JP2006058854A - 吸収型多層膜ndフィルター - Google Patents

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Abstract

【課題】 平坦な透過率分光特性が再現性良く得られしかも量産性に優れた吸収型多層膜NDフィルターを提供すること。
【解決手段】 この吸収型多層膜NDフィルターは、基板1と、ニッケル(Ni)を主成分とする金属層とSiO、Al若しくはこれ等混合物の誘電体層が基板1上に交互に積層されて成る光学多層体7とを備える構造を有しており、光減衰層としての上記金属層に、可視光域における分光透過率の波長依存性が小さいNi系金属材料を用いているため波長に対して平坦な透過率減衰が得られるNDフィルターを実現することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、基板と、この基板上に金属層と誘電体層が交互に積層されて成る光学多層体とを備える吸収型多層膜NDフィルター(Neutral Density Filter)に係り、特に、平坦な透過率分光特性が再現性良く得られ、しかも量産性に優れた吸収型多層膜NDフィルターの改良に関するものである。
NDフィルターとは、光線の可視スペクトル域における各波長をほぼ均等に透過するような非選択性の透過率を有する光学フィルターで、透過光量を減衰させる目的でデジタルカメラ等のレンズに装着して用いられる。例えば、晴天下等の光量が多い条件下において、レンズを絞り込んでも露出過多になってしまうときに、光量を制限してより低速でシャッタを切れるようにする場合や、絞りを開放したいがシャッタ速度を最高にしても露出過多になってしまうときに、光量を制限して絞りを開けられるようにする場合に使用されるのが一般的である。
ところで、安価なNDフィルターには、ガラスに光吸収材料を添加したガラスフィルター等がある。しかし、これ等ガラスフィルターは可視全域にわたって分光特性が均一となっていない等の問題があった。
このような問題を解決するものとして吸収型多層膜のNDフィルターが知られている。例えば、特許文献1には、誘電体膜と金属膜とを含みかつ単独で用いたときでも反射防止効果を有している二つの多層膜を、他の誘電体膜を中心にしかつ対向するようにして上下から合わせて成る光吸収膜が記載されている。
また、誘電体膜と金属膜の材料の種類に言及した従来技術として、例えば、特許文献2には、TiとCrの金属膜とMgFの誘電膜とを交互に積層して成る吸収性薄膜が記載され、また、特許文献3には、Nbの金属膜とSiOの誘電体膜とを交互に積層して成る薄膜型NDフィルターが開示されている。
更に、特許文献4には、層数を7層程度とし、TiO、Ti等のチタン酸化物を始めとする光吸収性のある金属酸化物層を用いた多層膜構造の薄膜型NDフィルターが開示されている。
特開昭57−195207号公報 特公昭55−47361号公報 特開2002−350610号公報 特開平7−63915号公報 特開2000−96167号公報
しかし、特許文献1に記載の光吸収膜においては金属膜を二層しか使用していないため、金属膜として適用する材料の種類如何により、分光透過率の波長依存性を小さくしてかつ反射率を抑制することは非常に難しい問題が存在し、更に、上記金属膜は数nmと薄く、酸化され易い膜であるため、製造工程途中における熱酸化によって分光透過率が設計値より高くなってしまう問題が存在した。
また、特許文献2や特許文献3に記載された吸収性薄膜や薄膜型NDフィルターの場合、Ti、CrまたはNbで構成される金属膜の可視光域における分光透過率の波長依存性が大きいため波長に対して平坦な透過率減衰を得ることが困難である問題が存在し、また、誘電体層として用いたMgF材料は大気中での腐食や劣化が激しい問題も存在した。
更に、特許文献4記載の薄膜型NDフィルターにおいては、チタン酸化物を始めとする光吸収性のある金属酸化物層を真空蒸着法により成膜している。
しかしながら、中間膜としての金属酸化物層(TiO、Ti)を真空蒸着法あるいはスパッタリング法を用いて成膜するには、真空蒸着法、スパッタリング法のいずれにおいても酸素の流量を微妙に制御する必要があり、膜材質の安定化が難しいといった問題があった。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、平坦な透過率分光特性が再現性良く得られ、しかも量産性に優れた吸収型多層膜NDフィルターを提供することにある。
このような課題を解決するため、本発明者等が多くの吸収型多層膜NDフィルターの構成材料を検討した結果、基板上に、ニッケル(Ni)を主成分とする金属層とSiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかの誘電体層とを交互に積層させて成る光学多層体を具備させた場合、平坦な透過率分光特性が再現性良く得られ、しかも量産性に優れた吸収型多層膜NDフィルターが得られることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
基板と、ニッケル(Ni)を主成分とする金属層とSiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかの誘電体層が上記基板上に交互に積層されて成る光学多層体とを備えることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
