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【書類名】 明細書
【発明の名称】 接触管巣を有する反応器
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1種以上のポンプによって、熱交換媒体を供給及び排出するためのジャケット開口部(5,6)を備える反応器の両端部に環状管路(3,4)と、
その際、下側環状管路(4)に給送され、上側環状管路(3)を経由してポンプに戻される前記熱交換媒体と、そして
反応器の中央及び反応器の端部に通路横断面を交互に残すように配置したそらせ板(7)と、
を備える、接触管を包囲する空間を介して熱交換媒体回路が通る接触管巣(2)を有する反応器(1)であって、
前記上側(3)及び下側(4)環状管路が、円柱状の仕切り壁(8,9)によって内側(11,13)と外側(12,14)の環状管路にそれぞれ分割され、
そして前記熱交換媒体が、外側の下側環状管路(14)を通過し、
反応器の外側領域を経由して内側の上側環状管路(11)に、
上側のジャケット開口部(5)を経由して接触管(2)周辺空間に、
ジャケット開口部(6)を経由して内側の下側環状管路(13)に給送され、
その後、反応器の外側領域を経由して、前記熱交換媒体が外側の上側環状管路(12)を通過して排出されることを特徴とする反応器。
【請求項2】 前記熱交換媒体又は熱交換媒体の部分流が、1種以上の外部熱交換器に通過させられる請求項1に記載の反応器(1)。
【請求項3】 下側環状管路(4)と上側環状管路(3)との間の領域が、円柱状のエンベロープ(15)により閉鎖され、反応器底面に対して垂直な放射状の仕切り壁(17)によって複数のチャンバー(16)に分割されている中空円筒を形成し、
環状管路(3,4)に対する前記チャンバーの分割壁が、内側及び外側管状環区画を交互に残すように配置され、かつ上からみて、開口の輪状環区画(18)が閉じた輪状環区画(19)より常に上側に配置されているか、又はその逆である請求項1又は2に記載の反応器(1)。
【請求項4】 チャンバー(16)の数が12〜96個である請求項1〜3のいずれかに記載の反応器(1)。
【請求項5】 チャンバー(16)の数が24〜48個である請求項1〜4のいずれかに記載の反応器(1)。
【請求項6】 円柱状の仕切り壁(8,9)の直径が、環状管路(3,4)の外側及び内側径の相加平均未満か、又はこれに等しい請求項1〜のいずれかに記載の反応器(1)。
【請求項7】 反応器空間へのジャケット開口(21)及び調整板(22)を有するバイパスチャンバー(20)、熱交換媒体が流れ、かつポンプに排出される少なくとも数個のチャンバー(16)中の外側の上側環状管路(12)領域に配置され、前記調整板(22)の位置は、駆動装置(24)と駆動スピンドル(23)によって反応器の縦軸方向に調整可能である請求項1〜のいずれかに記載の反応器(1)。
【請求項8】 2種以上の熱交換媒体回路が、接触管を包囲する空間を通る請求項1〜のいずれかに記載の反応器(1)。
【請求項9】 酸化反応の実施に使用するための請求項1〜7のいずれかに記載の反応器(1)
【請求項10】 無水フタル酸、無水マレイン酸、グリオキサール、(メタ)アクロレイン又は(メタ)アクリル酸を製造するための、請求項1〜7のいずれかに記載の反応器(1)。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、接触管を包囲する空間を介して熱交換媒体回路が通る接触管巣を有する反応器、及び該反応器を、酸化反応を行うために使用する方法に関する。
【0002】
この種類の一般的な反応器の設計は、一般的に円柱状のタンクから構成されており、この内では、接触管の束、即ち多数の接触管が、通常縦に配列して収容されている。担持触媒を含んでいても良いこの接触管は、その端部と管の基部において確実な方法で取り付けられており、そしてこれは上側端部にてこのタンクに連結されているフードと下側端部にてこのタンクに連結されているフードに達している。接触管を流れる反応混合物は、このフードを経由して給送、かつ導入されている。熱交換媒体回路は、接触管包囲空間を通過して、特に高発熱反応の場合には熱収支を均一にしている。
【0003】
経済上の理由から、できるだけ多数の接触管を有する反応器が使用され、その際、15000〜30000本の範囲の接触管が屡々収容されている(DE−A4431949、参照)。
【0004】
