JP2002528122A - ヘリコバクター・ピロリ由来α1,2−フコシルトランスフェラーゼ - Google Patents

ヘリコバクター・ピロリ由来α1,2−フコシルトランスフェラーゼ

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JP2002528122A
JP2002528122A JP2000579755A JP2000579755A JP2002528122A JP 2002528122 A JP2002528122 A JP 2002528122A JP 2000579755 A JP2000579755 A JP 2000579755A JP 2000579755 A JP2000579755 A JP 2000579755A JP 2002528122 A JP2002528122 A JP 2002528122A
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ワン、ゲ
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ガバナーズ オブ ザ ユニバーシティー オブ アルバータ
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Abstract

(57)【要約】 細菌性α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子および推定されるアミノ酸配列が提供される。この遺伝子は、哺乳動物に見いだされる特定の腫瘍関連糖質抗原と構造的に類似しているLewis X、Lewis Y、Lewis B およびH1型等のオリゴ糖の製造に使用可能なα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドおよびその活性な断片を調製するのに有用である。これらの複合糖質産物もまた哺乳動物の腫瘍を検出するアッセイの開発において研究および診断上の有用性を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の分野 本発明は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼの分野に関する。より具体的に
は、本発明はα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドに関する。
【0002】発明の背景 ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は胃潰瘍および十二指腸潰瘍
の両方を引き起こす重大なヒト病原体であり、また胃癌およびリンパ腫とも関連
づけられている。この微生物は、Lewis X、Lewis Yおよびシアリル Lewis Xを含
む細胞表面複合糖質を発現することが示されている。これらの細菌オリゴ糖は、
哺乳動物に見いだされる腫瘍関連糖質抗原に構造的に類似している。
【0003】 H.ピロリ分離株の存在は、胃癌を発症する危険の増大と関連づけられている(
Wirth, H.-P., Yang, M., Karita, M.およびBlaser, M.J. (1996) Infect. Immu
n. 64, 4598-4605)。この病原体は高度に適応してヒトの胃粘膜に住み着き、そ
して症状を引き起こしながら、または引き起こすことなく、多年にわたって胃の
中に留まることができる。H.ピロリは局所的および全身的抗体応答を惹起するが
、ヒトの胃粘膜内に引きこもって生息するため、宿主免疫応答による排除を免れ
る。H.ピロリが宿主免疫応答の作用から自身を防御するもう1つの作用機構は、
宿主の表面抗原を模倣した表面抗原の産生である。
【0004】 哺乳動物細胞において、酵素フコシルトランスフェラーゼ(すなわち、FucT)
は2つの糖質構造体であるGalβ1-4[Fucα1-3]GlcNAc (Lewis X、略称 Lex) ま
たはNeuAcα2-3-Galβ1-4[Fucα1-3] GlcNAc (シアリル Lewis X、略称 sLex)の
合成における最終ステップを触媒する(Loweら, 1990, Cell 57: 475-484; Kukow
ska-Latalloら, 1990, Genes & Development 4:1288-1303)。細胞表面α(1,3)-
およびα(1,2)-フコシル化オリゴ糖、すなわちLewis X(Lex)、シアリル Lewis
X(sLex)およびLewis Y (Ley)は、真核生物および微生物の両方の細胞表面に
存在する。哺乳動物においては、Lexは発生段階特異的胎児性抗原であるが、Lex 、sLexおよびLeyは腫瘍関連マーカーであるとも見なされている。これら細菌オ
リゴ糖構造体の生物学的機能は完全には理解されていない。H.ピロリによって産
生されるそのような複合糖質はおそらく宿主細胞抗原を模倣している可能性があ
り、それらは該細菌を宿主免疫応答からマスクすることができるであろう、とい
うことが示唆されている。また、これらの細菌性ルイス抗原は宿主T細胞応答を
ダウンレギュレーションすることも可能であろう。したがって、そのような抗原
の産生は、H.ピロリによる胃におけるコロニー形成および長期感染に貢献しうる
【0005】 現在、可能性のある治療薬としての糖質の使用が医化学の分野で普及してきた
。さらに、Lex、Ley およびsLexを含む定性および定量分析用の糖質は、細胞に
おける複合糖質の生合成に関与する酵素をアッセイするための試薬としても必要
とされている。市販のLex、Ley およびsLex生成物は化学的に合成されたもので
ある。しかし、これらの生成物の合成は、時間がかかる複雑な方法および低収率
、等のいくつかの限界に直面する。いくつかの哺乳動物フコシルトランスフェラ
ーゼがクローン化され、発現されているが、Lex、Ley およびsLex生成物の市販
を目的とした酵素的合成は報告されていない。
【0006】 H.ピロリ26695の全ゲノム配列がすでに公表されている。これはH.ピロリの遺
伝子研究を明らかに容易にするであろう。H.ピロリのゲノム配列は2つのα(1,3
)fucT遺伝子のコピーの存在を明らかにした。他方、α(1,2)fucT遺伝子であろう
と推定されるものについては説明されていない。
【0007】発明の概要 本発明は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドおよび該ポリペプ
チドをコードする遺伝子の発見に基づくものである。この遺伝子をin vitroで発
現させ、突然変異誘発試験を行ったところ、この遺伝子はLeY合成に関与してい
ることが判明した。本発明は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチド
の検出および合成に有用なα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコ
ードするポリヌクレオチド配列、ならびにLeY、LeBおよびH1型構造体を合成す
ることができるα1,2-フコシルトランスフェラーゼを包含する。
【0008】 ヘリコバクター・ピロリのリポ多糖(LPS)は、ヒト腫瘍胎児性抗原であるLewis
XおよびLexis Yを発現する。Lewis Yの合成は、α(1,3)およびα(1,2)フコシル
トランスフェラーゼ(fucT)の作用を必要とする。種々のH.ピロリ菌株に由来す
るH.ピロリα(1,2)FucT (Hp fucT2)をコードする遺伝子の分子クローニングおよ
び特性決定を本明細書に開示する。構築されたHp fucT2ノックアウト突然変異体
もまた提供され、これらの突然変異体はELISAおよび免疫電子顕微鏡検査によっ
て該突然変異体におけるLewis Y産生の喪失を示す。α1,2 fucT2遺伝子は、ポリ
メラーゼスリップ(slippage)機構によって頻繁にコードフレームに入ったり出た
りするフレームシフトの可能性を提供する超突然変異性(hypermutable)配列(ポ
リCおよびTAA反復配列)を含有する。その結果、α1,2 fucT2遺伝子は2つの主
要な遺伝子型を示す。すなわち、1つの全長オープンリーディングフレーム(ORF
、UA802株におけるようなもの)をコードする遺伝子型、または末端切断型ORF (2
6695株におけるようなもの)をコードする遺伝子型である。Hp fucT2 遺伝
子のin vitro発現は、この遺伝子のどちらの型も全長タンパク質を産生する可能
性を有することを示した。26695 fucT2遺伝子による全長タンパク質の産生は、
翻訳上の -1フレームシフトに起因する可能性がある。なぜなら、大腸菌(Escher
ichia coli) dnaX遺伝子の翻訳フレームシフトカセットに類似した完全な翻訳フ
レームシフトカセットが存在するからである。UA1174株を調べた結果、そのfucT
2遺伝子は翻訳上のフレームシフトによって埋め合わせることができない、DNAレ
ベルでフレームシフトしたORFを有することが明らかになった。これは、Lewis Y
がオフであるこの遺伝子の表現型を説明するものである。別の菌株であるUA1218
株においては、fucT2遺伝子は明らかにプロモーターを欠くゆえにオフになって
いる。これらのデータに基づいて、本発明者らはH.ピロリによるLewis Yの可変
的発現のためのモデルを提案した。このモデルはfucT2遺伝子の複製、転写およ
び翻訳レベルにおける調節を全て含みうるものである。
【0009】 別の実施形態においては、本発明は新規なα1,2-フコシルトランスフェラーゼ
を用いてLex、Ley、sLex、LeA、LeB、H1型およびH2型、等のオリゴ糖を合成
する方法を提供する。
【0010】 別の実施形態においては、本発明はα1,2-フコシルトランスフェラーゼに対す
る抗体の開発に有用なα1,2-フコシルトランスフェラーゼの新規なポリペプチド
を提供する。
【0011】 別の実施形態においては、「ずれの起こりやすい(slippery)」7個のヌクレオ
チドからなる核酸配列X XXY YYZ (X = Cまたは A、Y = Tまたは A、および Z =
Aまたは G;例えば、A AAA AAG)から生じるフレームシフト変異体を有するα1,2
-フコシルトランスフェラーゼのポリペプチドが提供される。別の実施形態にお
いては、α1,2-フコシルトランスフェラーゼは配列番号2に記載の配列を有する
ポリペプチドである。別の実施形態においては、α1,2-フコシルトランスフェラ
ーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、異なるH.ピロリ菌株中に存在する変
動しうる数のポリ-シトシン反復配列およびTAA反復配列を有する。
【0012】 さらに、α1,2-フコシルトランスフェラーゼを生産する方法が提供される。こ
の方法は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼまたはその一部分をコードするポ
リヌクレオチドによって遺伝子組換えによって改変された宿主細胞を含む遺伝子
発現系を培養し、そして該α1,2-フコシルトランスフェラーゼを回収するステッ
プを含む。この方法の好ましい実施形態は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ
を産生する、本発明の遺伝子発現系の使用に向けられている。
【0013】 さらに、α1,2-フコシルトランスフェラーゼの酵素活性および受容体特異性を
測定する方法が提供される。この方法は放射性標識化アッセイ系における構造的
に規定されたオリゴ糖基質(受容体)の使用、およびキャピラリー電気泳動によ
る反応産物の同定を含む。別の実施形態においては、α1,2-フコシルトランスフ
ェラーゼは哺乳動物起源の従来のα1,2-フコシルトランスフェラーゼとは異なる
基質特異性を有し、そしてルイス抗原を合成するのに異なる経路を用いる。
【0014】 また、α1,2-フコシルトランスフェラーゼの発現が阻止された、またはα1,2-
フコシルトランスフェラーゼの発現が野生型の生物学的活性を欠くポリペプチド
をもたらすノックアウト生物が提供される。
【0015】 本発明の上記の、および他の多くの特徴、ならびにそれらに伴う有利な点は、
実施例と合わせて以下の本発明の詳細な説明を参照することによりさらに良く理
解されるであろう。
【0016】略語 本明細書に用いる略語は、別途記載されない限りα1,2-FucTはα1,2-フコシル
トランスフェラーゼ;LexはLewis X;sLexはシアリル-Lewis X;LeyはLewis Y;
LeBはLewis B;ntはヌクレオチド;kbはキロベース;aaはアミノ酸;PCRはポリ
メラーゼ連鎖反応;ORFはオープンリーディングフレーム;RSBはリボソーム結合
部位;LPSはリポ多糖;LacNAc-RはGalβ1-4GlcNAcβ-O-(CH2)8COOMe;Galβ1-3G
lcNAc-RはGalβ1-3GlcNAcβ-O-(CH2)8COOMe;LacNAc-TMRはGalβ1-4GlcNAcβ-O-
(CH2)8CO-NHCH2CH2NH-TMRを表わす。
【0017】発明の詳細な説明 本発明は精製されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチド、該α1,
2-フコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド、ならびに
生物製剤の製造および生物学的組織や流体のスクリーニングにおける上記α1,2-
フコシルトランスフェラーゼ遺伝子およびα1,2-フコシルトランスフェラーゼポ
リペプチドの使用に関する。また、本発明はα1,2-フコシルトランスフェラーゼ
ポリペプチドに対する抗体、ならびに障害の診断および疾患のモニタリングにお
ける上記抗体の使用に関する。
【0018】α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチド α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子によってコードされるアミノ酸配列
を図1D(配列番号2)に示す。このα1,2-フコシルトランスフェラーゼは原核
生物に由来するものなので、真核生物によって発現されるα1,2-フコシルトラン
スフェラーゼとは違い、この酵素に対し翻訳後修飾はなされない。
【0019】 さらに、活性を改変するために、ペプチド配列の付加、置換または欠失によっ
て上記α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを変更することが可能で
ある。例えば、さらなる酵素活性を達成するために、ポリペプチド配列を上記α
1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドに融合させることができる。ある
いは、上記タンパク質の活性を除去または改変するために、アミノ酸を欠失させ
てもよいし、または置換してもよい。α1,2-フコシルトランスフェラーゼ酵素活
性を欠くが三次元構造は保持するように、上記タンパク質を改変することが可能
である。そのような改変は、以下に詳述するα1,2-フコシルトランスフェラーゼ
ポリペプチドに対する抗体の開発に有用であろう。
【0020】 さらに別の実施形態においては、本発明はα1,2-フコシルトランスフェラーゼ
ポリペプチドがα1,4-フコシルトランスフェラーゼ活性もしくはα1,3-フコシル
トランスフェラーゼ活性を欠くか、またはα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活
性およびα1,4-フコシルトランスフェラーゼ活性の両方を欠く、α1,2-フコシル
トランスフェラーゼ酵素活性の態様を包含する。
【0021】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物は、以下の節に記述するα1,2-
フコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列によってコードされるポリペプチドを含
みうる。具体的には、本明細書において時々「α1,2-フコシルトランスフェラー
ゼポリペプチド」と称するα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物は、図
1および配列番号1に示すα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列ならび
に受託番号AF093828〜AF093833のもとにGenBankに寄託された種々の形の該遺伝
子配列によってコードされるα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物を包
含しうる。したがって、「α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチド」と
いう用語は、全長発現産物および全長産物の生物学的活性(α1,2-フコシルトラ
ンスフェラーゼ活性など)を保持するより小さいペプチド等のポリペプチドを含
む。
【0022】 さらに、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物は、機能的に等価な遺
伝子産物に相当するタンパク質またはポリペプチドを含みうる。そのような等価
なα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物は、上述のα1,2-フコシルトラ
ンスフェラーゼ遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列内にアミノ酸残基
の欠失、付加または置換を含んでいてもよいが、該欠失、付加または置換はサイレ
ント変化をもたらすものであって、その結果機能的に等価なα1,2-フコシルトラ
ンスフェラーゼ遺伝子産物を生じる。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電
荷、可溶性、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質に基づいて実施する
ことができる。
【0023】 例えば、非極性(疎水性)アミノ酸にはアラニン、ロイシン、イソロイシン、
バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含ま
れる;極性中性アミノ酸にはグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロ
シン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる;正に荷電した(塩基性)アミ
ノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれる;そして、負に荷電
した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。本明
細書に用いる「機能的に等価な」という用語は、多数の基準のうち任意のものによ
って判断した場合に、上述のα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列によ
ってコードされる内因性α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物と実質的
に類似したin vivo活性を示すことができるポリペプチドを意味する。上記基準
には、限定するものではないが、抗原性(すなわち、抗α1,2-フコシルトランス
フェラーゼ抗体と結合する能力)、免疫原性(すなわち、α1,2-フコシルトラン
スフェラーゼタンパク質またはポリペプチドと結合することができる抗体を生成
する能力)、ならびに酵素活性が含まれる。例えば、配列XXXYYYZの発現によっ
て生じるフレームシフト突然変異体は、野生型α1,2-フコシルトランスフェラー
ゼの抗原性に類似した抗原性を保持している可能性のある産物をもたらす。
【0024】 実質的に精製されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質、ポリペプ
チドおよび誘導体(断片を含む)は、他のタンパク質、脂質、糖質、核酸、およ
び天然では会合している他の生物学的物質を実質的に含まない。例えば、α1,2-
フコシルトランスフェラーゼポリペプチドの実質的に精製された機能性断片は、
乾燥重量で少なくとも60%の目的の分子であることができる。当業者は標準的な
タンパク質精製法を用いてα1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質の機能
