JP2003001486A - サブマージアーク溶接用フラックスおよびサブマージアーク溶接継手の製造方法。 - Google Patents
サブマージアーク溶接用フラックスおよびサブマージアーク溶接継手の製造方法。Info
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Abstract
マージアーク溶接用フラックスおよび大入熱サブマージ
アーク溶接継手の製造方法を提供する。 【解決手段】 フラックス全量に対し質量%で、N含有
量が0.0030%以下のアトマイズ鉄粉を20〜45%、あるい
はさらに、BをB換算で0.03〜0.30%、あるいはさら
に、MoをMo換算で0.2 〜2.0 %、NbをNb換算で0.02〜0.
15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する
フラックスとする。このフラックスを使用して、Ti:0.
006 質量%以下、Nb:0.012 質量%以下の母材組成を有
する鋼材を入熱150kJ/cm以上の大入熱サブマージアーク
溶接により溶接接合することにより、粒界フェライト生
成量が減少し、高靭性の溶接金属を得ることができる。
Description
溶接用フラックスに係り、とくに入熱150kJ/cm以上の大
入熱サブマージアーク溶接に好適なフラックスおよびそ
れらフラックスを用いた大入熱サブマージアーク溶接継
手の製造方法に関する。
率の向上が強く要望されている。溶接能率を高めるため
には、溶接入熱を高くするのが一般的であるが、通常、
溶接入熱を高めると、溶接金属の靱性が低下する。これ
は、溶接入熱の増加に伴い溶接部の冷却速度が低下し、
溶接金属の組織が粗大化しやすいことにその原因があ
る。
散布したフラックス中でアークを発生させ連続溶接を行
う方法であり、大電流でも安定したアークが形成でき、
深い溶け込みと大きな溶着量が得られる高能率な溶接方
法として、造船、橋梁、圧力容器、産業機械等の厚鋼板
を接合する分野で広く利用されている。しかし、サブマ
ージアーク溶接法は、大電流で溶接を行うため、溶接入
熱が高くなり、溶接金属の靱性が低下しやすいという傾
向を有していた。
328793号公報には、サブマージアーク溶接において、フ
ラックスにボロン(B)酸化物を添加し、フラックスを
介し溶接金属にBを含有させ溶接金属の靱性を改善する
技術が開示されている。特開平7-328793号公報に記載さ
れた技術は、サブマージアーク溶接用フラックスを、B2
O3:0.7 〜2.0 %を含む組成とし、ワイヤのSi含有量を
低くし、フラックスとワイヤ中のMn含有量を最適化する
ことにより、溶接金属の靱性を向上させる溶接方法であ
る。
7-328793号公報に記載された技術によっても、490 〜52
0MPa級の高強度鋼材を溶接入熱150kJ/cm以上の大入熱サ
ブマージアーク溶接で溶接して得られる溶接金属の靱性
は、使用する鋼材、および/または溶接ワイヤとフラッ
クスによって、著しく劣化する場合があり、安定して高
靱性の大入熱溶接金属を得ることができないという問題
が明らかとなった。
利に解決し、溶接入熱150kJ/cm以上の大入熱サブマージ
アーク溶接で鋼材を溶接した場合にも、優れた靱性を有
する溶接金属が得られるサブマージアーク溶接用フラッ
クスおよびこれを使用した優れた溶接金属部靱性を有す
る大入熱サブマージアーク溶接継手の製造方法を提案す
ることを目的とする。
課題を達成するために、被溶接材である490 〜520MPa級
鋼材を溶接入熱150kJ/cm以上の大入熱サブマージアーク
溶接で接合し、得られた溶接金属の靱性に影響する各種
要因について鋭意研究した。その結果、溶接入熱150kJ/
cm以上の大入熱サブマージアーク溶接により得られた溶
接金属の靱性は、N(窒素)に対し非常に敏感であり、
N含有量のわずかな変化により、靱性が顕著に劣化する
場合があることを見いだした。
少ない鋼材の場合には、わずかのN含有量の増加によっ
て、溶接金属の組織が粗大化し、靱性が著しく劣化す
る。これは、TiおよびNb含有量が少ない鋼材の場合に
は、溶接金属にTiやNbが十分に供給されず、固溶N量を
最適値に調整することが難しいことによるものと考えら
れる。固溶N量の調整は、溶接ワイヤとしてTiやNbを含
