JP2002350610A - 薄膜型ndフィルタおよびその製造方法 - Google Patents
薄膜型ndフィルタおよびその製造方法Info
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Abstract
と共に量産性に優れた薄膜型NDフィルタ、およびその
製造方法を提供する。 【解決手段】 薄膜型NDフィルタ30は、高分子フィ
ルムの基板1上に密着層2を介して光学多層体5が設け
られたものである。光学多層体5はNb層3と誘電体層
4が交互に各2層、合計4層積層されたものであり、N
b層3は形成時の膜厚制御が比較的容易であるために、
透過率のばらつきが低減したものとなる。このNDフィ
ルタ30は、2つの蒸着源を備えた成膜装置によるロー
ルコーティングで作製することができる。蒸着源はそれ
ぞれ、Nb層3および誘電体層4を形成するためのもの
である。送りロールと巻取ロールを回転させながら各蒸
着源のスパッタリングを行うことによって、基板1上に
Nb層3,誘電体層4が連続的に形成される。
Description
る薄膜型NDフィルタ(Neutral Density filter)およ
びその製造方法に関する。
ル域の各波長をほぼ均等に透過するような非選択性の透
過率を有する光学フィルタであり、透過光量を減衰させ
る目的でデジタルカメラ等のレンズに装着して用いられ
る。例えば、晴天下などの光量が多い条件下において、
レンズを絞り込んでも露出過多になってしまうときに、
光量を制限してより低速でシャッタを切れるようにする
場合や、絞りを開放したいがシャッタ速度を最高にして
も露出過多になってしまうときに、光量を制限して絞り
を開けられるようにする場合に使用されるのが一般的で
ある。
材料を添加したガラスフィルタ等があるが、これらは可
視全域にわたって分光特性が均一となっていないなどの
問題があった。そのような問題を解決するものとして、
薄膜型のNDフィルタが知られている。例えば特開平5
−93811号公報には、Ti,CrまたはNiのいず
れかの金属膜と、MgF2 ,SiO2 のいずれかの誘電
体膜とを積層したNDフィルタが開示されている。図9
に、このNDフィルタの透過率および反射率の分光特性
を示す。
膜型NDフィルタでは誘電体膜と金属膜を合計9層から
13層も積層するために、反射率および透過率の可視域
での分光特性が大きくばらつき易く、特性の制御が難し
い。また、Ti,CrまたはNiからなる金属膜は、い
ずれも10nm以下の極薄いものであるうえ、透過率が
膜厚に対して非常に敏感であるために膜厚制御が困難で
あり、この点でも再現性良く平坦な透過率の分光特性が
得られないという問題があった。
ては、層数を7層程度とし、TiO,Ti2 O3 等のチ
タン酸化物を初めとする光吸収のある金属酸化物層を用
いた多層膜構造のNDフィルタが開示されている。上記
公報によれば、このNDフィルタは真空蒸着法により成
膜される。しかしながら、このような中間膜としての金
属酸化物層をスパッタ法で成膜するには、酸素の流量を
微妙に制御する必要があり、膜材質の安定化が難しいと
いった問題があった。
法を用いて、高分子等の可撓性基板の上にスパッタリン
グなどで多層膜を成膜することが最も好ましい。しか
し、高分子基板とこのような材質の光学薄膜とは良好な
密着性が得られないのが一般的である。そのうえ、スパ
ッタリングで成膜された薄膜には大きな応力が発生し、
より一層基板との界面に膜はがれやクラックが生じ易く
なっていた。従って、ロールコーティング法でのNDフ
ィルタの製造は困難であった。
ので、その目的は、再現性良く平坦な透過率分光特性が
得られると共に量産性に優れた薄膜型NDフィルタ、お
よびその製造方法を提供することにある。
フィルタは、基板上に、ニオブ(Nb)からなる層を含
んで形成される光学多層体を備えている。
基板上に、密着層を介して形成される光学多層体を備え
ている。
法は、光学多層体をロールコーティング法により形成す
るものである。
学多層体がニオブ(Nb)からなる層を含んで形成され
ているので、Nb層が比較的厚く形成されて所定の厚み
となる。
は、光学多層体が密着層を介して形成されているので、
基板と光学多層体との密着性が向上する。
法では、光学多層体をロールコーティング法により形成
するようにしたので、効率よく製造される。
て図面を参照して詳細に説明する。
1の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を
表している。この薄膜型NDフィルタ10は、ハードコ
