乾燥処理を施すことによってポリ
シラザンから成る薄層を形成した後、不活性(非酸化
性)雰囲気中で当該薄層を支持体ごと適当な温度条件下
で焼成する。このことによって、微細孔が形成されたポ
リシラザン膜(水素分離膜)を当該支持体表面部に形成
することができる。以下、より具体的に説明する。
【0034】上記ポリシラザン溶液の調製にあたって
は、ポリシラザンを溶解するための溶媒として種々の有
機溶媒を用い得る。例えば、ベンゼン、トルエン、キシ
レン等の芳香族系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラ
ン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒が適当であ
る。また、溶液中のポリシラザンの濃度は特に限定され
ないが、0.5重量%〜60重量%程度が適当であり、
1重量%〜20重量%程度が好ましい。
【0035】また、かかるポリシラザン溶液を多孔質支
持体の表面部に塗布する方法としては、従来の薄膜形成
プロセスにおいて用いられる各種の方法を採用すること
ができる。例えば、ディップコーティング法、スピンコ
ーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法等が挙げ
られる。特にディップコーティング法では、ポリシラザ
ン溶液の多孔質支持体内部への浸透を溶液濃度、操作条
件等により制御でき、さらには不活性雰囲気中でのポリ
シラザンの熱分解に伴うガス発生、キャピラリー圧力、
焼成収縮等による微細構造の破壊を抑制するのに寄与し
得る。このため、特にディップコーティング法は、欠陥
の無い多孔質セラミック膜を多孔質支持体表面部に容易
且つ直接的に形成するのに好適な塗布方法である。ある
いは、上記ポリシラザン溶液を多孔質支持体の表面部に
塗布する他の環境として製膜環境中に若干酸素を含む場
合がある。この場合には、ゲル形成をプロセス中に伴
う。支持体の表面部に比較的大きな細孔が分布する場合
には、その細孔内部に原料溶液が奥深く浸透してしまう
ことによりその後のゲル化あるいは膜化が阻害されると
いう不具合が考えられる。さらに、膜が厚い場合では、
乾燥に伴うキャピラリー圧力により、膜に欠陥を生じ易
くなる。したがって、支持体の表面部に比較的大きな細
孔が分布する場合にゾル−ゲル法を採用するときには、
支持体の表面部に予め別の平均細孔径が支持体より小さ
くなるセラミック層(以下「中間層」という。)を形成
しておき、その滑らかな表面又は細孔内部にポリシラザ
ン膜を積層する(即ち複数回繰返して製膜する)とよ
い。このことによって、支持体表面上に製膜されたポリ
シラザン膜の薄膜化且つ無欠陥化ができる。但し、この
ようにして得られる膜では、Si−O結合を若干多く含
むようになる。
【0036】而して、支持体表面部にポリシラザン溶液
を塗布(供給)して乾燥した後、当該ポリシラザン膜の
付着している多孔質支持体を不活性(非酸化性)雰囲気
中において焼成する。典型的には、実質的に酸素を含ま
ない不活性ガス(窒素ガス等)中において、200〜1
350℃、好ましくは200〜1000℃(典型的には
多孔質支持体の焼成温度以下及び中間層を形成する場合
は当該中間層の焼成温度以下の温度とする。)の温度条
件下で1〜4時間の焼成処理を行う。かかる不活性雰囲
気中における熱処理によって、耐熱性に優れる平均孔径
が0.1nm〜50nm(細孔径分布のピーク値:0.
1〜5.0nm)であり、Si−N結合の繰返し構造を
基本骨格とするポリシラザン膜を形成することができ
る。
【0037】ところで、多孔質支持体として窒化珪素系
のものを使用した場合には、当該支持体(中間層を含む
場合は当該支持体と中間層の両方)の基本骨格が、その
表面に形成・積層されるポリシラザン膜と同じシラザン
骨格である。このため、当該ポリシラザン膜にプロセス
中に欠陥が発生するのを高度に抑制することができる。
さらには、かかる欠陥発生を抑制する結果、従来のセラ
ミック製ガス分離膜(例えばシリカ系の水素分離膜)よ
りも広範囲(典型的には5000mm以上、好ましく
は15000mm以上)に亘って薄く均質なガス分離
膜を連続して形成することができる。このようなポリシ
ラザン膜を形成したガス分離材を用いると、それを採用
する改質器等のリアクターの大型化を実現することがで
きる。なお、このこと(作用効果)は、多孔質支持体と
してアルミナ系のものを使用し、当該支持体表面部にア
ルミナ膜を形成・積層する場合にも当てはまる。
【0038】以上、ポリシラザン膜を多孔質支持体表面
部に形成するための典型的な方法を説明した。次に、本
発明の実施にあたって必須の処理ではないが、多孔質支
持体表面部にほぼ均質であり顕著な欠陥の認められない
緻密な多孔質セラミック膜(ポリシラザン膜等)を形成
するための好適な多孔質支持体の処理方法について図面
を参照しつつ説明する。セラミック膜を支持体表面部に
形成する前に、多孔質支持体内の細孔を所定の除去可能
な充填材によって塞ぐ処理を行う。このことによって、
当該支持体に膜形成材料(例えば上記ポリシラザン溶
液)を塗布した場合であっても、当該材料が支持体内部
へ過度に滲入する(即ち細孔内へ入り込む)のを防止す
ることができる。このため、従来よりも全体的に粗密の
ない且つ均質で欠陥の少ないセラミック膜を形成するこ
とができる。また、材料の滲入がない結果、所望する膜
厚のセラミック膜を形成することが容易である。また、
膜形成後(焼成の有無を問わない)に充填材を実質的に
除去することにより、多孔質支持体に所望される多孔性
(気孔率)を復帰させることができる。以下、この処理
方法を説明する。
【0039】この処理に使用する充填材としては、温度
条件、圧力条件等を変化させることによって液体状態と
固体状態との間で可逆的に状態変化し得る物質(純物質
又は混合物)が利用可能である。膜形成後に除去するた
めである。多孔質支持体の表面(孔内壁面)に不可逆的
に吸着され難い物質が好ましい。また、充填処理の容易
さの観点から、概ね0〜200℃(好ましくは室温〜1
00℃)の間に融点を有する物質が充填材として好適で
ある。このような温度範囲に融点(凝固点)を有する物
質から成る充填材を使用すると、比較的低温条件で充填
処理を行うことができる。かかる好適な充填材として
は、融点が45〜65℃の範囲内にあるパラフィン、融
点が上記温度範囲に属することとなるような分子量(重
合度)のポリエチレングリコール(PEG)等の有機化
合物が挙げられる。また、水(HO)等の無機化合物
も充填材として好ましい。
【0040】このような充填材を支持体の細孔内に充填
するために種々の手法が考えられるが、典型的には、液
体状態とした充填材中に多孔質支持体を浸漬することに
よって、当該支持体の細孔を充填材で充填することがで
きる。すなわち、図1に模式的に示すように、細孔4が
全体に形成された多孔質支持体2(例えば窒化珪素)
を、高温状態(例えば100〜200℃)の液状充填材
(例えば液状パラフィン)中に浸漬する。このことによ
って、いわゆる毛管現象に基づいて液状の充填材を細孔
内に滲入させ、結果、図2に示すように当該細孔4内部
に液状充填材10を充填することができる。なお、かか
る充填処理を短時間で高効率に実施するため、上記浸漬
手段に代えて液状充填材を強制的に細孔内に滲入させて
もよい。そのような強制的手段の一例として、液状充填
材を高圧で多孔質支持体表面に吹き付けていき、その圧
力によって多孔質支持体の細孔内部に当該充填材を滲入
させていく方法が挙げられる。或いは、多孔質支持体の
表面(即ち膜を形成する面)に予め液状充填材を塗布し
ておくとともに当該表面とは反対の面側から真空ポンプ
等によって多孔質支持体の細孔内部に存在するガスを吸
引する操作を行ってもよい。かかる操作によると多孔質
支持体細孔内部の圧力が支持体表面部よりも著しく低下
するため、その圧力差に基づいて表面部に塗布しておい
た液状充填材を速やかに細孔内に滲入させる(吸い込
む)ことができる。
【0041】上述のような充填処理後、典型的には充填
材たる物資の融点(凝固点)以下となる低温条件下に当
該支持体をおくことによって細孔内の充填材を固まらせ
る処理(凝固・固化処理)を行う。これにより、細孔内
に固形状充填材を保持しておくことができる。このよう
な処理を行った後に、上述したディップコーティング法
等によって支持体2の表面に膜形成用材料3を塗布する
(図3参照)。次いで、かかる支持体2を水熱合成、焼
成等の処理に供することによって、当該支持体2の表面
部に所望する膜厚及び平均孔径のセラミック膜3を形成
