JP5763461B2 - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、様々な材料に優れた接着性を有し、自動車、電子材料、家電、電気機器、医療用具、包装資材、文具・雑貨用品等の各種成形品に有用であり、さらにはグリップ、チューブ、パッキン、ガスケット、クッション体、フィルム、シート等の各種部材に用いられる熱可塑性エラストマー組成物に関する。
近年、異種の材料、特に汎用品を含め特徴を有する様々な樹脂と金属の両者に優れた接着性を有する熱可塑性エラストマーは、自動車や電材等、幅広い分野で有用な材料として注目されており、その開発が要望されている。
特許文献1には、金属との接着性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が開示されているが、樹脂との接着性については着目されていない。
特許文献2には、異種材料同士であっても優れた接着性及び密着性を発揮する粘着シートが開示されているが、実際に接着性が確認されているのは、ステンレス板、ガラス板及びポリカーボネート板だけであり、オレフィン樹脂との接着性については確認されていない。
特許文献3には、透明樹脂からなるディスク基板を貼り合わせるために用いられるホットメルト接着剤が開示されているが、金属との接着性については着目されていない。
特許文献4には、異種材料のレーザー溶着による接合において、より優れた接合用接着剤が開示されている。
特開2001−316562号公報 特開2009−102483号公報 特開平9−208919号公報 特開2009−155402号公報
特許文献1に記載の熱可塑性エラストマーは、金属に対する接着力が不十分である。
特許文献2に記載の粘着シートは、オレフィン樹脂に対する接着性は不十分であり、特許文献3に記載のホットメルト剤は、自身のベタツキが強く、取り扱いが煩雑である。特許文献4に記載の接着剤は、金属接着には一定効果があるものの、さらなる改善が求められる。いずれも、複雑な接合面の貼り合わせは困難であり、また、射出成形等による一体成形には不向きである。
本発明の課題は、各種材料に対する接着性に優れ、複雑な接合面の貼り合わせも可能な熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
本発明は、
〔1〕 (A)スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b)とからなるブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)を酸変性させた、酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーと、
(B)該酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、
(b-1):重量平均分子量が50,000以下、酸変性量が1〜30質量%の酸変性オレフィン樹脂1〜100質量部、及
(b-3):酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー10〜200質量部
からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分とを含有してな、硬さがA95以下、酸変性量が0.5質量%以上、230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが1g/10min以上である、熱可塑性エラストマー組成物からなる溶着材、
〔2〕 (A)スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b)とからなるブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)を酸変性させた、酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーと、
(B)該酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、
(b-2):230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが10g/10min以上、硬さがA90以下の高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー10〜200質量部
を含有してなり、硬さがA95以下、酸変性量が0.5質量%以上、230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが1g/10min以上である、熱可塑性エラストマー組成物からなる溶着材であって、金属、セラミック、及びガラスからなる群より選ばれた少なくとも1種の部材と、金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂、及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材とを溶着させるための、溶着材、並びに
〔3〕 前記〔1〕または〔2〕記載の溶着材が部材に溶着してなる、複合成形体
に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、各種材料に対する接着性に優れ、複雑な接合面の貼り合わせも可能であるという優れた効果を奏するものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、
(A)スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b)とからなるブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)を酸変性させた、酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーと、
(B)該酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、
(b-1):重量平均分子量50,000以下で、酸変性量が1〜30質量%の酸変性オレフィン樹脂1〜100質量部、
(b-2):230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが10g/10min以上、硬さがA95以下の高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー10〜200質量部、及び
(b-3):酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー10〜200質量部
からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分とを含有するものである。
ブロック共重合体(z)において、ブロック単位(s)を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
ブロック単位(b)を構成する共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。
ブロック共重合体(z)の水素添加は、一部であっても、全部であってもよいが、水素添加することにより不飽和結合が減少し、耐熱性、耐候性及び機械的特性が得られる。それらの観点から、水素添加率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
