JP2003002794A - 炭化ケイ素単結晶及びその製造方法 - Google Patents

炭化ケイ素単結晶及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 半絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等として好適
に使用可能な炭化ケイ素単結晶及びその効率的な製造方
法の提供。 【解決手段】 窒素含有量が100質量ppm以下であ
る炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケ
イ素単結晶を成長させる炭化ケイ素単結晶の製造方法で
ある。該炭化ケイ素粉末が、ケイ素源とキシレン系樹脂
とを少なくとも含有する混合物を焼成して得られる態
様、該混合物が、ケイ素源に酸を添加した後、キシレン
系樹脂を添加して得られる態様などが好ましい。前記炭
化ケイ素単結晶の製造方法により製造される炭化ケイ素
単結晶である。非破壊で光学的に画像検出した中空パイ
プ状の結晶欠陥が100個/cm以下である態様、体
積抵抗値が1×10Ω・cm以上である態様、窒素含
有量が0.01質量ppm以下である態様などが好まし
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半絶縁性乃至絶縁
性単結晶基板等として好適に使用可能な炭化ケイ素単結
晶及びその効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭化ケイ素は、ケイ素に比し、バンドギ
ャップが大きく、絶縁破壊特性、耐熱性、耐放射線性等
に優れることから、小型で高出力の半導体等の電子デバ
イス材料として、また、光学的特性に優れることから、
光学デバイス材料として注目されてきている。かかる炭
化ケイ素の結晶の中でも、炭化ケイ素単結晶は、炭化ケ
イ素多結晶に比し、ウエハ等のデバイスに応用した際に
ウエハ内特性の均一性等に特に優れるという利点があ
る。前記炭化ケイ素単結晶の製造方法としては、黒鉛製
坩堝を用い、炭化ケイ素粉末を昇華させ、炭化ケイ素単
結晶の種結晶上に炭化ケイ素単結晶を成長させる改良レ
ーリー法(改良昇華再結晶法)が知られているが、不純
物元素(1989年IUPAC無機化学命名法改訂版の
周期律表における1族から17族元素に属しかつ原子番
号3以上(但し、炭素原子、窒素原子、酸素原子及びケ
イ素原子を除く)である元素をいう。以下同じ。)の含
有量が1.0質量ppm以下である炭化ケイ素単結晶を
製造する方法はあまり知られていない。一方、前記不純
物元素ではない窒素原子を多く含有する炭化ケイ素粉末
を用いて得た炭化ケイ素単結晶は、窒素が炭化ケイ素結
晶に対しドナー原子として電子導電性を付与するため、
n型半導体としては利用することができるものの半絶縁
体乃至絶縁体としては利用することができない。このた
め、高周波用途のMESFETなど一部のデバイスで
は、基板の高周波損失を抑える等の目的から高絶縁性基
板の使用が望まれているが、このような高絶縁性基板と
して好適な炭化ケイ素単結晶の製造方法は、未だ提供さ
れていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる現状
に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成するこ
とを課題とする。即ち、本発明は、前記不純物元素の含
有量が少なく、かつ前記不純物元素でない窒素等の元素
の含有量も少なく、半絶縁体乃至絶縁体として使用可能
であり、半絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等として好適に
使用可能な炭化ケイ素単結晶、及び、該炭化ケイ素単結
晶を効率よく製造し得る炭化ケイ素単結晶の製造方法を
提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段は、以下の通りである。即ち、 <1> 窒素含有量が100質量ppm以下であり、か
つ不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下である
炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ
素単結晶を成長させることを特徴とする炭化ケイ素単結
晶の製造方法である。 <2> 炭化ケイ素粉末の窒素含有量が50質量ppm
以下である前記<1>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造
方法である。 <3> 窒素含有量が0.1質量ppm以下である炭化
ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単
結晶を成長させることを特徴とする炭化ケイ素単結晶の
製造方法である。 <4> 炭化ケイ素粉末が、ケイ素源とキシレン系樹脂
とを少なくとも含有する混合物を焼成して得られる前記
<1>から<3>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶
の製造方法である。 <5> ケイ素源が、アルコキシシラン化合物である前
記<4>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <6> 混合物が、ケイ素源に酸を添加した後、キシレ
ン系樹脂を添加して得られる前記<4>又は<5>に記
載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <7> 焼成の際、混合物における、キシレン系樹脂に
含まれる炭素とケイ素源に含まれるケイ素との比が1.
8以下である前記<4>から<6>のいずれかに記載の
炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <8> 炭化ケイ素粉末の体積平均径が50〜400μ
mである前記<1>から<7>のいずれかに記載の炭化
ケイ素単結晶の製造方法である。 <9> 炭化ケイ素粉末が、結晶多型がベータ型(3
C)である炭化ケイ素粉末を30質量%以下含有する前
記<1>から<8>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結
晶の製造方法である。 <10> 炭化ケイ素単結晶を、その全成長過程を通し
て、その成長面の全面を凸形状に保持したまま成長させ
る前記<1>から<9>のいずれかに記載の炭化ケイ素
単結晶の製造方法である。 <11> 炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶を
略山形に成長させる前記<1>から<10>のいずれか
に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <12> 炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶
が、炭化ケイ素単結晶のみからなる前記<1>から<1
1>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法で
ある。 <13> 炭化ケイ素粉末を反応容器内に収容し、該反
応容器内の該炭化ケイ素粉末に略対向する端部に炭化ケ
イ素単結晶の種結晶を配置し、炭化ケイ素単結晶を含む
炭化ケイ素の結晶の成長が、該端部における、該反応容
器内の周側面部との隣接部を除く領域でのみ行われる前
記<1>から<12>のいずれかに記載の炭化ケイ素単
結晶の製造方法である。 <14> 炭化ケイ素粉末を反応容器内の一端部側に収
容し、該反応容器内の他端部側に炭化ケイ素単結晶の種
結晶を配置し、前記一端部側に配置した第一加熱手段に
より、該炭化ケイ素粉末が昇華可能となるように昇華雰
囲気を形成し、前記他端部側に配置した第二加熱手段に
より、前記第一加熱手段により昇華された炭化ケイ素が
前記炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶可能と
なるように再結晶雰囲気を形成し、該炭化ケイ素を前記
炭化ケイ素単結晶の種結晶上に再結晶させる前記<1>
から<13>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法である。 <15> 第一加熱手段及び第二加熱手段が誘導加熱可
能なコイルである前記<14>に記載の炭化ケイ素単結
晶の製造方法である。 <16> 第一加熱手段における誘導加熱電流の電流値
が、第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値よりも
大きい前記<15>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方
法である。 <17> 第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値
を、成長する炭化ケイ素単結晶の径が大きくなるにつれ
て、連続的又は段階的に小さくする前記<15>又は<
16>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <18> 反応容器内の、炭化ケイ素粉末を収容した一
端部側の温度をTとし、炭化ケイ素単結晶の種結晶を
配置した他端部側の温度をTとし、該他端部側におけ
る、反応容器の内周側面部との隣接部の温度Tとした
時、T−T及びT−Tが連続的又は段階的に大
きくなる前記<14>から<17>のいずれかに記載の
炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <19> 前記<1>から<18>のいずれかに記載の
炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造されることを特
徴とする炭化ケイ素単結晶である。 <20> 非破壊で光学的に画像検出した中空パイプ状
の結晶欠陥が100個/cm以下である前記<19>
に記載の炭化ケイ素単結晶である。 <21> 不純物元素の総含有量が10質量ppm以下
である前記<19>又は<20>に記載の炭化ケイ素単
結晶である。 <22> 体積抵抗値が1×10Ω・cm以上である
前記<19>から<21>のいずれかに記載の炭化ケイ
素単結晶である。 <23> 窒素含有量が0.01質量ppm以下である
前記<19>から<22>のいずれかに記載の炭化ケイ
素単結晶である。
【0005】前記課題を解決するための手段としては、
更に以下のものが挙げられる。即ち、<24> 焼成
が、非酸化性雰囲気下、100〜1000℃/hで13
00〜1600℃まで昇温し、その後50〜300℃/
hで1800〜2100℃まで昇温後、1800〜21
00℃で240分以内保持することで行われる前記<4
>から<18>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法である。 <25> 焼成の際、ケイ素源及び炭素源に対しハロゲ
ン又はハロゲン化水素1〜5容量%が添加される前記<
4>から<18>及び<24>のいずれかに記載の炭化
ケイ素単結晶の製造方法である。 <26> 焼成の後、加熱による後処理が行われる前記
<4>から<18>及び<23>から<25>のいずれ
かに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <27> 後処理が2150〜2400℃で行われる前
記<26>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法であ
る。 <28> 後処理がアルゴン雰囲気で3〜8時間行われ
る前記<26>又は<27>に記載の炭化ケイ素単結晶
の製造方法である。 <29> 炭化ケイ素粉末の体積平均粒径(D50)が
0.5〜800μmである前記<1>から<18>及び
<23>から<28>のいずれかに記載の炭化ケイ素単
結晶の製造方法である。 <30> 炭化ケイ素粉末の粒度分布(D90
10)が4以下である前記<1>から<18>及び<
23>から<29>のいずれかに記載の炭化ケイ素単結
晶の製造方法である。 <31> 反応容器内において、再結晶雰囲気の温度が
昇華雰囲気の温度よりも30〜300℃低い前記<12
>から<18>及び<23>から<30>のいずれかに
記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <32> 反応容器が、石英管内に配置された坩堝であ
る前記<12>から<18>及び<23>から<31>
のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法であ
る。 <33> 他端部における、該反応容器内の周側面部と
の隣接部の表面が、ガラス状カーボンである前記<12
>から<18>及び<23>から<32>のいずれかに
