JP2002355854A - 二色成形体及びその製造方法 - Google Patents

二色成形体及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 幅広い成形条件で相互に接合することができ
る二色成形体及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 樹脂組成物と、スチレン系熱可塑性エラ
ストマーに粘接着性改質剤を配合したスチレン系エラス
トマー組成物とを順次射出成形して二色成形体とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、幅広い二色成形条
件によっても相互に接合できる二色成形体及びその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、熱可塑性エラストマーと樹脂
とを二色成形した場合に、双方の材料を選択することに
より、相互に良好な粘接着性を得ることができ、場合に
よっては熱融着することが知られている。
【0003】例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー
の中には、汎用樹脂であるポリプロピレンと良好な粘接
着性を示す種類があるが、そのものが、ポリエステルな
どのエンジニアリングプラスチックとは良好な粘接着性
を示さない。
【0004】このように、従来、熱可塑性エラストマー
と樹脂とを良好に粘接着する場合、組み合わせはかなり
限定されることが知られており、二色成形した際に界面
で溶融が生じて相互に混じりあうという熱融着による場
合にはさらに限定される。
【0005】そこで、熱可塑性エラストマーに対して添
加することにより粘接着性を改善する粘着性改質剤又は
接着性改質剤と呼ばれる添加剤が種々開発されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、粘着性
改質剤又は接着性改質剤を熱可塑性エラストマーに添加
した場合に接着性が改善される被着体は限定されてお
り、また、このような添加剤を単に添加しただけでは十
分な粘接着性の改善は見られない。
【0007】一方、界面で熱融着を生じさせて強固に接
合するには、材料が限定されるばかりか、成形条件を高
度に制御する必要があるという問題がある。例えば、要
求物性に応じた材料が選択できなかったり、比較的高温
での成形が必要なので、薄い形成部に割れが生じるなど
の問題がある。
【0008】さらに、従来の粘着性改質剤又は接着性改
質剤を添加した場合には、添加量によっては、熱可塑性
エラストマーの諸物性が低下してしまうという問題があ
る。
【0009】本発明はこのような事情に鑑み、熱可塑性
エラストマーの諸物性を低下させることなく、幅広い成
形条件で相互に接合することができる二色成形体及びそ
の製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発
明の第1の態様は、樹脂組成物と、スチレン系熱可塑性
エラストマーに粘接着性改質剤を配合したスチレン系エ
ラストマー組成物とを順次射出成形してなることを特徴
とする二色成形体にある。
【0011】本発明の第2の態様は、第1の態様におい
て、前記樹脂組成物による樹脂成形体と前記スチレン系
エラストマー組成物による成形体とは、前記樹脂成形体
と前記粘接着性改質剤との間の分子間凝集力により接合
されていることを特徴とする二色成形体にある。
【0012】本発明の第3の態様は、第1又は2の態様
において、前記粘接着性改質剤が、変性スチレン系エラ
ストマー、低分子量のポリスチレン、エポキシ化スチレ
ン・ブタジエン・ブロックコポリマー、及びテルペン系
樹脂からなる群から選択された少なくとも一種であるこ
とを特徴とする二色成形体にある。
【0013】本発明の第4の態様は、第1〜3の何れか
の態様において、前記樹脂組成物が、オレフィン系樹
脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニ
トリル−スチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエ
ン−スチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂か
ら選択されたベース樹脂を含むことを特徴とする二色成
形体にある。
【0014】本発明の第5の態様は、第1〜4の何れか
の態様において、前記粘接着性改質剤が、前記スチレン
系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、1〜3
0重量部配合されていることを特徴とする二色成形体に
ある。
【0015】本発明の第6の態様は、第1〜5の何れか
の態様において、前記スチレン系熱可塑性エラストマー
が、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロ
ック共重合体(SBS)、スチレン−ポリイソプレン−
ポリスチレンブロック共重合体(SIS)、SBSを水