性断片を精製することが可能であり、また該ポリペプチドの純度は、例えばポリ
アクリルアミドゲル電気泳動(例:SDS-PAGE)、カラムクロマトグラフィー(例
:高速液体クロマトグラフィー)、およびアミノ末端アミノ酸配列分析を含む標
準的な方法を用いて測定することができる。
【0025】 翻訳時または翻訳後に示差的に修飾されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼ
タンパク質、ポリペプチドおよび誘導体(断片を含む)は本発明の範囲内に含ま
れる。多数の化学修飾のうち任意のものを公知の技法によって実施することがで
きる。上記公知技法には、限定するものではないが、臭化シアン、トリプシン、
キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的化学開裂;ア
セチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下における代謝合成
;等が含まれる。さらに、本発明の組成物を他の分子とコンジュゲート化して、
それらの水溶性(例えば、ポリエチレングリコール)、半減期、または標的組織
と結合する能力を増大させることが可能である。
【0026】 さらに、非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸類似体を、置換物または付加
物としてα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチド配列に導入することが
できる。非古典的アミノ酸には、限定するものではないが、一般的なアミノ酸の
D異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε
-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、
オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シ
トルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリ
シン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナー
(designer)アミノ酸(β-メチルアミノ酸、α-メチルアミノ酸、Nα-メチルア
ミノ酸、等)、およびアミノ酸類似体全般が含まれる。さらに、上記アミノ酸は
D型であってもよいし(右旋性)またはL型(左旋性)であってもよい。
【0027】 当業者に公知のランダム突然変異誘発技法を用いてα1,2-フコシルトランスフ
ェラーゼDNA中にランダム突然変異を作製することが可能であり、そして得られ
た突然変異体α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドの活性を試験する
ことができるが、当業者に周知の部位特異的突然変異誘発技法を用いてα1,2-フ
コシルトランスフェラーゼコード配列中に部位特異的突然変異を作製し、増大し
た機能特性を有する突然変異体α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチド
を創出することが可能である。
【0028】 本発明のα1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質の1つ以上のドメイン
に対応するポリペプチド;末端切断型または欠失型α1,2-フコシルトランスフェ
ラーゼタンパク質;ならびに全長α1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質
、ポリペプチド、もしくは誘導体(断片を含む)、または末端切断型α1,2-フコシ
ルトランスフェラーゼを関係のないタンパク質と融合させた融合タンパク質もま
た本発明の範囲内に入る。それらは、本節および上記節に開示するα1,2-フコシ
ルトランスフェラーゼヌクレオチド配列およびα1,2-フコシルトランスフェラー
ゼアミノ酸配列に基づいて設計することができる。上記融合タンパク質は、α1,
2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを非α1,2-フコシルトランスフェラ
ーゼ部分から切り離せるように、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ配列と非α
1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質配列の間に位置する開裂部位を含む
ように遺伝子操作することも可能である。そのような融合タンパク質またはポリ
ペプチドは、限定するものではないが、α1,2-フコシルトランスフェラーゼタン
パク質をin vivoで安定化させることができるIgFc融合;またはマーカー機能を
提供する酵素、蛍光タンパク質、もしくは発光タンパク質との融合を含む。
【0029】 本発明のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、当技術分野で周
知の技法を用いて組換えDNA技術によって作製することができる。よって、α1,2
-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列を含有する核酸を発現させることによ
って本発明のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを調製する方法を
本明細書に記述する。当業者に周知の方法を用いて、α1,2-フコシルトランスフ
ェラーゼコード配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含有する発現
ベクターを構築することが可能である。これらの方法には、例えば、in vitro組
換えDNA技法、合成技法、およびin vivo遺伝子組換え法が含まれる。例えば、Sa
mbrookら, 1989, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harb
or Press, N.Y. ならびにAusubel, F.M.ら(編), 1989, Current Protocols in M
olecular Biology, Vol. 1, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wi
lley & Sons, Inc., New Yorkに記述されている技法を参照されたい。または、
α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードすることができるRNA
を、例えば合成機を用いて、化学的に合成することが可能である。例えば、参照
によりその全体を本明細書に組み入れる Oligonucleotide Synthesis, 1984, Ga
it, M.J. (編), IRL Press, Oxfordに記述されている技法を参照されたい。ポリ
クローナル抗体を作製するための、α1,2-フコシルトランスフェラーゼのこのよ
うな合成ペプチド断片の使用を以下に記述する。
【0030】α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子 α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(図1)はH.ピロリにおいて発現され
ている。同定されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子の核酸配列を本明
細書に記述する。本明細書に用いる「α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子
」という用語は、(a)図1に示すDNA配列を含有する遺伝子;(b)図1D、配列番
号2に示すアミノ酸配列をコードする任意のDNA配列;(c)図1、配列番号1に示
すコード配列の相補体にストリンジェントな条件下[例えば、フィルターに結合
したDNAと0.5 M NaHPO4, 7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS), 1 mM EDTA中で65℃
におけるハイブリダイゼーション、および0.1xSSC/0.1% SDS中で68℃における洗
浄(Ausubel, F.M.ら(編), 1989, Current Protocols in Molecular Biology, V
ol. 1, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Willey & Sons, Inc.,
New York, p.2.10.3)]でハイブリダイズし、かつ図1に示す配列によってコー
ドされる遺伝子産物と機能的に等価な遺伝子産物をコードする任意のDNA配列;
および/または(d)本明細書に開示するコード配列(図1に示すような配列)の相
補体に、中程度にストリンジェントな条件等のストリンジェンシーのより低い条
件下[例えば、0.2% SSC/0.1% SDS中における42℃で洗浄(Ausubelら, 1989,前
掲)]でハイブリダイズし、かつ図1に示す配列によってコードされる遺伝子産
物と機能的に等価な遺伝子産物をコードする任意のDNA配列を意味する。
【0031】 本発明はまた、上のパラグラフに記述したDNA配列(a)〜(c)にハイブリダイズ
する、そしてそれゆえ該DNA配列の相補体である核酸分子、好ましくはDNA分子を
包含する。そのようなハイブリダイゼーション条件は、上記のように、高度にス
トリンジェントであるか、またはそれよりストリンジェンシーが低くてもよい。
核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)である場合は、高度にス
トリンジェントな条件とは、例えば、6xSSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中で37
℃(14塩基オリゴの場合)、48℃(17塩基オリゴの場合)、55℃(20塩基オリゴ
の場合)および60℃(23塩基オリゴの場合)における洗浄をいう。これらの核酸
分子はα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子調節において、および/または
α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子核酸配列の増幅反応におけるアンチセ
ンスプライマーとして、役割を果たすことができる。さらに、そのような配列は
リボザイムおよび/または三重らせん配列の一部(これもまたα1,2-フコシルト
ランスフェラーゼ遺伝子調節に有用である)として用いることができる。さらに
また、そのような分子は、病原体または転移性癌細胞の存在を検出する診断方法
の構成要素として用いることができる。
【0032】 本発明はまた、(a)上記コード配列のうち任意のもの、および/またはそれら
の相補体(例えば、アンチセンス配列)を含有するDNAベクター;(b)コード配列
の発現を指令する調節エレメントに機能しうる形で連結された上記コード配列の
うち任意のものを含有するDNA発現ベクター;ならびに(c) 宿主細胞中でコード
配列の発現を指令する調節エレメントに機能しうる形で連結された上記コード配
列のうち任意のものを含有する遺伝子操作された宿主細胞を包含する。本明細書
に用いる調節エレメントは、限定するものではないが、誘導および非誘導プロモ
ーター、エンハンサー、オペレーター、および発現を駆動し、調節する当業者に
公知の他のエレメントを含む。
【0033】 本発明は、本明細書に開示するDNA配列のうち任意のものの断片を包含する。
特定のドメインのコード領域に相当するα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝
子の断片、またはそのような断片であって特定ドメインのコード領域の1つ以上
が欠失しているものは、有用である。そのようなα1,2-フコシルトランスフェラ
ーゼ遺伝子断片は、全長α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドの生物
学的活性(α1,2-フコシルトランスフェラーゼ活性または免疫原性など)を保持
する末端切断型遺伝子産物をコードすることができる。本発明はまた、以下に記
述するアミノ酸置換をコードする突然変異型α1,2-フコシルトランスフェラーゼ
遺伝子を包含する。
【0034】 上記の遺伝子配列に加えて、例えばヒトを含む他の種に存在する可能性のある
そのような配列の相同体を、当技術分野で周知の分子生物学的技法によって過度
の実験を行うことなく同定し、そして容易に単離することができる。さらに、そ
のような遺伝子産物の1つ以上のドメインと広範な相同性を有するタンパク質を
コードする遺伝子が、ゲノム内の他の遺伝子座に存在する可能性がある。これら
の遺伝子もまた同様の技法によって同定することができる。
【0035】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子およびその相同体は、α1,2-フコシ
ルトランスフェラーゼ活性を有すると思われる他の生物から得てもよい。cDNAを
得るためには、α1,2-フコシルトランスフェラーゼを発現している組織および細
胞が最適である。したがって、α1,2-フコシルトランスフェラーゼおよびその相
同体の遺伝子物質の供給源を提供できる組織は、腸粘膜細胞および腫瘍形成性細
胞を含む。例えば、単離されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子配列を
標識し、それを用いて、目的の生物から得たmRNAから構築したcDNAライブラリー
をスクリーニングすることができる。上記cDNAライブラリーが上記標識化配列の
由来する生物と異なる種類の生物に由来する場合は、使用するハイブリダイゼー
ション条件はストリンジェンシーのより低い条件にする必要がある。または、上
記標識化断片を用いて、ここでもまた適度にストリンジェントな条件を用いて、
目的の生物に由来するゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。
低ストリンジェンシー条件は当技術分野で周知であり、またライブラリーおよび
標識化配列が由来する特定の生物によって予想可能に変化するであろう。そのよ
うな条件に関する指針としては、例えば、Sambrookら, 1989, Molecular Clonin
g, a Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Press, N.Y.;ならびにAusubel
ら, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Assoc
iatesおよびWiley Interscience, N.Y.を参照されたい。
【0036】 さらに、興味のある遺伝子内のアミノ酸配列に基づいて設計した2つの縮重オ
リゴヌクレオチドプライマープールを用いてPCRを実施することによって、以前
には知られていなかったα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子型配列を単離
することが可能である。PCR反応のための鋳型は、α1,2-フコシルトランスフェ
ラーゼ遺伝子を発現することが知られているかまたは推測される、ヒトまたは非
ヒトの細胞系または組織から調製したmRNAの逆転写によって得られるcDNAであっ
てよい。
【0037】 PCR産物をサブクローン化し、配列決定して、増幅された配列がα1,2-フコシ
ルトランスフェラーゼ遺伝子に類似した核酸配列を表わすことを確認することが
できる。次に、このPCR断片を用いて種々の方法によって全長cDNAクローンを単
離することができる。例えば、増幅された断片を標識し、それを用いてバクテリ
オファージcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。または、標識
した断片を用いてゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0038】 DNA配列(全長cDNA配列を含む)の単離には、PCR技術も利用することができる
。例えば、標準的な方法にしたがって適切な細胞または組織供給源からRNAを単
離することができる。第1鎖合成のプライミングのため、上記増幅された断片の5
’最末端に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、上記RNAを鋳型と
して逆転写反応を実施し得る。次に、標準的なターミナルトランスフェラーゼ反
応を用いて、得られたRNA/DNAハイブリッドにグアニジンで「尾をつける(tailed
)」ことができる。このハイブリッドをRNase Hで消化することができる。そして
次にポリCプライマーを用いて第2鎖の合成をプライミングすることができる。
このようにして増幅された断片の上流に位置するcDNA配列を容易に単離すること
ができる。用いることができるクローニング戦略の総論については、例えば、Sa
mbrookら, 1989, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Springs Har
bor Press, N.Y.を参照されたい。
【0039】 同定されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子が正常な、または野生型
の遺伝子である場合、この遺伝子を用いて該遺伝子の突然変異した対立遺伝子を
単離することができる。突然変異した対立遺伝子は、腸粘膜疾患および/または
腫瘍形成に寄与する遺伝子型を有することが知られている個体、またはそう思わ
れる個体から単離することができる。次に、突然変異した対立遺伝子および突然
変異した対立遺伝子の産物を以下に記述する治療および診断系に用いることがで
きる。
【0040】 突然変異した遺伝子のcDNAを例えばPCRによって単離することができる。この
場合、cDNA第1鎖は、突然変異した対立遺伝子を担持していると推定される個体
において該遺伝子が発現していることが分かっている、または推定される組織か
ら単離されたmRNAにオリゴ-dTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、そし
て新しい鎖を逆転写酵素によって伸長させることによって合成することができる
【0041】 次に、正常な遺伝子の5’末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチ
ドを用いてcDNAの第2鎖を合成する。次にこれらのプライマーを用いて上記産物
をPCRによって増幅し、適切なベクター中にクローン化し、そして当技術分野で
公知の方法によってDNA配列分析にかける。突然変異遺伝子のDNA配列を正常遺伝
子のDNA配列と比較することによって、突然変異遺伝子産物の機能の喪失または
変化に関与する突然変異を突き止めることができる。
【0042】 種々の宿主-発現ベクター系が、本発明のα1,2-フコシルトランスフェラーゼ
遺伝子コード配列を発現するのに使用できる。そのような宿主-発現ベクター系
とは、興味のあるコード配列がそれによって産生され、次いで精製されうる手段
(vehicle)を意味するが、適切なヌクレオチドコード配列を用いて形質転換また
はトランスフェクトされた場合に本発明のα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺
伝子産物をin situで示す細胞をも意味する。これらの宿主は、限定するもので
はないが、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物コード配列を含有する
組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクター
を用いて形質転換した細菌(例えば、大腸菌、枯草菌(B. subtilis))等の微生
物;α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物コード配列を含有する組換え
酵母発現ベクターを用いて形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス属(Sacch
aromyces)、ピキア属(Pichia));α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物
コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス
)に感染させた昆虫細胞系;α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物コー
ド配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイク
ウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させた、またはα1,2-
フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物コード配列を含有する組換えプラスミド
発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)を用いて形質転換した植物細胞系;また
は哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプ
ロモーター)もしくは哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデ
ノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有す
る組換え発現構築物を担持する動物細胞系(例えば、COS, SHO, BHK, 293, 3T3)
を含む。
【0043】 細菌系においては、発現されるα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物
の意図される用途によって、多数の発現ベクターを有利に選択することができる
。例えば、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドの医薬組成物を作製
するため、またはα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドに対する抗体
を作製するために大量の該タンパク質を生産しなければならない場合は、例えば
、容易に精製できる融合タンパク質産物の高レベル発現を引き出すベクターが望
ましいであろう。そのようなベクターには以下のものが含まれるが、それらだけ
に限定されない。すなわち、大腸菌発現ベクターpUR278 (Rutherら, 1983, EMBO
J. 2:1791)(融合タンパク質が産生されるように、α1,2-フコシルトランスフ
ェラーゼ遺伝子産物コード配列をlac zコード領域のフレームに合わせてベクタ
ーに個々に連結することができる);pIN ベクター(Inouye およびInouye, 1985
, Nucleic Acids Res. 13:3101-3109); 等である。pGEXベクターもまた、外来ポ
リペプチドをグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質とし
て発現するのに使用できる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性で、グ
ルタチオン-アガロースビーズに吸着させ、次いで遊離グルタチオンの存在下で
溶出することにより、溶解した細胞から容易に精製できる。上記pGEXベクターは
、クローン化された標的遺伝子産物をGST部分から離せるように、トロンビンま
たは因子Xaプロテアーゼ開裂部位を含むように設計されている。
【0044】 昆虫系の1つにおいては、外来遺伝子を発現するベクターとしてAutographa c
alifornica核多角体病ウイルス(AcNPV)が使用される。このウイルスはSpodopter
a frugiperda細胞中で増殖する。α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物
コード配列を、このウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)に個々
にクローン化し、AcNPV プロモーターの制御下に置くことができる。α1,2-フコ
シルトランスフェラーゼ遺伝子産物コード配列の挿入がうまくゆくと、ポリヘド
リン遺伝子の不活性化および閉鎖されていない(non-occluded)組換えウイルスの
産生をもたらすであろう。次に、これらの組換えウイルスをSpodoptera frugipe
rda細胞に感染させ、該細胞中で挿入遺伝子を発現させる。
【0045】 哺乳動物細胞においては、ウイルスに基づく多数の発現系が利用できる。アデ
ノウイルスを発現ベクターとして用いる場合は、興味のあるα1,2-フコシルトラ
ンスフェラーゼ遺伝子コード配列をアデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、例
えば後期プロモーターおよび3分節リーダー配列に連結することができる。次に
、このキメラ遺伝子をin vitroまたはin vivo 組換えによってアデノウイルスゲ
ノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1または
E3領域)への挿入は、感染した宿主中で生育可能であり、かつそこでα1,2-フコ
シルトランスフェラーゼ遺伝子産物を発現することができる組換えウイルスをも
たらすであろう(LoganおよびShenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:3
655-3659参照)。挿入されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物コー
ド配列の効率的な翻訳のために、特定の開始シグナルもまた必要とされるであろ
う。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。それ自身の開
始コドンおよび隣接配列を含む完全なα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子
を適切な発現ベクターに挿入する場合は、付加的翻訳制御シグナルはなんら必要
とされないであろう。しかし、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子コード
配列の一部のみを挿入する場合は、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナ
ルを提供する必要がある。
【0046】 レトロウイルスベクターによるトランスフェクション法、裸のDNA法(naked DN
A methods)、ならびにマイクロインジェクションおよびエレクトロポレーション
を含む機械的方法を用いて、安定にトランスフェクトされた宿主細胞(すなわち
、長期にわたって外因性DNAを失わない宿主細胞)または一過性にトランスフェ
クトされた宿主細胞(すなわち、細胞複製および増殖の際に外因性DNAを失う宿
主細胞)を提供することができる。
【0047】 代わりに選択しうる1つの融合タンパク質系は、ヒト細胞系において発現され
た非変性融合タンパク質の容易な精製を可能とする(Janknechtら, 1991, Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 88:8972-8976)。この系においては、興味のある遺伝子は
該遺伝子のオープンリーディングフレームが6個のヒスチジン残基からなるアミ
ノ末端タグに翻訳しうる形で融合されるように、ワクシニア組換えプラスミド中
にサブクローン化される。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞由来の抽出
物をNi2+ニトリロ酢酸-アガロースカラムに加え、そしてイミダゾール含有バッ
ファーを用いて、ヒスチジンでタグしたタンパク質を選択的に溶出する。
【0048】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物をトランスジェニック動物中に
発現させることも可能である。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、マ
イクロピッグ(micro-pig)、ヒツジ、および非ヒト霊長類動物を含むがそれらだ
けに限定されない任意の動物種を用いて、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺
伝子導入動物を作製することができる。
【0049】α1,2-フコシルトランスフェラーゼの発現系 本発明が開示する遺伝子によってコードされる新規な細菌性α1,2-フコシルト
ランスフェラーゼおよびその酵素的に活性な断片は、Lewis Y (Ley)およびLewis
B (LeB)等のフコシル化オリゴ糖の製造に用いることができる。これらの細菌性
オリゴ糖は哺乳動物に見いだされる特定の腫瘍関連炭水化物抗原と構造的に類似
している。これらの細菌性産物である複合糖質は、哺乳動物腫瘍を検出するアッ
セイの開発において研究上および診断上の有用性をも有している。
【0050】 上記フコシル化オリゴ糖は、本明細書に記述する方法および組成物を用いた任
意の方法によって製造することができる。当技術分野で周知の標準的な酵素学技
法を利用して、フコシル化オリゴ糖を提供する系を開発することができる(例え
ば、Academic Pressによって出版されているMethods in Enzymologyのシリーズ
;およびTim Bugg, 「An Introduction to Enzyme and Coenzyme Chemistry」,
1997, Blackwell Sciences, Inc.参照)。
【0051】 本明細書に用いる「基質」という用語は、本発明のポリペプチドの作用を受け
て、フコシル化オリゴ糖を生じることができるいずれかの物質または異なる物質
の組合せを意味する。例えば、限定するものではないが、基質としてはLacNAc-R
およびGDP-フコースを挙げることができる。
【0052】 本発明のフコシル化オリゴ糖の製造には細胞含有系および無細胞系を用いるこ
とができる。細胞含有系および無細胞系は以下の記述および実施例によってより
良く理解されるであろう。そのような系はフコシル化オリゴ糖の開発に有用であ
る。
【0053】 本発明は、基質からフコシル化オリゴ糖の形成を触媒することができるα1,2-
フコシルトランスフェラーゼの存在下で該基質を反応させることによるフコシル
化オリゴ糖の合成方法を提供する。
【0054】 上記α1,2-フコシルトランスフェラーゼは、基質からフコシル化オリゴ糖を生
成することができるものである限り、その起源に関係なく使用することができる
。α1,2-フコシルトランスフェラーゼの供給源は、本明細書に記述する方法およ
び組成物によって、例えば、以下にさらに詳しく記述するように発現系によって
トランスフェクトした宿主細胞からタンパク質を精製することによって得ること
ができる。
【0055】 酵素産物の形成を可能とするに適切な条件下で上記基質をα1,2-フコシルトラ
ンスフェラーゼポリペプチドと反応させる。当業者は適切な条件を容易に決定す
ることができる。例えば、適切な条件には基質とポリペプチドを十分な時間にわ
たって、かつ酵素産物(例えば、Ley, LeB)の形成を可能とするに十分な条件下で
接触させることが含まれるであろう。これらの条件は上記基質および酵素の量お
よび純度によって、また用いる系が無細胞系であるか細胞に基づく系であるかに
よって変るであろう。これらの変数は当業者によって容易に調整されるであろう
。例えば、酵素を基質に暴露する時間は、高温ではなく低温(例えば、4℃)の
場合にはより長くなるであろう。フコシル化オリゴ糖を合成する方法においては
、基質を添加する時期に関して何ら制限はない。種々の基質の比は等比率、すな
わち1:1でなければならない。基質に対する酵素の比は、所望のフコシル化オ
リゴ糖の割合(rate)および量によって変えることができる。
【0056】 上記フコシル化オリゴ糖の製造方法は4℃〜60℃の温度で実施することができ
る。さらに、限定するものではないが例えばpHが6.5〜8.0であるものなどの多数
のバッファーを15〜30 mM Mn2+の存在下で用いることができる。所望の量のフコ
シル化オリゴ糖が生成された後、加熱、遠心分離等によってα1,2-フコシルトラ
ンスフェラーゼポリペプチドを不活性化することができる。得られたフコシル化
オリゴ糖は、当業者に公知の技法によってさらに精製することができる。
【0057】 フコシル化オリゴ糖を合成するための細胞含有系は、該細胞が基質からのフコ
シル化オリゴ糖の合成を触媒できるものでありさえすれば、以下に記述する方法
によって組換え的に改変された宿主細胞を含む系であってもよいし、またはα1,
2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドもしくはその酵素的に活性な部分を
発現する天然に存在する細胞であってもよい。
【0058】 細胞含有系の場合、上記オリゴ糖を産生する条件下で、かつ該産生に十分な時
間にわたって宿主細胞を基質と接触させる。この時間および条件は宿主細胞型お
よび培養条件によって変るであろう。それらは当業者によって容易に決定可能で
ある。
【0059】 本発明はα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを産生するための遺
伝子発現系を提供する。この遺伝子発現系は、上記のように、α1,2-フコシルト
ランスフェラーゼポリペプチドまたはその一部分をコードするポリヌクレオチド
によって改変された宿主細胞を含む。
【0060】 本発明の好ましい遺伝子発現系は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペ
プチドまたはその一部分をコードするポリヌクレオチドによって改変された宿主
細胞を含む。
【0061】 本発明の製造方法は、上記方法により作製した遺伝子発現系をα1,2-フコシル
トランスフェラーゼポリペプチドを産生するに十分な条件下で培養することを含
む。この遺伝子発現系は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドまた
はその一部分をコードするポリヌクレオチドによって組換え的に改変された宿主
細胞を含む。
【0062】 本発明の製造方法はまた、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドの
回収に向けられている。該方法のさらなるステップは、回収したα1,2-フコシル
トランスフェラーゼポリペプチドを実質的に精製することを含む。精製されたα
1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドは、上記のようにフコシル化オリ
ゴ糖の合成または抗体の調製に用いることができる。
【0063】 本明細書は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を含有するDNA配列に
よって組換え的に改変された遺伝子発現系を具体的に開示する。該配列は、35,1
93ダルトンという計算上の分子量を有するα1,2-フコシルトランスフェラーゼ産
物に翻訳される約900塩基対からなるオープンリーディングフレーム(ORF)を含有
している。
【0064】 本明細書に用いる「組換え的に改変された」という用語は、α1,2-フコシルト
ランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを生きている細胞
または遺伝子発現系に導入することを意味する。改変は遊離のα1,2-フコシルト
ランスフェラーゼポリヌクレオチドの取込み、または当技術分野で公知の他の無
数の技法によっても起こりうるが、通常、上記ポリヌクレオチドはプラスミドま
たは他のベクター中に存在する。
【0065】 本明細書に用いる「遺伝子発現系」という用語は、その産物を発現させるべき
遺伝子が上記のように導入されている、生きている真核または原核細胞を意味す
る。
【0066】 本明細書に用いる「回収する」という用語は、挿入されたポリヌクレオチドに
よって生成された産物を遺伝子発現系から集める、すなわち分離することを意味
する。
【0067】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチ
ド配列は、適切な宿主細胞へのポリヌクレオチド導入によって発現させることが
可能である。
【0068】 「宿主細胞」とは、その中でベクターが増殖可能であり、かつベクターのDNA
が発現されうる細胞である。遺伝子発現系は、その中でベクターが増殖され、か
つベクターのDNAが発現された宿主細胞を含んでなる。「宿主細胞」という用語
はまた、該宿主細胞の任意の子孫をも包含する。複製時に起こる突然変異が存在
し得るので、全ての子孫が親細胞と同一というわけではないかもしれないことが
理解される。しかし、「宿主細胞」という用語を用いる場合、そのような子孫は
この用語に含まれる。権利請求する遺伝子発現系および権利請求するα1,2-フコ
シルトランスフェラーゼポリペプチドの製造方法に有用な宿主細胞としては、細
菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞および動物細胞が含まれる。
【0069】 安定した導入(外来DNAが宿主中に継続的に維持されることを意味する)の方
法は当技術分野で公知である。本発明においては、α1,2-フコシルトランスフェ
ラーゼポリヌクレオチド配列を組換え発現ベクターに挿入することができる。「
組換え発現ベクター」という用語は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子
配列の挿入または組み込みによって操作されたプラスミド、ウイルスまたは当技
術分野で公知の他の伝達体をいう。このような発現ベクターは、宿主に挿入され
た遺伝子配列の効率的転写を促進するプロモーター配列を含有する。発現ベクタ
ーは、典型的には複製起点、プロモーター、および形質転換された細胞の表現型
による選択を可能とする特定の遺伝子を含有する。宿主中で発現および複製が可
能な生物学的に機能的なウイルスおよびプラスミドDNAベクターが当技術分野で
公知である。本発明のDNA配列を組み込むためにそのようなベクターが用いられ
る。
【0070】 本発明の方法は実質的に純粋なα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチ
ドをもたらす。本明細書に用いる「実質的に純粋な」という表現は、他のタンパ
ク質、脂質、糖質、またはそれが通常関連している他の物質を含まないタンパク
質をいう。当業者は、分取クロマトグラフィーおよび免疫学的分離(モノクロー
ナルまたはポリクローナル抗体を用いる)を含むタンパク質精製のための標準的
技法を用いてα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを精製することが
可能である。例えば、実質的に純粋なα1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパ
ク質は、非還元性ポリアクリルアミドゲル上に約35 kDの1本の主要なバンドを
もたらすであろう。α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドの純度は、
アミノ末端アミノ酸の配列分析によっても決定することができる。α1,2-フコシ
ルトランスフェラーゼポリペプチドは、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ酵素
活性などの生物学的活性が残っている限り、該ポリペプチドの機能性断片を含ん
でいる。したがって、本発明はα1,2-フコシルトランスフェラーゼの酵素活性を
含有するより小さいペプチドをもたらす遺伝子発現系およびα1,2-フコシルトラ
ンスフェラーゼポリペプチドの製造方法を包含する。
【0071】α1,2-フコシルトランスフェラーゼの製造 本発明の遺伝子発現系由来のα1,2-フコシルトランスフェラーゼの製造は、α
1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその酵素的に活性な部分を
コードするポリヌクレオチドによって組換え的に改変された宿主細胞を含む遺伝
子発現系を培養し、そして該α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを
回収することによって達成される。この方法は、当技術分野で周知のタンパク質
精製プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology, 第10章, Ausube
l, F.Mら(編), 1994)を用いて、回収したα1,2-フコシルトランスフェラーゼポ