有するワイヤを使用することにより、ある程度は改善で
きるが、溶接ワイヤとしてTiやNbを含有しないワイヤを
使用する場合には、その調整が困難であり、溶接金属靱
性が著しく劣化していた。Tiを含有しないワイヤを使用
した場合には、溶接金属の靭性劣化はとくに顕著とな
る。
材では、Ti含有量が0.006 質量%以下、Nb含有量が0.01
2 質量%以下のTi、Nb含有の少ない鋼材が代表的であ
り、安定して高い靭性の溶接金属を得ることが難しい場
合が多く、この種の鋼材の溶接にあたり安定して靭性に
優れた溶接金属を得ることが熱望されている。本発明者
らは、上記した知見に基づいて、さらに検討を進めた結
果、被溶接材がTiおよびNb含有量が少ない鋼材の場合
に、Tiをとくに含まない溶接用ワイヤを用いて大入熱サ
ブマージアーク溶接を行っても、溶接用フラックスに添
加する鉄粉としてN含有量が0.0030質量%以下のアトマ
イズ鉄粉を使用することにより、安定して高靱性の溶接
金属を得ることが可能であることに想到した。
ーク溶接金属に更なる高靱性を安定して付与するため
に、さらに研究を行った。まず、Tiを0.006 質量%以
下、Nbを0.012 質量%以下含有する鋼材(板厚40mm)を
溶接入熱150kJ/cm以上の大入熱サブマージアーク溶接し
て得られた溶接継手について、溶接金属の組織および靭
性を調査した。その結果を、靭性(0℃における吸収エ
ネルギー:vE0 )と組織(粒界フェライト生成量)との
関係で図3に示す。図3から、粒界フェライト生成量を
15面積%以下、好ましくは10面積%以下とすることによ
り、vE0 :40J以上という高靭性を安定して得られると
いう知見を得た。
粒界フェライト生成量に及ぼす要因について検討した。
その結果、図4に示すように、溶接金属中のB/N比
(質量比)を適正値に調整することにより、粒界フェラ
イト生成量を低減できることを見いだした。また、本発
明者らは、上記したような、溶接金属の組織を粒界フェ
ライト生成量が好ましくは10面積%以下の組織とするた
めには、溶接用フラックスにMo,Nb等を含有させること
が好ましく、これにより、溶接金属にMo,Nb 等が含有さ
れ、溶接金属中のB/Nを適正値に調整することがで
き、さらなる高靭性の大入熱サブマージアーク溶接金属
を安定して得ることができることを知見した。また、さ
らに少量のTiをフラックスに含有させることも有効であ
ることを知見した。
検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明
の要旨は、つぎのとおりである。 (1)N含有量が0.0030質量%以下のアトマイズ鉄粉
を、フラックス全量に対し20〜45質量%含有することを
特徴とするサブマージアーク溶接用フラックス。 (2)(1)において、さらに、B化合物を、B換算で
フラックス全量に対し0.03〜0.30質量%含有することを
特徴とするサブマージアーク溶接用フラックス。 (3)(1)または(2)において、さらに(A)群:
Mo粉、フェロモリブデン粉およびMo化合物粉のうちの1
種または2種以上をMo換算で合計でフラックス全量に対
し0.2 〜2.0 質量%、(B)群:Nb粉、フェロニオブ粉
およびNb化合物粉のうちの1種または2種以上をNb換算
で合計でフラックス全量に対し0.02〜0.15質量%、のう
ちから選ばれた1群または2群以上を含むことを特徴と
するサブマージアーク溶接用フラックス。 (4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、フラッ
クス全量に対し質量%で、SiO2:10〜28%、CaCO3 :5
〜15%、MgO :15〜38%、Al2O3 :3 〜20%、TiO2:2
〜10%、CaF2:2〜10%、アトマイズ鉄粉、Mo粉、フェ
ロモリブデン粉、Nb粉およびフェロニオブ粉以外の金属
粉:2〜8%、のうちから選ばれた1種または2種以上
を含有することを特徴とするサブマージアーク溶接用フ
ラックス。 (5)Ti含有量が0.006 質量%以下、Nb含有量が0.012
質量%以下の母材組成を有する鋼材を入熱150kJ/cm以上
の大入熱サブマージアーク溶接により溶接接合するサブ
マージアーク溶接継手の製造方法において、前記大入熱
サブマージアーク溶接で使用するフラックスを、N含有
