JP2002372518A - 白金族元素の定量方法 - Google Patents

白金族元素の定量方法

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JP2002372518A
JP2002372518A JP2001179427A JP2001179427A JP2002372518A JP 2002372518 A JP2002372518 A JP 2002372518A JP 2001179427 A JP2001179427 A JP 2001179427A JP 2001179427 A JP2001179427 A JP 2001179427A JP 2002372518 A JP2002372518 A JP 2002372518A
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ruthenium
osmium
iridium
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Fumitaka Yamamoto
文隆 山本
Ryoichi Tsukahara
涼一 塚原
Kazumichi Yonesato
法道 米里
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、鉱石、精鉱及び非鉄金属製錬
工程で発生する中間物に低濃度で含まれるルテニウム、
オスミウム、イリジウム及びロジウムを定量する方法の
提供を課題とする。 【解決手段】 ルツボ中に試料とともに、ニッケル粉、
硫黄粉、炭酸ナトリウム、ホウ砂及びケイ砂を加えて混
合し、これを加熱融解し、冷却した後に、生成した硫化
ニッケルボタンを得、硫化ニッケルボタンに塩酸を加え
て加温溶解し、濾別して沈澱を得、この沈澱をテルル共
存下で塩酸、硝酸及び過酸化水素水を用いて溶解し、測
定溶液を得、得た測定溶液中のルテニウム、オスミウ
ム、イリジウム、ロジウムの内の少なくとも一つの濃度
を誘導結合プラズマ質量分析装置で測定し、得た測定値
より試料中の当該元素の濃度を求める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】鉱石、精鉱及び非鉄金属製錬
工程で発生する中間物中の白金族元素(ルテニウム,オ
スミウム,イリジウム及びロジウム)を定量する分析法
に関する。
【0002】
【従来の技術】鉱石、精鉱及び非鉄金属製錬工程で発生
する中間物中の白金族元素を分離定量する方法として
は、古くから、融剤及び酸化鉛などと試料を混合し、加
熱融解して貴金属元素と共に白金族元素を鉛中に濃縮す
る乾式試金法が濃縮分離法として用いられてきている。
乾式試金法により鉛中に濃縮回収された貴金属及び白金
族元素は、鉛を酸化して、酸化鉛を多孔質の骨灰などに
吸収し鉛と貴金属とを除去する方法である、いわゆる灰
吹き法により鉛から分離されている。
【0003】しかし乾式試金法及び灰吹き法では、白金
族元素が完全に鉛に吸収されない、あるいはルテニウム
及びオスミウムが酸化物形態で揮散すると言った問題が
ある。従って、これらの方法により鉱石、精鉱、中間物
中に少量含まれるルテニウム、オスミウム、イリジウ
ム、ロジウムなどを正確に定量的することは困難とされ
ている。
【0004】このため、アルカリ融剤と共に融解した試
料を亜硫酸ナトリウムで還元し、水酸化第二鉄沈澱でル
テニウム、オスミウム、イリジウムを一括捕集した後、
同位体希釈を利用する誘導結合プラズマ質量分析法でこ
れらの元素を定量する方法が提案されている(特開平8
−217460号)。また、試料を銅とともにアルカリ
融解し、アルコール還元してイリジウム、ルテニウム及
びロジウムを捕集した後、誘導結合プラズマ発光分析法
で定量する方法も提案されている(特願 2000−2
13964号)。
【0005】これらの方法はいずれも煩雑な操作が少な
く、簡便な分析方法ではあるが、アルカリ融解で試料を
分解しているため、分解できる試料の量に制約(通常1
g以下)がある。その結果、数〜数十ppmの割合で含
まれる白金族元素の定量は可能であるが、白金族元素が
それより低い含有率の場合には精度良く定量することは
困難である。従って、鉱石、精鉱及び非鉄金属製錬工程
で発生する中間物には白金族元素の含有率が低いものに
アルカリ融解を用いる方法は適用できない。
【0006】やや煩雑な方法ではあるが、試料を捕集剤
及び融剤とともに融解して試料に含まれる白金族を硫化
ニッケルボタン中に捕集し、硫化ニッケルを塩酸で分解
して溶解し、ニッケルを除去し、残った白金族を、同位
体希釈を利用する誘導結合プラズマ質量分析法で定量す
る方法が報告されている(A.R.Date, A.E.Davis andY.