記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <34> 第一加熱手段と第二加熱手段との間に、誘導
電流を通電可能であり、該誘導電流を通電することによ
り該第一加熱手段と該第二加熱手段との間における干渉
を防止する干渉防止手段が配置される前記<12>から
<18>及び<23>から<33>のいずれかに記載の
炭化ケイ素単結晶の製造方法である。 <35> 干渉防止手段が、冷却水を流通可能なコイル
である前記<34>に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方
法である。 <36> 一端部が下端部であり、他端部が上端部であ
る前記<12>から<18>及び<23>から<35>
のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法であ
る。 <37> 他端部における、炭化ケイ素単結晶の成長が
行われる領域と、該領域の外周に位置し反応容器の内周
側面部と隣接する領域とが、別の部材で形成されてお
り、かつ該炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域を形
成する部材における、一端が反応容器の内部に露出し、
他端が反応容器の外部に露出している前記<12>から
<18>及び<23>から<36>のいずれかに記載の
炭化ケイ素単結晶の製造方法である。
【0006】前記<1>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、窒素含有量が100質量ppm以下であり、
かつ不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下であ
る炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケ
イ素単結晶を成長させるため、再結晶される炭化ケイ素
単結晶中の窒素含有量が低い。このため、製造された炭
化ケイ素単結晶は半絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等とし
て好適である。
【0007】前記<2>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、前記<1>において、前記炭化ケイ素粉末の
窒素含有量が50質量ppm以下であるので、再結晶さ
れる炭化ケイ素単結晶中の窒素含有量が極めて低い。こ
のため、製造された炭化ケイ素単結晶は半絶縁性乃至絶
縁性単結晶基板等として特に好適である。
【0008】前記<3>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、窒素含有量が0.1質量ppm以下である炭
化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素
単結晶を成長させるので、再結晶される炭化ケイ素単結
晶中の窒素含有量が極めて低い。このため、製造された
炭化ケイ素単結晶は半絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等と
して特に好適である。
【0009】前記<4>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、前記<1>から<3>のいずれかにおいて、
前記炭化ケイ素粉末が、ケイ素源とキシレン系樹脂とを
少なくとも含有する混合物を焼成して得られ、該炭化ケ
イ素粉末の窒素含有量が低いので、製造される炭化ケイ
素単結晶中の窒素含有量が低い。このため、製造される
炭化ケイ素単結晶は半絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等と
して特に好適である。
【0010】前記<5>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、前記<4>において、前記ケイ素源がテトラ
アルコキシシラン重合体である。このため、前記炭化ケ
イ素粉末が、低コストで容易に得られる。
【0011】前記<6>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、前記<4>又は<5>において、混合物が、
ケイ素源に酸を添加した後、キシレン系樹脂を添加して
得られる。このため、均一な状態の前記混合物が極めて
容易に得られ、効率よく炭化ケイ素単結晶が製造され
る。
【0012】前記<7>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、前記<4>から<6>のいずれかにおいて、
焼成の際、混合物における、キシレン系樹脂に含まれる
炭素とケイ素源に含まれるケイ素との比が1.8以下で
あり、前記炭化ケイ素粉末における遊離炭素が少ないの
で、高品質の炭化ケイ素単結晶が得られる。
【0013】前記<8>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、前記<1>から<7>のいずれかにおいて、
炭化ケイ素粉末の体積平均径が50〜400μmであ
り、CVD法等により製造された炭化ケイ素粉末よりも
体積平均粒径が大きく、取扱い易く、炭化ケイ素単結晶
の製造効率に優れる。
【0014】前記<9>に記載の炭化ケイ素単結晶の製
造方法は、前記<1>から<8>のいずれかにおいて、
炭化ケイ素粉末が、結晶多型がベータ型(3C)である
炭化ケイ素粉末を30質量%以下しか含有しないので、
CVD法等により製造されたベータ型炭化ケイ素粉末よ
りも体積平均粒径が大きいことに加え、昇華が安定して
行なわれるために取扱い易く、炭化ケイ素単結晶の製造
効率に優れる。
【0015】前記<10>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<1>から<9>において、前記炭化
ケイ素単結晶を、その全成長過程を通して、その成長面
の全面を凸形状に保持したまま成長させる。ここでは、
成長する炭化ケイ素単結晶における成長面の全面におい
て、その成長方向と反対方向に前記陥没した凹部が輪状
に形成されることがない。このため、割れ等の破損がな
く、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結晶欠陥
が存在しない高品質の炭化ケイ素単結晶が製造される。
【0016】前記<11>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<1>から<10>において、炭化ケ
イ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶を略山形に成長させ
るので、成長する炭化ケイ素単結晶において、その成長
方向と反対方向に前記陥没した凹部が全く存在しない。
このため、割れ等の破損がなく、多結晶や多型の混入や
マイクロパイプ等の結晶欠陥が存在しない高品質の炭化
ケイ素単結晶が製造される。
【0017】前記<12>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<1>から<11>のいずれかにおい
て、前記炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の結晶が、
炭化ケイ素単結晶のみからなる。このため、大きな径の
炭化ケイ素単結晶が得られ、該炭化ケイ素単結晶を炭化
ケイ素多結晶等から分離等する必要がない。
【0018】前記<13>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<1>から<12>において、反応容
器内に前記炭化ケイ素粉末を収容し、該反応容器内の該
炭化ケイ素粉末に略対向する端部に前記炭化ケイ素単結
晶の種結晶を配置し、前記炭化ケイ素単結晶を含む炭化
ケイ素の結晶の成長が、該端部における、該反応容器内
の周側面部との隣接部を除く領域でのみ行われる。この
ため、成長する炭化ケイ素単結晶において、その成長方
向と反対方向に前記陥没した凹部が輪状に形成されるこ
とがなく、また、炭化ケイ素多結晶が、前記端部におけ
る、該反応容器内の周側面部に接触した状態で成長する
こともない。このため、成長した炭化ケイ素単結晶を室
温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ
素単結晶側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加され
ることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の欠
陥が生じてしまうことがない。その結果、割れ等の破損
がなく、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結晶
欠陥が存在しない高品質の炭化ケイ素単結晶が効率よく
かつ確実に製造される。
【0019】前記<14>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<1>から<13>のいずれかにおい
て、前記反応容器内の一端部側に前記炭化ケイ素粉末を
収容し、該反応容器内の他端部側に前記炭化ケイ素単結
晶の種結晶を配置し、前記一端部側に配置した第一加熱
手段により、該炭化ケイ素粉末を昇華可能となるように
昇華雰囲気を形成し、前記他端部側に配置した第二加熱
手段により、前記第一加熱手段により昇華された炭化ケ
イ素が炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶可能
となるように再結晶雰囲気を形成し、該炭化ケイ素を前
記炭化ケイ素単結晶の種結晶上に再結晶させる。この炭
化ケイ素単結晶の製造方法においては、前記炭化ケイ素
粉末を昇華可能となるように昇華雰囲気を形成するため
の加熱を前記第一加熱手段で行い、前記炭化ケイ素単結
晶の種結晶上でのみ再結晶化を可能とする再結晶雰囲気
の形成を前記第二加熱手段で行うことにより、前記炭化
ケイ素単結晶の種結晶上乃至その近傍でのみ選択的に再
結晶化を行うことができ、前記炭化ケイ素多結晶が、前
記端部における、該反応容器内の周側面部に接触した状
態で成長することがない。成長した炭化ケイ素単結晶を
室温まで冷却した際に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケ
イ素単結晶側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加さ
れることがなく、得られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の
欠陥が生じてしまうことがない。その結果、割れ等の破
損がなく、多結晶や多型の混入やマイクロパイプ等の結
晶欠陥が存在しない高品質の炭化ケイ素単結晶が製造さ
れる。
【0020】前記<15>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<14>において、前記第一加熱手段
及び前記第二加熱手段が誘導加熱可能なコイルである。
このため、該コイルによる誘導加熱により、前記昇華雰
囲気の形成のための前記第一加熱手段の温度制御、及び
前記再結晶雰囲気の形成のための前記第二加熱手段の温
度制御が容易にかつ確実に行われる。
【0021】前記<16>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<15>において、第一加熱手段にお
ける誘導加熱電流の電流値が、第二加熱手段における誘
導加熱電流の電流値よりも大きい。このため、前記昇華
雰囲気の温度よりも前記種結晶上近傍での再結晶雰囲気
の温度の方が低く維持され、再結晶化が容易に行われ
る。
【0022】前記<17>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<15>又は<16>において、前記
第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値を、成長す
る炭化ケイ素単結晶の径が大きくなるにつれて、連続的
又は段階的に小さくする。このため、前記炭化ケイ素単
結晶が成長するにつれて前記第二加熱手段による加熱量
が小さく制御されるので、成長を続ける前記炭化ケイ素
単結晶の近傍でしか再結晶が行われず、該炭化ケイ素単
結晶の周囲に多結晶が生ずることがない。
【0023】前記<18>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<14>から<17>のいずれかにお
いて、前記反応容器内の、炭化ケイ素粉末を収容した一
端部側の温度をTとし、炭化ケイ素単結晶の種結晶を
配置した他端部側の温度をT とし、該他端部側におけ
る、反応容器の内周側面部との隣接部の温度Tとした