ート層1aがコーティングされた基板1の上に光学多層
体5を設けたものである。
であるものが好ましい。また、量産性を考慮する場合に
は、後述するロールコーティングが可能となる可撓性を
有する基板であることが好ましい。可撓性のある基板
は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に
富むといった点においても優れている。ここでは、基板
1として、厚みが188μmのPET(ポリエチレンテ
レフタレート)フィルムを用いている。この他、基板1
としては、PC(ポリカーボネート),PO(ポリオレ
フィン),PES(ポリエチレンサルファイド)などの
高分子ポリマー系材料、薄膜ガラス等を用いてもよく、
着色された基板あるいは可撓性を有しない基板であって
も構わない。また、ハードコート層1aは、基板1をコ
ーティングして基板強度を向上させるためのものであ
り、例えば、6μmの厚みのアクリル樹脂を用いる。但
し、ハードコート層1aは必ずしも設けられる必要はな
い。
おり、Nb層3および誘電体層4が交互に積層されたも
のである。その層数は任意であるが、ここではNb層
3,誘電体層4が各2層、合計4層としている。
る。Nb層3の入射波長に対する屈折率および吸収率は
表1に示した値となり、これらに基づいて光学多層体5
の光学設計が行われる。
示すように変化する。比較のため、同図にはCrおよび
Tiからなる薄膜の透過率も載せている。ある所定の透
過率で比べると、Nb層3は常にCr,Ti膜よりも層
厚が厚い。例えば、Nb層3について、透過率を40%
とするには約16nm(Crでは約8nm、Tiでは約
12nm),10%とするには約40nm(Crでは約
20nm、Tiでは約30nm)の厚みで形成すればよ
い。一般に、このようなナノオーダーの薄膜を形成する
際の厚み制御は困難であり、層厚はできるだけ大きいほ
うが精度よく、ばらつきの少ない形成が容易となる。従
って、Nb層3は、形成時の膜厚制御が比較的容易であ
ることから、透過率のばらつきが低減したものとなる。
また換言すると、Nbは、制御性よく形成が可能な厚み
の下限が他の材料と同じであるならば、得られる透過率
の範囲がより広いので、光学多層体5を光学設計するう
えで取り扱いやすいという利点がある。
同時に光学特性が良好に制御されるために、光学多層体
5は、層数を多く重ねることなく所定の光学定数を得る
ことができる。
り、Nb層3に対してできるだけ低い屈折率を有する材
料で構成されていることが好ましい。そのような材料と
して、ここではSiO2 を用いているが、その他にも例
えば、MgF2 ,Al2 O3 等を用いることができる。
れらの総体としての光学多層体5が、所定の透過率と反
射率とを可視波長域(例えば400nm〜700nm程
度)で一定に保つように、予め決められる。そのうちN
b層3は、例えばAr雰囲気中におけるDCスパッタリ
ング法により形成される。上述したように、Nb層3は
比較的厚く成膜されるので、容易に所定の厚みに形成さ
れ、ばらつきも少ないものとなる。誘電体層4は、Ar
およびO2 雰囲気中でACスパッタリング法により形成
される。後者をAC(交流)で行うことで、反応性スパ
ッタリングにおいて生じる異常放電が防止でき、安定な
成膜が可能となる。なお、Nb層3および誘電体層4
は、フィルム状の基板1の上にロールコーティング法を
用いて形成することもできる。
学多層体5がNb層3を含んで形成されているので、4
層と少ない層数であっても、充分に平坦な透過率分光特
性を有している。
学多層体5がNb層3を含んで形成されるようにしたの
で、Nb層3が所定の厚みで形成され、その光学設計上
の自由度が大きくなると共に、少ない層数であっても良
好な平坦性を備えた透過率分光特性を得ることが可能と
なる。また、製造工程においては、Nb層3は膜厚制御
を容易に行うことができ、薄膜型NDフィルタ10の生
産性が向上すると共に、所定の透過率分光特性を再現性
良く得ることができる。また、光学多層体5が少ない層
数で形成され、製造工程が簡素化される。
の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を表
している。この薄膜型NDフィルタ20は、第1の実施
の形態と同様の基板1の上に、密着層2を介して光学多
層体7を設けたものである。なお、ここでは、第1の実
施の形態と同一の構成要素については同一の符号を付す
ことにする。
が188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)