することができる。このとき、使用した充填材の沸点よ
りも高い温度で焼成処理や水熱合成処理が行われること
により、高温に曝された充填材10が融解し延いては気
化して細孔内から漏出・除去される。すなわち、図4に
示されるように、支持体2が細孔(細孔4)を有する多
孔体であるにも拘わらず、セラミック膜3と多孔質支持
体2との境界面がほぼ平坦となり、全域に亘ってほぼ均
質な多孔質セラミック膜3を有するガス分離材1を製造
することができる。なお、焼成処理の前段階で、所定の
溶媒(例えばトルエン)に多孔質支持体の少なくとも一
部を浸漬することによって、支持体細孔内部に存在して
いる充填材(パラフィン、PEG等)を溶出してもよ
い。あるいは、水のような比較的沸点が低く蒸気圧が高
い物質を充填材とした場合には、多孔質支持体を比較的
高温条件下に曝しておくことによって、細孔内に残留す
る充填材を気化・放出することができる。
【0042】また、充填処理後であって膜形成材料を塗
布する前に、図5に示すような充填材を部分的に除去す
る処理を行うことが好ましい。すなわち、図5に模式的
に示すように、充填材10を多孔質支持体2の細孔4に
充填した後(図2参照)、所定の時期に、その表面部の
一部(図中のdで示す範囲)から充填材10を除去す
る。例えば、所定の充填材(パラフィン、PEG等)を
充填した支持体2の表面部の一部を所定の溶媒(例えば
トルエン)中に浸漬する。このことによって、その一部
分dに存在している充填材(パラフィン、PEG等)を
溶出することができる。かかる部分的除去処理を行う前
に、細孔内の充填材10を予め固化しておくことが好ま
しい。所望する範囲dでのみ充填材を除去することを制
御し易くなるからである。換言すれば、多孔質支持体の
表面から内方(細孔内)への多孔質セラミック膜形成範
囲を制御・決定し易くなる。かかる膜形成範囲即ち充填
材を除去する範囲dの調節は、例えば、固化充填材が充
填した支持体の充填材除去用溶媒(トルエン等)へ接触
させる部分(典型的には支持体表面を基点としたときの
溶媒に浸漬させる支持体の容積)や浸漬時間(溶媒との
接触時間)を制御することによって容易に行える。而し
て、かかる部分的除去処理を行った後に、当該支持体2
の表面部の所定範囲(充填材が除去された部位)に膜形
成材料3を塗布することができる(図6参照)。次い
で、かかる支持体2を水熱合成、焼成等の処理に供す
る。このことによって、図7に示すように充填材10が
除去され、多孔質支持体2の表面部に所望する膜厚及び
平均孔径のセラミック膜(ポリシラザン膜等)3が形成
されたガス分離材11を得ることができる。また、図示
される形態のガス分離材11では、膜3の一部分が支持
体2表面よりも幾分内部(即ち細孔内)に形成される。
このため、支持体2表面上にのみ形成されたセラミック
膜よりも膜と支持体との結合力が高く、結果、比較的高
い物理的強度(高温条件下における剥離し難さ等)を得
ることができる。
【0043】次に、上述のようにして多孔質支持体上に
形成されたガス分離膜に、所定の方向性をもたせつつガ
ス透過率及びガス選択透過性が相互に異なる少なくとも
二つの部分を形成する好適な方法について説明する。特
に制限するものではないが、かかる方法として好ましい
ものに、多孔質支持体上にガス分離膜を形成したのと同
じ材料・手段によって当該ガス分離膜の一部にさらにセ
ラミック構造を堆積(積層)する方法(以下「セラミッ
ク堆積処理」という。)が挙げられる。
【0044】例えば、多孔質支持体上に形成されたガス
分離膜(以下「ベース分離膜」という。)の表面の一部
分に、当該ベース分離膜を形成したのと実質的に同じ組
成の材料(ゾル等)を塗布、吹付、電着等の手段によっ
て供給する。そして、ベース分離膜の形成と同様の処理
(焼成等)を行ってその部分に新たな多孔質セラミック
構造(膜構造)を形成(即ち上積み)するとよい。この
ことにより、その材料供給部分に新たなセラミック層が
堆積されることとなり、その部分の膜構造も緻密化され
得る。そして、かかる膜形成材料の付与及びセラミック
構造の形成処理(焼成等)を一回又は適当回数繰り返す
ことにより、当該処理部分におけるガス透過率をベース
分離膜のみの部分よりも所望するレベルまで低下させる
一方、当該部分におけるガス選択透過性はベース分離膜
のみの部分よりも所望するレベルまで向上させることが
できる。上述したポリシラザン製膜を例にすると、ベー
ス分離膜として形成したポリシラザン膜の所定の部分に
上記ポリシラザン溶液を上塗りし、同様に焼成する。こ
れを適当回数繰り返すことにより、当該上塗り部分に新
たなポリシラザン構造が堆積され、その部分のガス透過
率を所定のレベルにまで低下させるとともにガス選択透
過性(典型的には水素選択透過性)を所定のレベルにま
で高めることができる。
【0045】而して、かかるセラミック堆積処理をベー
ス分離膜の一部分で行うことにより、ガス透過率及びガ
ス選択透過性が相互に異なる二つの部分(即ち、多孔質
セラミック構造の堆積した部分とベース分離膜のみの部
分)が多孔質支持体表面部に形成されたガス分離材を得
ることができる。或いは、セラミック堆積処理の対象と
する部分を所定の方向にずらしつつ複数部分で行うこと
により、ガス透過率及びガス選択透過性が相互に異なる
三つ以上の部分を多孔質支持体表面部の所定の方向に沿
って相互に隣接して形成することができる。例えば、管
状多孔質支持体の外周壁面又は内周壁面にポリシラザン
膜から成るベース分離膜を形成した後、その管状多孔質
支持体の長軸方向に沿って当該ベース分離膜形成部分を
前端部分A、中央部分Bおよび後端部分Cに区分したと
きのB及びCの部分に対してポリシラザン溶液を供給し
つつセラミック堆積処理を所定回数施す。その後、Cの
部分にさらにポリシラザン溶液を供給しつつセラミック
堆積処理を所定回数施す。このことにより、ポリシラザ
ンの堆積度合(緻密性)がA、B、Cの順に上がるポリ
シラザン膜を形成することができる。すなわち、ポリシ
ラザン膜を備えた管状ガス分離材であって、ガス透過率
がA、B、Cの順に低下し且つガス選択透過性は逆にこ
の順に上昇していくことを特徴とする、ガス透過率及び
ガス選択透過性が相互に異なる三つの部分が管状多孔質
支持体表面部上で所定の方向(この場合では長軸方向)
に沿って配列されている管状ガス分離材を製造すること
ができる。
【0046】次に本発明のリアクターについて説明す
る。本発明のリアクターは、ガス分離モジュールとして
本発明のガス分離材を備えることで特徴付けられるもの
であり、その特徴部分以外の構成要素や補助的装置の付
加、削除若しくは改変等は、従来のリアクター(改質器
等)で一般に行われている手法に基づいて行えばよく、
本発明を何ら制限するものではない。本発明のガス分離
材は、膜の組成に応じて種々のガス分離用途に使用する
ことができる。特に、ガス分離膜としてポリシラザン膜
が形成されているものは、耐熱性や耐熱衝撃性又は高温
での化学的安定性が高い。このため、高温での処理を必
要とする種々の用途のリアクターに適している。例え
ば、窒化珪素やアルミナから成る多孔質支持体の表面部
にポリシラザン膜の形成された本発明のガス分離材は、
当該支持体の形状を適宜変更することによって種々の形
態の容器や装置に膜反応モジュールとして組み込むこと
ができる。特に、膜型水素分離モジュールとして改質器
(例えば高温型燃料電池用改質器)に組み込むことがで
きる。このとき、多孔質支持体の形状を管状とすること
で、当該管形状膜型水素分離モジュールが形成される
(即ち管の内壁及び/又は外壁に本発明に係るセラミッ
ク膜を形成する。)。また、窒化珪素等から成る多孔質
支持体の形状をプレート形状に成形すれば、当該プレー
ト形状の膜型水素分離モジュールが形成されるわけであ
る。従って、本発明によると、特に高温型燃料電池シス
テム用改質器やその他の種々の厳しい環境下で利用する
リアクター(例えばNO等の有害ガス分離用リアクタ
ー)を提供することができる。
【0047】また、本発明のリアクターの内部構成につ
いては、リアクター内部に導入された原料ガスを利用し
て所定のガスを生成する反応部(典型的には触媒を配置
している。)と当該反応部に隣接するガス通路とが設け
られており、その反応部とガス通路の境界に当該反応部
側からガス通路側へ所定のガスを選択的に透過させるよ
うにして、上述の本発明のガス分離材をガス分離モジュ
ールとして備えておればよく、その他の構成は任意であ
る。しかし、リアクターの反応部内で行われるガス生成
反応(改質反応等)の平衡状態を反応物質の生成が進む