熱交換媒体回路に関しては、可能な限り全ての接触管が反応結果に等しく関係するために、反応器を通る各水平面において熱交換媒体の実質上均一な温度分配を満足させることが知られている(例えば、DE−B1601162)。反応器の端部に取り付けられ、かつ例えば、DE−B3409159に開示されているようなジャケット開口部を多数有する外側環状管路を介して、熱を供給又は放散させることにより、温度分配が容易に行われる。
【0005】
熱伝達については、通過横断面を反応器の中心及び反応器の端部に交互に残すように配置するそらし板を取り付けることによりさらに改善される。このような配置は、フリーな中心空間を有する、輪状に配列した管巣に特に好適であり、そして例えばGB−B310175に開示されている。
【0006】
上述した、約15000〜30000本の範囲で多数の接触管を有し、かつさらにそらし板を装備する多数の反応器においては、熱交換媒体の圧力低下が、充分な時間で極めて大きくなる。このため、酸化反応の間に遊離熱を消散するために屡々使用され、かつ約350〜400℃の使用温度で水の粘性に類似の粘性を有する、硝酸カリウム及び硝酸ナトリウムを含む共融塩溶融物、上述の大きさの反応器に約4〜5mの供給高さでポンプにより送り込、圧力低下を克服しなければならない。
【0007】
この種類の反応器の多くは、熱交換媒体を、例えば環状管路を介して反応器の下側領域に給送するポンプ設備が、上側及び下側環状管路の間に有効に配置されている。
【0008】
この種類の多くの反応器において、塩溶融物をポンプにより直接反応器の上側部分か、又は上側環状管路に送り込んだ場合、必要とされる4〜5mの供給高さは、技術上望ましくなく、かつ故障しやすいポンプ設備、特に複雑なポンプ軸受け、より長いポンプ軸を必要としさらにこのポンプ軸を介した下側のモーター軸受けへの多くの熱導入をも必要とする。さらに、上述の供給高さは、安全上の理由から望ましくない高濃度塩溶融物補正器を必要としたであろう。
【0009】
熱交換媒体の反応器の上側部分への供給、即ち、反応混合物と共に並流(cocurrent)で同様に反応器の上側端部で接触管に給送することは、反応の実施に有効であることが知られている(DE−A4431449、参照)。
【0010】
並流での実施は、向流処理よりも、例えば高い処理量、低い触媒のホットスポット温度、接触管における最終反応に対する熱交換媒体温度の歓迎すべき増大、反応器の横断面上における熱交換媒体の良好な温度均一性、即ち水平方向の良好な温度層の形成、熱交換媒体によるフィードバックがないため接触管空間の高さより上での明確な操作が実現できる等の利点を有する。
【0011】
しかしながら、反応混合物及びDE−A4431449に開示されているか、又はDE−A2201528の図1に示されるような、熱交換媒体の並流輸送は、熱交換媒体を反応器の上側領域に、例えば上側環状管路を経由して直接給送し、そして反応器の下側領域から、例えば環状管路を経由して直接排出する場合、ポンプ設備に関する上述の不都合に直面する。
【0012】
従って、本発明の目的は、ポンプ設備に関する前記不都合を有していない反応器を提供することにある。多数の接触管、例えば40000以下、特に15000〜30000本の接触管を有する多くの反応器に良好であると証明されているポンプ設備は、熱交換媒体を反応器の下側領域内の下側環状管路に給送し、そして上側環状管路から排出する設計と比較して、変更されるべきではない;それでも、熱交換媒体は、接触管により供給された反応混合物と共に並流で接触管の周囲を流れる必要がある。
【0013】
上記目的は、1種以上のポンプによって、熱交換媒体を供給及び排出するためのジャケット開口部(5,6)を備える反応器の両端部に環状管路(3,4)と、
その際、下側環状管路(4)に給送され、上側環状管路(3)を経由してポンプに戻される前記熱交換媒体と、そして
反応器の中央及び反応器の端部に通路横断面を交互に残すように配置したそらせ板(7)と、
を備える、接触管を包囲する空間を介して熱交換媒体回路が通る接触管巣(2)を有する反応器(1)であって、
前記上側(3)及び下側(4)環状管路が、円柱状の仕切り壁(8,9)によって内側(11,13)と外側(12,14)の環状管路にそれぞれ分割され、
そして前記熱交換媒体が、外側の下側環状管路(14)を通過し、
反応器の外側領域を経由して内側の上側環状管路(11)に、
後ろのジャケット開口部(5)を経由して接触管(2)周辺空間に、
ジャケット開口部(6)を経由して内側の下側環状管路(13)に給送され、
その後、反応器の外側領域を経由して、前記熱交換媒体が外側の上側環状管路(12)を通過して排出され