Niを主成分とする上記金属層が、Ti、Al、V、W、Ta、Siから選択された1種類以上の元素を添加したNi系合金材料で構成されていることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項2記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
Ti元素の添加割合が5〜15重量%、Al元素の添加割合が3〜8重量%、V元素の添加割合が3〜9重量%、W元素の添加割合が18〜32重量%、Ta元素の添加割合が5〜12重量%、Si元素の添加割合が2〜6重量%の範囲にそれぞれ設定されていることを特徴とする。
次に、請求項4に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
上記基板が樹脂板若しくは樹脂フィルムにより構成されていることを特徴とし、
請求項5に係る発明は、
請求項4記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
上記樹脂板若しくは樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルムの単体で構成されるか、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルム単体とこの単体の少なくとも片面を覆うアクリル系有機膜との複合体で構成されていることを特徴とする。
また、請求項6に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
基板側から順に積層された金属層、誘電体層、金属層、誘電体層の4層で上記光学多層体が構成されていることを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項1、2、3または6に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
上記金属層の各膜厚が2〜30nmの範囲にそれぞれ設定されていることを特徴とし、
請求項8に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
Si、SiO(但しx≦2)、SiN(但しx≦1)、Ti、TiO(但しx≦2)またはTiN(但しx≦1)により構成された密着層が上記基板と光学多層体との間に設けられていることを特徴とし、
また、請求項9に係る発明は、
請求項1記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターを前提とし、
400〜800nmの可視域全域において反射率が5%以下、かつ、透過率の変動幅が10%以内であることを特徴とする。
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターによれば、基板と、ニッケル(Ni)を主成分とする金属層とSiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかの誘電体層が上記基板上に交互に積層されて成る光学多層体とを備える構造で、光減衰層としての上記金属層に、可視光域における分光透過率の波長依存性が小さく、しかも酸化され難く酸化による分光透過率の変化が小さいNi系金属材料を用いているため、波長に対して平坦な透過率減衰が得られるNDフィルターを実現することができる。
特に、請求項6に係る吸収型多層膜NDフィルターによれば、光学多層体の層数が4層と少なくて済むため、製造過程においてその膜厚の制御が容易となり、かつ、成膜数が少ないため生産性の向上を図ることができると共に、光学特性の向上も図ることが可能となる。
また、請求項8に係る吸収型多層膜NDフィルターによれば、Si、SiO(但しx≦2)、SiN(但しx≦1)、Ti、TiO(但しx≦2)またはTiN(但しx≦1)により構成された密着層が基板と光学多層体との間に設けられるので、両者の界面における密着性が向上して光学多層体の脱落や剥離等を防止することができ、また、それゆえに乾式ロールコーティング法を用いた成膜、特にスパッタリングによる光学多層体の形成が可能となり量産性を向上させることができる。
以下、本発明の吸収型多層膜NDフィルターについて図面を用いて詳細に説明する。
まず、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターは、基板と、ニッケル(Ni)を主成分とする金属層とSiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかの誘電体層が上記基板上に交互に積層されて成る光学多層体とを備えることを特徴としている。
図1〜図3に本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの具体例を示す。すなわち、この吸収型多層膜NDフィルターは、ハードコート層1aがコーティングされた基板1の上に密着層2を介して光学多層体7を設けたものである。
図1と図2に示された吸収型多層膜NDフィルターはハードコート層1aが基板の片面に設けられた構造で、図1はハードコート層1aを設けた面側に密着層2と光学多層体7を設けた構造である。また、図2はハードコート層1aを設けた面の反対側に密着層2と光学多層体7を設けた構造である。また、図3に示された吸収型多層膜NDフィルターは、基板の両面にハードコート層1aが設けられており、その一方の面に密着層2と光学多層体7が設けられた構造である。
上記基板1としてその材質は特に限定されないが、透明であるものが好ましく、量産性を考慮する場合、後述する乾式のロールコーティングが可能となる可撓性を有する基板であることが好ましい。可撓性のある基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むといった点においても優れている。特に、基板として、樹脂板若しくは樹脂フィルムが好ましい。