Y.Cheung;ANALYST,112,1217-1222(1987). )。しかし、
この方法では、試料によって同位体希釈を利用できない
Rhの回収率が不十分なことがある。
【0007】なお、同位体希釈法とは、ある試料中の複
数の同位体を持つ元素Mを定量する場合に、元素Mの特
定の同位体を濃縮した濃縮安定同位体(スパイクとい
う)を一定量加えて、元素Mを化学的に分離濃縮した後
に質量分析装置を用いて元素Mの同位体比を測定して得
られた同位体比、スパイクの添加量、スパイクの同位体
比及び試料中の元素Mの同位体比から試料中の元素Mの
量を算出する方法である。試料中のMとスパイクとがい
ったん均一に混合されれば、その後の分離濃縮操作で損
失があっても分析結果に影響しない、即ち、回収率が1
00%に満たなくても正しい分析結果が得られるという
特徴があり、良く用いられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、鉱石、精鉱
及び非鉄金属製錬工程で発生する中間物に低濃度で含ま
れるルテニウム、オスミウム、イリジウム及びロジウム
を定量する方法の提供を課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明は、ルツボ中に試料とともに、ニッケル粉、硫黄粉、
炭酸ナトリウム、ホウ砂及びケイ砂を加えて混合し、こ
れを加熱融解し、冷却した後に、生成した硫化ニッケル
ボタンを得、硫化ニッケルボタンに塩酸を加えて加温溶
解し、濾別して沈澱を得、この沈澱をテルル共存下で塩
酸、硝酸及び過酸化水素水を用いて溶解し、測定溶液を
得、得た測定溶液中のルテニウム、オスミウム、イリジ
ウム、ロジウムの内の少なくとも一つの濃度を誘導結合
プラズマ質量分析装置で測定し、得た測定値より試料中
の当該元素の濃度を求めるものである。
【0010】また、試料に銅及び鉄を添加した後本発明
を適用すると、ロジウムの分析精度がより高くなるため
好ましい。なお、誘導結合プラズマ質量分析装置で測定
溶液中の目的元素の濃度を測定するに際し、同位体希釈
法を利用することも本発明の範疇である。更に、本発明
の方法においては、ルテニウム、オスミウム、イリジウ
ム及びロジウムを一括定量することが可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明で使用する、ニッケル粉と
硫黄粉は、白金族元素をその内部に取り込む硫化ニッケ
ルボタンを生成させる試薬であり、通常、試料量1〜1
0gに対して、ニッケル粉5〜10g、硫黄粉3〜6g
を添加する。炭酸ナトリウム、ホウ砂及びケイ砂につい
ては、融解する際の熔剤であり、それぞれ、10〜20
g、20〜40g、5〜10gを使用する。なお、試
料、ニッケル粉、硫黄粉、炭酸ナトリウム、ホウ砂及び
ケイ砂はそれらの比率を保持したまま増減させることは
可能である。ニッケル粉及び硫黄粉の量が少ないと硫化
ニッケルボタンが生成しない、あるいはボタンと溶剤と
の分離が悪くなることがある。炭酸ナトリウム、ホウ砂
及びケイ砂といった溶剤成分が少ないと、融解状態の流
動性が悪くなり、硫化ニッケルボタンが生成しない、あ
るいはボタンと溶剤との分離が悪くなる。いずれの場合
もルテニウム,オスミウム,イリジウム及びロジウムの
回収率が低下する。
【0012】融解に際しては、500〜700℃に予め
加熱した電気炉などにルツボを入れ、30分〜90分間
かけて1000〜1200℃まで昇温し、その温度で5
分〜30時間保持する。急激に昇温すると、試料によっ
ては十分に融解することなく硫化ニッケルボタンが生成
し、試料中のルテニウム,オスミウム,イリジウム及び
ロジウムが十分硫化ニッケル中に濃縮されにくいので好
ましくない。
【0013】得られた硫化ニッケルボタンを、塩酸だけ