量が0.0030質量%以下のアトマイズ鉄粉をフラックス全
量に対し質量%で20〜45%含むフラックス組成のフラッ
クスとすることを特徴とする優れた溶接金属部靱性を有
するサブマージアーク溶接継手の製造方法。 (6)(5)において、前記フラックス組成が、さらに
B化合物をフラックス全量に対しB換算で0.03〜0.30質
量%を含むことを特徴とするサブマージアーク溶接継手
の製造方法。 (7)(5)または(6)において、前記フラックス組
成が、さらに(A)群:Mo粉、フェロモリブデン粉およ
びMo化合物粉のうちの1種または2種以上をMo換算で合
計でフラックス全量に対し0.2 〜2.0 質量%、(B)
群:Nb粉、フェロニオブ粉およびNb化合物粉のうちの1
種または2種以上をNb換算で合計でフラックス全量に対
し0.02〜0.15%、のうちから選ばれた1群または2群以
上を含むことを特徴とするサブマージアーク溶接継手の
製造方法。 (8)(5)ないし(7)のいずれかにおいて、前記フ
ラックス組成が、さらに、フラックス全量に対し質量%
で、SiO2:10〜28%、CaCO3 :5〜15%、MgO :15〜38
%、Al2O3 :3 〜20%、TiO2:2〜10%、CaF2:2〜10
%、アトマイズ鉄粉、Mo粉、フェロモリブデン粉、Nb粉
およびフェロニオブ粉以外の金属粉:2〜8%、のうち
から選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴
とするサブマージアーク溶接継手の製造方法。
フラックスは、ボンドフラックスであり、入熱150kJ/cm
以上の大入熱サブマージアーク溶接に好適である。ま
ず、本発明のサブマージアーク溶接用フラックスの組成
限定理由について、説明する。以下、とくにことわりの
ない場合にはフラックス全量に対する質量%とし、質量
%は単に%で記す。
物、フッ化物で構成されているが、大入熱でかつ高能率
の溶接に使用するフラックスには金属粉、主として鉄粉
が含有されている。フラックス中の鉄粉は、溶接時に溶
融池へ移行し溶着速度を増加し、溶接能率の向上に寄与
する。9本発明のサブマージアーク溶接用フラックス
は、フラックス全量に対し、20〜45%の鉄粉を含有す
る。フラックス中の鉄粉の含有量が20%未満では、上記
した効果が少なく、一方、45%を超えて含有すると、ア
ークが不安定となりビード外観が劣化する傾向を示す。
このようなことから、鉄粉の含有量は、フラックス全量
に対し、20〜45%とする。
が0.0030%以下のアトマイズ鉄粉を使用する。フラック
ス中の鉄粉に含まれるNは、溶接金属中のNを増加さ
せ、溶接金属の靱性を低下させる。このため、本発明で
はフラックス中の鉄粉のN含有量はできるだけ低減する
のが好ましい。鉄粉中のN含有量が0.0030%を超える
と、得られる溶接金属のN含有量が増加し、高靱性を安
定して確保することが難しくなる傾向を示し、このた
め、本発明ではフラックス中の鉄粉のN含有量を0.0030
%以下に限定した。なお、鉄粉中のN含有量は0.0025%
以下とするのが好ましく、経済的な観点から0.0010%以
上とするのがより好ましい。
らアトマイズ法で製造されたアトマイズ鉄粉を用いるの
が、経済的に有利である。また、アトマイズ鉄粉をフラ
ックス原料として使用することにより、フラックス造粒
時の結合剤量を少なくできるというという利点もある。
アトマイズ鉄粉は、溶湯を噴霧(アトマイズ)して粉化
したのち、一般的には、脱水−乾燥−解砕−分級−仕上
げ還元−解砕−分級する工程により製品とされる。通常
のアトマイズ鉄粉のN含有量は、0.0050%程度であり、
0.0030%以下の低Nアトマイズ鉄粉とするには、溶湯の
N量を低減することはもちろんであるが、仕上げ還元工
程における還元温度、冷却速度等を適正に調整する必要
がある。
ーステナイト粒界に生成する粗大なフェライトの生成を
抑制し、溶接金属の靭性を向上させる効果を有し、Bは
このような効果を安価に達成できる。このような効果
は、B化合物をB換算でフラックス全量に対し0.03%以
上含有することにより顕著となる。一方、B化合物をB
換算でフラックス全量に対し0.30%を超えて含有する
と、溶接金属靭性が劣化する傾向がある。
びMo化合物粉のうちの1種または2種以上:Mo換算で合
計0.2 〜2.0 質量%、(B)群:Nb粉、フェロニオブ粉
