JP2008209442A - 吸収型多層膜ndフィルター及びその製造方法 - Google Patents

吸収型多層膜ndフィルター及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 吸収型多層膜の膜構造を変更することなく、分光透過特性の平坦性に優れると同時に、高温高湿環境下においてもヒビ割れの発生がなく、光学特性に優れた吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
【解決手段】 樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を施して、樹脂フィルムの波長400nmにおける透過率を処理前に対し1.0%以上減衰させる。その後、この樹脂フルムの少なくとも片面に酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層とを交互に積層して吸収型多層膜を形成する。得られる吸収型多層膜NDフィルターは、波長400〜550nmにおける平均透過率が3〜32%で、可視光領域における分光透過特性の平坦性ばらつきが樹脂フィルムに上記処理を行っていないものに比べて1%以上小さくなる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、可視光領域の透過光を減衰させる吸収型多層膜NDフィルター、特に、その分光透過特性の平坦性の改善と、高温高湿環境下における耐環境性の改良に関するものである。
可視光領域の透過光を減衰させるND(Neutral Density Filter)フィルターとしては、入射光を反射して減衰させる反射型NDフィルターと、入射光を吸収して減衰させる吸収型NDフィルターが知られている。特に反射光が問題となるレンズ光学系にNDフィルターを組み込む場合には、一般的に吸収型NDフィルターが用いられている。
この吸収型NDフィルターには、基板自体に吸収物質を混ぜるタイプ(色ガラスNDフィルター)と、基板に吸収物質を塗布するタイプと、基板自体に吸収はなく基板表面に形成された薄膜に吸収があるタイプとがある。また、薄膜に吸収があるタイプの場合は、薄膜表面の反射を防ぐため薄膜を多層膜で構成し、透過光を減衰させる機能と共に、反射防止の効果を持たせることもできる。
特に、小型薄型デジタルカメラ等に用いられる吸収型多層膜NDフィルターでは、組込みスペースが狭いため基板自体を薄くする必要があることから、樹脂フィルムが最適な基板とされている。例えば、特開2006−178395号公報には、樹脂フルムに酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層とを交互に積層して吸収型多層膜を形成した吸収型多層膜NDフィルターが開示されている。
また、特開2003−322709号公報には、フィルムの走行パス上に、基板表面をクリーニングするためのプラズマ電極と、その表面上に光吸収膜、透明誘電体膜を形成するための蒸着源を備え、最初にプラズマ電極で発生するプラズマ放電によって基板の表面洗浄を行い、次いで蒸着源のスパッタリングにより光吸収膜を形成し、引き続きスパッタリングにより透明誘電体膜を形成する方法が記載されている。ここでは、吸収型多層膜の密着性を向上させるために、成膜前の樹脂フィルムにプラズマ処理を行うことが開示されている。
特開2006−178395号 特開2003−322709号公報
上記した樹脂フルムに吸収型多層膜を形成した吸収型多層膜NDフィルターは、波長400〜700nmにおける平均透過率が通常25%程度であり、波長400〜550nm付近の透過率が高いという谷型形状の分光透過特性を有している。しかし、デジタルカメラ等に使用するNDフィルターは、良好なカラーバランスを得るために、分光透過特性の平坦性が求められている。
可視光領域(波長400〜700nm)における分光透過特性を平坦化する(各波長における透過率をほぼ等しくする)ためには、吸収型多層膜の膜総数を増加するか、膜材料をもう1種類追加することによって、膜設計の自由度が広がり、分光透過特性の平坦性ばらつき((最大透過率−最小透過率)/波長400〜700nmの平均透過率)をより小さくすることができる。しかしながら、膜総数を増加させることも、膜材料をもう1種類追加することも、製造コストのアップと共に、複雑な成膜工程になってしまうため好ましくない。
また、吸収型多層膜NDフィルターは、デジタルカメラや防犯カメラ等に組み込まれるために、耐環境性も要求されている。特に、樹脂フィルムからなる基板に成膜した吸収型多層膜NDフィルターは、高温高湿環境下に放置すると吸収型多層膜が網の目状にヒビ割れることがあり、その改良が望まれていた。