上記基板を構成する具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルムの単体が挙げられ、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルム単体とこの単体の片面または両面を覆うアクリル系有機膜との複合体が挙げられる。特に、ノルボルネン樹脂材料については、代表的なものとして、日本ゼオン社のゼオノア(商品名)やJSR社のアートン(商品名)などが挙げられる。
また、上記ハードコート層1aは基板1にコーティングされて基板強度を向上させるもので、例えばアクリル樹脂を用い、基板上に例えば5μmの厚さでコーティングして形成される。但し、ハードコート層1aを必ずしも設ける必要はない。
また、図1〜図3に示された吸収型多層膜NDフィルターにおいては、上記基板1と光学多層体7との間に、両者の密着性を向上させかつ光学多層体7に生じる応力を緩和させる密着層2が設けられている。密着層2は、Si、SiO(但しx≦2)、SiN(但しx≦1)、Ti、TiO(但しx≦2)またはTiN(但しx≦1)により構成されることが好ましい。密着層の厚みは1nm以上10nm以下の範囲内とすることが好ましい。1nm未満では、十分な密着性が得られず、両者の界面に膜はがれやクラックを生じる恐れがあるからである。他方、厚みが10nmを越えると透過率が減少し、可視光領域で平坦な光学的特性が得られなくなる恐れがあるためである。そして、上記密着性や光学的特性等を考慮した場合、密着層2の厚みは2nm程度であることがより好ましい。尚、密着層2は、例えば、DCスパッタリング法により形成することができる。
次に、上記光学多層体7は基板1の上に設けられ、ニッケル(Ni)を主成分とする金属層とSiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかの誘電体層とが交互に積層されて形成されている。
ここで、ニッケル(Ni)を主成分とするNi系金属材料で構成される上記金属層は、Ti、Al、V、W、Ta、Siから選択された1種類以上の元素が添加されたNi系合金材料で構成されることが好ましい。
この理由の詳細については後述するが、概略すると以下の通りである。すなわち、スパッタリング法を用いて金属層等を成膜する場合、Niターゲットの連続使用に伴いターゲットの厚みが減少してくると、ターゲットの薄くなった部分においてプラズマ空間の漏洩磁界が強くなってくる。そして、プラズマ空間の漏洩磁界が強くなると、放電特性(放電電圧、放電電流等)が変化して成膜速度が変化する。つまり、生産時に、同一のNiターゲットを連続して長時間使用すると、Niターゲットの消耗に伴いNi膜の成膜速度が変化する問題が生じ、特性の揃った吸収型多層膜NDフィルターを安定して生産することが難しくなるからである。この問題を回避するには、上述したようにTi、Al、V、W、Ta、Siから選択された1種類以上の元素が添加されたNi系合金材料を用いて上記金属層を構成すればよい。
次に、図4は上記光学多層体7の構成を示しており、この光学多層体7は、Niを主成分とする金属層3、5と、SiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかの誘電体層4、6とが交互に積層されて成るものである。これ等層数は任意であるが、図4においては、金属層3、5、誘電体層4、6が共に2層の合計4層から成る光学多層体7を示している。
ところで、純Niで構成された膜厚6.5nmのNi薄膜について波長400〜1000nmにおける透過率を実験で調べた結果を図5に示す。また、比較のため、図5には同じ膜厚のCr薄膜、Ta薄膜およびNb薄膜の透過率も載せている。
そして、図5のグラフ図から明らかなように、Ni薄膜における透過率の波長依存性は、Cr薄膜、Ta薄膜およびNb薄膜と比べて小さいことが確認される。すなわち、波長400〜800nmにおけるCr薄膜、Ta薄膜およびNb薄膜の透過率の変動幅は、それぞれ、14.7%、13.5%および11.8%であるが、Ni薄膜における透過率の変動幅は1.5%と低い。
また、図8は、Ni、Ti、Cr、Ta並びにNbの酸化物における標準自由エネルギーと温度の関係を示すグラフ図で、一般にエリンガム図と呼ばれる。そして、図8のグラフ図において、酸化物の標準自由エネルギーが低い程、すなわち直線がグラフ図の下側に位置する方が酸化され易い金属であることを示しており、上記金属の中でNiが最も酸化され難い金属であることが確認される。従って、Ni薄膜を適用した場合、NDフィルター作製工程中における主に熱による酸化若しくは実際に使用する上での経時的な酸化による分光透過率の変化が最も小さいことが期待される。
そして、可視域における透過率の波長依存性が小さいNiを光吸収層(金属層)として用いた場合、可視光域における分光透過率の波長依存性が小さいため波長に対して平坦な透過率減衰を得ることができ、かつ、NDフィルターの作製中並びに使用中の酸化による特性劣化が起こり難く、単層膜で吸収型NDフィルターを実現することが可能となる。
但し、吸収型NDフィルター表面の反射は迷光となり、デジタルカメラ等の画質に悪影響を及ぼす。このため、吸収型NDフィルター表面にも反射を防ぐ効果を持たせるため多層膜で構成することになる。
このように図1〜図3に示された吸収型多層膜NDフィルターにおいては、Niを主成分とする金属層3、5の膜厚が良好に制御され、しかも、Ni薄膜の可視域における透過率の波長依存性が小さくかつ酸化による分光透過率の変化も小さい。従って、金属層と誘電体層とで構成される光学多層体7は、層数を多く重ねることなく、可視光に対する平坦な透過率の減衰を経時的劣化を引き起こすことなく安定して得ることができる。