リペプチドを実質的に精製することをさらに含む。
【0072】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを製造する方法は、連続培養
(例えば、限定するものではないが「流加回分培養」または連続灌流培養など)
の条件下で本発明の遺伝子発現系を培養することを含む。本発明に用いうる他の
連続培養系はWang, G.ら, Cytotechnology 9:41-49, 1992; Kadouri, A.ら, Adv
ances in Animal Cell Biology and Technology for Bioprocesses, 327-330頁,
Courier International, Ltd., 1989; Spier, R.E.ら, Biotechnol. Bioeng. 1
8:649-57, 1976に記載されている。
【0073】α1,2-フコシルトランスフェラーゼタンパク質に対する抗体 α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物を規定する抗体は本発明の範囲
内にあり、そしてそのような抗体としては、1つ以上のα1,2-フコシルトランス
フェラーゼ遺伝子産物エピトープを特異的に認識することができる抗体が含まれ
る。そのような抗体には、限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モノ
クローナル抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体、1本鎖抗体、Fabフラグメント、
F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製されたフラグメント
、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のうち任意のもののエピトープ結
合性フラグメントが含まれる。そのような抗体は、例えば、血液、血漿および血
清を含むがそれらだけに限定されない生物学的サンプル中のα1,2-フコシルトラ
ンスフェラーゼ遺伝子産物を検出するのに用いることができる。または、そのよ
うな抗体は異常なα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物活性を抑制する
方法として用いることができる。したがって、上記抗体は腸粘膜疾患の治療の一
部として用いることが可能である。また、上記抗体はα1,2-フコシルトランスフ
ェラーゼ遺伝子産物の異常なレベルについて、またはそのようなタンパク質の異
常形態の存在について患者を試験することができる診断技法の一部としても用い
うる。
【0074】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物に対する抗体を作製するために
、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物またはその一部を注射すること
によって種々の宿主動物を免疫感作することができる。このような宿主動物とし
ては、限定するものではないが2〜3例を挙げるならばウサギ、マウスおよびラッ
トが挙げられる。免疫応答を増強させるため、宿主の種によって種々のアジュバ
ントを用いることができる。アジュバントとしては、限定するものではないが、
フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネ
ラルゲル、リソレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオンなどの界面活
性物質、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、
ジニトロフェノール、ならびにBCG、インターフェロンおよび免疫応答をもたら
す他のサイトカインなどの潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれる。
【0075】 ポリクローナル抗体とは、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物また
はその抗原性機能性誘導体などの抗原で免疫感作した動物の血清に由来する抗体
分子の不均質集団である。一般に、ポリクローナル抗体を作製するためには、上
記アジュバントを補充したα1,2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物を注射
することによって上記のような宿主動物を免疫感作することができる。
【0076】 特定の抗原に対する抗体の均質集団であるモノクローナル抗体(mAb)は、培養
下の連続細胞系による抗体分子の産生を提供する任意の技法によって得ることが
できる。そのような技法には以下のものが含まれるが、それらだけに限定されな
い。すなわち、Kohlerおよび Milsteinのハイブリドーマ技法(1975, Nature 256
:495-497;および米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kos
borら, 1983, Immunology Today 4:72; Coleら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 80: 2026-2030)、およびEVB-ハイブリドーマ技法(Coleら, 1985, Monocl
onal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 77-96頁)である
。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそれらの任意のサブクラ
スを含む任意の免疫グロブリンクラスのものでありうる。本発明mAbを産生する
ハイブリドーマは、in vitroまたは in vivoで培養することができる。in vivo
における高力値のmAbの産生は、ハイブリドーマのin vivo培養を現時点で好まし
い産生方法としている。
【0077】 さらに、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子を適切な生物
学的活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングすることによ
って「キメラ抗体」を作製するために開発された技法(Morrisonら, 1984, Proc
. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855; Neubergerら, 1984, Nature 312: 604
-608; Takedaら, 1985, Nature 314:452-454)を用いることができる。キメラ抗
体とは、異なる部分が異なる動物種に由来する抗体分子のことである。例えば、
マウスmAb由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子など
である。
【0078】 または、1本鎖抗体を作製するために記述された技法(米国特許第4,946,778
号; Bird, 1988, Science 242: 423-426; Hustonら, 1988, Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 85:5879-5883; およびWardら, 1989, Nature 334: 544-546)を、α1,
2-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物に対する1本鎖抗体を作製するために
適合させることができる。1本鎖抗体は、Fv領域のH鎖およびL鎖フラグメント
をアミノ酸架橋により連結し、1本鎖ポリペプチドをもたらすことにより形成さ
れる。
【0079】 特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技法によって作製す
ることができる。例えば、そのようなフラグメントは限定するものではないが以
下のものを含む。すなわち、抗体分子のペプシン消化によって作製することがで
きるF(ab’)2フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を
還元することによって作製することができるFabフラグメントを含む。または、F
ab発現ライブラリーを構築して、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラ
グメントの迅速で容易な同定を可能とすることができる。
【0080】生物学的サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラーゼの検出方法 上記の抗体を生物学的サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペ
プチドの検出に用いることができる。血液もしくは他の組織または細胞型由来の
α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドは当技術分野の当業者に周知の
技法を用いて容易に単離することができる。本明細書に採用するタンパク質単離
法は、例えば、参照によりその全体を本明細書に組み入れるHarlowおよびLane (
Harlow, E.およびLane, D., 1988, 「Antibodies: A Laboratory Manual」, Col
d Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記述さ
れているような方法であってよい。
【0081】 野生型または突然変異型α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを検
出するための好ましい診断方法は、例えば、抗α1,2-フコシルトランスフェラー
ゼポリペプチド特異的抗体との相互作用によってα1,2-フコシルトランスフェラ
ーゼポリペプチドが検出されるイムノアッセイを包含する。
【0082】 例えば、本発明に有用な上述のような抗体または抗体フラグメントを用いて、
定量的または定性的に野生型または突然変異型α1,2-フコシルトランスフェラー
ゼポリペプチドの存在を検出することが可能である。これは、例えば、蛍光標識
した抗体を光学顕微鏡、フローサイトメトリーまたは蛍光定量法による検出と組
み合わせて用いる免疫蛍光法によって達成することができる。α1,2-フコシルト
ランスフェラーゼポリペプチドが細胞表面に発現されている場合、そのような技
法は特に好ましい。
【0083】 さらに、本発明に有用な抗体(またはそのフラグメント)はα1,2-フコシルト
ランスフェラーゼポリペプチドのin situ検出のために、免疫蛍光検査法または
免疫電子顕微鏡法などにおいて、組織学的に用いることができる。In situ検出
は患者から組織学的標本を採取し、そして本発明の標識化抗体をそこに適用する
ことによって達成することができる。該抗体(またはフラグメント)は、好まし
くは生物学的サンプル上に標識化抗体(またはフラグメント)を重層することに
よって適用される。このような方法の使用によって、α1,2-フコシルトランスフ
ェラーゼポリペプチドの存在のみでなく、被験組織中の該ポリペプチドの分布を
も決定することが可能である。本発明を用いるならば、当業者は広範な組織学的
方法のうち任意のもの(染色方法など)が上記のようなin situ検出を達成する
ために改変しうることに容易に気づくであろう。
【0084】 野生型または突然変異型α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドのイ
ムノアッセイは、典型的には、生物学的流体(血液、血漿、または血清を含むが
、これらだけに限定されない)、組織抽出物、あらたに採取した細胞、または組
織培養物中でインキュベートした細胞などの生物学的サンプルを、α1,2-フコシ
ルトランスフェラーゼポリペプチドを同定することができる検出可能に標識した
抗体の存在下でインキュベートし、そして当技術分野で周知の多数の技法のうち
任意のものによって結合抗体を検出することを含む。
【0085】 検出は他の種々のイムノアッセイのうち任意のものを用いて実施することも可
能である。例えば、抗体または抗体フラグメントを放射性標識することにより、
野生型または突然変異型α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドをラジ
オイムノアッセイ(RIA)の使用によって検出することが可能である(例えば、参
照により本明細書に組み入れるWeintraub, Principles of Radioimmunoassays,
Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine S
ociety, 1986年3月、参照)。放射性同位体はγカウンターもしくはシンチレー
ションカウンターの使用などの手段によって、またはオートラジオグラフィーに
よって検出可能である。また、フルオレセインチオシアネート、ローダミン、フ
ィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニンおよびフルオレスカミン
等の蛍光化合物を用いて抗体を標識することも可能である。
【0086】 152Eu等の蛍光を発する金属を用いて抗体を検出可能に標識することも可能で
ある。さらに、抗体をルミノール、イソルミノール、セラマティック(theramati
c)アクリジニウムエステルおよびシュウ酸エステル等の化学発光化合物と結合す
ることによって検出することもできる。
【0087】 以下の実施例は本発明を説明することを意図するものであって、本発明を限定
するものではない。それらは典型的なものであるが、当業者に公知の他の方法を
代わりに用いて本発明の実施形態および方法を説明することも可能である。
【0088】実施例1 H.ピロリ(H. pylori)フコシルトランスフェラーゼ(fucT)遺伝子のクローニ
ングおよび配列情報 細菌株および培地 H.ピロリ(H. pylori)の26695株およびUA802株を、fucT2遺伝子のクローニン
グ、配列決定および突然変異誘発に用いた。H.ピロリ細胞を、微好気性条件下に
てBHI-YE寒天またはBHI-YEブロスで培養した(GeおよびTaylor, 1997, Methods
in Molecular Medicine, C. L. ClaytonおよびH. Mobley(編)Totowa, NJ: Hum
ana Press, pp. 145-152)。大腸菌DH10B株を組み換えプラスミドの産生のため
に用いた。
【0089】H.ピロリ(H. pylori)α(1,2)フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(Hp fucT2)
のクローニング 2つのプライマー:GW44(5'-GAACACTCACACGCGTCTT-3'、公開されているH.ピ
ロリゲノムの99980-99962位)およびGW32(5'-TAGAATTAGACGCTCGCTAT-3'、公開
されているH.ピロリゲノムの98855-98874位)を用いて、H.ピロリ26695株および
UA802株の染色体DNA由来のHp fucT2を含有する1.12 kbの断片をPCR増幅した。さ
らに、プライマーGW43(5'-CGGAGGGCTTGGGAATCAA-3'、公開されているH.ピロリ
ゲノムの99814-99796位)およびプライマーGW32を用いて、UA802株の染色体DNA
から5’末端切断型fucT2遺伝子を担持する0.96 kbのPCR断片を得た。このPCR断
片を、pGEM-Tベクター(Promega)中に製造業者の指示に従って直接クローニン
グした。該プラスミドにクローニングした遺伝子の配向を制限酵素分析で調べ、
T7プロモーター制御下のfucT2遺伝子を有するクローンを選択した。得られたプ
ラスミド、すなわちpGEMB3、pGEMI6、およびpGEMH2を図3Aに図示する。続いて
、プラスミド中にクローニングした遺伝子を配列決定し、H.ピロリゲノム中の対
応する遺伝子と同一であることが示された。
【0090】H.ピロリ(H. pylori)α(1,2)fucT遺伝子の特徴 公開されているH.ピロリゲノム配列(Tombら、1997, Nature 388: 539-547)
に基づいて、プライマー対:GW44およびGW32(図1A)を設計した。これらのプ
ライマーによって、H.ピロリUA802株から、26695株中のHP0094およびHP0093を含
有する領域に相当するDNA断片(1.12 kb)をPCRにより増幅することができた。
この断片の完全ヌクレオチド配列は、H.ピロリ26695株の配列に対し95%の同一
性を有した。しかしながら該断片は、分子量35,193Daと算出された300アミノ酸
のタンパク質をコードする単一のORFを含有する。本発明者らは、この遺伝子をH
p fucT2と称し、既に同定されているfucTという名称のα(1,3)fucT(Martinら、
1997, J. Biol. Chem. 272: 21349-21356;Geら、1997, J. Biol. Chem. 272: 2
1357-21363)と区別した。Hp fucT2遺伝子はその中心領域に独特の特徴を有する
。既に同定されているポリC領域(Tombら、1997, Nature 388: 539-547;Bergら
、1997,Trends Microbiol. 12: 468-474)の他に、本発明者らはポリC配列の直
後に存在するTAAリピート(不完全であり、GAAまたはAAAの場合もある)の配列
を同定した(図1B)。両方の領域のリピート数の変化は、種々の株におけるfuc
T2遺伝子型の変異(オンもしくはオフ状態)に寄与する(図1A、B、および表2
)。
【0091】 fucT2遺伝子とLeY表現型との関係を明らかにする試みにおいて、さらに6つの
H.ピロリ単離体を分析のために選択した(表2)。26695株およびUA802株と共に
、これら全8つの株は、Lewis表現型の4群:LeX-/LeY+、LeX +/LeY+、LeX +/Le Y -、およびLeX -/LeY-に属する。これらの株に由来するfucT2遺伝子の完全ヌク
レオチド配列は、種々の株の間でポリCおよびTAAリピート配列に過剰な変異を
示し、これによって遺伝子は無傷(UA802株)であるか、またはフレームシフト
(26695株)した。UA802 fucT2と同様に、UA1234 fucT2は、1つのTAAリピート
に欠失を有するが無傷のORFをコードする。UA802株およびUA1234株における無傷
fucT2遺伝子の存在は、それらのLeY+表現型と相関した。UA1182株には、他の266
95株の例と同様に、fucT2遺伝子にフレームシフト突然変異が含まれる。この突
然変異は、dnaX様翻訳フレームシフトカセットがインフレームで存在するため、
翻訳フレームシフトによって補うことができる。
【0092】 LeX+/LeY-表現型を有する2つの株:UA 1174およびUA 1218は、fucT2遺伝子に
おいて完全に異なる特徴を提示した。UA1174 fucT2では、超易変異(hypermutab
le)領域に2Cおよび2Aの挿入があり、それによりフレームシフト突然変異となる
。dnaX様翻訳フレームシフトカセットが不在である(AAAAAAG配列がインフレー
ムで存在しない)ため、フレームシフトは補われず、LeY-表現型を生じる。一方
、UA1218 fucT2は無傷のORFをコードする。なぜなら、超易変異領域の変化によ
ってフレームシフトは生じないからである。しかしながらPCRとそれに続くDNA配
列決定から得られた結果によって、UA1218 fucT2遺伝子のSD配列(リボソーム結
合部位)のちょうど前に80bpの欠失が明らかになった。従って、UA1218株のLeY-
表現型は、fucT2遺伝子の発現のためのプロモーターの不在に起因している可能
性がある。最後の群の2つの株:UA1207およびUA1210は、無傷のfucT2遺伝子有
する。なぜなら、TAAリピートの欠失または(-C +A)の変化によって、フレーム
シフトは生じないためである。従って、これらの2つの株におけるα(1,2)FucT
は、機能的であると予測される。これらの株のLeX-表現型から、本発明者らは、
α(1,3)FucTが機能的ではなく、またLeY-表現型を導きうることを推論しうる。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】 Hp fucT2遺伝子はその中心領域に独特の特徴を有し、この領域はH.ピロリ(H.