水素添加物(Z)の具体例としては、スチレン−エチレンーブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン(スチレン制御分布)−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン−ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリイソプレン−ポリ(α-メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−クロロプレンゴム等が挙げられる。これらは、単独であっても、2種以上の混合物であってもよいが、原料調製及び作業性の観点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−ブチレン(スチレン制御分布)−スチレンブロック共重合体(SEB(S)S)及びスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
ブロック共重合体(z)は、ブロック単位(s)からなる硬い部分(ハードセグメント)と、ブロック単位(b)とからなる柔らかい部分(ソフトセグメント)とからなり、全体の物性を決定する観点から、ブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)におけるスチレン系単量体の含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%がさらに好ましい。
ブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)の重量平均分子量は、耐熱性の観点から、50,000以上が好ましく、溶融物の流動性及びゴム弾性の観点から、400,000以下が好ましい。これらの観点から、水素添加物(Z)の重量平均分子量は、50,000〜400,000が好ましく、70,000〜350,000がより好ましく、80,000〜300,000がさらに好ましい。水素添加物(Z)は、1種のみが用いられていてもよく、重量平均分子量や1,2-ビニル結合量等が異なる2種以上が併用されていてもよい。2種以上が併用されている場合は、それらの加重平均値が上記範囲内であることが好ましく、それぞれが上記範囲内であることがより好ましい。
ブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)の酸変性は、特に限定されるものではないが、例えば水素添加物(Z)にカルボキシル基又は酸無水基を導入することによって行うことができる。上記のカルボキシル基又は酸無水基の導入は、それ自体公知の方法に従って行うことができる。具体的には、例えば、水素添加物(Z)と、アクリル酸、メタクリル酸等で例示される不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマール酸、ハイミック酸、イタコン酸等で例示される不飽和ジカルボン酸;あるいは無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水イタコン酸等で例示される不飽和ジカルボン酸の無水物とを、有機過酸化物の存在下に、溶媒の存在下又は非存在下に加熱して、グラフト反応させることにより得ることができる。また、商業的に入手することもできる。
ブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)の酸変性量、即ち酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー(A)の酸変性量は、金属への接着特性及び作業性の観点から、0.5〜5質量%であり、好ましくは0.7〜4.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。
本発明において、前記酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー(A)は、樹脂への密着性は良好であるものの、溶融が不十分であるため、金属との界面での密着性に欠ける。そのため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、さらに、前記の(b-1)〜(b-3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分が配合されている。これにより、部材との密着効果、特に金属との溶着力が向上する。
重量平均分子量50,000以下で、酸変性量が1〜30質量%の酸変性オレフィン樹脂(b-1)は、硬質の変性オレフィン樹脂である。硬さに影響を与えないために酸変性量を高めに設定しており、少量の添加でも得られる熱可塑性エラストマー組成物の酸変性量を上げることができる。また、流動性の観点から、分子量を低く設定している。
上記観点から、酸変性オレフィン樹脂(b-1)の重量平均分子量は、50,000以下であり、好ましくは500〜50000、より好ましくは1000〜45000である。また、酸変性オレフィン樹脂(b-1)の酸変性量は、1〜30質量%であり、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは7〜30質量%である。
酸変性オレフィン樹脂(b-1)の融点は、流動性と耐熱性の観点から、50〜170℃が好ましく、100〜160℃がより好ましい。
酸変性前のオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン等のオレフィン系モノマーの単独重合体やエチレン−プロピレン系共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のオレフィン系モノマーを含む共重合体、環状オレフィン、ポリメチルペンテン、これらの2種以上の混合物等が挙げられ、これらの中では、ポリプロピレン及びポリエチレンが好ましい。
酸変性オレフィン樹脂(b-1)の酸変性は、特に限定されるものではないが、水素添加物(Z)の酸変性と同様に、例えばオレフィン樹脂にカルボキシル基又は酸無水基を導入することによって行うことができる。
酸変性オレフィン樹脂(b-1)の含有量は、接着性及び柔軟性の観点から、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、1〜100質量部であり、好ましくは1〜75質量部、より好ましくは1〜50質量部である。
230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが10g/10min以上、硬さがA90以下の高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-2)は、得られる熱可塑性エラストマーの流動性を向上することができ、金属との接着性向上にも有効である。エラストマーであるため、熱可塑性エラストマー組成物の硬さへの影響は低いと考えられ、添加量の制限が小さい。
上記観点から、高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-2)の230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトは、10g/10min以上であり、好ましくは15g/10min以上、より好ましくは20g/10min以上である。また、高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-2)の硬さは、A95以下であり、好ましくはA10〜A90、より好ましくはA20〜A90である。