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、基板である樹脂フィルムに可視光領域の透過光を減衰させる吸収型多層膜を設けた吸収型多層膜NDフィルターについて、吸収型多層膜の膜構造を変更することなく、光学特性に優れ、特に分光透過特性の平坦性に優れると同時に、高温高湿環境下においてもヒビ割れが発生しない吸収型多層膜NDフィルターを提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、透明な樹脂多層フィルムがプラズマやイオンビームを照射する処理により若干着色するという知見に基づき、吸収型膜の膜構造を変更せず、樹脂フィルムにプラズマやイオンビームを照射して吸収を持たせることによって、可視光領域(波長400〜700nm)における分光透過特性の平坦性を向上させ得ることを見出した。同時に、透明な樹脂フィルムがプラズマ処理やイオンビーム処理により若干着色するようになると、吸収型多層膜の高温高湿環境下での耐環境性も向上することが分り、本発明に至ったものである。
即ち、本発明が提供する吸収型多層膜NDフィルターの製造方法は、樹脂フィルムに可視光領域(波長400〜700nm)の透過光を減衰させる吸収型多層膜を設けた吸収型多層膜NDフィルターの製造方法であって、樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を施して、該樹脂フィルムの波長400nmにおける透過率を処理前に対し1.0%以上減衰させた後、該樹脂フィルムの少なくとも片面に酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層とを交互に積層して吸収型多層膜を形成することを特徴とする。
また、本発明が提供する吸収型多層膜NDフィルターは、樹脂フィルムに可視光領域の透過光を減衰させる吸収型多層膜を設けた吸収型多層膜NDフィルターであって、上記した本発明による方法によって製造され、波長400〜550nmにおける平均透過率が3〜32%であり、可視光領域における分光透過特性の平坦性ばらつき((最大透過率−最小透過率)/波長400〜700nmの平均透過率)が樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行っていないものに比べて1%以上小さいことを特徴とする。
本発明によれば、基板となる樹脂フィルムの波長400nmにおける透過率を1.0%以上減衰させることができ、その結果、その樹脂フィルム上に吸収型多層膜を形成した吸収型多層膜NDフィルターの波長400〜550nmにおける透過率を減衰させ、可視光領域(波長400〜700nm)における分光透過特性の平坦性ばらつき((最大透過率−最小透過率)/波長400〜700nmの平均透過率)を樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行っていないものに比べて1%以上小さくすることができる。更に、吸収型多層膜と樹脂フィルムの密着性を向上させるだけでなく、高温高湿環境下における吸収型多層膜のヒビ割れを防ぐことができ、吸収型多層膜NDフィルターの耐環境性を向上させることができる。
従って、上記本発明の吸収型多層膜NDフィルターは、吸収型膜の膜構造を変更せずに、また製造コストのアップや成膜工程を複雑にすることなく、分光透過特性の平坦性の改善と、吸収型多層膜の高温高湿環境下におけるヒビ割れ防止をすることが可能となり、デジタルカメラや防犯カメラ等の多くの用途に展開することが可能となったものである。
本発明の吸収型多層膜NDフィルターにおいては、分光透過特性の平坦性改善と、吸収型多層膜の高温高湿環境下におけるヒビ割れ防止のために、吸収型多層膜を成膜する前に、基板となる樹脂フィルムにプラズマあるいはイオンビームを照射する。このプラズマ処理あるいはイオンビーム処理の条件は、本来は透明な樹脂フィルムが若干着色し、樹脂フィルムの波長400nmにおける透過率が上記処理前に比べ1.0%以上減衰するように設定する。
一般的に、樹脂フィルム上に形成する膜の密着性改善のため、従来から樹脂フィルムへのプラズマ処理あるいはイオンビーム処理が行なわれていた。また、照射するプラズマあるいはイオンビームの強度を上げると、樹脂フィルムが着色することも知られていた。しかし、樹脂フィルムが着色すると透過光が吸収され、色合いも変化するため、通常は膜の密着性が改善される程度の最小限の照射に止められ、光学特性に明らかな影響を与えるような処理はなされていなかった。
吸収型多層膜NDフィルターの吸収型多層膜は透明膜ではなく、樹脂フィルムの着色による吸収で透過光が減衰しても問題がない。そのため、本発明においては、プラズマ処理あるいはイオンビーム処理により樹脂フィルムが着色する現象を積極的に利用して、本来は透明な樹脂フィルムが若干着色するように、具体的には樹脂フィルムの波長400nmにおける透過率が処理前に比べて1.0%以上減衰するように、成膜前の樹脂フィルムにプラズマあるいはイオンビームを照射するのである。