で分解すると、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、
ロジウムなどを溶かすことなく硫化ニッケルだけ溶け
る。塩酸で硫化ニッケルボタンを溶解する際にテルル溶
液を加え、即ち塩酸の添加と同時にテルル溶液を添加す
ると液中に微量に溶解した貴金属元素が還元析出され、
分析精度がその分向上する。
【0014】ところで、同位体希釈法とは、ある試料中
の、複数の同位体を持つ元素Mを定量する場合に、元素
Mの特定の同位体を濃縮した濃縮安定同位体(スパイク
という)を一定量加えて、元素Mを化学的に分離濃縮し
た後に質量分析装置を用いて元素Mの同位体比を測定し
て得られた同位体比、スパイクの添加量、スパイクの同
位体比及び試料中の元素Mの同位体比から試料中の元素
Mの量を算出する方法である。試料中のMとスパイクと
がいったん均一に混合されれば、その後の分離濃縮操作
で損失があっても分析結果に影響しない、即ち、回収率
が100%に満たなくても正しい分析結果が得られると
いう特徴があり、良く用いられる。しかし、ロジウムは
同位体を1つしか持たないため同位体希釈法を利用でき
ない。このため、100%近い回収率が得られないと、
正確な分析値が得られない。本発明では、試料に銅及び
/または鉄を加えて処理することにより高いロジウムの
回収率を得られ、高い分析精度を得る。
【0015】
【実施例】(空試験)下記予備試験を行うに先立ち、1
0個の空試験を行い、本発明の方法の分析精度を求め
た。まず、10個の乾式粘土ルツボ3号に、それぞれニ
ッケル粉5g、硫黄粉3g、鉄粉3g、銅粉3g、炭酸
ナトリウム20g、ホウ砂40g、ケイ砂10gを入れ
た。これらを撹拌混合した後、全てのルツボに、10m
g/lスパイク溶液1ml添加してスチームバス上で加
熱して水分を除去した。スパイク溶液は、オークリッジ
研究所の99Ru、188Os及び191Irをアルカ
リ融解して調製した溶液を用いた。
【0016】これらを、600℃に加熱してある電気炉
に10分間入れ、その後20分かけて600℃から90
0℃まで昇温した。900℃で10分間保持した後、2
0分かけて900℃から1200℃まで昇温し、その温
度で10分間保持した。
【0017】その後、ルツボを取り出して冷却し、ハン
マーで粉砕して底部に生成した硫化ニッケルボタンを取
り出した。硫化ニッケルボタンを秤量した後振動ミルで
粉砕し、秤量した重量の1/2量を200mlビーカー
にはかり取った。これに0.1質量/体積%のテルル溶
液5mlと12N塩酸100mlとを加え、スチームバ
ス上で一昼夜加温分解した。
【0018】その後、ガラスフィルターでろ別し、得た
沈殿を濾紙ごと100mlビーカーに移し、12N塩酸
15ml、14N硝酸5ml及び30%過酸化水素水2
mlを加えて、サンドバス上で加熱し分解した。さらに
これを、5A濾紙を用いて濾別して得た溶液を100m
lメスフラスコに移し、12N塩酸5mlと1質量/体
積%チオ尿素1mlを加え、水で定容とした。
【0019】この溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置
で、ルテニウムについては質量数99と101の、オス
ミウムについては質量数188と189の、またイリジ
ウムについては質量数191と193のイオン強度を測
定し、ピークの認められない近傍のバックグランドのイ
オン強度を差し引いた後、同位体希釈法による計算を行
い、ルテニウム,オスミウム及びイリジウムの量、則ち
空試験値を算出した。ロジウムについては質量数103
のイオン強度を測定し、通常の検量線法で空試験値を求
めた。結果を表1に示した。表1の空試験値の標準偏差
の10倍の濃度を算出し、試料量を全量10gとしたと
きの定量下限を求めたところ、ルテニウム,オスミウ
ム,イリジウム及びロジウムの定量下限はいずれも約1