およびNb化合物粉のうちの1種または2種以上:Nb換算
で合計で0.02〜0.15%、のうちの1群または2群 (A)群はMoを、また、(B)群はNbを、溶接金属中に
含有させるための供給源である。Mo、Nbはいずれも、溶
接時に溶接金属中に移行して、溶接金属中でオーステナ
イト粒界に生成する粗大なフェライトの生成を抑制し、
溶接金属の靭性を向上させる効果を有している。上記し
た効果は、(A)群、(B)群から選ばれた1群または
2群を必要に応じ選択して含有できる。
ロモリブデン粉およびMo化合物粉のうちの1種または2
種以上をMo換算で合計で0.2 %以上、(B)群の、Nb
粉、フェロニオブ粉およびNb化合物粉のうちの1種また
は2種以上をNb換算で合計で0.02%以上で、顕著とな
る。一方、(A)群の、Mo粉、フェロモリブデン粉およ
びMo化合物粉のうちの1種または2種以上をMo換算で合
計で2.0 %超、(B)群の、Nb粉、フェロニオブ粉およ
びNb化合物粉のうちの1種または2種以上をNb換算で合
計で0.15%超、をそれぞれ超えて含有すると、溶接金属
の組織が上部ベイナイトとなりやすく、溶接金属の靭性
が劣化する傾向がある。
28%、CaCO3 :5〜15%、MgO :15〜38%、Al2O3 :3
〜20%、TiO2:2〜10%、CaF2:2〜10%、アトマイズ
鉄粉、Mo粉、フェロモリブデン粉、Nb粉およびフェロニ
オブ粉以外の金属粉:2〜8%のうちから選ばれた1種
または2種以上 本発明のフラックスは、上記した、鉄粉(アトマイズ鉄
粉)、B化合物粉、およびMo粉、フェロモリブデン粉、
Mo化合物粉のうちの1種または2種以上、Nb粉、フェロ
ニオブ粉、Nb化合物粉のうちの1種または2種以上に加
えてさらに、SiO2、CaCO3 、MgO 、Al2O3 、TiO2、Ca
F2、およびアトマイズ鉄粉、Mo粉、フェロモリブデン
粉、Nb粉、フェロニオブ粉以外の金属粉、のうちから選
ばれた1種または2種以上を含有することが好ましい。
スラグの粘性を調整するために含有することが好まし
い。SiO2の含有量が10%未満では、生成するスラグの融
点が上昇する傾向となり、一方、28%を超えて含有する
と、融点が低くなりすぎて、ビード外観が乱れやすくな
り、また溶接金属の酸素量が増加して溶接金属の靭性が
劣化する傾向となる。このため、SiO2は10〜28%とする
のが好ましい。
になる。このCO2 ガスにより溶接金属を外気からシール
ドするとともに、溶接雰囲気中の水素分圧を低下させ、
溶接金属中への水素の侵入を防止するのに有効に作用す
る。また、CaO は、塩基性成分であり、スラグの融点を
上昇させ、溶接金属の靭性を向上させる効果を有する。
ようなCO2 ガスによるシールド効果が認められず、耐水
素割れ性が低下する傾向となる。一方、15%を超えて含
有すると、CO2 ガスの発生量が増加し、溶接作業性、ビ
ード外観が低下する。このため、CaCO3 は5〜15%の範
囲とするのが好ましい。MgO は、フラックスの過度の流
動を防止する作用を有し、大入熱溶接におけるビード形
状を安定化させる効果を有する。また、MgO は、スラグ
の塩基度を増加させて溶接金属中の酸素含有量を低減
し、溶接金属の靭性を向上させる有用な成分である。Mg
O の含有量が15%未満では、上記した効果が認められ
ず、一方、38%を超えて含有すると、融点が上昇しすぎ
てビード外観が劣化する傾向がある。このため、MgO は
15〜38%の範囲とすることが好ましい。
点を上昇させるため、スラグの融点の調整に有効な成分
である。Al2O3 の含有量が3%未満では、上記した効果
が認められず、一方、20%を超えて含有すると、スラグ
の融点が上昇しすぎてビード幅の不均一やビード外観の
劣化を招く。このため、Al2O3 は3〜20%の範囲とする
ことが好ましい。
グの剥離性を改善するとともに、アーク空洞内で部分的
に還元されてTiとして溶接金属中に移行し、溶接金属の
靭性を改善することに有効に作用する。TiO2の含有量が
2%未満では、上記した効果が認めらず、一方、10%を
超えて含有すると、ビード外観が劣化する傾向を示す。
このため、TiO2は2〜10%の範囲とするのが好ましい。
の塩基度を増加させることができ、溶接金属の酸素量の
調整に有効である。CaF2の含有量が2%未満では、その