高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-2)としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα−オレフィン共重合体エラストマー、これらと非共役ジエンとの共重合エラストマー、これらの2種以上の混合物等が挙げられ、これらの中では、エチレン−α−オレフィン共重合体及びプロピレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-2)の含有量は、接着性と流動性の観点から、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、10〜200質量部であり、好ましくは15〜170質量部、より好ましくは20〜150質量部である。
酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-3)は、得られる熱可塑性エラストマー組成物の酸変性量を上げる効果は小さいが、酸変性オレフィン樹脂(b-1)と違って硬さへの影響が少ないため多めに入れることが可能である。
上記観点から、酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-3)の酸変性量は、0.1〜5質量%であり、好ましくは0.2〜4質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-3)の230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトは、接着性及び流動性の観点から、0.1g/10min以上が好ましく、1g/10min以上がより好ましい。
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-3)の硬さは、柔軟性及び耐熱性の観点から、A30〜A95が好ましく、A50〜A90がより好ましい。
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-3)の融点は、接着性及び耐熱性の観点から、10〜150℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。
酸変性前のオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα−オレフィン共重合体エラストマー、これらと非共役ジエンとの共重合エラストマー、これらの2種以上の混合物等が挙げられ、これらの中では、エチレン−α−オレフィン共重合体やプロピレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-3)の酸変性は、特に限定されるものではないが、水素添加物(Z)の酸変性と同様に、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマーにカルボキシル基又は酸無水基を導入することによって行うことができる。
酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-3)の含有量は、接着性、柔軟性及び耐熱性の観点から、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、10〜200質量部であり、好ましくは15〜170質量部、より好ましくは20〜150質量部である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、極性樹脂の改質を目的として、極性エラストマーが含有されていてもよい。極性エラストマーとしては、特に制限されないが、例えばNBR(ニトリルゴム)、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強剤;炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、マイカ等の充填剤;滑剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤、離型剤、粘着付与剤、架橋剤、架橋助剤、発泡剤、香料等の各種添加剤を含有していてもよい。
また、本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー(A)と、酸変性オレフィン樹脂(b-1)、高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-2)及び酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー(b-3)からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分とを含む原料を混合し、冷却により固化させて得られる。
上記原料は、例えば、バンバリーミキサー等の混合装置によって混合され、混合物は、通常、押出機によって溶融混練してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによってペレット状に切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形によって所定のシート状成形品や金型成形品とする。また、溶融混練物をルーダー等でペレットにし成形加工原料とすることもできる。シート状の熱可塑性エラストマーに、台紙等を貼付した中間製品としてもよい。
本発明でいう「混合」とは、各種成分が良好に混合される方法であれば特に限定されず、各種成分を溶解可能な有機溶媒中に溶解させて混合してもよいし、溶融混練によって混合してもよい。前者の混合方法では、比較的多量の有機溶媒が必要であり、コスト、自然環境、職場環境、消防法等による規制等を考慮して、工業的に簡便である後者の溶融混練法が好ましい。
溶融混練する場合には、一般的な押出機を用いることができ、混練状態の向上のため、二軸の押出機を使用することが好ましい。押出機への供給は、予め各種成分を混合したものを一つのホッパーから供してもよいし、二つのホッパーにそれぞれの成分を仕込みホッパー下のスクリュー等で定量しながら供してもよい。溶融混練する温度は、エラストマー等の融点の温度以上であることが好ましい。また、上限は、エラストマーの酸化や熱分解を防止する観点から、350℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の硬さは、柔軟性の観点から、A90以下であり、好ましくはA10〜A90、より好ましくはA20〜A90である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の酸変性量は、接着性及び成形性の観点から、0.5質量%以上であり、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。熱可塑性エラストマー組成物の酸変性量は、各原料の酸変性量とそれらの配合割合を用い、加重平均により算出することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトは、接着性及び流動性の観点から、1g/10min以上であり、好ましくは5g/10min以上、より好ましくは10g/10min以上である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、複合成形用材料として用いることができ、様々な材料に溶着するため、異種材料からなる部材の張り合わせにも好適に用いることができる。例えば、金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材に溶着させるために用いられ、特にオレフィン樹脂、金属、ガラス等に対して良好な接着性を示す。