方向にシフトさせて従来よりも反応効率の向上を実現し
たリアクターを開発するという観点からは、反応部内に
導入したガスの上流部(原料ガス高濃度領域)に本発明
のガス分離材の高ガス透過性部分を配置し、下流部(原
料ガス低濃度領域)にいくほど本発明のガス分離材にお
けるより高ガス選択性部分を配置するのが好ましい。そ
のような配置で上記ポリシラザン膜を備えて成る本発明
のガス分離材を装備したリアクターは、比較的高温条件
下で使用し得る改質器として好適である。なお、この場
合の改質触媒に特に制限はないが本形態の改質器は特に
高温域(典型的には600〜800℃又は1100℃迄
の高温域)で使用し得るものであるから、かかる高温域
で優れた触媒能を発揮し得るものが好ましい。例えば、
多孔質アルミナ等の担体にパラジウム、ニッケル等の金
属を担持させたものを好適に使用することができる。ま
た、触媒を備える部位、すなわち反応部(水素生成部)
の形状に特に制限はない。
【0048】一典型例として、図8に模式的に示すよう
な筒状の反応容器(チャンバー)22内の略中央に管状
水素分離材30を備えた形態のリアクター(改質器)2
0が挙げられる。図示されるように、この水素分離材3
0の一端はチャンバー22外に伸びる透過ガス送出管2
5に接続されており、他端はガス不透性のシール材27
によって塞がれている。また、水素分離材30の周囲に
は水素生成反応(改質)用触媒が充填されて成る反応部
即ち水素生成部24が形成されている。この水素生成部
24の両端部には触媒保持のためにネット23が配置さ
れている。一方、チャンバー22には水素原子を含む原
料ガスを供給するガス供給管21と、チャンバー22内
のガス(即ち水素生成部24を通過してきたガス)を排
出するガス排出管26とが接続されている。また、図示
していないが、チャンバー22の周囲にヒーターおよび
ウォータージャケット又は断熱材等を設けることによ
り、チャンバー22内の温度を例えば室温〜1000℃
の範囲内でコントロールすることができる。
【0049】このような構成の改質器20では、ガス供
給管21から供給された原料ガス(例えば水蒸気を含む
メタン)が水素生成部24に導入され、そこに充填され
ている触媒の作用即ち水蒸気改質反応(CH4+H2O=
CO+3H2、CO+H2O=CO2+H2)によって水素
を生成することができる。そして、生成した水素の一部
を、水素分離材30に形成されている水素分離膜28
A,28Bを介して水素生成部24側から管内部のガス
通路29側に分離し、当該ガス通路29から透過ガス送
出管25を通って改質器20の外部に排出される。一
方、水素生成部24に導入されたガスであって水素分離
膜28A,28Bを透過しなかったもの(排ガス)は、
チャンバー22内からガス排出管26を介して改質器2
0の外部に排出される。なお、本実施形態に係る改質器
20では、水素分離材30の一端が上記シール材27に
よって塞がれている結果、原料ガスが水素分離材30の
ガス通路29に直接混入することがない。以上の構成の
改質器20によると、改質反応に伴って水素分離膜28
A,28Bを通して反応生成物である水素が分離される
ことによって水素生成反応側に平衡がシフトするため、
メタン等の原料ガスから水素への転化反応が促進され
る。このとき、上述のセラミック堆積処理を施すことに
よって当該水素分離膜に水素透過率及び水素選択透過性
が相互に異なる高ガス(水素)透過性部分28Aと高ガ
ス(水素)選択性部分28Bを形成しておくとともに、
図示するように、高ガス(水素)透過性部分28Aを水
素生成部24内におけるガス上流側に配置し、高ガス
(水素)選択性部分28Bをガス下流側に配置する。こ
のことによって、この反応系全体において水素生成反応
側に平衡がより効果的にシフトするため、メタン等の原
料ガスから水素への転化反応をさらに促進することが可
能となる。なお、図8に示す改質器20では改質用触媒
を水素生成部24内に充填しているが、これに代えて例
えば管状水素分離材30の外表面に膜状に触媒層を形成
(典型的にはコーティング)した改質器(リアクター)
であってもよい。
【0050】また、本発明のリアクターとして好適なも
のは、図8にも示したような、ガス分離材(モジュー
ル)に接する位置に、ガス分離膜を介さずに反応部側か
らガス通路側へガスがリークすることを防止するための
シール材が取り付けられているリアクターである。この
ようなガスリークは、ガス生成反応(改質反応等)の平
衡状態を反応物質生成側にシフトすることを阻み、反応
効率を低下させる虞があるからである。本発明によって
提供される好ましいシール材は、600℃又はそれ以上
の高温に長時間曝された場合にも当該シール材自体が顕
著に破壊・化学変化しない耐熱・耐化学性能を有するも
のである。また、シール対象物(例えば上述の管状水素
分離材)がリアクター稼働時の高温状態即ち加熱状態又
は停止時の冷却状態となったことに起因して体積及び/
又は形状変化(膨張、収縮変形)を起こした場合にも、
そのような体積及び/又は形状変化に追随してシール状
態を保持し得る柔軟性(クッション性)と高い圧縮・復
元性能を有するものが特に好ましい。而して、これらの
要求を好適に満たし得る材料として密度(嵩密度)が
0.6〜1.9g/cm3(特に好ましくは0.8〜
1.2g/cm3)の膨張黒鉛またはそれと同等の性状
を有する耐熱性材料が挙げられる。以下、かかる材料に
ついて詳細に説明する。
【0051】天然黒鉛は炭素六員環平面が規則的に平行
状態で積層した構造を持つカーボンであるところ、膨張
黒鉛は、かかる天然黒鉛を濃硫酸、硝酸などの酸化剤に
より酸化処理することによって当該積層構造の層間距離
を100〜300倍程度膨張させたものである。而し
て、かかる膨張黒鉛を上記密度範囲となるように負荷・
圧縮することによって本発明に係るシール材に好適な膨
張黒鉛材料を得ることができる。かかる膨張黒鉛材料は
黒鉛本来の高い耐熱性に加えて、シール性能に優れる稠
密構造を有し、且つ、柔軟性並びに高い圧縮性及び弾性
復元力を備えている。かかる膨張黒鉛またはそれと同等
の性質を有する耐熱性材料(典型的には膨張黒鉛と同等
の熱膨張係数、酸化開始温度、圧縮率、復元率及び柔軟
性(クッション性)を有する炭素質その他の無機材料)
として好ましいものは、圧縮率(JIS−R3453に
基づく)が10〜90%(特に好ましくは45〜55
%)であり、及び/又は、復元率(JIS−R3453
に基づく)が3〜70%(特に好ましくは10〜15
%)であり、及び/又は、酸化開始温度(空気中での加
熱によって重量が1%減少したときの温度)が400℃
以上(特に好ましくは500℃以上)であることを特徴
とする膨張黒鉛又はその同等物である。また、窒素ガス
のような不活性(非酸化性)雰囲気下において1100
℃又はそれ以上の温度(好ましくは1500℃以上)ま
で所望するシール性能を維持し得る耐熱性を有するもの
が好適である。かかる性状の膨張黒鉛等から形成された
シール材によると、リアクター高温稼働時においても特
に優れたシール状態の保持を実現することができる。
【0052】なお、本発明に係るシール材の形状やタイ
プは、本発明のリアクターの形状やガス分離材(モジュ
ール)の形状に対応して変動するものであり、特に限定
はない。例えば、円筒形の管状ガス分離モジュールを使
用する場合には、当該ガス分離モジュールの外壁に接す
る(即ち密着する)形状のシール材、典型的にはリング
形状のシール材が好適に使用され得る。また、単板(モ
ノリス)形状のガス分離モジュールを使用する場合に
は、当該ガス分離モジュールの外縁部に接する形状のシ
ール材、典型的にはシート形状のシール材が好適に使用
され得る。特に制限するものではないが、かかる形状の
シール材は、密度が0.6〜1.9g/cm3(特に好
ましくは0.8〜1.2g/cm3)程度となるように
調製された粉状膨張黒鉛を所定形状の型に充填してプレ
ス成形したり或いはロール成形、レーザー加工すること
によって得ることができる。すなわち、かかる加圧成形
によって当該黒鉛粉体(粒子)相互が自己接着して一体
化し、結果、所望する形状(例えばOリング様のパッキ
ン形状)に成形され得る。あるいは、上記密度のシート
(薄膜)状膨張黒鉛を積層・成形したものであってもよ
い。また、構築するリアクターの形状・タイプや使用条
件によって適宜異なり得るが、シール性能が維持し得る
限りにおいて、膨張黒鉛又はその同等物に関する他の物
理的特性(熱伝導度、電気比抵抗、引っ張り強さ、熱膨
張係数(但し低いものが好ましい)等)に特に制限はな
い。
【0053】