時、T−T及びT−Tが連続的又は段階的に大
きくなる。T−Tが連続的又は段階的に大きくなる
と、経時的に、炭化ケイ素単結晶が前記一端部側に向か
って成長を続けても、該炭化ケイ素単結晶の結晶成長先
端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持される。一
方、T−Tが連続的又は段階的に大きくなると、経
時的に、炭化ケイ素単結晶が前記他端部側における外周
方向に向かって成長を続けても、該炭化ケイ素単結晶の
結晶成長外周端側は常に再結晶が起こり易い状態に維持
される。その結果、炭化ケイ素多結晶の生成が効果的に
抑制され、該炭化ケイ素単結晶は、その径を拡大しなが
らその厚みを増す方向に成長を続け、最終的には、炭化
ケイ素多結晶等の混入がない状態で大径の炭化ケイ素単
結晶が得られる。
【0024】前記<19>に記載の炭化ケイ素単結晶
は、前記<1>から<18>のいずれかに記載の炭化ケ
イ素単結晶の製造方法により製造される。このため、得
られる炭化ケイ素単結晶は、窒素含有量が低く、半絶縁
性乃至絶縁性単結晶基板等として特に好適である。
【0025】前記<20>に記載の炭化ケイ素単結晶
は、前記<19>において、非破壊で光学的に画像検出
した中空パイプ状の結晶欠陥が100個/cm以下で
ある。このため、該炭化ケイ素単結晶は、極めて高品質
であり、絶縁破壊特性、耐熱性、耐放射線性等に特に優
れ、半導体ウエハ等の電子デバイス、発光ダイオード等
の光学デバイスなどに特に好適である。
【0026】前記<21>に記載の炭化ケイ素単結晶
は、前記<19>又は<20>において、前記不純物元
素の総含有量が10質量ppm以下である。このため、
該炭化ケイ素単結晶は、極めて高品質である。
【0027】前記<22>に記載の炭化ケイ素単結晶
は、前記<19>から<21>のいずれかにおいて、体
積抵抗値が1×10Ω・cm以上である。このため、
該炭化ケイ素単結晶は、半絶縁体乃至絶縁体である。
【0028】前記<23>に記載の炭化ケイ素単結晶
は、前記<19>から<22>のいずれかにおいて、窒
素含有量が0.01質量ppm以下であるので、再結晶
される炭化ケイ素単結晶中の窒素含有量が極めて低い。
このため、製造された炭化ケイ素単結晶は半絶縁性乃至
絶縁性単結晶基板等として特に好適である。
【0029】前記<24>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<4>から<18>のいずれかにおい
て、焼成が、非酸化性雰囲気下、100〜1000℃/
hで1300〜1600℃まで昇温し、その後50〜3
00℃/hで1800〜2100℃まで昇温後、180
0〜2100℃で240分以内保持することで行われ
る。このため、効率よく炭化ケイ素単結晶が製造され
る。
【0030】前記<25>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<4>から<18>及び<24>のい
ずれかにおいて、焼成の際、ケイ素源及び炭素源に対し
ハロゲン又はハロゲン化水素1〜5容量%が添加され
る。このため、得られる炭化ケイ素単結晶においては、
不純物元素の量が効果的に低く抑制される。
【0031】前記<26>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<4>から<18>及び<23>から
<25>のいずれかにおいて、焼成の後、加熱による後
処理が行われる。このため、不純物元素が除去され、高
純度で高品質な炭化ケイ素単結晶が効率よく製造され
る。
【0032】前記<27>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<26>において、後処理が2150
〜2400℃で行われるので、不純物元素が除去され、
高純度で高品質な炭化ケイ素単結晶が効率よく製造され
る。
【0033】前記<28>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<26>又は<27>において、後処
理がアルゴン雰囲気で3〜8時間行われるので、不純物
元素が除去され、高純度で高品質な炭化ケイ素単結晶が
効率よく製造される。
【0034】前記<29>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<1>から<18>及び<23>から
<28>のいずれかにおいて、炭化ケイ素粉末の体積平
均粒径(D50)が100〜500μmであるので、昇
華が効率よく行われ、炭化ケイ素単結晶が効率よく製造
される。
【0035】前記<30>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<1>から<18>及び<23>から
<29>のいずれかにおいて、炭化ケイ素粉末の粒度分
布(D90/D10)が4以下であるので、昇華が効率
よく行われ、炭化ケイ素単結晶が効率よく製造される。
【0036】前記<31>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<12>から<18>及び<23>か
ら<30>において、前記反応容器内において、再結晶
雰囲気の温度が前記昇華雰囲気の温度よりも30〜30
0℃低い。このため、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上
乃至その近傍で容易にかつ円滑に再結晶化が行なわれ
る。
【0037】前記<32>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<12>から<18>及び<23>か
ら<31>のいずれかにおいて、前記反応容器が、石英
管内に配置された坩堝である。このため、該石英管内の
密閉系で前記炭化ケイ素粉末の昇華と再結晶、前記炭化
ケイ素単結晶の成長が行われるので、これらの制御が容
易である。
【0038】前記<33>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<12>から<18>及び<23>か
ら<32>のいずれかにおいて、前記他端部における、
該反応容器の内周側面部との隣接部の表面が、ガラス状
カーボンである。このため、前記他端部における、該反
応容器の内周側面部との隣接部は、該隣接部以外の領域
よりも再結晶化が起こり難い。その結果、前記他端部に
おける、前記隣接部では炭化ケイ素の結晶が成長せず、
該隣接部以外の領域でのみ選択的に炭化ケイ素単結晶が
再結晶化し成長する。
【0039】前記<34>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<12>から<18>及び<23>か
ら<33>のいずれかにおいて、前記第一加熱手段と前
記第二加熱手段との間に、誘導電流を通電可能であり、
該誘導電流を通電することにより該第一加熱手段と該第
二加熱手段との間における干渉を防止する干渉防止手段
が配置される。このため、前記第一加熱手段及び前記第
二加熱手段による誘導加熱を同時に行った際に、該干渉
防止手段に誘導電流が流れ、該干渉防止手段が両者間に
おける干渉を極小化し防止する。
【0040】前記<35>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<34>において、前記干渉防止手段
が、冷却可能なコイルである。該コイルに誘導電流が流
れ加熱されたとしても該コイルは冷却されるので、該コ
イルが前記反応容器を加熱することがない。このため、
前記反応容器の温度制御が容易である。
【0041】前記<36>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<12>から<18>及び<23>か
ら<35>のいずれかにおいて、前記一端部が下端部で
あり、前記他端部が上端部である。このため、前記炭化
ケイ素粉末が前記反応容器内の下方に収容され、該炭化
ケイ素粉末の昇華が円滑に行われ、また、前記炭化ケイ
素単結晶は、下方に向かって、即ち重力方向に向かって
余分な負荷がかからない状態で成長する。
【0042】前記<37>に記載の炭化ケイ素単結晶の
製造方法は、前記<12>から<18>及び<23>か
ら<36>のいずれかにおいて、前記炭化ケイ素単結晶
の成長が行われる領域と、該領域の外周に位置し前記反
応容器の内周側面部と隣接する領域とが、別の部材で形
成されており、かつ該炭化ケイ素単結晶の成長が行われ
る領域を形成する部材における、一端が反応容器の内部
に露出し、他端が反応容器の外部に露出している。前記
炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域(内側領域)
と、該領域の外周に位置し前記反応容器の内周側面部と
隣接する領域(外側領域)とが、別の部材で形成されて
いるので、前記第二加熱手段により加熱を行った場合に
は、該第二加熱手段側に位置する前記外側領域は容易に
加熱されるものの、前記内側領域は、該外側領域との接
触抵抗の差により容易に加熱されることはない。このた
め、前記第二加熱手段で加熱を行ったとしても、前記外
側領域と前記内側領域との間で温度差が生じ、前記内側
領域の方が前記外側領域よりも加熱され難いため、温度
が低く維持され、前記炭化ケイ素の再結晶が容易に行わ
れる。また、前記内側領域を形成する部材における前記
反応容器の内部と反対側が、該反応容器の外部に露出
し、該反応容器外部に熱を放熱し易いため、前記第二加
熱手段により加熱を行った場合、前記内側領域は前記外
側領域に比べて加熱され難く、前記外側領域と前記内側
領域との間で温度差が生じ、前記内側領域の方が前記外
側領域よりも温度が低く維持され、前記炭化ケイ素の再
結晶が容易に行われる。その結果、前記外側領域では炭
化ケイ素単結晶が成長し難く、該内側領域でのみ選択的
に炭化ケイ素単結晶が再結晶化し成長する。
【0043】
【発明の実施の形態】(炭化ケイ素単結晶の製造方法)
本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法においては、窒素
含有量が100質量ppm以下である炭化ケイ素粉末を
昇華させてから再結晶させて炭化ケイ素単結晶を成長さ
せる。
【0044】−炭化ケイ素粉末− 前記炭化ケイ素粉末としては、窒素含有量が100質量
ppm以下であり、かつ不純物元素の各含有量が0.1
質量ppm以下であるもの、又は、窒素含有量が0.1
質量ppm以下であるものが挙げられる。
【0045】前記炭化ケイ素粉末の窒素含有量として
は、100質量ppm以下である必要があり、50質量
ppm以下であるのが好ましく、40質量ppm以下で
あるのがより好ましく、0.1質量ppm以下であるの
が特に好ましい。前記窒素含有量が100質量ppm以
下、50質量ppm以下及び40質量ppm以下である
場合、更に前記不純物元素の各含有量が0.1質量pp
m以下であることが必要であり、この場合、高抵抗の炭
化ケイ素単結晶が得られ、該炭化ケイ素単結晶は半絶縁
性乃至絶縁性単結晶基板等として好適に利用可能であ
り、一方、前記窒素含有量が0.1質量ppm以下であ
る場合には、前記不純物元素の各含有量が0.1質量p
pm以下の場合に限らなくとも、高抵抗の炭化ケイ素単
結晶が得られ、該炭化ケイ素単結晶は半絶縁性乃至絶縁
性単結晶基板等として好適に利用可能である。なお、前
記窒素含有量は、例えば、酸素窒素同時分析装置、二次
イオン質量分析装置、グロー放電質量分析装置、フォト
ルミネッセンス測定装置等を用いて測定することができ
る。
【0046】前記炭化ケイ素粉末における前記不純物元
素それぞれの含有量としては、0.3質量ppm以下が
好ましく、0.1質量ppm以下がより好ましい。前記
不純物元素の各含有量が、0.3質量ppm以下である
場合、更に前記窒素含有量が0.1質量ppm以下であ
ることが必要であり、この場合、極めて高抵抗の炭化ケ
イ素単結晶が得られ、該炭化ケイ素単結晶は半絶縁性乃
至絶縁性単結晶基板等として好適に利用可能であり、一
方、前記不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下
である場合には、前記窒素含有量が0.1質量ppm以
下の場合に限らなくとも、半絶縁体乃至絶縁体の炭化ケ
イ素単結晶が得られ、該炭化ケイ素単結晶は半絶縁性乃
至絶縁性単結晶基板等として好適に利用可能である。
【0047】前記炭化ケイ素粉末としては、4H、6
H、15R、3C、これらの混合物等のいずれであって
もよい。なお、前記3Cの炭化ケイ素粉末のグレードと
しては、特に制限はなく、一般に市販されているもので
もよいが、高純度のものであることが好ましい。
【0048】前記炭化ケイ素粉末の体積平均粒径(D
50)としては、0.5〜800μmが好ましく、50
〜400μmがより好ましい。前記体積平均粒径(D
50)が、0.5〜800μmであると炭化ケイ素単結
晶を製造する場合における作業性に優れ、充填時のパッ