効果が少なく、一方、10%を超えて含有すると、スラグ
の粘性が低下しすぎてビード外観が悪化する。このた
め、CaF2は2〜10%の範囲とすることが好ましい。アト
マイズ鉄粉、Mo粉、フェロモリブデン粉、Nb粉およびフ
ェロニオブ粉以外の金属粉は、脱酸剤、あるいは合金元
素源として添加するが、その含有量が2%未満では、溶
接金属の靭性を確保することが難しくなるとともに、ビ
ード外観が悪化する傾向がある。一方、8%を超えて含
有すると、溶接金属の酸素量が低くなり、溶接金属の組
織がベイナイトまたはマルテンサイト主体の組織となる
ため、溶接金属の靭性が低下する傾向がある。このた
め、アトマイズ鉄粉、Mo粉、フェロモリブデン粉、Nb粉
およびフェロニオブ粉以外の金属粉は2〜8%の範囲と
することが好ましい。このような金属粉としては、フェ
ロマンガン、フェロシリコン、フェロチタン、マンガ
ン、チタン等がある。なお、金属粉は、粉末以外の形態
として箔状、針状としてもよい。
ス原料を上記した範囲の所定量配合し、結合剤とともに
混練し、 造粒したのち焼成される。造粒方法としては、
特に限定されないが、転動式造粒機、押し出し式造粒機
等を用いることが好適である。造粒後、ダスト除去、粗
大粒の解砕等の整粒処理を行って、平均粒径が0.075〜5
mmの範囲の粒子とするのが好ましい。
ール等の水溶液、珪酸ソーダ水溶液、珪酸カリ水溶液、
および珪酸ソーダ水溶液と珪酸カリ水溶液の混合液など
が好ましい。結合剤添加量は、フラックス原料の合計量
1kgあたり50〜300 cc程度とすることが好ましい。つぎ
に、本発明のフラックスを使用した、溶接金属部靱性に
優れた大入熱サブマージアーク溶接継手の製造方法につ
いて説明する。
の製造方法は、被溶接材として、Ti、Nb含有量が少ない
鋼材を使用し、入熱150kJ/cm以上の大入熱サブマージア
ーク溶接により溶接接合を行う場合に、高靱性の溶接金
属を得るのにとくに有効となる。なお、鋼材の母材組成
における質量%は、単に%と記す。被溶接材として使用
する鋼材は、Ti含有量が0.006 質量%以下、Nb含有量が
0.012 質量%以下、好ましくはN含有量が0.0055%以下
の母材組成を有する鋼材である。その他の成分として
は、C:0.07〜0.18%、Si:0.40%以下、Mn:1.0 〜1.
6 %、P:0.020 %以下、S:0.010 %以下を含み、あ
るいはさらにAl:0.05%以下を含有するのが好ましい。
上記した成分以外にVを含んでもよい。なお、本発明で
いう鋼材とは、厚鋼板、形鋼、鋼管、棒鋼を含むものと
する。
したのち、該開先内に本発明のフラックスを散布し、サ
ブマージアーク溶接用鋼ワイヤを使用し、入熱150kJ/cm
以上の大入熱サブマージアーク溶接により溶接接合す
る。本発明におけるサブマージアーク溶接は、多電極の
サブマージアーク溶接を含む、通常公知のサブマージア
ーク溶接法がいずれも適用でき、とくに限定する必要は
ない。また、溶接条件もとくに限定する必要はない。ま
た、使用するワイヤは、特に限定する必要はなく、通常
サブマージアーク溶接用鋼ワイヤであれば、通常公知の
ワイヤがいずれも使用できる。
0.0030%以下のアトマイズ鉄粉を、フラックス全量に対
し20〜45質量%含有するボンドフラックスである。アト
マイズ鉄粉中のN含有量が0.0030%を超えると、得られ
る溶接金属のN含有量が増加し、高靱性を安定して確保
することが難しくなる傾向を示す。なお、鉄粉中のN含
有量は0.0025%以下とするのがより好ましい。
化合物をフラックス全量に対しB換算で0.03〜0.30質量
%含有することが好ましい。Bは、溶接時に溶接金属中
に移行して、溶接金属中でオーステナイト粒界に生成す
る粗大なフェライトの生成を抑制し、溶接金属の靭性を
向上させる効果を有する。また、使用するフラックスに
は、さらに(A)群:Mo粉、フェロモリブデン粉および
Mo化合物粉のうちの1種または2種以上:Mo換算で合計
0.2 〜2.0 質量%、(B)群:Nb粉、フェロニオブ粉お
よびNb化合物粉のうちの1種または2種以上:Nb換算で
合計で0.02〜0.15%、のうちの1群または2群を含有す
ることが好ましい。Mo、NbをMo、Nb換算で上記した範囲
内で含有することにより、Mo、Nbが溶接時に溶接金属中