金属としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、鉄、銅、亜鉛めっき鋼、マグネシウム、マグネシウム合金等、また各種めっき処理品等が挙げられる。
オレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合樹脂等が挙げられ、溶融混練されたものでも、重合機中で混合されたリアクター型熱可塑性オレフィン(TPO)でもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーが、動的に架橋されたものであってもよい。
極性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリプロピレンオキサイド系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、LCP(液晶ポリマー)、アイオノマー等の極性樹脂、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材に溶着させた場合、該部材からの剥離強度は、接着特性の観点から、100N/25mm以上が好ましい。
本発明において、溶着は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の融点以上の熱を加えて、融液にした後、融点以下の温度にして固化することで、溶着対象の界面に固着する現象をいう。熱を加えるには、熱プレス機、加熱ロール機、熱風発生機、加熱蒸気、超音波ウェルダー、高周波ウェルダー、レーザー等を用いることができる。従って、溶着部の界面が複雑な立体形状であっても、複雑な立体形状にうまくなじみ成形一体化することができる。
従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、部材の張り合わせだけでなく、部材と一体となって複合成形体とすることもできる。これにより、複雑な接合面を有する部材や、互いに異なる形状の接合面を有する部材の貼り合わせも可能となる。
本発明の複合成形用熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着した複合成形体は、射出成形、射出圧縮成形、インサート成形、多色成形、真空成形、圧空成形、ブロー成形、熱プレス成形、発泡成形、レーザー溶着成形、押出成形等の方法により、成形加工して得ることができるが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、接着剤のように自身が粘着性を有するものではなく、取り扱いが容易であるため、射出成形にも適用することができる。
本発明の複合成形用熱可塑性エラストマー組成物が部材に溶着した複合成形体としては、複合成形用熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体に金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材がインサートされたインサート成形体、複合成形用熱可塑性エラストマー組成物と、オレフィン樹脂又は極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材とを多色成形して得られる複合成形体等が挙げられる。
実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
〔スチレン系単量体の含有量〕
酸変性前の水素添加物(Z)中のスチレン系単量体の含有量を、核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定する。
〔酸変性量〕
変性する前のベース材料(水素添加物(Z)、オレフィン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー)と有機酸のブレンド物を0.1mmのスペーサーを用いてプレスしIRを測定し、特徴的なカルボニル(1600〜1900cm-1)の吸収量と有機酸の仕込量から検量線を作成し、酸変性体のプレス板のIR測定(IR測定器:堀場製作所製FT-210)を行い、変性率を決定する。
〔重量平均分子量(Mw)〕
以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。
測定機器:SIC Autosampler Model 109
Sugai U-620 COLUMN HEATER
Uniflows UF-3005S2B2
検出器:MILLIPORE Waters 410
Differential Refractometer
カラム:Shodex KF806M×2本
オーブン温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF) 1.0ml/min
標準試料:ポリスチレン
試料溶液:濃度が0.020g/10mlとなるように、試料を2,6-ジ-t-ブチル-p-フェノール(BHT)を0.2質量%添加したTHFと混合し、室温で攪拌して溶解させる。
試料溶液の注入量:100μl
補正:検量線測定時と試料測定時とのBHTのピークのずれを補正して、分子量計算を行う。
〔メルトマスフローレイト(MFR)〕
ASTM D 1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重条件で測定する。
〔硬さ〕
JIS K 6253Aに準拠して、測定する。
〔融点〕
JIS K 7121に準拠して、DSC装置を用いて測定する。
〔動粘度〕
JIS-Z-8803に従って、40℃の温度で測定する。
実施例1〜9及び比較例1〜8
表1に示す原料を乾式混合した後、得られた混合物を、押出機((株)テクノベル製、KZW32TW-60MG-NH、シリンダー温度:180〜240℃、スクリュー回転数:300r/min)により、溶融混練した。
実施例及び比較例で使用した表1に記載の原料の詳細は以下の通り。
〔酸変性SBC(水添熱可塑性スチレン系エラストマー)〕
酸変性SEBS-A:FG1901(クレイトン社製)、無水マレイン酸変性SEBS、水素添加率 100%、酸変性前の水素添加物(水素添加物(Z))のスチレン系単量体の含有量 30質量%、水素添加物(Z)のMw 80,600、酸変性量 1.7質量%
酸変性SEB(S)S:RP6670(クレイトン社製)、無水マレイン酸変性特殊SEBS、水素添加率100%、酸変性前の水素添加物(水素添加物(Z))のスチレン系単量体の含有量 46質量%、水素添加物(Z)のMw 160,000、酸変性量 1.7質量%
酸変性SEBS-B:タフテックM1911(旭化成社製)、無水マレイン酸変性SEBS、水素添加率100%、酸変性前の水素添加物(水素添加物(Z))のスチレン系単量体の含有量 30質量%、水素添加物(Z)のMw 100,000、酸変性量 0.2質量%
〔SBC(水添熱可塑性スチレン系エラストマー)〕
SEBS:G1652(クレイトン社製)、スチレン系単量体の含有量 33質量%、Mw 80,000、変性なし