添して得られるSEBS、SISを水添して得られるS
EPS、及びこれらを変性した変性スチレン系エラスト
マーから選択される少なくとも一種をベースとするもの
であることを特徴とする二色成形体にある。
【0016】本発明の第7の態様は、樹脂組成物を用い
て樹脂成形体を射出成形する工程と、この樹脂成形体を
保持した金型内にスチレン系熱可塑性エラストマーに粘
接着性改質剤を配合したスチレン系エラストマー組成物
を順次射出成形して二色成形体を成形する工程とを具備
することを特徴とする二色成形体の製造方法にある。
【0017】本発明の第8の態様は、第7の態様におい
て、前記樹脂成形体と前記スチレン系エラストマー組成
物による成形体とは、前記樹脂成形体と前記粘接着性改
質剤との間の分子間凝集力により接合されていることを
特徴とする二色成形体の製造方法にある。
【0018】本発明の第9の態様は、第7又は8の態様
において、前記粘接着性改質剤が、変性スチレン系エラ
ストマー、低分子量のポリスチレン、エポキシ化スチレ
ン・ブタジエン・ブロックコポリマー、及びテルペン系
樹脂からなる群から選択された少なくとも一種であるこ
とを特徴とする二色成形体の製造方法にある。
【0019】かかる本発明の二色成形体は、樹脂組成物
と、スチレン系熱可塑性エラストマーに粘接着性改質剤
を配合したスチレン系エラストマー組成物とを順次射出
成形してなる。
【0020】ここで、樹脂組成物は、汎用樹脂からエン
ジニアリングプラスチックまで、換言すると、極性の低
い結晶性樹脂であるポリプロピレン、ポリエチレンなど
のポリオレフィン系樹脂から、極性樹脂であるポリエチ
レンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹
脂、さらには、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエ
ーテル(PPE)系樹脂、アクリロニトリル−スチレン
(AS)系樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチ
レン(ABS)系樹脂などをベース樹脂として含有する
ものを挙げることができる。
【0021】一方、熱可塑性エラストマー組成物は、ス
チレン系熱可塑性エラストマー(スチレン系TPE)
に、粘接着性改質剤を添加したものである。
【0022】ここで、スチレン系熱可塑性エラストマー
としては、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレ
ンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ポリイソプ
レン−ポリスチレンブロック共重合体(SIS)、SB
Sを水添して得られるSEBS、SISを水添して得ら
れるSEPS、及びこれらを変性した変性スチレン系エ
ラストマーなどをベースとしたものを挙げることができ
る。
【0023】なお、変性スチレン系エラストマーは、例
えば、部分的にエポキシ化したスチレン系エラストマー
であるが、これに限定されるものではない。
【0024】また、粘接着性改質剤としては、変性スチ
レン系エラストマー、低分子量のポリスチレン、エポキ
シ化スチレン・ブタジエン・ブロックコポリマー、及び
テルペン系樹脂からなる群から選択された少なくとも一
種を挙げることができる。
【0025】ここで、変性スチレン系エラストマーとし
ては、特に、ベースとなるスチレン系熱可塑性エラスト
マーより相対的に平均分子量が低い変性スチレン系エラ
ストマーを用いるのが好ましいが、分子量は特に限定さ
れるものではない。
【0026】低分子量ポリスチレンとは、例えば、平均
分子量約800程度のポリスチレンをいう。
【0027】また、エポキシ化SBSとしては、例え
ば、ダイセル化学工業社製のエポフレンド(商品名)を
挙げることができる。
【0028】さらに、テルペンペン系樹脂としては、例
えば、テルペンフェノール樹脂等を挙げることができ
る。
【0029】粘接着性改質剤は、一種又は複数種混合し
て配合することができるが、エポキシ化SBSは必ず添
加するのが好ましい。
【0030】また、粘接着性改質剤としては、平均分子
量の異なるものを配合することにより、幅広い樹脂に対
しての粘接着性を向上させることができる。例えば、平
均分子量の異なるものを二種類以上のエポキシ化スチレ
ン・ブタジエン・ブロックコポリマー(エポキシ化SB
S)を配合することにより、幅広い樹脂に対しての接着
性が向上するという効果を奏する。
【0031】また、この場合、ベースとなるスチレン系
TPEとして、平均分子量の異なる二種類以上をブレン
ドすることにより、さらに幅広い樹脂に対する接着性の
向上が見られる。すなわち、ベースとなるスチレン系T
PEに、これとは平均分子量が異なるスチレン系TPE
を添加することにより、接着性を向上させることができ
る。これは全体の相溶性及び被接着体に対する濡れ性を
改善することができるためと考えられる。
【0032】スチレン系可塑性エラストマー組成物にお
いて、粘接着性改質剤の配合割合は、例えば、スチレン