尚、上記誘電体層4、6は誘電体から成る薄膜で、Niを主成分とする金属層3、5に対してできるだけ低い屈折率を有する材料で構成されることが好ましく、このような誘電体材料として、上述したようにSiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかを用いることができる。また、光学多層体の反射防止効果を持たせるように誘電体層4、6の膜厚を制御することが好ましい。
そして、Niを主成分とする金属層3、5とSiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかの誘電体層4、6の各厚みは、上記光学多層体7が所定の透過率と反射率とを可視波長域(例えば400nm〜800nm程度)で一定に保つように予め設定されており、上記金属層3、5の各厚みは2〜30nmであることが特に好ましい。この吸収型多層膜NDフィルターにおいては、上記光学多層体7が、Niを主成分とする金属層3、5を含んで形成されているので、例えば4層と少ない層数であっても充分に平坦な透過率分光特性を有している。
次に、本発明に係る上記光学多層体は、例えばスパッタリング法で作製できる。
スパッタリング法は、蒸気圧の低い材料を用いて基板上に膜を形成する場合や、精密な膜厚制御が必要とされる際に有効な薄膜形成手法であり、操作が非常に簡便であることから広範に利用されている。そして、スパッタリング法は、蒸着法など他の成膜プロセスと比較し、膜と基板または異種膜間の密着性、膜表面の平滑性、膜の緻密性などの面に優れているためNDフィルターの作製において非常に有利である。一般には、約10Pa以下のアルゴンガス圧のもとで、基板を陽極とし、膜原料となるターゲットを陰極とし、これらの間にグロー放電を起こさせてアルゴンプラズマを発生させ、かつ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のターゲットに衝突させてターゲット成分の粒子をはじき飛ばし、この粒子を基板上に堆積させて成膜する手法である。
上記スパッタリング法はアルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波(RF)プラズマを用いるものは高周波スパッタリング法、直流プラズマを用いるものは直流スパッタリング法という。また、ターゲットの裏側にマグネットを配置して、アルゴンプラズマをターゲット直上に集中させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの衝突効率を上げて成膜する方法をマグネトロンスパッタリング法という。
そして、本発明に係る光学多層体中のNiを主成分とする金属層は、例えばAr雰囲気中においてNi系金属のターゲットを用いた直流マグネトロンスパッタリング法により形成される。また、誘電体層は、例えばArおよびO雰囲気中でSiターゲットを用いた高周波マグネトロンスパッタリング法により形成される。上記誘電体層を高周波スパッタリング法で行うことで、反応性スパッタリングにおいて生じる異常放電が防止でき、安定な成膜が可能となる。
ところで、純Ni材料は強磁性体であるため、上記金属層を直流マグネトロンスパッタリング法で成膜する場合、ターゲット裏側に配置されてターゲットと基板間のプラズマに作用させるマグネットからの磁力が、Niターゲット材料で遮蔽されて表面に漏洩する磁界が弱くなり、プラズマを集中させて効率よく成膜することが難しくなる。これを回避するには、ターゲット裏側に配置される上記マグネットの磁力を強くしたカソード(強磁場カソード)を用い、Niターゲットを通過する磁界を強めてスパッタリング成膜を行うことが好ましい。
但し、このような方法を採った場合でも、生産時には以下に述べるような別の問題が生ずることがある。すなわち、Niターゲットの連続使用に伴ってターゲットの厚みが減少していくと、上述したようにターゲットの厚みが薄くなった部分ではプラズマ空間の漏洩磁界が強くなっていく。そして、プラズマ空間の漏洩磁界が強くなると、放電特性(放電電圧、放電電流等)が変化して成膜速度が変化する。つまり、生産時に、同一のNiターゲットを連続して長時間使用すると、Niターゲットの消耗に伴いNi膜の成膜速度が変化する問題が生じ、特性の揃った吸収型多層膜NDフィルターを安定して生産することが難しくなる。この問題を回避するには、上述したようにTi、Al、V、W、Ta、Siから選択された1種類以上の元素が添加されたNi系合金材料を用いて金属層を構成すればよい。
そして、本発明においてはTi元素を5〜15重量%の範囲で含むNi系材料を用いることが好ましい。Ti量の下限を5重量%とした理由は、5重量%以上含ませることによって強磁性特性を極端に弱めることができ、磁力の低い通常のマグネットを配置したカソードでも直流マグネトロンスパッタリング成膜を行うことができるからである。また、ターゲットによる磁界の遮蔽能力が低いため、ターゲット消耗に依存するプラズマ空間の漏洩磁界の変化も小さく、一定の成膜速度を維持でき、安定して成膜することができるからである。また、Ti量の上限を15.0重量%とした理由は、15.0重量%を超えてTiが含有されると多量の金属間化合物を形成し、透過率における波長依存性が小さい材料ではなくなってしまう恐れがあるからである。また、Al元素、V元素、W元素、Ta元素、Si元素の添加量も同様な理由により決定され、これ等Al元素、V元素、W元素、Ta元素、Si元素を添加する場合は、Al元素の添加割合が3〜8重量%、V元素の添加割合が3〜9重量%、W元素の添加割合が18〜32重量%、Ta元素の添加割合が5〜12重量%、Si元素の添加割合が2〜6重量%の範囲で添加したNi系合金材料とすることが好ましい。