〔酸変性オレフィン樹脂〕
酸変性PP(ポリプロピレン):ユーメックス1010(三洋化成)、Mw 30,000、酸変性量 10質量%、融点 145℃
〔オレフィン樹脂〕
PP(ポリプロピレン):PWH00N(サンアロマー(株))、MFR 1750g/10min、変性なし
〔高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー〕
軟質プロピレン系重合体:ビスタマックス2330(エクソンモービル社製)、MFR 300g/10min、硬さ A77
〔オレフィン系熱可塑性エラストマー〕
エチレン−α−オレフィン共重合体:エンゲージ8100(ダウケミカル社製)、MFR 1g/10min、硬さ A75
〔酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー〕
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体:アンプリファイGR216(ダウケミカル社製)、無水マレイン酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体、酸変性量 0.5質量%、MFR 1.2g/10min、硬さ A77、融点 62.8℃
得られた溶融混練物を、ストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって、直径3mm程度、厚さ3mm程度のペレットに切断した。
ペレットを、下記の条件で射出成形し、厚さ2mm×幅125mm×長さ125mmのプレートを作製した。
〔射出成形条件〕
射出成形機:三菱重工業(株)製、100MSIII-10E
射出成形温度:200℃
射出圧力:40%
射出時間:5秒
金型温度:40℃
得られたプレートを用い、JIS K 6253Aに準拠して、硬さを測定した。柔軟性の指標として、90A以下で合格と判断できる。結果を表1に示す。
試験例
(1) 厚さ4mm×幅25mm×長さ125mmの金型内に下記の硬質材料をインサートし、下記条件で、実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を射出成形し、短冊状の溶着試験片を作製した。なお、金型面への貼り付き防止のため、金型面にフッ素樹脂加工を施した。
〔インサート材(硬質材料)〕
(1) サイズ:厚さ2mm×幅25mm×長さ120mm
(2) 種類
PP(ポリプロピレン)材:サンアロマー(株)製、PM870A(ブロックタイプ)
AL(アルミニウム)材:A5052材
ガラス材:並ガラス
〔射出成形条件〕
射出成形機:三菱重工業(株)製、100MSIII-10E
射出成形温度:250℃
射出圧力:30%
射出時間:5秒
金型温度:40℃
JIS K 6854に準拠した方法により、上記溶着試験片を用い、雰囲気温度23℃で熱可塑性エラストマー層と硬質材料層とを180°方向に50mm/minで引張試験を行い、表皮材層と基材層の剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。
(2) 剥離強度測定用溶着試験片作製の際に、以下の評価基準に従って、離型性を評価した。結果を表1に示す。
<評価基準>
○:問題なし。
×:試験片を射出成形機から取り出す際に、金型面貼りつきが強く、離型時にエラストマーが変形する。
Figure 0005763461
以上の結果より、実施例1〜9の熱可塑性エラストマー組成物は、比較例1〜8と対比して、適度な硬さと流動性を有し、オレフィン樹脂、金属のいずれとも接着性が良好で、離型性にも優れるため、射出成形による複合成形材料としても有用であることが分かる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車、電子材料、家電、電気機器、医療用具、包装資材、文具・雑貨用品等の各種成形品に有用であり、さらにはグリップ、チューブ、パッキン、ガスケット、クッション体、フィルム、シート等の各種部材に用いられる。

Claims (6)

  1. (A)スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b)とからなるブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)を酸変性させた、酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーと、
    (B)該酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、
    (b-1):重量平均分子量が50,000以下、酸変性量が1〜30質量%の酸変性オレフィン樹脂1〜100質量部、及
    (b-3):酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性オレフィン系熱可塑性エラストマー10〜200質量部
    からなる群より選ばれた少なくとも1種の成分とを含有してな、硬さがA95以下、酸変性量が0.5質量%以上、230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが1g/10min以上である、熱可塑性エラストマー組成物からなる溶着材
  2. 金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材に溶着させるための、請求項1記載の溶着材
  3. (A)スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b)とからなるブロック共重合体(z)の水素添加物(Z)を酸変性させた、酸変性量が0.5〜5質量%の酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマーと、
    (B)該酸変性水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、
    (b-2):230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが10g/10min以上、硬さがA90以下の高流動オレフィン系熱可塑性エラストマー10〜200質量部
    を含有してなり、硬さがA95以下、酸変性量が0.5質量%以上、230℃、2.16kgでのメルトマスフローレイトが1g/10min以上である、熱可塑性エラストマー組成物からなる溶着材であって、金属、セラミック、及びガラスからなる群より選ばれた少なくとも1種の部材と、金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂、及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材とを溶着させるための、溶着材。
  4. 金属、セラミック、ガラス、オレフィン樹脂及び極性樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の部材に溶着させた場合、該部材からの剥離強度が100N/25mm以上である、請求項2または3記載の溶着材
  5. シート状の形状を有する、請求項1〜いずれか記載の溶着材
  6. 請求項1〜いずれか記載の溶着材が部材に溶着してなる、複合成形体。
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