【実施例】 本発明を以下の実施例によりさらに詳細に
説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。
【0054】<実施例1:ポリシラザン膜を有するガス
(水素)分離材の製造>90重量部の窒化珪素粉末と、
5重量部のアルミナ粉末と、5重量部のイットリア粉末
と、60重量部の水をアルミナ製ポットに投入し、直径
30mmの玉石を使用して24時間混合することによっ
てスラリーを調製した。次いで、このスラリーに15重
量部のワックス系有機バインダーと、2重量部のワック
スエマルジョンを添加して16時間混合し、その後スプ
レードライにより顆粒体を作製した。次いで、得られた
顆粒体をゴム製の型に充填した。すなわち、振動粉体充
填装置を利用して型を適宜振動させつつ上記顆粒体を型
内に密に充填した。その後、当該顆粒体を充填した型を
CIP(冷間静水圧プレスによる)成形し、管形状(外
径:10mm、内径:7mm、長さ:250mm)に生
加工した。そして、当該生加工チューブを脱脂後、14
00℃(最終焼成温度)で焼成し、管(チューブ)形状
の多孔質窒化珪素支持体を得た。得られた窒化珪素支持
体の孔径(平均孔径)および気孔率は、水銀圧入法によ
って測定した結果、それぞれ0.16μmおよび約50
%であった。また、800℃における3点曲げ強度は約
70MPa以上であった。従って、かかる管(チュー
ブ)形状の窒化珪素支持体は、本実施例に係るガス分離
材を構成する支持体として充分な機械的強度を有する。
なお、かかる支持体の嵩密度は1.77g/cmであ
り、熱的強度の指標となる線膨張係数は25〜800℃
の範囲でおよそ3.4×10−6/Kであった。また、
かかる支持体は、エタノール、トルエン及びキシレンに
対する接触角が90度未満であり、それらの透過係数は
室温条件下で1×10-11kg/m・s・Paを上回っ
た。また、かかる窒化珪素支持体はα−Siの結
晶構造を有しており、組織は熱的に安定である。しか
も、孔径分布(孔径の変動幅)がたいへん狭く、ガス分
離材(例えば高温型水素分離モジュールとして利用され
得るもの)を構築するための多孔質支持体として好適で
ある。
【0055】次に、得られた窒化珪素支持体を90〜1
20℃に加熱した液状充填材(パラフィン:120P
(JIS K−2235)♯48−50:関東化学
(株)製品)中に浸漬し、当該支持体の細孔内部に充填
材たるパラフィンを充填した。充填後、当該支持体を液
状充填材中から引き上げた。その後、支持体を室温まで
冷却することによって細孔中の充填材を固化した。この
処理によって、図2に示すように、支持体全体の細孔を
充填材で埋める(塞ぐ)ことができた。次いで、充填材
(パラフィン)の部分的除去処理を行った。すなわち、
固化した充填材が細孔内に充填されている支持体をアセ
トン中に15秒浸漬し(1日間でもよい)、支持体の表
層部付近に保持されていた充填材を溶解・除去した。
【0056】次に、管状窒化珪素支持体の外壁側表面部
(即ちチューブ円柱面の外周壁面)にガス分離膜として
ポリシラザン膜を製膜した。すなわち、ポリシラザン粉
末をトルエン(キシレンでもよい)に溶解し、超音波攪
拌処理を約1時間行い、固形分濃度が10wt%であるポ
リシラザン溶液(コーティング液)を調製した。次い
で、上記窒化珪素支持体をディップコーティング法に基
づきコーティング液に浸漬(ディップ)した。なお、こ
のディップ処理の際には窒化珪素支持体の外周壁面にの
みコーティング液が塗布(付着)されるように、当該窒
化珪素支持体の両端開放部分を合成樹脂フィルムでラッ
プした。ディップ処理後、一定の速度で窒化珪素支持体
をコーティング液から引き上げ、窒素雰囲気中、室温で
乾燥した。なお、この乾燥後に真空排気中で190℃に
保持することによって、支持体内に残留する充填材(パ
ラフィン)をほぼ完全に除去することができるが本実施
例では特に行っていない。
【0057】次に、上記ディップ処理によってポリシラ
ザン被膜が支持体の表面部(ここでは外周壁面)に形成
されている窒化珪素支持体を抵抗加熱式真空・加圧焼結
炉(ガス流通型)に入れ、大気圧・窒素雰囲気中、80
0℃で焼成した。この焼成によって、窒化珪素支持体の
外周壁面にポリシラザン膜が形成された。また、この焼
成過程において細孔内の充填材は気化し、細孔内から除
去されていた。このことは、多孔質支持体の重量変化か
らも明らかである。すなわち、上記充填材充填後に測定
した重量及びコーティング液塗布・乾燥後に測定した重
量は支持体形成時の測定重量(初期重量)よりも著しく
増大した(データを示さず)のであるが、上記熱処理後
の重量はほぼ初期重量まで減少していた。本実施例で
は、かかるディップ処理から焼成までのプロセスを5回
繰返し行い、図7に示すような位置に境界面が生じる状
態でポリシラザン膜が支持体上に形成されたガス分離材
(外径:約10mm、内径:約7mm、長さ:約250
mm、膜面積:約8100mm)を得た。
【0058】次に、得られたガス分離材のポリシラザン
膜に高ガス透過性部分と高ガス(水素)選択性部分を形
成した。具体的には、管状ガス分離材の長軸方向に沿っ
てポリシラザン膜を前端部と後端部の二つに区分し、そ
の一方を高ガス透過性部分(膜面積:約4000m
)とし、他方の部分を高ガス(水素)選択性部分
(膜面積:約4000mm)とする。高ガス透過性部
分は上記製膜されたポリシラザン膜(ベース分離膜)の
みから成る部分とし、高ガス選択性部分に対しては、さ
らに以下のようにセラミック堆積処理を行った。すなわ
ち、高ガス透過性部分に相当する部分及び両端開放部分
を合成樹脂フィルムでラップするとともに、上記コーテ
ィング液を使用して高ガス選択性部分に相当する部分に
対して上記と同様のディップ処理を施した。乾燥後、同
様の焼成を行った。本実施例のセラミック堆積処理で
は、かかるディップ処理から焼成までのプロセスを5回
繰返し行い、当該部分のベース分離膜上にポリシラザン
構造をさらに積層した。以上の処理によって本実施例に
係る管状ガス分離材を製造した。
【0059】<参考例1:ポリシラザン膜を有するガス
分離材の製造>実施例1で使用したものと同じ形状の管
状窒化珪素支持体を用い、実施例1と同様の材料・条件
でディップ処理から焼成までのプロセスを5回繰返し行
い、当該支持体の外周壁面のほぼ全域に亘って上記ベー
ス分離膜即ち実施例1に係る高ガス透過性部分と性状が
同等のポリシラザン膜が形成された管状ガス分離材(外
径:約10mm、内径:約7mm、長さ:約250m
m、膜面積:約8100mm)を製造した。
【0060】<参考例2:ポリシラザン膜を有するガス
分離材の製造>実施例1で使用したものと同じ形状の管
状窒化珪素支持体を用い、実施例1と同様の材料・条件
でディップ処理から焼成までのプロセスを10回繰返し
行った。これにより、当該支持体の外周壁面のほぼ全域
に亘って比較的ガス(水素)選択透過性が高い即ち実施
例1に係る高ガス選択性部分と性状が同等のポリシラザ
ン膜が形成された管状ガス分離材(外径:約10mm、
内径:約7mm、長さ:約250mm、膜面積:約81
00mm)を製造した。
【0061】<参考例3:アルミナ膜を有するガス分離
材の製造>次に、ポリシラザン膜に代えてアルミナ膜を
備えたガス分離材を製造した。すなわち、3000重量
部のアルミナ粉末(50%粒子径約3μm)に100重
量部の有機バインダーを添加して混合した。この混合物
に60重量部のワックスエマルジョンと60重量部のポ
リエーテル系合成油(潤滑剤)と420重量部のイオン
交換水を添加して混練し、押出し成形用坏土を得た。次
いで、その坏土を押出成形機により押出し成形した後、
マイクロ波で乾燥し、空気雰囲気で焼成して多孔質アル
ミナの管状支持体を得た。その形状は上記実施例で使用
した窒化珪素支持体とほぼ同じである。次いで得られた
多孔質アルミナ支持体の表面を緻密化した。すなわち、
1200重量部の高純度α−アルミナ粒子(平均粒子径
約0.2μm)に825重量部の蒸留水を加え、攪拌・
混合しながら硝酸を添加してpH調整した。そして、超
音波ホモジナイザーによる撹拌後、ボールミルで混合し
た。その混合物に、140重量部の有機バインダーに6
60重量部の蒸留水を加えて加熱スターラーで攪拌・混
合した溶液と、72重量部の可塑剤とを添加した。その
後、当該調製したスラリーに約1.4規定の硝酸を添加
してpH調整し、ボールミルで混合して製膜用スラリー
を得た。次に、その製膜用スラリーを真空脱泡(泡抜
き)した。その後、かかるスラリー中に、予め外表面研
磨した上記多孔質支持体を30秒間浸漬した。これによ