フィルムを用いており、ハードコート層1aによりコー
ティングされている。
層2を介して設けられている。光学多層体7はNDフィ
ルタとして機能する多層膜であればよく、その構成や材
質を問わないが、ここではその一例として、金属層6お
よび誘電体層4が交互に積層されたものについて説明す
る。金属層6は、例えばCr,Tiなどの金属により構
成され、DCスパッタリング等により形成される。誘電
体層4は、金属層6に対してできるだけ低い屈折率を有
する誘電体材料で構成され、例えばArおよびO2 雰囲
気中のACスパッタリング法により形成される。また、
金属層6と誘電体層4の各層の厚みと層数は、総体とし
ての光学多層体7における所望の光学特性との兼ね合い
によって決定されるが、その層数はおおむね7層以上で
あり、層数が多いほど良好な光学特性が得られる場合が
多い。
の間に、両者の密着性を向上させると共に光学多層体7
に生じる応力を緩和するための密着層2が設けられてい
る。密着層2は、例えば厚みが2nmのケイ素(Si)
から構成される。密着層2の構成材料としてはSiが最
も好ましいが、その他にもTiなどの化学的活性を発揮
することができる材料を用いてもよい。また、その厚み
は1nm以上10nm以下の範囲内とすることが好まし
い。厚みが1nm未満では、十分な密着性が得られず
に、両者の界面に膜はがれやクラックを生じる虞があ
る。逆に、厚みが10nmより大きな値の場合には、透
過率が減少し、可視光領域で平坦な光学的特性を得られ
ない虞があるためである。こうした密着性、光学的特性
を考慮すると、密着層2の厚みは2nm程度であること
がより好ましい。なお、密着層2は、例えばDCスパッ
タにより形成される。
えば以下のような方法で製造することができる。
20の製造に用いる成膜装置の概略を示す構成図であ
る。この成膜装置100は、一方のロールから他方のロ
ールにフィルムを送る間にそのフィルムに加工を施す所
謂ロールコーティング法により、フィルム状の基板1の
上に成膜を行うものである。
(図示せず)に接続された排気バルブ42と、雰囲気ガ
スあるいは反応ガスを導入するためのガス導入バルブ4
3が設けられた真空チャンバ41によって、外気を遮断
することが可能となっている。真空チャンバ41の内部
には、フィルム状の基板1を連続して送り出すための送
りロール44,ガイドロール45、および、送り出され
た基板1を巻き取るための巻取ロール46が設けられ、
これらのロール間における基板1の走行経路を形成する
ためのキャンロール47a〜47eが、適宜に配置され
ている。更に、基板1の一面側に対して、その表面をク
リーニングするためのプラズマ電極48と、その表面上
に薄膜を形成するための蒸着源49Aおよび蒸着源49
Bとが備えられている。なお、ここでは、蒸着源49A
は金属層6を、蒸着源49Bは誘電体層4を形成するよ
うになっており、それぞれの材料に合わせてターゲット
が選ばれている。また、形成された薄膜の透過率を確認
するための光学モニタ50が、キャンロール47eの近
くに付設されている。
が回転して、これに巻回されている基板1が送り出され
ると、巻取ロール46が回転し、図のような経路をたど
った基板1を巻き取るようになっている。その際、送り
ロール44と巻取ロール46の回転速度を調節すること
で、両者間における基板1の走行速度を制御することが
できる。また、一旦送りロール44から送り出された基
板1は、キャンロール47a〜47c、ガイドロール4
5、キャンロール47d,47eを介して巻取ロール4
6に巻き取られる。この走行経路において、基板1はそ
の一面側に順次以下の処理が施される。まず、プラズマ
電極48が発生させるプラズマ放電によって、表面洗浄
が行われる。次いで、ガイドロール45の蒸着源49A
と対向する位置に達すると、ここで、蒸着源49Aのス
パッタリングによって金属層6が形成される。更に、ガ
イドロール45の蒸着源49Bと対向する位置に達する
と、ここで、蒸着源49Bのスパッタリングによって誘
電体層4が形成される。こうして基板1の上には金属層
6と誘電体層4が順に形成されるが、それと共に、送り
ロール44と巻取ロール46を回転させながら成膜する
ことによって、これらの層をフィルム基板1の上に連続
的に形成することができる。なお、成膜された基板1
は、光学モニタ50によって透過率が逐次監視されてい
る。
らなる帯状の基板1を用意する。基板1の上には、予め
ハードコート層1aが均一に塗布されている。この基板
1の上に、例えば、膜厚2nmのケイ素(Si)をDC
スパッタにより成膜し、密着層2を形成する。