系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、1〜3
0重量部である。
【0033】本発明の二色成形体は、先に樹脂組成物を
成形し、次いで、スチレン系熱可塑性エラストマー組成
物を成形する際に、樹脂成形体表面に十分に密着する条
件であれば、良好な接合強度が得られる。この条件は、
成形方法、成形材料により異なるが、例えば、成形型を
30℃程度、溶融熱可塑性エラストマーの射出成形温度
を160〜250℃程度にする。一方、この成形条件
は、樹脂成形体自体が溶融するような条件とする必要は
なく、逆に好ましくない。先に成形した樹脂成形体の形
状が崩れ、また、クラック発生等の原因になるからであ
る。
【0034】すなわち、本発明によれば、熱溶融させる
ような条件で射出成形せず、より緩やかな条件で射出成
形しても、前記樹脂成形体と前記粘接着性改質剤との間
の分子間凝集力により接合されることにより、十分な剥
離強度を有する二色成形体が製造できる。なお、両者を
同時に成形してもよいことは言うまでもない。
【0035】このような二色成形体の例として、車載用
のCDプレーヤーに用いるCDダンパ、CDクランパー
の他、プリンター等に用いられる重送防止パッド、給紙
搬送ロール、スキージーロール、さらには、携帯電話な
どの各種プッシュボタン、医療機器用部材等を挙げるこ
とができる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、実施例に基づいて説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】(実施例1)スチレン系エラストマー組成
物は、SEPSブレンド品A(硬度JIS A20°)
100重量部に、エポキシ化SBS(ダイセル化学工業
社製エポフレンドA1020(商品名;硬度JIS A
で62°)3重量部、及びエポキシ化SBS(ダイセル
化学工業社製エポフレンドCT134(商品名;硬度J
IS Aで15°)2重量部を添加したものとした。
【0038】汎用ポリプロピレン(融点:160℃)及
び上記スチレン系エラストマー組成物を用いて二色成形
体を製造した。このとき、熱可塑性エラストマー成形時
の型温度を30℃、熱可塑性エラストマーの射出温度を
230℃とした。
【0039】二色成形体は図1のようなものであり、長
さ50mm、幅10mm、厚さ1.5mmの板状の樹脂
成形体1の長手方向一端から中央部までの長さ25mm
の部分を接着部としてスチレン系エラストマー成形体2
を接合したものであり、スチレン系エラストマー成形体
2の接合部の厚さは1.5mmであり、接合部以外の厚
さは1mmとした。
【0040】これを用い、樹脂成形体1の長手方向片端
を固定し、エラストマー成形体2の一端部を直交する方
向に引っ張って剥離強度(kgf/10mm)を測定す
る90℃剥離試験を行った結果を表1に示す。
【0041】(実施例2)スチレン系エラストマー組成
物として、SEPSブレンド品A(硬度JISA 20
°)100重量部に、エポキシ化SBS(ダイセル化学
工業社製エポフレンドA1020(商品名;硬度JIS
Aで62°)3重量部、及びエポキシ化SBS(ダイ
セル化学工業社製エポフレンドCT134(商品名;硬
度JISAで15°)2重量部と、テルペンフェノール
樹脂10重量部とを添加したものを用いた以外は実施例
1と同様にして二色成形体を製造した。
【0042】また、製造した二色成形体について、同様
に90℃剥離試験を行った結果を表1に示す。
【0043】(実施例3)スチレン系エラストマーとし
て、SEPSの代わりにSEBS(JIS A20)を
用いた以外は、実施例2と同様にして二色成形体を製造
した。
【0044】また、製造した二色成形体について、同様
に90℃剥離試験を行った結果を表1に示す。
【0045】(実施例4)ベース樹脂として、ポリプロ
ピレンの代わりにポリフェニレンエーテルを用いた以外
は、実施例3と同様にして二色成形体を製造した。
【0046】また、製造した二色成形体について、同様
に90℃剥離試験を行った結果を表1に示す。
【0047】(実施例5)ベース樹脂として、ポリプロ
ピレンの代わりにポリエチレンテレフタレート(PE
T)を用いた以外は、実施例3と同様にして二色成形体
を製造した。
【0048】また、製造した二色成形体について、同様
に90℃剥離試験を行った結果を表1に示す。
【0049】(比較例1〜5)比較のため、ポリプロピ
レン及びSEPSを用いたもの(比較例1)、ポリプロ
ピレン及びSEBSのみを用いたもの(比較例2)、P
PE及びSEPSを用いたもの(比較例3)、PPE及
びSEBSを用いたもの(比較例4)、及びPET及び
SEPSを用いたもの(比較例5)についても同様に試
験し、結果を表1に併せて示す。
【0050】
【表1】
【0051】以上の結果より、本発明の二色成形体は、
大きな剥離強度で相互に接合されていることが確認さ
れ、例えば、通常では測定不能な剥離強度となるポリエ
チレンやポリフェニレンエーテルやポリエチレンテレフ