但し、Niに添加する元素が2種類以上の場合、各元素の添加量上限値より低く調整して多量の金属間化合物を形成しないようにすることが好ましい。例えば、TiとSiの2種類の元素をNiに添加する場合、7.5重量%のTi添加量に対しSi元素の添加量が5重量%を超えると、これ等添加量の数値が上述した組成範囲(Ti元素が5〜15重量%、Si元素が2〜6重量%)であっても、金属間化合物の形成が著しくなることがある。
尚、上述したTi、Al、V、W、Ta、Si等の元素以外に、Niの強磁性特性を弱められる添加元素としてCu、Cr等が挙げられる。しかし、Cu元素を添加元素とした場合、上述したTi、Al、V等の元素と比較し、酸化物膜に対するNi−Cu膜の密着性が劣る欠点がある。例えば、NDフィルターとは別分野である電極材料に用いられるターゲット材料に関する特許文献5では、酸化物であるセラミックス基板との密着性に問題があるとしてNi−Cu系合金に代えてNi−Ti系合金のターゲットが提案されている。従って、本発明における添加元素としてCu元素は適さない材料である。また、Cr元素は上記密着性については問題ないが、環境に悪影響を与えるため好ましくない。
また、上記Niを主成分とする金属層と、SiO、Al若しくはこれ等混合物の誘電体層は、フィルム状の基板1の上に乾式ロールコーティング法を用いて形成することも可能である。
そして、光学多層体について上述したような構成を採用することにより、400〜800nmの可視域全域において反射率が5%以下、かつ、透過率の変動幅が10%以内である吸収型多層膜NDフィルターを提供することが可能となる。
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。
7.5重量%のTiを含むNi金属層とSiO層が交互に積層された合計4層から成る光学多層体が、SiO(x<2)から成る密着層を介し基板上に形成された表1に示す構造の吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
尚、Ni系材料ターゲットには、7.5重量%のTiを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]を用いた。7.5重量%のTiを含むこのNiターゲットは、非磁性用カソード上に設置しても安定して放電することが可能であった。
Figure 2006058854
具体的には、厚さ5μmのアクリル製ハードコート付PETフィルム[東洋紡社製]上に、スパッタリング装置(ULVAC社製)を用いて表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
この吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率を自記分光光度計装置[日立製作所製、U4100]を用いて測定した。測定結果を図6(A)(B)に示す。
そして、図6(A)(B)のグラフ図に示されたデータから、可視域(波長400〜800nm)での透過率は32〜40%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を有していることが確認された。また、可視域における反射率は4%以下であり反射防止効果も良好であった。尚、これ等の光学特性は、図2と図3に示す構造のフィルム基板が用いられた吸収型多層膜NDフィルターにおいても同様に得られることも確認された。
更に、7.5重量%のTiを含む上記NiターゲットからのNi−Ti薄膜の成膜速度の変化について、ターゲット使用初期とターゲットエロージョン(ターゲットがスパッタリングによって減少した領域)深さが5mmになった時とで比較したところ、5%程度と小さかった。
従って、7.5重量%のTiを含む上記Niターゲットを用いて製造される実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターは、ターゲットを連続して使い切るまで一定の成膜速度を維持して生産されるため量産性にも優れている。
上記Ni系材料ターゲットを7.1重量%のTiを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]に変更した以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
尚、このNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]も非磁性用カソードで安定して放電することが可能であった。
そして、実施例2に係る吸収型多層膜NDフィルターの可視域(波長400〜800nm)での透過率は32〜40%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、また、可視域における反射率が4%以下であり反射防止効果も良好であった。
また、7.1重量%のTiを含む上記NiターゲットからのNi系(Ni−Ti)薄膜の成膜速度の変化について、ターゲット使用初期と上記ターゲットエロージョン深さが5mmになった時とで比較したところ5%程度と小さかった。
従って、7.1重量%のTiを含む上記Niターゲットを用いて製造される実施例2に係る吸収型多層膜NDフィルターは、ターゲットを連続して使い切るまで一定の成膜速度を維持して生産されるため量産性にも優れていた。