必要により、前記熱交換媒体又は熱交換媒体の部分流が、1種以上の外部熱交換器に通過させられることを特徴とする反応器により達成されるのが、本発明者等により見出された。
【0014】
上側及び下側環状管路間の領域は、熱交換媒体を方向転換するために利用され得る。これにより、熱交換媒体及び反応混合物の並流輸送の利点を、熱交換媒体を下側環状管路に給送する当該ポンプ配置と組み合わせることができる。
【0015】
このために、本発明では、円柱状の仕切り壁を上側環状管路及び下側環状管路に配置し、この管路を内側及び外側環状管路に分割する。その後、熱交換媒体は、外側の下側環状管路に給送され、この外側の下側環状管路は上側及び下側環状管路間の領域を経由して内側の上側環状管路に連結されている。ここから、公知の方法で、ジャケット開口部を経由して、接触管包囲空間に給送され、ここでは曲折状の流れ(meander−like flow)がそれ自体公知の方法でそらし板によって形成される。熱交換媒体は、接触管包囲空間、即ち反応器の底部において、公知の方法によりジャケット開口部を経由して通り過ぎ、そして下側の内側環状管路に入る
【0016】
上側及び下側環状管路間の領域が、反応器底面に対して垂直な、放射状の仕切り壁によって複数のチャンバーに分割されている中空円筒を形成する円柱状のエンベロープにより閉鎖され、環状管路に対する前記チャンバーの分割壁が、内側及び外側輪状の環区画を交互に残すように配置され、かつ平面図的に、開口の輪状環区画が閉じた輪状環区画より上側に常に配置されているか、又はその逆である。従って、このチャンバーには、底部から頂部への、ポンプから得られる熱交換媒体又は反応器空間から得られる熱交換媒体のいずれかの流れがある。
【0017】
チャンバーの数は、原則として限定されていないが、便宜上、12〜96個、好ましくは24〜48個でありこのとき12〜24個のチャンバー(4分の1当たり3〜6個に相当)が、熱交換媒体の、接触管包囲空間の上側領域の入り口及び同様の下側領域の出口への輸送(転換)に交互に利用可能となる。
【0018】
上側及び下側環状管路を内側及び外側環状管路に分割する円柱状の仕切り壁は、原則として、環状管路の外径及び内径の間の直径を有していても良い。しかしながら、円柱状の仕切り壁の直径は、環状管路の外側及び内側の直径の相加平均未満か、又はこれに等しいのが好ましい。
【0019】
好ましい態様において、反応器空間へのジャケット開口部及び調整板を有するバイパスチャンバーが、熱交換媒体が流れ、かつポンプに排出される少なくとも数個のチャンバー中の外側の上側環状管路領域に配置され、調整板の位置は、駆動装置と駆動スピンドルによって反応器の縦軸方向に調整可能である。この配置において、反応器の空間から得られる熱交換媒体の調節可能な部分流を、可能な限り早く反応器の高さの中点から取り除くことができる、即ちこれは、熱交換媒体の残量のみが接触管を包囲する反応器空間の下側部分を通って、流れることを意味する。この態様は、接触管の下側部分において熱の発生を削減することについて、最善の状態にされる。さらに、圧力低下が得られ、これによりポンプの出力が低減されるので、経済効率が増大する。
【0020】
この反応器において熱交換媒体の種類は限定されず、熱交換媒体は、熱を放散、即ち発熱反応を行うために、そして熱を、接触管により流れる反応混合物に供給、即ち吸熱反応を行うために、同様に使用することができる。
【0021】
この反応器は、酸化反応を行うために、特に無水フタル酸、無水マレイン酸、グリオキサール、(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリル酸の製造に特に好適である。
【0022】
本発明を、実施例及び図面を参照して、以下に詳述する:即ち、
図において、
図1の右側は、本発明に従う、熱交換媒体回路を備える反応器による縦方向断面を示し、
図1の左側は、従来技術に従う、熱交換媒体回路を備える反応器による縦方向断面を示し、
図2の右側は、上側環状管路と中央の中空円筒との分割領域付近での本発明の反応器による横断面を示し(断面A−A)、
図2の左側は、従来技術に従う、反応器による面A−A内の横断面を示し、
図3の右側は、中央の中空円筒付近での本発明の反応器による横断面を示し(断面B−B)、
図3の左側は、従来技術に従う、反応器によるB−B面内の横断面を示し、
図4の右側は、中央の中空円筒と下側環状管路との分割領域付近での本発明の反応器による横断面を示し、
図4の左側は、従来技術に従う、反応器によるC−C面内の横断面を示し、
図5は、本発明による反応器の詳細を示して、熱交換媒体の接触管包囲空間への給送を説明し、