り、外表面に緻密層を形成した支持体を、次いで、室温
大気中で乾燥し、空気雰囲気で焼成(1030℃)し
た。この一連の処理によって、α−アルミナ層が外表面
に形成された管状支持体を得た。
【0062】次に、かかる管状支持体のα−アルミナ層
の表面及び細孔内に均質な緻密層を作製した。すなわ
ち、19重量部のγ−アルミナ微粒子(平均粒子径数十
nm)に1960重量部の蒸留水を加え、それらを室温
においてスターラーで2日間攪拌・混合した。その後、
さらに超音波ホモジナイザーで撹拌して製膜用ゾルを調
製した。その後、その製膜用ゾルに真空脱泡を施した。
次いで、その製膜用ゾル中に、上記多孔質支持体を浸漬
した。それを室温大気中で乾燥し、空気雰囲気で焼成
(900℃)することによって、当該支持体の外表面の
第1層(α−アルミナ層)の表面及び細孔内に、均質な
緻密層である第2層(γ−アルミナ層)を形成した。そ
の後、当該得られた多孔管状支持体上に更に均質な緻密
層(膜)を形成するため、上記製膜用ゾルの濃度を下げ
た低濃度製膜ゾルを用いて同様に処理することによっ
て、第2層の外面に更に均質且つ緻密なγ−アルミナ層
が形成されたアルミナ製ガス分離材(外径:10mm、
内径:7mm、長さ:250mm、膜面積7900mm
)を作製した。一般的な細孔分布測定法(ここでは水
銀圧入法)によると、本参考例に係るガス分離材の多孔
質支持体部分の平均細孔径は約8μmであり、気孔率は
約39%であった。また、本参考例に係るガス分離材の
膜部断面及び最表面をSEM観察した結果、上記第1層
の膜厚は概ね40μmであった。また、第2層及びそれ
以降の層を合わせたものの膜厚は第1層への含浸部分を
含めて概ね10μm程度であった。また、かかるSEM
観察の結果から、少なくともサブミクロンオーダーの表
面欠陥の発生は抑制されていることが確認された。ま
た、製膜評価の一指標としてバブルポイントの測定を行
ったところ、本作製プロセスでは、バブルポイント値は
4.0以上を示すことが確認された。
【0063】<実施例2:改質器の製造>次に、上記実
施例1及び各参考例で得られた各管状ガス分離材を水素
分離モジュールとして利用した改質器を製造した。図9
は、本実施例に係る改質器の主要部を模式的に表した説
明図である。この図に示すように、本実施例に係る改質
器32は、大まかにいって、筒状のステンレス製チャン
バー33と、ガス分離膜34を備えた多孔質支持体35
を本体とする水素分離モジュール36と、改質触媒38
とから構成されている。チャンバー33には、別途、ガ
ス供給管33Aと、ガス排出管33Bとが設けられてい
る。また、チャンバー33の周囲にはヒーター82(図
11参照)および図示しないウォータージャケット(断
熱材)が設けられており、チャンバー33内部の温度を
室温〜1200℃程度の範囲でコントロールすることが
できる。また、かかるチャンバー33の内部には、上記
水素分離モジュール36が配置されており、その周囲の
空間部(反応部即ち水素生成部に相当する部位)39に
は、改質触媒38を充填することができる。なお、かか
る水素分離モジュール36として実施例1で得たガス分
離材を用いる場合には、高ガス透過性部分34Aがチャ
ンバー内ガス流動における上流側即ちガス供給管33A
に近いところ且つ高ガス選択性部分34Bがチャンバー
内ガス流動における下流側即ちガス排出管33Bに近い
ところに配置されるように取り付けている。
【0064】一方、図9に示すように、水素分離モジュ
ール36の両端にはジョイント管40,40Aがそれぞ
れ取り付けられている。このジョイント管40,40A
はいくつかの部材から構成されている。すなわち、図1
0に示すように、かかるジョイント管40(40Aにつ
いても同じ)は、ステンレス製の管状凸型ユニオン(フ
ランジ)42と、それに対応する管状凹型ユニオン(フ
ランジ)43と、それに付設される金属製の第1リング
部材44及び第2リング部材45ならびにシール材46
とから構成されている。なお、凸型ユニオン42の根幹
部(フラットな円盤状フランジ)中央には、水素分離モ
ジュール36を貫通し得るサイズの穴47が形成されて
いる。他方、凹型ユニオン43の根幹部(フラットな円
盤状フランジ)中央には、水素分離モジュール36の中
空部(以下「ガス通路37」という。)に通じる透過ガ
ス排出口41が形成されている。なお、反対側のジョイ
ント管40Aの凹型ユニオンの根幹部中央には、ガス通
路37に通じる同形状のガス導入口41A(図9参照)
が形成されている。また、シール材46はリング状に形
成された膨張黒鉛から成る部材であり、その嵩密度は
1.0g/cm3、JIS−R3453に基づく圧縮率
は約50%であり、復元率は約10%であった。
【0065】而して、図10に示すように、管状水素分
離モジュール36の一端を管状凸型ユニオン42の穴4
7に差し込む。また、管状凸型ユニオン42の反対側
(即ち突出部42Aの形成されている側)から上記第1
リング部材44、シール材46、第2リング部材45の
順に、上記穴47を貫通してきた管状水素分離モジュー
ル36に嵌め入れる。このとき、図示されているよう
に、リング形状シール材46の内径は管状水素分離モジ
ュール36の外径より若干大きく形成されている。この
ことと膨張黒鉛特有の柔軟性により、当該モジュール3
6の一端にリング形状シール材46を嵌め入れた際に
は、その内壁面をモジュール36外周壁面に密着させる
ことができる。
【0066】次いで、上記凹型ユニオン43を凸型ユニ
オン42に締め付けることによってジョイント管40の
取付けが完了する。すなわち、図10に示すように、凹
型ユニオン43の突出部43Aの内壁面及び凸型ユニオ
ン42の突出部42Aの外壁面には、それぞれ、相互に
対応する雌ねじ及び雄ねじが形成されている。さらに、
凸型ユニオン42の突出部42Aは、先端部から根幹部
に向けて直径が漸増するように形成されている。かかる
構成の結果、凹型ユニオン43を凸型ユニオン42と嵌
め合わせる(螺合する)ことによって、シール材46を
水素分離モジュール36の外周壁面及び凸型ユニオン4
2の突出部42A内壁面の双方に強く密着させることが
できる。すなわち、凹型ユニオン43を凸型ユニオン4
2の根元方向に螺合していくと、先端部から根幹部に向
けて直径が漸増している凸型ユニオン42の突出部42
Aが縮小されるに従い、上記シール材46を水素分離モ
ジュール36と凸型ユニオン42に密着させることが実
現される。このとき、図示されているように、本実施例
に係るジョイント管40では、所定のレベルまで両ユニ
オン42,43の螺合がなされた時点で、第2リング部
材45の一部45Aが両ユニオン42,43の間に挟ま
れてストッパーの役割を果たす。このことによって、そ
れ以上の螺合(ねじ締め)が制止され、シール材46が
必要以上に圧迫されることを防止する。従って、本実施
例に係るジョイント管40,40Aによると、上記ねじ
締めが制止される時点まで両ユニオン42,43を螺合
することによって常に最適な圧力(面圧)でシール材4
6を両部材36,42に密着させることができる。他
方、改質器32の高温稼働時における水素分離モジュー
ル36とジョイント管40,40A(即ち金属製ユニオ
ン42,43)との間の体積変化量のギャップに対応さ
せるべく、両ユニオン42,43と水素分離モジュール
36は接触させていない。
【0067】以上のようにしてジョイント管40,40
Aを取り付けた結果、水素分離モジュール36の外部か
ら水素分離膜34及び支持体35を透過してガス通路3
7に送出された水素リッチなガスは、ジョイント管40
の透過ガス排出口41を介して外部に排出される。この
とき、図示される位置にシール材46を取り付けている
ことによって、水素生成部39(図9参照)のガスがジ
ョイント管40(凸型ユニオン42)と水素分離モジュ
ール36との隙間(即ち凸型ユニオン42の穴47)を
介してリークするのを防止することができる。さらに、
かかるシール材46が上記性状の膨張黒鉛で構成されて
いる結果、600℃以上の高温稼働時において、ジョイ
ント管40(凸型ユニオン42)と水素分離モジュール
36との隙間サイズが線膨張係数が異なる二材料間の温
度変化に伴い多少変動した場合であっても、かかるシー
ル材46によってシール性能を維持することができる。
なお、ジョイント管40,40Aの一部とチャンバー3
3の一部とは相互に溶接されており、チャンバー33内
の気密状態は確保される。
【0068】<試験例1:水素分離性能及びシール性能
評価試験>次に、上記のようにして構築した水素分離モ