上記Ni系材料ターゲットを15重量%のTiを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]に変更した以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
尚、このNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]も非磁性用カソードで安定して放電することが可能であった。
そして、実施例3に係る吸収型多層膜NDフィルターの可視域(波長400〜800nm)での透過率は38〜44%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、また、可視域における反射率が4%以下であり反射防止効果も良好であった。
また、15重量%のTiを含む上記NiターゲットからのNi系薄膜の成膜速度の変化について、ターゲット使用初期と上記ターゲットエロージョン深さが5mmになった時とで比較したところ5%程度と小さかった。
従って、15重量%のTiを含む上記Niターゲットを用いて製造される実施例3に係る吸収型多層膜NDフィルターは、ターゲットを連続して使い切るまで一定の成膜速度を維持して生産されるため量産性にも優れていた。
上記Ni系材料ターゲットを6.5重量%のTiを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]に変更した以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
尚、このNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]は非磁性用カソードで安定して放電することが難しく強磁性用カソードを用いることによって放電と成膜が可能であった。
しかし、Niターゲットの消耗に応じて、同一投入パワーでの放電電圧と放電電流の変化が実施例1〜3のときと比べて大きく、成膜速度の変化も顕著であった。従って、このようなNiターゲットを用いる場合には、定期的に成膜速度を測定する必要がある。
そして、成膜速度の測定を逐次行う調整方法を取り入れ、表1の膜(2)〜(6)を順に成膜して図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
そして、実施例4に係る吸収型多層膜NDフィルターの可視域(波長400〜800nm)での透過率は32〜40%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、また、可視域における反射率が4%以下であり反射防止効果も良好であった。
7.5重量%のTiを含むNi金属層とSiO層が交互に積層された合計6層から成る光学多層体が、SiO(x<2)から成る密着層を介し基板上に形成された表2に示す構造の吸収型多層膜NDフィルターを、実施例1と同様に作製した。
Figure 2006058854
作製された吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率を自記分光光度計装置[日立製作所製、U4100]を用いて測定した。測定結果を図7(A)(B)に示す。
そして、図7(A)(B)のグラフ図に示されたデータから、可視域(波長400〜800nm)での透過率は34〜37%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を有していることが確認された。また、可視域における反射率は4%以下であり反射防止効果も良好であった。尚、これ等の光学特性は、図2と図3に示す構造のフィルム基板が用いられた吸収型多層膜NDフィルターにおいても同様に得られることも確認された。
上記Ni系材料ターゲットを7重量%のVを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]に変更した以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
尚、このNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]も非磁性用カソードで安定して放電することが可能であった。
そして、実施例6に係る吸収型多層膜NDフィルターの可視域(波長400〜800nm)での透過率は32〜40%であり波長に対し平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、可視域における反射率が4%以下であり反射防止効果も良好であった。また、7.5重量%のTiを含むNi金属層を用いた実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターと比較しても、透過率および反射率の違いは±0.5%以内に収まっており、ほぼ同等の光学特性が得られた。
また、7重量%のVを含む上記NiターゲットからのNi系(Ni−V)薄膜の成膜速度の変化について、ターゲット使用初期と上記ターゲットエロージョン深さが5mmになった時とで比較したところ3%程度と小さかった。
従って、7重量%のVを含む上記Niターゲットを用いて製造される実施例6に係る吸収型多層膜NDフィルターは、ターゲットを連続して使い切るまで一定の成膜速度を維持して生産されるため量産性にも優れていた。
上記Ni系材料ターゲットを19重量%のWを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]に変更した以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
尚、このNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]も非磁性用カソードで安定して放電することが可能であった。