キングも良好である点で有利であり、50〜400μm
であると、CVD法等で製造された微粉に比べて更に作
業性に優れ、充填時のパッキングも更に良好である点で
有利である。
【0049】前記炭化ケイ素粉末の粒度分布(D90
10)(体積平均粒径基準)としては、該炭化ケイ素
粉末の均一性の観点からは4.0以下であるのが好まし
く、3.5以下であるのがより好ましい。
【0050】前記炭化ケイ素粉末としては、昇華速度の
安定化の点で、β−SiC(結晶多型としては「3C」
のもの)を30質量%以下含有しているのが好ましく
(α−SiCを70質量%超含有しているのが好まし
く)、10質量%以下含有しているのがより好ましい
(α−SiCを90質量%超含有しているのがより好ま
しい)。該α−SiC又はβ−SiCであるか否かは、
ATSMライブラリーデータにおけるマッチングピーク
等から判断することができる。
【0051】前記炭化ケイ素粉末は、ケイ素源とキシレ
ン系樹脂とを少なくとも含有する混合物を焼成して得ら
れる。
【0052】−−ケイ素源−− 前記ケイ素源としては、ケイ素化合物が挙げられる。前
記ケイ素化合物としては、液状のものであってもよい
し、固体のものであってもよく、これらを併用してもよ
いが、該液状のものを少なくとも1種使用するのが好ま
しい。
【0053】前記液状のものとしては、アルコキシシラ
ン化合物などが好適に挙げられる。前記アルコキシシラ
ン化合物としては、例えば、アルコキシシラン、アルコ
キシシランオリゴマー、アルコキシシランポリマーなど
が挙げられる。前記アルコキシシラン、前記アルコキシ
シランオリゴマー、及び前記アルコキシシランポリマー
におけるアルコキシシラン又はアルコキシシランユニッ
トとしては、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラ
ン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの
いずれであってもよいが、テトラアルコキシシランが好
ましい。
【0054】前記アルコキシシランとしては、例えば、
メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン、
ブトキシシラン等が挙げられ、これらの中でもハンドリ
ングの点でエトキシシランが好ましい。
【0055】前記アルコキシシランオリゴマーは、重合
度が2〜15程度の低分子量重合体であり、その具体例
としては、メトキシシランオリゴマー、エトキシシラン
オリゴマー、プロポキシシランオリゴマー、ブトキシシ
ランオリゴマー等が挙げられ、これらの中でもハンドリ
ングの点でエトキシシランオリゴマーが好ましい。
【0056】前記アルコキシシランポリマーは、重合度
が15程度を超える高分子量重合体であり、その具体例
としては、メトキシシランポリマー、エトキシシランポ
リマー、プロポキシシランポリマー、ブトキシシランポ
リマー等が挙げられ、これらの中でもハンドリングの点
でエトキシシランポリマーが好ましい。
【0057】前記固体のものとしては、例えば、Si
O、シリカゾル(コロイド状超微細シリカ含有液、内部
にOH基やアルコキシル基を含む)、二酸化ケイ素(シ
リカゲル、微細シリカ、石英粉末)等の酸化ケイ素が挙
げられる。
【0058】本発明において、前記ケイ素化合物は、1
種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい
が、該ケイ素化合物の中でも、均質性やハンドリング性
が良好な点で、エトキシシランオリゴマー、エトキシシ
ランポリマー、エトキシシランオリゴマーと微粉末シリ
カとの混合物などが好ましく、エトキシシランダイマ
ー、エトキシシランポリマーなどがより好ましい。
【0059】前記ケイ素化合物としては、高純度である
のが好ましく、不純物元素が20質量ppm以下である
のが好ましく、5質量ppm以下であるのがより好まし
い。ここで、前記不純物元素とは、1989年IUPA
C無機化学命名法改訂版の周期律表における1族から1
7族に属しかつ原子番号3以上(但し原子番号6〜8及
び同14を除く)である元素をいう(以下同じ)。
【0060】−−キシレン系樹脂−− 前記キシレン系樹脂は、残炭率が高く、前記不純物元素
の含有量が少なく、その合成プロセスにおいて窒素を殆
ど含有しない。該キシレン系樹脂は炭素源として用いら
れる。前記キシレン系樹脂としては、キシレン単独重合
体(以下、単に「キシレン重合体」と略称する)、キシ
レン共重合体などが挙げられるが、前記不純物元素の混
入の観点からはキシレン重合体が好ましく、レゾール型
キシレン重合体がより好ましい。前記キシレン系樹脂
は、適宜合成したものであってもよいし、市販品であっ
てもよい。
【0061】前記キシレン系樹脂としては、オリゴマー
であってもよいし、ポリマーであってもよく、その重合
度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択する
ことができ、例えば、前記オリゴマーの場合には該重合
度が3〜15であるのが好ましく、前記ポリマーの場合
には該重合度が15〜1200であるのが好ましい。前
記重合度は、例えば、一般的なゲル透過クロマトグラフ
ィー、浸透圧法、GC−MS等により測定することがで
きる。
【0062】前記キシレン系樹脂としては、高純度であ
るのが好ましく、前記不純物元素が20質量ppm以下
であるのが好ましく、5質量ppm以下であるのがより
好ましい。
【0063】−−混合物−− 前記混合物は、前記ケイ素源と前記キシレン系樹脂とを
含有する。
【0064】前記混合物における前記ケイ素源と前記キ
シレン系樹脂との量比としては、特に制限はなく、目的
に応じて適宜選択することができるが、得られた炭化ケ
イ素粉末中の遊離炭素の量が少なくなるように予め前記
ケイ素源と前記キシレン系樹脂との量比を決定しておく
のが好ましい。
【0065】なお、前記遊離炭素の量は、前記混合物に
おける、前記キシレン系樹脂に含まれる炭素と前記ケイ
素源に含まれるケイ素との比(以下「C/Si比」と称
する)を適宜調節することにより制御することができ
る。ここで、前記C/Si比は、次式、C/Si=(前
記キシレン系樹脂の量(g)×残炭率/12.011)
/0.4×(前記ケイ素源の量(g)/60.084
3)、で表される(ただし、前記「キシレン系樹脂の
量」は、該キシレン系樹脂が溶液とされている場合には
該溶液中に含まれる前記キシレン系樹脂の量を意味し、
前記「ケイ素源の量」は、該ケイ素源が溶液である場合
には該溶液中に含まれる前記ケイ素源の量を意味す
る。)。なお、前記C/Si比は、前記混合物を100
0℃にて炭化して得られる炭化物中間体を元素分析する
ことにより測定することができる。化学量論的には、前
記C/Si比が3.0の時に得られた炭化ケイ素粉末中
の前記遊離炭素が0%となるが、実際には、同時に生成
するSiOガスの揮散により前記C/Si比が小さな値
である場合でも前記遊離炭素は発生することがある。
【0066】前記混合物の調製方法としては、特に制限
はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前
記ケイ素源に酸を添加した後、前記キシレン系樹脂を添
加する方法が特に好ましい。この場合、該ケイ素源と該
キシレン系樹脂とを均一に混合することができ、相分離
状態を生ずることがない点で有利である。前記混合物の
調製方法として、前記ケイ素源に酸を添加した後、前記
キシレン系樹脂を添加する方法以外の方法を採用する場
合、該ケイ素源と該キシレン系樹脂とを均一に混合する
ことができず相分離状態が生ずることがあるが、この場
合、加熱を行うと、該相分離状態の混合物を均一な混合
物にすることができる。
【0067】前記混合物は、通常、ハロゲン化合物が添
加されることなく調製されるが、超高純度の炭化ケイ素
粉末を得る場合には、該混合物に対しハロゲン化合物が
0.5〜5質量%添加されて調製されてもよい。前記混
合物に前記ハロゲン化合物を添加すると、該混合物に混
入した前記不純物元素がハロゲン化されて次の焼成によ
り気化し飛散することにより効果的に除去されるため、
超高純度の炭化ケイ素粉末が得られる。具体的には、前
記ハロゲン化合物を添加することにより、得られる炭化
ケイ素粉末における前記不純物元素それぞれの含有量を
0.1質量ppm以下にすることができる。前記ハロゲ
ン化合物を添加した場合、前記混合物を、添加した該ハ
ロゲン化合物の分解温度近傍で10〜30分間反応さ
せ、次の焼成の温度まで昇温するのが、前記不純物元素
の除去の観点からは好ましい。
【0068】前記ハロゲン化合物は、前記混合物が液状
である場合、塩化アンモニウム、塩酸水溶液等の液状ハ
ロゲン化合物が該混合物に添加されるのが好ましく、前
記混合物が固体状である場合(前記キシレン系樹脂とし
て、熱可塑性キシレン系樹脂等を含有し、前記ケイ素源
として固体状のものを含有する場合)、ポリ塩化ビニ
ル、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン等のハロゲ
ン含有ポリマー等の固体状ハロゲン化合物が該混合物に
添加されるのが好ましい。
【0069】なお、前記混合物は、固体状であってもよ
いし、液状であってもよいが、液状である場合には、前
記焼成の前に硬化させて固体状にしてもよい。前記硬化
の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選
択することができるが、例えば、加熱により架橋する方
法、硬化触媒により硬化する方法、電子線や放射線によ
る方法などが挙げられる。
【0070】前記加熱は、50℃以上程度の温度で1時
間以上程度の時間行われる。前記硬化触媒としては、特
に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えば、トルエンスルホン酸、トルエンカルボン酸、酢
酸、しゅう酸、塩酸、硫酸等の酸類、などが挙げられる
が、これらの中でも窒素原子を含まないものが好まし
い。
【0071】前記混合物は、前記焼成の前に、非酸化性
雰囲気下で500〜1000℃にて加熱されるのが好ま
しく、非酸化性雰囲気下、500〜600℃で10〜3
0分間加熱した後、非酸化性雰囲気下、800〜100
0℃で30分間〜2時間加熱されるのがより好ましい。
前記非酸化性雰囲気としては、特に制限はなく、目的に
応じて適宜選択することができ、例えば、窒素、アルゴ
ン等の雰囲気などが挙げられるが、これらの中でもアル
ゴンが好ましい。
【0072】−−焼成−− 前記焼成は、その方法、条件等については特に制限はな
く、得ようとする炭化ケイ素粉末の粒径等に応じて適宜
選択することができるが、炭化ケイ素粉末のより効率的
な製造の観点からは、前記混合物を、非酸化性雰囲気
下、100〜1000℃/hで1300〜1600℃ま
で昇温し、その後50〜300℃/hで1900〜21
00℃まで昇温後、1900〜2100℃で240分以
内保持することで行うのが好ましい。
【0073】なお、前記混合物を800〜1000℃で
加熱することにより、ケイ素及び炭素の炭化物が得られ
る。このとき、前記炭化物の前記混合物に対する収率と
しては、特に制限はないが高い程好ましく、50質量%
以上であるのが好ましい。
【0074】前記非酸化性雰囲気としては、特に制限は
なく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、
窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気などが挙げられ
るが、高温でも非反応性である点でアルゴン雰囲気が好
ましい。
【0075】前記焼成の際、前記混合物を収容する反応
容器内に前記不活性ガスを導入するのが好ましい。この
場合、前記焼成の際に発生する、前記不純物元素を含む
SiOガスやCOガス等を該反応容器外へ排出乃至除去
することができる点で有利である。
【0076】前記焼成の際、前記ケイ素源及び前記キシ
レン系樹脂に対し、1〜5容積%のハロゲン又はハロゲ
ン化水素が添加されるのが、得られる炭化ケイ素粉末に
含まれる前記不純物元素の量を抑制することができる点
で好ましい。
【0077】前記焼成の際における前記C/Si比とし
ては、該焼成の際の圧力により変動し得るので一概に規
定することはできないが、前記遊離炭素の発生を効果的
に抑制することができる点で、1.85以下であるのが
好ましく、1.55以下であるのがより好ましい。
【0078】−−その他の処理−− その他の処理としては、特に制限はなく、目的に応じて
適宜選択することができるが、例えば、以下の後処理な
どが好適に挙げられる。
【0079】前記後処理としては、前記焼成の後、20
00℃以上で行われるのが好ましく、2100℃以上で
行われるのがより好ましく、2150〜2400℃で行
われるのが特に好ましい。前記後処理の時間としては、