pylori)26695株における変異型遺伝子の発生の原因となる。該領域は、ポリC
領域の後に不完全なTAA(またはGAAもしくはAAA)リピートを含有する(図1B)
。UA802 fucT2には12個のCが並び、これによって、この領域により開始翻訳フレ
ーム(0フレーム)が読み出されて、全長の翻訳産物を生じさせる。26695 fucT2
の場合には、さらに2個のCの存在(合計14個のC)によってTGA停止コドンにお
いて開始フレーム(HP0094)が早く停止する(図1B)。HP0094の下流では、読
み出されてHP0093を生成しうる他のフレームに潜在的な開始コドン(ATG)が存
在すると考えられる(図1A)。
【0096】 ポリC領域はHp fucT遺伝子(α(1,3)fucTおよびα(1,2)fucTの両方)において
同定されているので、かかる単純なオリゴヌクレオチドリピート領域が超易変異
性であり、該遺伝子の発現のオン−オフ機構を提供すると考えられていたので(
Saundersら、1998, Mol. Microbiol. 27: 1091-1098)、LPS発現の相変異の原因
となる可能性がある。実際は、Hp fucT2遺伝子におけるポリCリピートの数は種
々の株において異なっている(N=11〜14、基準のUA802 fucT2は12個のCを有する
。表2)。さらに、本発明者らは、後に続くTAAリピート配列(またはAリッチ配
列と呼ばれる)もまた突然変異のホットスポットであることを観察した。これら
の反復配列における分岐進化によって、全長産物(仮説上では遺伝子オン)また
は末端切断型産物(仮説上では遺伝子オフ)のいずれかをコードする2つのタイ
プの遺伝子が生じた。
【0097】 しかしながらfucT2遺伝子の仮説上オフの状態の特定の株は、LeY+表現型を有
し、26695株において例証される。26695 fucT2遺伝子中の大腸菌dnaX翻訳フレー
ムシフトカセットと類似しているヌクレオチド配列の同定、ならびに該遺伝子の
in vitro発現の結果によって、全長タンパク質が特定のオフ状態のfucT2遺伝子
により産生されうる合理的な機構が判明した。プログラム化翻訳フレームシフト
は、種々の生物に由来する遺伝子に見られ、フレームシフト頻度はいくつかの遺
伝子では非常に高く、100%に接近する(Farabaugh、1996, Annu. Rev. Genet. 3
0: 507-528)。最も研究されている-1フレームシフトモデルは大腸菌dnaX、すな
わちDNAポリメラーゼIIIのτサブユニットの遺伝子である。翻訳フレームシフト
の結果として、末端切断型産物(DNAポリメラーゼIIIのγサブユニット)を、約
40%〜50%の頻度のdnaXから合成する(FlowerおよびMcHenry, 1990, Proc. Nat
l. Acad. Sci. USA 87: 3713-3717)。τおよびγサブユニットの両方がDNA合成
に必要であり、それらのプロセッシビティが異なるため、それぞれリーディング
鎖およびラギング鎖の合成に必要である。dnaX翻訳フレームシフトカセットにお
ける主要なエレメントは、適切なリーディングフレーム中のA AAA AAGの八量体
配列である。この配列における効率的なフレームシフトは、大腸菌におけるCUU
アンチコドンを有するtRNALysの不在によるものと示されている(Tsuchihashiお
よびBrown, 1992, Genes Dev. 6: 511-519)。UUUアンチコドンを有するtRNALys がAAGリシンコドンに遭遇した場合、それはAAAリシンコドンとより強力に相互作
用する-1フレームに容易にずれが生じうる。H.ピロリのゲノム配列全体から、本
発明者らはH.ピロリがUUUアンチコドンを有するtRNALysを1つだけ有しているこ
とがわかった。さらにdnaX遺伝子と同様に、推定SD配列およびステム・ループ構
造を含有するフレームシフト誘発エレメントもまた、26695 fucT2遺伝子におけ
るA AAA AAG配列の上流および下流に見出された。したがって、特定のH.ピロリ
株(26695株など)が大腸菌 dnaX遺伝子と同じ機構を利用して、fucT2遺伝子の
翻訳に-1フレームシフトを生じる可能性は非常に高い。本発明者らは、26695 fu
cT2遺伝子のin vitro発現において全長タンパク質バンドおよび半分の長さのタ
ンパク質バンドを観察したが、この遺伝子ならびに種々の株の該遺伝子における
翻訳フレームシフトの正確な頻度はまだ決定されていない。また、H.ピロリ細胞
における該遺伝子の発現は、大腸菌T7細胞抽出物を用いてin vitroで観察される
発現とは異なる可能性が高い。
【0098】 α(1,3)フコシルトランスフェラーゼとは異なり、α(1,2)FucTはより異種のフ
ァミリーに属し、ほとんど相同性を示さない。真核性および原核性α(1,2) FucT
のマルチプル配列アライメントによって、本発明者らは、構造的および/または
触媒的重要性を有する可能性のある、高度に保存されている3つのモチーフを同
定することができた。モチーフIはN末端ステム領域に位置するが、モチーフII
およびIIIは提起されている触媒ドメインに位置する(図2)。挿入突然変異誘
発法によって、本発明者らは、HindIII部位またはEcoRI部位のいずれかにおける
該遺伝子の破壊によってLeY合成における機能が完全に破壊されることを示し、
このことは該遺伝子の完全性がこの機構に必要であることを示唆している。
【0099】 予想外にも、H.ピロリfucT2突然変異体は野生型細胞よりも多くLeXを発現する
。この知見は、LeXがH.ピロリ(H. pylori)におけるLeY合成の基質であること
を示唆している。一般的に記載されている哺乳動物系(Avent, 1997)では、LeY
はH2型構造上のα(1,3)結合を介してフコースを付加することにより生成される
(図5、左側の経路)。しかしながらMartinら、(1997)は、H2型がHp α(1,3)
FucTの基質ではないことを見出し、このことは、H.ピロリにおけるLeY合成にお
いて、α(1,2)フコシル化がα(1,3)フコシル化の後に起こりうることを示唆して
いる(図5、右側の経路)。本明細書に示した本発明者らの結果は、この概念に
よく一致するものである。それゆえ、α(1,2)FucTの破壊によってその基質であ
るLeXの蓄積が引き起こされうる。更に、fucT2遺伝子中のHindIII部位またはEco
RI部位に突然変異を担持する2つの突然変異体の間のLeX発現に差異があった。H
indIII部位はfucT2(I型)遺伝子の中間にあり、その下流には、EcoRI部位が位
置するHP0093に相当する潜在的な小さいORFが存在する。HindIII 突然変異体で
発現されうるこのORFにおいて、フコースの付加に対してα(1,3)FucTが競合して
、より多くLeXを生成する活性部位または結合部位が残存する可能性がある。一
方で、EcoIR突然変異体におけるα(1,2) FucTの結合部位は、完全に破壊されう
る。結果として、LeXレベルの増大がより明らかである。
【0100】 LeYの合成にはα(1,3) FucTおよびα(1,2) FucT活性の両方が必要である(図
5)ため、どちらかの遺伝子をオフにすることによって、UA1174株、UA1218株、
UA1207株、およびUA1210株に見られるようにLeY−表現型が生じるだろう(表2
)。両方の遺伝子がオンである(または部分的にオンである)場合、LeXおよびL
eYの発現レベルは2つの酵素濃度(活性)の比率によって変わるだろう。α(1,3
) fucT遺伝子(2つのコピー)の実際の状態は知ることはできないが、本発明者
らは、UA802株およびUA1234株におけるα(1,3)/α(1,2) FucTの比率が低く、そ
のためα(1,3) FucTにより合成されたほとんど(または全て)のLeXがα(1,2) F
ucTによってLeYに変換されたと仮定している。このことは、野生型UA802株から
はLeXが検出されなかったが、fucT2遺伝子が破壊されている場合には低レベルの
LeXが検出された観察結果によって支持されるものである。26695株およびUA1182
株において、fucT2遺伝子は、翻訳フレームシフトによって補われるためオフ−
オン切り替え状態にある。26695 fucT2遺伝子のin vitro発現から分かるように
、そして大腸菌dnaX遺伝子から推測されるように、翻訳フレームシフトの頻度は
推定上約50%である。したがって、26695株におけるα(1,2) FucT活性は、UA802
株における活性よりも低い可能性がある。26695株のfucT2ノックアウト突然変異
体によって、対応するUA802突然変異体よりも多くLeXが生成されるため、本発明
者らは、26695株におけるα(l,3)FucT活性がUA802株の活性よりも高いと仮定
する。まとめると、本発明者らは、26695株におけるα(1,3) /α(1,2) FucT活性
の比率が高く、これが(LeX+、LeY+)表現型に寄与することを提唱する。このモ
デルを確証するため、α(1,3) FucT遺伝子の両方のコピーの遺伝子解析、ならび
に両方の株に由来する両方の酵素の活性の競合的測定が必要である。
【0101】DNA配列決定およびデータベース 適切なPCR断片またはクローニングDNA断片の両方の鎖をThermoシークエナーゼ
配列決定キット(Amersham Life Science, Inc.)を製造業者の指示に従って使
用して配列決定した。配列解析をNational Center of Biotechnology Informati
on (Bethesda, MD)のBLASTプログラムを用いて実施した。Genetics Computer
Group(GCG)(Madison, WI)のWisconsinパッケージ(9.0バージョン)を用い
て配列を編集した。
【0102】 データベース中の配列を比較した結果、Hp fucT2は他の細菌:イエルシニア・
エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)血清型O: 8のLPS O抗原遺伝子
クラスター内の遺伝子(wbcH)(Zhangら、1997)、およびラクトコッカス・ラ
クティス(Lactococcus lactis)における体外多糖類生合成に必須のesp遺伝子
クラスターをコードするプラスミド内の遺伝子(epsH)(van Kranenburgら、19
97, Mol. Microbiol. 24: 387-397)と相同性を有する。wbcHおよびepsH遺伝子
産物の両方が、配列相同性から推測されるようにα(1,2) FucT酵素として作用す
る可能性があるが、それらの機能を指定するための実験的証拠はまだ得られてい
ない。Hp fucT2遺伝子産物は、真核性ならびに原核性対応物に対して低レベルの
全体アミノ酸配列類似性を示し、ヒトFut2に対し18%の同一性を有し(Kellyら
、1995, J. Biol. Chem. 270: 4640-4649)、Y.エンテロコリティカ WbcHに対し
22%の同一性を示す。しかしながらマルチプル配列アライメントによって、α(1
,2) FucT(図2のモチーフI、IIおよびIII)全てにおいて高度に保存されている
3つのブロックのアミノ酸配列が明らかになり、それは酵素機能にとって重要で
ある可能性がある。該モチーフのうち、モチーフIIはBretonら(1998, Glycobio
logy 8: 87-94)によりヌクレオチド結合ドメインの一部であると提唱されてい
るものである。このモチーフは、コード領域がHP0094とHP0093との間にあるため
、26695 fucT2遺伝子の推定アミノ酸配列から欠損していることに留意されたい
【0103】 全ての真核性α(1,2) FucTは、短いN末端細胞質テイル、膜貫通ドメイン、お
よびステム領域に続く巨大球状C末端触媒ドメインから構成される典型的なドメ
イン構造を有する(KleeneおよびBerger, 1993, Biochim Biophys Acta 1154 :
283-325)。これまでに同定されている3つの細菌性α(1,2) FucTは、真核性対