ppbであった。
【0020】 表1 空試験値の標準偏差(ng) ルテニウム オスミウム イリジウム ロジウム ルツボ1 5.98 1.57 1.44 2.12 ルツボ2 4.27 1.91 1.45 1.62 ルツボ3 5.32 2.31 1.48 1.48 ルツボ4 6.51 1.09 1.01 1.84 ルツボ5 6.09 1.32 2.21 1.85 ルツボ6 5.87 1.88 2.39 1.85 ルツボ7 5.07 2.06 1.85 1.85 ルツボ8 5.56 2.11 1.89 1.70 ルツボ9 5.88 1.54 1.36 1.60 ルツボ10 4.92 0.87 2.33 1.75 標準偏差 0.66 0.47 0.46 0.18 定量下限(ppb) 1.32 0.94 0.92 0.36
【0021】(従来例)乾式粘土ルツボ3号に銅精鉱A
を10g、ニッケル粉5g、硫黄粉3g、炭酸ナトリウ
ム20g、ホウ砂40g、ケイ砂10gを入れ、撹拌混
合したものを2つ調製した。このうち一方に、回収率を
調査するためにルテニウム,オスミウム,イリジウム及
びロジウムをそれぞれ1g/lの割合で含む溶液を2m
l添加し、スチームバス上で加熱して水分を除去した。
これらを、600℃に加熱してある電気炉に10分間入
れ、その後、20分かけて600℃から900℃まで昇
温した。900℃で10分間加熱した後、20分かけて
900℃から1200℃まで昇温し、1200℃で10
分間保持した。その後、ルツボを電気炉より取り出して
冷却し、ハンマーで粉砕してルツボ底部に生成した硫化
ニッケルボタンを取り出した。
【0022】硫化ニッケルボタンの重さを秤量した後、
これを振動ミルで粉砕し、1/5量を200mlビーカ
ーに秤り取った。そして、ビーカーに12N塩酸100
mlを加え、スチームバス上で一昼夜加温分解した。
【0023】その後、ガラスフィルターでろ別しで沈殿
を得た。沈殿を濾紙ごと100mlビーカーに移し、1
2N塩酸15ml、14N硝酸5ml及び30%過酸化
水素水2mlを加えて、サンドバス上で加熱し分解し
た。次いで、5A濾紙を用いてこれを濾別して溶液を
得、この溶液を100mlメスフラスコに移し、12N
塩酸5ml及び1質量/体積%チオ尿素1mlを加え、
オルガノ精製水で100mlとした。
【0024】これらの溶液を試料とし、誘導結合プラズ
マ発光分析装置でルテニウム、オスミウム、イリジウム
及びロジウムの濃度を求め、この値から回収率を算出し
た。表2に結果を示した。
【0025】(比較例1、2)従来例で得られた硫化ニ
ッケルボタン粉の1/5量をそれぞれ2つの200ml
ビーカーにそれぞれ秤り取った(比較例1〜2)。比較
例1のビーカーには10質量/体積%塩化第一錫溶液1
0mlを、比較例2のビーカーには10質量/体積%塩
化第一錫溶液10ml 及び0.1質量/体積%テルル
溶液5mlを加え、以後従来例と同様にして試料溶液を
得た。
【0026】これらの試料溶液を、誘導結合プラズマ発
光分析装置でルテニウム、オスミウム、イリジウム及び
ロジウムの濃度を求め、この値から回収率を算出した。
表2に結果を合わせて示した。
【0027】(実施例1)従来例で得られた硫化ニッケ
ルボタン粉の1/5量を200mlビーカーに秤り取っ
た。次いでビーカーに0.1質量/体積%テルル溶液5
mlを加え、以後従来例と同様にして試料溶液を得た。
【0028】これらの試料溶液を、誘導結合プラズマ発
光分析装置でルテニウム、オスミウム、イリジウム及び
ロジウムの濃度を求め、この値から回収率を算出した。
表2に結果を合わせて示した。
【0029】
【0030】表2に示すように、テルル溶液またはテル
ル溶液と塩化第一錫溶液を添加すると回収率が向上す
る。しかし、テルル溶液と塩化第一錫溶液を添加した比
較例1、2では測定溶液からニッケル、錫及びテルルが