ロール44に巻回し、基板1が上述の経路に沿って巻取
ロール46まで走行するように調整する。更に、真空チ
ャンバ41を密閉したうえで、その内部を排気バルブ4
2を通じて真空引きした後、ガス導入バルブ43を開い
て例えばArやO2 などのガスを導入する。
を発生させ、蒸着源49Aおよび蒸着源49Bにおいて
それぞれ蒸着を開始させておき、この状態で送りロール
44と巻取ロール46を回転させ、送りロール44に巻
回されている基板1を送り出すと同時に巻取ロール46
で巻き取るようにする。その際、蒸着源49Aおよび蒸
着源49Bへの投入電力は(蒸着速度を決めるため)、
基板1の走行速度との間で適宜調整するようにする。
a,47bの間を走行するときに表面をプラズマ洗浄さ
れ、キャンロール47cを介してガイドロール45の蒸
着源49Aと対向する位置に達すると、表面にスパッタ
リングにより金属層6が形成される。更に、ガイドロー
ル45の蒸着源49Bと対向する位置に達すると、金属
層6の上に、スパッタリングにより誘電体層4が形成さ
れる。この後、基板1は、光学モニタ50により透過率
のチェックを受け、キャンロール47d,47eを介し
て巻取ロール46に巻き取られるが、収容される基板1
には、一面側に密着層2,金属層6,誘電体層4が順に
形成されている。
タリングによって成膜されるために通常ならば応力を生
じるが、基板1との間に設けた密着層2が応力を緩衝
し、その影響を防止するようになっている。また、予め
密着層2を形成して金属層6,誘電体層4を形成するこ
とで、これらの基板1との間の密着性が高まる。よっ
て、成膜された基板1では、ロールに巻き取られて曲げ
られたり張力を受けたりしても、金属層6,誘電体層4
が剥がれたりクラックが生じることが少ない。
ら、一旦、プラズマ電極48,蒸着源49Aおよび蒸着
源49Bを停止させ、送りロール44に基板1を巻き戻
す。なお、送りロール44と巻取ロール46を互換でき
るようにし、巻取り後に取り外した巻取ロール46を送
りロール44位置に取り付けるようにしてもよい。次
に、プラズマ電極48,蒸着源49Aおよび蒸着源49
Bを再び稼動させ、上記の工程と同様にして基板1上に
金属層6,誘電体層4を形成する。こうして、金属層6
および誘電体層4を一度に形成する工程を繰り返すこと
で、容易に金属層6と誘電体層4を所望の層数で周期的
に積層することができる。
および誘電体層4が交互に積層された光学多層体7が形
成され、薄膜型NDフィルタ20が製造される。
層体7との間に密着層2を設けるようにしたので、光学
多層体7を基板1に密着させ、脱落や剥離等を防止する
ことができる。これに加えて、基板1を可撓性を有する
高分子フィルムとしたので、従来は難しかったロールコ
ーティング法を用いたスパッタ成膜による製造が実現可
能となり、量産性を向上させることができる。
の実施の形態に係る薄膜型NDフィルタの概略構成を表
している。この薄膜型NDフィルタ30は、基板1と光
学多層体5との間に密着層2を設けたことを除いて第1
の実施の形態に係るNDフィルタ10と同様に構成され
ている。よって、第1の実施の形態と同一の構成要素に
ついては同一の符号を付して説明を省略する。
が188μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)
フィルムを用いており、ハードコート層1aによりコー
ティングされている。また、基板1の上に設けられる光
学多層体5は、Nb層3および誘電体層4が交互に各2
層、合計4層積層されたものである。第1の実施の形態
で説明したように、Nb層3は比較的厚く成膜されるの
で、容易に所定の厚みに形成され、ばらつきも少ないも
のとなる。よって、この光学多層体5は、Nb層3にお
いて膜厚と同時に光学特性が良好に制御されるため、4
層と少ない層数であっても、充分に平坦な透過率分光特
性を有している。
の間に、両者の密着性を向上させると共に光学多層体5
に生じる応力を緩和するための密着層2が設けられてい
る。これにより、両者の界面に膜はがれやクラックが生
じることが防止される。
ールコーティング法を好適に用いることができる。その
理由は、基板1が可撓性を有した高分子フィルムであ
り、密着層2が設けられているために、剥がれやクラッ
クが少ない状態でロールに巻き取ることができるからで
ある。また、Nb層3は、比較的厚く形成されるために
成膜時の膜厚制御が容易であり、基板1が走行中であっ
ても制御性が良く、層数が少ないために光学多層体5総
体としての厚みのばらつきも少なくて済む。具体的に
は、光学多層体5を第2の実施の形態と同様にして成膜