に移行して、溶接金属中でオーステナイト粒界に生成す
る粗大なフェライトの生成を抑制し、溶接金属の靭性を
向上させる効果を有している。
定されないが、フラックス全量に対し質量%で、SiO2:
10〜28%、CaCO3 :5〜15%、MgO :15〜38%、Al
2O3 :3〜20%、TiO2:2〜10%、CaF2:2〜10%、ア
トマイズ鉄粉、Mo粉、フェロモリブデン粉、Nb粉および
フェロニオブ粉以外の金属粉:2〜8%、のうちから選
ばれた1種または2種以上を含有するフラックス組成と
することが好ましい。
せ、入熱150kJ/cm以上の大入熱サブマージアーク溶接に
より溶接接合し、以下に示す組成、組織の、0 ℃で27J
以上のシャルピー吸収エネルギー値(V EO )を示す、
高靭性溶接金属が得られるように、溶接継手(溶接構造
物)を作製することが望ましい。以下、大入熱サブマー
ジアーク溶接して得られる溶接金属の好ましい組成につ
いて説明する。
属中のC含有量が0.03%未満では、所定の溶接金属強度
を得るのが難しくなるうえ、溶接金属の靭性改善が難し
い。一方、0.15%を超えて含有すると、溶接高温割れが
起こり易くなる。このため、Cは0.03〜0.15%に限定す
ることが好ましい。
ではできるだけ低減するのが望ましいが、溶接金属中に
0.0050%を超えて含有すると、溶接金属の靱性が劣化す
る。このため、Nは0.0050%以下に限定することが好ま
しい。なお、溶接金属中のN含有量を0.0020%以下に低
減することも可能であるが、溶接材料コストが増加し、
溶接継手の作製費が高価となるため、Nは0.0020%以上
とするのが望ましい。
1 %未満では溶接金属中の酸素量が高くなり、良好な溶
接金属靭性が得られ難くなる。一方、1.0 %を超えて多
量に含有すると、島状マルテンサイトが生成するように
なり、溶接金属の靱性が劣化する。このため、Siは0.1
〜1.0 %に限定することが好ましい。
ーライト変態を抑制し、溶接金属の靭性が劣化する。一
方、溶接金属中のMn量が2.5 %を超えると、島状マルテ
ンサイトが生成するようになり、溶接金属の靭性が劣化
する。このため、溶接金属中のMnは0.7 〜2.5 %とする
ことが好ましい。
生成核として作用し、フェライト粒の微細化に寄与す
る。このような効果は0.003 %以上の含有で認められ
る。一方、0.030 %を超えて含有すると、溶接金属の強
度が高くなりすぎて、溶接金属の硬さ上昇による低温割
れが起こり易くなる。このため、溶接金属中のTiは0.00
3 〜0.030 %に限定することが好ましい。
加えてさらに、Mo:0.1 〜0.5 %、Nb:0.01〜0.2 %、
Ni:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種以
上を含み、かつB/N:0.6 〜1.2 である組成を有する
ことが好ましい。Mo:0.1 〜0.5 %、Nb:0.01〜0.2
%、Ni:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2
種以上 Mo、Nb、Niはいずれも、溶接金属の靱性を顕著に向上さ
せる作用を有しており、本発明では、必要に応じ選択し
て1種または2種以上含有できる。
大な粒界フェライトの生成を抑制し、溶接金属の靱性を
向上させる。このような効果は、Mo:0.1 %以上、Nb:
0.01%以上、それぞれの含有で顕著となる。一方、Mo:
0.5 %、Nb:0.2 %をそれぞれ超える含有は、溶接金属
の組織が上部ベイナイトとなりやすく、靱性が劣化す
る。このようなことから、それぞれ、Mo:0.1 〜0.5
%、Nb:0.01〜0.2 %の範囲とするのが好ましい。
せて、溶接金属の靱性を向上させる。この効果は0.05%
以上の含有で顕著となる。一方、1.0 %を超えると低温
割れの発生が起こりやすくなる。このため、Niは、0.05
〜1.0 %の範囲とするのが好ましい。 B/N:0.6 〜1.2 Bは、オーステナイト粒界に析出する粗大な粒界フェラ
イトの生成を抑制する作用を有し、溶接金属の靭性を向
上させる元素であり、本発明では、B/N比(質量%
比)で0.6 以上含有することが好ましい。B/N比(質
量%比)で0.6 未満では安定的に更なる溶接金属靭性の
向上が期待できない。一方、B/N比(質量%比)で1.