5〜20mg/lの割合で検出された。これらが共存す
ると、誘導結合プラズマ質量分析装置で測定する時に測
定対象元素を妨害する可能性が出てくるので好ましくな
い。
【0031】(実施例2〜7)乾式粘土ルツボ3号に、
それぞれ銅製錬工程中間物(実施例2)、ニッケル製錬
工程中間物(実施例3)、ニッケル製錬工程中間物(実
施例4)、ニッケル製錬工程中間物(実施例5)、銅ニ
ッケルマット標準試料PTM-1a(実施例6)、ニッケル精
鉱標準試料 CRM No.1702-86(KN-1)(実施例7)を10
g入れ、それぞれにニッケル粉5g、硫黄粉3g、炭酸
ナトリウム20g、ホウ砂40g、ケイ砂10gを入
れ、撹拌混合した。これらのうち、銅製錬工程中間物、
ニッケル製錬工程中間物、ニッケル製錬工程中間物、及
びニッケル製錬工程中間物はそれぞれ2ルツボずつ調製
し、一方に、10mg/lロジウム溶液1mlを添加
し、スチームバス上で加熱して水分を除去した。
【0032】これらを、600℃に加熱してある電気炉
に入れ10分間保持した後、20分かけて600℃から
900℃まで昇温した。900℃で10分間保持した
後、20分かけて900℃から1200℃まで昇温し
た。そして、1200℃で10分間保持した。その後、
ルツボを取り出して冷却し、ハンマーで粉砕して底部に
生成した硫化ニッケルボタンを取り出した。
【0033】硫化ニッケルボタンの質量を秤量した後、
これを振動ミルで粉砕し、1/2量を200mlビーカ
ーにはかり取った。これらに0.1質量/体積%テルル
溶液5ml及び12N塩酸100mlを加え、スチーム
バス上で一昼夜加温分解した。その後、ガラスフィルタ
ーでろ別して沈殿を得、これらをろ紙ごと100mlビ
ーカーに移し、12N塩酸15ml、14N硝酸5ml
及び30%過酸化水素水2mlを加えて、サンドバス上
で加熱し分解した。次いでこれらを5Aろ紙を用いてろ
別して溶液を得た。この溶液を100mlメスフラスコ
に移し、12N塩酸5ml及び1質量/体積%チオ尿素
1mlを加え、オルガノ精製水で100mlとした。こ
の溶液中のロジウム濃度を誘導結合プラズマ質量分析装
置で測定した。
【0034】銅製錬工程中間物、ニッケル製錬工程中間
物、ニッケル製錬工程中間物及びニッケル製錬工程中間
物については添加したロジウム量と検出されたロジウム
量の比から、また、銅ニッケルマット標準試料PTM-1a、
ニッケル精鉱標準試料CRM No.1702-86(KN-1)について
は、認証値と検出されたロジウム量の比から回収率を算
出した。結果を表3に示した。表3に示すように試料に
よって回収率に差があることが分かる。さらに、銅製錬
工程中間物、ニッケル製錬工程中間物、ニッケル製錬工
程中間物及びニッケル製錬工程中間物の組成を蛍光X線
法による定性分析で調べた。また、それ以外の標準試料
の組成は、認証値によった。これらの結果を表3に併せ
て示した。表3に示すように、回収率が最も高かった銅
製錬工程中間物Aは鉄及び銅の含有率が高いことが分か
る。
【0035】 表3 ロジウム回収率及び組成 回収率(%) 組成(%) Al Si S K Fe Cu Cl Ni As 実施例2 92.7 2.3 9.4 23 1.0 27 35 - - - 実施例3 88.1 - - 17 - 1.1 4.7 - 76 - 実施例4 81.7 - - 82 - 5.7 1.3 4.8 3.4 1.3 実施例5 80.1 - - 15 - - - - 83 - 実施例6 89.1 - - 22 - 1.5 25 - 48 - 実施例7 76.5 - - - - - 3.0 - 5.4 -
【0036】(実施例8〜16)表4に示した条件で9
個の乾式粘土ルツボ3号に白金鉱石標準試料SARM7を10
g、ニッケル粉5g、硫黄粉3g、鉄粉0〜3g、銅粉
0〜3g、炭酸ナトリウム20〜80g、ホウ砂40〜