して、NDフィルタ30を製造することができる。その
際、成膜装置100の蒸着源49AでNb3を、蒸着源
49Bで誘電体層4を形成するようにすればよく、たっ
た2回の操作で光学多層体5が形成される。
Dフィルタ30において、光学多層体5がNb層3を含
んで形成され、かつ、基板1と光学多層体5との間に密
着層2を設けるようにしたので、第1の実施の形態およ
び第2の実施の形態と同様の効果が得られる。従って、
両方の実施の形態における利点を兼ね備えたNDフィル
タが得られる。
光学多層体が、Siからなる密着層を介して基板上に設
けられた薄膜型NDフィルタについて、可視域での透過
率が30%一定、かつ、反射率が2%以下となるように
表1の光学定数を基に光学設計を行った。その結果得ら
れた各層の層厚を表2に、光学特性の計算値を図6に示
す。
NDフィルタを作製し、その可視域における光学特性を
測定した。その結果を図7に示す。図6と図7から、作
製されたNDフィルタの光学特性はほぼ計算値に等し
く、各層が設計通りの厚みで作製されたことがわかる。
また、その透過率は30%を基準に±1.9%の範囲内
にあって平坦性に優れ、反射率も1.9%以下と良好な
特性を示した。更に表2と併せ見て、Nb層とSiO2
層からなるNDフィルタでは、このように良好な特性が
高々4層積層するだけで得られることがわかった。
光学多層体が、Siからなる密着層を介して基板上に設
けられた薄膜型NDフィルタについて、可視域での透過
率が30%一定、かつ、反射率が2%以下となるよう
に、表3に示したCrの光学定数を用いて設計を行っ
た。その結果得られた各層の層厚を表4に、光学特性の
計算値を図8に示す。
の方法で光学設計すればよいことがわかる。但し、図8
に示したように、このフィルタの透過率は波長550n
mを中心にV字型に落ち込んでおり、可視域では30%
を基準に±4%程度変動している。反射率も、500n
m〜550nmの波長域で低く、波長がこの領域からず
れるに従って高い値となっている。なお、本実施例では
Cr層とSiO2 層を積層させたが、この場合、4層〜
8層程度の層数では光学特性の計算値はほとんど変化が
みられなかった。
iO2 層と組み合わせて光学多層体とする層(金属層)
が、実施例1ではNbであり、実施例2ではCrを用い
た点である。なお、これら実施例1,2のNDフィルタ
は密着層がない場合も、先に示したものとほぼ同様な光
学特性を有する。よって、以上に示した実施例1と実施
例2における光学特性の差異は、金属層の材料に起因し
たものと考えられ、両者を比較することにより、Nb層
を含んだ光学多層体が優れた光学特性を少ない層数で実
現可能であることが示唆される。
発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施
例に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、成膜装置100は蒸着源
49A,蒸着源49Bが設けられ、一度のロールコーテ
ィングで2層形成するものとして説明したが、これに限
らずロールコーティング法により成膜するものであれば
よく、蒸着源49の数や種類などは任意である。具体的
には、光学多層体の層毎に成膜条件が異なる場合等に、
1つの真空チャンバ31に蒸着源49を1つ設け、一回
のロールコーティングで1層形成するようにしてもよ
い。逆に、1つの真空チャンバ31に蒸着源49を複数
設けて、一回のロールコーティングで多層を形成するよ
うにしてもよい。また、1つの真空チャンバ31を備え
る成膜装置100について説明したが、真空チャンバを
いくつかの領域に仕切り、その間にフィルム状の基板を
走行させるようにしてもよい。このような成膜装置10
0の変形により、より少ない工程で光学多層体を形成す
ることが可能である。
は金属層6と誘電体層4とを成膜装置100を用いて形
成するようにしたが、密着層2についても同様に蒸着源
49を設け、成膜装置100内でロールコーティングに
よって形成するようにしてもよい。
パッタリング用のものとしたが、真空蒸着用のものとし
ても構わない。但し、スパッタリング法のほうが成膜速
度が速く、均一な層を形成することができるので好まし
い。このようにロールコーティング法やスパッタリング
法を用いる場合には、上述したように本発明の密着層は
応力を緩衝するので、予め基板上に設けることが好まし
い。
項4のいずれか1項に記載の薄膜型NDフィルタによれ
ば、基板上に、ニオブ(Nb)からなる層を含んで形成
される光学多層体を備えるようにしたので、Nb層が所