特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ
るが、通常5分以上であり、3〜8時間程度が好まし
く、4〜6時間程度がより好ましい。前記後処理は、前
記非酸化性雰囲気下で行われるのが好ましく、該非酸化
性雰囲気の中でも、高温でも非反応性である点でアルゴ
ン雰囲気が好ましい。前記後処理により、前記不純物元
素が除去され、高純度であり、粒径が大きく、粒度分布
が狭く、高品質な炭化ケイ素粉末が得られる点で有利で
ある。
【0080】前記炭化ケイ素粉末の製造に用いる装置等
については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択す
ることができる。前記炭化ケイ素粉末の製造は、連続処
理の態様で実施してもよいし、バッチ処理の態様で実施
してもよい。また、前記焼成と前記後処理とは、1つの
加熱炉内で連続処理的に行われてもよいし、別々の加熱
炉内でバッチ処理的に行われてもよい。
【0081】なお、前記炭化ケイ素粉末は、上述の通り
であるが、本発明においては、前記炭化ケイ素粉末に代
えて、該炭化ケイ素粉末と該炭化ケイ素粉末の焼結体と
の混合物、又は、該炭化ケイ素粉末の焼結体を使用して
もよい。
【0082】前記炭化ケイ素粉末の昇華及び再結晶は、
反応容器内で行うことができる。前記反応容器として
は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが
できるが、内部に前記炭化ケイ素粉末を収容することが
でき、該炭化ケイ素粉末に略対向する位置に前記炭化ケ
イ素単結晶の種結晶を配置可能な端部を有していること
が好ましい。前記端部の形状としては、特に制限はない
が、例えば、略平面形状であるのが好ましい。
【0083】前記炭化ケイ素粉末が収容される部位とし
ては特に制限はないが、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶
を配置可能な端部に略対向する端部であるのが好まし
い。この場合、前記反応容器の内部は筒形状となるが、
該筒形状の軸としては、直線状であってもよいし、曲線
状であってもよく、該筒形状の軸方向に垂直な断面形状
としては、円形であってもよいし、多角形であってもよ
い。該円形状の好ましい例としては、その軸が直線状で
あり、かつ該軸方向に垂直な断面形状が円形であるもの
が好適に挙げられる。前記反応容器の内部に2つの端部
が存在する場合、一端部側に前記炭化ケイ素粉末が収容
され、他端部側に前記炭化ケイ素単結晶の種結晶が配置
される。以下、前記一端部を「炭化ケイ素粉末収容部」
と称することがあり、前記他端部を「種結晶配置部」と
称することがある。前記一端部(炭化ケイ素粉末収容
部)の形状としては、特に制限はなく、平面形状であっ
てもよいし、均熱化を促すための構造(例えば凸部等)
を適宜設けてもよい。
【0084】前記反応容器においては、前記他端部(種
結晶配置部)側が着脱可能に設計されているのが好まし
い。この場合、該他端部(種結晶配置部)を脱離するだ
けで、成長した炭化ケイ素単結晶を容易に該反応容器か
ら分離することができる点で有利である。このような反
応容器としては、例えば、炭化ケイ素粉末を収容可能な
容器本体と、該容器本体に対し着脱可能であり、該容器
本体に装着された際に該容器本体内に収容された前記炭
化ケイ素粉末に対向する面の略中央に炭化ケイ素単結晶
の種結晶を配置可能な蓋体とを備えた反応容器などが好
適に挙げられる。
【0085】前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)と前
記他端部(種結晶配置部)との位置関係としては、特に
制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる
が、前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)が下端部であ
り、前記他端部(種結晶配置部)が上端部である態様、
即ち、該一端部(炭化ケイ素粉末収容部)と該他端部
(種結晶配置部)とが重力方向に位置しているのが好ま
しい。この場合、前記炭化ケイ素粉末の昇華が円滑に行
われ、また、前記炭化ケイ素単結晶の成長が、下方に向
かって、即ち重力方向に向かって余分な負荷がかからな
い状態で行われる点で好ましい。
【0086】なお、前記一端部(炭化ケイ素粉末収容
部)側には、例えば、前記炭化ケイ素粉末の昇華を効率
よく行う目的で、伝熱性に優れた材料で形成した部材を
配置してもよい。該部材としては、例えば、外周が前記
反応容器内の周側面部と密接可能であり、内部が、前記
他端部(種結晶配置部)に近づくにつれてその径が漸次
増加するような逆錐形状乃至逆錐台形状である部材、な
どが好適に挙げられる。
【0087】なお、前記反応容器の外部に露出する部分
には、目的に応じて、ねじ切り、測温用凹部等が設けら
れていてもよく、該測温用凹部は、前記一端部側及び前
記他端部側の少なくとも一方の部分に設けられているの
が好ましい。
【0088】前記反応容器の材料としては、特に制限は
なく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐久
性、耐熱性、伝熱性等に優れた材料で形成されているの
が好ましく、これらに加えて更に不純物の発生による多
結晶や多型の混入等が少なく、前記炭化ケイ素粉末の昇
華と再結晶の制御が容易である等の点で黒鉛製であるの
が特に好ましい。
【0089】前記反応容器は、単独の部材で形成されて
いてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよく、
目的に応じて適宜選択することができるが、2以上の部
材で形成されている場合としては、前記他端部(種結晶
配置部)が2以上の部材で形成されているのが好まし
く、前記他端部(種結晶配置部)の中心部とその外周部
とが別の部材で形成されているのが、温度差乃至温度勾
配を形成できる点でより好ましく、具体的には、該中心
部としての、炭化ケイ素単結晶の成長が行われる領域
(内側領域)と、該外周部としての、前記内側領域の外
周に位置し反応容器の内周側面部と隣接する領域(外側
領域)とが別の部材で形成され、かつ該内側領域を形成
する部材における、一端が反応容器の内部に露出し、他
端が反応容器の外部に露出しているのが特に好ましい。
【0090】この場合、前記他端部(種結晶配置部)を
その外側から加熱した場合、前記外側領域は容易に加熱
されるものの、前記内側領域は、該外側領域との接触抵
抗により加熱され難くなるため、前記外側領域と前記内
側領域との間で温度差が生じ、該内側領域の方が該外側
領域よりも若干温度が低く維持されるため、該内側領域
の方が該外側領域よりも炭化ケイ素が再結晶し易くする
ことができる。更に、前記内側領域を形成する部材にお
ける前記他端が前記反応容器の外部に露出しているの
で、該内側領域は前記反応容器の外部に熱を放熱し易い
ため、該内側領域の方が該外側領域よりも炭化ケイ素が
再結晶を生じ易くさせることができる。
【0091】なお、前記内側領域を形成する部材におけ
る前記他端が前記反応容器の外部に露出している態様と
しては、特に制限はなく、該内側領域を底面とし前記反
応容器の外部に向けて連続的又は不連続的にその径が変
化する(大きくなる又は小さくなる)形状などが挙げら
れる。このような形状としては、具体的には、前記内側
領域を底面とする柱形状(円柱状、角柱状等が挙げら
れ、円柱状が好ましい)、前記内側領域を底面とする錐
台形状(円錐台状、角錐台状、逆円錐台状、逆角錐台状
等が挙げられ、逆円錐台状が好ましい)などが挙げられ
る。
【0092】前記反応容器は、前記他端部(種結晶配置
部)における、前記炭化ケイ素単結晶の成長が行われる
領域(内側領域)の外周に位置し反応容器の内周側面部
と隣接する領域(外側領域)の表面が、ガラス状カーボ
ン乃至アモルファスカーボンであるのが好ましい。この
場合、前記外側領域の方が前記内側領域よりも再結晶化
が起こり難い点で好ましい。
【0093】前記反応容器は、断熱材等で囲まれている
のが好ましい。この場合、前記反応容器における前記一
端部(炭化ケイ素粉末収容部)及び前記他端部(種結晶
配置部)の略中央は、測温用窓を形成する目的で、前記
断熱材等が設けられていないのが好ましい。また、前記
一端部(炭化ケイ素粉末収容部)の略中央に前記測温用
窓が設けられている場合には、前記断熱材粉等の落下を
防ぐための黒鉛製カバー部材等が更に設けられているの
が好ましい。
【0094】前記反応容器は、石英管内に配置されるの
が好ましい。この場合、前記炭化ケイ素粉末の昇華及び
再結晶化のための加熱エネルギーの損失が少ない点で好
ましい。なお、前記石英管は高純度品が入手可能であ
り、高純度品を用いると金属不純物の混入が少ない点で
有利である。
【0095】−昇華− 前記炭化ケイ素粉末の昇華は、再結晶化を行うのに必要
な加熱を行うための加熱手段と同じ加熱手段を用いて行
ってもよいが、別個の加熱手段を用いて行うのが加熱手
段の精密制御、独立制御、干渉防止等の点で好ましい。
このような態様の場合、加熱手段の数は、2以上となる
が、本発明においては2つが好ましい。前記加熱手段が
2つの好ましい態様の場合、前記炭化ケイ素粉末を昇華
可能とする昇華雰囲気を形成するための加熱手段が第一
加熱手段であり、昇華された炭化ケイ素が前記炭化ケイ
素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶可能とする前記再結
晶雰囲気を形成するための加熱手段が第二加熱手段であ
る。
【0096】前記第一加熱手段は、前記反応容器の一端
部(炭化ケイ素粉末収容部)側に配置され、前記炭化ケ
イ素粉末が昇華可能となるように昇華雰囲気を形成し、
前記炭化ケイ素粉末を加熱して昇華させる。前記第一加
熱手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選
択することができ、例えば、誘導加熱手段、抵抗加熱手
段などが挙げられるが、温度制御が容易な点で誘導加熱
手段が好ましく、該誘導加熱手段の中でも、誘導加熱可
能なコイルであるのが好ましい。
【0097】前記第一加熱手段が誘導加熱可能なコイル
である場合、その環巻された巻数としては、特に制限は
なく、前記第二加熱手段との距離、前記反応容器の材料
等により加熱効率や温度効率が最適となるように決定す
ることができる。
【0098】−炭化ケイ素単結晶の成長− 前記炭化ケイ素単結晶の成長は、前記反応容器の前記他
端部(種結晶配置部)に配置された炭化ケイ素単結晶の
種結晶上で行われる。前記炭化ケイ素単結晶の種結晶と
しては、その結晶の多型、大きさ等については、目的に
応じて適宜選択することができるが、前記結晶の多型と
しては、通常、得ようとする炭化ケイ素単結晶の多型と
同じ多型が選択される。
【0099】前記炭化ケイ素単結晶を前記種結晶上に再
結晶化し、成長させるには、前記炭化ケイ素粉末が昇華
する温度よりも低い温度にし、昇華した前記炭化ケイ素
粉末が前記種結晶近傍でのみ再結晶可能となるような再
結晶雰囲気(換言すれば、前記種結晶が配置される面の
径方向において、中心部(内側領域の中心)に近づくほ
ど温度が低くなるような温度分布となる雰囲気)を形成
するのが好ましい。
【0100】前記再結晶雰囲気の形成は、前記第二加熱
手段により好適に行うことができる。このような第二加
熱手段は、前記反応容器の他端部(種結晶配置部)側に
配置され、前記第一加熱手段により昇華された前記炭化
ケイ素粉末が炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結
晶可能となるように再結晶雰囲気を形成し、該炭化ケイ
素粉末を前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上に再結晶させ
る。
【0101】前記第二加熱手段としては、特に制限はな
く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、誘
導加熱手段、抵抗加熱手段などが挙げられるが、温度制
御が容易な点で誘導加熱手段が好ましく、該誘導加熱手
段の中でも、誘導加熱可能なコイルであるのが好まし
い。
【0102】前記第二加熱手段が誘導加熱可能なコイル
である場合、その環巻された巻数としては、特に制限は
なく、前記第一加熱手段との距離、前記反応容器の材料
等により加熱効率や温度効率が最適となるように決定す
ることができる。
【0103】前記第二加熱手段に通電する誘導加熱電流
の量は、前記第一加熱手段に通電する誘導加熱電流の量
との関係で適宜決定することができ、両者の関係として
は、前記第一加熱手段における誘導加熱電流の電流値
が、前記第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値よ