そして、実施例7に係る吸収型多層膜NDフィルターの可視域(波長400〜800nm)での透過率は32〜40%であり波長に対し平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、可視域における反射率が4%以下であり反射防止効果も良好であった。また、7.5重量%のTiを含むNi金属層を用いた実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターと比較しても、透過率および反射率の違いは±0.5%以内に収まっており、ほぼ同等の光学特性が得られた。
また、19重量%のWを含む上記NiターゲットからのNi系(Ni−W)薄膜の成膜速度の変化について、ターゲット使用初期と上記ターゲットエロージョン深さが5mmになった時とで比較したところ6%程度と小さかった。
従って、19重量%のWを含む上記Niターゲットを用いて製造される実施例7に係る吸収型多層膜NDフィルターは、ターゲットを連続して使い切るまで一定の成膜速度を維持して生産されるため量産性にも優れていた。
上記Ni系材料ターゲットを4.5重量%のAl並びに0.5量%のTiを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]に変更した以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
尚、このNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]も非磁性用カソードで安定して放電することが可能であった。
そして、実施例8に係る吸収型多層膜NDフィルターの可視域(波長400〜800nm)での透過率は32〜40%であり波長に対し平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、可視域における反射率が4%以下であり反射防止効果も良好であった。また、実施例1に係る7.5重量%のTiを含むNi金属層を用いた吸収型多層膜NDフィルターと比較しても、透過率および反射率の違いは±0.5%以内に収まっており、ほぼ同等の光学特性が得られた。
また、4.5重量%のAl並びに0.5量%のTiを含む上記NiターゲットからのNi系(Ni−Al−Ti)薄膜の成膜速度の変化について、ターゲット使用初期と上記ターゲットエロージョン深さが5mmになった時とで比較したところ5%程度と小さかった。
従って、4.5重量%のAl並びに0.5量%のTiを含む上記Niターゲットを用いて製造される実施例8に係る吸収型多層膜NDフィルターは、ターゲットを連続して使い切るまで一定の成膜速度を維持して生産されるため量産性にも優れていた。
上記Ni系材料ターゲットを7.1重量%のTiを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]に変更し、かつ、誘電体層をAl層に変更した以外は実施例1と同一の条件で以下の表3に示す膜(3)〜(6)を順に成膜し、図1に示した吸収型多層膜NDフィルターと同様の吸収型多層膜NDフィルター(但し、密着層は存在しない)を作製した。
Figure 2006058854
尚、このNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]も非磁性用カソードで安定して放電することが可能であった。
この吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率を自記分光光度計装置[日立製作所製、U4100]を用いて測定した。測定結果を図9(A)(B)に示す。
そして、図9(A)(B)のグラフ図に示されたデータから、実施例9に係る吸収型多層膜NDフィルターの可視域(波長400〜800nm)での透過率は35〜36%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、また、可視域における反射率が4%以下であり反射防止効果も良好であった。
また、7.1重量%のTiを含む上記NiターゲットからのNi系(Ni−Ti)薄膜の成膜速度の変化について、ターゲット使用初期と上記ターゲットエロージョン深さが5mmになった時とで比較したところ5%程度と小さかった。
従って、7.1重量%のTiを含む上記Niターゲットを用いて製造される実施例9に係る吸収型多層膜NDフィルターは、ターゲットを連続して使い切るまで一定の成膜速度を維持して生産されるため量産性にも優れていた。
上記Ni系材料ターゲットを7.1重量%のTiを含むNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]に変更し、かつ、誘電体層をSiOとAlの混合物層に変更した以外は実施例1と同一の条件で以下の表4に示す膜(3)〜(6)を順に成膜し、図1に示した吸収型多層膜NDフィルターと同様の吸収型多層膜NDフィルター(但し、密着層は存在しない)を作製した。
Figure 2006058854
尚、このNiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]も非磁性用カソードで安定して放電することが可能であった。
この吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率を自記分光光度計装置[日立製作所製、U4100]を用いて測定した。測定結果を図10(A)(B)に示す。