望の透過率を得るために比較的厚く形成されると共に光
学多層体の層数が少なくて済む。従って、製造過程にお
いてその膜厚制御が容易となり、成膜数が少ないため
に、生産性の向上を図ることができる。また同時に、光
学特性の向上が可能となる。
か1項に記載のに記載の薄膜型NDフィルタによれば、
光学多層体と基板との間に密着層が設けられているの
で、両者の界面における密着性が向上し、光学多層体の
脱落や剥離等を防止することができる。また、それゆえ
にロールコーティング法を用いた成膜、特にスパッタリ
ングによる光学多層体の形成が可能となり、量産性を向
上させることができる。
れか1項に記載の薄膜型NDフィルタの製造方法によれ
ば、光学多層体をロールコーティング法を用いて形成す
るようにしたので、量産性を飛躍的に向上させることが
できる。
ィルタの構成図である。
膜の透過率と膜厚の関係を示す図である。
ィルタの構成図である。
面から見た概略図である。
ィルタの構成図である。
分光特性の計算値を示した図である。
分光特性の実測値を示した図である。
分光特性の計算値を示した図である。
図である。
5,7…光学多層体、6…金属層、10,20,30…
薄膜型NDフィルタ、41…真空チャンバ、42…排気
バルブ、43…ガス導入バルブ、44…送りロール、4
5…ガイドロール、46…巻取ロール、47…キャンロ
ール、48…プラズマ電極、49A,49B…蒸着源、
50…光学モニタ、100…成膜装置
Claims (17)
- 【請求項1】 基板と、この基板上に、ニオブ(Nb)
からなる層を含んで形成される光学多層体とを備えたこ
とを特徴とする薄膜型NDフィルタ。 - 【請求項2】 前記光学多層体は、Nbからなる層と誘
電体層とが周期的に積層されて形成されていることを特
徴とする請求項1に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 【請求項3】 前記誘電体層として二酸化ケイ素(Si
O2 )からなる層が用いられていることを特徴とする請
求項2に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 【請求項4】 更に、前記光学多層体は、前記Nbから
なる層と誘電体層とが交互に2層づつ積層された合計4
層で構成されることを特徴とする請求項3に記載の薄膜
型NDフィルタ。 - 【請求項5】 基板と、 この基板上に、密着層を介して形成される光学多層体と
を備えたことを特徴とする薄膜型NDフィルタ。 - 【請求項6】 前記密着層はケイ素(Si)からなるこ
とを特徴とする請求項5に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 【請求項7】 前記密着層は、1nm以上10nm以下
の範囲の厚みであることを特徴とする請求項5に記載の
薄膜型NDフィルタ。 - 【請求項8】 前記基板は、可撓性を有していることを
特徴とする請求項5に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 【請求項9】 前記基板は、高分子材料からなることを
特徴とする請求項8に記載の薄膜型NDフィルタ。 - 【請求項10】 前記光学多層体はNbからなる層を含
むことを特徴とする請求項5に記載の薄膜型NDフィル
タ。 - 【請求項11】 基板上に光学多層体を備えた薄膜型N
Dフィルタを製造する方法であって、 前記光学多層体を、ロールコーティング法を用いて形成
することを特徴とする薄膜型NDフィルタの製造方法。 - 【請求項12】 前記光学多層体を、スパッタリング法
により形成することを特徴とする請求項11に記載の薄
膜型NDフィルタの製造方法。 - 【請求項13】 前記光学多層体を、Nbからなる層を
含んで形成することを特徴とする請求項11に記載の薄
膜型NDフィルタの製造方法。 - 【請求項14】 前記光学多層体を形成する前に、前記
基板上に密着層を形成することを特徴とする請求項11
に記載の薄膜型NDフィルタの製造方法。 - 【請求項15】 前記密着層をロールコーティング法を
用いて形成することを特徴とする請求項14に記載の薄
膜型NDフィルタの製造方法。 - 【請求項16】 前記密着層をスパッタリング法により
形成することを特徴とする請求項14に記載の薄膜型N
Dフィルタの製造方法。 - 【請求項17】 前記密着層をケイ素(Si)により形
成することを特徴とする請求項14に記載の薄膜型ND
フィルタの製造方法。
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