ジュール36を備えた改質器32(図9)を用いて、水
素分離性能とシール性能を評価した。先ず、図11に示
すような水素分離モジュール(水素分離膜)を備えた膜
型ガス分離システム(評価システム)を構築した。すな
わち、改質器32のガス供給管33Aに、メタン供給装
置52、水素供給装置54、窒素供給装置56をガスク
ロマトグラフ78、80等を介して接続した。メタン供
給装置52は、圧力バルブを備えたメタン供給ボンベ5
9、圧力計58、流量計64、ニードルバルブ70等か
ら構成されている。同様に、水素供給装置54は、圧力
バルブを備えた水素供給ボンベ61、圧力計60、流量
計66、ニードルバルブ72等から構成されている。ま
た、窒素供給装置56は、圧力バルブを備えた窒素供給
ボンベ63、圧力計62、流量計68、ニードルバルブ
74等から構成されている。また、図示されているよう
に、メタン供給装置52と水素供給装置54の流路はス
リーウェイコック76で連結されている。さらに、改質
器32のガス供給管33Aには、別途、水蒸気供給装置
100が接続されている。かかる装置は図示しない水蒸
気供給源とマイクロフィーダー(水蒸気供給ポンプ)1
02とを主要構成要素としている。また、水素供給装置
54等と同様の機材によって構成されたスウィープガス
(ここではヘリウム)供給装置90を別途装備し、スウ
ィープガス供給管をガス導入口41Aに接続している。
このことによって、当該スウィープガス供給装置90か
らガス導入口41Aを介してスウィープガス(He)を
水素分離モジュール32のガス通路37に供給し、当該
ガス通路に所定のガス流を生じさせることができる。
【0069】他方、改質器32のガス排出管33B側に
は、圧力計112、ガスクロマトグラフ114、トラッ
プ116、セッケン膜流量計118等を接続した。同様
に、改質器1の透過ガス排出口41にも、圧力計10
4、ガスクロマトグラフ106、トラップ108、セッ
ケン膜流量計110等を接続した。このようなシステム
を構築することで、後述するような詳細なガス分析(改
質器への供給側及び排出側の双方)を行うことができ
る。ガス分析では、キャリアガス(スウィープガス)は
Heを使用し、分析対象ガスはCH4、H2、CO、CO
2、O2、N2とした。なお、本実施例に係る評価試験で
は、改質触媒をチャンバー内に充填せずに行った。
【0070】而して、上述したガス分離システムを用い
て水素分離性能とシール性能の評価を純ガス透過試験に
基づいて行った。この試験では、水素供給装置54およ
び窒素供給装置56から所定の流量で水素及び窒素をチ
ャンバー33内に供給した。このとき、ガス分離膜34
前後の差圧が2.0×104Pa(0.2atm)とな
るようにした。なお、かかる評価試験は、先ず室温で実
施し、所定時間後、チャンバー33内の温度を700℃
に上げて同様に実施した。その後チャンバー33内の温
度を再び室温に戻して同様に実施した。このように温度
を変更させつつ連続的に試験することで、本実施例に係
る改質器32のシール性能および高温時における水素分
離特性を評価した。
【0071】具体的には、適宜ヒーター82を作動させ
てチャンバー33内の温度調節(室温〜700℃〜室
温)を行いつつ、上記差圧を生じさせた状態で水素及び
窒素をそれぞれチャンバー33内に供給した。而して、
セッケン膜流量計108によって透過側(即ち透過ガス
排出口41と接続するガス排出側流路)の流速を測定し
つつ、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ106
によって対象ガス組成を分析した。なお、水素および窒
素それぞれのガス透過率は次の式「Q=A/((Pr−
Pp)・S・t)」から算出した。ここでQはガス透過
率(モル/m2・s・Pa)、Aは透過量(mol)、Prは供
給側即ちチャンバー内部空間側の圧力(Pa)、Ppは
透過側即ちガス通路側の圧力(Pa)、Sは断面積(m
)、tは時間(秒:s)を表す。また、水素/窒素透
過係数比は、水素透過率と窒素透過率との比率すなわち
式「α=QH2/QN2」から算出できる。ここでαは
水素/窒素透過係数比(透過率比)、QH2は水素透過
率、QN2は窒素透過率を表す。かかる試験の結果とし
て、各水素分離モジュール(実施例1、参考例1〜3)
を使用したときの水素透過率および水素/窒素透過係数
比、ならびにシール性能を表1に示す。なお、実施例1
の水素分離モジュールについての水素透過率および水素
/窒素透過係数比は、高ガス透過性部分(表中の上段の
値)については参考例1の試験結果に基づく推定値であ
り、高ガス選択性部分(表中の下段の値)については参
考例2の試験結果に基づく推定値である。
【0072】
【表1】
【0073】参考例1に係るモジュールでの試験結果と
参考例2に係るモジュールでの試験結果との対比から明
らかなように、上記ポリシラザン溶液を用いて行ったデ
ィップ処理及び焼成処理の繰返し回数の違いにより、窒
化珪素支持体上にガス透過率及びガス選択透過性が異な
るポリシラザン膜が形成された。このことから、実施例
1に係る水素分離モジュール(水素分離材)において
は、長軸方向に沿ってガス透過率及びガス選択透過性が
相互に異なる少なくとも二つの部分(即ち図9に示す高
ガス透過性部分34Aと高ガス選択性部分34B)が形
成されていることが確かめられた。
【0074】また、具体的なデータは示していないが、
本評価試験ではいずれのモジュールを使用した場合で
も、温度条件の推移(室温〜700℃)に関わらず、水
素/窒素透過係数比に顕著な差異は認められなかった。
このことから、ジョイント管40と水素分離モジュール
36との隙間から実質的なガスのリークは起きていない
ことが確認された(図10参照)。また、ガス分離膜3
4やシール材46が加熱によって劣化していないことも
確認された。すなわち、上述したシール材46は700
℃のような高温条件においても良好なシール性能(表中
の○)を有していた。この結果は、チャンバー33内に
おけるシール状態をかかる高温条件下でも維持し得るこ
とを裏付ける結果である。なお、実施例1や参考例1,
2のガス分離材の支持体は圧縮強度に優れる窒化珪素製
である。このことによって、それから構成される水素分
離モジュールの破壊を未然に防止しつつシール材46に
対する締め付け力を必然的に大きくすることができる。
すなわち、比較的強く圧縮変形させることによって膨張
黒鉛製シール材46自体の気密性及び弾性復元量の双方
を向上させ、結果、高温域でのシール性能をより向上さ
せることができる。
【0075】また、700℃での水素/窒素透過係数比
の値から鑑みて、各実施例及び参考例に係るガス分離膜
では、かかる高温条件下でもクヌッセン分離程度の水素
分離性能を有することが確認された。
【0076】<試験例2:改質試験>次に、所定の改質
触媒を水素生成部に充填した改質器を用いて高温域にお
ける改質効率に関して詳細なる評価を行った。すなわ
ち、上述した図9に模式的に示すように、所定のサイズ
(内部容積:約1900ml)のチャンバー33内に、
水素分離モジュール36を装着した改質器32におい
て、水素分離モジュール36の周囲(水素生成部39)
に粒状の多孔質アルミナ(粒径:0.5〜3mm)にニ
ッケルを担持して成る触媒粒子(ニッケル系改質触媒)
38を約400g充填した。なお、かかる触媒38とし
ては、改質反応に使用していない新しいものを用いた。
【0077】而して、かかる構成の改質器32を用い
て、改質試験を行った。すなわち、かかる改質器32を
組み込んだ上述の図11に示すガス分離評価システム
(換言すればガス改質システム)を使用した。このガス
分離システム(ガス改質システム)によると、ガス供給
管33Aから非酸化条件下で供給された原料ガス(ここ
では窒素とともに水蒸気を含むメタンが供給される。)
がチャンバー33内の水素生成部39に導入され、そこ
に充填されている改質触媒38の作用即ち水蒸気改質反
応(CH4+H2O=CO+3H 2、CO+H2O=CO2
+H2)によって水素が生成する。生成した水素の一部
は、管状水素分離モジュール36のガス(水素)分離膜
34及び多孔質支持体35を透過して水素生成部39側
から管内部のガス通路37側に分離され、当該ガス通路
37から透過ガス排出口41を通ってチャンバー33外
部に送出される。一方、水素生成部39に導入されたガ
スであってガス分離膜34を透過しなかったものは、チ
ャンバー33内からガス排出管33Bを介して外部に排
出される。なお、ジョイント管40,40Aに備えられ