そして、図10(A)(B)のグラフ図に示されたデータから、実施例10に係る吸収型多層膜NDフィルターの可視域(波長400〜800nm)での透過率は34〜36%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、また、可視域における反射率が2%以下であり反射防止効果も良好であった。
また、7.1重量%のTiを含む上記NiターゲットからのNi系(Ni−Ti)薄膜の成膜速度の変化について、ターゲット使用初期と上記ターゲットエロージョン深さが5mmになった時とで比較したところ5%程度と小さかった。
従って、7.1重量%のTiを含む上記Niターゲットを用いて製造される実施例10に係る吸収型多層膜NDフィルターは、ターゲットを連続して使い切るまで一定の成膜速度を維持して生産されるため量産性にも優れていた。
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの構成説明図。 本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの構成説明図。 本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの構成説明図。 本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの光学多層体の構成説明図。 Ni薄膜、Cr薄膜、Nb薄膜およびTa薄膜における透過率と波長との関係を示すグラフ図。 図6(A)は本発明の実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターの透過率と波長との関係を示すグラフ図、図6(B)は本発明の実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターの反射率と波長との関係を示すグラフ図。 図7(A)は本発明の実施例5に係る吸収型多層膜NDフィルターの透過率と波長との関係を示すグラフ図、図7(B)は本発明の実施例5に係る吸収型多層膜NDフィルターの反射率と波長との関係を示すグラフ図。 Ni、Ti、Cr、Ta並びにNbの酸化物における標準自由エネルギーと温度の関係を示すグラフ図。 図9(A)は本発明の実施例9に係る吸収型多層膜NDフィルターの透過率と波長との関係を示すグラフ図、図9(B)は本発明の実施例9に係る吸収型多層膜NDフィルターの反射率と波長との関係を示すグラフ図。 図10(A)は本発明の実施例10に係る吸収型多層膜NDフィルターの透過率と波長との関係を示すグラフ図、図10(B)は本発明の実施例10に係る吸収型多層膜NDフィルターの反射率と波長との関係を示すグラフ図。
符号の説明
1 基板
1a ハードコート層
2 密着層
3、5 Niを主成分とする金属層
4、6 誘電体層
7 光学多層体

Claims (9)

  1. 基板と、ニッケル(Ni)を主成分とする金属層とSiO、Al若しくはこれ等混合物のいずれかの誘電体層が上記基板上に交互に積層されて成る光学多層体とを備えることを特徴とする吸収型多層膜NDフィルター。
  2. Niを主成分とする上記金属層が、Ti、Al、V、W、Ta、Siから選択された1種類以上の元素を添加したNi系合金材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  3. Ti元素の添加割合が5〜15重量%、Al元素の添加割合が3〜8重量%、V元素の添加割合が3〜9重量%、W元素の添加割合が18〜32重量%、Ta元素の添加割合が5〜12重量%、Si元素の添加割合が2〜6重量%の範囲にそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項2記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  4. 上記基板が樹脂板若しくは樹脂フィルムにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  5. 上記樹脂板若しくは樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルムの単体で構成されるか、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルム単体とこの単体の少なくとも片面を覆うアクリル系有機膜との複合体で構成されていることを特徴とする請求項4記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  6. 基板側から順に積層された金属層、誘電体層、金属層、誘電体層の4層で上記光学多層体が構成されていることを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  7. 上記金属層の各膜厚が2〜30nmの範囲にそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1、2、3または6に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  8. Si、SiO(但しx≦2)、SiN(但しx≦1)、Ti、TiO(但しx≦2)またはTiN(但しx≦1)により構成された密着層が上記基板と光学多層体との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  9. 400〜800nmの可視域全域において反射率が5%以下、かつ、透過率の変動幅が10%以内であることを特徴とする請求項1記載の吸収型多層膜NDフィルター。
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