2 を超えると、溶接金属の靭性が劣化する。なお、B
は、鋼ワイヤまたはフラックスから供給し、溶接金属中
に0.0010〜0.0040%含有することが好ましい。
では、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不
純物である。次に、本発明の溶接継手における溶接金属
の組織について、説明する。 粒界フェライト生成量:15面積%以下 溶接金属は、上記した組成に加えて、粒界フェライト生
成量が15面積%以下である組織を有することが好まし
い。粒界フェライト生成量を15面積%以下とすることに
より、大入熱サブマージアーク溶接継手の溶接金属に高
靭性を付与することができる。なお、更なる高靭性の付
与のためには、粒界フェライト生成量を10面積%以下と
することが好ましい。粒界フェライト生成量を10面積%
以下とするためには、上記したように溶接金属にMo,Nb
等を適正量含有させ、溶接金属中のB/N比(質量%
比)を0.6 〜1.2 の範囲に調整することが好ましい。
方法は、つぎのとおりとする。観察面を研磨後、腐食液
で腐食し、光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、10〜
500倍で観察し、撮像し、得られた撮像を画像解析装置
を用いて解析し、溶接金属中の粒界フェライト生成量を
求める。なお、粒界フェライト生成量の測定方法はこれ
に限定されないことはいうまでもない。
t:40mm)、建築構造用TMCP鋼板(板厚t:60mm)
に、図1に示す形状の開先加工を施し、1パスのサブマ
ージアーク溶接により溶接継手を作製した。開先形状
は、Y型開先とし、開先角度35°、ルートフェースd
(mm)を板厚t:40mmの場合には2mmとし、板厚t:60
mmの場合には3mmとした。
ージアーク溶接機を用いて、表2に示す溶接条件で、表
3に示すワイヤ組成の溶接用鋼ワイヤを用い、表4に示
す組成のフラックスを用いて行った。なお、フラックス
は、表4に示す組成になるように原料を配合し、珪酸ソ
ーダ水溶液(添加量:フラックス1kg当り200cc )とと
もに混練し、造粒したのち、500 ℃×15min の条件で焼
成し、粒子径3mm以下とした。なお、表4中の化学組成
は合計100 %にならないが、残部は珪酸ソーダ固形分で
ある。また、フラックス中に添加した鉄粉はアトマイズ
鉄粉とし、表5に示す窒素含有量のアトマイズ鉄粉を用
いた。溶接入熱は、板厚40mmの場合で269kJ/cm、板厚60
mmの場合で549kJ/cmであった。
て、溶接長中央部の図2(a),(b)に示す位置から
試験片を採取し、溶接金属の組成、組織、引張強さ、靱
性を調査した。溶接金属の組成は湿式分析で各元素の含
有量、B/N量を求め、また、組織は上記した方法で粒
界フェライト生成量を測定した。引張試験は、図2
(a)の位置から試験片を採取して、JIS Z 3111の規定
に準拠して実施し引張強さTSを求めた。また、衝撃試
験は、図2(b)の位置から試験片を採取して、JISZ 3
112の規定に準拠して実施し、0℃におけるシャルピー
吸収エネルギー値vE 0 を求めた。また、得られた溶接
継手について、目視でビード外観を観察した。なお、ビ
ード外観不良としては、アンダーカット、オーバーラッ
プなどの溶接欠陥の発生、スラグはくり不良、ビード表
面の平滑性不良などがある。
好であり、さらに、粒界フェライト生成量が15面積%以
下の組織を有する溶接金属となっており、溶接金属のv
E0が27J以上を満足し、優れた靱性の溶接金属を有す
る溶接継手が得られている。本発明の範囲を外れる比較
例は、溶接金属の靭性が低下している。また、さらに、
溶接金属のB/N(質量%比)が0.6 〜1.2 の範囲内の
溶接継手(溶接継手No. 5、9、10)では、溶接金属の
粒界フェライト生成量が10面積%以下となっており、溶