タレートに対しても良好に接合することがわかった。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
高温で射出成形しなくても大きな剥離強度により接合さ
れる二色成形体を得ることができるので、薄い成形体で
も、変形、クラックなどの欠陥の発生を防止することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で製造した二色成形体の側面図
である。
【符号の説明】
1 樹脂成形体 2 エラストマー成形体
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 57:00) B29K 9:06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂組成物と、スチレン系熱可塑性エラ
    ストマーに粘接着性改質剤を配合したスチレン系エラス
    トマー組成物とを順次射出成形してなることを特徴とす
    る二色成形体。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記樹脂組成物によ
    る樹脂成形体と前記スチレン系エラストマー組成物によ
    る成形体とは、前記樹脂成形体と前記粘接着性改質剤と
    の間の分子間凝集力により接合されていることを特徴と
    する二色成形体。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、前記粘接着性
    改質剤が、変性スチレン系エラストマー、低分子量のポ
    リスチレン、エポキシ化スチレン・ブタジエン・ブロッ
    クコポリマー、及びテルペン系樹脂からなる群から選択
    された少なくとも一種であることを特徴とする二色成形
    体。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れかにおいて、前記樹
    脂組成物が、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、
    スチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン系樹脂、
    アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリ
    フェニレンエーテル系樹脂から選択されたベース樹脂を
    含むことを特徴とする二色成形体。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4の何れかにおいて、前記粘
    接着性改質剤が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー
    100重量部に対して、1〜30重量部配合されている
    ことを特徴とする二色成形体。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5の何れかにおいて、前記ス
    チレン系熱可塑性エラストマーが、ポリスチレン−ポリ
    ブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体(SB
    S)、スチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロッ
    ク共重合体(SIS)、SBSを水添して得られるSE
    BS、SISを水添して得られるSEPS、及びこれら
    を変性した変性スチレン系エラストマーから選択される
    少なくとも一種をベースとするものであることを特徴と
    する二色成形体。
  7. 【請求項7】 樹脂組成物を用いて樹脂成形体を射出成
    形する工程と、この樹脂成形体を保持した金型内にスチ
    レン系熱可塑性エラストマーに粘接着性改質剤を配合し
    たスチレン系エラストマー組成物を順次射出成形して二
    色成形体を成形する工程とを具備することを特徴とする
    二色成形体の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項7において、前記樹脂成形体と前
    記スチレン系エラストマー組成物による成形体とは、前
    記樹脂成形体と前記粘接着性改質剤との間の分子間凝集
    力により接合されていることを特徴とする二色成形体の
    製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項7又は8において、前記粘接着性
    改質剤が、変性スチレン系エラストマー、低分子量のポ
    リスチレン、エポキシ化スチレン・ブタジエン・ブロッ
    クコポリマー、及びテルペン系樹脂からなる群から選択
    された少なくとも一種であることを特徴とする二色成形
    体の製造方法。
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