80g、ケイ砂10〜20gを入れ、撹拌混合した。こ
れらを、600℃に加熱してある電気炉に入れ10分間
の後、20分かけて600℃から900℃まで昇温し
た。900℃で10分間保持した後、20分かけて90
0℃から1200℃まで昇温し、その温度で10分間保
持した。
【0037】その後、ルツボを取り出して冷却し、ハン
マーで粉砕して底部に生成した硫化ニッケルボタンを取
り出した。硫化ニッケルボタンを秤量した後振動ミルで
粉砕し、秤量した重量の1/2量を200mllビーカ
ーにはかり取った。0.1質量/体積%テルル溶液5m
l及び12N塩酸100mlを加え、スチームバス上で
一昼夜加温分解した。引き続き、ガラスフィルターで濾
別した沈殿を、濾紙ごと100mlビーカーに移し、1
2N塩酸15ml、14N硝酸5ml及び30%過酸化
水素水2mlを加えて、サンドバス上で加熱し分解し
た。次いで、これを5A濾紙を用いて濾別した溶液を1
00mlメスフラスコに移し、12N塩酸5ml及び1
質量/体積%チオ尿素1mlを加え、水で定容とした。
この溶液中のロジウムを誘導結合プラズマ質量分析装置
で測定した。認証値と検出されたロジウム量の比から回
収率を算出した。表4に示すように鉄と銅の両方を添加
すると高い回収率が得られることが分かった。
【0038】 表4 ロジウムの回収率に対する鉄と銅の添加効果 実 施 例 ニッケル粉 硫 黄 粉 鉄 粉 銅 粉 回収率% 8 5 3 0 0 50.0 9 5 3 3 3 91.6 10 5 3 1 1 81.2 11 5 3 3 0 54.2 12 5 3 0 3 81.2 13 5 3 3 3 83.3 14 5 3 1 1 75.0 15 5 3 3 0 62.4 16 5 3 0 3 75.0
【0039】(実施例17〜19)三つの乾式粘土ルツ
ボ3号に、それぞれ銅ニッケルマット標準試料PTM−
1a(実施例17)、ニッケル精鉱標準試料CRM N
o.1702−86(KN−1)(実施例18)、白金
鉱石標準試料SARM7(実施例19)を10ずつ入
れ、それぞれのルツボに、ニッケル粉5g、硫黄粉3
g、鉄粉3g、銅粉3g、炭酸ナトリウム20g、ホウ
砂40g、ケイ砂10gを入れ、撹拌混合した。引き続
きこれらのルツボそれぞれに10mg/lスパイク溶液
1ml添加してスチームバス上で加熱して水分を除去し
た。これらを、600℃に加熱してある電気炉に入れ1
0分間保持した後、20分かけて600℃から900℃
まで昇温した。900℃で10分間保持した後、20分
かけて900℃から1200℃まで昇温し、その温度で
10分間加熱した。その後、ルツボを取り出して冷却
し、ハンマーで粉砕して底部に生成した硫化ニッケルボ
タンを取り出した。
【0040】硫化ニッケルボタンを秤量した後振動ミル
で粉砕し、秤量した重量の1/2量を200mlビーカ
ーにはかり取った。0.1質量/体積%テルル溶液5m
l及び12N塩酸100mlを加え、スチームバス上で
一昼夜加温分解した。引き続き、ガラスフィルターでろ
別した沈殿を、ろ紙ごと100mlビーカーに移し、1
2N塩酸15ml、14N硝酸5ml及び30%過酸化
水素水2mlを加えて、サンドバス上で加熱し分解し
た。さらにこれを5Aろ紙を用いてろ別した溶液を10
0mlメスフラスコに移し、12N塩酸5ml及び1質
量/体積%チオ尿素1mlを加え、水で定容とした。
【0041】この溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置
で、ルテニウムについては質量数99と101の、オス
ミウムについては質量数188と189の、またイリジ
ウムについては質量数191と193のイオン強度を測
定し、ピークの認められない近傍のバックグランドのイ
オン強度を差し引いた後、同位体希釈法による計算を行
い、ルテニウム,オスミウム及びイリジウムを定量し