接金属はさらに優れた靭性を有している。
の大入熱サブマージアーク溶接でTi、Nb等の含有量が少
ない鋼材を溶接した場合にも、優れた靱性を有する溶接
金属が安定して得られ、溶接能率を顕著に向上でき、産
業上格段の効果を奏する。
の概要を示す模式図である。
明する説明図である。(a)は引張試験片、(b)は衝
撃試験片の採取位置を示す。
粒界フェライト生成量との関係を示すグラフである。
関係を示すグラフである。
Claims (8)
- 【請求項1】 N含有量が0.0030質量%以下のアトマイ
ズ鉄粉を、フラックス全量に対し20〜45質量%含有する
ことを特徴とするサブマージアーク溶接用フラックス。 - 【請求項2】 さらに、B化合物を、B換算でフラック
ス全量に対し0.03〜0.30質量%含有することを特徴とす
る請求項1に記載のサブマージアーク溶接用フラック
ス。 - 【請求項3】 さらに(A)群:Mo粉、フェロモリブデ
ン粉およびMo化合物粉のうちの1種または2種以上をMo
換算で合計でフラックス全量に対し0.2 〜2.0 質量%、
(B)群:Nb粉、フェロニオブ粉およびNb化合物粉のう
ちの1種または2種以上をNb換算で合計でフラックス全
量に対し0.02〜0.15質量%、のうちから選ばれた1群ま
たは2群以上を含むことを特徴とする請求項1または2
に記載のサブマージアーク溶接用フラックス。 - 【請求項4】 フラックス全量に対し質量%で、SiO2:
10〜28%、CaCO3 :5〜15%、MgO :15〜38%、Al
2O3 :3 〜20%、TiO2:2〜10%、CaF2:2〜10%、ア
トマイズ鉄粉、Mo粉、フェロモリブデン粉、Nb粉および
フェロニオブ粉以外の金属粉:2〜8%、のうちから選
ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする
請求項1ないし3のいずれかに記載のサブマージアーク
溶接用フラックス。 - 【請求項5】 Ti含有量が0.006 質量%以下、Nb含有量
が0.012 質量%以下の母材組成を有する鋼材を入熱150k
J/cm以上の大入熱サブマージアーク溶接により溶接接合
するサブマージアーク溶接継手の製造方法において、前
記大入熱サブマージアーク溶接で使用するフラックス
を、N含有量が0.0030質量%以下のアトマイズ鉄粉をフ
ラックス全量に対し質量%で20〜45%含むフラックス組
成のフラックスとすることを特徴とする優れた溶接金属
部靱性を有するサブマージアーク溶接継手の製造方法。 - 【請求項6】 前記フラックス組成が、さらにB化合物
をフラックス全量に対しB換算で0.03〜0.30質量%を含
むことを特徴とする請求項5に記載のサブマージアーク
溶接継手の製造方法。 - 【請求項7】 前記フラックス組成が、さらに(A)
群:Mo粉、フェロモリブデン粉およびMo化合物粉のうち
の1種または2種以上をMo換算で合計でフラックス全量
に対し0.2 〜2.0 質量%、(B)群:Nb粉、フェロニオ
ブ粉およびNb化合物粉のうちの1種または2種以上をNb
換算で合計でフラックス全量に対し0.02〜0.15%、のう
ちから選ばれた1群または2群以上を含むことを特徴と
する請求項5または6に記載のサブマージアーク溶接継
手の製造方法。 - 【請求項8】 前記フラックス組成が、さらに、フラッ
クス全量に対し質量%で、SiO2:10〜28%、CaCO3 :5
〜15%、MgO :15〜38%、Al2O3 :3 〜20%、TiO2:2
〜10%、CaF2:2〜10%、アトマイズ鉄粉、Mo粉、フェ
ロモリブデン粉、Nb粉およびフェロニオブ粉以外の金属
粉:2〜8%、のうちから選ばれた1種または2種以上
を含有することを特徴とする請求項5ないし7のいずれ
かに記載のサブマージアーク溶接継手の製造方法。
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