ている上述の膨脹黒鉛製シール材46によって水素分離
モジュール36とジョイント管40,40Aとの隙間が
シールされている結果、原料ガスがガス分離膜34を経
ずに当該隙間からガス通路37に漏出(リーク)するこ
とがない。このため、改質反応に伴ってガス分離膜34
を通して反応生成物である水素が分離されることによ
り、水素生成部39における水素濃度が減少する。これ
により、反応物質側に平衡がシフトし、メタンから水素
への転化反応が促進される。すなわち、本発明に係る改
質器では、400℃以上、特に600℃以上(更には7
00℃又は800℃以上)の高温域において水素透過性
能及び分離性能に優れる高温対応タイプのポリシラザン
膜と上記シール材との併用によって、かかる高温域にお
ける原料ガス(ここではメタン)から水素への高い転化
率を安定して実現することができる。さらにポリシラザ
ン膜に形成された高ガス透過性部分及び高ガス選択性部
分の配列方向とガス流動方向とを適合させている結果、
反応物質側への平衡シフトを改質反応系全体からみてよ
り効果的に行うことができる。
【0078】かかるガス改質システムによるガス転化率
を次のようにして調べた。すなわち、改質反応温度条件
として、600℃、700℃及び800℃の3通りを設
定した。先ず、窒素を微量パージしつつ改質器32のチ
ャンバー33内を上記いずれかの設定温度まで昇温し
た。続いて、メタン、水蒸気及び窒素を各供給装置5
2,100,56(室温で稼動)からガス供給管33A
を介してチャンバー33内に導入しつつ水素還元処理を
約1時間行った。このとき、チャンバー33内に供給す
る各ガスの供給量は、次のとおりとした。すなわち、設
定温度が600℃のときは、メタン、水蒸気及び窒素の
供給量(ml/min)をそれぞれ9.0、0.03及び1
0とした。また、設定温度が700℃のときは、メタ
ン、水蒸気及び窒素の供給量をそれぞれ9.5、0.0
3及び10とした。さらに、設定温度が800℃のとき
は、メタン、水蒸気及び窒素の供給量をそれぞれ9.
5、0.03及び14とした。なお、スチーム比(H2O
/CH4)は、モル比で約5とした。また、改質器(チャ
ンバー内)の圧力は2.0×10Pa(2.0at
m)以内とした。さらにこの処理の間、スウィープガス
(He)を所定の流量でガス導入口41Aからガス通路
37に導入した。
【0079】而して、かかる処理によって水素生成部3
9において水蒸気改質反応が行われるところ、本例では
30分間隔で供給ガス(即ちチャンバー33のガス供給
管33Aに供給される前のもの)および改質ガス(即ち
チャンバー33のガス排出管33Bから排出されたガス
及び透過ガス排出口41から排出されたガス)を計2回
サンプリングし、GC(CHROMPAVK製:Micro-GC CP200
2)を用いて分析(CH 4、H2、CO、O2、N2の分析
ではカラム温度100℃で分析時間2分;CO2の分析
ではカラム温度80℃で分析時間2分)を行った。GC
での測定結果に基づいて原料ガス(メタン)から水素へ
の転化率(%)を算出した。
【0080】而して、1時間の水素還元処理後、透過側
ガス流(即ちスウィープガス流)を封止し、上記差圧を
なくした。これにより、水素生成部39からガス分離膜
34を介する実質的なガス透過を遮断した。この状態の
まま、原料メタン、水蒸気及び窒素を上記供給量でチャ
ンバー33内に供給し続けた。そして、透過側ガス流の
封止から1.5時間経過後および更に0.5時間経過後
の2回(即ち30分間隔)、供給ガスおよび改質ガスを
サンプリングし、GCを用いて上記と同様に分析を行
い、転化率(%)及び水素濃度(%)を算出した。その
後、上記差圧を設けた状態で透過側ガス流(即ちスウィ
ープガス流)を再開した。これにより、水素生成部39
からガス分離膜34を介する実質的なガス透過が再開さ
れた。この状態のまま、原料メタン、水蒸気及び窒素を
上記供給量でチャンバー33内に供給し続けた。そし
て、透過側ガス流の再開から1.5時間経過後および更
に0.5時間経過後の2回(即ち30分間隔)、供給ガ
スおよび改質ガスをサンプリングし、GCを用いて同様
に分析を行い、転化率(%)及び水素濃度(%)を算出
した。かかるサンプリング(各2回)および分析(計6
回)終了後、先ずメタンガスの供給を停止し、次いで水
蒸気の供給を停止した。
【0081】
【表2】
【0082】上記GCの分析に基づいて算出した転化率
(%)を使用した水素分離モジュール別及び温度条件別
に表2に示す。なお、この表における「膜透過側ガス流
・有り」のものは、上記透過側ガス流再開後に測定した
データに基づいている。表2から明らかなように、この
試験において、ポリシラザン膜をガス分離膜とする水素
分離モジュール(実施例1、参考例1、2)を備えた改
質器は、いずれの温度条件下においても、表中の「膜透
過側ガス流・無し」のもの即ち実施例及び各参考例に係
るガス分離材を実質的に使用しなかった場合(即ちガス
分離膜の無い従来型の改質器に相当する。)及びアルミ
ナ膜をガス分離膜とする水素分離モジュール(参考例
3)を備えた改質器よりも、高効率に原料ガス(C
4)の改質反応が行われた。このことから、ここで使
用した水素分離モジュールに形成されたポリシラザン膜
の高温域における高い水素透過性能・分離性能又はシー
ル性能の維持を実証したことになる。尚、反応に直接影
響してないN2ガスを省略し、改質ガスに関してH2、C
4、CO、CO2各々の組成を検証したところ、CO、
CO2組成に対するH2組成について理論反応式との整合
も確認された。また、本実施例において使用したニッケ
ル系改質触媒の好適温度は、操作条件にもよるが概ね8
20℃である。従って、上記ポリシラザン膜とかかる高
温型の改質触媒とを併用する改質器によると、優れた改
質反応および水素分離に伴う化学平衡シフトにより、6
00〜800℃(又は600〜1000℃)という高温
域で高効率に水素を製造することができる。なお、この
ことは「膜透過側ガス流・有り」のものは「膜透過側ガ
ス流・無し」のものよりも改質反応後のメタン残存量が
顕著に減少しており且つ改質ガス中の水素濃度は逆に顕
著に増大している(GC分析結果)ことからも確認され
ている。参考までに、改質温度800℃で参考例1に係
る水素分離モジュールを装備した改質器を使用した場合
の改質ガス組成と転化率ならびに同温度でガス分離膜の
無い従来型の改質器を使用した場合の改質ガス組成と転
化率を、表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】さらに、表2に示す結果から明らかなよう
に、実施例1に係るガス分離材から成るモジュールを備
えた改質器によると、いずれの温度条件下においても参
考例1に係るガス分離材から成るモジュールを備えた改
質器を使用した場合よりも高い転化率及び改質ガス中の
高水素濃度を実現することができる。また、参考例2に
係るガス分離材から成るモジュールを備えた改質器を使
用した場合よりも高いガス流量を維持することができ
る。すなわち、実施例1に係るガス分離材から成るモジ
ュールを備えた改質器では、水素生成部39で水素濃度
が比較的低い(原料ガス濃度が高い)上流側においては
高効率にガスを透過させることによって良好な化学平衡
シフトを実現している。それとは対照的に、水素生成部
39で水素濃度が比較的高くなった(原料ガス濃度が低
い)下流側においてはより選択的に水素を透過させるこ
とによって良好な化学平衡シフトを実現している。この
ことによって、実施例1に係るガス分離材を水素分離モ
ジュールとして備えた改質器によると、各参考例に係る
ガス分離材を水素分離モジュールとして備えた改質器と
比較して、より効率よく改質反応を行うことができる。
すなわち、改質反応系全体の効果的な化学平衡シフトに
よって、時間当りの水素生成比率を顕著に向上させるこ
とができる。
【0085】
【発明の効果】 上述の実施例及び試験例からも明らか
なように、本発明のガス分離材をガス分離モジュールと
して備えたリアクターによると、リアクター内で行われ
るガス生成反応(改質反応等)の平衡状態を反応物質の
生成が進む方向に反応系全体で効率よくシフトさせるこ
とができる。このため、所望するガス種の生成反応効率
(例えばメタン等の原料ガスからの水素転化効率)を促
進することができ、特にスケールアップに伴って、その
効果は著しい。また、本発明の一実施形態であるポリシ
ラザン膜を備えた本発明の膜型改質器は、特に高温域で
高い水素製造(転化)効率が要求される高温型燃料電池