りも大きくなるように設定するのが好ましい。この場
合、前記炭化ケイ素粉末が昇華する雰囲気の温度よりも
前記種結晶上近傍での再結晶雰囲気の温度の方が低く維
持され、再結晶化が容易に行われる点で有利である。
【0104】また、前記第二加熱手段における誘導加熱
電流の電流値としては、成長する炭化ケイ素単結晶の径
が大きくなるにつれて、連続的又は段階的に小さくなる
ように制御するのが好ましい。この場合、前記炭化ケイ
素単結晶が成長するにつれて前記第二加熱手段による加
熱量が小さく制御されるので、成長を続ける前記炭化ケ
イ素単結晶の近傍でしか再結晶が行われず、該炭化ケイ
素単結晶の周囲に多結晶が生ずることが効果的に抑制さ
れる点で有利である。
【0105】なお、前記第二加熱手段における誘導加熱
電流の電流値としては、前記炭化ケイ素単結晶の種結晶
の径が大きい場合には小さくなるように制御し、該径が
小さい場合には大きくなるように制御するのが好ましい
傾向がある。
【0106】本発明においては、前記第二加熱手段は、
前記第一加熱手段とは独立にその制御を行うことができ
るので、炭化ケイ素単結晶の成長速度に応じて、該第二
加熱手段の加熱量を適宜調節することにより、炭化ケイ
素単結晶の全成長過程を通して好ましい成長速度を維持
することができる。
【0107】前記第二加熱手段により形成される再結晶
雰囲気の温度としては、前記第一加熱手段により形成さ
れる前記昇華雰囲気の温度よりも、30〜300℃低い
のが好ましく、30〜150℃低いのがより好ましい。
【0108】前記第二加熱手段により形成される再結晶
雰囲気の圧力としては、10〜100Torr(133
0〜13300Pa)が好ましい。なお、この圧力条件
にする場合には、低温においては減圧にせず、設定温度
にまで加熱をしてから減圧を行い、前記所定の数値範囲
内になるように圧力条件を調整するのが好ましい。ま
た、前記再結晶雰囲気は、アルゴンガス等の不活性ガス
雰囲気にしておくのが好ましい。
【0109】本発明においては、前記第一加熱手段によ
り制御される、前記反応容器内の、炭化ケイ素粉末を収
容した一端部(昇華原料収容部)側の温度と、前記第二
加熱手段により制御される、前記反応容器内の、前記炭
化ケイ素単結晶の種結晶を配置した他端部(種結晶配置
部)側における中心部の温度及び該中心部の外側に位置
し反応容器の内周側面部との隣接部の温度とを、以下の
ような関係で制御するのが、大径の炭化ケイ素単結晶を
得る観点からは好ましい。即ち、炭化ケイ素粉末を収容
した一端部側の温度をTとし、炭化ケイ素単結晶の種
結晶を配置した他端部側の温度をTとし、該他端部側
における、反応容器の内周側面部との隣接部の温度をT
とした時、T−T及びT−Tが連続的又は段
階的に大きくなるように制御するのが好ましい。
【0110】この場合、T−Tが連続的又は段階的
に大きくなるので、経時的に、炭化ケイ素単結晶が前記
一端部側に向かって成長を続けても、該炭化ケイ素単結
晶の結晶成長先端側は常に再結晶が起こり易い状態に維
持される。一方、T−Tが連続的又は段階的に大き
くなるので、経時的に、炭化ケイ素単結晶が前記他端部
側における外周方向に向かって成長を続けても、該炭化
ケイ素単結晶の結晶成長外周端側は常に再結晶が起こり
易い状態に維持される。その結果、炭化ケイ素多結晶の
生成が効果的に抑制され、該炭化ケイ素単結晶は、その
径を拡大しながらその厚みを増す方向に成長を続け、最
終的には、炭化ケイ素多結晶等の混入がなく、大径の炭
化ケイ素単結晶が得られる点で有利である。
【0111】本発明においては、前記炭化ケイ素単結晶
は、第一の態様から第三の態様により再結晶し成長する
のが好ましい。
【0112】前記第一の態様においては、前記炭化ケイ
素単結晶を、その全成長過程を通して、その成長面の全
面を凸形状に保持したまま成長させる。この場合、前記
炭化ケイ素単結晶の成長面の全面において、前記他端部
(種結晶配置部)側に陥没した凹部が輪状に形成される
ことがない。
【0113】前記第二の態様においては、前記炭化ケイ
素単結晶の成長が、前記反応容器の前記端部における、
該反応容器内の周側面部との隣接部を除く領域(内側領
域)でのみ行われる。この場合、炭化ケイ素多結晶が、
前記他端部(種結晶配置部)における、該反応容器内の
周側面部に、接触した状態で成長することがない。この
ため、成長した炭化ケイ素単結晶を室温まで冷却した際
に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ素単結晶側に熱膨
張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得
られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の破損が生じてしまう
ことがない。
【0114】前記第三の態様においては、前記炭化ケイ
素単結晶を、その全成長過程を通して、その成長面の全
面を凸形状に保持したまま、かつ前記反応容器の前記端
部における、該反応容器内の周側面部との隣接部を除く
領域(内側領域)でのみ行われる。この場合、前記炭化
ケイ素単結晶の成長面の全面において、前記反応容器の
前記他端部(種結晶配置部)側に陥没した凹部が輪状に
形成されることがなく、また、炭化ケイ素多結晶が、前
記他端部(種結晶配置部)における、該反応容器内の周
側面部に、接触した状態で成長することがない。このた
め、成長した炭化ケイ素単結晶を室温まで冷却した際
に、炭化ケイ素多結晶側から炭化ケイ素単結晶側に熱膨
張差に基づく応力が集中して印加されることがなく、得
られる炭化ケイ素単結晶に割れ等の破損が生じてしまう
ことがない。
【0115】成長する前記炭化ケイ素単結晶の形状とし
ては、その成長面の全面がその成長方向側に凸形状であ
るのが好ましく、前記一端部(炭化ケイ素粉末収容部)
と前記他端部(種結晶配置部)とが対向している場合に
は、前記炭化ケイ素粉末側、即ち前記一端部(炭化ケイ
素粉末収容部)側に向かってその成長面の全面が凸形状
であるのが好ましい。この場合、多結晶や多型の混入が
多く、熱膨張差による応力が集中し易いと考えられると
ころの、前記他端部(種結晶配置部)側に陥没した凹部
が存在しない点で好ましい。
【0116】なお、成長する前記炭化ケイ素単結晶の形
状としては、その成長面の全面がその成長方向側と反対
側に凹形状となっている部分を含まない限り、前記凸形
状となっていなくても平坦な個所が一部に含まれていて
もよい。
【0117】また、炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素
の結晶の形状としては、前記炭化ケイ素粉末側、即ち前
記一端部側に向かって略山形であるのが好ましく、その
径が漸次小さくなる略山形であるのがより好ましい。な
お、前記略山形である炭化ケイ素の結晶における裾野部
分、即ち外周部分においては、炭化ケイ素多結晶や多型
が混入することがあるが、この混入は、前記種結晶の厚
み、大きさ、形状等と、前記第二加熱手段による加熱量
との条件の組み合わせにより、その発生を防止すること
ができる。該炭化ケイ素多結晶や多型の混入を防止する
と、前記炭化ケイ素を含む炭化ケイ素の結晶が、炭化ケ
イ素単結晶のみからなるものとすることができるので好
ましい。
【0118】なお、本発明においては、前記反応容器内
の周側面部にリング状の板部材を前記他端部(種結晶配
置部)と略平行に固定配置してもよい。この場合、前記
炭化ケイ素単結晶を前記種結晶上に再結晶し成長させる
際、前記種結晶上には前記炭化ケイ素単結晶のみを再結
晶し成長させることができ、炭化ケイ素多結晶を発生さ
せないか、あるいは前記リング状の板部材上に選択的に
析出させることができる。なお、この場合、得られる炭
化ケイ素単結晶の径は、前記リング状の板部材の分だけ
制約を受ける。
【0119】本発明においては、前記炭化ケイ素単結晶
の効率的な成長を行う目的で、前記第一加熱手段と前記
第二加熱手段との間の干渉を防止するための干渉防止手
段を用いることが好ましい。
【0120】前記干渉防止手段としては、特に制限はな
く、前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段の種類等に
応じて適宜選択することができるが、例えば、干渉防止
コイル、干渉防止板などが挙げられ、前記第一加熱手段
及び前記第二加熱手段が前記誘導加熱可能なコイルであ
る場合には、干渉防止コイルなどが好適に挙げられる。
【0121】前記干渉防止コイル(単に「コイル」と称
することがある)は、誘導電流を通電可能であり、誘導
電流を通電することにより、該第一加熱手段と該第二加
熱手段との間における干渉を防止する機能を有するもの
が好ましい。
【0122】前記干渉防止コイルは、前記第一加熱手段
と前記第二加熱手段との間に配置されるのが好ましい。
この場合、前記第一加熱手段及び前記第二加熱手段によ
る誘導加熱を同時に行った際に、該干渉防止コイルに誘
導電流が流れ、該干渉防止コイルが両者間における干渉
を極小化し防止することができる点で好ましい。
【0123】前記干渉防止コイルは、それ自身に流れる
誘導電流により加熱されないように設計するのが好まし
く、それ自身冷却可能であるのがより好ましく、水等の
冷却媒体を流通可能なのが特に好ましい。この場合、該
干渉防止コイルに前記第一加熱手段及び前記第二加熱手
段における誘導電流が流れたとしても、該干渉防止コイ
ルが加熱されることがなく、このため前記反応容器を加
熱することもない点で好ましい。
【0124】前記干渉防止コイルの環巻された巻数とし
ては、特に制限はなく、前記第一加熱手段及び前記第二
加熱手段の種類、これらに通電される電流の量等により
異なり一概に規定することはできないが、一重程度であ
っても十分である。
【0125】以上、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方
法によると、窒素含有量が低く、高品質であり、半絶縁
体乃至絶縁体であり、半絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等
として好適な炭化ケイ素単結晶を効率よく製造すること
ができる。
【0126】(炭化ケイ素単結晶)本発明の炭化ケイ素
単結晶は、前記本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法に
より製造される。
【0127】本発明の炭化ケイ素単結晶は、非破壊で光
学的に画像検出した結晶欠陥(パイプ欠陥)が100個
/cm以下であるのが好ましく、50個/cm以下
であるのがより好ましく、10個/cm以下であるの
が特に好ましい。前記結晶欠陥は、例えば、以下のよう
にして検出することができる。即ち、該炭化ケイ素単結
晶に対し、反射照明に適当量の透過照明を加えた照明を
当て、該炭化ケイ素単結晶の表面の結晶欠陥(パイプ欠
陥)の開口部に顕微鏡焦点を合わせた際に、該パイプ欠
陥の内部へと続く部分が該開口部の像よりも弱い影とし
て該開口部につながって観察することができる条件下
で、該炭化ケイ素単結晶の全面を走査して顕微鏡画像を
得た後、該顕微鏡画像を画像処理することにより、該パ
イプ欠陥に特長的な形状のみを抽出してその数を計測す
ることにより、該パイプ欠陥を検出することができる。
【0128】なお、上記の検出によると、前記炭化ケイ
素単結晶の表面に付着した異物や研磨傷、空隙欠陥など
の前記パイプ欠陥以外の欠陥が混在する中から、前記パ
イプ欠陥のみを非破壊で正確に検出することができ、し
かも、例えば0.35μm程度の微小な前記パイプ欠陥
までも正確に検出することができる。一方、従来から、
溶融アルカリにより前記パイプ欠陥部分を選択的にエッ
チングし、拡大して検出する方法が行われているが、こ
の方法の場合には、隣接する前記パイプ欠陥同士がエッ
チングにより互いに合一し、結果として前記パイプ欠陥
の数が少なく検出されてしまうという問題がある。
【0129】本発明の炭化ケイ素単結晶の体積抵抗値と
しては、1×10Ω・cm以上であるのが好ましく、
1×10Ω・cm以上であるのがより好ましく、1×
10 Ω・cm以上であるのが特に好ましい。前記体積
抵抗値が前記範囲内であると、該炭化ケイ素単結晶が半
絶縁性乃至絶縁性であり、半絶縁性乃至絶縁性単結晶基
板等として好適である点で有利である。
【0130】前記炭化ケイ素単結晶の窒素含有量として
は、0.1質量ppm以下であるのが好ましく、0.0
1質量ppm以下であるのがより好ましい。前記窒素含
有量が前記数値範囲内であると、該炭化ケイ素単結晶は
半絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等として特に好適である
点で有利である。なお、前記窒素含有量は、例えば、酸
素窒素同時分析装置、二次イオン質量分析装置、グロー
放電質量分析装置、フォトルミネッセンス測定装置等を
用いて測定することができる。