た。ロジウムについては質量数103のイオン強度を測
定し、通常の検量線法で定量した。表5に示すようにい
ずれの標準試料の分析値もそれらの認証値と良く一致し
たことから、本発明の分析方法で正確な分析値が得られ
ることが分かる。また、本発明の実施例よりルテニウ
ム、オスミウム、イリジウム及びロジウムを一括定量す
ることが可能である。
【0042】 表5 標準試料の分析(ppm) 標準試料 ルテニウム オスミウム イリシ゛ウム ロシ゛ウム 銅ニッケルマット標準試料PTM-1a 分析値 0.68 0.12 0.35 0.87 認証値 0.7 − 0.35 0.92 ニッケル精鉱標準試料 分析値 0.38 0.068 0.11 0.95 CRM No.1702-86(KN-1) 認証値 0.34 0.06 0.11 0.98 白金鉱石標準試料SARM7 分析値 0.46 0.059 0.072 0.22 認証値 0.43 0.063 0.074 0.24
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、鉱石、精鉱及び非鉄金
属製錬工程で発生する中間物中のルテニウム、オスミウ
ム、イリジウム、ロジウムをそれぞれ単独でも、一括し
てでも1ppbまで正確に定量可能となる。
フロントページの続き Fターム(参考) 2G052 AA11 AA21 AB01 AB27 AC23 AD12 AD32 AD46 BA02 DA01 DA26 EA03 EB06 ED01 FB02 FD09 GA24 JA09 4K001 AA41 DA02 DB06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ルツボ中に試料とともに、ニッケル粉、硫
    黄粉、炭酸ナトリウム、ホウ砂及びケイ砂を加えて混合
    し、これを加熱融解し、冷却した後に、生成した硫化ニ
    ッケルボタンを得、硫化ニッケルボタンに塩酸を加えて
    加温溶解し、濾別して沈澱を得、この沈澱をテルル共存
    下で塩酸、硝酸及び過酸化水素水を用いて溶解し、測定
    溶液を得、得た測定溶液中のルテニウム、オスミウム、
    イリジウム、ロジウムの内の少なくとも一つの濃度を誘
    導結合プラズマ質量分析装置で測定し、得た測定値より
    試料中の当該元素の濃度を求めることを特徴とする白金
    属元素の定量法。
  2. 【請求項2】試料に銅及び鉄を添加した後にニッケル
    粉、硫黄粉、炭酸ナトリウム、ホウ砂及びケイ砂を加え
    て混合し、これを加熱融解し、冷却した後に、生成した
    硫化ニッケルボタンを得、硫化ニッケルボタンに塩酸を
    加えて加温溶解し、濾別して沈澱を得、この沈澱をテル
    ル共存下で塩酸、硝酸及び過酸化水素水を用いて溶解
    し、測定溶液を得、得た測定溶液中のルテニウム、オス
    ミウム、イリジウム、ロジウムの内の少なくとも一つの
    濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置で測定し、得た測
    定値より試料中の当該元素の濃度を求めることを特徴と
    する白金属元素の定量法。
  3. 【請求項3】請求項1または2の方法において、ルテニ
    ウム、オスミウム、イリジウム及びロジウムを一括定量
    することを特徴とする白金属元素の定量法。
  4. 【請求項4】試料にルテニウム、オスミウム、イリジウ
    ムの濃縮安定同位体を加えて処理し、得られる測定溶液
    を誘導結合プラズマ質量分析装置で測定するに際し、同
    位体希釈法を利用する請求項1〜3のいずれかの定量方
    法。
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