応物より短く、N末端細胞質テイルおよび膜貫通ドメインを欠損している(図2
A)。これは、配列アライメント、ならびにHp FucT2が可能な膜貫通ドメインを
含有しない球状タンパク質であることを示唆した2次構造の解析(ヒドロパシー
プロファイル)により明らかである。真核性FucTのN末端細胞質テイルおよび膜
貫通ドメインは、ゴルジ局在化および酵素の保持に役割を果たすと提唱される。
細菌性α(1,2) FucTの配列は、酵素が細胞質に局在化する可溶性タンパク質であ
ることを示唆している。
【0104】実施例2 H.ピロリ(H. pylori)fucT遺伝子のプラスミド構築物および発現 挿入突然変異誘発法および自然形質転換 破壊されたH.ピロリfucT2遺伝子を担持するプラスミド突然変異体を、クロラ
ムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)カセット(WangおよびTaylo
r, 1990, Gene 94: 23-28)をHindIII部位またはEcoRI部位に挿入することで作
製した(図3A)。3つの突然変異体プラスミド、すなわちpGHC26(26695 fucT2
のHindIII部位にCATカセットを有する)、pGEC26(26695 fucT2のEcoRI部位にCA
Tカセットを有する)、およびpGHC8(UA802 fucT2のHindIII部位にCATカセット
を有する)を得た。プラスミド突然変異体を、自然形質転換手法によりH.ピロリ
26695株およびUA802株の染色体に導入した。4つのH.ピロリfucT2ノックアウト
突然変異体:26695ΔH、26695ΔE、802ΔH、および802ΔEを得た(注意:UA802
fucT2遺伝子にEcoRI部位はなく、802ΔEはpGEC26をUA802に形質転換することに
より得た。)。
【0105】Hp fucT2遺伝子のin vitro発現 T7プロモーター制御下のHpfucT2遺伝子を含有するプラスミド、ならびにそれ
らのfucT2遺伝子中にCATカセットを挿入したプラスミドを、CsCl勾配超遠心分離
により精製した。精製した超コイル環状DNAを鋳型として使用して、大腸菌T7 S3
0抽出系(Promega)を製造業者の指示に従って用いてクローニング遺伝子のin v
itro発現を行った。発現された遺伝子産物を[35S]メチオニンで標識し、0.1% S
DS-12%ポリアクリルアミドゲル上、続いてオートラジオグラフィーで分析した
【0106】免疫電子顕微鏡法 H.ピロリ(H. pylori)ブロス培養物をFormvarコーティング電子顕微鏡格子上
に吸着させ、リン酸バッファーで洗浄した。サンプルを1次抗LeY MAbアイソタ
イプIgM(Signet Laboratories, Inc.)と共にインキュベートし、さらにヤギ抗
マウスIgM-10nm 金コロイドコンジュゲート(EY Laboratories, Inc., San Mate
o, CA)と共にインキュベートした。陽性標識は、非固定かつ非染色のH.ピロリ
細胞上の金粒子の存在で判定した。
【0107】H.ピロリ(H. pylori)の全細胞懸濁物を用いたELISA 使用する1次抗体を抗LeX(mAB BG-7)および抗LeY(mAB BG-8)(Signet Lab
oratories Inc. Dedham, MA)とした。2次抗体を2000倍希釈した西洋ワサビペル
オキシダーゼ(HRP)に結合させた抗マウスIgG + IgM(Biocan #115 035 068, M
ississauga, Ontario)とした。4 mMアジ化ナトリウムで反応を停止させ、吸光
度をTitretek Multiscan MC(Helsinki, Finland)マイクロタイタープレートリ
ーダーを用いて405nmにて記録した。
【0108】H.ピロリ(H. pylori)LPSのSDS-PAGEおよびイムノブロット分析 プロテイナーゼKで処理したH.ピロリ株の全細胞抽出物を調製し、5%アクリル
アミドの積層ゲルと15%アクリルアミドの分離ゲル上における電気泳動にかけた
。ゲル上のLPSを、銀染色法またはイムノブロッティングで検出した。ニトロセ
ルロース膜(孔サイズ0.22μm、Micron Separations Inc. Westboro MA)にトラ
ンスファーしたLPSを、抗Lewis構造抗体(100倍希釈)と、その後に西洋ワサビ
ペルオキシダーゼに結合させたヤギ抗マウス抗体(2000倍希釈)を用いて検出し
た。ブロットを強化型化学ルミネッセンスキット(Amersham)を製造業者の仕様
書に従って使用して現像した。
【0109】両方の型のHp fucT2遺伝子が全長タンパク質をin vitroで産生 図3Aに示し、実験手順中に記載の通りに、Hp fucT2遺伝子をPCRにより増幅さ
せ、pGEM-Tベクター中にT7プロモーターの制御下にクローニングした。プラス
ミド中にクローン化された遺伝子は、DNA配列決定によりH. ピロリゲノム中のオ
リジナル遺伝子と同一であることを確認した。プラスミドpGEMB3は26695 fucT2
遺伝子を含み、プラスミドpGEMH2は5’-末端切断802 fucT2遺伝子を含み、そし
てpGEMI6は完全802 fucT2遺伝子を含む。続いて、CATカセットをクローン化した
Hp fucT2遺伝子内部のHindIII部位またはEcoRI部位に挿入し、プラスミド変異体
pGHC26(CATカセットを26695 fucT2のHindIII部位で有する)、pGEC26(CATカセッ
トを26695 fucT2のEcoRI部位で有する)、およびpGHC8(CATカセットをUA802 fucT
2のHindIII部位で有する)を得た。これら6種のプラスミドDNAをin vitroでの転
写-翻訳アッセイのための鋳型として使用し、対応する遺伝子にコードされたタ
ンパク質の産生を試験した。
【0110】 発現したタンパク質産物をSDS-PAGEにより分析した結果を図3Bに示す。802 fu
cT2遺伝子(pGEMI6、レーン5)の発現により、33KDの主要タンパク質が生じたが
、これは推定アミノ酸配列(35KD)から期待されるものに非常に近いものである。
より低分子量の3本の弱いバンドは、内部のATGコドンで始まる翻訳の結果、ま
たは全長タンパク質の分解の結果である可能性がある。予測通り、5’-末端切断
802 fucT2は全長タンパク質を産生しなかった(pGEMH2、レーン4)。26695 fucT2
(pGEMB3、レーン3)の発現については、18KDと13KDの、2つの小さなタンパク質
が遺伝子のDNA配列に基づいて予測された。しかしながら、半分の長さの遺伝子
産物(HP0094)を示すものと思われる17KDのタンパク質のバンドに加えて、全長(3
3KD)タンパク質バンドが観察された。この結果がクローン化した遺伝子の変異に
よるものでないことを確認するために、in vitroの転写−翻訳アッセイに使用し
た実際のプラスミドDNA(pGEMB3)の配列を再度調べたところ、オリジナルの26695
fucT2遺伝子と比較して変化は見られなかった。
【0111】 26695 fucT2遺伝子が全長のタンパク質を産生したという知見は、本発明者等
にこの結果を説明する別の可能性を考えるヒントを与えた:転写中のRNAポリメ
ラーゼのずれ(slippage)、または翻訳中のリボソームのずれである。Hp fucT2遺
伝子内の単純繰り返し領域のDNA配列(図1B)を再度調べたところ、適切なリーデ
ィングフレーム内で生じる、典型的なプログラムされた翻訳フレームシフト(Far
abaugh, 1996)である3つのモチーフ(X XXY YYZ)が見出された。第一のもの(C C
CT TTA)は、ポリC領域(tract)の上流に位置し、802 fucT2には存在せず、26695
fucT2中に存在する。第二のもの(A AAA AAG)は、ポリC領域の下流に位置し、802
fucT2のリーディングフレーム中には存在せず、26695 fucT2のリーディングフ
レーム中に存在する。このモチーフは、E. coli dnaXのmRNAにおいて見られた非
常にずれの起こりやすい(slippery)ヘプタヌクレオチドと同一である(Flowerお
よびMcHenry, 1990)。フレームシフトを刺激するものとして作用する、上流SD配
列および下流ステムループ構造を含む他のdnaXフレームシフトシグナルのエレメ
ント(Larsenら、1994, J. Bacteriol. 176:6842-6851)もまた、推定26695 fucT2
mRNA配列中に存在する(図1C)。従って、dnaX中にあるような-1フレームシフト
に関するものと類似の機構が、26695 fucT2においても機能している可能性が高
いと思われる:(プロトタイプ802 fucT2に対して)フレームシフトが起きたポリC
領域の直後の部位と終止コドンに遭遇する前で、リーディングフレームは、プロ
トタイプ遺伝子のリーディングフレームに対して (一定の頻度で)元のようにシ
フトし、全長タンパク質が産生され得る。興味深いことには、HP0093開始コドン
のちょうど4個のコドン前に、26695と802 fucT2遺伝子の双方において、別のA
AAA AAG配列が存在する(図1B、ライン4)。しかしながら、このずれの起こりや
すい配列の周囲には、上流SD配列も下流ステムループ構造も見られなかった。
【0112】 いくつかの異なる株に由来するfucT2遺伝子の分析により(表2)、この遺伝子
の発現および最終的なLewis表現型に影響を及ぼす多様な因子が示された。第一
に、異なる株の間で、プロモーター領域においていくらかの分岐(divergence)が
見られ、この分岐が、転写の制御を通した、遺伝子の示差的発現に寄与する可能
性がある。Hp fucT2遺伝子のプロモーターの機能は詳細に調べられてはいないが
、明らかに、このプロモーターが完全に欠失しているUA1218株においては、遺伝
子のオフ状態(off-status)という結果となっている。第二に、この遺伝子のコー
ド領域の2つのエレメントは、遺伝子のコード能力に影響を与え得るものと同定
された。第一のエレメントである単純配列繰り返し領域は、変異のホットスポッ
トである。以前に提唱されたように(Tombら、1997, Bergら、1997, Saundersら
、1998)、遺伝子複製の際のDNAポリメラーゼのずれによりもたらされるフレーム
シフト変異は(1%未満の頻度で)遺伝子のオン−オフ状態間の切替機構を提供で
き、これはAppelmelkら(1998, Infect. Immun. 66:70-76)により報告されたLeY
発現の相変化を説明し得るものである。様々な株の間の、この超突然変異性領域
における広範な配列の分岐、およびその結果としての遺伝子の2つの型(天然ま
たはフレームシフトしたもの)は、この鎖−ずれ機構がH.ピロリにおいて生じて
いるという説を支持するものである。
【0113】 遺伝子内の第二のエレメントは、超突然変異性領域の直後に位置するリボソー
ム翻訳の際のすれの起こりやすい配列である。-1フレームシフト変異(プロトタ
イプに対して)を有する特定の株(26695およびUA1182など)においては、翻訳時
に、プロトタイプのリーディングフレームに対して元のように高頻度でシフトし
、機能性タンパク質を産生する場合がある。プロトタイプのリーディングフレー
ム(UA802など)または+1フレームシフト(UA1174など)を有する別の株においては
、このずれの起こりやすい配列はインフレームで存在せず、それ故に機能してい
ない。従って、UA1174 fucT2におけるフレームシフト変異は翻訳段階では補償さ
れ得ず、その結果遺伝子がオフ状態となる。興味深いことに、UA802遺伝子のリ
ーディングフレームなどのプロトタイプfucT2遺伝子のリーディングフレームに
おいては、別のA AAA AAGのずれの起こりやすい配列がインフレームで存在する
が、促進エレメントを有しない(図1B、ライン4)。この場所で翻訳フレームシフ
トが非常に低い頻度で生じて末端切断されたタンパク質の少数の部分を産生する
か否かは知られていない。そうであれば、それによりLeY産生のレベルは、顕著
ではないが影響を受けるであろう。まとめると、翻訳フレームシフトによりH.