本発明においては、プラズマ処理あるいはイオンビーム処理により、樹脂フィルムの波長400nmにおける透過率を処理前に比べて1.0%以上減衰させる。その結果、この樹脂フィルム上に吸収型多層膜を設けた吸収型多層膜NDフィルターでは、波長400〜550nmにおける透過率が減衰するため、分光透過特性の平坦性を改善することができる。具体的には、吸収型多層膜NDフィルターの波長400〜550nmにおける平均透過率が3〜32%であり、可視光領域における分光透過特性の平坦性ばらつき((最大透過率−最小透過率)/波長400〜700nmの平均透過率)を樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行っていないものに比べて1%以上小さくすることができる。
同時に、本発明の吸収型多層膜NDフィルターにおいては、吸収型多層膜と樹脂フィルムの密着性を向上させ、更に吸収型多層膜の高温高湿環境下におけるヒビ割れを防止することができる。吸収型多層膜のヒビ割れが防止される理由は明らかではないが、上記プラズマ処理あるいはイオンビーム処理によって樹脂フィルムに熱収縮が生じ、この熱収縮が吸収型多層膜の密着性向上に寄与することで、吸収型多層膜のヒビ割れが防止されるものと考えられる。
基板となる樹脂フィルムの材質は特に限定されないが、透明であるものが好ましく、量産性を考慮した場合、乾式のロールコーティングが可能なフレキシブルなものが好ましい。フレキシブル基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価であるうえ、軽量で変形性に富む点においても優れている。
樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)及びノルボルネンから選ばれた樹脂からなるフィルム、あるいは、その樹脂フィルムの片面又は両面をアクリル系有機膜で被覆した複合フィルムが挙げられる。特に、ノルボルネン樹脂は、可視波長域における透明性と耐熱性などの特長を有するため好ましく、その代表的なものとして、吸収率の低い日本ゼオン社製のゼオノア(商品名)や、膜密着性の高いJSR社製のアートン(商品名)などを挙げることができる。
樹脂フィルムの片面又は両面に設ける吸収型多層膜は、酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層とを交互に積層させた多層膜で構成される。酸化物誘電体膜層としては、SiO、Al、若しくはこれら酸化物の混合物、あるいは複合酸化物を用いることができる。また、金属吸収膜層としては、Ni、Ti、Cr、W、Ta、Nbから選ばれた少なくとも1種の金属を用いることができる。
上記吸収型多層膜を構成する酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層は、上記のごとくプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行った後、真空蒸着法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法などの成膜法により、それぞれ成膜することができる。特に金属吸収膜層は、膜材料の添加物や不純物、成膜時の残留ガス、基板からの放出ガスや成膜速度によって、屈折率や吸収係数などの特性が大きく異なることがあるが、これらの条件を適宜選択して、所望の吸収型多層膜NDフィルターの特性となるように設定すればよい。
次に、本発明による吸収型多層膜NDフィルターの製造方法について、具体例を用いて更に詳しく説明する。例えば、波長400〜700nmにおける平均透過率が25%の吸収型多層膜NDフィルターは、基板をPETフィルム、吸収型多層膜の酸化物誘電体膜層をSiO及び金属吸収膜層をNiで構成すると、下記表1に示すような膜構成になる。また、この膜構成の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性を図1に示す。
Figure 2008209442
本発明方法においては、上記表1の膜構成を有する吸収型多層膜NDフィルターを製造するとき、吸収型多層膜を成膜する前に、まず樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を施す。プラズマ処理あるいはイオンビーム処理では、樹脂フィルムの波長400nmにおける透過率を1.0%以上減衰させるようにプラズマまたはイオンビームを照射する。尚、プラズマ処理あるいはイオンビーム処理については、種々の処理装置を用いることができる。
例えば、上記表1の膜構成において基板となるPETフィルムについて、DCプラズマ処理の電圧を変化させたときの分光透過特性の変化を図2に示す。このときのプラズマ照射時間は6秒である。プラズマ処理電圧が高くなるにつれて、PETフィルムの波長400〜550nmにおける透過率が減衰していることが分る。このように、プラズマ処理やイオンビーム処理の電力を高くするほど、樹脂フィルムの波長400〜550nmにおける透過率が低下するので、吸収型多層膜NDフィルターの波長400〜550nmにおける平均透過率の所望の減衰量に応じて、プラズマ処理やイオンビーム処理の電力を調整すれば良い。