【0131】前記炭化ケイ素単結晶における前記不純物
元素の総含有量としては、10質量ppm以下であるの
が好ましい。
【0132】本発明の炭化ケイ素単結晶は、窒素含有量
が低く、高品質であり、半絶縁体乃至絶縁体であり、半
絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等として特に好適に使用す
ることができる。
【0133】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明
はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0134】(実施例1)図1に示す炭化ケイ素単結晶
の製造装置1を用いて炭化ケイ素単結晶を製造した。炭
化ケイ素単結晶の製造装置1は、炭化ケイ素粉末40を
収容可能な容器本体12、及び容器本体12に対し螺合
により着脱可能であり、容器本体12に装着された際に
容器本体12内に収容された炭化ケイ素粉末40に対向
する面の略中央に炭化ケイ素単結晶の種結晶50を配置
可能な蓋体11を備えた黒鉛製坩堝10と、黒鉛製坩堝
10を石英管30の内部に固定させる支持棒31と、石
英管30の外周であって黒鉛製坩堝10における炭化ケ
イ素粉末40が収容された部分に配置された第一誘導加
熱コイル21と、石英管30の外周であって黒鉛製坩堝
10における蓋体11が位置する部分に配置された第二
誘導加熱コイル20とを備える。なお、黒鉛製坩堝10
は、断熱材(図示せず)で覆われている。
【0135】炭化ケイ素粉末40は、以下のようにして
調製した。即ち、SiO2含有量40質量%の高純度テ
トラエトキシシラン212gに対し、触媒として高純度
マレイン酸34gを加えた後、50質量%高純度液体の
レゾール型キシレン樹脂(三菱ガス化学(株)製、ニカ
ノールPR−1440M)127gを混合すると、高粘
度の飴状混合物が得られた。この飴状混合物を70℃で
熱硬化させて、均質な樹脂状固形物を得た。この樹脂状
固形物300gを真空下、900℃にて1時間炭化し、
129gの炭化物を得た(収率43%)。なお、前記樹
脂状固形物における前記C/Si比は、計算値で、(1
27g×0.5×0.4/12.011)/(0.4×
212g/60.0843)=1.5、であり、元素分
析の結果は1.52であった。この炭化物129gを炭
素製容器に入れ、800℃/時間で1600℃まで昇温
した後、100℃/時間で1900℃まで昇温し、その
後1900℃で2時間保持して焼成を行い、β−SiC
を得た。この時の収率は35質量%であった。更にこの
粉末をアルゴン雰囲気下で2350℃まで昇温し、6時
間保持し、高純度の炭化ケイ素粉末(100質量%α−
SiCである)を得た。得られた炭化ケイ素粉体40は
淡緑灰色であった。また、グロー放電質量分析装置等を
用いても、0.1質量ppmを超える不純物元素は検出
されなかった。
【0136】炭化ケイ素粉末40における窒素含有量
を、酸素窒素同時分析装置(LECO社製、TC43
6)を用いて測定したところ、40質量ppm未満であ
った。また、炭化ケイ素粉末40における前記不純物元
素の分析を、該炭化ケイ素粉末40を、フッ酸、硝酸及
び硫酸を含む混酸で加圧熱分解した後、ICP−質量分
析法及びフレームレス原子吸光法で行ったところ、前記
不純物元素としてのB、Na、K、Al、Cr、Fe、
Ni、Cu、W、Ti、及び、Caの含有量は、それぞ
れ0.1質量ppm以下であった。また、炭化ケイ素粉
末40の体積平均粒径(D50)及び粒度分布(D90
/D10)(体積平均粒径基準)を、粒度分布測定装置
(COULTER LS230)にて測定したところ、
体積平均粒径(D50)が300μmであり、粒度分布
(D90/D10)(体積平均粒径基準)は3.4であ
り、一山の分布であった。
【0137】次に、炭化ケイ素単結晶の製造装置1にお
いて、第一誘導加熱コイル21に電流を通電させこれを
加熱した。その熱で炭化ケイ素粉末40を加熱し、25
00℃にまで加熱した後、アルゴンガス雰囲気で圧力を
50Torr(6645Pa)に減圧、維持した。炭化
ケイ素粉末40は、所定の温度(2500℃)にまで加
熱されて昇華した。昇華した炭化ケイ素粉末40は、再
結晶化温度にまで冷却されない限り再結晶しない。ここ
で、蓋体11側は、第二誘導加熱コイル20により加熱
されており、炭化ケイ素粉末40側よりも温度が低く
(種結晶の温度は2400℃)、昇華した炭化ケイ素粉
末40が再結晶し得る再結晶雰囲気(圧力は50Tor
r(6645Pa))に維持されているため、炭化ケイ
素単結晶の種結晶50上近傍にのみ炭化ケイ素が再結晶
し、炭化ケイ素の結晶が成長した。
【0138】このとき、図2に示す通り、炭化ケイ素単
結晶の種結晶50上には炭化ケイ素単結晶60が再結晶
し成長し、炭化ケイ素単結晶の種結晶50の外周縁部に
は炭化ケイ素多結晶70が再結晶し成長した。炭化ケイ
素単結晶60の成長は、その全成長過程において炭化ケ
イ素粉末40側に向かって凸形状が維持され、蓋体11
側に陥没した凹部が輪状に形成されることがなく、ま
た、炭化ケイ素多結晶70が、容器本体12内の周側面
部13に接触した状態で成長することもなかった。
【0139】その結果、図3に示す通り、成長した炭化
ケイ素単結晶60を室温まで冷却した際に、炭化ケイ素
多結晶70側から炭化ケイ素単結晶60側に熱膨張差に
基づく応力が集中して印加されることがなく、得られる
炭化ケイ素単結晶60に割れ等の破損が生じてしまうこ
ともなかった。
【0140】得られた炭化ケイ素単結晶60について、
評価したところ、多結晶や多型の結晶の混入がなく、マ
イクロパイプの結晶欠陥も4個/cmとほとんど存在
せず極めて高品質であった。なお、前記マイクロパイプ
の結晶欠陥の検出は、得られた炭化ケイ素単結晶60を
厚み0.4mmに切断し、鏡面研磨により表面粗さ0.
4nmのウエハとし、アルカリ洗浄により表面の異物を
極力除去した後に、後述の通り検出した。即ち、アルカ
リ洗浄後の前記ウエハに対し、反射照明に適当量の透過
照明を加えた照明を当て、前記ウエハ表面のマイクロパ
イプの開口部に顕微鏡焦点を合わせた際に、該マイクロ
パイプの内部へと続く部分が該開口部の像よりも弱い影
として該開口部につながって観察することができる条件
下で、前記ウエハの全面を走査して顕微鏡画像を得た
後、該顕微鏡画像を画像処理することにより、該マイク
ロパイプに特長的な形状のみを抽出してその数を計測す
ることにより、該マイクロパイプを検出した。なお、こ
の検出では、0.35μm程度の微小なマイクロパイプ
までも非破壊で正確に検出した。
【0141】また、得られた炭化ケイ素単結晶60を、
フッ酸及び硝酸を含む混酸で加圧・熱分解し、得られた
溶液を10倍以上に濃縮してICP−質量分析及びフレ
ームレス原子吸光分析を用いて前記不純物元素の分析を
行ったところ、前記不純物元素としてのB、Na、K、
Al、Cr、Fe、Ni、Cu、W、Ti、及び、Ca
の含有量は、それぞれ15質量ppb以下であった。ま
た、得られた炭化ケイ素単結晶60の体積抵抗値を測定
したところ、4×10Ω・cmであった。なお、得ら
れた炭化ケイ素単結晶60の窒素含有量につき、フォト
ルミネッセンス測定装置を使用して測定したところ、
0.01質量ppmであった。
【0142】(実施例2)実施例1において、黒鉛製坩
堝10を図4に示す黒鉛製坩堝10に変更した以外は実
施例1と同様にした。その結果、実施例1と同様の結果
が得られた。図4に示す黒鉛製坩堝10は、蓋体11に
内側領域形成部15が設けられている点でのみ、実施例
1で使用した図1に示す黒鉛製坩堝10と相違する。内
側領域形成部15は、図4に示す通り、炭化ケイ素単結
晶の種結晶が配置される前記内側領域を底面とする円柱
状であり、その一端が黒鉛製坩堝10の外部に露出して
いる。内側領域形成部15の材料は、熱伝導度が117
J/m/s/℃(W/m・K)であり、内側領域形成部
15以外の蓋体11の材料は、熱伝導度が129J/m
/s/℃(W/m・K)であった。実施例2の場合、前
記内側領域が前記外側領域とは別の部材(内側領域形成
部15)で形成されているため、接触抵抗の差により加
熱され難くなっており、また、内側領域形成部15の一
端が外部に露出しているので熱を外部に放熱し易くなっ
ているので、炭化ケイ素の再結晶が容易に行われた。
【0143】(実施例3)実施例1において、黒鉛製坩
堝10を図5に示す黒鉛製坩堝10に変更し、図8に示
す炭化ケイ素単結晶の製造装置80を用いた以外は実施
例1と同様にした。その結果、実施例1と同様の結果が
得られた。図5に示す黒鉛製坩堝10は、蓋体11に内
側領域形成部15が設けられている点でのみ、実施例1
で使用した図1に示す黒鉛製坩堝10と相違する。内側
領域形成部15は、図5に示す通り、炭化ケイ素単結晶
の種結晶が配置される前記内側領域を底面とし前記外部
に向けて不連続的に2段階その径が大きくなる階段状を
底面とする形状であり、その一端が外部に露出してい
る。内側領域形成部15の材料は、熱伝導度が117J
/m/s/℃(W/m・K)であり、内側領域形成部1
5以外の蓋体11の材料は、熱伝導度が129J/m/
s/℃(W/m・K)であった。実施例3の場合、前記
内側領域が前記外側領域とは別の部材で形成されている
ため、接触抵抗の差により加熱され難くなっており、ま
た、内側領域形成部15の一端が外部に露出しているの
で熱を外部に放熱し易くなっているので、炭化ケイ素の
再結晶が容易に行われた。
【0144】(実施例4)実施例1において、以下の点
が相違する以外は実施例1と同様にした。即ち、得られ
た炭化ケイ素粉末が、6H、平均粒径が300μmであ
り、炭化ケイ素単結晶の種結晶50は、実施例1で得ら
れたバルクの炭化ケイ素単結晶を切断し、全面を鏡面研
磨して得られた15Rのウエハ(直径40mm・厚み
0.5mm)である。そして、第一誘導加熱コイル21
に20kHzの電流を通電させこれを加熱し、第二誘導
加熱コイル20に40kHzの電流を通電させこれを昇
温し、加熱した。黒鉛製坩堝10の下部(炭化ケイ素粉
末40の収容部)を2312℃、黒鉛製坩堝10の上部
(蓋体11における炭化ケイ素単結晶の種結晶50の配
置部)を2290℃にそれぞれ加熱した。このとき、第
一誘導加熱コイル21への供給電力は10.3kWであ
り、誘導加熱電流(LC回路への供給電流)は260A
であり、第二誘導加熱コイル20への供給電力は4.6
kWであり、誘導加熱電流は98Aであった。圧力を常
圧から1時間かけて20Torr(2658Pa)に減
圧し、20時間維持したところ、図6に示すように、炭
化ケイ素粉末40側に向かって凸形状が維持された炭化
ケイ素単結晶60が得られた。このとき、炭化ケイ素単
結晶60における該凸形状の先端までの高さは12mm
であり、炭化ケイ素単結晶60とその周囲に形成された
炭化ケイ素多結晶とを含む炭化ケイ素の成長結晶の直径
は87mmであった。炭化ケイ素単結晶60において
は、蓋体11方向に陥没する凹部が輪状に形成されるこ
とがなかった。また、炭化ケイ素単結晶60は、黒鉛製
坩堝10の容器本体12の周側面部13に接触した状態
で成長することはなかった。更に、炭化ケイ素単結晶6
0は、その周囲に炭化ケイ素多結晶70が僅かしか発生
していなかった。
【0145】(実施例5)実施例4において、以下の点
が相違する以外は実施例1と同様にした。即ち、炭化ケ
イ素単結晶の種結晶50の直径が20mm・厚み0.5
mmであり、黒鉛製坩堝10の下部(炭化ケイ素粉末4
0の収容部)を2349℃に加熱し、黒鉛製坩堝10の
上部(蓋体11における炭化ケイ素単結晶の種結晶50
の配置部)の加熱温度が2317℃であり、その際の第
二誘導加熱コイル20への供給電力が5.5kWであ
り、誘導加熱電流が118Aであり、炭化ケイ素単結晶
60とその周囲に形成された炭化ケイ素多結晶とを含む
炭化ケイ素の成長結晶の直径は60mmであったこと以
外は、実施例4と同様であり、実施例4と同様の良好な
結果が得られた。
【0146】(実施例6)実施例1において、以下の点
が相違する以外は実施例1と同様にした。即ち、干渉防
止コイル22を内部に水が流れ、冷却可能な干渉防止コ
イル22を用いた。得られた炭化ケイ素粉末が、6H、
平均粒径が250μmであり、炭化ケイ素単結晶の種結
晶50は、実施例4で得られたバルクの炭化ケイ素単結
晶を切断し、全面を鏡面研磨して得られた直径25mm
・厚み2mmのウエハ(6H)である。そして、第一誘
導加熱コイル21に20kHzの電流を通電させこれを
加熱し、第二誘導加熱コイル20に40kHzの電流を
通電させこれを加熱した。黒鉛製坩堝10の下部(炭化
ケイ素粉末40の収容部)及び上部(蓋体11における
炭化ケイ素単結晶の種結晶50の配置部)を2510℃
まで、それぞれ昇温し、1時間加熱した。そして、黒鉛
製坩堝10の下部は同温度(T)を維持したまま、第
二誘導加熱コイル20への供給電力を徐々に低下(5.