ピロリには、全長(活性)および末端切断(不活性または効果の低い)酵素を種々の
比率で産生し得る機構が提供されていると考えられる。このことは、多様な株の
間の、異なるLeY産生レベルを説明するものである。この比率は、H. ピロリ-宿
主の相互作用の過程での特定の環境因子によっても影響を受け、個々の株におい
ての異なるLeY発現レベルにつながるであろう。
【0114】H.ピロリ中のLeYおよびLeXの発現にfucT2ノックアウト変異が与える影響 LeYの生合成におけるHp fucT2の必要性を示すため、fucT2の挿入変異を行った
。実験の手順に記載の通り、4種のH. ピロリ fucT2ノックアウト変異体を構築
した:26695ΔH、26695ΔE、802ΔH、802ΔEであり、これらはH. ピロリ 26695
またはUA802のfucT2遺伝子が、CATカセットのHindIII部位またはEcoRI部位への
挿入によりそれぞれ破壊されているものである。H. ピロリのゲノム中のfucT2遺
伝子の特定の位置へCATカセットが挿入されたことは、予測される断片のPCR増幅
および挿入部位周囲の領域のDNA配列決定により確認した。これらのLeY発現につ
いてのH. ピロリ変異体の表現型を、電子顕微鏡とELISAにより調べた。
【0115】 図4は、抗LeY MAbで免疫染色したUA802野生型細胞および変異型細胞の透過型
電子顕微鏡写真の例である。多数の金粒子の存在により示される通り、野生型細
胞はLeYを強く発現する。これに対し、変異型細胞である802ΔHおよび802ΔE(80
2ΔHのみを示す)においては、抗-LeY 抗体を用いた免疫金標識に関しては陰性で
あった。株26695(LeY陽性)およびその変異体(LeY陰性)に関しても、同様の電子
顕微鏡写真のパターンが見られた。
【0116】 ELISAで検出した、これらの株によるLeYおよびLeXの発現の定量試験を表1に
示す。野生型株26695はLeYとLeXの両方を発現する(ODUはそれぞれ0.48と0.41)一
方、野生型UA802はLeYを強く発現するが(ODUは0.63)LeXは発現しない。それらの
同質遺伝子変異体は全てがLeY陰性であった(ODU<0.1)。このことは、HindIII部
位およびEcoRI部位でのfucT2遺伝子の破壊はどちらも、LeY発現を破壊すること
を示唆している。興味深いことには、fucT2変異体(特にEcoRI部位での変異の場
合)については、LeXの発現が増大する。
【0117】 これらの変異体のさらなる特性決定を、LeYおよびLeX検出のためのLPSのイム
ノブロットおよびSDS-PAGEにより行った(図5)。銀染色したゲルから、全ての変
異体に関して、LPS側鎖の長さは野生型細胞と比較して変化していないことが判
明した。イムノブロットにより、野生型株26695およびUA802によりLeYは発現す
るが、全てのfucT2変異体株においてはLeYはもはや発現しないことを確認した(
図5A)。野生型UA802はLeXを表面上に発現しないが、その同質遺伝子fucT2変異体
はLeXを発現する(図5B)。2種の変異体(802ΔHおよび802ΔE)の間では、LeXの発
現レベルに有意な差は見られず、ELISAの結果とは異なっていた。野生型株26695
でLeXは発現するので、その変異体株におけるLeX発現の増加はあまり明白ではな
い。しかしながら、ELISAの結果と同様に、26695ΔEにおいてはLeX発現が有意な
増加が見られたが、26695ΔHにおいては見られなかった。
【0118】実施例3 H.ピロリ α1,2-フコシルトランスフェラーゼの酵素活性 E.coliにおけるH.ピロリのフコシルトランスフェラーゼの過剰発現 典型的な実験においては、H. ピロリ fuc T遺伝子を担持するプラスミド(pBKH
p763fucT39、pGEMH2、pGEMI6またはpGEMB3)を有するE. coli CLM4(pGP1-2)細胞
を、好適な抗生物質(カナマイシンおよびアンピシリン)を含む液体LB培地25ml中
で、600nmにおける光学密度0.5〜0.7まで30℃で増殖させた。細胞を集めた後、
細胞をM9培地で1回洗浄し、補助剤を添加した(supplemented)M9培地5mlに再懸
濁し、30℃でさらに1時間インキュベートした。fucT遺伝子の発現を誘導するた
めに、予め加温しておいた(55℃)補助剤添加M9培地5mlを添加して細胞培養を42
℃にシフトした。42℃、15分間のインキュベーション後、リファンピシンを終濃
度200μg/mlで添加し、42℃で細胞増殖を20分間継続させた。
【0119】 タンパク質のSDS-PAGEでの分析用に、細胞培養物の少量のアリコート(0.5ml)
を採取し、 [35S]-メチオニン(4.35×1013 Bq/mmol、3.7×108 Bq/ml、 NEN(商
標)、 Boston、 MA) 2.5μlを添加した。30℃で30分間さらに増殖させた後、細
胞を回収し、100μlのサンプルバッファー(50mM Tris-HCl、 pH6.8、 1%(w/v)S
DS、 20mM EDTA、 1%(v/v)メルカプトエタノール、 10%(v/v)グリセロール)中
に再懸濁し、3分間沸騰させてゲルにロードした。酵素アッセイ用サンプルの調
製のために、誘導後の細胞培養物の残部(主要なアリコート、9.5ml)を30℃で30
分間さらにインキュベートし、続いて回収した。細胞を1.5mlの20mM HEPES(pH 7
.0)で洗浄し、0.5mM PMSFを添加したこのバッファー1.5ml中に再懸濁した。
【0120】フコシルトランスフェラーゼアッセイ用の細胞溶解物または細胞抽出物の調製 上記の通りPMSFを添加したHEPESバッファー中の、過剰生産したHp FucTタンパ
ク質を含むE. coli細胞を、4℃、7000lb/in2でのフレンチプレスにより破砕し
た。細胞溶解物を直接酵素アッセイに用いた。酵素活性の局在性を調べるために
、細胞質および膜画分を下記の通り分離した。細胞溶解物を13,000×g、4℃で1
0分間遠心した。細胞の破片を廃棄し、上清を128,000×g、4℃で1時間にわた
り超遠心にかけた(Beckman TL100/ローター 100.2)。上清を細胞質画分として回
収した。膜沈殿物を少量の同じバッファー中に再懸濁し、1M NaClで処理した。
【0121】フコシルトランスフェラーゼアッセイ Hp α1,2 FucT活性およびHp α1,3 FucT活性のアッセイを、Chanら(1995, Gly
cobiology 5:683-688)に記載の方法に多少の変更を加えて行った。反応は、1.8m
M受容体、50μM GDP-フコース、60000 dpm GDP-[3H]フコース、20mM HEPESバッ
ファー(pH 7.0)、20mM MnCl2、0.1M NaCl、35mM MgCl2、1mM ATP、5mg/ml BSA
、および6.2μlの酵素調製物を含む容量20μl中で、37℃で20分間行った。本研
究において使用した受容体は:LacNAc[βGal 1-4 βGlcNAc]、LeX[βGal 1-4 (
αFuc 1-3) βGlcNAc]、1型[βGal 1-3 βGlcNAc]、Lea[βGal 1-3 (αFuc 1-4
) βGlcNAc]であった。GDP-[3H]フコース(1.9×1011 Bq/ml/mmol)をAmerican Ra
diolabeled Chemicals Inc.(St. Louis, MO)から入手した。Sep-Pak Plus C-18
逆相カートリッジを、Waters(Mississauga, ON)から購入した。酵素の比活性(マ
イクロ-ユニット/ミリグラムタンパク質)の計算のため、細胞抽出物のタンパク
質濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce, Rockford, IL)により、製造
者の指示に従ってBSAを標準物質として用いて測定した。
【0122】Hp α1,2 FucTの受容体特異性 プラスミドpGEMI6は、高レベルのLeYを産生する、H. ピロリ UA802由来のfucT
2遺伝子のプロトタイプを担持する。最初にα1,2 FucT活性を、LeY合成のための
、α1,2 FucTの2つの潜在的基質であるLacNAcとLeXを受容体として用いて定量
した(図5)。驚くべきことに、LacNAcを受容体として用いた場合にはほとんど活
性は検出されない一方、モノフコシル化LeX受容体に関しては相当量の活性が見
られた(表3B)。α1,2 FucTの比活性は、α1,3 FucTの比活性と比較するとはるか
に低かった(表3A)。
【0123】 哺乳動物細胞においては、同じα1,2 FucT酵素(HまたはSe、組織特異的)は通
常、H1型またはH2型構造双方の合成において中心的役割を果たす(Sarnesto
ら、1990, J. Biol. Chem. 265:15067-15075; Sarnestoら、1992, J. Biol. Che
m. 267:2732-2744)。Hp α1,2 FucTがLebの合成にも関与するかどうかを決定す
るために、1型オリゴ糖受容体を用いて活性を測定した(表3B)。たとえUA802が
1型Lewis抗原を発現しなくても、そのα(1,2) FucT酵素はフコースを1型およ
びLea受容体に転移可能である。LeXと比較して、1型およびLeaはHp α1,2 FucT
のより効果的な基質である(2倍以上活性が高い)。このように、Hp α1,2 FucT
はH1型およびLebもまた合成できる。
【0124】
【表3】
【0125】キャピラリー電気泳動によるHp α1,2 FucTの反応産物の分析 異なる受容体からHp α1,2 FucTにより合成された反応産物を、レーザー誘導
性蛍光検出を用いるキャピラリー電気泳動によりさらに特性決定した。反応混合
物は、過剰産生したUA802 α1,2 FucTタンパク質(pGEMI6クローン由来)、GDP-フ
コース、およびテトラメチルローダミン(TMR)で標識した異なる受容体を含んで
いた。結果(図7)は、反応産物を同定し、放射性標識したGDP-フコースを用いた
酵素アッセイのデータ(表3B)を裏付けていた。
【0126】 受容体としてLacNAcを用いた場合には(図7A、ラインa)、H2型を示す反応産
物は観察されなかった。このことは、LacNAcはHp α1,2 FucTの基質ではないこ
とを示唆している。受容体としてLeXを用いた反応においては(図7A、ラインb)、
小さな新規のピークが産生された。このピークは、電気泳動図において合成LeY-
TMR(標準LeY)とともに移動し、該新規ピークがLeXからHp α1,2 FucTにより合成
されたLeY産物であることを示していた。同様に、1型またはLeaを受容体として
使用することにより(図7B)、それぞれ真正産物であるH1型またはLebとともに
移動する新規ピークが観察された。陰性の対照として、Hp fucT2遺伝子を有しな
いpGEMベクターを含むE. coli CLM4(pGP1-2)クローンからのタンパク質抽出物を
、上記の試験した各受容体についての反応において使用したが、α1,2 FucTの産
物についてのピークは見られなかった。
【0127】新規α1,2フコシルトランスフェラーゼ 経路の中心となるフコシルトランスフェラーゼの活性測定は、考えられる2つ
の経路を区別するための直接的な証明となる(図5)。本研究における、LeXはHp
α1,2 FucTの基質であるがLacNAcは基質ではないという観察は、H. ピロリは、L
eYの合成のためにLeX経路を優先して使用することを明瞭に示した(図8A)。Hp α
1,3 FucTについての酵素アッセイからも、このことを支持する他の証拠が得られ
た:(i)LacNAcはHp α1,3 FucTに対する良好な基質である(Geら、1997;Martinら
、1997;および表3A);そして(ii)Martinら(1997)は、H2型はHp α1,3 FucTの
基質ではないことを見出した。しかしながら、異なるH. ピロリ株に由来するフ
コシルトランスフェラーゼは、異なる受容体特異性を有し得ることに注意しなけ
ればならない。LeY合成のためのこの新規経路がH. ピロリにおいて一般的である
か株に特異的であるかを解明するためには、種々のH. ピロリ株に由来するα1,3
FucTおよびα1,2 FucTの分析を統合してのさらなる研究が必要である。
【0128】 LeY合成における機能に加えて、Hp α1,2 FucTは1型Lewis構造に対しても活
性を示す(図8Bにまとめた)。このことは、特定のH. ピロリ株においては1型(Le c )、H1型およびLeaが発現するという近年の発見に基礎を提供するものである(
いくつかの株ではLebもまた血清学的方法により検出されているが、構造分析で
はまだ確認されていない)(Monteiroら、1998, J. Biol. Chem. 273:11533-11543
)。LeaからLebを合成するHp α1,2 FucTの活性は、再度、この細菌由来の酵素が
、Leaを基質として使用できない哺乳動物の通常の相当物とは異なることを示し
ている。H. ピロリにおいて、H1型からLebが合成できるかどうかを知るために
は、α1,4 FucTの検出が待たれる。本研究で特性決定されたα1,2 FucTは、いず
れの1型Lewis抗原も産生しないH. ピロリ株UA802由来のものである。このこと
は、同じα1,2 FucT酵素を1型エピトープを産生する株において使用し得ること
を示唆する。多数のH. ピロリにおける1型Lewis抗原の産生の欠損は、βGalをG
lcNAcに付加するガラクトシルトランスフェラーゼ、またはαFucユニットをβGl
cNAcに配置するα1,3/4 FucTなどのLewis抗原合成に関与する他の酵素のいずれ
かを使用できないためである可能性がある。
【0129】 まとめると、通常の哺乳動物α1,2 FucT(HまたはSe酵素)とは対照的に、Hp
α1,2 FucTはLewis X[βGal 1-4(αFuc 1-3)βGlcNAc]をLacNAc[βGal 1-4 βGl
cNAc]よりも基質として優先する。このことは、H. ピロリが、Lewis Y合成のた
めの新規経路(Lewis Xを介する)を使用することを示唆するものである。Hp α1,
2 FucTはまた、1型受容体[βGal 1-3 βGlcNAc]およびLewis a[βGal 1-3(αFu
c 1-4)βGlcNAc]に対しても作用し、それによりH. ピロリにH1型およびLewis
bエピトープを合成する可能性を提供する。フコースをモノフコシル化基質(Lewi
s XおよびLewis a)に転移する能力は、Hpα1,2 FucTを通常の哺乳動物α1,2 Fuc
Tとは異なるものとしている。
【0130】Hp α1,2 FucTは可溶性タンパク質である DNA配列決定により、Hp α1,2 FucTは親水性タンパク質であり、Hp α1,3 Fuc
Tもまたそうであろうと予測された(Geら、1997)。しかしながら、過剰発現した
タンパク質からのHp α1,3 FucT活性の測定により、活性の大部分が膜画分に存
在することが示された(Geら、1997)。Hp α1,2 FucT活性の細胞局在性を正確に
記述するために、Hp α1,2 FucTタンパク質を過剰生産するE. coli細胞の細胞質
および膜画分を、「材料と方法」の項に記載の通りに調製した。両方の画分中の
活性を、LeXまたは1型を受容体として用いて測定した(表4)。LeXを受容体とし
て使用した場合には、膜画分には検出可能な活性は存在しなかった。1型を受容
体として用いることにより、膜画分において非常に微量の(無視してよい)活性が
検出された。この活性は全活性の3%未満に相当した。これらの結果は、Hp α1
,2 FucTが可溶性細胞質タンパク質であることを示した。
【0131】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】 Hp fucT2のヌクレオチド配列分析を示す。(A)H.ピロリ26695株およびUA802
株のゲノムにおけるHp fucT2領域の遺伝子構成。GW44およびGW32はHp fucT2遺伝
子のクローニングに用いた2つのプライマーを示す。(B)始原型(UA802)遺伝
子と変異型(26695)遺伝子との間のフレームシフトに関与する特徴(単純な反復
配列)を示す、Hp fucT2の中心領域のヌクレオチド配列。2つの配列の間で異な
るヌクレオチドに「x」マークを付してある。ポリC残基の反復数が異なるため
、26695 fucT2の最初のリーディングフレームはポリC領域が終わって間もなくT
GA終止コドン(星印で示す)に遭遇する(HP0094)。約110 bpさらに下流に、-1フ
レーム内に潜在的開始コドンATG(点で示す)が現われる(HP0093)。この-1フレ
ームは802 fucT2のリーディングフレームと同一である。3つの推定上のX XXY Y
YZモチーフ(X、YおよびZは特定のリーディングフレーム内の特定のヌクレオチ
ドを表わす)を太字で示し、下線を付してある。大腸菌dnaX遺伝子のエレメント
に類似した、26695 fucT2におけるプログラムされた翻訳フレームシフトのため
のさらなるエレメントにも下線を付してある。(C)推定上の26695 fucT2翻訳
フレームシフトカセット。(B)のライン2に記載するDNA配列から推定されるm
RNA構造を示す。AAAAAAGという7量体(太字)は他のDNA配列中に同定されてい
る非常にずれの起こりやすい配列である。UGA(ステム構造中、横に線を付して
ある)は最初のフレーム(0フレーム)における終止コドンである。SDは内部シ
ャイン・ダルガルノ様配列を示す。大腸菌dnaXフレームシフトモデルによれば、
AAAAAAG配列はフレームシフト部位であり、そして上流SD配列および下流ステム-
ループ構造の両方がフレームシフトを増強する。(D)α1,2-フコシルトランス
フェラーゼのアミノ酸配列および核酸配列を示す。
【図2】 Hp fucT2の推定アミノ酸(aa)配列の分析を示す。(A)哺乳動物および細菌の
α(1,2)-フコシルトランスフェラーゼのドメイン構造の概略図。Cyt:細胞質。TM
:膜貫通。陰影をつけた四角は3つの高度に保存されたアミノ酸配列モチーフを
表わす。(B)全ての原核性および真核性α(1,2)-フコシルトランスフェラーゼ
において高度に保存されている上記3つのアミノ酸配列モチーフのアライメント
。各タンパク質の長さ(aaで表す)を生物名の後の括弧内に示す。また、タンパ
ク質内の各モチーフの位置を各アミノ酸配列の後の括弧内に示す。Ye: Y.エンテ
ロコリティカ(Y. enterocolitica)。 Ll: ラクトコッカス・ラクティス(Lact
ococcus lactis)。これらの配列の受託番号は、M35531 (man FUT1)、U17894 (m
an FUT2)、AF076779 (Hp FucT2、UA802の始原型fucT2由来)、U46859 (Ye WbsH)
、およびU93364 (L1 EpsH)である。
【図3】 Hp fucT2遺伝子のクローニングおよびin vitro発現を示す。(A)完全な、ま
たは部分的Hp fucT2遺伝子を含有するプラスミド構築物。太い矢印は予想される
ORFを表わし、細い線はコード領域と共にベクター中にクローン化されたフラン
キング領域を示す。小さい矢印は、T7プロモーターからの転写の方向を指す。制
限エンドクレアーゼ部位HindIII (H)およびEcoRI (E)をCAT挿入突然変異体の構
築のために用いた。(B)大腸菌T7 S30抽出物による種々のプラスミド構築物由
来のタンパク質合成産物を分析する、0.1% SDS〜12% PAGEのオートラジオグラフ
。レーン1:DNA鋳型なし。いくつかのタンパク質バンドは上記細胞抽出物中の
内因性DNAまたはRNAの転写-翻訳に由来する。レーン2:pGEM-Tベクター。レー