上記プラズマ処理あるいはイオンビーム処理を施した樹脂フィルムの片方又は両方の表面に、真空蒸着法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法などの成膜法を用いて、酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層を交互に積層して吸収型多層膜を形成することにより、本発明の吸収型多層膜NDフィルターが得られる。
上記表1のような膜構成を有する両面吸収型多層膜NDフィルターでは、その透過率に対するプラズマ処理あるいはイオンビーム処理によるフィルム着色の寄与は、波長毎に以下の計算式1に基づいて考えることができる。
[計算式1]
両面吸収型多層膜NDフィルターの透過率=A面の吸収型多層膜の透過率×樹脂フィルム着色による透過率×B面の吸収型多層膜の透過率
ただし、厳密には、分光エリプソメトリー法等により、着色した樹脂フィルムの各波長における屈折率と消衰係数、金属吸収膜層の各波長における屈折率と消衰係数、酸化物誘電体膜層の各波長における屈折率と消衰係数から、光学薄膜シミュレーションソフト等を利用して、分光光学特性の理論計算をすることが望ましい。
本発明は、透過率が比較的高い吸収型多層膜NDフィルターに対して特に有効である。具体的には、平均透過率25%の両面吸収型多層膜NDフィルターでは、A面とB面の吸収型多層膜の透過率は50%(=√0.25)である。ここで、プラズマ処理による樹脂フィルムの着色の吸収が3%とすると、上記吸収型多層膜の透過率は50%×(100%−0%)×50%−50%×(100%−3%)×50%=24.2%となり、約0.8%の透過率の補正が可能になる。具体的には、分光透過特性の平坦性ばらつきを最大3%(=0.8%/25%)も小さくする効果がある。ここで、吸収型多層膜は樹脂フィルム基板に対して反射防止効果もあるため、反射は無視しても差し支えない。
一方、平均透過率6.3%の両面吸収型多層膜NDフィルターでは、A面とB面の吸収型多層膜の透過率は25%(=√0.063)である。ここで、プラズマ処理あるいはイオンビーム処理による樹脂フィルムの着色の吸収が3%とすると、25%×(100%−0%)×25%−25%×(100%−3%)×25%=6.1%となり、わずか約0.2%の透過率の補正しかできないが、分光透過特性の平坦性ばらつきを最大3%(=0.2%/6.3%)小さくすることができる。
このように、透過率が低い吸収型多層膜NDフィルターにおいては、樹脂フィルムの着色の吸収による透過率の減衰はごくわずかしか寄与しないことが分る。尚、樹脂フィルムの着色により、吸収型多層膜NDフィルターの反射特性に変化が無いことも確認している。従って、プラズマ処理あるいはイオンビーム処理により樹脂フィルムに3%以上の吸収をもたせることは、熱負荷等の問題で難しく現実的ではない。
上記表1に示す膜構造を有する吸収型多層膜NDフィルターを、下記のごとく製造した。尚、上記表1の膜構造を有する吸収型多層膜NDフィルターは、PETフィルムのプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行っていない従来のものでは、図1に示す谷型形状の分光透過特性を有し、波長400〜700nmにおける平均透過率が25%である。
まず、厚さ100μmの易接着層付PETフィルム(東洋紡製)のA面に、プラズマ処理電圧1.6kVでプラズマ処理を行い、PETフィルムの終端部に分光透過特性を測定するための未成膜部分を残し、SiOからなる酸化物誘電体膜層とNiからなる金属吸収膜層とを交互に積層して吸収型多層膜を成膜した。その後、B面にもA面の同じ位置に同じプラズマ処理電圧でプラズマ処理を行い、A面と同様にPETフィルム終端部に未成膜部分を残して吸収型多層膜を成膜することにより、吸収型多層膜NDフィルターを得た。
更に具体的に述べると、上記吸収型多層膜の成膜には、DCプラズマ処理機構が装備されているスパッタリングロールコータ装置を用いた。PETフィルムのプラズマ処理は、DCプラズマ処理装置にArガスを100sccm導入し、ターボポンプの回転数を低下させることによりArガス圧を3Paとし、フィルム搬送速度を1m/minにしてプラズマ処理を行った。
また、吸収型多層膜の成膜には、金属吸収膜層成膜用としてNi合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を、酸化物誘電体膜層成膜用としてSiターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用いた。即ち、Ni合金ターゲットはArガスを導入するDCマグネトロンスパッタリング法で成膜し、SiターゲットはArガスを導入するデュアルマグネトロンスパッタリングを行い、SiからSiOを成膜するためにインピーダンスモニターにより酸素導入量を制御した。
また、PETフィルムのプラズマ処理電圧を変えた以外は上記と同様にして、吸収型多層膜NDフィルターを製造した。即ち、PETフィルムのA面とB面のプラズマ処理の際に、プラズマ処理電圧を1.8kV、2.1kV、2.3kV、及び2.5kVに設定して、それぞれプラズマ処理を行った後、吸収型多層膜を成膜することにより吸収型多層膜NDフィルターを製造した。