図6は、本発明による反応器の詳細を示して、熱交換媒体の、接触管包囲空間からポンプへの排出を説明し、
図7は、本発明による反応器の好ましい態様の詳細を示し、
図8は、2種類の熱交換媒体回路を有する、本発明の反応器による横断面を示している。
【0023】
図1は、円筒の中心に内部空間を残している、縦方向の接触管巣2を有する円柱状の反応器1を示している。この反応器1は、熱交換媒体が給送される下側環状管路4及び熱交換媒体が排出される上側環状管路3{但し、給送及び排出はジャケット開口部5及び6を介して起こる}と、曲折形状の熱交換媒体回路を形成するそらし板7と、を備えている。
【0024】
これについて、従来技術に従う反応器の設計(図1の左側)は、本発明に従う反応器の設計(図1の右側)と同じである。
【0025】
図1の右側に見ることができるように、本発明の反応器には、従来技術と比較して以下の変更が加えられている:
上側環状管路3が、円柱状の仕切り壁8により内部上側環状管路11と外部上側環状管路12に分割されている;同様に、下側環状管路4が、円柱の仕切り壁9により内側の下側環状管路13と外側の下側環状管路14に分割されている。
【0026】
環状管路3及び4との間の領域は、円柱状のエンベロープ15によって閉鎖され、中空円筒を形成するのが好ましい。この領域では、熱交換媒体の、外側の下側環状管路14から内側の上側環状管路11へ、又は内側の下側環状管路13から外側の上側環状管路12への転換が起こっている。中央の中空円筒領域での熱交換媒体の転換は、反応器底面に対して垂直である、放射状の仕切り壁17でチャンバー16を形成することにより起こるのが好ましい(図3)。
【0027】
中央の中空円筒の分割領域における熱交換媒体の上側又は下側環状管路への輸送は、図2の右側及び図4の右側に示される横断面により見られる:即ち、円柱状の仕切り壁8及び9並びに放射状の仕切り壁17は、内側及び外側の輪状環区画を形成するこれらは、図2の右側及び図4の右側に見られるように、本発明により、開口の輪状環区画18及び閉じた輪状環区画19として、交互に形成される。この点について、内側又は外側環状管路ごとに、開口の輪状環区画は閉じた輪状環区画と続いており、そしてさらに、平面図的に、断面図A−A内における開口の輪状環状区画18は、横断面C−Cにおける閉じた輪状環区画19に常に対応しているか、又はその逆であることを交互に意味する。この設計は、図3に示されているように、チャンバーには、常に、底部から頂部へ、ポンプからの熱交換媒体及び反応器空間からの熱交換媒体による交互の流れがあることを意味する。
【0028】
熱交換媒体の輸送を説明するために、本発明による反応器の断面を図5及び6に示す:即ち、
図5では、ポンプからの熱交換媒体が、外側の下側環状管路14を経由して、開口の輪状環状区画18を通ってチャンバー16の底部から頂部に流れ、前記熱交換媒体は、別の開口の輪状環画区18を経由して、上側領域中に出て、内側の上側環状管路11に流れ、そしてジャケット開口部5を経由して、反応器の接触管を包囲する空間に給送されるチャンバー16を示している。
【0029】
一方、図5に示されているチャンバー16と直接隣り合う、図6に示されているチャンバー16は、ジャケット開口部6を経由して、内側の下側環状管路13及び開口の輪状環状区画18を通って反応器の接触管を包囲する空間からの熱交換媒体の流れがある。
【0030】
図7では、本発明による反応器の好ましい態様を示している。この態様において、反応器空間へのジャケット開口部21及び調整板22を有するさらなるバイパスチャンバー20は、熱交換媒体が流れ、かつその後ポンプを通って排出される少なくとも数個のチャンバー16における、外側の上側環状管路12に対するチャンバー16の隔壁部分それぞれ配置されている。調整板22の位置は、駆動装置と駆動スピンドル23によって反応器の縦軸方向に調整可能である。
【0031】
図8では、本発明による、2種の熱交換媒体回路を有する反応器の好ましい態様を示している。この反応器は、図1の右側に対応する単一の熱交換媒体回路を有する反応器と類似して構成されている。もう一方の熱交換媒体回路において、主要の熱交換媒体回路に対応する特徴が、対応する引用番号で示されている。
【0032】
同様に、別の熱交換媒体回路を本発明による反応器に付け加えることができる。これにより、この反応器を、実施されるそれぞれの反応で特有の熱分布に最適に調和させることができる。
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