(MCFC、SOFC等)用リフォーマーとして好適で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多孔質支持体の形状を模式的に示す断面図で
ある。
【図2】 多孔質支持体の細孔内に充填材が充填された
状態を模式的に示す断面図である。
【図3】 細孔内に充填材が充填された多孔質支持体の
表面部に膜形成材料が塗布された状態を模式的に示す断
面図である。
【図4】 本発明のガス分離材の一態様を模式的に示す
断面図である。
【図5】 充填材の部分除去処理が施された後の多孔質
支持体の状態を模式的に示す断面図である。
【図6】 充填材の部分除去処理が施された後の多孔質
支持体の表面部に膜形成材料が塗布された状態を模式的
に示す断面図である。
【図7】 本発明のガス分離材の一態様を模式的に示す
断面図である。
【図8】 本発明のガス分離材を用いて構築した水素生
成用リアクター(改質器)の一態様を模式的に示す断面
図である。
【図9】 一実施例に係る水素生成用リアクター(改質
器)の構造を模式的に示す断面図である。
【図10】 一実施例に係るシール材を有するジョイン
ト管部分を模式的に示す断面図である。
【図11】 一実施例に係る改質器を備えたガス分離シ
ステムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【符号の説明】
1,11,30 ガス分離材 2,35 多孔質支持体 20,32 リアクター(改質器) 22,33 チャンバー 24,39 反応部(水素生成部) 27,46 シール材 27A,34A ガス分離膜(高ガス透過性部分) 28B,34B ガス分離膜(高ガス選択性部分) 30 ガス分離材 34 ガス分離膜 36 水素分離モジュール 38 触媒 40,40A ジョイント管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 間瀬 茂和 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 鈴木 毅裕 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 安藤 泰典 愛知県名古屋市西区則武新町三丁目1番36 号 株式会社ノリタケカンパニーリミテド 内 (72)発明者 長屋 重夫 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番地 の1 中部電力株式会社電力技術研究所内 (72)発明者 古村 清司 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番地 の1 中部電力株式会社電力技術研究所内 Fターム(参考) 4D006 GA41 HA21 JA14A JA18A JA23A JA23C MA02 MA06 MA22 MA31 MB01 MB03 MB04 MC03X NA39 NA46 NA64 PA04 PB66 PC69 PC80

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質支持体と、その表面部に形成され
    たセラミック膜とを主体とするガス分離材であって、 そのセラミック膜には、ガス透過率及びガス選択透過性
    が相互に異なる少なくとも二つの部分があり、 該少なくとも二つの部分は、多孔質支持体表面部上で所
    定の方向に沿って部分毎に順次ガス透過率が低下し且つ
    ガス選択透過性が高まるようにして、その方向に配列さ
    れている、ガス分離材。
  2. 【請求項2】 前記少なくとも二つの部分は、前記所定
    の方向に沿って部分毎に順次水素透過率が低下し且つ水
    素/窒素透過係数比が高まるように形成されている、請
    求項1に記載のガス分離材。
  3. 【請求項3】 前記セラミック膜は、Si−N結合主体
    の繰返し構造を基本骨格とするセラミック焼成体により
    構成されている、請求項1又は2に記載のガス分離材。
  4. 【請求項4】 前記多孔質支持体は管状に形成されてお
    り、 前記セラミック膜は、その管状多孔質支持体の外壁面及
    び/又は内壁面に形成されており、 前記少なくとも二つの部分は、その管状多孔質支持体の
    長軸方向に沿って配列されている、請求項1〜3のいず
    れかに記載のガス分離材。
  5. 【請求項5】 多孔質支持体とその表面部に形成された
    セラミック膜とを主体とするガス分離材を製造する方法
    であって、 (a).その多孔質支持体の表面部に、所定のガス透過率及
    びガス選択透過性を有するセラミック膜を形成する工程
    と、 (b).その(a).工程で形成されたセラミック膜の一部分
    に、該セラミック膜と実質的に同じ組成のセラミック構
    造を堆積させて、その部分に隣接する該セラミック膜の
    他の部分よりもその部分のガス透過率を低下させ且つガ
    ス選択透過性を高める工程とを包含し、 該(b).工程を前記セラミック膜の一部分或いは多孔質支
    持体表面部上を所定の方向に沿って順次移動させつつ二
    以上の部分で行うことによって、ガス透過率及びガス選
    択透過性が相互に異なる少なくとも二つの部分を形成す
    る、ガス分離材の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記(a).工程においてSi−N結合主体
    の繰返し構造を基本骨格とするセラミック焼成膜を形成
    する、請求項5に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記多孔質支持体として管状に形成され
    たものを使用し、 その管状支持体の外壁面及び/又は内壁面にセラミック
    膜を形成し、 前記少なくとも二つの部分を、それらが前記管状支持体
    の長軸方向に沿って配列されるように形成する、請求項
    5又は6に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 外部から導入された原料ガスから所定の
    ガスを生成するリアクターであって、 その内部には、導入された原料ガスを利用して所定のガ
    スを生成する反応部と、その反応部に隣接するガス通路
    とが設けられており、 その反応部とガス通路の境界には、反応部側からガス通
    路側へ所定のガスを選択的に透過させるためのガス分離
    モジュールが備えられており、 そのガス分離モジュールは、多孔質支持体とその表面部
    に形成されたセラミック膜とを主体として構成されてお
    り、 そのセラミック膜には、ガス透過率及びガス選択透過性
    が相互に異なる少なくとも二つの部分があり、それら部
    分は多孔質支持体表面部上で所定の方向に沿って部分毎
    に順次ガス透過率が低下し且つガス選択透過性が高まる
    ようにその方向に沿って配列されており、 ここで、前記ガス分離モジュールは、反応部内における
    原料ガスの流動方向に沿ってその上流側から下流側へ順
    次ガス透過率が低下し且つガス選択透過性が高まるよう
    に、前記配列方向と原料ガスの流動方向とを適合させた
    状態で配置されている、リアクター。
  9. 【請求項9】 前記セラミック膜は、反応部側からガス
    通路側へ水素を透過させるための水素分離膜であり、 前記少なくとも二つの部分は、前記ガス流動方向に沿っ
    て部分毎に順次水素透過率が低下し且つ水素/窒素透過
    係数比が高まっていくように形成されている、請求項8
    に記載のリアクター。
  10. 【請求項10】 前記セラミック膜は、Si−N結合主
    体の繰返し構造を基本骨格とするセラミック焼成体によ
    り構成されている、請求項8又は9に記載のリアクタ
    ー。
  11. 【請求項11】 前記ガス分離モジュールは、管状に形
    成された多孔質支持体を主体として構成されており、 前記セラミック膜は、その管状多孔質支持体の外壁面及
    び/又は内壁面に形成されており、 前記少なくとも二つの部分は、その管状多孔質支持体の
    長軸方向に沿って配列されており、 ここで、前記反応部内に導入された原料ガスが、管状多
    孔質支持体の長軸方向に沿って、その一方の末端側から
    他方の末端側へ流動するように構成されている、請求項
    8〜10のいずれかに記載のリアクター。
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