上記各条件で得られた吸収型多層膜NDフィルターについて、PETフィルム終端部の未成膜部分の波長400〜700nmにおける分光透過率を測定し、プラズマ処理前の分光透過率と共に、図2に示した。また、得られた各吸収型多層膜NDフィルターの波長400〜700nmにおける分光透過率を測定し、その結果を図3に示した。尚、PETフィルム及びNDフィルターの分光透過率は、自記分光光度計(日本分光(株)製、V570)を用いて測定した。
更に、上記各条件で得られた吸収型多層膜NDフィルターを50mm角に切断して、温度80℃、湿度90%の環境試験機に24時間放置した。その後、各吸収型NDフィルターを100倍のノマルスキー微分干渉顕微鏡で観察し、吸収型多層膜のヒビ割れの状態を調べた。得られた観察結果を下記表2に示す。尚、表2には、プラズマ処理前後のPETフィルムの波長400nmにおける透過率も併せて示した。
Figure 2008209442
図3から明らかなように、成膜前のPETフィルムにプラズマ処理を行った吸収型多層膜NDフィルターは、プラズマ処理を行っていないものに比べて、400〜550nmの短波長領域における分光透過特性の平坦性ばらつき((最大透過率−最小透過率)/波長400〜700nmの平均透過率)が小さくなっている。この分光透過特性の平坦性の向上は、プラズマ処理電圧の増加と共に大きくなっている。
更に詳しくは、プラズマ処理を行っていない吸収型多層膜NDフィルターの平坦性ばらつきは19%であるのに対し、プラズマ処理電圧1.8kV、2.1kV、2.3kV、2.5kVでプラズマ処理を行うと、分光透過特性の平坦性ばらつきはそれぞれ18%、17%、16%、15%に改善した。これらのことから、波長400〜550nmにおける平均透過率が3〜32%の吸収型多層膜NDフィルターであれば、樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行うことによって、可視光領域における分光透過特性の平坦性ばらつきを1%以上改善できることが分った。
また、表2の結果から、成膜前のPETフィルムのプラズマ処理による吸収型多層膜のヒビ割れ防止効果は、波長400nmにおけるPETフィルムの透過率の低下が1.0%となった1.8kV付近から現れ、透過率の低下が2.0%となるプラズマ電圧2.1kV以上から効果が顕著になることが分る。ただし、プラズマ処理電圧1.6kVでのプラズマ処理の場合でも、吸収型多層膜の十分な初期密着性は得られた。
尚、上記実施例ではPETフィルムにプラズマ処理を行った場合についてのみ説明したが、イオンビーム処理においても上記とほぼ同様の結果が得られた。
従来の平均透過率25%の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性を示すグラフである。 本発明のプラズマ処理によるPETフィルムの分光透過特性の変化を示すグラフである。 本発明のPETフィルムのプラズマ処理による吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性の変化を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 樹脂フィルムに可視光領域(波長400〜700nm)の透過光を減衰させる吸収型多層膜を設けた吸収型多層膜NDフィルターの製造方法であって、樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を施して、該樹脂フィルムの波長400nmにおける透過率を処理前に対し1.0%以上減衰させた後、該樹脂フルムの少なくとも片面に酸化物誘電体膜層と金属吸収膜層とを交互に積層して吸収型多層膜を形成することを特徴とする吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
  2. 酸化物誘電体膜層及び金属吸収膜層は、真空蒸着法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、若しくはイオンプレーティング法のいずれかにより成膜することを特徴とする、請求項1に記載の吸収型多層膜NDフィルターの製造方法。
  3. 樹脂フィルムに可視光領域(波長400〜700nm)の透過光を減衰させる吸収型多層膜を設けた吸収型多層膜NDフィルターであって、請求項1又は2に記載の方法によって製造され、波長400〜550nmにおける平均透過率が3〜32%であり、可視光領域における分光透過特性の平坦性ばらつき((最大透過率−最小透過率)/波長400〜700nmの平均透過率)が樹脂フィルムにプラズマ処理あるいはイオンビーム処理を行っていないものに比べて1%以上小さいことを特徴とする吸収型多層膜NDフィルター。
  4. 温度80℃、湿度90%の環境下に24時間放置後、吸収型多層膜にヒビ割れがないことを特徴とする、請求項3に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
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