ン3、4および5:それぞれプラスミド構築物pGEMB3、pGEMH2およびpGEMI6。大
きい矢印で示した全長タンパク質(33 KD)は、完全なfuc T2遺伝子から過剰発
現されたが、5’末端切断型遺伝子からは発現されなかった。半分の長さのタン
パク質(17 KD、小さい矢印で示す)もまた26695 fucT2から産生されたが、802 fu
cT2からは産生されなかった。レーン6、7および8:26695 fucT2のHindIII部
位、26695 fucT2のEcoRI部位、およびUA802 fucT2のHindIII部位にそれぞれCAT
挿入を有するプラスミド突然変異体pGHC26、pGEC26およびpGHC8。3つのプラス
ミド突然変異体は全て24 KD CATタンパク質の強い発現をもたらした。分子量マ
ーカー(Life Technologies, Inc.)を右側に示す。
【図4】 H.ピロリUA802株およびfucT2遺伝子内のHindIII部位にCAT挿入を有するその同
質遺伝子突然変異体(△H)の透過電子顕微鏡写真を示す。細胞を抗LeY MAbお
よびヤギ抗マウスIgM-10 nm金コロイド粒子と共にインキュベートした。金粒子
は野生型細胞上には存在したが(細胞壁上および鞭毛鞘上の両方;矢じりで示す
)、突然変異細胞上には存在しなかった。
【図5】 H.ピロリにおけるLewis Yを合成するための2つの可能な経路を示す。
【図6】 ルイス構造体を検出するためのH.ピロリLPSのイムノブロットを示す。H.ピロ
リ26695株およびUA802株の野生型株(WT)、ならびにそれらの同質遺伝子突然変異
体(△Hおよび△E)のプロテイナーゼKで処理した全細胞抽出物をSDS-PAGE上
で分離し、ニトロセルロース膜にエレクロトブロットし、そして抗LeY抗体 (A)
または抗LeX 抗体(B)を用いてLPSを免疫染色した。
【図7】 キャピラリー電気泳動によるHpα1,2-フコシルトランスフェラーゼの反応産物
の同定を示す。使用した酵素は、過剰発現したUA802 α1,2-フコシルトランスフ
ェラーゼポリペプチドであった。反応は後述の実施例3に記載されているように
実施した。(A)2型基質LacNAc(ラインa)および LeX(ラインb)を用いた
反応。(B)1型基質(ラインd)およびLeB(ラインe)を用いた反応。ライ
ンcおよびfは基準TMR標識化オリゴ糖を表わす。(1)結合アーム、(2) GlcNAc、
(3) LacNAc、(4)H2型、(5) LeX、(6) LeY、(7)1型、(8)H1型、(9) LeA、お
よび(10) LeB。全ての電気泳動図は明確を期するためY-オフセット (Y-offset)
である。
【図8】 H.ピロリにおけるルイス抗原合成のための同定された経路を示す。H.ピロリ細
胞表面に発現されることが公知であるルイス構造体を四角で囲んで示す。実線の
矢印は本発明の研究において実証されたフコシルトランスフェラーゼ活性を表わ
す。そして、矢印の太さは酵素活性の相対的レベルを示す。(A)H.ピロリ菌株
はLeXおよびLeYを主として発現する。H2型を発現するようには考えられない。
H.ピロリがLeXを利用してLeYを合成するのは合理的であるように思われる。この
経路を作動させるため、H.ピロリは通常α1,2-フコシルトランスフェラーゼより
も高レベルのα1,3-フコシルトランスフェラーゼを維持する。(B)H.ピロリα
1,2-フコシルトランスフェラーゼは、フコースを1型およびLeAに転移させる能
力を有する。LeBの合成は、α1,2-フコシルトランスフェラーゼとα1,4-フコシ
ルトランスフェラーゼとの協同作用を必要とする。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 5/10 C12P 19/18 4H045 9/10 21/08 C12P 19/18 C12Q 1/48 Z 21/08 1/68 A C12Q 1/48 G01N 33/569 F 1/68 (C12N 9/10 G01N 33/569 C12R 1:01) //(C12N 9/10 (C12N 9/10 C12R 1:01) C12R 1:19) (C12N 9/10 (C12P 19/18 C12R 1:19) C12R 1:19) (C12P 19/18 C12N 15/00 ZNAA C12R 1:19) 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA ,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ, PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,S K,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG ,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 ワン、ゲ カナダ国 ティー6ジェイ 0アール6 アルバータ、エドモントン、11530−40 アベニュー、アパートメント 105 (72)発明者 パルシック、モニカ カナダ国 ティー6シー オーエックス3 アルバータ、エドモントン、9330−81 アベニュー Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 BA10 CA04 DA06 EA04 GA11 GA19 HA01 HA12 HA15 4B050 CC01 CC04 DD02 LL05 4B063 QA01 QA18 QQ26 QR40 QR43 QR56 QR57 QS24 QS28 QS33 QS34 QX07 4B064 AF04 AG27 CA21 CB30 CD06 DA01 DA13 4B065 AA01Y AA26X AB01 AC14 BA02 CA27 CA44 CA46 4H045 AA11 CA11 DA76 DA89 EA51 FA72

Claims (54)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に精製されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼ。
  2. 【請求項2】 ポリペプチドがLewis Yの合成を触媒する、請求項1に記載
    の実質的に精製されたα1,2-フコシルトランスフェラーゼ。
  3. 【請求項3】 ポリペプチドがα1,4-フコシルトランスフェラーゼ活性を欠
    く、請求項1に記載のポリペプチド。
  4. 【請求項4】 ポリペプチドがα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を欠
    く、請求項1に記載のポリペプチド。
  5. 【請求項5】 ポリペプチドがα1,4-フコシルトランスフェラーゼ活性およ
    びα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を欠く、請求項1に記載のポリペプチ
    ド。
  6. 【請求項6】 ポリペプチドが配列番号2に示す配列を含むアミノ酸配列を
    有する、請求項1に記載のポリペプチド。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリ
    ヌクレオチド。
  8. 【請求項8】 配列が配列番号2に示す配列を有するアミノ酸配列をコード
    する、請求項7に記載のポリヌクレオチド。
  9. 【請求項9】 配列 X XXY YYZの少なくとも1個の反復を有する配列を含む
    請求項8に記載のポリヌクレオチドであって、ここでX = Aまたは C、Y = Aまた
    は T、および Z = Aまたは Gである、該ポリヌクレオチド。
  10. 【請求項10】 以下のものからなる群より選択されるポリヌクレオチド:
    a)配列番号1; b)TがUである、配列番号1; c)上記a)またはb)に相補的な核酸配列;および d)長さが少なくとも15ヌクレオチド塩基であり、かつ配列番号2に示すポリペ
    プチドをコードするDNAにハイブリダイズする、上記a)、b)またはc)の断
    片。
  11. 【請求項11】 請求項7に記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載のベクターを含有する宿主細胞。
  13. 【請求項13】 請求項1に記載のポリペプチドと選択的に結合する抗体。
  14. 【請求項14】 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項13に記載
    の抗体。
  15. 【請求項15】 前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項13に記載
    の抗体。
  16. 【請求項16】 サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプ
    チドを検出する方法であって: a)該サンプルを請求項13に記載の抗体と接触させ;そして b)該抗体とα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドとの結合を検出す
    ることを含んでなり、該結合は該サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラー
    ゼポリペプチドの存在を示す、該方法。
  17. 【請求項17】 前記サンプルが組織である、請求項16に記載の方法。
  18. 【請求項18】 前記サンプルが生物学的流体である、請求項16に記載の
    方法。
  19. 【請求項19】 前記サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリ
    ペプチドの存在がヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染を
    示す、請求項16に記載の方法。
  20. 【請求項20】 前記サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリ
    ペプチドの存在が悪性細胞の存在を示す、請求項16に記載の方法。
  21. 【請求項21】 サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリヌク
    レオチドを検出する方法であって: a)α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリヌクレオチドを含有することが疑わ
    れるサンプルをα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリヌクレオチドとハイブリ
    ダイズする核酸プローブと接触させ;そして b)該プローブとα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリヌクレオチドとのハイ
    ブリダイゼーションを検出することを含んでなり、ハイブリダイゼーションの検
    出が該サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリヌクレオチドの存在
    を示す、該方法。
  22. 【請求項22】 前記核酸プローブが以下のものからなる群より選択される
    、請求項21に記載の方法: a)配列番号1に示す核酸配列; b)TがUである、配列番号1に示す核酸配列; c)上記a)またはb)に相補的な核酸配列;および d)長さが少なくとも15ヌクレオチド塩基であり、かつ配列番号2に示すポリペ
    プチドをコードするDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、上
    記a)、b)またはc)の断片。
  23. 【請求項23】 サンプル中のα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリヌク
    レオチドを検出する方法であって、該α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリヌ
    クレオチドを増幅することを含む、該方法。
  24. 【請求項24】 PCRを用いて前記ポリヌクレオチドを増幅する、請求項2
    3に記載の方法。
  25. 【請求項25】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを生産す
    るための組換えによる方法であって、得られるポリヌクレオチドが選択マーカー
    と融合した組換えα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードする
    ように、請求項7に記載のポリヌクレオチドを含む核酸を該選択マーカーに隣接
    して挿入することを含む、該方法。
  26. 【請求項26】 請求項25に記載の方法によって生産されたポリヌクレオ
    チド。
  27. 【請求項27】 請求項25に記載のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞
  28. 【請求項28】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドを生産す
    るための組換えによる方法であって: a)α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオ
    チドを含有する組換え宿主細胞を、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプ
    チドの発現を可能とする条件下で培養し;そして b)該ポリペプチドを単離する ことを含んでなる、該方法。
  29. 【請求項29】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質を生産
    する方法であって: a)興味のあるポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドに機
    能しうる形で連結された、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドをコ
    ードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を、該融合タンパク質の発現を可
    能とする条件下で増殖させ;そして b)該融合タンパク質を単離する ことを含んでなる、該方法。
  30. 【請求項30】 α1,2-フコシルトランスフェラーゼを生産するための遺伝
    子発現系であって、α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその
    酵素的に活性な部分をコードするポリヌクレオチドによって改変された宿主細胞
    を含んでなる、該遺伝子発現系。
  31. 【請求項31】 前記ポリヌクレオチドがDNAである、請求項30に記載の
    遺伝子発現系。
  32. 【請求項32】 前記ポリヌクレオチドがcDNAである、請求項30に記載の
    遺伝子発現系。
  33. 【請求項33】 前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項30に記載の
    遺伝子発現系。
  34. 【請求項34】 前記宿主細胞が細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞
    または動物細胞からなる群より選択される、請求項30に記載の遺伝子発現系。
  35. 【請求項35】 前記宿主細胞がプラスミドを用いたトランスフェクション
    によって組換え的に改変されている、請求項30に記載の遺伝子発現系。
  36. 【請求項36】 前記プラスミドが選択マーカーを含む、請求項35に記載
    の遺伝子発現系。
  37. 【請求項37】 前記選択マーカーがグルタミンシンテターゼである、請求
    項36に記載の遺伝子発現系。
  38. 【請求項38】 以下のステップを含んでなる、α1,2-フコシルトランスフ
    ェラーゼポリペプチドを生産する方法: (a)α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその酵素的に活性
    な部分をコードするポリヌクレオチドによって改変された宿主細胞を含む遺伝子
    発現系を培養し;そして (b)該α1,2-フコシルトランスフェラーゼを回収する。
  39. 【請求項39】 回収したα1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチド
    を実質的に精製することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
  40. 【請求項40】 前記ポリヌクレオチドがDNAである、請求項38に記載の
    方法。
  41. 【請求項41】 前記ポリヌクレオチドがcDNAである、請求項38に記載の
    方法。
  42. 【請求項42】 前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項38に記載の
    方法。
  43. 【請求項43】 前記宿主細胞がプラスミドを用いたトランスフェクション
    によって組換え的に改変されている、請求項38に記載の方法。
  44. 【請求項44】 前記プラスミドが選択マーカーを含む、請求項43に記載
    の方法。
  45. 【請求項45】 前記選択マーカーがグルタミンシンテターゼである、請求
    項44に記載の方法。
  46. 【請求項46】 前記宿主細胞が細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞
    または動物細胞からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
  47. 【請求項47】 フコシル化オリゴ糖を生産する方法であって、α1,2-フコ
    シルトランスフェラーゼポリペプチドを適切な時間にわたって、かつ該オリゴ糖
    を生成するに適切な条件下でα1,2-フコシルトランスフェラーゼ基質と接触させ
    ることを含んでなる、該方法。
  48. 【請求項48】 前記フコシル化オリゴ糖がLeB、Leyまたは H1型および
    H2型からなる群より選択される、請求項47に記載の方法。
  49. 【請求項49】 前記基質がLacNAc-RおよびGDP-フコースである、請求項4
    7に記載の方法。
  50. 【請求項50】 前記オリゴ糖が精製される、請求項47に記載の方法。
  51. 【請求項51】 以下のステップを含んでなる、フコシル化オリゴ糖の生産
    方法: (a)α1,2-フコシルトランスフェラーゼポリペプチドまたはその酵素的に活性
    な部分をコードするポリヌクレオチドによって改変された宿主細胞を含む遺伝子
    発現系を培養し;そして (b)該オリゴ糖を生成する条件下で、かつ生成するに十分な時間にわたって該
    宿主細胞を基質と接触させる。
  52. 【請求項52】 前記フコシル化オリゴ糖がLeB、Leyまたは H1型および
    H2型からなる群より選択される、請求項51に記載の方法。
  53. 【請求項53】 前記基質がLacNAc-RおよびGDP-フコースである、請求項5
    1に記載の方法。
  54. 【請求項54】 前記オリゴ糖が精製される、請求項51に記載の方法。
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