8kW、120Aから4.2kW、90Aまで低下)さ
せることにより、黒鉛製坩堝10の蓋体11における種
結晶配置部の温度を20時間かけて2350℃(T
まで、蓋体11における種結晶配置部の外周部の温度は
計算値の推定温度で2480℃(T )まで、それぞれ
低下させた。このとき、同時に圧力を常圧から1時間か
けて20Torr(2658Pa)に減圧したところ、
図7に示すように、炭化ケイ素粉末40側に向かって凸
形状が維持された炭化ケイ素単結晶60が得られた。こ
のとき、炭化ケイ素単結晶60における該凸形状の先端
までの高さは18mmであった。炭化ケイ素単結晶60
においては、蓋体11方向に陥没する凹部が輪状に形成
されることがなかった。また、炭化ケイ素単結晶60
は、黒鉛製坩堝10の容器本体12の周側面部13に接
触した状態で成長することはなかった。更に、炭化ケイ
素単結晶60は、その周囲に炭化ケイ素多結晶70が隣
接して発生乃至成長することがなかった。
【0147】(実施例7)実施例1において、以下の点
が相違する以外は実施例1と同様にした。即ち、第二誘
導加熱コイル20及び第一誘導加熱コイル21を図8に
示す従来の炭化ケイ素単結晶の製造装置80における誘
導加熱コイル25に代え、黒鉛製坩堝の蓋体11におけ
る、容器本体12の内部と対向する側の面(炭化ケイ素
単結晶の成長が行われる面)の内、中心から半径60m
mの円の外側領域のみに、X線回折にてガラス状乃至ア
モルファス状であると判断されるカーボン薄膜を、以下
の方法により厚み1〜10μmの厚みに成膜した。蓋体
11における前記外側領域だけを露出した状態で真空チ
ャンバー内に設置し、ベンゼン雰囲気下、チャンバー内
の圧力を0.23Paに調節した。その後、蓋体11を
2.5kVの負電位に保ち、フィラメントとアノードと
の対向部分に発生させたアーク放電プラズマでベンゼン
を分解することによりプラズマ中で生じた正イオンを高
速で、蓋体11における前記外側領域に衝突させること
により、成膜を行った。実施例7では、蓋体11におけ
る容器本体12の内部と対向する側の面において、ガラ
ス状カーボン乃至アモルファス状カーボンの成膜を行っ
た部分には炭化ケイ素の結晶が成長せず、成膜を行わな
かった中心部分(直径60mmの円形部分)のみに、炭
化ケイ素粉末40側に向かってその成長面の全面が凸形
状に維持された炭化ケイ素単結晶60が成長していた。
このため、炭化ケイ素単結晶60は、黒鉛製坩堝10の
容器本体12の周側面部13に接触した状態で成長する
ことはなく、室温まで冷却した際に、割れ等の破損が生
ずることがなかった。
【0148】(実施例8)図8に示す炭化ケイ素単結晶
の製造装置80を用いた以外は、実施例1と同様にして
炭化ケイ素単結晶を製造した。
【0149】具体的には、石英管30の外周であって黒
鉛製坩堝10における蓋体11が位置する部分に配置さ
れた第一誘導加熱コイル21及び第二誘導加熱コイル2
0にを、石英管30の外周であって黒鉛製坩堝10が位
置する部分に略等間隔に螺旋状に環巻された状態で配置
された誘導加熱コイル25に代え、干渉防止コイル22
を用いなかった以外は実施例1と同様にした。
【0150】実施例8では、図9に示す通り、蓋体11
における、容器本体12内部と対向する側の全表面は炭
化ケイ素の結晶で覆われ、蓋体11の外周縁部に炭化ケ
イ素多結晶70が容器本体12の内部周側面に接触した
状態で成長した。この状態において、室温にまで冷却を
行うと、炭化ケイ素多結晶70側から炭化ケイ素単結晶
60側に熱膨張差に基づく応力が集中して印加され、図
9に示す通り、炭化ケイ素単結晶60に割れが生じた。
【0151】(比較例1)実施例1において、炭化ケイ
素粉末40の製造の際に用いたレゾール型キシレン樹脂
をレゾール型フェノール樹脂に代えた以外は、実施例1
と同様にして炭化ケイ素粉末40を製造した。得られた
炭化ケイ素粉末における窒素含有量は、500質量pp
m以上であった。この炭化ケイ素粉末40を用いて炭化
ケイ素単結晶60を製造し、実施例1と同様の評価を行
ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。ただ
し、炭化ケイ素単結晶60の体積抵抗値は0.02Ω・
cmであり、窒素含有量は160質量ppmであった。
【0152】
【発明の効果】本発明によると、前記不純物元素の含有
量が少なく、かつ前記不純物元素でない窒素等の元素の
含有量も少なく、半絶縁体乃至絶縁体として使用可能で
あり、半絶縁性乃至絶縁性単結晶基板等として好適に使
用可能な炭化ケイ素単結晶、及び、該炭化ケイ素単結晶
を効率よく製造し得る炭化ケイ素単結晶の製造方法を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
における初期状態を説明するための概略図である。
【図2】図2は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
により炭化ケイ素単結晶を製造している状態を説明する
ための概略図である。
【図3】図3は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
により製造された本発明の炭化ケイ素単結晶の概略図で
ある。
【図4】図4は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
に用いた坩堝の一例を示す概略説明図である。
【図5】図5は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
に用いた坩堝の他の例を示す概略説明図である。
【図6】図6は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
により製造された本発明の炭化ケイ素単結晶の概略図で
ある。
【図7】図7は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
により製造された本発明の炭化ケイ素単結晶の概略図で
ある。
【図8】図8は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
により炭化ケイ素単結晶を製造している状態を説明する
ための概略図である。
【図9】図9は、本発明の炭化ケイ素単結晶の製造方法
により製造された炭化ケイ素単結晶の概略図である。
【符号の説明】
1 炭化ケイ素単結晶の製造装置 10 黒鉛製坩堝 11 蓋体 12 容器本体 13 周側面部 15 内側領域形成部 20 第二誘導加熱コイル 21 第一誘導加熱コイル 22 干渉防止コイル 25 誘導加熱コイル 30 石英管 31 支持棒 40 炭化ケイ素粉末 50 炭化ケイ素単結晶の種結晶 60 炭化ケイ素単結晶 70 炭化ケイ素多結晶 71 凹部 80 炭化ケイ素単結晶の製造装置

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒素含有量が100質量ppm以下であ
    り、かつ不純物元素の各含有量が0.1質量ppm以下
    である炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭
    化ケイ素単結晶を成長させることを特徴とする炭化ケイ
    素単結晶の製造方法。
  2. 【請求項2】 炭化ケイ素粉末の窒素含有量が50質量
    ppm以下である請求項1に記載の炭化ケイ素単結晶の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 窒素含有量が0.1質量ppm以下であ
    る炭化ケイ素粉末を昇華させてから再結晶させて炭化ケ
    イ素単結晶を成長させることを特徴とする炭化ケイ素単
    結晶の製造方法。
  4. 【請求項4】 炭化ケイ素粉末が、ケイ素源とキシレン
    系樹脂とを少なくとも含有する混合物を焼成して得られ
    る請求項1から3のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 ケイ素源が、アルコキシシラン化合物で
    ある請求項4に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  6. 【請求項6】 混合物が、ケイ素源に酸を添加した後、
    キシレン系樹脂を添加して得られる請求項4又は5に記
    載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  7. 【請求項7】 焼成の際、混合物における、キシレン系
    樹脂に含まれる炭素とケイ素源に含まれるケイ素との比
    が1.8以下である請求項4から6のいずれかに記載の
    炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  8. 【請求項8】 炭化ケイ素粉末の体積平均径が50〜4
    00μmである請求項1から7のいずれかに記載の炭化
    ケイ素単結晶の製造方法。
  9. 【請求項9】 炭化ケイ素粉末が、結晶多型がベータ型
    (3C)である炭化ケイ素粉末を30質量%以下含有す
    る請求項1から8のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 炭化ケイ素単結晶を、その全成長過程
    を通して、その成長面の全面を凸形状に保持したまま成
    長させる請求項1から9のいずれかに記載の炭化ケイ素
    単結晶の製造方法。
  11. 【請求項11】 炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の
    結晶を略山形に成長させる請求項1から10のいずれか
    に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  12. 【請求項12】 炭化ケイ素単結晶を含む炭化ケイ素の
    結晶が、炭化ケイ素単結晶のみからなる請求項1から1
    1のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  13. 【請求項13】 炭化ケイ素粉末を反応容器内に収容
    し、該反応容器内の該炭化ケイ素粉末に略対向する端部
    に炭化ケイ素単結晶の種結晶を配置し、炭化ケイ素単結
    晶を含む炭化ケイ素の結晶の成長が、該端部における、
    該反応容器内の周側面部との隣接部を除く領域でのみ行
    われる請求項1から12のいずれかに記載の炭化ケイ素
    単結晶の製造方法。
  14. 【請求項14】 炭化ケイ素粉末を反応容器内の一端部
    側に収容し、該反応容器内の他端部側に炭化ケイ素単結
    晶の種結晶を配置し、前記一端部側に配置した第一加熱
    手段により、該炭化ケイ素粉末が昇華可能となるように
    昇華雰囲気を形成し、前記他端部側に配置した第二加熱
    手段により、前記第一加熱手段により昇華された炭化ケ
    イ素が前記炭化ケイ素単結晶の種結晶近傍でのみ再結晶
    可能となるように再結晶雰囲気を形成し、該炭化ケイ素
    を前記炭化ケイ素単結晶の種結晶上に再結晶させる請求
    項1から13のいずれかに記載の炭化ケイ素単結晶の製
    造方法。
  15. 【請求項15】 第一加熱手段及び第二加熱手段が誘導
    加熱可能なコイルである請求項14に記載の炭化ケイ素
    単結晶の製造方法。
  16. 【請求項16】 第一加熱手段における誘導加熱電流の
    電流値が、第二加熱手段における誘導加熱電流の電流値
    よりも大きい請求項15に記載の炭化ケイ素単結晶の製
    造方法。
  17. 【請求項17】 第二加熱手段における誘導加熱電流の
    電流値を、成長する炭化ケイ素単結晶の径が大きくなる
    につれて、連続的又は段階的に小さくする請求項15又
    は16に記載の炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  18. 【請求項18】 反応容器内の、炭化ケイ素粉末を収容
    した一端部側の温度をTとし、炭化ケイ素単結晶の種
    結晶を配置した他端部側の温度をTとし、該他端部側
    における、反応容器の内周側面部との隣接部の温度T
    とした時、T −T及びT−Tが連続的又は段階
    的に大きくなる請求項14から17のいずれかに記載の
    炭化ケイ素単結晶の製造方法。
  19. 【請求項19】 請求項1から18のいずれかに記載の
    炭化ケイ素単結晶の製造方法により製造されることを特
    徴とする炭化ケイ素単結晶。
  20. 【請求項20】 非破壊で光学的に画像検出した中空パ
    イプ状の結晶欠陥が100個/cm以下である請求項
    19に記載の炭化ケイ素単結晶。
  21. 【請求項21】 不純物元素の総含有量が10質量pp
    m以下である請求項19又は20に記載の炭化ケイ素単
    結晶。
  22. 【請求項22】 体積抵抗値が1×10Ω・cm以上
    である請求項19から21のいずれかに記載の炭化ケイ
    素単結晶。
  23. 【請求項23】 窒素含有量が0.01質量ppm以下
    である請求項19から22のいずれかに記載の炭化ケイ
    素単結晶。
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